システム認証事業本部 EICC®行動規範を活用した経営品質の向上で、 ローム株式会社 世界中のお客様に新たな優位性を示す。 (京都府京都市) ローム株式会社 http://www.rohm.co.jp/web/japan/ CSR 本部 CSR 室 室長 村井俊文様へのインタビュー EICC は、企業の社会的責任を共同推進するために設立された、大手電子機器・IT 企業約 100 社で構成される 団体の名称(*1)であると同時に、彼らが 2004 年にサプライチェーンに対して定めた行動規範(ガイドライン)(*2)の ことである。 (*1)Electronic Industry Citizenship Coalition:電子業界 CSR アライアンス (*2)EICC Code of Conduct:電子業界行動規範/EICC 行動規範 EICC メンバー企業が自社のサプライヤーの状況を知りたい場合、サプライヤーに EICC の VAP(Validated Audit Process)監査と呼ばれる第三者監査をリクエストすると、サプライヤーは EICC に監査を依頼し、EICC が 第三者認証機関に監査を依頼する。そして「安全衛生」「労働」「環境」「倫理」「マネジメントシステム」の 5 つのセ クションにおいてサプライヤー監査が行われる。 EICC が目指すものはグローバルなサプライチェーンを含めた管理の徹底である。児童労働や強制労働はない か、従業員の健康や安全、勤務時間、給与はきちんと保証されているか、団結の自由や団体交渉権は守られて いるかなど 100 項目に及ぶ監査項目 があり、サプライヤーに対しては国籍 や文化の違いに関わらずこれらの遵 守が求められる。 世界各国の電子機器メーカーに半導 体素子や LSI などを供給する「ローム 株式会社」は、この EICC 監査を受け るサプライヤー企業の 1 社であり、一 歩先を行く積極的かつ能動的な受審 姿勢が業界の注目を集めている。そ の考え方と活動について、CSR 室長 の村井俊文様にインタビューした。 ©2015 ROHM Co., Ltd. All Rights Reserved 御社が EICC 行動規範による運営に積極的に取り組んでいる理由をお聞かせ下さい。 端的に言うと「市場と社会における競争に勝つため」です。現在、電子部品は製品品質の面では、どの国もどの メーカーも大差はありません。では価格競争をするかというと、それは絶対に避けたい。そこでロームでは別の 新たな要素で優位性をつくりだそうと考えたのです。それが「経営品質」という要素です。「経営品質」とは、自社 が生産し提供する製品やサービスだけではなく、企業の社会的責任を果たすことでステークホルダーに高い満 足を与え、信頼を勝ち得ることができる 「会社の品質」のことです。 ではどうすれば高い経営品質を確立しお 客様に選ばれるサプライヤーになれるの かと考えた時に、お客様企業の多くがメ ンバーになっている EICC の行動規範に 基づいて会社をイノベーションさせること が、その近道であり適切な方法だろうと いう結論に至りました。その結果、EICC 行動規範とロームの行動規範と合致させ、 それに基づき企業経営を進めるという方 ©2015 ROHM Co., Ltd. All Rights Reserved 針が定まったのです。 方針が定まったのはいつ頃ですか。また、その後どのように展開されたのでしょうか。 方針化したのは 2011 年で、2011 年がロームにおける真の CSR 元年です。ちなみにロームの事実上の CSR 元年は、社内に CSR 推進室ができた 2007 年です。しかし当初は CSR 活動といえば地域清掃や地域イベント などのことを指しており、CSR の概念も地域貢献に留まっていました。それが「CSR=製品品質+経営品質= 会社の品質」という概念に変革し、CSR 推進室が環境管理部から独立して社長 直轄組織となったのち、CSR 本部へと進 化しました。さらに社長を委員長とする CSR 委員会が新設されるという大転換 があったのが 2011 年です。つまりこの 年に CSR に対する考え方と舵取りの方 向性が大きく変わったのです。 翌 2012 年にはサプライヤーとの取引基 本契約書に EICC の文言を追加したり、 CSR 統括内部監査による検証を開始し ※クリックすると拡大画像が別ウィンドウで表示されます ©2015 ROHM Co., Ltd. All Rights Reserved たり、グループ各社の管理部長を CSR 推進責任者に任命して全世界の生産拠点で CSR 推進委員会を月次開 催するといった活動が始まりました。特にこの CSR 推進委員会は画期的な取り組みです。委員会終了後にレポ ート提出が義務付けられ、その内容は全社にフィードバックされ情報の水平展開が行われます。これは世界中 のロームが、同じ視線の高さと視野を持って CSR に取り組むための優れた方法です。 2013 年にはさらに多くのレベルアップした活動が展開されました。中でも重要なのは、海外 6 生産拠点が EICC VAP 監査を受審したこと。サプライヤーに社長自らが説明を行う CSR 調達推進説明会(紛争鉱物の不使用の協 力要請など)を開催したこと。本社とグループ各社の各部門長全員が CSR リーダーに任命され、現場に CSR を 浸透させる体制ができたこと。サプライヤーに対して EICC 行動規範に基づく CSR 訪問監査を開始したことなど です。そして仕上げの年となる 2014 年は本社および国内 8 生産拠点の EICC VAP 監査を受審し、CSV(共通価 値の創造)をグループへ展開しはじめました。 2013 年に海外拠点で、2014 年で本社と国内拠点で受審された監査は、一般的な EICC 監査とは異なるとお聞 きしました。どのような点が異なっていますか。 一般的な EICC 監査は、メンバー企業が監査対象のサプライヤーを指名して EICC に監査要請を行い、指名さ れたサプライヤーは自社で費用を負担して監査を受けるというシステムになっています。しかしロームではメンバ ー企業からの要請がなくても自主的に第三者監査を受ける方法に切り替えました。監査結果は受審日から 2 年 間有効ですので、各サイトが 2 年に 1 度ずつ受審すれば、EICC メンバーから監査要請を受けた場合も、最新の 第三者監査結果を提出すればそれで済むというわけです。このルールを活用して、ロームでは奇数年を海外生 産拠点、偶数年を国内生産拠点の受審年と定め、全サイトが 2 年に 1 度必ず第三者監査を受審しています。こ れにより突然の監査要請にも慌てずにすみますし、また各サイトにおける CSR の運用を常に EICC 基準に準拠 させることができます。 ©2015 ROHM Co., Ltd. All Rights Reserved その自主的な監査の監査機関としてビューローベリタスを選ばれた理由をお聞かせ下さい。 メンバー企業の要請に応じて EICC 監査を受けていた時期、EICC から最も多く派遣されてきた監査機関がビュ ーローベリタスでした。ですから、ビューローベリタスによる第三者監査であれば、監査の視線も同様であるため 間違いないだろうという判断です。ただしそれだけではありませんでした。EICC から派遣されてビューローベリタ ス社が行う監査の指摘が的確で深いところを突いており、経営品質の向上に役立つことが多かったのです。ロー ムは監査自体も活用しようという姿勢でいますから、このことは監査機関の選択において見逃せないメリットでし た。 EICC 監査、ましてや自主的な第三者監査の受審は現場にとって負担になり、批判の声もあると思いますがそ れを乗り越えるポイントは? 大きく 3 つあります。 1 つ目はトップの理解と熱意と行動です。EICC 監査に対しては「自分でお金を払って監査を受け、その結果取引 停止になるリスクまであるのに、いったいどういうメリットがあるの?」と思う人も多いので、トップがよほどその重 要性を理解し、また熱意と揺らがない姿勢をもって動いてくれなければなかなか推進できません。 2 つ目は「今後、EICC 行動規範が世界のスタンダードになっていくことは間違いない」「そしてその時にロームが リーディングカンパニーになるためには今から取り組んでおくことが必要だ」という信念とその信念を単なる熱情 に終わらせずに経営戦略にまで高めてオーソライズすることです。 そして 3 つ目は現場教育です。ロームでは、監査対策も兼ねて社員だけでなく常駐のお取引先様も含めて敷地 内で働く人全員に向けて徹底した勉強会を開きました。この勉強会により、EICC への理解が深まっただけでなく、 「全社一丸となってハードルを越えなくては!」という団結心が社内に生まれました。 つまり、トップの理解と熱意と行動、CSR の経営戦略化、勉強会による従業員の団結という 3 つがロームを 「EICC の懐に積極的に飛び込むサプライヤー」という稀有な存在にしてくれたのです。 国ごとに違う労働に対する文化や法律と EICC 行動規範の兼ね合いや、その間にあるストレスについてはどの ように対処していますか。 その国の法律と EICC 行動規範の要求事項が異なる場合には、どちらか厳しい方を適用しています。そのため、 たとえば法律より厳しい労働時間基準を設けると、「もっと長時間働いて賃金アップを図りたい」という労働者は、 労働時間の管理がルーズな他の工場へ転職してしまうといったリスクがあります。また工場側から見ても、厳し い労働時間基準を守ると従業員数が増えて高コスト構造になるというストレスがあります。 しかし、そうしたリスクやストレスを考慮して例外やローカルルールをつくることは認めていません。なぜなら先ほ ども申し上げましたように EICC 行動規範遵守の流れは必ず遠からず来ますので、その時に慌てたり問題を起こ したりしないようにするために、ロームは今からより厳しい基準で管理運営することをルールにしているからです。 特に発展途上国において様々な事情を考慮して低い基準でサプライヤー管理をすると、事故や環境破壊、人権 問題を引き起こす可能性があり、大きなビジネスリスクにつながります。ちなみに EICC メンバー企業がサプライ ヤー監査を実施したところ、35%のメンバー企業で取引を停止したケースがあるという結果が出ています。こうし たことを避けるためにも、世界中のロームに、目線を EICC の厳しい基準に合わせることを義務付けています。 最後に改めてお尋ねします。御社にとって EICC 行動規範の遵守とはどういう意味を持つものですか。 最強の生き残り策であり、最強の経営戦略だと思っています。多くの日本企業 は「ものづくりの PDCA 管理」には優れていますが「経営の PDCA 管理」は不十 分です。かつてのように国内電機メーカーが主力なお客様だった時代にはそれ でも良かったのですが、世界中のメーカーをお客様にする必要性が高まってい る昨今では致命傷になりかねません。そうならないためには「経営の PDCA 管 理」をするためのグローバルな行動規範が必要であり、ロームではそれを EICC 行動規範に基づかせるのが最善策だと結論づけたのです。つまり、ロームにと って EICC 行動規範は理想論ではなく、経営ビジョンにおける現実論であり具体 策なのです。その推進は決して簡単なものではありませんが、やり続けるしかな EICC 行動規範を活用した CSR を 社長と二人三脚で構築してきた CSR 室長 村井俊文様 い、後戻りのできない選択であり経営判断だと考えています。 ローム株式会社:CSR への取り組み ビューローベリタスのサービス:EICC 監査 (2015 年 2 月 23 日取材)
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