数理人口学の発展 1 はじめに 2 1970年代前半まで

数理人口学の発展
稲葉 寿(東京大学大学院数理科学研究科)
1
はじめに
数理人口学は主に人間人口に関わる諸現象を数理モデルによって解明・理解しようとする人口学の一分
野である。この研究領域は最広義においては人口学における数理的手法の利用・開発のすべてを含むとも
言えるから、形式人口学ないし人口統計学と画然と区別されうるわけではないが、あえて言うならば人口
学的概念や法則性の論理的帰結として人口現象を解明理解することを目的としている。即ち演繹的体系と
しての人口動学の構築がその中心的な課題であり、経験的命題の定量的定式化とその計測・実証を主務と
する人口統計学ないし計量人口学とはいささか問題関心が異なる。したがってその学問的ルーツはグラン
ト (Graunt, 1662) の生命表研究よりも、むしろフィボナッチ (Fibonacci, 1202) やオイラー (Euler, 1760)
による人口動学モデルに関する先駆的な業績にもとめるべきかもしれない。
現代的な意味での数理人口学の発展の端緒をなしたのは言うまでもなくシャープとロトカの論文 (Sharpe
and Lotka, 1911) であり、爾来ロトカ自身によって専ら整備された安定人口理論が、生命表分析とともに
長らく人口学の最も基盤的なツールとなったことは周知のとおりである。人口学における数理モデルは多
様であるが、本稿では我が国において紹介されることの少なかった微分方程式モデルの最近の発展に焦点
をあてて、過去20年間の数理人口学のいくつかのトピックを回顧する。特に最近の話題としてプレスト
ン・コールシステムと両性人口モデルを取り上げて紹介する。
2
1970年代前半まで
周知のようにロトカの安定人口モデルは以下のような線形積分方程式(再生方程式)によって定式化さ
れている:
Z
∞
B(t) =
β(a)`(a)B(t − a)da,
(1)
0
ここで B(t) は女性(または男性)の単位時間あたりの出生児数であり、`(a) は a 歳までの生存率、β(a) は
a 歳における年齢別出生率である。シャープ・ロトカの安定人口論の基本命題は方程式 (1) の解が
B(t) = B0 ert (1 + ²(t)),
lim ²(t) = 0,
t→∞
(2)
と書けるという主張(強エルゴード定理)である。ここで B0 は初期条件に依存する定数であり、rは以下
のような特性方程式の唯一の実根である。
Z ∞
e−ra β(a)`(a)da = 1.
(3)
0
彼らの証明は数学的には厳密なものではなかったが、再生方程式の解の性質はフェラーの論文 (Feller, 1941)
によって数学的に明らかにされ、安定人口論はその基礎を得た。ロトカ自身は1911年の論文以降、安定
人口モデルに関連して多くの業績を残したが、その主著 (Lotka, 1939) の英訳版の完成をみることなく19
49年に没した (Notestein, 1950)。ロトカの理論の発展過程と純再生産率の概念をめぐるクチンスキーと
の確執については経済学者のサミュエルソン (Samuelson, 1976) が興味深い分析をおこなっている。ロト
カの名は今日専らその有名な初期の著書 (Lotka, 1924) とロトカ・ボルテラの生態系モデルに結びつけて記
憶され、人口学界の外では数理生物学者とみなされていて人口学者としての活動が見落とされがちなのは
1
残念なことである。主著の英訳が完成して戦後に公表されていれば事情は異なっていたかもしれない。今
日に至るまでロトカの全集が編まれていないことも不可解なことである。我が国においても戦前からロト
カ理論の優れた紹介、適用が現れていることは注目に値する(森田, 1944)。また例えば川上 (1937) はロト
カ理論に触発され、現在でいうコール・マクニールモデルと同様な発想で初婚分布関数を導くという先駆
的な仕事を残している。安定人口理論は後にみるように、初めから線形の単性理論としての限界が指摘さ
れていたが、戦後の発展途上諸国に見られるようなマルサス的な人口にはよく適用されうることから、間
接推定論を中心とした人口統計手法の基盤としての地位は1960年代に至るまで揺るがぬものであった。
1957年にはコールの有名な論文 (Coale, 1957) が現れ、ソーヴィやブルジョワ・ピシャ等のフラン
ス人口学者がつとに指摘していた人口高齢化の経験法則(「人口の高齢化は死亡率の低下によるのではな
く、もっぱら出生率の低下によっておこる」)を安定人口モデルによって説明するとともに、安定人口モデ
ルの仮定を緩めて、時間的に変動する出生率、死亡率のもとでも年齢分布が初期条件から漸近的に独立と
なるという、いわゆる人口過程の弱エルゴード性の成立を指摘した。人口高齢化の安定人口モデルによる
分析としては、我が国では専らコールの例のみが引用されることが多いようであるが、日本でも同時期に
館 (1956)、高木 (1956) などによってコールと同様の分析がなされていることは強調してよい。またロペス
(Lopez, 1961) はコールの示唆を得て、レスリー行列モデルに基づいて弱エルゴード定理を初めて証明し
た。これは人口学における安定人口モデルの最初の拡張であったが、実は後年、数理遺伝学者のチャールズ
ワース (Charlesworth, 1980) によって指摘されたように、その30年前にノートン (Norton, 1928) がロト
カモデルにおける弱エルゴード定理の成立を主張していたのである。その証明が現代的な意味で数学的に
完全なものであるかは疑問であるが、ともかくこの重要な主張は半世紀以上も無視されていたことになる。
ノートンの弱エルゴード定理の現代的な証明は Inaba (1989), Rundnicki and Mackey (1994) に与えられて
いる。また時間的に飛ぶが、Artzrouni (1985) は再生産関数が時間的に変動するが一定の極限をもつ場合に
安定人口分布が存在することを予測し、レスリー行列モデルに対してこれを証明した。Inaba (1992) は後
述する微分方程式モデルによって、ロトカモデルについて同様な結論が成り立つことを示した。70年代
前半までの古典的成果(線形スカラー理論)は Coale (1972), Keyfitz (1977), Pollard (1973), Impagliazzo
(1985) および論文集 Smith and Keyfitz (1977) に見ることができる。また人口学におけるエルゴード定理
の意義についてはコーエン (Cohen, 1979) が優れた解説である。
1970年代後半に入ると、ロジャース (Rogers, 1975) によってロトカの理論はベクトル型モデル(
多次元安定人口モデル)への拡張が試みられ、多次元生命表とともにいわゆる多次元人口学 (multistate
demography) の基礎を与えることとなった。ベクトル型モデルでは、それまでの年齢、性という構造以外
にも、居住地域、労働状態、婚姻状態、パリティ状態などの様々な内部構造をもつ異質的な人口集団が、各
状態間を遷移しつつ成長していく過程を記述できることとなった。ロジャースは1976年から7年間、
IIASA(国際応用システム分析研究所)において研究プロジェクト”The Migration and Settlement
Study”を組織して、多地域人口モデルの普及・実用化を図った。これらの成果は Land and Rogers (1982),
Rogers and Willekens (1986), Rogers (1995) などにみることができる。ロジャースモデルの数学的側面は
稲葉 (1987, 1988) において明らかにされている。同モデルの日本人口への適用例としては、南條・重松・吉
永 (1993), 南條・吉永 (1997) がある。
多次元モデルの出現は事象歴分析などとともに社会現象の分析ツールとしての人口学的方法の射程を著
しく拡大したが、線形単性理論という基本的性格はロトカモデルから引き継いだままであった。線形理論の
隘路を踏み越えようとする努力は両性問題に関わって早くからなされていた(例えば, Kendall, 1949) が、
年齢構造をもつモデルに関しては実質的な進歩が再開されるのは微分方程式モデルの再発見を経た70年
代後半から80年代にかけてである。また最後に言及するが、人口変数間のフィードバック構造による非
線形性を考慮した年齢構造化モデルが現れてくるのも70年代後半以降であった。
2
3
微分方程式モデルの再発見とその後
ロトカとは独立にマッケンドリック (McKendrick, 1926) は医学への数理モデルの適用の試みのなかで人
口の年齢分布関数が満たすべき以下のような一階の偏微分方程式を提出していた:
∂p(t, a) ∂p(t, a)
+
= −µ(t, a)p(t, a).
∂t
∂a
(4)
ここで p(t, a) は時刻 t における a 歳の人口密度であり、µ(t, a) は時刻 t における a 歳の死亡力 (force of mor-
tality) である。この方程式は長らく忘れさられていたが、フォン・フェルスター (Von Foerster, 1959) によ
り再発見されたため今日では McKendrick-Von Foerster 方程式(以下 MVF 方程式と略記)と呼ばれて
いる。時刻 t における年齢別出生率をβ(t, a) として、この方程式に境界条件
Z ∞
p(t, 0) =
β(t, a)p(t, a)da,
(5)
0
を付加したシステム (4)-(5) は封鎖人口の年齢分布を決定する全く一般的な方程式系になる。特に出生率、
死亡率が時間に依存しない場合は p(t, 0) = B(t) とおけばロトカの積分方程式 (1) の微分方程式による同値
な表現になっていることがわかる。
MVF 方程式とその拡張は1960年代から数理生物学においては内部構造をもつ生物人口集団の基本方
程式として注目され、研究が開始されていた(例えば, Trucco, 1965. また太田 (1972) の解説参照)が、人
口学においてはその意義は80年代に至るまで全く気づかれなかったのである。
MVF方程式系は Gurtin and McCamy (1976) によるロトカモデルの非線形化に用いられて数学者の注
目をひくこととなった。年齢構造のない人口モデルにおいては、マルサスモデルにかわる有限な成長限界
をもつ非線形モデルとして、フェアフルストのロジスティックモデルが提起されたのは実に 1838 年のこと
であったが (Verhulst, 1838)、それに対応する年齢構造をもった人口の微分方程式が出現したのはわずかに
20年前のことだったのである。ロトカ自身はロジスティック法則に従う人口の年齢構造を一種の逆問題
として考察しているが、動学モデルを定式化することはできていなかったのである (Lotka, 1931, 1939: 森
田, 1944)。もっともロジスティック方程式自体もパールとリード (Pearl and Reed, 1920) によって再発見
されるまで80年以上無視されていたという過去がある。
シャープ・ロトカの定理はフェラーによる証明から40年を経て、Webb (1984) によって関数解析的な
定式化のもとで全く新たな証明をあたえられたが、これは非線形MVF方程式系の関数解析的な研究とい
う方法的革新に道を拓くものであった。その後 80 年代後半に入ると、Webb (1985), Metz and Diekmann
(1986), Inaba (1989), Iannelli (1995) に見られるように、現代数学に基づいた一般的な理論が整備され、年
齢構造モデルをその一部として含む構造化人口動態学 (structured population dynamics) の研究は応用数
理の一つの分野として確立されることとなった。この過程は数学的理論の応用問題への適用という一方的
なものではなく、人口方程式が提起する問題が発展方程式を扱う新しい方法の開発を動機づけたという意
味で真に相互的なものであったことは注目に値する(例えば、Clément, Diekmann, Gyllenberg, Heijmans
and Thieme, 1987 参照)。
人口学への波及についてみると、MVF方程式系はベクトルモデルへの拡張や新たな変数を導入するこ
とが容易であることから、多次元人口学における様々な動学モデルを定式化し、その性格を明らかにして
いくために非常に有効であることが示されてきた(Song, Tuan and Yu, 1985; Song and Yu, 1988; Inaba,
1988, 1989, 1995; Chan and Guo, 1992)。先に述べたように年齢構造をもつ人口の動学モデルの研究が数
理人口学の中心的課題の一つであるとすれば、MVF方程式系の研究は80年代における数理人口学の専
門領域としての自立化を促した主要なファクターの一つであったと言えよう。1988 年には数理人口学の専
門誌 Mathematical Population Studies (Gordon and Breach Pub.) が発刊され、数理人口学は独立した研
究領域としての一歩を踏み出した。
3
4
Preston-Coale System
人口学におけるMVF方程式の静学的応用の代表例としては、80年代に開発された variable r method
(Preston-Coale method) がある。ベネット・堀内 (Bennett and Horiuchi, 1981) およびプレストン・コー
ル (Preston and Coale, 1982) はMVF方程式が以下のように書き換えられることに気がついた:
1 ∂p(t, a)
= −µ(t, a) − r(t, a).
p(t, a) ∂a
(6)
ここで右辺の r(t, a) は人口の年齢別成長率であり、
r(t, a) =
1 ∂p(t, a)
,
p(t, a) ∂t
(7)
と定義される。年齢別成長率は二時点のセンサスがあれば計測できるから、比較的そのデータが入手しや
すく、統計的に頑健なパラメータであることがポイントである。(6) の等式は時刻 t をとめて共時的に眺め
てみると、各時点における年齢構造が年齢別成長率と死亡率によって決定されていること、従って例えば
期間的生命表の `x (定常人口)と実際の人口構造は年齢別成長率を介して相互に変換できることを意味し
ている。実際、(6) を年齢変数に関して積分すれば
µ Z
p(t, a) = p(t, 0)`p (t, a) exp −
a
¶
r(σ, a)dσ ,
(8)
0
となる。ここで `p (t, a) := e
−
Ra
0
µ(t,σ)dσ
は時刻 t において観測される死亡率によって決定される期間的生存
率に他ならない。特にパラメータが時間に依存しない場合は r(t, a) が定数となるような p(t, a) が存在する
R∞
R∞
が、それが安定分布である。C(t, a) = p(t, a)/ 0 p(t, a)da を人口構造係数、b(t) = p(t, 0)/ 0 p(t, a)da
を粗死亡率とすれば、(8) は以下のように書き換えられる:
Ra
−
r(σ,a)dσ
1
b(t)e 0
=
.
`p (t, a)
C(t, a)
(9)
そこで二時点のセンサスが利用できるが、動態統計が存在しないという状況を考えると、上式の左辺を推
定することが問題となる。適当な標準生命表を選んで、その生存率を `s (a) とすれば、ブラスのロジット変
換によって以下の変換式を得る:
µ
log
1 − `p (t, a)
`p (t, a)
¶
µ
= α + β log
1 − `s (a)
`s (a)
¶
,
ここでα, β は未知パラメータである。(9) と (10) を結びつけると以下の関係を得る:
Ra
µ
¶β
−
r(σ,a)dσ
e 0
1
eα 1 − `s (a)
=
+
C(t, a)
b(t) b(t)
`s (a)
(10)
(11)
(11) において左辺はセンサスデータから実測され、右辺のかっこ内は標準生命表から得られるから、この
式は b(t), α, β を未知パラメータとする一つの回帰方程式として見ることができる。特にβ = 1 とおいても
ロジット変換の適合度は高いとされているから、そう仮定すれば (11) は線形の回帰方程式になり、1/b(t),
αは容易に推定される。従って式 (9) にもどれば、`p (t, a) すなわち死亡水準が推定されることになる。これ
がプレストンの two census method の原理に他ならない (Preston 1983)。
上記の考え方は死亡水準以外の人口学的指標の推定にもしばしば有効である。例えばβ(t, a) を年齢別出
生率、v(t, a) を母親の出産年齢別の新生児分布とすると
v(t, a) =
β(t, a)p(t, a)
−
= β(t, a)`p (t, a)e
p(t, 0)
4
Ra
0
r(σ,a)dσ
(12)
従って v(t, a) をサンプル調査によって得たとすると、期間的な純再生産率は以下のように計算されること
になる:
Z
Ra
∞
N RR =
v(t, a)e
0
r(σ,a)dσ
.
(13)
0
これらの推定法は動態統計データのない人類学的集団などの研究に利用されている (Gage, Dyke and Riviere
1984)。いうまでもなく、上記の手法は任意の封鎖人口において成り立つ諸関係であるが、純移動率など
を導入すれば人口移動のある場合にも拡張は可能である。同様な発想によるMVF方程式の利用は Arthur
and Vaupel (1984) にも見ることができる。
5
両性人口モデル
人口の再生産力を測るという古くからある人口学の基本的課題は安定人口理論によって十分に答えられ
たであろうか? 事実はまったくそうではない。ロトカとともに人口再生産論に貢献したクチンスキーは
すでに 1932 年に、1920 年から 1923 年におけるフランス人男子の純再生産率が 1.194 であり、一方同時期の
フランス人女子の純再生産率が 0.977 となり、安定人口論によれば女子をもとにすれば人口は減退すると予
測されるのに、男子をもとにすれば人口増加が予測されることを指摘していた (Pollard, 1973)。これがい
わゆる両性問題 (two-sex problem) の端緒であった。この現象は一般的に観察されうるが、戦争などによっ
て性比のバランスが大きく崩れた場合には配偶率の変化を通じてより著しく現れる。もとより理論的には
男子の純再生産率と女子のそれが一致する必然性はなく、それぞれは異なる仮定のもとでの数字であるか
ら矛盾とも言えない。ただ男子の純再生産関数が時間的に不変であるという仮定と女子純再生産関数が時
間的に不変であるという仮定が両立不可能であることを意味しているのである。安定人口論の枠内ではい
ずれの性をもとにすべきかを答えることはできない。
人口推計などの実用的モデルにおいては女子人口の再生産を基本とし、男子の人口再生産過程への関与
を無視することによってこの問題は回避されているが、それではそもそも現実世界におけるような男女の
ペアリングによる人口の持続的成長がなぜ可能なのか?、それを可能とするような男女の普遍的なペア形
成法則はありうるのか?、そのときマルサス的人口成長率はどのように決定されるのか?、人口に於ける
男女比のアンバランスが大きいときにはどのような現象が起きるのか?等の疑問がおこる。現実人口にお
いて年齢別出生率がほぼ一定であり、従って安定人口モデルが妥当するような歴史的時期が観測される場
合があるとすれば、そもそも一定の婚姻規則のもとでなぜそのようなことが可能なのかが説明されるべき
なのである。
結婚現象を考慮にいれてロトカモデルを拡張する試みには長い歴史がある。第二次大戦後、戦争による性
比の不均衡、結婚の変動により在来の人口指標の不十分さが明らかになると、イギリスでは Karmel (1947),
Pollard (1948) 等によって純再生産率にかわる指標の開発が試みられるようになった。しかしこの問題関
心は理論的に十分な成果が得られないまま、西欧諸国においては同棲や婚姻外出生の増大に伴う伝統的な
婚姻・出産の連関の崩壊という状況に追い越され、一方、発展途上諸国においては家族計画などの婚姻出
生力の制御が関心の中心となったために、必ずしも十分な考慮を受けてこなかったのである(Friedman,
1982)。ただ先進諸国のなかで日本は例外的に今日に至っても、事実婚が例外的であり婚姻外出産はまれで
あるため、結婚力の変動が再生産力を直ちに左右する構造を維持している。1970年代後半から再開さ
れた日本の出生力低下の主因が結婚力の低下によるものであることは周知のことであろうが、こうした事
態を受けて伊藤 (1978)、稲葉 (1992, 1995) は線形理論の範囲ではあるが、結婚力を明示的に取り入れた再
生産力指標の開発をおこなった。しかしながら線形単性理論の範囲では先の両性の協力のもとでの再生産
にかかわる根本的疑問にせまることはできない。
一夫一婦的な結婚 (monogamous marriage) を正面から取り上げて、年齢構造をもった非線形人口動学モ
デルを初めて提出したのはフレデリクソン (Fredrickson, 1971) である。フレデリクソンモデルは以下のよ
5
うに表される:
µ
∂
∂
+
∂t ∂a
µ
¶
Z
pm (t, a) = −µm (a)pm (t, a) +
Z
∞
∞
pc (t, a, b)[σ(a, b) + µf (b)]db −
0
ρ(t, a, b)db
¶
Z ∞
Z ∞
∂
∂
+
pf (t, b) = −µf (b)pf (t, b) +
pc (t, a, b)[σ(a, b) + µm (a)]da −
ρ(t, a, b)da
∂t ∂b
0
0
µ
¶
∂
∂
∂
+
+
pc (t, a, b) = −(σ(a, b) + µm (a) + µf (b))pc (t, a, b) + ρ(t, a, b)
∂t ∂a ∂b
Z ∞Z ∞
pm (t, 0) = γ
β(a, b)pc (t, a, b)dadb,
0
0
Z ∞Z ∞
pf (t, 0) = (1 − γ)
β(a, b)pc (t, a, b)dadb,
0
(14)
0
(15)
(16)
(17)
(18)
0
pc (t, 0, b) = pc (t, a, 0) = 0.
(19)
ここで pm (t, a) は時刻 t における a 歳の独身男子人口密度、pf (t, b) は時刻 t における b 歳の独身女子人口密
度、pc (t, a, b) は時刻 t における a 歳の男子と b 歳女子の夫婦の密度、µm (a)(µf (b)) は a(b) 歳の男子(女子)
の死亡力、σ(a, b) は a 歳の男子と b 歳女子の夫婦の離婚率、β(a, b) は a 歳の男子と b 歳女子の夫婦の出生率、
γ は新生児における男児の割合、ρ(t, a, b) は単位時間あたり生成される男子 a 歳、女子 b 歳の夫婦の密度で
ある。ρ(a, b) は結婚関数 (marriage function)Ψ(u, v)(a, b) によって以下のように与えられる:
ρ(t, a, b) = Ψ(pm (t, ·), pf (t, ·))(a, b).
(20)
ここで結婚関数Ψ(u, v)(a, b) は独身男子人口 u(a)、独身女子人口 v(b) から単位時間に発生する新郎 a 歳、新
婦 b 歳の結婚組数密度を表す非線形関数であり、以下の条件(結婚関数の公理)をみたすものと考えられて
いる:
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
(u, v) ≥ 0 であればΨ(u, v) ≥ 0,
Ψ(u, 0) = Ψ(0, v) = 0,
R∞R∞
R∞R∞
(u, v) ≤ (u0 , v 0 ) であれば 0 0 Ψ(u, v)(a, b)dadb ≤ 0 0 Ψ(u0 , v 0 )(a, b)dadb,
k > 0 であればΨ(ku, kv) = kΨ(u, v),
a 6= c, b 6= c であれば ∂Ψ(u,v)(a,b)
≤ 0, ∂Ψ(u,v)(a,b)
≤ 0.
∂u(c)
∂v(c)
ここで条件 [1]-[3] は自明であろうが、条件 [4](一次同次性の条件)は必ずしも必須のものではないが、
指数関数的成長解を得るために要請されている。人口規模によっては別種の条件を想定する場合もある。
また [5] は年齢間の競合を表す条件である。Ψは経済学における生産関数に類似のものであり、以下のよう
な関数で与えられる場合が多い:
Ψ(u, v)(a, b) = 2ρ(u, v)(a, b) R ∞
0
ξ(a)u(a)η(b)v(b)
R∞
,
ξ(a)u(a)da + 0 η(b)v(b)db
1
Ψ(u, v)(a, b) = [β(h(a, b)u(a))α + (1 − β)(g(a, b)v(b))α ] α .
(21)
(22)
式 (21) は比例混合仮説 (proportionate mixing assumption)(Waldstätter, 1990) と呼ばれるものであり、式
(22) は一般化平均値関数である (Hadeler, 1989)。ここで 0 ≤ β ≤ 1, −∞ ≤ α ≤ 0 であるが、特にα = −1
であれば、重みつきの調和平均
h(a, b)g(a, b)u(a)v(b)
,
βg(a, b)v(b) + (1 − β)h(a, b)u(a)
6
となり、α → 0 であれば重みつきの幾何平均
[h(a, b)u(a)]β [g(a, b)v(b)]1−β ,
となる。またα → ∞ とすれば、最小値関数
min{g(a, b)u(a), h(a, b)v(b)},
を得ることに注意しよう。これらはいずれも一次同次性の公理をみたすが、年齢間競合の公理をみたして
いるは比例混合仮説のみである。
Keyfitz (1972) は結婚関数としていくつかの候補を検証して、1960年代の米国のデータに関してはや
や女性にウェイトのある幾何平均の適合度が比較的よいとしている。一方、最近の Martcheva and Milner
(1996) の研究では1970年の合衆国センサスから推定される結婚関数は専ら男性人口にウェイトのある
線形関数に近いものであったとしているが、今後一層の検討が必要であろう。現実の人口は男女性比がほ
ぼバランスしているから、非線形性を検証することは実際には困難であり、理論的により優れた関数の適
合性が高いとは必ずしも言えないようである。いずれにせよ結婚は男女の複雑な相互作用の結果であり、
その市場的構造それ自体を十分検討する必要があろう。性比の広いレンジにわたって結婚関数が上記のよ
うな簡単な数学的関数で表現できたならば、そのほうがずっと驚くべきことである。
フレデリクソンのモデルの数学的性質は長い間あまりよくわかっていなかったが、近年いくつかの成
果が出始めている。パラメータが年齢に依存しない場合には、モデルは常微分方程式モデルに還元され、
その性質は詳しく解析されている (Hadeler, Waldstätter and Wörz-Busekros, 1988; Waldstätter, 1990)。
Waldstätter (1990) は上記のモデルにさらに結婚持続期間を導入したモデルに関して、解の存在定理を示
した。Inaba (1993) は結婚持続時間を考慮したモデルにおいて初婚カップルのみが再生産をおこなうとい
う仮定のもとで、半群解を構成するとともに指数関数的成長解が存在する条件を示した。その後 Prüss and
Schappacher (1994) は初婚による再生産という限定なしで、結婚持続期間を考慮したモデルに関して調和
平均型の結婚関数のもとでは指数関数的成長解が一般的に存在することを証明した。数値的シュミレーショ
ンは Arbogast and Milner (1989), Mode and Salsburg (1993), Martcheva and Milner (1996) 等において
行われているが、上記のような単純な数学的関数による夫婦組数分布の推定にはおおきな誤差が伴うよう
である。
非線形の両性人口モデルは一夫一婦的結婚モデル以外の、ポリガミー的婚姻規則のもとでも考えること
ができる (Rosen, 1983; Sowunmi, 1993)。今日の先進諸国においては法律的な意味における結婚の地位は
低下しつつあるが、人類がその再生産のためになんらかの一定程度安定的な両性のパートナーシップを必
要としていることには変わりがない。その意味では両性問題は人口再生産論の中心的課題であり続けるで
あろう。80年代以降のエイズに代表される性的感染症の広がりは人間の性的な相互作用のあり方への科
学的関心を急激に高めることとなり、両性モデルに対する人口学以外の学問分野(数理生物学、疫学)から
のアプローチが急増したことが最近の理論的発展を支えているとも言えるのである (Castillo-Chavez, 1989;
Manfredi, 1995) が、今後は人口学のサイドからの両性人口モデル研究への貢献が期待される。
6
おわりに
本稿では微分方程式モデルに焦点を当てたために、非線形の積分方程式モデルの発展について言及でき
なかった。多くの場合、積分方程式モデルは微分方程式モデルに変換可能であるが、必ずしも微分方程式
のほうが研究に有利であるとは限らない。微分可能性というのは必ずしも現象に本質的ではない数学的要
請であり、問題を複雑にする場合もあるからである。積分方程式モデルの重要な例はイースタリン仮説を
7
取り入れた非線形ロトカモデルであり、以下のように表される:
Z ∞
B(t) =
β(a, B(t − a))`(a)B(t − a)da.
(23)
0
ここでβ(a, B(t − a)) は t 時刻に a 歳の人口の出生率であり、コーホートサイズ B(t − a) に依存している。
このタイプのモデルはパラメータの値によって解の分岐が起きて、リミットサイクル(持続的な周期解)が
出現することが示されるから、人口の長期波動の説明として興味深いが、検証するためにはフィードバッ
ク構造そのものが時間的に安定的であるような時期が長期にわたって存在する必要がある。これに関して
は Frauenthal (1975), Swick (1981), Frauenthal and Swick (1983), Wachter (1991) 等を参照されたい。 ま
た生命表分析、行列モデル、確率論的モデルなどについては全く触れることができなかったが、各分野の
発展も著しいものがある。これらについてはそれぞれ文献 Namboodiri and Suchindran (1987), 山口・南
條・重松・小林 (1995), Caswell (1989), Mode (1985) 等を参照されたい。
以上70年代後半から今日に至る数理人口学の発展のいくつかの側面をMVF方程式モデルを中心に回
顧してきたが、90年代半ばに至ると80年代頃のこの分野の研究の熱気は感じられなくなってきている
のは筆者だけではないのではなかろうか。年齢構造化人口動態モデルはもはや応用数理において珍しいも
のではなくなり、ある程度の研究蓄積もなされた。現状は旧来からある困難な問題を残しつつも、新たな
展開を模索する時期なのかもしれない。その意味で重要なことは実体人口学や現実の人口問題群、および
生物学、経済学、疫学などの関連分野との絶えざる対話を通じての認識関心の共有化と新たな問題の掘り
起こしである。エイズの数理モデル研究において人間のペア形成過程が注目されたように、旧来の人口問
題の射程を越えて、人口学的要因の重要性は人口学の外部の学問領域において以前よりもはるかによく認
識されてきていることは間違いないのであり、人口学的分析の普遍化がもたらす成果は少なくないであろ
う。従って人口学の内部においても、これまで得られた数理人口学の知見に照らして今一度過去の成果の
再点検、再編成を行ってみることが次のステップへ向けて、必要とされているのではなかろうか。
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