10 各種動脈における動脈硬化病変の好発部位、及び発生した病変の性状 動脈硬化のモデル動物である WHHLMI ウサギを用いた検討 ○中川貴之 1、ユウイン 2、小池智也 2、塩見雅志 1,2 (神戸大学医学研究科 1 疾患モデル動物病態生理学、 2 附属動物実験 施設) 【背景と目的】日本人の死因の上位を占める心疾患や脳血管疾患は動脈 硬化によって引き起こされる。従って血管疾患のモデル動物の開発は重 要である。神戸大学で維持している WHHLMI ウサギは自然発症の高コ レステロール血症に由来して、アテローム性動脈硬化が自然発症するモ デル動物である。しかし、各種動脈における動脈硬化病変の好発部位の 評価はまだ報告されていない。本研究では WHHLMI ウサギを用いてア テローム性動脈病変の好発部位の特定と性状の評価を行う。 【材料と方法】6 月齢(n=7)、10 月齢(n=10)、20 月齢(n=10)、30 月齢(n=10) の WHHLMI ウサギを安楽死後、組織の採取を行った。大動脈、頸動脈、 肺動脈、腎動脈、大腿動脈については腹側をカットオープンし、内膜面 積を撮影し、病変の好発部位を観察した。内膜面積および病変面積を画 像解析装置で計測し、病変面積率を算出し、病変の程度を評価した。脳 底動脈および冠動脈は、病理組織標本を作製し、病変の好発部位を評価 した。 【結果】大動脈では、大動脈弓部の腕頭動脈分岐部、鎖骨下動脈分岐部、 腹腔動脈分岐部、上腸管膜動脈分岐部、腎動脈分岐部および肋間動脈分 岐周辺から病変が発生し、加齢で病変が拡大していた。頸動脈では、起 始部、前甲状腺動脈、頸動脈洞周辺で病変が発生し加齢で拡大した。肺 動脈では右肺動脈と左肺動脈の分岐部と右肺動脈で進行した病変が認 められた。大腿動脈では、内腸骨動脈、大腿深動脈、膝窩動脈と下行膝 動脈の分岐部周辺で病変が認められた。脳底動脈では、椎骨動脈合流部 に顕著な病変が認められた。冠動脈では、左回旋枝に病変が頻発し、左 回旋枝の分岐部および湾曲部で病変が観察された。病変の好発部位はい ずれも分岐の周辺であることから、動脈の分岐部が病変の発生に関与し ていると考えられる。 【結論】以上の観察結果から、アテローム性動脈硬化病変の好発部位は 各種動脈の分岐部周辺であり、動脈の分岐が病変の発生に関与すること が示唆された。
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