5 - 中央大学

953
E - 13
第 43 回地盤工学研究発表会
(広島) 2008 年7月
2007 年中越沖地震の強震記録を用いた地震波動エネルギーの算出
重複反射解析
波動エネルギー
鉛直アレー
中央大学理工学部
国際会員
國生
中央大学理工学部
学生会員
○鈴木
1.はじめに:
表-1
地震に対する構造物設計は,従来から慣性力に直結した静的震度や加速
度を用いる力の釣り合いによる設計法が使われてきたが,地震による構造
物の被害が必ずしも加速度で決まらず,速度のようにエネルギーに関連し
深度
67.5
GL-0
65.1
GL-2.4
震による破壊や残留変形は支持部材の損失エネルギーで規定され,地震波
動エネルギーがどのくらいそこに供給されるかによって決まると言えよう.
最近では構造物の最終破壊に至るまでの保有すべき耐震性能の段階を規定
22.5
GL-45.0
16.7
GL-50.8
-15.5
GL-83.0
する変形やひずみの評価が重要となってきた.既に,建築の上部構造本体
-31.9
GL-99.4
については地動による建物内でのエネルギーの釣り合いに着目した耐震設
-102.5
GL-170
-137.5
GL-205
-182.3
GL-250
計法が提案されている
が,地盤からのエネルギーの流れについては十分
な検討はされてこなかった.
地質
(m)
した性能設計法が取り入れられ,耐震性能の段階に対応して地震時に発生
1)
拓
サービスホール地盤系の概要
標高
T.M.S.L
(m)
た指標のほうが被害に密接に結びついているとの認識がある.構造物の地
剛治
弾性波速度
Vs
Vp
(m/s)
(m/s)
新期砂層
310
650
新期砂層
番神砂層
310
650
番神砂層
350
1590
番神砂層
安田層
350
1590
500
1670
500
1670
580
1780
640
1780
地震計設置位置
(m)
GL-2.4
GL-50.8
GL-99.4
西山層
GL-250
著者らは,主要動の SH 波を対象として,表層地盤での地震波動エネルギ
ーの流れを分析し,構造物や斜面の設計に反映させることを目指した研究
得られた強震記録を用いて,SH 波の1次元重複反射計算に基づき地震波
動エネルギーを計算し,他の地震での計算結果と比較した.
2.波動エネルギーの算出法:
微小時間 +t 内にある深度を通過する波動エネルギーの増分 + E と時間
t = t1 ~ t2 でのエネルギー累積値 E は,運動エネルギー + Ek とひずみエネル
Velocity(m/s)
力柏崎刈羽原子力発電所のサービスホール地盤に設置された鉛直アレーで
Energy(kJ/㎡)
を行ってきた2).本研究では,2007 年新潟県中越地震(M6.8)の際に東京電
ンス ρVs によりそれぞれ次式のように表される.
+ E =+ Ek ++ Ee = ρVsu 2 +t
(1)
t2
E = Ek + Ee = ρVs ∫ u 2 dt
t1
(2)
Velocity(m/s)
ギー + Ee により 50%ずつ受け持たれ,その合計は粒子速度 u とインピーダ
ここで注意すべきは, u はあくまで1次元進行波の速度波形であり,観測
て波形が変化するため,地表記録から深部地盤でのエネルギーの流れを計
算すると誤差が大きくなる.その場合,鉛直アレー記録があれば深部の地
3)
震波の情報を使用できるためエネルギーの信頼度が高められる .鉛直ア
Energy(kJ/㎡)
しかし,軟質な地盤が強い地震動を受けると,地盤物性の非線形性によっ
400
0.2
表-1 にサービスホールにおける鉛直アレー設置地盤の概要を示す.地震
計は地表付近を含めた4深度に設置されている.図-1 にはこのうち 1~4
号機原子炉建屋設置レ ベルに近い地震計設置深度(GL-99.4m)と地表付近
(GL-2.4m)での上昇・下降速度波形とそれから計算された上昇エネルギーが
Velocity(m/s)
3.中越地震での入射エネルギーの算定:
GL-2.4 direction-EW
Upward Velocity
25
30
35
40
45
300
50
55
200
100
GL-99.4m direction-NS
Upward Velocity
Downward Velocity
0.0
-0.2
-0.4
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
20
GL-99.4m direction-EW
Upward Velocity
Downward Velocity
25
30
35
40
45
50
55
Time(s)
図-1
GL-2.4m と GL-99.4m での
速度波形と波動エネルギー
示されている.なお,GL-2.4m では地表が近いため,観測波を 1/2 したも
Seismic wave energy evaluated from strong motion records during 2007 Chuetsu-Oki earthquake.
Kokusho Takaji1) ,Suzuki Taku 2) :1) Professor, Faculty of Science and Engineering, Chuo University,2)Graduate student,ditto
1905
60
GL-99.4m
Eu
Ed
Edef
0
レーの 2 深度の観測波を,重複反射理論に基づいてその観測深度における
上昇波と下降波に分解する方法については文献3)に述べられている.
GL-2.4 direction-NS
Upward Velocity
500
Velocity(m/s)
を用いて重複反射理論により任意の深度での上昇波・下降波が計算できる.
GL-2.4m
Eu
Time(s)
波から計算するためには,まず上昇波と下降波の成分に分解する必要があ
る.地盤モデルが既知で地盤物性が線形と仮定できる場合には,地表記録
350
300
250
200
150
100
50
0
0.3
0.2
0.1
0.0
-0.1
-0.2
-0.3
-0.4
-0.5
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
20
60
のを上昇波および下降波と見なしている.上昇エネルギーを計算するに当た
を考慮して2つの地震計設置深度(GL-99.4m と GL-2.4m)の間での地震記録の
フーリエスペクトル比を用いた逆解析で算出した Vs=182m/s を用いた.これ
より,GL-99.4m の西山泥岩層での面積 1m2 当たりの上昇エネルギーは NS・
EW 方向合わせて 435kJ/m2,GL-2.4m の砂丘層表面付近の上昇エネルギーは
314kJ/m2 と算定され,地表に近づくほど減少する傾向にある.また,GL-99.4m
Energy Spectrum(kJ/㎡)
ρ=1.8t/m3 を用いた.いっぽう地表付近では,砂丘砂のひずみ依存非線形性
Total
direction-EW
direction-NS
20
って式(2)で用いるインピーダンスは西山層では PS 検層による Vs=500m/s と
15
10
5
での下降エネルギーは 338kJ/m2 と算定されるため,この深度より上の地盤で
0
97kJ/m2 のエネルギーが内部減衰などにより失われたことになる.
0
1
2
図-2 は GL-99.4m の深度での上昇速度波形の EW・NS 方向,およびそれら
図-2
1000
分かる.
4.他の地震での入射エネルギーとの対比:
このようにして算定した上昇波エネルギーを,1995 年兵庫県南部地震
単位面積の上昇エネルギー
Es/A, Eu/A(kJ/㎡)
軸の単位は kJ/㎡である.横軸の各振動数刻みごとのスペクトル値を合計した
の長周期波で運ばれ,それより短周期成分のエネルギーは少なかったことが
5
スペクトル
とは速度波形のパワースペクトルにインピーダンス ρVs を乗じたもので,縦
基礎設置レベルでの入射エネルギーのうち 71%が 0.8Hz 以下(周期 1.2 秒以上)
4
GL-99.4m でのエネルギー
を合計した「エネルギースペクトル」を示している.エネルギースペクトル
ものは式(2)で計算したエネルギー累積値に一致する.図-2 より,原子炉建屋
3
Frequency(Hz)
100
10
中越沖 (M6.8)
式(3),式(4)
▲ Es(地表)
△ Eu(基盤)
兵庫県南部 (M7.2)
式(3),式(4)
■ Es(地表)
□ Eu(基盤)
(M7.2),2004 年新潟県中越地震(M6.8)について算定したエネルギーと両対数
上で対比したのが図-3 と図-4 である.図の縦軸には,地表と基盤(深度 100
1
10
~200m 程度)での上昇エネルギーEs,Eu を横軸の震源から地震観測点まで
100
震源距離 R(km)
の距離(東京電力の情報による)に対してプロットしている.これより,いず
れの場合にも上昇エネルギーは地表よりは基盤で大きな値を示しており,震
図-3
源から遠ざかるほど急速に減少する傾向が読みとれる.
そして,震源距離 R に対する基盤での入射エネルギーEu/A の関係は,図中
兵庫県南部地震との比較
1000
きることも示されている4)5).
EIP A = E0
( 4π R )
2
(3)
log E0 = 1.5M + 11.8
(4)
2
今回計算したサービスホールの GL-99.4m でのエネルギー435kJ/m を図-3,4
にプロットしているが,M=6.8 の地震に対して式(3)(4)で計算した EIP A (図
中の実線)に比べて大きめの値になっている.これは式(3) (4)では考慮されて
いない Asperity や Directivity などの震源メカニズムが,原子力地点にエネル
単位面積の上昇エネルギー
Es/A, Eu/A(kJ/㎡)
に直線で示す実体波の球面波エネルギー拡散による次式で平均的には近似で
100
10
ギー集中を引き起こしたことが一因と考えられる.
5.まとめ:
1)柏崎刈羽原子力発電所の原子炉建屋設置レベルでの上昇波動エネルギー
1
10
中越沖 (M6.8)
式(3),式(4)
▲ Es(地表)
△ Eu(基盤)
中越 (M6.8)
式(3),式(4)
●Es(地表)
○Eu(基盤)
震源距離 R(km)
100
は 435kJ/m2 であり,特に 1.2 秒より長周期側に 71%が集中していた.
2)近年の強地震の記録から算出した基盤上昇エネルギーとの対応が比較的
図-4
新潟県中越地震との比較
良好な簡単な評価式(3)(4)と比べた場合,435kJ/m2 の上昇エネルギーは大きめ
の値となっており,震源メカニズムによるエネルギー集中効果を反映していると考えられる.
本研究に当たり,東京電力柏崎刈羽原子力発電所サービスホールの鉛直アレー記録や地盤情報などを使わせていただ
いた.関係各位に深謝の意を表します.
[参考文献] 1) 秋山 宏: エネルギーの釣り合いに基づく建築物の耐震設計,技報堂出版.2)國生剛治,本山隆一,万谷昌吾,
本山 寛:表層地盤における地震波のエネルギーフローと性能設計,日本地震工学会論文集,第 4 巻,第 4 号,2004.9.
3)國生
剛治、本山隆一: 地震波の上昇波と下降波の分離による表層地盤でのエネルギー収支,土木学会論文集 No.652/III-51,257-267,2000.6.4
4)Kokusho, T. and Ishizawa, T.: Energy approach to earthquake-induced slope failures and its implications, Journal of Geotechnical and
Geoenvironmental Engineering, ASCE, Vol.133, No.7, 828-840, 2007. 5)石澤友浩,國生剛治:エネルギー法による地震時斜面変形量評
価法の開発,土木学会論文集 C
Vol.62,No.4,2006
1906