蜀鶏を活用した「にいがた地鶏」の作出 宮腰雄一・本間紀之1・鈴木ひろみ2 新潟県農業総合研究所畜産研究センター・新潟農業振興事務所1 ・農業総合研究所食品研究センター2 Breeding of "Niigata-Jidori" for of high quality niigatanative 1 crossbred TOMARU chicken Yuichi MIYAKOSHI , Noriyuki HONMA Niigata meat and Hiromi SUZUKI Agricultual Reserch Institute Livestock Reserch Center Niigata 2 Agricultual Reserch Institute Food Reserch Center Niigata Agricultural Promotion Office 要約 新潟県として特色のある地鶏を作出するために、当県原産である蜀鶏を原種鶏とし、名 古屋種及びシャモ、ロードアイランドレッド、横斑プリマスロックを交配した8種の三元 交雑鶏を作出した。これらの発育性や肉質を調査するために飼養要求率や解体成績、理化 学検査を実施した。特に浅胸筋中のイノシン酸を含む核酸関連物質及びグルタミン酸含量 をもとに3種の交雑鶏を地鶏候補鶏として選抜した。この3種の候補鶏とブロイラーとの 対比較による官能評価試験を実施したところ、最もグルタミン酸含量の多い(蜀鶏×名古 屋種)×横斑プリマスロックの三元交雑鶏が胸肉、もも肉スープともに高い評価が得られ、 味、香り、歯ごたえの良い地鶏として選出された。この地鶏は「にいがた地鶏」と命名さ れた。 はじめに 国民の食生活の向上により消費者ニーズも多様化し、安全でおいしい高品質食品への 志向が強まってきている。そのため肉用鶏生産においても日本鶏等を用いた地鶏等や銘柄 鶏の生産が全国で多く取り組まれ、その生産量も年々増加する傾向にある7)8)。また、食 品の安全性に対する関心の高さと併せて、地鶏は消費者の自然志向により平飼いのような 自然に近い環境下で飼育されたものや特色ある鶏種が高く評価され、その生産方法等の表 示を適正化するために、平成 11 年6月に「特定JAS規格」が定められた。 新潟県では、ブロイラー飼養戸数は平成 15 年現在で 14 戸と少ないものの、鶏肉生産量 は県内消費量の概ね 85 %に推移し、県内消費量のほとんどが県内生産で賄われている。 消費者ニーズがより安全でかつ安心できる農畜産物へと変化しているため、現在のブロイ ラー業界は従来の低コスト大量生産だけでなく、地鶏や銘柄鶏を取り入れた商品の多様化 による経営戦略に変化してきており、県内業界も例外ではなくブロイラーとは異なる鶏種 -1- の取扱要望があった。 一方、生産面では地域条件を活かした多様な経営体の育成が課題であり、所得機会の充 実や地域の活性化を図るために地域特産品の開発・振興が望まれている。新潟県には特定 JAS規格に適応するような地鶏がいないことから、当県独自の特産鶏としての地鶏の作 出が強く要望された。 当畜産研究センターにおいて保護・増殖を目的に飼養している「蜀鶏」は、新潟県原産 の大型の日本鶏で、東天紅・声良と並んで三長鳴鶏としても有名であり、力強い張りのあ る鳴き声が特徴で、昭和 14 年に天然記念物に指定されている。こうした背景の中で、地 域の特色を十分出せる素材である「蜀鶏」を活用した高品質肉用鶏としての地鶏を作出する に至った。また、全国の地鶏や銘柄鶏は 180 種以上も存在するが、在来種のみの血統で交配 されている地鶏はその1割にも満たない。「蜀鶏」は大型鶏であるが、その発育は遅く晩熟型 の鶏であり、産卵率も低い。そのため生産性を考慮し、蜀鶏を父の父とした在来種のみを 交配した三元交雑鶏を作出することとした。また、開発については、生産性だけでなく、歯ご たえや味等の品質に特色を持たせるために、うま味成分を選定基準として用いた高級食材として の地鶏づくりをコンセプトに、新潟大学及び民間企業との共同研究により開発を行った。 材料及び方法 試験1:地鶏候補鶏の作出 (1)供試鶏 作出する地鶏は三元交雑鶏とし、交配に利用した在来種は当センターで飼養している名 古屋種(Ng)、ロードアイランドレッド(RIR)、シャモ(G)、横斑プリマスロック(BP) の4品種である。三元交雑種鶏の雄鶏は蜀鶏( T)の雄と他4品種の雌の交配により作出 し、雌鶏も上述の4品種とし、以下8通りの組合せの三元交雑鶏を作出し発育性能試験に 供した。①(T × Ng)× RIR、②(T × Ng)× G、③(T × RIR)× G、④(T × BP) × G、⑤(T × BP)× Ng、⑥(T × G)× Ng、⑦(T × Ng)× BP、⑧(T × G)× BP。 (2)飼養管理方法 供試鶏の管理は、餌付けから 28 日齢までは電熱バタリー内で、以降 130 日齢まで中大 雛群飼ケージ内で行った。飼料は不断給餌とし、21 日齢まではブロイラー前期飼料(CP22 %、ME3,050 kcal/kg)を、それ以降はブロイラー仕上げ飼料(CP21 %、ME3,100 kcal/kg) を給与した。中大雛群飼ケージの飼育密度は6羽/0.56 ㎡であった。 衛生処置としてふ化日にマレック病生ワクチンを皮下注射により投与し、4日齢及び 26 日齢にニューカッスル病・鶏伝染性気管支炎混合生ワクチンを2回飲水投与した。また 27 日齢に伝染性ファブリキウス嚢生ワクチンを飲水により投与し、 28 日齢に鶏痘液状生ワ クチンを翼膜に穿刺接種した。 (3)性能調査 ①発育成績 8種の組合せによる供試鶏について、28 日齢から2週毎に体重及び飼料摂取量を測定 し、飼料要求率は 28 日齢から 110 日及び 130 日齢までの飼料摂取量/増体量から算出し -2- た。 ②解体成績 各種供試鶏の雄5羽、雌5羽について、それぞれ 110 日齢、130 日齢で屠殺解体し、皮 付き胸肉、皮付きもも肉、ささみ重量を測定した。 (4)理化学評価 ①水分、粗蛋白質、粗脂肪の分析 130 日齢の各種供試鶏について、雌5羽、雄5羽の浅胸筋の水分及び粗蛋白質、粗脂肪 を定法により測定した6)。すなわち水分は皮、皮下脂肪を除去後、良く細切し 135 ℃で加 熱乾燥し測定した。粗蛋白質はケルダール法により全窒素量を測定し算出した。粗脂肪は 水分測定後の試料を円筒濾紙に入れソックスレー抽出器に移し、エーテル環流により抽出 し測定した。 ②剪断力価及び加熱損失率 剪断力価は、ビニール袋に試料を入れ 70 ℃の水槽内で加熱後、肉片を取り出し剪断力 計で測定した。加熱損失率は、同様に 70 ℃水槽内で試料を加熱し、冷却後ビニール袋か ら取り出し肉汁を取り除いた後、重量測定し、加熱前重量との差から算出した6)。 ③肉色 肉色は解体直後に、色彩計により浅胸筋遠位側及び大腿二頭筋のそれぞれ5箇所を測定 し平均値を得た。 ④呈味関係成分 藤村らの報告に従い、130 日齢時の浅胸筋中のイノシン酸を含む核酸関連物質量及びグ ルタミン酸含量を測定した4)。分析試料は放血屠殺後、直ちに採取した浅胸筋を液体窒素 内で急速冷凍したものを用いた。なお、分析に供した供試鶏は各種組合せ雌雄5羽づつと し、核酸関連物質及びグルタミン酸は4℃下で 24 時間熟成後、高速液体クロマトグラフ ィーで分析した。鶏肉はアデノシン三リン酸(ATP)からイノシン酸( IMP)への移行が 早いため、その間の総量を呈味に関与するイノシン酸-核酸関連物質量とした。 試験2:官能評価による地鶏の作出 (1)供試鶏 試験1により選抜された地鶏候補鶏3種類の雌雄及びブロイラーを官能試験に供した。 なお、地鶏候補鶏の雄は 110 日齢、雌は 130 日齢とした。 (2)官能評価 ①官能評価試験 地鶏候補鶏3種類の雄及び雌の胸肉、もも肉をそれぞれブロイラーの胸肉、もも肉を対 照とし5段階の官能評価を行い、シェッフェの対比較により解析を行った5)。評価には図 1の用紙を用い、香り、味、歯ごたえ、ジューシーさ、総合評価について行った。 1評価に対するパネラー数は当センターの職員 12 ~ 24 名であった。なお、パネラーは 官能評価試験を3回以上経験しているもので行い、実施時間は午後3時とした。 また、上述と同様に新潟大学においても同様の官能評価試験を実施した。 -3- 官能評価試験シート(胸肉) 1回目・2回目 氏名 , 歳 1 最初にA(試験)を、次ぎにB(対照)を食べ、Bに比べてA試料の香り、味、歯ご たえ、ジューシーさ、総合評価のそれぞれについてお答えください。 B(対照)に比べて ① Aの香りは? 弱い やや弱い 差がない やや強い 強い -2 -1 0 1 2 わるい ややわるい 差がない やや良い 良い -2 -1 0 1 2 柔らかい やや柔らかい 差がない ややかたい かたい -2 -1 0 1 2 ② Aの味は? ③ Aの歯ごたえは? ④ Aのジューシーさは? パサパサ ややパサパサ 差がない ややジューシー ジューシー -2 -1 0 1 2 ⑤ Aの総合評価は(全体的に)? わるい ややわるい 差がない やや良い 良い -2 -1 0 1 2 2 AとBに違いがありましたか? 3 あなたはAとBのどちらを好みますか? 4 あなたはAとBのどちらのかたさ を好みますか? 5 ある ない A B A B 試料について食べた感想を自由に書いてください。 ご協力有り難うございました 図1 官能評価シート -4- ②試料の調整法 ア 胸肉の評価 24 時間熟成した皮なしの浅胸筋を大きさ及び厚さが同等となるよう調整し試料とした。 各試料は重量比5倍量の3%食塩水に1時間浸した後、ペーパータオルで軽く水切りをし、 ホットプレートで 10 分間加熱し両面を焼いた。ホットプレートは出力1 kW で最強に設 定し、表(皮に近い方)から片面づつ、3分、3分、2分、2分と繰り返し、合計10分 加熱し、加熱肉の表面を削ぎ、1 cm 角に切断し室温になったものを官能検査に供した。 イ もも肉の評価 24 時間熟成した皮付きもも肉を肉重量に対し 1.5 倍量の水から2時間煮込んだ。初めは 強火とし沸騰後、弱火で煮込み、途中で灰汁や油をとり、水分が蒸発したら適宜加えた。 2時間後、煮汁が肉重量の 1.5 倍量となるよう再度調整し、食塩濃度が 0.4%となるよう 添加したスープを暖かいうちに2mlづつ分注し官能検査に供した。 ③官能評価試験2 ホテルNの調理師により同様の地鶏候補鶏3種類について、もも肉の網焼きを順位法に より官能評価を実施した。調査項目は鶏らしさ、味、固さ、ジューシーさ、総合評価で行 った。 結果及び考察 試験1:地鶏候補鶏の作出 (1)発育成績 8種の組合せにおける 130 日齢時の生体重を図1に示した。体重は雌雄ともに(T × G) × BP で最も多かった。雌鶏の組合せ毎に生体重をみた場合では、横斑プリマスロックを 雌鶏に利用した組合せが大きく、次いで名古屋種、シャモ、ロードアイランドレッドの順 であった。よって発育には血液割合で 50 %となる雌鶏による差が大きいと判断された。 また飼料要求率も概ね同様の傾向を示し、横斑プリマスロック<名古屋種<シャモ=ロー ドアイランドレッドの順で高くなった(図3)。 -5- 3,000 ♂ ♀ 体重(g) 2,500 2,000 1,500 1,000 TNgRIR TNgG TRIRG TBPG TBPNg TGNg TNgBP TGBP 図2 各種交雑鶏の生体重(130日齢) ♂ ♀ 飼料要求率 6 5 4 3 TNgRIR TNgG TRIRG TBPG TBPNg TGNg TNgBP TGBP 図3 各種交雑鶏の飼料要求率(130日齢) (2)解体成績 生体重の最も少なかった(T × Ng)× RIR を除いた7種の解体成績を表1に示した。各 種間に差はあるものの、(T × BP)× Ng の差が最も大きく、歩留の低い結果となった。 -6- 表1 各種交雑鶏の解体成績(生体重比%) 部 位 雌雄 TNgG TRIRG と体重 ♂ ♀ ♂ ♀ ♂ ♀ ♂ ♀ 78.4 79.7 14.0 15.6 20.6 20.6 3.3 3.7 79.8 78.8 14.0 14.8 19.4 20.2 3.5 3.8 胸 肉 もも肉 ささみ TBPG TBPNg TGNg 78.3 79.0 14.3 16.1 19.6 20.6 3.5 3.8 80.8 75.2 12.7 13.4 20.2 18.4 3.3 3.4 73.4 74.2 11.2 13.3 20.9 18.8 3.0 3.3 TNgBP TGBP 77.2 79.2 13.9 15.4 21.2 19.0 3.3 3.4 77.3 76.6 12.6 14.8 20.7 17.7 3.4 3.7 (3)肉質検査 ①一般成分 胸肉中の水分、粗蛋白質、粗脂肪含量ともに各組合せ間の差は認められなかった(表2)。 藤村らは比内地鶏とブロイラーで水分と蛋白質に差が認められたが、一般成分は成長速度 ほどの差はなく、その差は小さいと報告している3)。本試験の結果からも成長速度に大き な差がない場合は、一般成分も大きな差がないことが確認された。 表2 各種交雑鶏の浅胸筋中の一般成分 項 水 目 分(%) 粗蛋白質(%) 粗 脂 肪(%) 雌雄 TNgG TBPNg TGNg TNgBP TGBP ♂ ♀ ♂ ♀ ♂ ♀ 72.2 71.6 26.2 26.0 1.2 0.9 72.7 72.2 26.6 26.1 1.0 1.6 72.4 72.2 25.6 25.7 1.2 1.7 72.2 72.8 26.1 25.5 1.5 1.1 73.0 72.4 25.7 25.7 1.7 2.3 ②理化学検査 加熱損失率に組合せ間の差は見られなかった。しかしブロイラー(雌のみ)と比較した 場合、明らかに地鶏の保水性が高いことが伺えた。物性においては(T × G)× BP が有 意にかたく、他の組合せ間の差は認められなかった(表3)。ブロイラーは最も低い水準 にあり、地鶏に比べ歯ごたえが少ない傾向を示唆した。 -7- 表3 各種交雑鶏のかたさと加熱損失率 項目 剪断力価 加熱損失率(%) 胸 肉 もも肉 雌雄 TNgG TBPNg TGNg TNgBP TGBP ブロイラー ♂ ♀ 2.2 1.3 1.6 2.7 1.5 2.3 1.9 2.8 3.7 3.8 - 1.3 ♂ ♀ ♂ ♀ 17.9 17.7 25.4 24.3 16.9 17.2 26.0 26.0 16.8 16.0 23.5 25.0 16.2 17.4 24.2 27.2 16.8 16.8 25.6 24.2 24.3 24.5 26.5 26.8 ③肉色 各組合せ間に有意な差はないものの、ブロイラーと比較し浅胸筋では明るさを示すL値 が高く、大腿二頭筋では赤色度を示すa値が高かった(表4)。 表4 各種交雑鶏の肉色 項目 浅胸筋 雌雄 雌雄 TNgG TBPNg TGNg TNgBP TGBP ブロイラー ♂ L a b L a b L a b L a b 43.5 4.3 9.2 43.0 4.0 8.6 50.0 10.2 -1.1 47.2 11.7 2.5 47.7 5.2 4.8 46.4 4.6 6.6 48.8 11.2 -3.3 46.6 12.9 0.1 46.8 5.3 4.8 45.7 5.2 7.0 46.8 12.3 -1.5 47.2 12.1 1.2 43.9 3.4 9.0 43.8 4.2 9.6 47.3 10.5 0.0 44.7 12.4 5.9 46.3 4.9 5.5 46.0 4.3 6.5 48.0 12.3 -2.7 48.5 12.5 0.4 38.5 4.1 7.6 39.5 4.2 7.6 54.0 8.7 -2.8 51.0 9.6 1.3 ♀ 大腿二頭筋 ♂ ♀ (4)呈味関係成分 藤村らは比内鶏とブロイラーの官能評価の差から、鶏肉のおいしさは遊離アミノ酸や核 酸関連物質等が関与しており、イノシン酸やグルタミン酸がそのうまみ成分の中心である と報告している1)2)。 浅胸筋中のイノシン酸を含む核酸関連物質量(ATP ~ IMP)及びグルタミン酸含量を それぞれ図4及び図5に示した。各組あわせにおいて大きな差を示す組合せも認めらた。 核酸関連物質量は(T × Ng)× G で多く、次いで(T × G)× BP、(T × Ng)× BP の順 に多かった。グルタミン酸含量は(T × Ng)× BP で多く、(T × BP)× G が少ない結果で あった。 以上の結果よりうま味成分である核酸関連物質量及びグルタミン酸含量の多い上位3種 類の組合せ(T × Ng)× G、(T × Ng)× BP、(T × G)× BP を地鶏の候補鶏とし、官能 評価を行った。 -8- ♂ ♀ ATM~IMP(μmol/g) 15 12 9 6 3 0 TNgRIR TNgG 図4 TBPG TBPNg TGNg TNgBP TGBP 浅胸筋中の核酸関連物質量 ♂ ♀ グルタミン酸(μg/g) 150 120 90 60 30 0 TNgRIR TNgG TBPG TBPNg TGNg TNgBP TGBP 図5 浅胸筋中のグルタミン酸量 試験2:官能評価による地鶏の作出 (1)官能評価結果 地鶏候補鶏とブロイラー肉に差があるかを二点識別法で評価した場合、その違いは明ら かであり、これまでの報告と一致した 4)。対比較による官能評価結果については焼いた胸 肉(雌)を図6に、もも肉のスープ(雌)を図7に示した。図中では対照としたブロイラ ーをゼロ点とし、各候補鶏の評点を示した。胸肉では、いずれの候補鶏においても味と歯 -9- ごたえでブロイラーよりも好まれる傾向が認められた。よって二点識別法によるブロイラ ーと地鶏の違いはこの2点が大きいことが伺える。藤村らは地鶏とブロイラーの官能評価 の違いについて、第1要因が歯ごたえで、次いで味と報告している。もも肉スープでは3 種にそれぞれ特徴があり、(T × Ng)×Gでは香りが強く、逆に(T × G)× BP では香り が弱い。(T × Ng)× BP は、味、うま味、コクとバランスの良さが現れた。 総合評価 としては、胸肉では、香り、味、歯ごたえともに(T × Ng)× BP で高く評価され、総合 評価も高い結果となった。もも肉スープの総合評価においても、味、うま味、コクで胸肉 と同様に(T × Ng)BP が高く評価され、総合評価も高い結果となった。 食肉の呈味には遊離グルタミン酸とイノシン酸が影響するとの報告がある8)。また、藤 村らは地鶏とブロイラー肉の味の差はイノシン酸量が影響しており1)、イノシン酸とグル タミン酸の量及びバランスが鶏種間の味の差の一因であると報告している2)3)。本試験で は焼いた胸肉ともも肉を煮出したスープで共にバランスの良いおいしさを示した組合せは (T × Ng)× BP で、イノシン酸だけでなく、特にグルタミン酸含量の多い組合せであっ た。よってうま味の相乗効果にはグルタミン酸の影響が大きいことが考えられ、これまで の鶏肉のおいしさを評価する報告を支持するものであった3)。 新潟大学で行った官能評価結果も同様に(T × Ng)× BP の組合せの評価が最も高く、 2機関で結果が一致した。また、ホテルNにおける順位法による評価も同様の結果で、鶏 らしさ、味、ジューシーさ、総合において(T × Ng)× BP が最も評価が高かった。 これらを総合し、新潟県産地鶏普及推進協議会において(蜀鶏×名古屋種)×横斑プリ マスロックを新潟県産地鶏として選出した。 香り 1 TNG TGB TNB 0.5 0 総合 味 -0.5 -1 ジューシーさ 歯ごたえ 図6 胸肉(雌)の官能評価 - 10 - 香り 1 0.5 総合 0 味 -0.5 TNG TGB TNB -1 コク うま味 肉様の味 図7 もも肉スープ(雌)の官能評価 (2)今後の展望 作出された地鶏を普及させるための飼養管理のマニュアル化や生産・流通体制の整備を 図る必要がある。また、ブロイラーの2倍以上の飼育期間を要するため、よりコスト低減 に向けた飼養方法の検討やうま味を向上させる飼料の開発等も必要と思われる。 なお、本研究により作出された地鶏は平成16年3月に「にいがた地鶏」と命名された。 謝辞 本研究による地鶏の作出には、各方面の方々から多大なご協力により遂行された。特に、 地鶏の呈味関係成分の分析や官能評価試験には新潟大学の藤村助教授をはじめ、多くの学 生諸氏から協力いただき感謝致します。また、官能評価試験に協力を頂いたホテルNの調 理師の皆様、並びに新潟県産地鶏普及推進協議会の立ち上げを始め、地鶏の解体・流通等 で多大な貢献を頂いた(株)ニイブロ様及び地鶏の生産等に協力を頂いた黒川村に深謝致 します。 引用文献 1)Fujimura,S.Chemical analysis and sensory evaluation of free amino acids and 5'-inosinic acid in meat of Hinai-dori, Japanese native chicken. -Comparison with broilers and layer pullets. Anim. Sci.Technol.(Jpn.),65:610-618.1994. 2)Fujimura,S.Identification of taste-active components in the chicken meat extract by omission test -Involvement of glutamic acid, IMP and potassium ion. Anim.Sci.Technol.( Jpn.) ,66:43-51.1995. - 11 - 3)藤村忍、門脇基二.鶏肉の呈味の評価および飼料栄養との関係、日本畜産学会北陸支 部会報(総説)No.77、11-16、1998 4)藤村忍、西藤克己、森尚之、鈴木ひろみ、山内章江、原田直人、橋口尚子、今井士郎、 石橋裕美子、清川真千子、堀口恵子.鶏肉・鶏卵の化学的・物理的及び官能的手法による 解析並びに解析結果の品質改善への活用に関する研究.平成 11 年度畜産物需要開発調査 研究事業報告書.農畜産業振興事業団.55-79. 2000 5)古川秀子.おいしさを測る 食品官能検査の実際.幸書房.東京.1994 6)農林水産省畜産試験場加工部編.鶏肉の品質評価に関する研究実施要領.高品質肉用 鶏研究会.1996 7)日本養鶏協会編.地鶏マニュアル.(社)日本養鶏協会.2001 8 ) Nishimura,T.Components contributing to the improvement storage.Agric.Biol.Chem.,525:2323-2330.1988. 9)全国高品質肉用鶏ガイドブック.高品質肉用鶏研究会.1991 - 12 - of meet taste during
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