「エネルギー本位制のすすめ」 工藤 憲男 (西日本経済研究所所長) 1) 工業化のハンデキャップ 為替レートは経済力の格差を埋めるハンデキャップである。西独と東独が合併した際通 貨統合を行ったため、ドイツ経済はしばらく低迷した。 工業化が進展すると労働付加価値が上昇するので賃金も上昇する。工業化が遅れていた 東独と西独が合併した際通貨統合を行ったため、労働付加価値の低い東独の賃金が西独並 みに上昇したため、東独の企業は赤字に苦しみ、倒産に追い込まれる企業が増えた。 東独の労働生産性の上昇に成功したドイツは、欧州統合でも通貨統合を選択した。北欧 の文化と南欧の文化の違いに気づかなかったため、ユーロが危機に陥っている。 食料と飼料の自給率を上げるには、工業製品との対比で労働付加価値が低い農業の給与 に補助を行うべきである。同様のことは人手不足に悩んでいる福祉部門でもいえることで、 福祉関連風の収入単価を上げるより、給与に補助を行う方が福祉費の増加を緩和できる。 2)東アジアの基軸通貨の必要性 赤字国債を担保に通貨を発行する「国債本位制」の米ドルや、償還不履行のドミノが起 きかねない南欧を抱えるユーロに代わる安全な東アジア基軸通貨を発行すべきである。具 体的には、東アジア各国が「石油備蓄債」でだぶついている米ドルの洪水を収拾し、各国 の石油備蓄債を担保に、石油と兌換可能な東アジア基軸通貨をアジア開銀で発券する。 インフレよりも恐ろしいデフレの回避は、エネルギーの価格の安定的な上昇が必要であ る。金利分だけ目減りするマネーの減価に見合うようエネルギー価格を上昇させるには、 「備蓄性」が最も高い石油エネルギーの延び地球が備蓄が必要である。金融機関は金庫の 中の石油債が金利分上昇し続けることを望むので、エネルギー価格の安定的な上昇が可能 となる。 3)東アジアエネルギー共同体の構築 竹島や尖閣列島の領有権の争いは、東アジアをエネルギー共同体にする以外に解決でき い。石炭から石油や天然ガスの流動体にエネルギーが転換した時点で、国境の概念を変え ねばならない。鉱脈が通じておれば、国境を越えて吸い上げることができるからだ。 ベルリンの壁が崩壊する前に、東独と西独の間に天然ガスパイプラインが付設されてい た。欧州全土にパイプラインが張り巡らせられた時点で、欧州共同体が出来上がったので ある。 今井堅一氏が日韓ロパイプラインを提唱しているが、北方 4 島領有問題の解決には環日 本海パイプラインの敷設が有効である。環黄海パイプラインの付設を日中韓運命共同体化 の切り口にすべきである。
© Copyright 2024 Paperzz