高度外国人人材・ポイント制について

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2012年9月10日発行
2012年9月
若松絵里社労士・行政書士事務所
News Letter
在日外国人の新・在留管理制度②
~ 高度外国人人材に対するポイント制と優遇措置について ~
皆さん、こんにちは。行政書士・社会保険労務士の若松です。
前回は、2012年7月にスタートした、在日外国人に対する新・在留管理制度について、「外国人社員を雇用す
る企業の人事担当者様向け・最低限知っておきたい改正ポイントは? ~」という内容でご説明させていただき
ました。今回も、引き続き、この新・在留管理制度の一環として導入された、
「高度人材外国人に対するポイント制と優遇制度」についてご紹介したいと思います。
■ 東京入国管理局
届出済行政書士
■ 社会保険労務士
若松絵里
前回のニューズレターをご覧頂いていない方でご興味をお持ちの方は、下記・当事務所のブログ記事も
ご覧下さい。
◆ 在日外国人の新・在留管理制度~外国人社員を雇用する企業が最低限知っておきたい改正ポイント~
→ http://amba.to/Ov99JO (2012年7月23日記事)
◆ 入国管理局あて・外国人社員の退職告知書・記載例です。
→ http://amba.to/O0POB6 (2012年8月2日記事)
企業様が外国人を雇
用される際に必要な就
労ビザ取得手続きから
この新制度は、日本政府が、「高度人材」と認定した優秀な外国人を日本へ誘致するために導入されました。
就業規則の英文翻訳・
(既に2012年5月7日に導入開始しています。)
外国会社の日本支店・
具体的には、学歴・職歴・実績・年齢・給与額などの項目に分けてランク付けし、ランクに応じてポイントを付
日本支社設立業務など
与、そのポイントがある一定以上に達した外国人(=高度人材)には、日本での在留に関し、他の外国人には
を行っております。日本
で暮らす外国人やビジ
ネスなどに関するブロ
グも更新しています。
事務所HP: http://
www.eriw-office.com/
ない様々な優遇措置を与えるというものです。ちなみに、同様の制度は欧米を中心に既に多くの国で導入され
ています。
日本を含む少子化で労働力不足が深刻な先進諸国にとって、優秀な人材の長期的な確保が必要不可欠であ
る現在の経済状況を考えると、この制度、遅くなったけれど日本もやっと導入したのか...と、いうところでしょう
が、個人的には国際的な競争力低下と今も現在進行中の地震や原発事故に対する不安が重なっている今の
日本が、どこまで狙い通りに優秀な外国人人材を集める事ができるのか、正直疑問でもあります。
ブログ:
http://ameblo.jp/eriwoffice/
「高度人材に対するポイント制による優遇制度」については、下記法務省のウェブサイトで詳細がご覧い
ただけます。
ツイッターID:
① 【制度の概要】 → http://bit.ly/RW0mA5
@Eri_Wakamatsu
② 【制度の詳細】 → http://bit.ly/RJY6A9
③ 【ポイント計算表】 → http://bit.ly/RvPecU
④ 【高度人材・申請書類書式】 → http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_3/120713_index.html
■ 「高度人材」ってどんな人材のこと?
日本での在留において、優遇措置を受けられる「高度人材」とは、簡単に言ってしまうと、【学術研究者】・【技術職(各種エンジニ
ア)】・【企業の経営者】のいずれかの職業につき、日本で働く(またはこれから働こうと日本にやってくる)外国人が、下記のようなアド
バンテージをもつ場合、その人たちは、「高度人材」であると認定されます。条件は、下記のようなものが規定されています。
・年齢が若い
・収入が高い(=評価されている優秀な人材)
・学歴が高い(修士号・博士号にそれぞれポイントが与えられる。日本国内の大学院を卒業していると付与されるポイントが更に加算
される。)
・日本国内・海外において著名な学術研究などの実績がある
・日本語能力が高い (日本語能力検定1級取得者)
・日本国内で会社を経営するなど日本に投資をしている。
それぞれの職種(研究者/技術職/経営者)ごとに、 【ポイント計算表】(※ 上述資料③) が公表されていて、各職種の中に様々な項
目があり、その項目に該当するとポイントが与えられます。つまり、このポイント計算表に従って、該当する項目ごとにポイントを積み
上げていき、最終的に合計ポイントが一定以上に達した場合は、その人は「高度人材」に該当する人材であると判定されることになり
ます。
ただし、「高度人材」として、日本での在留に関して優遇措置を受けられるかどうかは、あくまでも、下記3つのビザ申請に対して審査
を行う入国管理局が個別のケースごとに判断します。
・ 在留資格認定証明書交付申請(※ 海外から初めて外国人を日本に呼び寄せる場合のビザ申請手続き)
・ 在留期間更新許可申請
(※ これまで、「高度人材」ではなく、通常のビザで日本に在留していた外国人が期間満了に伴って更新ビザを申請する手続き)
・ 在留資格変更許可申請
(※ これまで、「高度人材」ではなく、通常のビザで日本に在留していた外国人が転職など仕事内容の変更に伴いビザの種類を変更
する手続)
つまり、「高度人材」の条件に該当する外国人が、在留資格認定証明書交付申請か、在留期間更新・在留資格変更許可申請を行う
ときに、入国管理局に対して、自身が「高度人材」である事を申告して申請をし、それが認定されて初めて高度人材として優遇措置を
受けられるのです。(申請時に自身が高度人材であることを証明する様々な書類を提出する必要があります。)
■ ポイントがどれくらいあれば、「高度人材」として認定してもらえるの?
【学術研究者】、【技術職(各種エンジニア)】、【企業の経営者】、3つのカテゴリーともにいずれも、高度人材として認定してもらえるの
は合計70ポイント以上です。
合計のポイント数が最低70ポイント必要ですので、65ポイント取っていたとしても、「高度人材」として認定してもらうことはできませ
ん。
■ 「高度人材」と認定されたらどんなメリットがあるの?
外国人の方にとっては、この点が一番気になるところだと思います。「高度人材」と認定された外国人には、下記のような優遇措置が
与えられます。
◎ 優遇措置(1)
許可された在留資格(=就労ビザ)以外の範囲で就労活動を行うことができる。
例: 一定の日本国内所属機関(大学や学術機関・企業など)に所属して就労する研究者などが、所属機関での就労も継続しながら、
一方、関連する研究について自身で(日本国内において)起業し事業を行うことができる。
現行の入管法では、日本で就労する、高度人材以外の外国人は、個別に許可された在留資格(=就労ビザ)で許可されている範囲
「以外」の仕事をすることは許されていません。
例えば、高度人材ではない、通常の「技術」という在留資格を保持している外国人は所属する機関(会社など)で、「技術」に許されて
いる範囲内の仕事(=技術系の仕事)のみ行なう事しかできません。
ですので、異業種での他社への転職はもちろん、たとえ同じ会社内であったとしても、人事異動などにより、技術系の仕事「以外」の
業務(例:営業など。「技術」の在留資格では就くことができない。)を行う場合も、入管法上、「資格外活動」として違法行為となりま
す。
また、所属機関で、技術職として在留資格の範囲内の業務をしつつ、アルバイト的に他の会社で働いて収入を得ることや、所属機関
で技術職として勤務しつつ、自身で起業し関連する事業を行うことなども当然違法です。(資格外活動許可がない場合)
しかし、今後、「高度人材」として認定された外国人は、自身の研究について、所属機関に所属し勤務する一方、(日本国内で)自ら起
業し事業を行なうことが合法的に認められたという事になります。
◎ 優遇措置(2)
永住許可を申請する前提条件である、日本での継続在留期間を短縮する。
現行では、「永住許可申請」(※ 日本に半永久的に在留できるビザ・期間更新が不要)を行なうためには、申請時時点で、日本にお
ける継続した「10年以上」の在留期間が必要です。(就労系のビザから永住ビザに変更する場合)
この10年を、「高度人材」として認定された外国人に対しては(「高度人材としての活動を継続している場合限定)、「5年」に短縮する
ということです。
つまり、高度人材ポイント表で高得点をゲットした、「超」高度人材については、初めて日本に入国する時点で「5年」の在留期間が付
与されることも考えると、最短で5年余後、初めてのビザ更新直後に「永住許可」が与えられる可能性もあるわけです。
◎ 優遇措置(3)
高度人材の配偶者に対して、就労制限が解除される。
現在、日本で就労ビザを保持して在留する外国人の配偶者で、「家族滞在」ビザを保持し日本に在留している外国人については、日
本での就労活動に一定の就労制限がかかっています。(働いて収入を得てもよい労働時間は週28時間以内・公序良俗に反しない職
種である事など)
「高度人材」の外国人の配偶者(家族滞在ビザで在留)について、この制限を撤廃し、配偶者が、「教育」、「技術」、「人文知識国際業
務」の範囲内で定められている職種で働く場合は、この「週28時間以内」の縛りを撤廃するということです。
つまり、「高度人材」の外国人の配偶者(「家族滞在」ビザを保持)がフルタイムで勤務しようと希望した場合は、これまでのように配偶
者自身がビザ申請のスポンサーになってくれる企業を探して自身の就労ビザを取得するといった面倒なプロセスを経ることなく、比較
的自由に就職先や就労形態も自分で選んで就労することができるようになりました。
◎ 優遇措置(4)
一定の条件(年収)を満たした高度人材が3歳未満の子供を育てている場合は、実親または配偶者の親と一緒に日本に来日、また
は既に日本に入国・在留している高度人材については親の呼び寄せを認める。
高度人材と配偶者が、3歳未満の子供を養育している場合で、子供を連れて初めて日本に来日するとき、又は、既に日本に在留して
いる外国人がビザ更新・変更時に「高度人材」と認められた場合は、海外から親(高度人材の実親又は配偶者の親に限ります。)を
呼び寄せることができるようになりました。
(※ 今までは、外国人の配偶者や子供を除き、親などの親族についての帯同や招へいは一部例外を除いて原則不可能でした。)
ただ、現時点では、これら高度人材の親に対して許可される日本での滞在期間は最長「3年」とされています。
つまり、「子供が3歳くらいまでは大変だろうから、親御さんに日本に来てもらって手伝ってもらっていいよ。」という制度です。
現在、小さいお子さんを抱え助けてくれる親御さんを母国から呼ぶことができずに困っている共働きの(夫婦共に)外国人夫婦が多く
いらっしゃるので、そういった外国人達にとってはありがたい制度なのでしょう。しかしながら、
・(親を帯同・呼び寄せできる)高度人材に対する年収制限(1千万)は高すぎるのではないか?
・親御さんの最長滞在期間が「3年」は短すぎるのではないか?
というのが、私の率直な感想です。
なぜなら、お子さんの預け先に困っていらっしゃる高度外国人人材の多くは、高学歴・国内大企業に勤務する技術職で、【高度人材
ポイント表】で試算すると殆どが70ポイントをクリアしています。ただ、そういった人たちの年齢は比較的若く、現状の国内大手製造
業の厳しい状況のせいもあって、彼らが受け取る年収が、(親御さんを呼び寄せるための年収要件)「年収1千万円」にわずかに届い
ておらず親御さんの呼び寄せが不可能なケースが多いのです。
面倒を見てもらわなければいけない小さな子供がいるのは、「高度人材」であっても、その年齢は20代から30代が一般的だと思いま
す。それに、現在の厳しい経済状況を考えて、高度人材に該当する技術者を抱える日本の製造業が若い彼らに支払う給与は、いくら
大手企業だからといってそこまで高い訳ではありません。それを「1千万円以上」と限定してしまうと、なかなか対象者はいないのでは
ないのでしょうか。せめて、この「年収1千万円」の要件をもう少し緩めるか、又は夫婦合算で1千万円とする等の緩和措置を講じても
らえれば、この制度によって助かる子育て世代の高度人材が増えると思います。
それから、帯同・呼び寄せした親御さんに対して日本で滞在できる最長期間が「3年」ということについて。これについては、国内法で
ある、「育児介護休業法」で、3歳未満の子供を育てている労働者に対して定められている一部の優遇措置に合わせたものだろうと
は思いますが、慣れない外国、それも託児所や保育園などの施設や制度が充実していない日本で働いてくれている共働きの高度人
材夫婦については、例えば、せめてお子さんが小学校に入るくらいまでは親御さんの滞在を延長するなどの、思い切った措置を講ず
るべきではないかとも思います。
◎ 優遇措置(5)
一定の条件を満たした高度人材が初めて日本に入国するとき、個人で雇用する家事使用人(=家政婦さん・ベビーシッターさんなど)
を連れてくることができる。
◆ 家事使用人を帯同できる条件
1.雇用主である高度人材の年収が1,500万円以上であること
2.連れてくることができる家事使用人は1名のみ
3.家事使用人に対して支払う給与は月額20万円以上であること
4.来日前に雇用していた家事使用人を連れてくる場合は、高度人材が来日前1年間以上その家事使用人を雇用していた実績があ
り、高度人材が日本から出国するときに家事使用人も共に出国することが予定されていること。
5. 来日前に1年以上雇用していた家事使用人以外の家事使用人を連れてくる場合は、高度人材の来日前に家庭の事情(13歳未満
の子や病気の子が存在する、又は病気で家事ができない配偶者が存在...等)が存在すること。
◎ 優遇措置(6)
高度人材に関する、入管手続きの優先処理
入国管理局における入国管理(ビザ審査)手続きについて、高度人材に関するものは、他の申請に優先して処理するとこととされて
います。申請してから許可がおりるまでの期間が、現行の高度人材以外の申請に比べてかなり短縮されることが予想されます。
■ 「高度人材」として認定してもらうために必要な手続きは?
今後、ビザを申請する外国人が高度人材として認定されることを希望する場合は、下記の時点で申請を行ないます。
① 海外にいる外国人を初めて日本に呼び寄せて働いてもらうときには、 「在留資格認定証明書交付申請」を行なうとき
② 既に日本で就労している外国人(高度人材の該当基準を満たす場合)が在留期間更新のために、「在留期間更新許可申請」を行
なうとき
③ 既に日本で就労している外国人(高度人材の該当基準を満たす場合)が転職などにより、それまでの在留資格を変更するため
に、「在留資格変更許可申請」を行うとき
以上、各申請に関して、詳細や申請用紙は、1ページ冒頭のリンク先記載、法務省の 【④ 高度人材・申請書類書式】 をご覧下さい。
若松絵里
東京入国管理局届出済申請取次行政書士
社会保険労務士
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