世界 30か国が注目する 3D 印刷技術の産業化を実現

第
553号 平成 23年 6月 15日 晦 月 1回 15日 発行 )技
術 開 発 を 目 指 す 情 報 誌
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Contents
特別企画 もの づ くり成功談 ―その体験 と展望 を語る
世界 30か 国が注目する 3D印 刷技術の産業化を実現 ′
グラパックジャバン (株 )代表取締役社長 湯本 好英
:
「 こども発 明教 室」入 室式
″
″
今年は 135名 の子供たちが ものづ くり の喜び に挑む ′
:
「第 31回 発明研究奨励金」募集始まる !!:
大震災にめげず、中小企業こそイノベーションヘの挑戦を ,
特号J企 画 く第 29回 >も の づ く り 成 功 談
粟村 大吉
(左
)
湯本 好英
公益財回法人
日本発明振興協会 名誉会長
シリーズ INTERVIEW:イ ノベーシ ョンヘの くりし
戦〉C⊃
新技術開発成功のウラ技は情報の把握と現場意識との共有″
(右 )
グラバ ツクジヤバン{株 )
社長
三和機材 (株 )営 業本部 営業企画部シニアエンジニア 山崎 ―雄
JSA∬
THE JAPAN SOCIETY FOR THE ADVANCEMENT OF INVENT10NS
語り手
湯 本 好 英 (グラパック
ジャパン 社長)
特別企画≪第 29 回≫
世界
か国が注目する3D 印刷技術の産業化を実現
30
対談シリーズ第 29 回は、グラパックジャパン(株)
社長の湯本 好英さんに登場いただいた。グラパック
ジャパンでは、大正時代から培ってきた印刷技術に
技術改良を重ね、マイクロレンズアレイを使った 3D
印刷素材『HALS』の開発に成功。立体的に見えるその
特殊な印刷技術は世界中から注目を集め、その用途
は 3D 印刷技術にとどまらず、偽造防止などの技術へ
と、その応用展開が拡がっている。
少年時代からの趣味がヒントに
まねのできない 3D 印刷技術を完成
2
そのヒントは・・・。
湯本 私は少年時代からカメラが大好きで、
粟村 3D 印刷技術『HALS』に挑戦されたきっ
中・高・大学とずっと写真部でした。その一
かけは何だったのでしょうか。
眼レフカメラのピントを合わせるための焦点
湯本 1980 年代後半に、印刷業界では生産
板の原理が、まさにマイクロレンズアレイで
拠点の海外移転が急速に進みました。その中
した。カメラの進化に伴い、焦点板も明るく
で、当社は海外には進出しない方針を決断し
見易くなり、ピントも合わせ易くなっていく
ました。パッケージやディスプレイの印刷な
のを見て、その仕組みがどうなっているのか
どの OEM 商品の生産が海外へ移り、空洞化
漠然と興味を持っていました。1980 年代に
が進む中で、自社ブランド商品を創出しなけ
は CCD カメラが登場し、マイクロレンズアレ
れば生き残っていけないと、自社独自の製品
イ方式という言葉を耳にするようになり、こ
開発にシフトしていったのです。
れは面白そうだと興味が膨らみ、頭の片隅に
粟村 国内にこだわった判断の結果が、独自
インプットされていました。個人的な趣味の
製品の開発につながったわけですね。
世界と会社で求めていた機能性がうまくリン
湯本 ちょうどその頃、新しく開発された紫
クして、印刷技術を駆使すれば作れるのでは
外線硬化型の UV インクを、当社でも導入し
と、アイデアに結びついたというわけです。
ました。インクが早く乾くことはありがた
粟村 マイクロレンズアレイというのは、小
かったのですが、コストが極め
さなレンズの集合体ですよね。
て高く、これは何か付加価値を
湯本 マイクロレンズアレイを
作らなければと、強く感じてい
使って立体的な画像が見えると
ました。ユーザーに付加価値を
いう原理は知られていました。
提供するには、いわゆる装飾的
それを印刷技術で実現するとい
な印刷の領域ではなく、何か新
うアイデアが基本のパテント
しい機能性を提供することが必
となっています。最初の特許は
要と考え、いろいろ模索するな
1993 年で、当時の生産機械で、
かで、HALS の原理であるマイ
頭の中に描いたアイデアが実現
クロレンズアレイにたどり着い
可能かどうか、さまざまな検証
たわけです。
「これは可能性が
!
粟村 マイクロレンズアレイに着目された、
ある」と直感し、すぐさま試作
に乗り出しました。
発明と生活 No.553
May/June 2011
3D 印刷『HALS』を使ったパッ
ケージや POP、カードなど、他
にないアイキャッチ効果で存
在感を強烈にアピールできる。
を行いました。
粟村 どのようにしてレンズ効
果を引き出しているのですか?
聞き手
粟 村 大 吉(協会 名誉会長)
その体験と展望を語る
求し、自社製品開発を目指して 3D 印刷技術『HALS』の
開発に成功されました。手渡された名刺は、以前拝見
したものよりもはるかに薄く、遠近感や丸みのある模
様など、技術の進化が窺えました。そして、単に 3D 印
刷という世界から飛び出し、紙幣の偽造防止など幅広
い分野で利用されていると言います。今後の思いもよ
らない用途開発と次世代技術が楽しみです。
(粟村)
湯本 まず、特殊なインクでレンズ形成のス
湯本 オフセット印刷というのは、基本的に
ペックに従った模様を印刷し、そこにアクリ
は水と油の反発力を利用します。試行錯誤を
ル樹脂を塗布すると、反発力によって樹脂が
繰り返す中で、アクリル系樹脂との間に強い
はじかれ、表面張力で中央部分が盛り上が
反発作用のある特定の素材を突き止めまし
り、凸レンズ状の効果を発揮します。材料の
た。単純にはじくというだけではダメなわけ
厚みそのものが凸レンズの焦点距離となり、
で、いかにレンズ効果を発揮させる条件を満
どの角度から見ても、裏面に印刷したパター
たすかがポイントとなります。
ンが立体的に見える仕組みです。
ところが、既存の機械では、計算上求める
10 年にわたる試行錯誤を重ね
ようやく実用レベルの薄さを実現
スペックを実現できず、新規に一から製作す
ると、数十億円程度の費用がかかると言わ
れ、あまりに高額な投資で数年間頓挫して前
粟村 どれくらいの薄さまで、実現可能なの
に進めなかったのです。偶然、大手機械メー
ですか?
カーが、全く違う目的で開発した機械を流用
湯本 試作段階では、厚さ 0.18mm(180 ミ
することが可能となり、ほぼ半分の費用で実
クロン)まで実現していますが、実用レベル
現することができました。それでも数億円の
では、主力商品となっている 0.25mm から
設備投資ですから、相当な覚悟が必要でした。
0.3mm です。初期の試作品は厚さ 1.2mm が
粟村 従来の印刷機械では、簡単にまねので
限界でした。それだけ焦点距離がないとレン
きない精度が求められるわけですね。
ズにならず、実用化にはほど遠いものでし
湯本 原理は単純なのですが、どの角度から
た。1.2mm では例えば名刺と
見ても立体に見えるようにす
して使用した時には、その整
るには、レンズの球面形状以
理に困ってしまう。これでは
上に高い位置精度が要求され
実用性・経済性がないという
ます。印刷技術では、プロセス
ことで、短焦点化に挑み続け
全体が常温で、伸縮がないた
てきました。十数年にわたる
め、ポジション精度が極めて
試行錯誤を重ねた結果、よう
高いのです。金型を使った熱
やく実用レベルの薄さと精度
成形の場合は、一つ一つのレ
を実現することができました。
ンズの表面形状はきれいです
粟 村 薄 く す る た め の 苦 労
は、どのようなことだったの
でしょうか。
『HALS(Honeycomb Array Lens Sheet)
』
。
ベース素材となる PP、PETG の表面に微
細なレンズ加工を施したマイクロアレ
イレンズシート。裏面から専用パターン
を印刷することで、3D効果が得られる。
追随を許さない独自技術で偽造防止など用途を拡大
<粟村メモ> 湯本さんは、印刷技術の付加価値を追
が、熱による変形や材料収縮
により、全体の並びが不正確に
なってしまうことがあります。
発明と生活 No.553
!
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3
特別企画<第 29 回>
ものづくり成功談 その体験と展望を語る
粟村 立体に見せるためには、元になる画像
という商品を開発しました。もちろん 3D に
も重要な要素になるわけですね。
はなりませんが、角度によってキラキラと光
湯本 デザインを含め、立体に見えるよう計
り、見え方が変わる意外な効果が生まれまし
算された画像処理技術がポイントで、実は、
た。ユーザーからの評価も高く、媒体が紙な
この画像形成法も特許技術になっています。
ので価格も安く、部分的に加工することもで
通常はデザインの領域というのは特許に馴
きることから、今では HALS より売上げが伸び
染まないのですが、3D の画像処理は感覚的
ています。費用をかけずに簡単に試作ができ
な感性の世界ではなく、全て計算式で表すこ
るシステムを作ったことが大きな推進力とな
とができる、極めて数学的なロジカルなデザ
り、次々と面白いデザインも誕生しています。
インの世界ということで、現在では、約 50 パ
次の段階としては、どの方向からでも立体
ターンを用意してユーザーに提供しています。
的に見える自然画の実現を目指しています
世界 30 か国以上で活用され
想定を超えた新たな用途が次々登場
が、そのためには、現状よりレベルが数段高
粟村 今後は用途開発による応用展開が、ま
厳密で、難関なのです。私の信条である「成
すます期待されますね。
功するまであきらめない」というポリシーのも
湯本 単純に視覚的な 3D 技術ということだ
と、全力で研究に取り組んでいるところです。
けでなく、紙幣の偽造防止などさまざまな用
粟村 今日はありがとうございました。
途にも、応用展開が進んでいます。もう一つ
が、捨てられない印刷物としての用途です。
例えば、封も切らずに捨てられてしまいがち
なダイレクトメールなどで、リターンを劇的
に向上する効果を上げています。
粟村 海外市場での評価は、いかがですか。
湯本 HALS の 技 術 は 世 界 中 か ら 注 目 を 集
めて、すでに 30 か国以上、50 社以上で使用
されています。世界には思いもよらない用
途があるものです。例えばインドでは、ヒン
ドゥー教の神様が印刷された名刺大のカー
ドを交通安全のお守りとして持つ慣習があ
るそうです。お守りの有効期限は1年間で、
誰もが自分の守り神のカードを最低3枚持
つようですが、このカードに試験採用され、
驚くようなマーケットが展開しています。ほ
かにもイスラムの経典である「コーラン」の
表紙にも採用されました。こうしたマーケッ
トがあることは、東京で机に向かっていても
気付かない。世界は広くて面白いなと実感し
ています。
粟村 次のステップに向け
た新しい技術開発は進んで
いるのですか?
湯本 HALS の印刷を樹脂で
はなく紙でやったらどうな
球や丸みを帯びた模様、遠近感で奥行 るだろうかという発想から
きのあるパターンを組み合わせること
で、立体的な額縁のような演出も可能。 「Bri-o-coat(ブリオコート)」
4
発明と生活 No.553
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い精度と技術が必要です。レンズそのものの
精度だけでなく、位置合わせの精度が極めて
湯本 好英(ゆもと よしひで)
:
昭和 27 年生まれ。同 51 年、千
葉大学 工学部 印刷工学科卒。
(株)トミー 入社。54 年、グラ
パックジャパン(株)入社。60
年、同社 取締役。63 年、常務取
締役。平成6年、専務取締役。
9年、代表取締役社長。現在に
至る。<表彰歴>第 32 回(平成
18 年度)発 明 大 賞 日 本 発 明 振 興 協 会 会 長 賞。
平 成20 年、文 部 科 学 大 臣 表 彰 科 学 技 術 賞 技
術部門。同21 年、黄綬褒章。
グラパックジャパン(株)
代表取締役社長 湯本 好英
〒 131-0031 東京都墨田区堤通 2-7-38
TEL 03-3616-1290 / FAX 03-5630-1186
創業:大正 14 年(1925 年)
事業内容:オフセット印刷、紙器(パッケージ)
製造、ジグソーパズル製造、紙製品開発・製
造、ディスプレイ・POP 開発・製造、ボード
ゲーム開発・製造・販売、3D 印刷、3D 印刷
素材製造・販売。デジタル画像コンテンツ商
品・開発・製造・販売。
アウトドア広告などに使われているマイ
クロアレイレンズは、約 2000 ミクロン(2
mm)
、紙幣などの偽造防止技術は約 20 ミク
ロンで、規格がちょうど1桁ずつ違い、用途
も異なるため、うまくすみ分けができていま
す。原理は同じですから、いろいろと情報交
換しながら、お互い切磋琢磨しています。
大手玩具メーカーから4月末に発売され
た HALS を使った女の子向けの玩具が、657
品目中第4位というヒット商品になり、大き
な売上げになっています。
(談)
TOPICS
第 33 回「こども発明教室」入室式
平成 23 年度『こども発明教室』入室式が5月8日 ( 日 )、日
本発明振興会館地下1階において行われた。今年度は、小学
3年生から中学2年生まで昨年度を大きく上回る 135 名の
児童・生徒が入室。入室式は、午前と午後の2回に分けて行
われ、子供たちは保護者に見守られながら、専任講師や運営
委員の話を、緊張と期待の面持ちで熱心に聞いていた。
今年は135名の子供たちが ものづくり の喜びに挑む!
入室式は門馬委員長の入室歓迎の言葉で始まり、
「こんなに大勢が教室に入室してくれたことに驚いて
います。頑張り通してください」と、子供たちの1年
間の活躍に期待を込めて挨拶した。
「自分の身の回りや学校で使ってい
るものを自分の目でよく見て、確かめ
て、どんな仕組みになっているかよく
観察して、もっと便利にするにはどう
したら良いか考え、作品にしてください」と、こども発
明教室でのアイデア工作の意義を説明する厚地専任講師。
厚地専任講師は、総勢 23 名の講師を代表して当日
列席した4人の講師を紹介した後、
「この教室は、学
校も学年も経験も違う子供たちが集まっていますが、
ここに来ている皆さんは、ものを作ったり考えたりす
ることが大好きな人たちだと思います。教室では、人
と同じものではなく、何を作るかは自分の頭で考えて
「発明に必要な創意工夫というのは、
毎日の生活に役立つものですから、こ
れからの1年間は皆さんにとって非常
に貴重な体験になると思います。発明
は世のため、人のためだけでなく、自分のためにもなりま
す」と、発明の原点について話す門馬委員長。
いかなければなりません。先生達はアドバイスをして
くれますが、実際に考えて作るのは皆さん一人一人で
す」と、この教室でのアイデア工作の意義を説明した。
また、過去の作品から扉のピッキング防止対策とし
て、磁石を使ってカギをかける工夫を懲らした作品を
「私は今、全国の取引先を旅してい
ます。そして、自分の利益だけでなく、
本当に感謝されるものを作ってきたの
だという幸せを実感しています。皆さ
んにも、そういう幸せな人生を歩んで頂きたい。発明は、
人に喜びと幸せを与えるのです」と語る浦谷副委員長。
子供たちに披露し、
「どうなっているか見たい人?」
と、子供たちの好奇心を掻き立て、
「この仕組みは内緒
です。どうなっているのか考えてみてください。この
ように自分の頭で考え、自分で工夫しながら、作品を
完成させていきます。1年間いろいろと考えて作って
「子供の頃は、ラジオなどの機械が
あると、中が見たくて、すぐに分解し
てみました。元通り組み立てても部品
が余ってしまう。それでもラジオは正
常に動いている。そういう体験を通して電気工学の道を
志しました」と、子供の頃の体験を話す佐藤副委員長。
ください」と、子供たちに “ものづくり” 挑戦への最初
の一歩を示した。
入室した子供たちに、佐藤副委員長から祝辞が贈ら
れ、最後に小野委員の閉式の言葉で入室式を終えた。
終了後のオリエンテーションでは、子供たちが1年間
使う道具入れや名札に、戸惑いながらも丁寧に名前を
「この教室で学んだことは、必ず将
来の役に立ちます。ここにいる委員の
方々は、発明で成功された発明企業の
社長さんたちです。皆さんもこのよう
に、発明で成功できるよう、作品作りに励んでください」
と、子供たちに励ましの言葉をかける小野委員。
書き込んだ。
午後の部は、門馬委員長の挨拶、厚地専任講師の教室
の概要説明に続き、浦谷副委員長から祝辞が贈られた。
最後に柴田委員から閉式の言葉が述べられ、子供た
ちの頑張りに期待の言葉がかけられた。
「この教室では、皆さんは自分で考え、
工夫するという今までにない経験をす
ると思います。将来大人になった時に
必ず役に立ちますから、学校の勉強とは
180 度頭を切り換えて、1年間頑張り通してください」と、
学校ではできない貴重な体験について説明する柴田委員。
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5
「第 31 回発明研究奨励金」募集始まる!!
大震災にめげず、
中小企業こそイノベーションへの挑戦を
!
6
当協会が中小企業及び発明研究者の発明考案を奨励する『発明
研究奨励金交付事業』は、今年度で第 31 回を迎え、日刊工業新聞
社と日本弁理士会の後援を得て、5月1日より候補者の募集を開
始しました。
将来、発明の実用化を目指す技術開発に取り組まれている中小
企業の皆様は、この機会に「発明研究奨励金」に奮ってご応募さ
れることを期待します。
発明研究奨励金交付事業 実行委員長
(公益財団法人 日本発明振興協会 副理事長)
加 藤 忠 郎
東日本大震災で被害に遭われたり、お知り
していない企業の従業員一人当たり営業利益
合いが罹災された方はいらっしゃいません
が 137 万円であるのに対して、保有している
か、心からお見舞い申し上げます。
企業は 180 万円です。また海外特許を保有し
この度の震災は、東北地方からはずっと離
ている企業の一人当たり営業利益は国内特許
れた工場にも大きな影響を与えています。東
のみ保有している企業の 157 万円に対して、
北地方の工場から部品の供給を受けていた製
202 万円にもなっています。
造機関が、供給が止まってしまったために倒
公益財団法人 日本発明振興協会の主要事
産というケースもあります。東北地方は金融
業である「発明研究奨励金交付事業」は、昨
面では特別な援助が行われているため、むし
年度は事情により休止しましたが、本年度か
ろそういった援助の無い他所地域の工場の方
ら再開いたしました。中小企業の発明の実用
が倒産が多いという話も耳にします。
化を支援し、中小企業の活性化を促す上で有
また、東北地方にはハイテク部品を作って
益な制度だと思います。交付金の額自体はそ
いる工場が少なくなく、日本だけでなく世界
れほど多くはありませんが、すでに 100 件以
の工場でも部品供給が止まって工場が休止し
上の交付を行い、実用化の奨励に大きな成果
ている例もあります。日本国内の製造インフ
を上げています。過去には発明研究奨励金を
ラの低下のために、生産を日本国内から海外
交付され、その製品の専門の会社まで設立さ
工場にさらにシフトしている企業も少なくあ
れた例や、発明大賞表彰事業での表彰にもつ
りません。
ながった例も数多くあります。最近では「水
大手の取引先も、自社のことで精一杯のと
漏れしない負圧式スプリンクラー」のように
ころも多く、協力企業の面倒まで見る余裕は
発明研究奨励金を交付されたのち、当協会の
なかなかないのが現状のようです。
「発明大賞日刊工業新聞社賞」につながった
中小企業にあっても、自らイノベーション
例もございます。
の実現に向けた研究開発の投資を行い、新技
私は長い間、本事業に携わってまいりまし
術・新製品の開発に取り組んでいくことこそ
たが、多数の応募の中から本当に効果を上
肝要と言えます。
げ、応募された方に喜んでいただける技術を
以前、本誌の発明研究奨励金交付事業 30
選ぶ難しさを十分実感してまいりました。し
周年の特集(平成 22 年3月号・No.538)で
かし、それと同時に、交付金によって中小企
も紹介しましたが、特許など知的財産を企業
業の発明が実用化されていくのを見守る喜び
戦略に活用して業績の向上に結びつけてい
も味わうことができました。今後も本事業の
る実態は、統計にも如実に表れています。特
運営に邁進してまいります。皆様のご指導と
許庁「平成 19 年知的財産活動調査」再編加工
ご協力をお願い申し上げ、発明研究奨励金の
(2008 年)によると、中小企業で特許を保有
発明と生活 No.553
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交付候補者募集の言葉と致します。
独自技術で将来の発展を目指す中小企業の皆様へ!
『発明研究奨励金交付事業』は、中小企業や個人発明家の持つ、アイデア段階の技術
を評価し、その研究・開発を進める経費の一部を助成します。発明考案を実用化するた
めの試作・試験等の資金を援助する制度で、研究開発資金の確保が難しい中小企業を
支える一助となっています。
趣 旨
5.申請手続き
奨励金の交付を希望する方は、所定の様式による申
公益財団法人 日本発明振興協会は、科学技術の振
請書・添付資料各2部を、平成 23 年5月1日より7
興、産業の発展に資する中小企業及び発明研究者の発
月 31 日(必着)までに、下記宛に提出してください。
明考案を奨励する目的をもって、本要領に基づき、発
申 請 書 は 当 協 会 に 請 求 さ れ る か、ホ ー ム ペ ー ジ
明研究奨励金を交付して、その発明考案の実施化を援
(http://www.jsai.org/)からダウンロードしてください。
助します。
6.審査及び交付の決定
申請手続き要領
1.交付対象
次の事項に該当し、発明考案の実施化もしくは展開
に必要と認められるものを交付対象とします。
(1)特許権または実用新案権として登録済みのもの。
審査は、規程に基づき、審査委員会で審査し、その
結果を 11 月に直接本人に通知します。
7.交付決定後の義務
(1)試作及び研究期間は原則 1 年以内です。それまで
の間、中間報告書として、試験研究の進捗状況及び
交付金の使用明細を3月と9月に提出してください。
(2)特許または実用新案を出願し、すでに公開され、 (2)当該試験研究が完了後、直ちに完了報告書を提出
かつ審査請求済みのもの。ただし、係争中のものは
除く。
(3)平成6年1月1日以降出願の実用新案は、実用新
案技術評価書入手済みのもの。
してください。
(3)当該試験研究完了の1年後、その後の進捗状況に
ついて報告書を提出してください。
(4)虚偽の申請をして奨励金を受けたことが判明し
2.申請者の資格
た場合及び報告書を提出しない場合は、奨励金を返
奨励金の申請のできる者は、次の要件を備えている
納していただきます。
ことが必要です。
(1)中小企業または個人。
(2)個人の共同発明の場合は、その代表者。
(3)企業内発明の場合は、企業代表者の承認を得た
者。
ただし、成年被後見人及び被保佐人を除く。
3.対象となる経費
奨励金の対象となる経費は原則として、発明考案を
実施化するための試作、試験もしくは発明考案をさら
に展開するための調査研究に要する直接経費で、例え
ば次のものです。
①原材料・副資材、②試作用型、③外注試験費・加
工費、④調査研究に関する外注費。
人件費、事務費等の間接経費は除きます。
4.交付金額
交付金額は原則として1件あたり 100 万円を限度
とします。
≪申請書の請求先及び提出先≫
公益財団法人 日本発明振興協会
発明研究奨励金交付事業 実行委員会 〒 150-0031 東京都渋谷区桜丘町4番 22 号
電話 03-3464-6991 FAX 03-3464-6980
発明研究奨励金交付事業 実行委員会(敬称略)
■実行委員会<5名>
<委員長>
加藤 忠郎〔副理事長〕
<委 員>
佐山 公則〔評議員〕
土本 義紘〔賛助会員〕
松岡 玄五〔賛助会員〕
柴田 治呂〔専務理事〕
このほか専門委員(1名)と、審査委員会により
審査を行います。
発明と生活 No.553
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7
平成 23 年度「第 52 回科学技術週間」参加行事
第 41 回優秀発明発表会
発明大賞受賞の独自技術に飛躍への期待高まる
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科学技術週間の一環として「第 41
優れた独自技術への関心を高めた。
回優秀発明発表会」を(財)科学技術
また、諏訪東京理科大学 客員教授の
振興会と日刊工業新聞社の後援によ
西澤 紘一氏が、
「知的財産権と危機
り、JAM 金属労働会館(東京・渋谷区)
管理」について講演を行った。発表会
において、4月 18 日に開催した。
「第
後に日本発明振興会館で開催した懇
36 回発明大賞」の受賞4社が発表を
親会では、大学関係者や異業種企業
行い、来訪した多くの聴講者に対し、
発表会に先立ち、公益財団法人 日本発明振興協会
んか?との質問に、会場内から大きな笑いが起きる
原理事長(現・会長)から挨拶があり「この発表会が中
場面も見られた。
小企業の発展の一助になれば幸いです」と事業の意
発表会終了後、会場を日本発明振興会館の2階に
義を説明した。続いて、
(財)科学技術振興会 亀田理
移して懇親会を行った。懇親会は、後援の(財)科学
事長が挨拶し、
「科学技術週間参加行事として、有意
技術振興財団 平本常務理事の挨拶に続き、当協会の
義な発表会になると思います」と述べた。
重田理事による「がんばろう日本!」との乾杯の発
第 36 回発明大賞受賞技術について、4氏が発表
声でスタートした。会場には、溢れるほど大勢の参
を行い、それぞれの技術ポイントや、開発での苦労
加者が詰めかけ、発表者を囲んで開発の経緯や、技
『発明と生活
談などを語った(技術の詳細については、
術に関する鋭い質問が飛び交っていた。
第 36 回発明大賞特集号』No.552 参照)
。
会場内に設けられた展示コーナーには、発表技術
また、諏訪東京理科大学 機械システム工学科 客
の製品サンプルなどが置かれ、参加者の高い関心を
員教授の西澤 紘一氏((株)サムライネットワーク
集めた。参加者は製品を手に触れながら、重さを比
代表取締役社長)は、
「知的財産権と危機管理」につ
べたり、味見をしたりと、その優れた技術をつぶさ
いて講演を行った(本誌9~ 12 頁参照)。
に体感する様子がうかがえた。
質疑応答では、発表者に対して、給油時間はどれ
最後に、講演者の西澤 紘一氏から挨拶があり、
くらい効率的か? 泥棒に対する防犯効果は? 偏
8
間で、積極的な交流が図られた。
「日本人の武士道精神をもって、力を合わせて未来
光板貼付けの仕組みは? 鮮度保持による賞味期限
に進んで行きましょう」と、励ましの言葉があり、
は?といった発表技術に対する具体的な質問が投げ
当協会の柴田顧問(現・専務理事)の挨拶で閉会となっ
かけられた。また、ワインの鮮度を何とか保てませ
た。
発明と生活 No.553
発明大賞本賞受賞の『操作性、
安全性を向上した環境に優しい
給油ノズル』の開発経緯につい
て説明する(株)タツノ・メカ
トロニクスの本橋 俊明 専務取
締役。
発明大賞東京都知事賞受賞の
『レバータンブラー方式のシリ
ン ダ ー 錠( 可 変 式 シ リ ン ダ ー
錠)』の構造について語る(株)
オプナスの峯村 陽一代表取締
役社長。
発明大賞日本発明振興協会会長
賞受賞の『テーブル回転機構を
用いた両面同時式偏光板貼付装
置』の技術について解説する淀
川メデック(株)の木村 滋常務
取締役。
発明大賞日刊工業新聞社賞受
賞の『逆止弁を備える自立型二
重構造の液体包装袋』の液体の
鮮度保持の仕組みについて語る
(株)悠心の二瀬 克規代表取締
役社長。
May/June 2011
諏訪東京理科大学 西澤教授 講演要旨
特許に関するリスク管理
諏訪東京理科大学 システム工学部 機械システム工学科 客員教授
〔(株)サムライネットワーク 代表取締役社長〕
西澤 紘一
「第 41 回優秀発明発表会(本誌8頁)」で『知的財産権と危機管理』
をテーマに講演していただいた西澤 紘一氏の講演要旨を紹介する。
最近、知的財産権にまつわるリスク管理が注目
んと言えばその通りであるが、これまでのプロセ
され始めた。特許権を取得する場合も、しない場
ス特許の欠点を徹底的に研究した結果であろう。
合も、経営環境に与えるリスクの大きさは変わり
したがって、特許を出すことは、競争相手も最
ない。
強の対応策を練るであろうという条件を何時も考
特許権が取得できる条件下にあるにもかかわら
慮しておかなければならない。特許で、競争相手
ず、出願しなかった、または出願の時期が遅れた
を封じ込めたと思える期間はそう長くはない。特
という場合は、その後の経営に及ぼす影響は極め
許は出願した時点で、すでに陳腐化が始まってい
て大きい。
るという格言もある。
払わなくても済んだロイヤリティの支払いを余
特許を出さないでも新規性を担保するために
儀なくされたり、気が付かない場合には特許侵害
は、公証人役場で特許明細書を封印しておくこと
で訴えられる危険性さえある。
も可能である。同じような特許が出たとき、その
また、技術の狭い範囲で考えていたために大魚
封印を解けば、少なくとも通常実施権(先使用権)
を逃したという例もある。
だけは確保できる。したがって、侵害訴訟や遡っ
ある酸化物系を使って新しい誘電体の研究をし
てのロイヤリティの支払いは生じない。
ていたところ、ほとんど同じ組成で超伝導性を持
昨今、特許で市場を抑えるよりは、デファクト
つことが後で分かったという例を見ると、同じも
として商品力で市場影響力を行使する方が現実的
のが見方次第では、石になったりダイヤになった
であるという考え方もある。市場影響力は、製品
りすることもある。そのためには、極めて広い科
の特性や価格だけではない。流通ルートや世間の
学的知識を有することが前提であるが、知的財産
評判(パイオニアであるとの評価)など複合的要
戦略の面から考えれば、1つのアイデアを資産化
因でシェアが形成される。したがって、特許その
する努力も必要ではなかったかと思う。
ものの効果は二次的なものと考えても良いかも知
1.特許出願のリスク
れない。特許をあえて出さない戦略は、極めて重
要なものである。
特許には、新規性を図る対象として製品とプロ
“ 特許を出さない ” という積極的な意味でなく、
セスに分かれる。製品にまつわる特許は、侵害し
“ 特許が出せなかった ” ということは、出願に至
ているかどうかの判定は比較的やさしい。しかし、
らなかった結果は同じであるが、その後の展開に
プロセスについては第三者がその特許の侵害の有
は雲泥の差がある。ましてや競合相手と同じよう
無を判定することは極めて困難である。むしろ手
な開発をしていて、ほぼ同じ内容の特許出願を検
の内を見せることで競争相手にヒントを与えるよ
討しており、出願時期が遅かったというのは、ミ
うな結果にもなる。光ファイバの製法特許はその
スでは済まない。競合が激しいほど、特許出願に
典型例で、最後に市場を制したのは、日本が出願
一刻を争っていることを肝に銘じるべきである。
した VAD という技術であった。後出しじゃんけ
電話に関する特許が、ベルとクレイで出願時間が
発明と生活 No.553
May/June 2011
9
特許に関するリスク管理
数時間の差であったとの例がある。
2.特許調査不備のリスク
後、競合相手から侵害訴訟を受けたり、請求範囲
が不十分であったことを悔いるのは、最悪の選択
であろう。今後、無駄な特許出願を避け、かつ登
前述したように特許の出願時期の早遅は決定的
録査定の確率を上げるためにも、事前先行特許調
な差となる。現在は電子出願が認められているの
査の重要性は、ますます高まってくるであろう。
で、実際特許を出願した時間が重要である。同時
の場合は、くじ引きで決めるという。特許の内容
3.特許登録維持に関するリスク
の請求範囲など精緻化する作業と、出願時間は反
特許登録されれば、安心して製品を製造販売で
比例する。精緻さを求めれば求めるほど出願時間
きる。また場合によれば、競合相手からロイヤリ
は遅くなる傾向にある。しかし、精緻さを犠牲に
ティを受け取ることもできる。さらに競合相手が
すると、後での補正や拒絶査定の対応などに多大
持つ当社が欲しい特許と交換することもできる。
な時間と精力を要することになる。そのために必
特許戦略を駆使することで、経営を安定させ、収
要なことが、事前先行特許調査である。発明者本
益を継続的に上げることができる。
人が、当然前もって調査しておくべきことではあ
一方で、特許出願時から陳腐化が始まると言わ
るが、発明者本人は、自分の発明が唯一無二と信
れているように、技術開発の進歩は1日と遅滞す
じており、自己否定をするかも知れない先行特許
ることはない。したがって、独占的技術であって
など調べたくないとの本音がある。もちろん、特
市場が支配できる特許であればある程、代替技術
許調査を業とする企業もサービスをしてくれる。
の開発がされていること、ある日突然、自社の特
しかし、発明者本人だけではなく、善意の第三者
許の効力が消滅する日を覚悟しなければならな
(上司、知財部、企画部、営業関係者など)にも
い。強い特許を持てば、周辺の技術開発を疎かに
関与してもらい、第三者の調査を受けるべきであ
してはならない。周辺特許出願を継続すること、
ろう。発明内容の詰めと出願時間の短縮を勘案し
発明者の名前が増えていくことは、競争相手に
つつ、出願時期を決めることができる。また、先
とって自社の開発状況を明らかにする不利な点が
行特許がすでに存在していることが分かれば、出
あると同時に、競争相手を威嚇する効果もある。
願を中止するか、さらに新しいアイデアを盛り込
また、クロスライセンスやロイヤリティを安くし
んで先行特許を凌駕する開発をすべきかを決めれ
ていくことで、競合相手に代替技術開発をあきら
ばよい。発明者の言うままに(学術的側面からの
めさせる戦略も検討すべきである。
みの新規性、進歩性)開発を継続し、商品化した
さらに最近では、特許トロールビジネスと呼ば
公益財団法人 日本発明振興協会の事業活動
中小企業や個人発明家の優れた発明を顕彰する「発明大賞表彰」事業や、豊か
な発想力と独創力を育てることを目的とした「こども発明教室」を はじめ、発
明考案を実施するための費用を援助する「発明研究奨励金交付」事業、アイデア、
発明考案、特許出願などについてのご相談にお応えする「無料発明相談」なども
行っています。
一般の方も、是非ご利用ください。
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発明と生活 No.553
May/June 2011
諏訪東京理科大学 西澤教授 講演要旨
れる “ 特許を証券のごとく扱う企業 ” も現れてき
払うリスクがある。米国などで敗訴すると、懲罰
た。彼らは、製造して製品を販売するのではなく、
的損害賠償金が科せられる。十数年前にオート
特許そのものでビジネスを行うスキームである。
フォーカス機構の特許係争で、ミノルタ社が米国
市場で人気を博している製品の周辺特許を調べ上
のハネウエル社に敗訴した例が生々しい。した
げて、それらの特許を買い上げる(特に個人や大
がって、自社の持つ強い特許の周辺技術には、常
学の先生が持っている特許は、買いやすいと言わ
に目を光らせておく必要がある。
れている)。
特許出願する際には、登録査定を獲得して排他
そして、買い取った周辺特許の MAP を作り、
的独占権を取得したいという積極的な意味と、競
現在流通している製品に対して特許侵害の可能性
合相手に独占させたくない防衛的意味がある。す
のある特許を使って訴訟を起こす。訴訟は、長引
なわち特許公開(1年半後全て公開する制度)を
き敗訴のリスクもあることから途中で和解とな
積極的に使う手である。技術の詳細を特許として
り、和解金を得るというビジネスモデルである。
開示しておけば、競合相手にまねをされる心配が
この対応としては、特許 MAP の制作が助けと
ない。また、公開情報を使って製品を作り、プロ
なる。製品、プロセス、材料、方法、評価など要
セスを実施している以上、係争の対象にはならな
素別に先行特許を調べてプロットする。重なりが
い。
あるところは、競合している分野であり、空白部
このように特許にも戦略的な意味があり、一律
は、競合していないか気が付かないで抜けている
に評価ができないことが分かる。1つの分野で数
分野である。これを専門家が見れば、特許リスク
万件から数千件ある特許を1つ1つ評価すること
に気が付くはずである。こうすることで、研究開
は不可能に近い。また市場性で見るか、技術的進
発の方向が決まり、特許リスクが減少する。
歩性で見るかにより、評価尺度も変わる。そこ
4.特許評価の重要性
特許を出願するかしないか、または登録維持す
るかどうかなど、特許に関わる時期の如何を問わ
ず大きなリスクが存在する。リスクは、予測され
る損害の絶対値とそれが起こる生起確率の積、す
なわち期待値で評価できる。特許侵害訴訟に負け
ると、侵害期間中のロイヤリティ相当の金額を支
「第 41 回優秀発明発表会」で講演する西澤氏
発 明 大 賞 表 彰 事 業
優秀な発明考案によって、わが国科学技術の振興、産業の発展、国民生活の向
上、環境問題の解決等に寄与した中小企業または発明研究者を表彰します。中堅・
中小企業の発明、考案を広く社会に紹介し、発明の振興を図る目的で創設した制
度で長い歴史と権威を誇り、平成 23 年度で第 37 回を迎えました。当協会の主
要事業であり、日刊工業新聞社と共催で推進しています。
◆ 毎年、7月〜9月に募集しています。優れた発明考案技術を持つ中小企業の皆様は、当
協会の「発明大賞」に是非ご応募ください。
発明と生活 No.553
May/June 2011
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特許に関するリスク管理
諏訪東京理科大学 西澤教授 講演要旨
で、特許を客観的に(主観が入らない)評価する
ニングとして相対評価まではできる。特許の評価
システムはできないものかと考えている。一種の
は、あまりに個別的であり、かつ市場との距離感
スクリーニングであっても良い。特許の持つさま
があって、なじまないと言われてきた。しかし、
ざまな書式、インデックスなどをデータベース上
データベースが完備され、コンピュータの処理速
で拾い出し、予め決めたアルゴリズムでウエイト
度の高速化さらにクラウド化で、誰でも手に入れ
をかけて計算する方法である。これは、韓国の
られる評価尺度となりつつある。
WISDOMAIN 社がユーザサービスの一環として、
すでに実用化している。特許評価の基本は、基本
5.まとめ 特許であるかどうかである。被引用数や応用特許
特許出願は、発明を事業化するための重要な要
の流れを見ると、大抵類推できる。面白いのは、
素であるが、出願、登録後は、独占的地位を確保
特許の市場性評価をファミリー特許の出願状況で
し、安心してビジネスを展開できる時代ではなく
測っている点である。どの企業も強い特許で市場
なった。出願時、登録維持期間、いずれにおいて
を独占するようになれば、競合が心配になり周辺
もリスクが存在する。したがって、出願時、登録
技術の開発を進めるはずである。また技術者の投
維持期間を通じて、絶えず特許権のリスク管理を
入も増えてくる。これは、強い特許の周辺(ファ
怠ることはできない。そのためには、広義の特許
ミリー特許)の出願数と発明者の数の経時的変化
調査を実施する必要がある。また、周辺特許の評
を見れば、およその見当が付く。
価も怠ることはできない。
こうして得られた特許の評価は、点数化できる。
昨今、知的財産権の戦略的意味が大きく変わっ
そうすればある特定分野の技術や企業の動向が透
てきたように思う。単に特許を出し、登録されれ
けて見える。点数が高いからといって経済価値が
ば安心という時代ではない。そこに、戦略的特許
高い特許であるとは限らない。しかし、市場性や
調査と特許の客観的評価が求められるゆえんであ
新規性がある特許は、点数が高くなることは言え
ると思う。
る。実際には、専門家がその特許を読み下して評
価する以外には手がない。しかし、第1次スクリー
ニングには十分間に合う。さらに同じ分野におけ
る A 社と B 社の特許の評価が、相対値として得
られる。企業の技術力を客観的に評価することは
極めて困難であるが、この方法を使えばスクリー
こ ど も 発 明 教 室
小学校3年生から中学校2年生までを対象に、1年間にわたり、基礎からア
イデアによる自由製作まで、“ ものづくり ” のおもしろさ、難しさを体験する
教室です。21 世紀の日本を担うこどもたちの豊かな発想と創造力の育成を目
指しています。協会3大事業の1つとして、昭和 54 年から実施しており、平成
23 年度は 33 回目になります。
<お問い合わせ>
◆開室時間:A グループ 土曜日 14:00 〜 16:30
B グループ 日曜日 9:30 〜 12:00
C グループ 日曜日 13:00 〜 15:30
12
発明と生活 No.553
May/June 2011
公益財団法人 日本発明振興協会
東京都渋谷区桜丘町 4-22
電話:03(3464)6991
平成 23 年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰
─協会関係者 14 名(9件)が「科学技術賞(技術部門)」を受賞─
文部科学省は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、
その功績を讃える「平成 23 年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」の受賞者を決定した。
この大臣表彰には、当協会の推薦者及び協会関係者 14 名が「科学技術賞」を受賞。なお、予定され
ていた表彰式は、東日本大震災による被害の状況等を踏まえ、中止となった。 (敬称略)
小根田 育冶
鈴茂器工(株)
代表取締役社長
河津 肇
佐藤 義久
アイエヌジ商事(株)
取締役
技術開発室長
小野産業(株)
執行役員
技術本部長
食品計量盛付器の開発育成
高効率粉砕竪型ミルローラ
の開発
金型加熱冷却を利用した高転写
射出成形技術と金型技術の開発
弁当や丼物等を提供する外食産
竪型ローラミルによる石炭粉砕
プラスチック成形品にはウェル
業、学校給食・病院・食堂などで
では、燃焼性の向上や二酸化炭素
ドライン・フローマーク等の外観
は、正確な計量と衛生的で塊のな
排出量の削減要求から、より微粉
不良が起こることがある。樹脂の
いふっくらしたご飯の盛り付けが
度の高い石炭が強く求められてい
射出時に金型温度を高くすること
できる、小型で低価格の盛付器が
た。従来の竪型粉砕機の粉砕ロー
で、それらの不具合が解消できる
求められていた。従来、ご飯の計
ラは、表面が平滑なため噛み込み
ことは公知であったが、射出成形
量盛付器は、大量の弁当を供給す
性が劣り、粉砕量、特に微粉粉砕
で製品を得るためには溶融樹脂を
る工場向けの大型機械の開発は進
量が少なく、低品位炭の粉砕性、
冷却固化してから取り出す必要が
んでいたが、外食産業の店舗や学
粉砕の安定性にも問題があった。
あることから、生産性が著しく低
校、病院などの食堂調理場で、誰
また、粉砕機自体も多大な電力を
かった。
でも容易に操作使用できる小型の
消費していた。
本開発は、射出成形金型の温度
機械は開発されていなかった。
本開発は、ゴマをすり潰すため
を短時間で急速に昇温・冷却する
これらのニーズに応えるため、
のすり鉢の溝と同様に、粉砕ロー
ことを可能としたことで、生産性
従来の盛付器にはない電子秤を採
ラ表面に粉砕原料の噛み込み効
を向上し、各種樹脂に対してもさ
用し、ご飯を移送するローラーと
果を与える溝を設けた、高効率粉
まざまな向上効果を付与できる技
ほぐすローラーを制御する計量機
砕ミルローラである。この溝が使
術である。
構に加え、ご飯をパラパラと爪で
用中に粉砕原料の自然の当たりに
本開発技術(RHCM 成形技術)
掻き落とす機構を備えた小型の食
よって、ローラ円周表面に等間隔
により、従来の射出成形方法では
品計量盛付器を開発した。本開発
で形成され続けるため、ローラが
なし得なかったウェルドライン・
により、外食産業などの店舗調理
磨耗減肉を生じても、その溝が長
フローマーク等の製品表面欠陥の
場で、誰でも簡単な機械操作で、
期にわたり維持され、噛み込み性
解消や、高シボ転写、高光沢(ピ
正確な計量と衛生的で美味しく
を持続し続ける。
アノブラック)等の高品位な外観
ふっくらとしたご飯を迅速に盛り
本開発により、安価で硬い低品
を塗装レスで製品に付与すること
付けできるようになった。
位炭や高水分含有量の亜瀝青炭
を可能とした。
本成果は、パート従業員やアル
を、その優れた噛み込み性により
本成果は、プラスチック成形品
バイトが多く働いている外食店
安定的に粉砕し、20%以上の粉砕
の表面欠陥を改善し、高品位な成
舗、正確なカロリー計算が求めら
量の増加、完全燃焼に貢献する微
形品を得られるため、環境負荷の
れる病院などで大いに役立ち、外
粉粉砕量を 30%以上向上させた。
大きい塗装工程の削減や、リサイ
食産業等の今日の発展と学校給
本成果は、エネルギーとして不
クル性の向上等、地球環境に優し
食・病院・食堂などにおける給仕
可欠である安価な低品位炭の有効
いものづくりに寄与している。
の効率化に貢献している。
利用の一助に大きく寄与している。
発明と生活 No.553
May/June 2011
13
平成 23 年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 受賞者
楡 孝
松原 一雄
フェトン(株)
代表取締役社長
松岡 玄五
松野 明
(有)K&G
取締役社長
取締役
(開発部門管掌)
安藤 聡
負圧式スプリンクラーの開発
村岡 朋文
製造部 機構設計グループ
マネージャー
これまでのスプリンクラー設備
は、荷物の搬入・搬出時や改修工
微小多数点一括レーザ加工装置
の開発
技術開発センター
技術部 課長
技術開発センター 技術部 主任
患者の診察時の負担をより軽減
した婦人科用検診台の開発
事、寒冷地での凍結などによるス
昨今、高齢者の増加や、がんな
プリンクラーヘッドの破損、また
どの婦人科検診が増えていること
配管の経年劣化や腐食によって生
インクジェットプリンタヘッ
じるピンホール等により、水漏れ
ドのノズルは、多数穴を微小径・
事故を引き起こすことがあった。
高精度に形成する必要がある。従
来、加工方法の一つとして、紫外
そこで、真空ポンプを用いて大
光レーザとパターンマスクを用い
気圧より低い圧力をもつ負圧水を
た光学系により、樹脂シートに穴
作り、これを従来型のスプリンク
加工を行う方式が用いられてき
ラーで使用していた加圧水、または
た。しかし原理上、レーザ光を遮
圧縮空気に置き換えて使用する負
光するこの方式では、エネルギー
圧式スプリンクラーを開発した。
の大部分が無駄に失われていた。
本開発は、加工光学系にパター
真空ポンプの脱気作用による配管
ン配列したマイクロレンズアレイ
寿命の延長も期待できる。
を用いることにより、従来は損失
本発明により、水漏れ事故によ
していた加工部以外のレーザ光を
る多大な被害が心配される建物
集光して、加工に利用することを
可能とした。また、マイクロレン (病院、インテリジェントビル、大
ズヘの入射エネルギー積算量が均
学、大型家電量販店等)の新築工
一となるように、マイクロレンズ
事をはじめ、実際に水漏れ事故を
アレイパターン上をビームスキャ
起こした建物や、水漏れ事故の恐
ンしながら加工することで、広範
囲領域の加工を可能とし、かつ、 れがある建物のリニューアルにも
採用されている。
加工穴径の均一性を向上した。
本開発により、エネルギー利用
本成果は、従来大規模で膨大な
効率が大幅に向上し、同一エネル
費用を必要とするスプリンクラー
ギーに対する一括加工範囲の広範
設備の改修工事において、工事の
囲化が可能となり、従来方式に対
簡素化及び低コスト化を実現し、
して生産性が3~5倍向上し、大
容易に行えるようにした。また、
幅な消費エネルギー低減・低ラ
改修工事の簡素化により、工事に
ンニングコスト化を実現した。環
境・経済両面の改善に寄与してい
伴う廃材等の減少に貢献し、環境
る。
問題にも寄与している。
発明と生活 No.553
川上 秀生
渡部 強志
開発部長
14
アトムメディカル(株)
代表取締役社長
May/June 2011
を踏まえ、産婦や高齢者への診察
による身体的、精神的負担を軽減
した検診台を使用した医療体制が
望まれている。診察において、診
察部位である腰部分を傾斜させ、
診察しやすい体位に変換する場合
があるが、従来の診察台は背板と
腰部とが一体構造であり、腰部の
みの単独傾斜はできなかった。
そこで本開発は、患者の腰部の
みを単独で上下動させる構造と
し、診察部位を診察しやすい場所
へ微調整できるようにした。患者
の頭部を下降させる方向に台を傾
斜させることなく、かつ、医師及
び看護師が患者に触れることなく
診察体位を変えることを可能にし
た。
本成果により、患者の診察体位
を患者自身で変える、あるいは医
師、看護師等により変えられるこ
とによる患者に与える大きな負担
や恐怖心、不安感等を解消すると
ともに、診察や看護の現場におけ
る効率化と省力化、ならびに医師
や看護師の労働環境の改善にも寄
与している。
平成 23 年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 受賞者
秋山 惠男
山田 吉郎
吉田 孝雄
(株)テクノス
代表取締役会長
(株)ヨシダ鉄工
代表取締役
自動外観検査システムの開発
従来、製造物の外観検査のほと
んどは目視により行われてきた
が、人によるバラツキ、疲労によ
るバラツキなど、検査レベルを一
定に保つことは極めて難しかっ
た。さまざまなセンサが提案され
てきたが、目視の代替となる精度
は実現していなかった。
そこで本開発は、人間の目の細
胞機能や動きを電子回路化するこ
とにより、微細欠陥検知能力や色
ムラ検知精度を飛躍的に高度化し
た自動検査システムを構築。
世界で初めて確実検査を可能に
し、目視の 100 倍を超える色ムラ
検知精度を持ち、微細欠陥検知精
度においても人間の 116.5 倍の精
度を実現した。こうした高精度化
により、同じ欠陥を遠方から検知
できるため、従来の 6000 倍(50
ミクロン検知時)のピント(被写
界深度)を持ち、立体形状物の検
査の実用化に大きな貢献をした。
また、世界 14 か国で特許が成立
し、今後海外への販売にも大きな
力になると期待される。
本成果は、作業者をつらく厳し
い単純検査作業から解放した。ま
た、検査レベルの安定と確実な欠
陥原因把握による欠陥撲滅システ
ムを構築し、材料資源のロスや企
業業績の向上に大きく貢献してい
る。
武陽ガス(株)
技術研究室長
兼 供給部参事
〔東京都/福生市 推薦〕
プレート板連結方式による
チップ搬送コンベヤの開発
移動式ガス発生設備の開発
工作機械から排出される切りく
1990 年 1 月、政 府 は 2010 年
ずの搬送装置として、汎用性の高
までに全国の都市ガス事業者のガ
いヒンジ式チップコンベヤがあ
ス種を高カロリー 13A(主に天然
るが、切りくずがヒンジの金属プ
ガス)に統一するという「IGF21
レート(ヒンジパン)の隙間に挟
計画」を提案した。しかし、近隣
み込まれて故障の原因となること
に天然ガスの導管がない都市ガス
が多く、メンテナンスも容易にで
事業者は、13A ガスヘ移行(熱量
きなかった。
変更)できず苦慮していた。
そこで、コンベヤの金属プレー
本開発は、プロパンを原料とし
ト(エプロンパン)を左右のチェー
て天然ガスと同等の燃焼性を有す
ンの間に複数連結し、プレート板
る 13A ガスを製造する技術で、熱
の 一 方 の 凹 部 と、も う 一 方 の プ
量を一定にするためプロパンと空
レート板の凸部とを組み合わせ
気を超音速流で混合するミキサー
ることによって、凸部が凹部の中
を開発し、それを小型・軽量化し
で回転する構造とし、故障が少な
た。さらに、移動・設置が簡単で、
く、メンテナンスも簡単なプレー
原料(プロパン)の調達も容易で
ト板連結方式(エプロン式)のチッ
あることから、当設備を利用した
プ搬送コンベヤを開発した。
熱量変更作業を考案した。これに
本開発により、従来のヒンジ式
より、全国の都市ガス事業者によ
コンベヤのような隙間をなくして
る低コストでの熱量変更を可能と
切りくずが挟まりにくくすること
し、国の施策である「IGF21 計画」
に成功した。また、曲げ構造によ
の達成に大きく貢献した。
り従来のヒンジパンに比べ曲げ方
本成果は、ガス管の入替工事時
向に対する強度が高く、構造上、
にガスの供給を停止せず、バイパ
エプロンパン同士が接触しないた
ス配管に要する工事費を大幅に削
め、磨耗による故障も低減した。
減でき、顧客及びガス事業者の保
また、ボルトを用いてエプロンパ
安面の向上と経済的負担を大きく
ンを固定しているため、メンテナ
軽減した。大規模地震後の病院や
ンス性にも優れている。
避難所等の重要施設へのガス供給
本成果は、工作機械の稼働率と
を、早期に回復するための打開策
生産性の向上に寄与している。
としても大きく寄与している。
発明と生活 No.553
May/June 2011
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を実現するための技術 と情報の蓄積に努め
ていたからこそ、相めたのだと思います。
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1開 発気運 とマ ッチ して、入社以来 27年 間で
1150件 以 Lの 特 許を 出願。そ の うち約 90
1件 が登録され、実用化に結びついています。 三
和機材 (株
,幸 いこれらの実績が業界で.T価 され、ユー 営業本部 営業企画部
,ザ ーの多くの方から 私のところに相談が シエアIン シニア 席技術者 部長待遇
一 雄
,持 ち込まれるようになり それらに対応す 山
盾
与
ζ示
しゝ 、労
量
所
だ
露
)
新 技術開発成 功 のウラ技 は
崎 情報 の把握 と現場意識 との共有 〃
(上
│る ため毎日のように全国を飛び回つていま
す。
第 35回 (平 成 21年 度)発 nH大 賞「発明功
労賞Jを 受賞 した油llカ プラも、そ うした開
発の 中の一つです。地中深 く掘 リ ドげてい
く ドリルの油Ftカ プラが しば しば破損する
ことが、現場で大 きな課題で した。原因は、
六角形の ドリルlll手 内に配設された 2ケ
の油l■ カプラにかかる回転 トル クの負荷に
「 2ケ のカプラを
よるもので した。そ こで、
同芯に して二 童の リング状 にすればいいJ
み、見事に長年の課題
との発想で開発にりζ
を解消 しま した。アイデアそのものは単純
だったのですが、試作か ら製品化 までは大
変苦労を車ね、発明 も提案か ら特 .r出 順 ま
で 6年 もの歳月がかか りました。
30年 の特許技術を把握 し開発に挑運
巨 去
llt工 事では、杭 の 支持力算定式 における
支持 力係数が極めて重要です。ユー ザー は
この数値の認定を取得する ことで、独 自工
法である ことを主張することができるか ら
です.杭 自体はJlSlll格 │で 差がないため、
『
よ り大きな数 lHを 取得する ことが、他社 との井をつけ
るポイン トとなるわけです.そ れまで一定値であった
支持力係数に、試験値が採 │‖ さオlる ようにな り、少 し
│で も大きな支持力を得るための新工l■ 開発ブームが起
きま した。そ うした 11法 開発の タイミングに直面 した
│こ とは極めて運が良かつた と言えますが、日常か ら現
発明と生活
54月
公益財団法人
:
場をめ ぐり、ユー ザーか ら求め られる工法
エ法の創出で 90件 以上の特許を取□
常に新 しい工法が求められる杭「 事の業
[事 と
で、新工法・新機構の発明が、私のイ
、
´
●,,.
│
最初に基礎 工事機材のセ クションを任 さ
れ た時には、全 く知 らない分野 で した。何
を開発 したらいいのか見当もつかず 手始
めにフ アイル数百冊にも及ぶ過 去 30年 分
の業界の特許を今て調べ ま した。人間の頭
は非常 に使利にできているもので、ち らっ
と見てお い ただけ で も 記憶 のサ
i lIBに は
残 っているものです。そのおかげで、ユー
ザーか ら相談を持 ちかけ られた時に、その
アイデアがオ リジナル技術か、過去に出順
された技術か、瞬時に判断できるよ うにな
り、無駄な開発かな くな りました。
E製 品化にこだわ り工業所有権を目指すコ
新 技 術 開発 で も う一 つ 重 要 な こ とは、
ユー ザー との接点のある開発は、発
「Hが 特
許 とな った時 すでに製
1甲
1ユ ーザーがいる
とい うことです。Int場 主義を買 き、漠 とし
た要 望にメーカー として応えなが ら、使用
者 と一体 とな って開発を進 め、製品化を成
功 させ ることに こだわ つています。特許の
維持 には経 費かかか りますか ら、企業 とし
ては取得 したIT許 を製品にI.化 し 実用化
す ることが必須 とな ります。
センセー シ ョナルなll許 とい うのはなか
なかIItし いものですが、アイデアをいかに
製 lllI化 し 工業所有権に結びつけるかか
肝要です.告 も今も現場がはっている環境
は変わ りませんか ら、過去の情 報を熟知 し
ておかなければ 新 しいものを生み出す こと
はで きません。何よ り機械が好きですか ら、
作 るか らには他にはない機械を作 りたい と
新技術 に挑戦を続け 今も数「 件の特許を出順中です。
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日本発明振興協会 崎
盟盟鰤町 珊留濡ぶ│∬
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合
併
号
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:300円
mAV′ ,UN.2011
No 553
(送 料込み)(資 lj会 員の場合は会資の中に購読llを 含みます)
平成 23● 6月 15日 発行 定価
編ll 発行 :公 益財卜
J法 人 日本発IH振 興協会 代表者 原 昭ナ 編集協力 (II)創 造 LI卿 l:■ 進社
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