原油相場とMLP市場の今後の見通し

2014年12月25日
原油相場とMLP市場の今後の見通し(1/3)
原油相場の今後の見通し
情報提供資料
WTI原油先物価格と買い残の推移
短期的には更なる下落も見据えた慎重姿勢を要する
(米ドル/バレル)
 シェール革命による米国産の原油増産と11月の
OPEC(石油輸出国機構)総会での減産措置見送り
を受け、原油価格は年初来大きく下落しています。
120
500
110
450
100
400
 OPEC諸国がかつての価格設定者(プライス・メー
カー)から価格受容者(プライス・テイカー)へと立場
を変えたため、市場は新たな需給均衡価格を探って
いる状況です。原油先物の買い残は今年6月のピー
クから急速に減少しましたが、依然として高水準に
あり(右上図)、投機的な動きも交えた値動きの荒い
展開が続く可能性があるため、短期的には更なる下
落も見据えた慎重姿勢を要すると考えます。
90
350
80
300
70
250
60
200
50
150
(千枚)
40
(年)
NYMEX原油先物買い残(右軸)
30
中長期的な適正価格を80-85ドルと予想
 一方、当社では中長期的なWTI原油相場の適正価
格を80-85ドルのレンジと予想しています。
100
50
WTI原油先物価格(左軸)
20
2012/1
2012/7
2013/1
2013/7
0
2014/7 (年/月)
2014/1
出所:ブルームバーグ 期間:2012年1月~2014年12月19日
WTI原油先物価格:WTI原油1限月先物価格
NYMEX原油先物買い残:ニューヨーク・マーカンタイル取引所 (NYMEX)
の非商業部門によるWTI原油先物の買い建玉と売り建玉の差
 多くのOPEC加盟国の財政上の採算価格は1バレル
90ドルを上回っていることから(右下図)、原油価格
が現在の水準で推移することはOPEC諸国にとって
も好ましくありません。財政に余裕のないイラン、ベ 主なOPEC加盟国の財政上の原油採算価格(2015年推計)
ネズエラ、イラクなどからは既に減産を求める声が (米ドル/バレル)
出ており、サウジアラビアは過去数年で蓄えた備蓄
があるものの、現在の価格水準を長期間受け入れ 160
ることは困難だと考えられます。当社では、来年6月 140
のOPEC総会において減産が発表される可能性が 120
あると見ており、それをきっかけに原油相場は反転
100
すると考えます。
 また来年6月以前にも、OPECによる臨時総会開催
の可能性、ロシアおよび中東諸国の政治情勢による
地政学リスクの台頭、需要の拡大等が原油相場反
転のきっかけとなる可能性があると見ています。
米国の原油生産量に関する見通し
 米石油大手による設備投資額縮小などが発表され
ており、米国のシェール開発に減速感が出ていると
の見方もありますが、MLPのファンダメンタルズの重
要なドライバーと考えるエネルギー生産量は、引き
続き増加基調を維持すると当社では見ています。
 実際に、一部の企業では既に2015年の設備投資の
減額が発表されているものの、いずれも生産量は引
き続き増加するとしています。
60
40
20
0
ク
ウ
ェ
ー
ト
UAE
設備投資額の増加ペースは減少するも、生産量は増加
米国
シェール
採算価格
水準
80
U
A
E
カ
タ
ー
ル
サ
ウ
ジ
ア
ラ
ビ
ア
イ
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ク
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リ
ア
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ン
リ
ビ
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出所:IMF(2014年5月時点)、GSAM
上記は経済や市場等の過去のデータおよび一時点における予測値であり、
将来の動向を示唆あるいは保証するものではありません。経済、市場等に
関する予測は資料作成時点のものであり、情報提供を目的とするもので
す。予測値の達成を保証するものではありません。
本資料は、情報提供を目的としてゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社(以下「弊社」といいます。)が作成した資料であり、特定の金融
商品の推奨(有価証券の取得の勧誘)を目的とするものではありません。本資料は、弊社が信頼できると判断した情報等に基づいて作成されています
が、弊社がその正確性・完全性を保証するものではありません。本資料に記載された過去のデータは、将来の結果を示唆あるいは保証するものではあ
りません。本資料に記載された見解は情報提供を目的とするものであり、いかなる投資助言を提供するものではなく、また個別銘柄の購入・売却・保有
等を推奨するものでもありません。記載された見解は資料作成時点のものであり、将来予告なしに変更する場合があります。本資料の一部または全部
を、弊社の書面による事前承諾なく(I)複写、写真複写、あるいはその他いかなる手段において複製すること、あるいは(Ⅱ)再配布することを禁じます。
© 2014 Goldman Sachs. All rights reserved. <148894.OSF.OTU>
2014年12月25日
原油相場とMLP市場の今後の見通し(2/3)
 例えば、バッケンで原油生産を行う中小企業
Oasis Petroleumは、2015年の設備投資予定額
を前年比44%引き下げたものの、生産量は前年
比5-10%増加すると予想しています。また、米石
油大手コノコ・フィリップスも、2015年の設備投資
額を20%減少させる一方、生産量は前年比3%程
の増加を見込んでいます。
 米国のエネルギー生産者の多くは2015年初頭か
ら開発投資計画を発表する予定であり、業界全体
の傾向を見極めるには投資計画が出そろうまで待
つ必要があります。しかし、前述の投資減・生産増
の動きは、昨今の原油価格の下落に対応する形
で、中小プレイヤーを中心に大幅なコストカットを
実施してきており、全米のシェール産業の採算価
格が、足元低下している可能性を示唆しています。
WTI原油先物価格およびMLP配当の推移
(米ドル/バレル)
120
300
60
100
20
MLPの年次リターンおよび配当成長率の推移
80%
 実際、MLPの配当は、原油価格の動きに関わら
ず、1999年以降一度のマイナスも記録せず一貫
して持続的・安定的に成長してきました。(右上図)
40%
 MLPのトータル・リターンは年によってばらつきが
あるものの、長期で見れば「配当成長率+配当利
回り」に回帰する傾向があり、過去、MLPのトータ
ル・リターンがマイナス、もしくはプラスの1ケタ台
前半に止まった年の翌年のリターンは+20%~
70%と大幅に上昇してきました。(右下図)
0
1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 (年)
YTD
出所: ブルームバーグ、バークレイズ、GSAM、 WTI原油先物価格:WTI
原油1限月先物価格、MLP配当は1998年を100として指数化
期間:1998年~2014年(2014年のWTI原油先物価格は2014年12月19
日時点、2014年のMLP配当は第1四半期から第3四半期までのデータに
基づきGSAM算出)
60%
 川上企業が設備投資を発表する2015年年初以
降に、MLPの2015年の設備投資および配当見通
しなどの具体的な計画が発表されますが、現時点
では大半のMLPがこれまでの配当見通しを維持
すると見込んでいます。
200
40
 *出所:GSグローバル・マクロ調査部 2014年10月時点
低リターンの翌年は大幅上昇の傾向
WTI原油先物価格(左軸)
80
0
 多くのMLPが営む川中事業は、エネルギー輸送
容量に応じて受け取る手数料が主な収入源であ
り、その契約を長期で川上事業と結んでいます。
MLPの収益のうちおよそ8割はフィーベースの契
約に基づいているため*、MLPは比較的安定した
収益構造を有しており、エネルギー価格の短期的
な変動ではなく、生産量から影響を受ける特性が
あります。
400
MLPの配当(右軸)
100
MLP市場の今後の見通し
原油下落がMLPの収益に与える影響は限定的
情報提供資料
16%
76%
44%
46%
12%
45%
36%
8%
28%
26%
17%
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14%
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0%
3%
0%
-3%
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-20%
-4%
-40%
-8%
MLPトータル・リターン(左軸) -37%
MLP配当成長率(右軸)
-60%
1999
2001
2003
2005
2007
2009
2011
-12%
2013 (年)
出所: ブルームバーグ、バークレイズ、GSAM MLPトータル・リターン:アレ
リアンMLP指数 期間:2004年~2014年(2014年のトータルリターンは2014
年12月19日までのリターン、 2014年のMLP配当は第1四半期から第3四半
期までのデータに基づきGSAM算出)
本資料は、情報提供を目的としてゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社(以下「弊社」といいます。)が作成した資料であり、特定の金融
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りません。本資料に記載された見解は情報提供を目的とするものであり、いかなる投資助言を提供するものではなく、また個別銘柄の購入・売却・保有
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2014年12月25日
原油相場とMLP市場の今後の見通し(3/3)
配当利回りは魅力的な水準まで上昇
 2014 年 12 月 19 日 時 点 、 MLP の 配 当 利 回 り は
6.0%まで上昇しており、米国債利回りおよび過去
との比較で魅力的な水準となっており、相対的な
割安度合いも高まっています。(右上図)
天然ガス価格の上昇がMLPの収益を牽引
 原油価格の下落が取り沙汰される一方で、天然ガ
スの価格は上昇基調にあります。季節的な需要
が高まる一方、現在の在庫水準は過去5年平均を
下回っています。結果、冬に入って以降、天然ガ
ス市場の需給は逼迫し、目先は天然ガス価格の
上昇要因となる可能性があります。加えて、長期
的には老朽化した石炭火力発電所の閉鎖や、
LNG輸出施設の稼働開始に伴って、天然ガスの
需給は逼迫することが予想され、関連銘柄の安定
的な利益成長が期待できます。
 例えば、天然ガス/NGL収集・輸送大手ワンオクは、
コモディティ相場は不安定な展開が続いているも
のの、バッケンなど高い生産性が見込める地域に
重点的に投資を継続する方針を示しており、12月
2日に発表した2015年のガイダンスにおいて、予
想配当額を前年比14%増と、従来予想から上方
修正しました。
 MLP市場では、天然ガス関連のインフラの比率が
原油関連のインフラを上回っているため(右中図)、
天然ガス価格の上昇がMLP全体のリターンを牽
引することが期待されます。
情報提供資料
MLPおよび米国10年債の利回りとその格差の推移
12%
8%
利回り格差:
MLPが米国10年債に対して…
10%
6%
MLP配当利回り(左軸)
8%
6.0%
6%
4%
4%
利回り格差過去平均:
2%
3.0%(右軸)
2%
米国10年債利回り(左軸)
利回り格差(MLP - 米国10年債)(右軸)
割安
割高
0%
0%
2006
2008
2010
2012
2014 (年)
出所: ブルームバーグ 期間:2006年1月末~2014年12月19日
MLP:アレリアンMLP指数、米国10年債:ジェネリック米国10年国債
MLPのセクター別時価総額比率
その他 24%
天然ガス
関連インフラ
39%
川上 4%
原油
関連インフラ
28%
川下 5%
出所: ブルームバーグ 2014年12月19日時点 各セクターはYorkville
MLPユニバースセクター別インデックスに基づきGSAMが分類
セクター・銘柄間のリターン格差が大きい市場であるが故に銘柄選択が重要となるMLP市場
 他の市場同様、MLP市場は常に玉石混淆であ
り、保有する資産の種類・地域、バランスシート
の状況等により、各銘柄のファンダメンタルズは
大きく異なります。
 MLP市場ではセクター・銘柄間のリターン格差
が大きく、実際、2014年年初来のMLP市場のセ
クター毎のリターン格差は大きく開いております。
このような市場では、銘柄選択がより重要であり、
卓越したリサーチ能力を有するアクティブ・マネ
ジャーが付加価値を創出する多大な機会がある
と考えられます。
MLPの2014年年初来セクター別リターン
探鉱・生産 -45%
天然資源
-18%
エネルギー・サービス
-17%
海運
-8%
集積パイプライン・分離施設
-1%
川下
-1%
天然ガス・パイプライン
8%
原油パイプライン
12%
精製石油パイプライン
23%
ジェネラル・パートナー
-60%
30%
-40%
-20%
0%
20%
40%
出所: ブルームバーグ、Yorkville MLPユニバースセクター別インデックス
(トータル・リターン、米ドルベース)に基づき作成
期間:2014年1月~2014年12月19日
本資料は、情報提供を目的としてゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社(以下「弊社」といいます。)が作成した資料であり、特定の金融
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