シャント穿刺法マニュアルを作成して

シャント穿刺法マニュアルを作成して
(医)きたやま泌尿器科医院
○山口 智子、浦 ひとみ、馬場 喜久美、
鈴木 恵美、来山 敏夫
(C) 2008
2008 KITAYAMA Urology Clinic All Rights Reserved.
はじめに
当院では、穿刺ミスによる回路内凝血で全
交換をした事例が連続したため、改めて穿
刺の見直しを行った。
スタッフ全員が穿刺方法に関するレポート
を提出し、その内容を検討した結果、最も
重要な点は確実な穿刺法であると思われた。
最終的に、論理的な穿刺法をマニュアル化
し実施したので報告する。
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ステップ
方法
① 穿刺針の構造・仕組みを理解するために、
穿刺針の各部の名称を確認。
② 穿刺の手順を7段階に分けて考え、それ
ぞれの段階で、穿刺方法とその留意点を
設定(計10項目)。
③ ステップ①・②を一枚の図表にまとめ
スタッ フ全員に配布。
④ 模擬血管を使用し、マニュアルに従って
穿刺方法・留意点を確認。
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穿刺針の各部の名称
チャンバードプラグ
把持部 (針基)
コネクター
密栓 (プラグ)
クランピングチューブ
ハブ
穿刺針
カニューレ
ベーベル (刃面)
シャフト (軸)
クランピングチューブ付きメディカットカニューラ
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<穿刺方法>
手順①
①穿刺直前にハブと把持部を持ち、チャ
ンバードプラグを把持部に強く押し付け
る。
<留意点>
1)チャンバードプラグと把持部の間の遊
1)チャンバードプラグと把持部の間の遊
びをなくし、カニューレが血管に入ると
きの切れがいいようにする。
2)穿刺針とカニューレの滑りを確認する。
2)穿刺針とカニューレの滑りを確認する。
3)カニューレとベーベル
(刃面)の差を確
3)カニューレとベーベル(
認し、ベーベルがカニューレの先端から
完全に出ていることを確認する。
把持部 (針基)
ハブ
チャンバードプラグ
ベーベル (刃面)
針先の拡大写真
カニューレ
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手順②
<穿刺方法>
②右利きの人はシャント血管の右上側面
から血管の中心線方向をイメージして穿
刺する。
<留意点>
4)穿刺針を上手く穿刺することだけでな
4)穿刺針を上手く穿刺することだけでな
く、穿刺針のベーベルで血管の上面・下
面・側面をかすって
広い切り口を作らな
面・側面をかすって広い切り口を作らな
いようにする。
ベーベル
穿刺針(ベーベル)
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手順③
<穿刺方法>
③穿刺針のベーベルが上になるように把
持部を持ち、約30
度の角度で穿刺し、
持部を持ち、約30度の角度で穿刺し、
内筒の把持部に逆血があるまで針を進め
る。
<留意点>
5)逆血があるということは少なくとも
ベーベルの内腔の一部は確実に血管内へ
入っていると考える。
把持部 (針基)
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手順④
<穿刺方法>
④内筒の把持部に逆血を確認したら針を
血管の走行にできるだけ平行にし、外筒
のカニューレに逆血があるまで進める。
・血管が細い時はベーベルの鈍角を生か
して血管上壁を持ち上げ内腔を確保しつ
つ進める。
<留意点>
6)平行にしないで最初の穿刺方向のまま
6)平行にしないで最初の穿刺方向のまま
針を進め過ぎると、血管壁を2重に突き
刺して壁外に出てしまうことになる。
カニューレ
針を血管の走行に
できるだけ平行にする
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<穿刺方法>
手順⑤
⑤外筒のカニューレに逆血が見られたら、
左母指・示指でハブを把持し、内筒針を
ガイドとしてカニューレを血管内に進め、
適切な深さまで挿入する。
・その後に内筒針を抜き、針入れに捨て
る。
<留意点>
7)逆血があるということは少なくともカ
7)逆血があるということは少なくともカ
ニューレの先端の一部は確実に血管内に
入っていると考える。
8)カニューレのみを進めることで血管を
8)カニューレのみを進めることで血管を
傷つけないで留置できる。
9)内筒針はあくまでもガイド的な役割と
9)内筒針はあくまでもガイド的な役割と
理解する。
カニューレ
ハブ
内筒針はガイドの
ため固定しておく
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<穿刺方法>
手順⑥・⑦
⑥クランピングチューブ内に血液の拍動
がある事を確認する。
<留意点>
10)カニューレが確実に血管内に入ってい
10)カニューレが確実に血管内に入ってい
ることを確認する。
⑦外筒のチャンバードプラグを緩め、勢
い良く逆血がある事を確認し、リキャッ
プする。
チャンバードプラグ
クランピングチューブ
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結果
シャント穿刺法マニュアル作成を通して
論理的な穿刺方法の理解ができた。
穿刺においては、内筒・外筒・クランピング
チューブへの逆血を確実に確認する事が最も
重要と考えられる。
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考察
マニュアル作成を通して穿刺技術向上への
動機付けができた。
新人スタッフへの的確な穿刺指導が可能に
なった。
このシャント穿刺法は、他の血管穿刺にも
応用できる。
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まとめ
今後もシャント穿刺に伴う患者の肉体的・
精神的苦痛の軽減のため、確実なシャント
穿刺法を中心として穿刺全般について改善
していきたい。
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