日本 Archaea 研究会 第 27 回講演会 要旨集

日本 Archaea 研究会
第 27 回講演会
要旨集
期 日 : 平成 26 年 7 月 25 日(金)・26 日(土)
会 場 : 立命館大学 びわこ・くさつキャンパス
エポック立命 21 エポックホール
(滋賀県草津市野路東 1-1-1)
日本 Archaea 研究会第 27 回講演会プログラム
7 月 25 日(金)
13:00-13:05
開会の挨拶(幹事)
座長:横川隆志(岐阜大学)
13:05-13:45
01
「超好熱性アーキア Thermococcus kodakarensis RNA polymerase の X 線結晶構造」
○平田章 、Sung-Hoon Jun 、金井保 、Thomas J. Santangelo 、今中忠行 、
1
村上勝彦
2
3
4
5
2
( 愛媛大院・理工、 ペンシルバニア州立大・生化分生、 京大院・工、 コロラ
1
2
3
4
ド州立大・生化分生、 立命・生命)
5
02
「超好熱菌 Thermococcus kodakarensis の転写制御因子遺伝子の破壊」
○福田青郎 、内田圭亮 、Abdul Aziz Jaziri 、石井尊 、岩前幸三 、金井保 、
1
1
跡見晴幸 、今中忠行
2
1
1
1
2
1
( 立命・生命、 京大院・工)
1
2
座長:福居俊昭(東京工業大学)
13:45-14:25
03
「超好熱菌 Thermococcus kodakarensis のストレス応答に関する転写制御因子の
解析」
○内田圭亮 、福田青郎 、石井尊 、宮崎恵里 、三好史高 、金井保 、
1
1
跡見晴幸 、今中忠行
2
1
1
1
2
1
( 立命・生命、 京大院・工)
1
04
2
「超好熱菌 Thermococcus kodakarensis の低温誘導機構」
○西川諒 、籠谷さやか 、Tatit Novi Sahara 、秀瀬涼太 、今中忠行 、
1
藤原伸介
1
1
1
( 関学大院・理工、 立命・生命)
1
2
14:25-14:40 休憩(15 分)
i
1
2
座長:平田章(愛媛大学)
14:40-15:20
05
「Sulfolobus tokodaii 由来 tRNA アンチコドンヌクレアーゼ VapC の基質認識」
○横川隆志、関本文音、松浦由佳、大野敏、西川一八
(岐阜大・工)
06
「好熱好酸性アーキア Thermoplasma acidophilum の DNA 複製ヘリカーゼ複合体
解析」
○尾木野弘実 、石野園子 、Gyri T. Haugland 、Nils-Kåre Birkeland 、
1
1
神田大輔 、石野良純
3
2
2
1
( 九大院・農、 University of Bergen、 九大・生医研)
1
2
座長:河原林裕(九州大学)
15:20-16:00
07
3
「T. kodakarensis Hef タンパク質の天然変性領域による他因子との相互作用」
○石野園子 、山上健 、古寺哲幸 、安藤敏夫
1
1
明秀一 、石野良純
4
2
2, 3
、天野剛志 、合田奈都子 、廣
4
4
1
( 九大院・農、 金沢大・理工・バイオ AFM 先端セ、 金沢大・理工・数物科学、
1
4
08
2
3
名大院・創薬)
「超好熱性アーキア由来ヘリカーゼを用いた PCR 反応特異性の増強」
○藤原綾子、藤原伸介
(関学大院・理工)
16:00-16:15 休憩(15 分)
16:15-16:55
09
座長:石野園子(九州大学)
「超好熱菌 Thermococcus kodakarensis におけるポリアミンの細胞内局在及び濃
度効果」
○井上貴央、中西千穂、岡田和真、藤原伸介
(関学大院・理工)
10
「分岐ポリアミン合成をめぐる謎」
○大島泰郎
(共和化工・環境微生物研)
ii
座長:佐藤喬章(京都大学)
16:55-17:35
11
「好塩性アーキアに特有のヘムタンパク質 PitA の機能解析」
○小杉直揮、須田一成、田中達、吉松勝彦、藤原健智
(静岡大院・理)
12
「構造ゲノム学手法を用いた FeGP コファクター生合成酵素の機能解析」
○嶋盛吾
1, 2
( マックスプランク陸生微生物学研究所、 JST さきがけ)
1
2
17:35-17:50 総会(司会:幹事)
18:00-20:00
懇親会(ユニオンスクエア2F「ユニオンフードコート」)
7 月 26 日(土)
9:30-10:10
13
座長:福田青郎(立命館大学)
「ゲノム情報中には見出されない代謝系の実験的同定、UDP-GlcNAc 生合成系を
例に」
○河原林裕
(九大院・農、産総研・健康工)
14
「Thermoplasma acidophilum より見出された第3のメバロン酸経路」
○邊見久 、生明靖裕 、服部愛 、西村泰斗 、川出洋 、吉村徹
1
1
1
1
2
1
( 名大院・生命農、 東農工大院・農)
1
2
座長:邊見久(名古屋大学)
10:10-10:50
15
「Thermococcus kodakarensis におけるピルビン酸/アミノ酸酸化経路の解析」
野原健太 、○折田和泉 、中村聡 、今中忠行 、福居俊昭
1
1
1
2
( 東工大院・生命理工、 立命・生命)
1
2
iii
1
16
「超好熱性アーキア Thermococcus kodakarensis における tryptophan synthase
β-paralog trpB2 の機能解明」
○肥山貴圭 、佐藤喬章
1
1,3
、今中忠行
2,3
、跡見晴幸
1,3
( 京大院・工、 立命・生命科学、 JST・CREST)
1
10:50-11:10
2
休憩(20 分)
座長:黒沢則夫(創価大学)
11:10-11:50
17
3
”Response of methanogenic archaeal community in paddy field soil to the
managements of winter-flooding, free air CO2 enrichment (FACE) and
paddy-upland rotation.”
○Dongyan Liu1, Chika Suekuni1, Kazunori Akita2, Toyoaki Ito2, Masanori Saito2,
Takeshi Watanabe1, Kanako Tago3, Masahito Hayatsu3, Takeshi Tokida3,
Hidemitsu Sakai3, Hirofumi Nakamura4, Yasuhiro Usui3, Toshihiro Hasegawa3,
Hiroki Ishikawa1, Mizuhiko Nishida5, Kazunari Tsuchiya5, Tomoki Takahashi5,
Susumu Asakawa1
(1Graduate School of Bioagricultural Sciences, Nagoya University, 2Graduate
School of Agricultural Sciences, Tohoku University,
3
National Institute for
Agro-Environmental Sciences, 4Taiyokeiki Co,. Ltd, 5NARO Tohoku Agricultural
Research Center)
18
「Vulcanisaeta 属アーキアの生物地理学的考察について」
○伊藤隆 、高品知典 、大熊盛也
1
2
1
( 理研・BRC-JCM、 東洋大・生命)
1
11:50-12:30
19
2
座長:浅川晋(名古屋大学)
「異なる泉温および溶存元素濃度を示す酸性イオウ泉間でのアーキア群集構造の
比較」
佐藤智子、渡辺啓子、山本英夫、山本修一、○黒沢則夫
(創価大・工)
iv
20
「未培養好熱性アーキア Caldiarchaeum subterraneum がもつユビキチン様遺伝
子の機能解析」
○金井保 、藤本理夏子 、徳原将弘 、布浦拓郎 、橘高瑞奈 、高木善弘 、高見
1
1
英人 、高井研 、跡見晴幸
2
2
1
1
( 京大院・工、 (独)海洋研究開発機構)
1
12:30-12:35
2
閉会の挨拶
(幹事)
v
2
1
2
超 好 熱 性 ア ー キ ア Thermococcus kodakarensis RNA polymerase の X 線 結 晶 構 造
○平田 章1、Sung-Hoon Jun2,、金井 保3、Thomas J. Santangelo4,、今中 忠行5、村上 勝彦2 愛大院・理工、2ペンシルバニア州立大学・生化分生、3京大院・工、4コロラド州立大学・生化分生、
1
5
立命・生命 アーキアは 1 種類の RNA ポリメラーゼ(RNAP)のみで転写を行っており、アーキアの RNAP は構造・
機能的に真核生物の RNA ポリメラーゼ II (PolII )と非常によく似ていることが知られている(1,2)。生体
外において、アーキアの RNAP は TBP(TATA box binding protein)および TFB(transcription factor B)
の二つの基本転写因子のみで転写開始前複合体を形成する。まず、TBP がプロモーター上の TATA ボ
ックスに結合し、次に TFB の N 末端側のドメインが BRE(TFIIB recognition element)と TBP に結合す
る。TFB の C 末端側にある B-フィンガードメインがアーキア RNAP の内部と直接結合することによ
って、RNAP の転写開始前複合体がプロモーター領域に形成される。それに対して、真核生物 PolII は、
多種類の基本転写因子群(TFIIA,TFIIB,TFIID(TBP を含む),TFIIE,TFIIF,TFIIH)によって数メ
ガダルトン以上もの巨大な転写開始前複合体をプロモーター上に形成し,さらに生体内においてはク
ロマチンの再構成や転写制御を行うのに重要なメディエーター複合体を伴っている。アーキアの RNAP、
TBP および TFB は真核生物の PolII、TBP および TFIIB と相同性があり、アーキアの転写開始前複合
体は、真核生物の転写開始前
複合体をシンプルにしたもの
と捉えることができる。アー
キア・真核生物のマルチサブ
ユニット RNAP ファミリーは
「コア部分」とコアから突出
した「ストーク部分」で構成
されている (図1)。2008 年、
13 個のサブユニットで構成さ
コア部分
れたクレンアーキア Sulfolobus
図 1 出芽酵母 Pol II(左)と Tko RNAP(右)の分子リボンモ
solfataricus (Sso) RNAP の X 線
デル図 右上の概略図は各サブユニットを示している。
結晶構造が報告された(3)。Sso
RNAP の全体構造は、12 個の
サブユニットで構成された酵母由来 PolII の全体構造と類似しているため、アーキアと真核生物が同じ
共通祖先から分子進化したことを支持していた。Sso RNAP の RpoD サブユニットのドメイン 3 には、
構造因子として機能する鉄硫黄クラスターが存在していた。また、ドメイン 3 は多様化しており、鉄
硫黄クラスターを保持するのに重要なシステイン残基の有無によって、アーキアは 6 つのグループに
分けられる(4)。このようにクレンアーキア RNAP の構造情報を中心に、RNAP の機能進化と多様性に
ついての研究が進められてきたが、その一方で、11 個のサブユニットで構成されるユーリアーキア
RNAP の生化学的解析も精力的に行われている。そのため、最小のサブユニット構成であるユーリア
ーキア RNAP の構造情報が利用できれば、さらに、アーキア RNAP の転写研究を助長し、アーキアと
真核生物の転写システムに共通する基本原理の仕組みを明らかにすることができるかもしれない。そ
こで本研究では、Thermococcus kodakarensis (Tko) RNAP の X 線結晶構造を決定することにした。Tko
1
RNAP を従来どおりに Tko 菌体からカラムクロマトグラフィーにより精製すると、RpoE/RpoF から成
るストーク部分の欠落に付随して転写因子 TFE の部分欠落なども見られ、結晶化には不向きの不均一
Tko RNAP しか得られない。そこで、ΔrpoF 破壊株(RpoL の C 末端に6×His-tag)(5)から調製した Tko
RNAP にレコンビナント RpoF タンパク質および RpoE/RpoF 複合体を加えて均一な Tko RNAP を再構
成した。次に、市販の結晶化用のスクリーニングキットを用いて、Tko RNAP の結晶を作成し、3.4 Å
分解能の X 線回折データを放射光施設にて収集した。また、ドメイン 3 が新規な構造と予想される RpoD
と RpoL のレコンビナント複合体および RpoE/RpoF のストーク部分の複合体も単独に結晶化し、それ
らの X 線結晶構造を 1.6 Å および 2.3 Å 分解能で決定した。RpoD/RpoL、RpoE/RpoF、Sso RNAP、Pyrococcus
furiosus RpoA’’の構造情報を利用して、最終的に Tko RNAP の X 線結晶構造を 3.5 Å 分解能で決定した。
Tko RNAP は、11 個のサブユニットで構成されており、RpoE/RpoF のストーク部分が存在しているに
もかかわらず、RpoA’/RpoA’’の DNA 結合クランプが開いていた。Sso RNAP と PolII では、ストーク部
分がある場合、クランプが閉じた状態である。おそらく、Tko RNAP は転写開始前複合体や転写複合体
を形成している間にクランプの動的な開閉が起こっていると考えられる。また、Tko RNAP と PolII の
構造を詳細に比較した結果、PolII は Tko RNAP に存在しない挿入部分を進化的に獲得し、様々な転写
因子と相互作用できるようになったことで、高次生命現象発現のための複雑な転写制御システムを構
築したといえる。本発表では、Tko RNAP クランプの動的開閉機構、 PolII の特異的挿入部分による機
能変遷、TFE の構造的役割について焦点を当てる。また、Tko RNAP を用いた構造生物学的研究におけ
る今後の展開について言及したい。
参考文献 1.
A. Hirata, . & K. S. Murakami,. Archaeal RNA polymerase. Curr Opin Struct Biol 19, 724-31 (2009).
2.
F. Werner, & D. Grohmann, Evolution of multisubunit RNA polymerases in the three domains of life. Nat
Rev Microbiol 9, 85-98 (2011).
3.
A. Hirata, B. J. Klein, & K. S. Murakami, The X-ray crystal structure of RNA polymerase from Archaea.
Nature 451, 851-4 (2008).
4.
F. H. Lessner, M. E. Jennings, A. Hirata, E. C. Duin and D. J. Lessner, Subunit D of RNA polymerase from
Methanosarcina
acetivorans
contains
two
oxygen-labile
[4Fe-4S]
clusters:
implications
for
oxidant-dependent regulation of transcription, J. Biol. Chem 287, 18510-18523 (2012)
5.
A. Hirata, T. Kanai, T. J. Santangelo, M. Tajiri, K, Manabe, J. N. Reeve, T. Imanaka, and K. S. Murakami,
Archaeal RNA polymerase subunits E and F are not required for transcription in vitro but a Thermococcus
kodakarensis mutant lacking subunit F is temperature-sensitive, Mol.Microbiol.70, 623-633 (2008)
2
超 好 熱 菌 Thermococcus kodakarensis の 転 写 制 御 因 子 遺 伝 子 の 破 壊
○福田 青郎 1、内田 圭亮 1、Abdul Aziz Jaziri1、石井 尊 1、岩前 幸三 1、
金井 保 2、跡見 晴幸 2、今中 忠行 1
(1) 立命館大学 生命科学部 生物工学科、(2) 京都大学大学院 工学研究科
【研究背景・目的】生命は細胞内外の状況に応じて転写・翻訳を調節し、必要なタンパ
ク質を合成する。この転写調節は生命の定義の一つともいえる「恒常性維持」にとって
非常に重要であり、これまでに様々な生物の転写調節に関する研究報告がなされている。
しかしながら、始原菌の持つ転写制御因子の中で働きが明らかになっているものはほん
の一部であり、大部分の転写因子については不明な点が多い。超好熱始原菌
Thermococcus kodakarensis においても、ゲノム解析より約 80 個の転写制御因子の存在が
明らかになっているが、他の始原菌と同様にその働きが明確な転写制御因子はほんのわ
ずかである。そこで本研究では超好熱菌 T. kodakarensis を題材とし、遺伝子破壊により
各転写因子の細胞内における働きを解明することで、超好熱菌の転写調節について広範
囲の知見を得ることを目的とした。
【方法・結果】これまでに約 60 種類の転写制御因子について遺伝子破壊株作製を試み
た。その結果、43 個の転写調節因子について遺伝子破壊に成功し、15 個については遺伝
子破壊株が得られなかった。破壊できなかった遺伝子は、少なくとも今回の遺伝子破壊
株単離条件において生育に必須であると考えられた。またこれまでに得られた遺伝子破
壊株関してマイクロアレイ解析を行い、遺伝子破壊が転写制御に与える影響を解析するこ
とで、各転写調節因子の役割を推察した。本発表ではこれら遺伝子破壊株の性質について、
その一部を紹介する。
得られた破壊株の一つ ΔTK0169 株は野生株に比べ増殖速度と最終到達濁度の低下が
見られた。ΔTK0169 株のマイクロアレイ解析の結果、キチン代謝に関わる多くの遺伝
子で顕著な転写量の増加がみられた。そこで実際に野生株と ΔTK0169 株のキチンの分
解能の比較を行った結果、ΔTK0169 株ではキチン分解能が活性化していた。また、大
腸菌に大量発現させた組換え型 TK0169 タンパク質と、キチン代謝関連遺伝子のプロモ
ーター領域との EMSA(electrophoresis mobility shift assay)を行った結果、Protein-DNA
complex が確認できた。したがって TK0169 はキチン代謝関連遺伝子のプロモーター領
域に結合し、関連遺伝子の転写を広く負に制御していると予想された。
一方 ΔTK0697 株については、マイクロアレイ解析の結果、有機酸の取り込みに関す
る遺伝子(TRAP-type transporter)の転写量の増加(約 26 倍)が見られた。そこで、ピ
ルビン酸濃度改変培地での ΔTK0697 株の生育を野生株と比較したところ、最終到達濁
度が野生株よりも低下した。このことから、TK0697 がピルビン酸の取り込みに関与す
る可能性が示唆された。
3
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5
Fig. 1. MA-YT-Pyr ‚&4
KU216 ´# ΔTK0539 ´'Ãظñ
(●: KU216: ΔTK0539)
(A) 85(B) 93
4
超 好 熱 菌 Thermococcus kodakarensis の 低 温 で の 遺 伝 子 誘 導 機 構
○西川 諒 1, 籠谷 さやか 1, Tatit Novi Sahara1 秀瀬 涼太1, 今中 忠行 2, 藤原 伸介
1
(1 関西学院大院•理工, 2 立命館大・生命科学)
【研究目的】超好熱菌アーキアの Thermococcus 属は類縁菌である Pyrococcus 属に比べ、低い温度で
も生育する。Thermococcus kodakaraensis には Pyrococcus 属にはない多くのオルソログが存在し、その
いくつかは低温ストレス下で特異的に誘導される。これら低温誘導型遺伝子は低温ストレス下での適
応に重要な役割を果たすと考えられている。2 種類の TFB や PHR は低温誘導には関与しない(1)。T.
kodakarensis の低温誘導型 RNA ヘリカーゼ(TK0306)では SD 配列から開始コドンまでに存在するア
デニンに富む領域が制御領域であるが、アデニンに富む領域が、他の低温誘導型遺伝子の誘導に関与
しているかは不明である(2)。本研究で低温誘導型遺伝子の制御領域を精査し、低温誘導の一般的機構
の解明を目指した。
【結果と考察】T. kodakarensis の 60℃(低温)で高
発現する低温誘導型遺伝子をマイクロアレイ解析
でスクリーニングし、候補遺伝子 54 個中、低温誘
導性の高いものから 20 個の遺伝子の低温誘導性を
qRT-PCR で確認した。このうち 10 遺伝子で低温誘
導が確認され、これら遺伝子群の制御領域を比較し
たところ、RNA ヘリカーゼ(TK0306)と同様に、
図 超好熱菌の低温での遺伝子誘導 SD 配列から開始コドンまでの間にアデニンまたはチミンが連続した配列が 10 遺伝子全てに存在した。
超好熱性アーキアでは連続するチミンの配列は、転写終結領域(ターミネーター)として機能するこ
とが報告されている(3)。SD 配列から開始コドンまでの間に存在する連続したアデニンの数が少ない配
列 (AAAA など)は、温度が高くなるとターミネーターとして機能するが、低い温度では合成された
mRNA は DNA から遊離せず、転写終結が起こらないと予想される。低温誘導性のシャペロニン遺伝子
cpkA(TK0678)にも SD 配列から開始コドンまでにアデニンとチミンの連続配列(AAT)が存在する。
今回、この領域に注目し、耐熱性カタラーゼをレポーターとする実験系を用いて詳細に解析した。cpkA
の開始コドンまでに存在する AAT をグアニンの連続配列(GGG)に置換したところ、低温誘導性が消
失した。このことから、cpkA の低温誘導には SD 配列から開始コドンまでの間に存在する配列が重要
であることが明らかとなった。アデニンとチミンによる不安定な水素結合の連続が、高温で premature
termination を引き起こし、高温では発現しなくなる。その結果として低温での特異的発現が導かれて
いると考えられる。この配列を持たない低温誘導性遺伝子については、その誘導機構は不明である。
(1) Hidese, R. et al., Extremophiles 18, 573-588 (2014)
(2) Nagaoka, E. et al., J.Bacteriol., 195, 3442-3450 (2013)
(3) Santangelo, T.J., et al., J.Bacteriol., 191, 7102–7108 (2009)
5
Sulfolobus tokodaii 由 来 tRNA ア ン チ コ ド ン ヌ ク レ ア ー ゼ VapC の 基 質 認 識
○横川隆志、関本文音、松浦由佳、大野敏、西川一八 岐阜大学 工学部 化学・生命工学科 トキシン-アンチトキシン (TA) システムは、原核生物のストレス応答システムの一つと考えられ
ている。一般的に、トキシンはアンチトキシンと複合体を形成することで毒性が抑制されているが、
ストレスを受けた場合に、トキシンよりも不安定なアンチトキシンがプロテアーゼの作用を受けて失
われることでトキシンの毒性が発揮され、細胞死が誘導される。VapBC はこの TA システムに属するタ
ンパク質で VapC がトキシン、VapB がアンチトキシンである。この VapBC は現在同定されている TA
ファミリーの中で最大のファミリーで真正細菌、古細菌に広く見出されるが、その生物学的役割につ
いて、近年、Winther らは、赤痢菌 Shigella flexneri の VapC が開始 tRNAMet を特異的に切断し、タ
ンパク質合成を止めることを報告した。 本研究では、好酸好熱古細菌 Sulfolobus tokodaii (Sto) に見られる VapC が S. flexneri の
VapC と同様に開始 tRNAMet のみを切断するか検討することにした。まず、Sto VapB および VapC 遺伝
子をそれぞれ T7 プロモーター下流に配置し、C 末端にヒスチジンタグが融合される発現ベクターを
作製した。次に大腸菌 ER2566 株を用いて、それぞれのタンパク質を発現させ、Ni-NTA Agarose に
よって精製した。得られたタンパク質を用いて Sto 未分画 tRNA に対する切断活性を調べたところ、
Sto VapC は複数種類の Sto tRNA を切断すること、その活性が VapB により完全に阻害されることが観
察された。Sto VapC の tRNA に対する特異性を調べるために、21 種類の精製された大腸菌 tRNA を基
質として切断反応を行ったところ、tRNALeu(GAG) と tRNAPro(GGG) の2つの tRNA をよく切断すること
がわかった。このうち tRNALeu(GAG) を用いて、LC-MS により切断された RNA 断片の分子量を測定した
結果、Sto VapC は tRNALeu(GAG) を 37 位と 38 位の間で切断することがわかった。 tRNALeu(GAG) と tRNAPro(GGG) の切断部位周辺の塩基配列を比較すると 36 位の G と 37 位の m1G が共
通していた。そこで tRNALeu の変異体を作製して、Sto VapC の認識部位について調べることにした。
まず tRNALeu 転写物を調製し Sto VapC により切断されるか調べたところ、修飾された tRNA 同じ部位
で切断されていることがわかったので、37 位のメチル化の影響はそれほどないことがわかった。次に
36 位、37 位、38 位の変異体を作製して Sto VapC により切断されるか調べたところ、36 位の G、37
位の G を強く認識していることがわかった。また本来 Sto VapC により切断されない tRNAThr 転写物の
36、37 位を GG に置換したところ Sto VapC により切断されるようになったので、Sto VapC の主要な
認識配列は tRNA の 36 位、37 位の GG 配列であることが示された。 次に、Sto VapC が tRNA の全体構造を認識しているか調べるために、tRNALeu 転写物の D アームを
削除した tRNA 変異体を作製したところ、Sto VapC による切断を受けなくなった。このことは、Sto VapC が tRNA の全体構造を認識していることを示唆している。今後、Sto VapC が tRNA 構造のどの部
分を認識しているかについて詳細を明らかにしたいと考えている。 6
好熱好酸性アーキア Thermoplasma acidophilum の
DNA 複製ヘリカーゼ複合体解析
◯尾木野弘実 1、石野園子 1、Gyri Teien Haugland2、Nils-Kåre Birkeland2、神田大輔 3、石野良純 1
(1 九州大院・農、2 University of Bergen、3 九州大・生医研)
DNA 複製は全ての生物種にとって細胞増殖のために必須の過程であり、多種のタンパク質による厳
密に制御された反応によって進行する。我々は、真正細菌と同様に環状ゲノム構造を取りながら、真
核生物と類似したタンパク質因子が用いられるアーキアの複製機構に興味を持って解析を進めている。
DNA 複製の開始段階において、真核生物ではヘリカーゼの本体である MCM が Cdc6、Cdt1 に依存し
て複製起点に結合し、pre-RC を形成する。Cdc6、Cdt1 の解離後、複製フォーク上では MCM は GINS、
Cdc45 と共に「CMG complex」を形成してヘリカーゼ複合体として活性化する。真核生物の GINS は 4
種類の異なるサブユニットからなるヘテロ 4 量体のタンパク質複合体である。全てのサブユニット間
でアミノ酸配列の相同性が認められ、これらのタンパク質はパラログの関係にある。一方で、アーキ
アでは多くとも 2 種類(Gins51、Gins23)しかホモログは同定されておらず、Sulfolobus solfataricus、
Pyrococcus furiosus、Thermococcus kodakarensis の 3 種において、Gins51、Gins23 の 2:2 によるヘテロ 4
量体が同定されている。我々は P. furiosus と T. kodakarensis では GINS が MCM の ATPase 活性、ヘリ
カーゼ活性を促進することを報告して来た 1) 2)。一方で、S. solfataricus では GINS による MCM 促進活
性は検出されていない。また、多くのアーキアでは Gins タンパク質は 1 種類(Gin51)しか保存され
ておらず Gins23 は存在しないため、アーキアにおける GINS 複合体の機能解析は未だ不十分である。
さらに Thermoplasma acidophilum においては、2 つの Cdc6/Orc1 ホモログのうち、Cdc6-2 が MCM の
ATPase 活性、ヘリカーゼ活性を促進するが、3)
4)
現在までに他のアーキアや真核生物においてこのよ
うな促進効果を示した例はなく、DNA 複製ヘリカーゼの活性化は真核生物とアーキアで類似したタン
パク質を用いながらも、その分子機構は多様であることが予想される。本研究では Gins51 のみを持つ
アーキアのうち、T. acidophilum をモデル生物として、Gins51 の構造及び機能の解析を行うことによっ
て、GINS ホモ複合体形成の有無、そして DNA 複製において果たす役割を明らかにすることを目的と
した。さらに、Gins51 と Cdc6-2 の両者が存在する場合の MCM の活性化についても調査した。
まず、リコンビナント Gins51 タンパク質を用いてゲル濾過クロマトグラフィー及び電子顕微鏡観察
を行い、Gins51 が 4 量体を形成していることを明らかにした 5)。この結果は、Gins タンパク質が 1 種
類しか存在しないアーキアでも同様に、それらがホモ 4 量体を形成して機能していることを示唆する。
アーキアにおける Gins51 ホモログの配列比較の結果、Gins51 しか持たないアーキアでは Gins タンパ
ク質に広く保存された A、B 両ドメインの間に、特定の二次構造をとらないリンカー領域が存在する
ことがわかった 6)。Gins51 の変異体解析の結果、Gins51 のホモ 4 量体の形成には、このリンカー領域
が必須であった。従って、Gins51 のみを有するアーキアでは、ホモ4量体形成のために Gins51 が特有
の構造を獲得したことが示唆された。
7
次に、Gins51、Cdc6-2、MCM の物理的相互作用の有無を解析した
7)
。SPR 解析の結果、Gins51 は
MCM と弱いながらも直接相互作用し、KD は 32 µM であった。ゲルシフトアッセイを行ったところ、
Gins51、Cdc6-2 はどちらも単独では DNA に結合しないが、MCM の共存下では一本鎖 DNA 上に共存
することが明らかになった。また、Gins51、Cdc6-2 は DNA 上の MCM に対して同時に結合することが
可能であった。興味深いことに、Gins51、Cdc6-2 の存在下では MCM の DNA 結合量が上昇しており、
Gins51 と Cdc6-2 両方が存在する場合に MCM は最も安定に DNA 上に存在した。
Gins51 が MCM の機能に与える影響を調べるために、MCM の ATPase 活性、ヘリカーゼ活性を測定
したところ、Gins51 存在下で MCM の活性が促進されることが明らかになった。この結果は、T.
acidophilum においてホモ 4 量体の GINS が機能的に働いていることを示す。P. furiosus、T. kodakarensis
でも GINS は MCM の活性を促進することから、アーキアにおいても GINS はヘリカーゼ複合体の一部
として機能していることが示唆された。さらに、GINS と Cdc6-2 が協調して MCM の活性を促進する
可能性を調べるために、両者を同時に加えて MCM のヘリカーゼ活性を測定したところ、GINS、Cdc6-2
ともに MCM の活性を促進しただけでなく、GINS によるヘリカーゼ活性の促進度は Cdc6-2 存在下で
有意に上昇した。以上のことから、T. acidophilum においては GINS と Cdc6-2 はそれぞれが MCM と直
接相互作用することによって MCM の構造変換をもたらし、相乗的に MCM のヘリカーゼ活性を促進
することが明らかになった。ウエスタンブロッティングによる定量実験の結果、T. acidophilum の対数
増殖期において、MCM、Gins51、Cdc6-2 のいずれも 1 細胞中に 2,000 分子以上と高濃度に存在すると
見積もられ、GINS・Cdc6-2・MCM 間の相互作用は細胞内においても生じていることが予想された。
さらに、T. acidophilum 細胞抽出液を用いた免疫沈降実験の結果、MCM、Gins51、Cdc6-2 は細胞内に
おいても同じ複合体内に存在していることがわかった。
本研究において我々は T. acidophilum からホモ 4 量体で機能する GINS を同定し、その複合体形成に
はアーキア特有の変性領域が関与していることを示した。さらに、GINS と Cdc6-2 による相乗的な MCM
の活性化は現在までに他の生物種では観察された例のない現象であることから、DNA 複製装置はアー
キアと真核生物に分岐した後でも分岐進化を続けてきたと考えられる。
1) Yoshimochi, T. et al. (2008). The GINS complex from Pyrococcus furiosus stimulates the MCM helicase
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4) Haugland, G.T. et al. (2008). Thermoplasma acidophilum Cdc6 protein stimulates MCM helicase activity by
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5) Ogino, H. et al. (2011). The GINS complex from the thermoacidophilic archaeon, Thermoplasma acidophilum
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6) Oyama, T. et al. (2011). Architectures of archaeal GINS complexes, essential DNA replication initiation
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7) Ogino, H. et al. (2014). Activation of the MCM helicase from the thermophilic archaeon, Thermoplasma
acidophilum by interactions with GINS and Cdc6-2. Extremophiles 18, in press.
8
T. kodakarensis Hef タ ン パ ク 質 の 天 然 変 性 領 域 に よ る 他 因 子 と の 相 互 作 用
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Ŗļ AFM į³+58 TkoHef NjYEĸ WT(B)
Őæú5/†­,ðÅ,âÀ<ĉJGlgXl- 30 nm
ěÖò
1. Komori, K. et al. (2002) Genes Genet. Syst. 77, 227-241
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10
超 好 熱 性 ア ー キ ア 由 来 ヘ リ カ ー ゼ を 用 い た PCR 反 応 特 異 性 の 増 強
○藤原 綾子, 藤原 伸介 (関西学院大院・理工・生命科学) [研究目的]
ヘリカーゼは ATP 加水分解エネルギーを用いて DNA/RNA の塩基間の水素結合を解消する酵素であ
り、DNA 複製、スプライシング、転写、翻訳、リボソーム生合成など様々な生命活動に寄与している。
ヘリカーゼは核酸の高次構造をほどくという特徴から、RNA、DNA 合成に影響を与えると考えられる。
これまでに逆転写反応時に RNA と cDNA を分離させ、反応を効率化させたり、PCR 時にランダムア
ニールを防ぎ、ホットスタート法に試みられた例がある。本研究では超好熱性アーキア Thermococcus
kodakarensis が有する様々なヘリカーゼのホモログを用い、PCR 反応への影響を検討した。
[実験結果・考察]
SF2 ヘリカーゼである TK0306、TK0566、TK0928 を精製し、 ssRNA 存在下で ATPase 活性を測定
した。 TK0566、TK0928 の反応至適温度は 90℃であったのに対し、低温誘導型 RNA ヘリカーゼであ
る TK0306 は 50℃であった。そして、3 種類の SF2 ヘリカーゼの PCR 反応特異性への影響を検討し
た。これら 3 種類の酵素を用い、PCR 反応で様々な鋳型 DNA に対する影響を調べた。高次構造を形成
しやすい T. kodakarensis 由来の合成した 16S rDNA を鋳型とし、酵素に KOD plus ポリメラーゼを用い
た結果、TK0566 を添加することで PCR 時のノイズバンドが消失した。 TK0306 及び TK0928 の添
加では顕著な変化は見られなかった。また過剰量の TK0566 を添加すると、目的とするバンドが消失
した。TK0566 は PCR 反応時にミスアニールしたプライマーと鋳型 DNA の二本鎖をアンワインドし
ているが、過剰量存在するとプライマーの標的配列へのアニールをも阻止すると考えられる。そこで、
添加する TK0566 の濃度、Mg2+ 濃度の最適化を行った。最適化された条件で様々な鋳型を用いて
TK0566 添加効果を検討した。まず、 T. kodakarensis 及び Gluconacetobacter europaeus の粗染色体
DNA を鋳型にして TK0566 を添加したところ、顕著なノイズバンドの低減(誤増幅の低減)が見られ
た。次に高 GC 含量の 緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa 由来の DNA(エキソトキシン A をコードする
Pa-toxA)を鋳型にして検証した。TK0566 非添加時にはアニーリング温度を上昇させても誤増幅は低
減されなかったが、TK0566 を添加することで誤増幅が低減された。このことから PCR 時の特異性を
顕在化する場合、TK0566 の添加はアニーリング時の温度上昇よりも効果的と思われる。また、誤増
幅低減効果は KOD ポリメラーゼ以外に Thermus aquaticus、Thermus thermophiles 由来の DNA ポリメ
ラーゼにおいてもみられた。そこで Taq ポリメラーゼを用いた ARMS 法において SNP 解析における
TK0566 の添加効果を検証した。人のアルデヒドデヒドロゲナーゼ 2(ALDH2)遺伝子型の検出を行
うため、毛髪より抽出した DNA に対し、アリル特異的プライマーを用いて PCR を行った。その結果、
TK0566 を添加することで誤増幅が低減し、目的のバンドが顕著になった。以上より、TK0566 は PCR
全般にノイズを低減する効果があると考えられる。また、TK0566 のオルソログはバクテリアには存在
せず、アーキア特異的である。この結果は TK0566 がアーキアの複製と関係していることを強く示唆
する。
11
超 好 熱 菌 Thermococcus kodakarensis に お け る
ポリアミンの細胞内局在及び濃度効果
○井上貴央、中西千穂、岡田和真、藤原伸介
関西学院大院・理工
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0²h-xÞKC2 “0 90k߸Á+c€. S30 ª\$áá¾É›
€+.
(1) Morimoto, N. et al., J.Bacteriol., 192, 4991-5001 (2010)
(2) Okada, K. et al., J.Bacteriol., 196, 1866-1876 (2014)
12
分岐ポリアミン合成をめぐる謎
大島 泰郎 (共和化工・環境微生物研) Archaea, Bacteria を問わず、75℃以上で生育可能な高度好熱菌は通常の生物が生産しない特異なポ
リアミンを生産する。特異ポリアミンは 1 分子中に 5 個かそれ以上のアミノ基・アザ基を持つ長いポリ
アミンか、分岐ポリアミンである。これらの特異ポリアミンの生合成機構は知られていなかった。し
かし、最近、関西学院大学の藤原伸介教授のグループが好熱性古細菌 Thermococcus kodakarensis の
分岐ポリアミン合成酵素とその遺伝子の同定に成功し、新たな研究分野を拓いた 1。この遺伝子の
homolog は、Archaea, Bacteria を問わず分岐ポリアミンを生産する好熱菌煮に広く存在する。 Bacteria に属する高度好熱菌 Thermus thermophilus も T. kodakarensis の分岐ポリアミンとは構造
を異にする分岐ポリアミンを生産する。この好熱菌にも上記の分岐鎖ポリアミン合成酵素遺伝子のホ
モログが存在するが、酵素活性は認められず、合成の反応機構は同じでないことが示唆された。まだ、
謎解きには成功していないがこれまでの知見を報告する。 T. kodakarensis でも T. thermophilus でも分岐ポリアミンは、生育温度の上限に近い高温のときに
より多く生産される。T. thermophilus では“分岐ポリアミン合成酵素遺伝子”をノックアウトすると、
分岐ポリアミンの合成が止まり、生育可能な温度は低下する。同様に、スペルミジン生合成にかかわ
る遺伝子、たとえば speB 遺伝子(スペルミジン生合成回路の最終段階の酵素をコードする遺伝子)を
ノックアウトするとスペルミジンとともに分岐ポリアミンの合成も止まり、変異株は 75℃で生育でき
ない。これにスペルミジンを添加すると、分岐ポリアミンの合成が回復し、78℃でも生育可能となる。
これらの結果は分岐ポリアミンが、高温下の生体反応に必須であることを示している。また、分岐ポ
リアミンはスペルミジンを原材料に合成されていると結論できる。 一方、機能未知ながらポリアミン代謝系の酵素 S-アデノシルメチオニン脱炭酸酵素遺伝子(speD2)
のホモログ speD1 をノックアウトすると、分岐ポリアミンの合成も止まる。この遺伝子がコードする
タンパク質の機能は分かっていないが、T. thermophilus では藤原研で見出した酵素だけでは分岐ポリ
アミンが合成できず、speD1 がコードするタンパク質の働きが必須であることを示している。 1 Okada, K. et. al. (2014) Identification of a Novel Aminoproyltransferase Involved in the Synthesis of Branched Polyamines in Hyperthermophiles. J. Bacteriol., 1
1 9 6 (10), 1866-1876 13
好 塩 性 ア ー キ ア に 特 有 の ヘ ム タ ン パ ク 質 PitA の 機 能 解 析
○小杉直揮 須田一成 田中達 吉松勝彦 藤原健智
静岡大学大学院 理学研究科 生物科学専攻
〈背景〉
Bab-Dinitz ら(2006)により、高度好塩性アーキア Haloferax volcanii から、Co2+-アフィニティー
カラムに吸着する新規なヘムタンパク質 PitA が見出された。H. volcanii の遺伝子情報から、PitA は
アミノ酸 501 残基からなる細胞質局在の可溶性タンパク質であり、N 末端側の chlorite dismutase に
相同性を示す領域(CD ドメイン)、C 末端側の monooxygenase に相同性な領域(MO ドメイン)、お
よび両ドメイン間の、His を豊富に含むリンカー領域から構成される。全ゲノム構造が報告されてい
る 28 種(2014 年 6 月現在)の高度好塩性アーキアすべてに PitA 相同タンパク質の遺伝子が存在する
一方で、他の生物種のゲノム中には見出されない。このことから、PitA が高度好塩性アーキアにとっ
て不可欠な役割を持つ可能性が考えられるが、現在までのところその生理機能は不明である。
今回我々は、H. volcanii PitA の精製と限定分解実験を行い、その分子構造について考察した。また、
PitA の生理機能を逆遺伝学的に推定することを目的とした pitA 遺伝子の破壊実験を試みた。
〈方法〉
1.PitA の精製・限定分解
H. volcanii H26 株の可溶性画分から、Ni2+-アフィニティークロマトグラフィー、および水素結合
クロマトグラフィーによって PitA を精製した。精製 PitA にプロテイナーゼ K を加えた後、時間毎の
変化を SDS-PAGE やゲル濾過により分析した。
2.pitA 遺伝子破壊株(ΔpitA 株)の作製
H. volcanii の pitA 遺伝子の 5’側上流と 3’側下流 1kb の領域をそれぞれ PCR 法により増幅した。両
者を連結した ΔpitA 配列を、ウラシル合成酵素遺伝子 pyrE2 を持つシャトルベクターpTA131 に導入
した。作成した pΔpitA ベクターを H. volcanii H26 株に形質転換し、相同組み換え(pop-in)を起こ
させることで、ゲノム DNA 中に ΔpitA 配列とウラシル合成酵素遺伝子 pyrE2 を挿入した。得られた
pitA/ΔpitA ヘテロ株を 5-フルオロオロト酸(5-FOA)を含む培地上で培養し、2 回目の相同組換え
(pop-out)により pyrE2 遺伝子が脱落した株(ΔpitA 株あるいは復帰野生株)を取得した。
〈結果と考察〉
SDS-PAGE によって精製 PitA を分析したところ分子量 56,000 の位置に単一のバンドが現れ、電気
泳動的均一な標品が得られたことがわかった。またゲル濾過法により水溶液中での分子量は 774,000
と見積もられ、PitA がホモ多量体構造をとっていることが示された。また精製 PitA はサブユニット
分子(分子量 56,000)あたり 1 分子のヘム b を含み、5 配位の高スピン型ヘムに特有の可視吸収スペ
クトルを示した。
PitA にプロテイナーゼ K を作用させると、分子量 56,000 サブユニットの、30,000 および 20,000
のタンパク質への経時的な分解が観察され、前者は CD ドメイン、後者は MO ドメインであることが
N 端アミノ酸配列の分析から示された。分解産物をゲル濾過法によって分離したところ、CD ドメイン
14
と MO ドメインの水溶液中での分子量はそれぞれ 426,000 と 22,000 となり、またヘムは MO ドメイ
ン の 画 分 と と も に 溶 出 さ れ た 。 こ の 実 験 結 果 、 お よ び CD ド メ イ ン に 相 同 な 高 熱 菌 Thermus
thermophilus HB 由来の TT1485 遺伝子産物の結晶構造(Ebihara et al. 2005)から、PitA の分子構
造として、10 量体構造(5 量体x2)をとる CD ドメインに、ヘム b を含む MO ドメインがリンカー
配列によって結合しているというモデルを考えた。
pitA/ΔpitA ヘテロ株を 5-FOA を含む固体培地上で培養し、現れた pop-out 株を計 118 株取得した。
そのうちの 2 株のみが ΔpitA 株であり、PitA が H. volcanii の生育に重要な役割を持つことが示唆さ
れた。得られた ΔpitA 株のうちの 1 株を好気的に培養したところ、僅かに混入していたと考えられる
復帰野生株が短時間で増殖したため純化できなかった。一方、もう一株を脱窒条件の下で嫌気的にゆ
っくりと増殖させ、混在する復帰野生株のコロニーの出現を抑えながら継代培養することで、最終的
に ΔpitA 株の純化に成功した。
好気的に液体培養した ΔpitA 株は、増殖能が H26 株に比べて著しく低く、倍加時間は約 200 h であ
った。一方、ΔpitA 株を脱窒条件で嫌気的に液体培養した場合は、固体培地上で培養した場合と異な
り、十分な増殖が認められないまま定常期へと移行した。培養後、光学顕微鏡を用いた H26 株と ΔpitA
株の観察から、ΔpitA 株は H26 株に比べ細胞が小型化していることがわかった。これらの結果から、
pitA 遺伝子の破壊は致死ではないものの、増殖能を大きく低下させることから、PitA が H. volcanii
にとって重要な役割を持っていることが明らかとなった。ΔpitA 株を樹立することに今回成功したの
で、今後はこれを用いて PitA の生理的機能を明らかにすることを目的として研究を進めていく。
〈参考文献〉
Bab-Dinitz E, Shmuely H, Maupin-Furlow J, Eichler J, and Shaanan B. (2006) Haloferax volcanii
PitA: an example of functional interaction between the Pfam chlorite dismutase and antibiotic
biosynthesis monooxygenase families? Bioinformatics 22(6):671–675.
Ebihara A, Okamoto A, Kousumi Y, Yamamoto H, Masui R, Ueyama N, Yokoyama S, and
Kuramitsu S. (2005) Structure-based functional identification of a novel heme-binding protein
from Thermus thermophilus HB8. J. Struct. Funct. Genomics. 6(1):21-32.
15
構 造 ゲ ノ ム 学 手 法 を 用 い た FeGP コ フ ァ ク タ ー 生 合 成 酵 素 の 機 能 解 析
○嶋 盛吾 マックスプランク陸生微生物学研究所, マールブルグ(ドイツ) JST さきがけ ゲノム解析によって膨大な遺伝子情報が蓄積されている。これらの遺伝子の機能を解明する方法
は?アミノ酸配列の既知酵素との類似性から機能を類推することは、もっとも基本的な方法である
[1]。しかし、配列がいずれの既知タンパク質とも似ていない場合は、どうすればよいのであろうか。
ひとつの方法は、その遺伝子にコードされるタンパク質の立体構造を明らかにし、構造比較によって
似た酵素を探すことである[2]。このアイデアは以前から提唱され、構造ゲノム学と呼ばれる研究分
野の目的のひとつになっている[3]。大規模なプロジェクトがいくつも行われ、多くのタンパク質構
造が結晶構造解析や NMR 解析によって明らかにされた[4]。しかしながら、立体構造をもとに機能を
予測することはできても、基質特異性など特異的な機能が明らかにされた例は少ない。どうもタンパ
ク質の立体構造だけから機能を推定することは容易ではないようである。しかし、大掛かりなプロジ
ェクトではなく、特定の酵素系にターゲットを絞った場合には、遺伝子の並び方や生化学実験および
基質との共結晶法などを組み合わせることによって、タンパク質の特異的機能を解明することができ
る。本発表では、メタン生成アーキアに含まれる[Fe]-ヒドロゲナーゼの活性部位を担う FeGP コファ
クターの生合成に関与する酵素の構造ゲノム学手法による機能解析結果を報告する。 図 1 . FeGP コファクターの化学構造. [Fe]-ヒドロゲナーゼは水素分子 H2 のプロトンとヒドリドへの分解を触媒し、この触媒反応によっ
てヒドリドはメテニルテトラヒドロメタノプテリン基質に転移する。この触媒反応は可逆であり、逆
反応では基質から水素が発生する[5]。本酵素の活性中心 FeGP-コファクターは図 1 に示したような鉄
錯体である。多くのメタン菌ゲノムでは[Fe]-ヒドロゲナーゼをコードする遺伝子 hmd の近傍に hcgA-
G(hmd co-occuring)遺伝子の存在が知られている(図 2)。遺伝子破壊実験により、hcg 遺伝子は
[Fe]-ヒドロゲナーゼの活性に関連があることが示されているが、その機能は未解明であった[6]。 図 1 . [Fe]-ヒドロゲナーゼ(hmd)遺伝子近傍に存在する hcgA-G 遺伝子. 16
私たちは構造ゲノム学を活用した手法により HcgB の機能を解明した(図 3)[7]。HcgB の一次構
造は既知の酵素タンパク質との相同性は認められないが、その立体構造はヌクレオシドトリフォスフ
ァターゼ(NTPase)との間で類縁性が認められた。NTPase は GTP などを加水分解し、ピロリン酸単
位を切り出す酵素である。HcgB と NTPase の詳細な構造比較により、HcgB はヌクレオシド 3 リン酸
を基質として結合できるが、加水分解する活性残基を失っていることが示唆された。この立体構造の
特徴から HcgB が FeGP コファクターの有機部分(グアニリルピリジノール)を GTP とピリジノール
前駆体から合成する酵素であると予想した。酵素学実験によりピリジノールモデル化合物と GTP か
らグアニリルピリジノールが生成することを確認し、さらにグアニリルピリジノールとの共結晶実験
により、天然のピリジノール基質の構造を解明した[7]。
図 3 .(左)HcgB(緑)と NTPase(水色)の立体構造の類似性. HcgB が GTP とピリジノールから
グアニリルピリジノールを合成することを生化学的に証明した[7].
文献
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] Galperin, M.Y. and Koonin, E.V. (2004). 'Conserved hypothetical' proteins: prioritization of targets for experimental study. Nucleic Acids Res. 32, 5452-5463. Zhang, C. and Kim, S.H. (2003). Overview of structural genomics: from structure to function. Curr. Opin. Chem. Biol. 7, 28-32. Hwang, K.Y., Chung, J.H., Kim, S.H., Han, Y.S. and Cho, Y.J. (1999). Structurebased identification of a novel NTPase from Methanococcus jannaschii. Nat. Struct. Biol. 6, 691-696. Terwilliger, T.C., Stuart, D. and Yokoyama, S. (2009). Lessons from structural genomics. Annu. Rev. Biophys 38, 371-83. Shima, S. and Ermler, U. (2011). Structure and function of [Fe]-Hydrogenase and its iron-guanylylpyridinol (FeGP) cofactor. Eur. J. Inorg. Chem. 2011, 963-972. Thauer, R.K., Kaster, A.K., Goenrich, M., Schick, M., Hiromoto, T. and Shima, S. (2010). Hydrogenases from methanogenic archaea, nickel, a novel cofactor, and H2 storage. Annu. Rev. Biochem. 79, 507-536. Fujishiro, T., Tamura, H., Schick, M., Kahnt, J., Xie, X.L., Ermler, U. and Shima, S. (2013). Identification of the HcgB enzyme in [Fe]-hydrogenase-cofactor biosynthesis. Angew. Chem. Int. Ed. 52, 12555-12558. 17
ゲ ノ ム 情 報 中 に は 見 出 さ れ な い 代 謝 系 の 実 験 的 同 定 、 UDP-GlcNAc 生 合 成 系 を
例に
河原林 裕
九州大学大大学院農学研究院 極限環境微生物ゲノム機能開発学・産総研 健康工学
現在、既に 1000 個を越える微生物のゲノムの全塩基配列が決定されてきている。しかし、最も近直
に解読された微生物ゲノム情報からも、機能が同定できない機能未知遺伝子が多数見出されてくる。
さらに、大腸菌等のモデル生物の解析を元にして構築された代謝経路と比較すると、代謝経路を構成
する酵素の幾つかが、ゲノム情報中に見いだされない場合も存在する。特に超好熱アーキアのゲノム
情報の場合、モデル生物で構築された代謝経路を構成する酵素の多くが見いだされてこない場合もあ
る。これら代謝経路中の酵素が見いだされない原因として、超好熱アーキアではモデル生物と異なっ
た代謝経路を有している、またモデル生物が有する代謝経路と同一の代謝経路を有しているが構成し
ている各酵素のアミノ酸配列が既知のものと全く異なっているという二つが考えられる。そこで、ゲ
ノム情報からは見出されなかった代謝経路の実験的同定として、UDP-GlcNAc 生合成経路を例に報告
したい。
好気性好酸性超好熱アーキア Sulfolobus tokodaii strain7 のゲノムの全塩基配列は 10 年以上前に解読さ
れて全情報は公開されている。ゲノム情報から抽出される代謝経路についての情報をまとめている
KEGG データベース中でも、当 S. tokodaii には UDP-GlcNAc 生合成経路は同定されていなかった。
(現
在、当研究室の実験データを反映させたデータが公開されている)そこで、この代謝経路存在の有無
等の解明に取り組んだ。このきっかけとなったのは、ST0452 蛋白質活性の実験的な解析であった。当
蛋白質は、そのアミノ酸配列の相同性から Glc-1-P TTase 活性を有していることが推定されていた。し
かし、この蛋白質の実験的な機能解析から、本蛋白質は予測された Glc-1-P TTase 活性よりも高い
GlcNAc-1-P UTase 活性を有すること。さらに、バクテリア由来の酵素と同様に GlcN-1-P AcTase 活性
を有していることが明らかとなった。この実験結果は、当蛋白質がバクテリア型 UDP-GlcNAc 生合成
経路の最後の二段階の反応を触媒できること、つまりバクテリア型 UDP-GlcNAc 生合成経路の存在を
示唆している。そこで、Frc-6-P から UDP-GlcNAc を合成するさらに上流の二段階の反応を触媒する蛋
白質の探索を行った。
Frc-6-P を基質にした最初の反応を触媒すると予測された蛋白質(glutamine:fructose-6-phosphate
aminotransferase)をコードする遺伝子を大腸菌で発現させその活性を測定した。しかし、最も N 末に
位置する ATG から発現させた場合、予測された活性は全く検出することが出来なかった。そこで N 末
のアミノ酸配列を再度詳細に検討してみたところ ATG の 3 アミノ酸 C 末側にマイナースタートコドン
の存在が見いだされた。そこでこのコドンを開始コドンとした蛋白質を発現させたところ、予想され
ていた活性が確かに検出されてきた。この活性は、正方向(Frc-6-P から GlcN-6-P を合成する方向)の
みの反応を触媒し、逆反応は触媒しない事が明らかとなった。さらに、この反応系の下流の反応で合
成される反応生成物による活性へのフィードバック阻害を確認したが、どの反応生成物に対してもフ
ィードバック阻害が掛からないことが明らかとなった。これらの実験結果から、本蛋白質は当アーキ
ア内で合成された際には N 末端の 3 アミノ酸が活性を阻害するが、必要なときには切断されて活性型
になり本 UDP-GlcNAc 生合成経路全体を活性化するのではないかと考えられる。現在、本アーキア細
18
胞中での存在様式の解明に取り組んでいる。
次に、上の反応で生成される GlcN-6-P のリン酸の位置を分子内転移させる酵素について解析を行っ
た。本 S. tokodaii のゲノム情報中には、糖リン酸分子のリン酸の位置を転移させるムターゼとして、相
同性から PMM/PGM として予測されているものが唯一見出されていた。そこで、この蛋白質をコード
する遺伝子を用いて大腸菌内に遺伝子産物を生産させ、その活性を検討した。相同性から予測された
PMM 及び PGM 活性を有している事が確認出来ただけでなく、本蛋白質は Phospho-GlcN mutase 活性も
有していることが明らかとなった。本蛋白質は、アミノ酸配列で予測された活性だけで無く、多様な
基質を代謝できるユニークな特性を有している事が示された。本蛋白質特有の性質である基質の多様
性については、今後基質と本蛋白質との共結晶の 3 次元立体構造解析等を進めることで解明していき
たい。
以上、相同性だけでは見出されてこない酵素活性を実験的に解明することで、本超好熱アーキア S.
tokodaii 中にバクテリア型 UDP-GlcNAc 生合成代謝経路が存在することを示すことが出来た。今後はゲ
ノム情報からは存在が推定できない他の代謝経路についても同様の実験的解明を進めていきたいと考
えている。また、上記の 3 種の蛋白質を同時に大腸菌で発現させることで、効率的な人工 UDP-GlcNAc
合成系の構築にも取り組みたいと考えている。
19
Thermoplasma acidophilum よ り 見 出 さ れ た 第 3 の メ バ ロ ン 酸 経 路
○邊見 久 1、生明靖裕 1、服部 愛 1、西村泰斗 1、川出 洋 2、吉村 徹 1
(1 名古屋大学大学院生命農学研究科、2 東京農工大学大学院農学研究院)
【背景】アーキアにおける、膜脂質などのイソプレノイド化合物の生合成は、取り込み実験やゲノム
解析の結果に基づき、メバロン酸経路からスタートすると考えられてきた。しかしながら、50 年以上
前にすでに解明がなされた、所謂古典的メバロン酸経路(図 A)の酵素のうち、ホスホメバロン酸キ
ナーゼ(PMK)とジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(DMD)のオーソログが大半のアーキアのゲノ
ム中にはコードされておらず、それらを代替する反応の存在が示唆されていた。その後、アーキアに
広く保存された新奇酵素、イソペンテニルリン酸キナーゼ(IPK)が発見され、代替経路としてイソペン
テニルリン酸(IP)を経由する変形メバロン酸経路(B)が提唱されたものの、その全容は未解明であっ
た。一方、T. acidophilum は大半のアーキアと異なり、IPK に加え、例外的に複数の DMD ホモログ
をゲノム中にコードしている。我々は酵素学的な解析により、そのメバロン酸経路の解明を進めた。
【方法と結果】T. acidophilum のメバロン酸経路関連酵素ホモログを大腸菌に発現させ、それらの組
換えタンパク質と放射標識基質を用いて酵素機能を同定した。その結果、DMD ホモログである Ta1305
タンパク質がメバロン酸をリン酸化し、古典的メバロン酸経路の中間体である 5-ホスホメバロン酸
(MVA-5-P)ではなく、3-ホスホメバロン酸(MVA-3-P)を合成することを見出した。放射標識した
MVA-3-P は T. acidophilum の無細胞抽出液によりイソプレノイドへと変換され、したがって同菌の
メバロン酸経路の中間体であると考えられた。さらに、イオン交換カラムで分画した T. acidophilum
無細胞抽出液との反応により、MVA-3-P は 3,5-ビスホスホメバロン酸(MVA-3,5-PP)と推定される中
間体を経て IP へと変換された。これらの結果は古典的経路、変形経路のどちらとも異なる第3のメバ
ロン酸経路(C)が T. acidophilum に存在することを示すものである。
図 各 種 メ バ ロ ン 酸 経 路
A:古典的経路、B:変形経路、
C:T. acidophilum において
見出された新奇経路
20
Thermococcus kodakarensis に お け る ピ ル ビ ン 酸 /ア
アミノ酸酸化経路の解析
野原健太 1、○折田和泉 1、中村聡 1、今中忠行 2、福居俊昭 1
(1 東工大院・生命理工・生物プロセス, 2 立命館大・生命)
【緒言】
Thermococcales 目に属する Thermococcus 属や Pyrococcus 属超好熱性アーキアはアミノ酸/ペプチドを炭
素・エネルギー源、元素硫黄を最終電子受容体として硫化水素を発生しながら生育するが、種によっては硫黄
非存在下でもピルビン酸や糖を代謝し、プロトンを最終電子受容体とした水素発生を伴って生育する。この際
の糖およびピルビン酸の代謝や水素発生経路に関する知見は Thermococcus kodakarensis や Pyrococcus
furiosus において多くの研究がなされてきた。しかし、これらの超好熱菌における硫黄非依存増殖では糖・ピル
ビン酸と同時にアミノ酸/ペプチドも代謝されるにもかかわらず、その詳細や水素発生におけるそれぞれの代謝
の寄与については十分な解析がなされていない。
一方、Themococcales 目超好熱菌ではピルビン酸酸化酵素として pyruvate: ferredoxin oxidoreductase
(POR)が知られているが、アミノ酸酸化への関与が推定されている 2-ketovalerate: ferredoxin oxidoreductase
( VOR ) も ピ ル ビ ン 酸 を 基 質 と で き る こ と が 報 告 さ れ て い る 。 加 え て 、 T. kodakarensis を 含 む 一 部 の
Thermococcus 属超好熱菌のゲノム上には pyruvate: formate lyase (PFL)およびその活性化酵素のホモログ遺
伝子が見出されている。PFL はピルビン酸をアセチル-CoA とギ酸に開裂し、未知のギ酸脱水素酵素と共役す
ることでピルビン酸酸化の別経路を構成している可能性が考えられたが、詳細は明らかにされていない。
本研究では、POR、VOR、PFL の遺伝子破壊による生育への影響評価、および遺伝子破壊株における増
殖基質と最終代謝産物のマスバランス解析を行うことで、水素発生条件下でのピルビン酸/アミノ酸の同時酸化
を詳細に理解することを目的とした。
【実験方法】
培養および発生気体中の H2 および CO2 測定
T. kodakarensis は 人 工 海 水 を ベ ー ス と し た 栄 養 豊 富 培 地 に 硫 黄 ( ASW-YT-S0 ) ま た は ピ ル ビ ン 酸
(ASW-YT-Pyr)を添加した培地を用いて 85℃で嫌気的に培養した。発生気体はアルミニウムバッグによって
捕集し、ガスクロマトグラフィーによって濃度を測定した。また、発生気体の体積は真空捕集瓶を用いて、発生
気体通気後の圧力差を測定することで換算して求めた。
増殖基質と最終代謝産物の解析
培養上清中の有機酸は、イオンクロマトグラフィーによって測定した。各種アミノ酸は酸加水分解後に誘導体
化し、HPLC により測定した。
【結果と考察】
水素再取込みの影響を排除するために、cytosolic hydrogenase(HYH)の遺伝子を破壊した KUW1∆hyh 破
壊を作製した。まず、この株の ASW-YT-Pyr 培地におけるマスバランスを評価したところ、宿主 KUW1 株では
H2/CO2 比が 0.68 であったのに対し(Fig. 1(B))、破壊株では水素再取込みがないために H2/CO2 比が 1 となっ
21
た(Fig. 1(A))。また、宿主株と比較して KUW1∆hyh 株ではアラニン生成量が減少し、さらに顕著なアンモニア
生成が認められたことから、宿主株では HYH による水素再酸化によって生じた NADPH は同化代謝に利用さ
れることなく、glutamate dehydrogenase による 2-オキソグルタル酸の還元的アミノ化によって消費されることが示
された。
次に POR、VOR、PFL をコードする遺伝子群をそれぞれ KUW1∆hyh 株を宿主として破壊し、ASW-YT-Pyr
培地における生育とマスバランスを評価した。PFL 欠損株(KUW1∆∆hyh_pfl 株)では親株との違いは見られず、
PFL はピルビン酸酸化に寄与していないことが明らかとなった。POR 欠損株(KUW∆∆hyh_por 株)ではアミノ酸
消費量、ピルビン酸消費量、アラニン生成量がほぼ一致し、また CO2 と H2 の発生量が有機酸の生成量とよく
一致していたことから(Fig. 1(C))、ピルビン酸酸化は POR によって担われること、およびピルビン酸酸化能が
欠失してもアミノ酸酸化のみによって増殖できることが示された。VOR 欠損株(KUW∆∆hyh_vor 株)では分岐
鎖アミノ酸の酸化が顕著に低下したが、ピルビン酸酸化の亢進が観察された(Fig. 1(D))。これらの結果から、
POR と VOR はそれぞれピルビン酸と分岐鎖アミノ酸の酸化に特異的かつ重要な役割を果たしていることが示
された。消費基質(ピルビン酸+アミノ酸)あたりの水素収率は hyh 破壊と hyh-vor 二重破壊によって、宿主株の
31%から 67%、82%にそれぞれ向上していた。興味深いことに、いずれの株についても酢酸の過剰生成が認
められ、本菌におけるピルビン酸含有栄養豊富培地で酢酸を生成する未知代謝経路(Fig. 1 中 X で示す)の
存在が示唆された。
Fig. 1. 宿主 KUW1 株と各種破壊株における増殖基質および最終代謝産物のマスバランス解析
22
超 好 熱 性 ア ー キ ア Thermococcus kodakarensis に お け る tryptophan synthase
β -subunit paralog trpB2 の 機 能 解 明
○肥山貴圭 1, 佐藤喬章 1,3, 今中忠行 2,3, 跡見晴幸 1,3
(1 京大院・工・合成生化, 2 立命館大・生命・生物工, 3JST, CREST)
[背景・目的]
L-Tryptophan (Trp) は芳香族アミノ酸の一種であり、ヒトにおいては必須アミノ酸の1つである。Trp
生合成経路は微生物や高等植物において共通であり、共通の生合成経路から進化したと考えられてい
る。Trp 生合成の最終反応は、TrpA と TrpB からなる Trp synthase 複合体 (TS) により触媒されている
(Fig. 1)。TrpA は indoleglycerol 3-phosphate から indole を生成し、TrpB はその indole と L-serine を縮合
し Trp を形成する反応を触媒している。一般的に TS は αββα 型のヘテロテトラマーであり、中間生成
物である indole は TrpA と TrpB の活性部位を繋ぐ疎水性チャネルを輸送され TrpB に受け渡されるこ
とで、酵素外へと拡散されることを防ぎ、効率的な Trp 生合成が行われている。超好熱性アーキア
Thermococcus kodakarensis において Trp 生合成経路を構成する酵素は全て trp オペロン上にコードされ
ている。しかしながら本菌は trp オペロン内にある TrpB (TrpB1)とは別にオペロンの外側に TrpB1 と非
常に高い相同性を持つ TrpB2 と呼ばれる酵素を保持している。この TrpB2 はいくつかのアーキアと超
好熱性バクテリアに分布しているが、その生理的な役割は解明されていない。そこで、本研究では T.
+
HO
O
O
indoleglycerol phosphate
N
H
O
N
H
O
NH2
HO
OH
P OH
HO
OH
O
OH
L-serine
NH2
+
OH
O
kodakarensis における TrpB2
p の機能解明を目的とした。
H
OH
L-tryptophan
P OH
+ H2O
O
GA3P
(Fig. 1) Trp synthase 複合体による Trp 生成反応
[結果・考察]
・ 組換え型タンパク質の解析
TrpB1 及び TrpB2 の生化学的な解析を行うために、それらの組換え型タンパク質を大腸菌を用いて
大量発現し、精製を行った。各精製タンパク質を用いて、indole と serine を基質とした Trp 生成反応の
速度論的解析を行った (Table 1)。その結果、TrpB1 および TrpB2 は共に Trp 生成反応を触媒すること
ができることが明らかとなった。また TrpB1 は TrpA の添加によってその活性が大きく上昇するが、
TrpB2 は変化がなく、TrpB1 は TrpA と複合体を形成し協調的に反応を触媒するが、TrpB2 は単独で機
能していることが示唆された。ゲル濾過カラムを用いた複合体形成能の実験から、やはり TrpB1 は TrpA
とヘテロテトラマーを形成するが、TrpB2
Table 1. Trp 生合成反応の速度論パラメータ
は TrpA と複合体を作らず、ホモダイマー
で存在していることが明らかとなった。速
度論解析の結果から、TrpB2 は indole に対
する Km 値 (Km
IND
)が TrpB1 と比較して非常
に低いことが特徴として挙げられる。
KmIND (µM)
kcat (s-1)
kcat/KmIND (mM-1s-1)
62.9 ± 5.8
1.04 ± 0.03
17
TrpB2
8.1 ± 0.9
0.39 ± 0.01
48
TrpB1+TrpA
35.0 ± 9.2
3.46 ± 0.22
99
TrpB2+TrpA
7.6 ± 1.3
0.39 ± 0.02
51
TrpB1
23
・遺伝子破壊株の特性解析
trpB1 及び trpB2 が生体内で Trp 生合成に寄与しているかを検討するために、T. kodakarensis KU216
株 ( ΔpyrF ) を 宿 主 に 各 遺 伝 子 の 破 壊 株 (ΔtrpB1 株 及 び ΔtrpB2 株 ) と 両 遺 伝 子 の 二 重 破 壊 株
(ΔtrpB1ΔtrpB2 株)を作製した。Trp 非添加の合成培地にて生育測定を行ったところ、二重破壊株では
Trp 要求性を示したのに対し、各遺伝子の単独破壊株は要求性を示さなかった (Fig. 2)。このことは
trpB2 も trpB1 とともに Trp 生合成に寄与していることを示している。
・TrpAB1 複合体 (TS)、TrpB2 の indole 回収能の検討
TS は中間生成物である indole を酵素外へと拡散させない機構を有しており、TrpB2 への indole 供給
源は不明である。超好熱性のバクテリアにおける TrpB2 に関する先行研究より、TrpB2 は indoleglycerol
phosphate から熱分解などによって生じた indole が細胞外へと拡散しないように回収し、Trp を生合成
する役割を担っているのではないかという仮説が提唱されている。
我々はこのことを本菌の生体内で検証するために、Trp 生合成の上流の遺伝子である trpE を破壊し
た KUW1 株 (ΔpyrFΔtrpE)を宿主として、trpB1・trpB2 の各遺伝子破壊株 (ΔtrpEB1 株及びΔtrpEB2 株)
を作製した。これらの株では trpE の破壊により内因性の indole は存在せず、Trp 要求性を示す。これ
らを Trp 非添加かつ indole 添加培地で生育させることで、生体内における TS 及び TrpB2 の indole 回収
能を比較できると考えた。その結果、各破壊株間で indole による Trp 要求性の相補能に差は観察され
なかった (Fig. 3)。このことから TS も indole を回収することができ、TrpB2 が特異的に indole 回収の
役割を担っているわけではないことが明らかとなった。
0.5
Trp(-)
0.5
: KUW1
: ΔtrpEB1
: ΔtrpEB2
: KU216!
: ΔtrpB1!
: ΔtrpB2!
: ΔtrpB1ΔtrpB2!
0.1
OD660
OD660
Trp(-)(indole)
indole
0.03 mM
0.1
0.02 mM
0.01 mM
0.01
0
5
10
15
20
25
Time (h)
(Fig. 2) trpB1、trpB2 各破壊株の Trp 要求性
0.01
0
10
20
30
40
Time (h)
(Fig. 3) Indole による Trp 要求性相補実験
[結論]
以上の結果から、TrpB2 が TrpB1 とともに Trp 生合成にて機能している事が示唆された。また生体
内における indole 回収は TrpB2 が特異的に担っているのではなく、遊離の indole からの Trp 生合成能
は TrpB2 だけではなく、TrpAB1 複合体(TS)も有している事が明らかとなった。
24
Response of methanogenic archaeal community in paddy field soil to the managements
of winter-flooding, free air CO2 enrichment (FACE) and paddy-upland rotation
○Dongyan Liu1, Chika Suekuni1, Kazunori Akita2, Toyoaki Ito2, Masanori Saito2, Takeshi Watanabe1, Kanako Tago3,
Masahito Hayatsu3, Takeshi Tokida3, Hidemitsu Sakai3, Hirofumi Nakamura4, Yasuhiro Usui3, Toshihiro Hasegawa3, Hiroki
Ishikawa1, Mizuhiko Nishida5, Kazunari Tsuchiya5, Tomoki Takahashi5, Susumu Asakawa1
1
Graduate School of Bioagricultural Sciences, Nagoya University, 2Graduate School of Agricultural Sciences, Tohoku
University, 3National Institute for Agro-Environmental Sciences, 4Taiyokeiki Co,. Ltd, 5NARO Tohoku Agricultural
Research Center
In paddy fields, methanogenic archaea produce methane by utilizing two main substrates such as
acetate and hydrogen (end product in the anaerobic decomposition process of organic matter) under
flooded conditions. Thus, anaerobic soil conditions and substrates for growth are essential for
methanogenic archaea to produce methane. Previous studies demonstrated that methanogenic archaeal
communities were stable in paddy field soil, i. e. methanogenic archaeal community showed no
significant change among different seasons (Krüger et al., 2005), by intermittent drainages (Ma et al.,
2012) and even under double cropping conditions with rice and wheat (Watanabe et al., 2006). In
paddy fields with treatments of extended flooding period, elevated CO2 concentration and prolonged
drainage period, soil conditions change for methanogenic archaea. The extended flooding period and
elevated CO2 concentration stand for prolonged periods under anaerobic soil conditions and increase
in supply of substrates for methanogenesis, repectively, i.e. suitable conditions for growth of
methanogenic archaea. In contrast, the condition becomes adverse to methanogenic archaea in the
field with prolonged drained period more than one year due to aerobic conditions and lack of substrate
supply. This study focuses on responses of methanogenic archaeal community in paddy field soil to
the managements such as extended period of flooding (winter-flooding) or drainage (paddy-upland
rotation) of the field and increase in CO2 concentration in the field, which are different from that in the
conventional paddy fields.
Three paddy fields were used. The first was a winter-flooding paddy field, which was flooded for
about 270 days in a year and had longer anaerobic period than conventional paddy fields. Thus,
methanogenic archaea could have more substrates to produce methane. The paddy fields consisted of
conventional (as a control) and winter-flooding paddy fields. The second was a free air CO2
enrichment (FACE) field, which is to represent the CO2 concentration and temperature in 50 years
later. In the FACE paddy field, elevated CO2 by about +200 ppm and temperature by 2℃could
influence plant photosynthesis, increase the rice root biomass and the exudates from roots, and result
in increasing substrates for methanogenesis. The field was managed under ambient (as a control) or
FACE conditions. The third was a paddy-upland rotational field, where soybean was serially
cultivated for two or three years and the following paddy rice was cultivated for two or three years.
The soil conditions changed from anoxic to oxic for every two or three years in this rotational field.
The paddy field consisted of rotational plots and consecutive paddy rice plots (as a control). These
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three types of paddy fields with the different treatments of water, CO2 and paddy-upland rotation were
subjected to analyses of the composition and population of methanogenic archaea in soil by PCRDGGE of 16S rDNA and real time PCR of mcrA gene, respectively.
In the winter-flooding paddy field, the DGGE band patterns and population of methanogenic archaea
showed no difference between the conventional and winter-flooding paddy fields in every sampling
period. In the FACE paddy field, the DGGE band patterns and population of methanogenic archaea
also showed no difference between the ambient and FACE paddy fields. In the paddy-upland
rotational paddy field, the DGGE band patterns were different between the rotational and control
paddy fields, where some bands of methanogenic archaea belonging to Methanosarcinales
disappeared, and the population of methanogenic archaea decreased about one-tenth in the paddyupland rotational field. Thus, the composition and population of methanogenic archaea were not
affected by the winter-flooding and FACE managements, but affected by the paddy-upland rotation
management. In conclusion, the composition and population of methanogenic archaea did not
fluctuate under the soil conditions which were suitable for methanogenesis (the prolonged period of
flooding or increase in supply of substrates for growth), but responded to the adverse soil conditions
(the extended period of drainage for two or three years). It is interesting that one-tenth of
methanogenic archaea in soil lost their survivability in the paddy-upland rotational condition field
unlike in the conventional paddy fields such as under double cropping conditions with rice and wheat. References
Krüger M, Frenzel P, Kemnitz D, Conrad R 2005: Activity,structure and dynamics of the methanogenic archaeal community
in a flooded Italian rice field. FEMS Microbiol. Ecol., 51, 323–331.
Liu D, Suekuni C, Akita K, Ito T, Saito M, Watanabe T, Kimura M, Asakawa S 2012: Effect of winter-flooding on
methanogenic archaeal community structure in paddy field under organic farming. Soil Sci Plant Nutr 58, 553–561.
Ma K, Conrad R, Lu YH 2012: Responses of methanogen mcrA genes and their transcripts to an alternate dry/wet cycle of
paddy field soil. Appl. Environ. Microbiol., 78, 445–454.
Watanabe T, Kimura M, Asakawa S 2006: Community structure of methanogenic archaea in paddy field soil under double
cropping (rice-wheat). Soil Biol. Biochem., 38, 1264–1274.
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Vulcanisaeta 属 ア ー キ ア の 生 物 地 理 学 的 考 察 に つ い て
○伊藤 隆 1・高品知典 2・大熊盛也 1
(1 理研 BRC-JCM、2 東洋大学生命科学)
我々は、これまで日本各地の温泉から分離した Vulcanisaeta 属菌株は種分化モデル研究微生物の一
つになるものと考え、その種分化プロセスに仮説を立ててその妥当性を検討してきている。すなわち
V. distributa とその関連株は 16S rRNA 遺伝子、radA 遺伝子及び DEAD/DEAH box helicase 様遺伝子
に基づくグルーピングが分離源の分布とほぼ一致している事から地理的隔離が種分化に強く影響して
おり、一方、V. souniana は V. distributa と分離源間に距離的な差は無いが生育温度が V. distributa
に比べて低いことから環境適応等の要因が両者の進化距離に影響を及ぼした、とする仮説である 1)。こ
の仮説は分離株の遺伝学的多様性に基づいて検証を行っているが、一つの温泉中には多様な
Vulcanisaeta 属フィロタイプも検出されていることから、こうした Vulcanisaeta 群集との関連性も考
慮する必要性があろう。 本研究会第 23 回講演会において、我々は神奈川県箱根大涌谷における 16S rRNA 遺伝子塩基配列に
基づくアーキア群集構造解析について報告しているが、これによれば箱根・大涌谷の温泉水には我々
が箱根で分離した V. distributa 菌株と極めて相同性が高い一群と、まだ分離されていない
Vulcanisaeta 属の一群、さらに V. souniana の一群が検出されている 2)。一方、秋田県玉川温泉・蒸
ノ湯温泉(後生掛温泉も含む)の温泉水について同様なアーキア群集構造解析を行ったところ、分離
菌株では玉川温泉と蒸ノ湯温泉ではそれぞれ異なるサブグループを形成していたが、クローン解析で
はどちらの温泉においても検出された Vulcanisaeta フィロタイプは玉川温泉のサブグループに属する
ものがほとんどであった。これらの温泉水から新たに Vulcanisaeta 属菌株の分離を試みたところ、再
びそれぞれのサブグループに属する菌株を得ることができた。このことは一定条件下の分離培養がフ
ィルタリング機能として働いていることを示すものであろう。この様に玉川温泉と蒸ノ湯温泉におけ
る Vulcanisaeta 属の群集構造の比較は困難であるが、これらは明らかに箱根のものとは異なるもので
あった。 以上の結果や近年発表された Vulcanisaeta 属菌株のゲノム情報も勘案して Vulcanisaeta 属種の生
物地理学的動態について再考察したい。 1) T. Itoh. 2009. Studies on the biogeography and genetic diversity of hyperthermophilic archaea, Vulcanisaeta distributa and related taxa. IFO Res. Commun. 23, 57-72. 2) 出井達之ら. 2010. 箱根大涌谷の温泉水中におけるアーキアの多様性について, 第 23 回日本
Archaea 研究会講演会要旨集, pp. 24-25. 27
異なる泉温および溶存元素濃度を示す酸性イオウ泉間での
アーキア群集構造の比較
佐藤智子、渡邉啓子、山本英夫、山本修一、○黒沢 則夫
創価大学工学部 環境共生工学科
温度や化学成分が異なる温泉間におけるアーキアの群集構造および多様性を評価・比較するため、
鹿児島県霧島地域に分布する 4 つの酸性イオウ泉におけるアーキアの群集構造を、16S rRNA 遺伝子ク
ローン解析法を用いて解析した。
試料採取は、大浪池の南西約 3 km に位置する手洗温泉地区(標高 800〜1000 m)の噴気地帯におい
て、土地所有者の許可を得て 2005 年 7 月、2006 年 2 月および 6 月に実施した。21 カ所の湯だまりか
ら表層底泥を含む温泉水を採取し、現場で温度および pH を測定した。溶存元素濃度分析は、ICP を用
いて Fe, S, Al, Mg, Si, Ca, P, Na, K, As, Rb, Cs の 12 元素について行った。21 カ所の温泉水の pH は 1 地
点(pH4.0)を除いて 2.0〜2.6 の範囲内であったため、泉温と溶存元素濃度の違いにより 4 つの温泉を
解析対象として選択した。16S rRNA 遺伝子クローンライブラリーの作製には、フォワードプライマ
ー : A21F ( 5′-TTCCGGTTGATCCYGCCGGA ) と リ バ ー ス プ ラ イ マ ー : U1492R
(5′-GGYTACCTTGTTACGACTT)を用いた。
アーキア群集構造の解析を行った 4 つの温泉それぞれにおける温度、pH、総溶存元素濃度、種多様
度指数、解析クローン数を表 1 に示した。4 つの温泉由来の計 431 クローンは 26 系統群に分類された。
アーキアの多様性が最も高かったのは、泉温が相対的に低く溶存元素濃度が高い Pond-B で、この温泉
では Sulfolobales 目に属するアーキアが 52%を占めていた。泉温と溶存元素濃度がともに低い Pond-D
も比較的高い多様性を示したが、ここで優占していたのは uncultured thermoacidic spring clone group
(UTSCG)で全体の 58%を占めていた。温度が相対的に高い Pond-A と Pond-C におけるアーキアの多
様性はいずれも相対的に低かったが、優占種はこの 2 つの温泉間では大きく異なり、溶存元素濃度が
高い Pond-A では Sulfolobales 目に属するアーキアが 89%、溶存元素濃度が低い Pond-C では Crenarchaeota
門に属する未培養アーキアが全体の 99%を占めていた。本研究により、霧島地域の温度や化学成分が
異なる酸性硫黄泉間における、アーキアの群集構造および多様性の具体的な違いが明らかとなった。
表 1. 温泉の物理化学特性および生物多様性解析結果
pH
ShannonWeaver
Total clone
number
Homologous
Coverage
57.9
2.6
0.53
106
0.95
66
73.4
2.0
2.06
112
0.88
Pond-C
88
6.7
2.4
1.23
109
0.94
Pond-D
67
11.5
2.3
1.45
104
0.91
温泉
温度
°C
Pond-A
93
Pond-B
総溶存元素濃度
mmol L-1
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未 培 養 好 熱 性 ア ー キ ア Caldiarchaeum subterraneum が も つ
ユビキチン様遺伝子の機能解析
○金井保1、藤本理夏子1、徳原将弘1、布浦拓郎 2、橘高瑞奈1、高木善弘 2、高見英人 2、
高井研 2、跡見晴幸1
(1京大院・工、2(独)海洋研究開発機構)
ユビキチン (Ub) は真核生物に普遍的に存在し、標的タンパク質と選択的に結合することで細胞周期
の制御など細胞内の様々な生命現象に関与する。国内地下熱水孔サンプルのメタゲノム解析により明
らかにされた、未培養好熱性アーキア Caldiarchaeum subterraneum のゲノム上には、原核生物には例の
ない真核生物型 Ub 様遺伝子 (Ubl) が存在する(1)。通常、Ub 化反応は、活性化酵素 E1、結合酵素 E2、
Ub リガーゼ E3 との段階的な反応により進行するが、本菌の Ubl 遺伝子は、E1 様遺伝子および、原核
生物では例がない E2 様遺伝子、RING 型 E3 様遺伝子と共に、原核生物特有のオペロン構造 (C1474
-C1478) を形成する。またオペロンの反対側には、脱 Ub 化酵素 DUB の相同遺伝子 (C1473) も存在して
いる。従って本菌の Ubl システムは、これまで真核生物が起源であると考えらえてきた Ub システムの
発生と進化を理解する上で、大変興味深い存在である。本研究では本 Ubl システムの機能の検証を目
的として、これらの因子を用いた in vitro でのタンパク質修飾反応系の再構築を行った。
まず本菌の Ubl、成熟型 Ubl (mUbl)、E1、E2 の各組換えタンパク質を調製し、これらを ATP 存在
下で混合して複合体形成反応を行った。その結果、1) mUbl-E1 複合体の形成、および 2) 本複合体から
の mUbl 受渡しによる mUbl-E2 複合体の形成、が確認された。また、mUbl、E1、E2 の各部位特異的変
異体を作製して解析した結果、 mUbl の C 末端の di-glycine motif (Gly77Gly78)、E1 の Cys184、E2 の Cys93
が、これらの複合体形成に必須であることが判明した。
続いて本菌の E3 タンパク質(C1477)を大腸菌内で大量発現させたが、発現タンパク質は不溶化した。
そこで、C1477 が下流にある機能未知遺伝子 (C1478) と共に機能している可能性を考えて、両タンパク
質の共発現を試みたところ、E3 タンパク質の一部は可溶性画分に存在し、70℃での熱処理(10 分)に
対しても安定であった。そこで、この E3 画分を mUbl・E1・E2 と共に混合し、さらに基質タンパク質
としてパン酵母の細胞抽出液を添加して Ubl 化反応を行った。この反応後の溶液について、抗 Ubl 抗
体を用いた Western blot 解析を行った。その結果、E3 画分の添加・非添加により、Ub 化バンドのパタ
ーンに変化が見られたことから、本菌において、C1477 と C1478 が複合体として存在し、実際に E3 と
しての機能している可能性が示された。
以上の生化学的解析により、本菌の Ubl システムが、真核生物型 Ub システムと類似した機構で反
応する、タンパク質修飾システムであることが予想された。
[References]
1) T. Nunoura, Y. Takaki, J. Kakuta, S. Nishi, J. Sugahara, H. Kazama, G.J. Chee, M. Hattori, A. Kanai, H.
Atomi, K. Takai, H. Takami, Insights into the evolution of Archaea and eukaryotic protein modifier systems
revealed by the genome of a novel archaeal group. Nucleic Acids Res., 38, 942-957 (2010).
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日本 Archaea 研究会 第 27 回講演会要旨集
発行日:2014 年 7 月 25 日
発行:日本 Archaea 研究会 (http://archaea.kenkyuukai.jp/information/)
編集:日本 Archaea 研究会事務局(伊藤 隆・金井 保)
印刷・製本:石川特殊特急製本株式会社(京都市南区上鳥羽角田町 72)