イギリスのコミュニティ - 首都大学東京 都市環境学部 都市環境学科 都市

4
3
総合都市研究
第7
9
号 2
0
0
2
イギリスのコミュニティ
• トランスポート
はじめに
1.イギリスの移動困難者に対する施策
2
. イギリスの移動保障に関する今日的課題
おわりに
橋山井田
高秋藤津
万由美*
哲男“
直人日本
大輔****
要 約
イギリスでは、障害者生活手当の移動部分など、移動困難に対する社会手当の支給など
があり、また障害差別(禁止)法により、サービス利用に関して平等に利用できるような
方策をとることが求められるなど、様々な面で移動困難者の移動を保障しようとしている。
また、その具体的な方法として、コミュニティ・トランスポートが発達している。現在は、
保健・医療制度改革の中で、どのように地域に応じた通院保障のシステムを作っていくか、
また移動手段をもたないために、社会の主流から取り残されてしまう社会的排除の問題に
どう対処するかが、課題となっている。
でも移動の保障について関心が高くなっている今、
はじめに
地域で移動を支える仕組みを持つイギリスの事例
は大きな示唆を与えてくれる。本稿では、このよ
イギリスでは、公共交通手段では満たすことの
うな観点から、イギリスにおける移動困難者に対
できないような移動に関するニーズに対応するた
する諸施策を整理し、移動保障に関する今日的課
めに、様々な方法が開発されている。イギリスで
題を検討する。
はこれらは公共に対するところのスペシャルとい
う意味でのスペシャル・トランスボートという言
イギリスの移動困難者に対する施策
い方よりは、移動に関するニーズにコミュニティ、
すなわち地域で対応する交通サービスであるとし
てコミュニティ・トランポートと呼ばれる。日本
$宇都宮大学教育学部
様車東京都立大学大学院都市科学研究科
・神奈川県総合リハビリテーションセンター研究部
・・・・交通エコロジー・モビリティ財団
H
(
1)移動困難と障害差別(禁止)法
9
9
5年 に 障 害 差 別 ( 禁 止 ) 法
イギリスでは 1
総合都市研究第 7
9号
4
4
2
0
0
2
(
D
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a
b
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i
t
yDiscriminationAct、以下 DDAと
0
0
2
年から新車両については
えば、タクシーでは 2
する)が制定された。この法律は障害があるため
車いす対応車にし、 2
0
1
2
年にはすべての車両を車
に、日常生活で差別的な扱いを受けることがない
いす対応にすることなどが検討されてきている。
ように制度的、設備的整備を行なうことを目的と
する(注(1))。全体は「障害の定義j、「雇用」、
(
2
) 移動を支援するための諸施策
「その他の領域(サービス、商品、庖舗など )
J ~公
ここで障害差別(禁止)法ができる以前からも
共交通」、「全国障害者委員会」などからなり、そ
存在していた移動困難解消のための支援策につい
9
9
6
年1
2月 2日に施行された。
の内容の多くは 1
ても整理しておきたい。まず経済的な支援として
この法律の中では、〔第 3部
交通サービス、
は、移動のための社会手当がある。これは障害者
交通施設の利用〕や〔第 5部 公 共 交 通 〕 に お い
の生活手当の中の移動部分 (
D
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b
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l
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t
yAllowance
て、障害を原因とする移動における差別を解消す
のmobilitycomponent) と呼ばれる部分で、移
るための法文が含まれている。頃 3部 交 通 サ ー
動困難の度合によって支給額が決定される。また、
ビス、交通施設の利用〕では、鉄道サービスや駅
軍人恩給にも同じような移動手当がある。移動部
0
0
4
年からは、サー
舎などの施設の利用について、 2
0
0
2年度で週当たり重度移動困難者が
分の手当は 2
ビス提供者は障害者が実質的に使えるようにする
3
9
.
3
0ポンド、軽度移動困難者が1
4
.
9
0ポンドとなっ
か、または使えないのであれば、それにかわるサー
ている。
ビスを提供する責任が生じる。建物やホームだけ
パスや鉄道の運賃割引制度もあり、パスは地方
でなく、時刻表や券売機などの改善も対象となる。
自治体が運行することが多いので、地方自治体主
他の交通機関の場合もチケットの販売などを含め
体の割引制度を持っているところが多い。鉄道に
て平等な利用ができるよう求められている。
関しては、障害者レールカードやシニアレールカー
〔
第 5部公共交通〕では、旅客運送業者(製
ドがあり、それぞれ提示することで、運賃が割引
造業者と交通事業者の両方)と障害者交通資問委
となる。ただし、車いす利用者と登録済みの視覚
員会 CDisabled Persons Transport Advisory
障害者はレールカードがなくとも割引となり、介
Committee) との話し合いによって、交通シス
護者についても同様に割引となる。
テムや車両などについての改善策の大枠が決めら
乗用車に関する経済的支援としては‘ M
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b
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l
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t
y
'
れ、その結果について、広く←般の意見を聞いて、
という組織が活動している。この組織は 1
9
7
7
年に
基準を決定することとなった。これによって、例
政府のイニシアチプで作られ、障害者の乗用車や
表 1 イギリスのコミュニティ・トランスポート
車両貸し出し
(grouph
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ebuss
e
r
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c
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s
)
…リーセク夕刊送サービス加問、特定の目的を l
もったグループのための車両貸し出し(運転手つきの場合も、運転は
グループが担う場合もある。)
事前の予約を前提とし、固定ルートを基本としつつ柔軟に対応し、 ド
ダイヤル・ア・ライド (
D
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R
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e
)
ア ツ - .1
'7 0)移動を可能にするようなース。基本的明合い│
となる。
ソーシャルカー (
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e,communityc
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)・
即ラ…が附一山提供する活動。日士の話し合│
いに基づき、自分の車両を使う場合が多い。
コミュニティ・ノてス
ミニパス (
9人から 1
6
人乗り)や大型パス(定員 1
7人以上)を使った
(communitybuss
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)
地域内のパスサービス。
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tを参考に作成o
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→後に C
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lこ変わる。
4
5
高橋・秋山・藤井・津田:イギリスのコミュニティ・トランスポート
額五;
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でピく士
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緬提乗所
めがい近
きスらが
⑥て
ス一る向か
パサき家る
ニいでのあ
ミか供客に
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唖J~,.
.
コミュニティ
・パス(交通法
第2
2項許可)
ダイヤル・ア・ライ
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、
1
.
.
.
' () 0
ド型サービス(たぶ
ん交通法第 1
9項許
可)
占 HM
域ク
‘
,
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のル
は動
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地の
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め
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唱耳'
dau
行川町?
収
"
毎
,
,
,
(
R
J
ヴィレッジ・パ
ス(グループ・ハ
イヤー)(交通法第
1
9項許可)
図 1 コミュニティ・トランスポート立ち上げのためのフローチャート
4
6
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0
0
2
コラム①
次の三つのすべてにあてはまりますか
12
1歳以よである
2 ミニパスの乗車定員 1
本運転手以外
l
こ9
人から 1
6
人である
3 第1
捕か第2掲の許可を受けてい
て.支払いを受けて運転している.ま
たは支払いは受けていない
e
@
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量
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-れ
い '3き
の転一れが同札
弘
知
加
た 還k マ許B
な'あル免一
あはてクるリ
••
7
0
1
歳未満だ
が.医学的な
7
0i歳以上の場合
理由から制限
カテゴふら
された免許を
持っている
¥
P
Ciの医療チェックをパXしな
占
以下の条件を全て満たす場合のみ.ミニパスを
運転する資絡があります。
1 支払いを受けずに.社会的な目的のため
に.商業目的でなく.運転する
221
愈以上で1.
0
巌未満である
3 カテゴリーBの免許を取得してから最低でも
2
年経っている
4 ポラン1/1
)ー活動として運転サーーピスを提
供している t
実費弁済以外は無償で)
5 ミニパスの総重量I
まリフトつきで4
.
2
5ト
ン
. リフトなしで3
,5トン以下である
6 トレイラーはっけない
ければなりませムバスすれ
ば,さらに3
年.運転資格が更
新されます。免許のカマテゴ
リーはD
lまたは第ω
瑛または
z
頃許可があれば, O
I
+
E
t
支
第2
払いを受けな叫になります
図 2 ミニパス運転のための免許について
車いすの購入・レンタルに関わる費用を補助する。
改造、維持にかかる消費税や車両税が免除となる。
また、障害にあった乗用車や車いすの紹介も行っ
また、通院については、通院保障制度があり、費
ている。その他の経済的支援としては、前述の障
用が補助される場合がある。通院保障については、
害者生活手当移動部分を受給していれば、障害者
保健・医療制度改革のもとで、新たな課題となっ
またはその家族が所有する車両については、車両
てきているので、後に詳述する。
高橋・秋山・藤井・津田:イギリスのコミュニティ・トランスポート
(
3
) イギリスのコミュニティ・トランスポート
イギリスで今まででみたような制度的な支援に
4
7
ニパス運転者啓発プログラム (
M
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b
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sD
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v
e
r
、MiDAS)J を行っており、
AwarenessScheme
加え、実際の移動を支援しているのがこのコミュ
ソーシャルカーも含むコミュニティ・トランスポ
ニティ・トランスポートである。イギリスのコミュ
ートの運転者の全体的な技術や質の向上をはかつ
ニティ・トランスポートは、表 1にあるように大
研修修了者は、他
ている(内容は表 2)0 MiDAS
きく四つのタイプにわけることができる。
D
AS
参加組織のクルマを再評価されること
のMi
このようなサービスの多くは、チャリティとい
なしに運転することができる。また、 CTAでは、
う法人格をもったボランタリ一組織が行っている。
政府の助成を受けて、利用者に対する介助や応対
どのような地域のニーズにたいして、どのような
についての水準をあげるために、「乗客補助訓練
サービスが提供されるかの判断は図 1によってわ
事 業 PATS (
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かる(注 (
2
)
)。
S
c
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e
)
J の開発や移送サービス入門といった内
イギリスでは、基本的には、運転手を除いた乗
員定員 8人までのクルマをボランタリーな活動と
容の「基本研修事業
PTI (
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)J も実施中である。
して運転する場合には、実費弁済以上の支払いを
うけない限り、旅客車両運転免許 (
P
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r
2
. イギリスの移動保障に関する今目的
C
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gV
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l
e
) の取得や、運行の許可を求め
課題
9人 -16
人定員)につ
る必要はない。ミニパス (
いては、 1
9
9
7
年に免許に関する規制が、 EUの他
前章で、イギリスの移動困難者に対する移動保
国の免許制度と合わせる目的で改正されたことを
障やその保障を実際に担うコミュニティ・トラン
受けて、現在、一般的な免許で、ミニパスを運転
スポートに関する諸制度について整理した。本章
できるかどうかの判断は非常に複雑になっている
では、現在のイギリスで移動困難を考える上で、
(
図 2参照)。ミニパスを運転する場合には、通常
重要となってきている「通院保障」と「社会的排
はカテゴリ一D1またはD1+E (無償運行用)とい
除Jという二つの分野について考察を行なう。
う免許が必要となる。しかし、普通の免許(カテ
ゴリ -B) でもミニパスを運転できる場合もある。
(
1) 英国の保健・医療サービスと通院保障
1
9
9
7年の免許法改正後は、新規にD1免許を取得
適切で、質の高い医療サービスを必要に応じて
したり、更新したりするためには、特別な申請が
受けられるかどうかということは生活の質を決定
必要となり、ボランティア運転者にはハードルが
する重要な条件のひとつである。そのような医療
高くなっている。
サービスの受給を保障する供給サイドの要素とし
ボランティアとしてコミュニティ・トランスポ
ては、供給主体である医療施設の有無、そこで実
ートの運転者となる場合については、コミュニ
際にサービスを提供する医療専門職の知識や技術、
ティ・トランスポートの全国団体である CTA
医療を供給するシステム運営の効率などが関与し
(Community T
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) が「ミ
てくる。また、いかに供給主体の準備があったと
表 2 MiDASの内容
Module1 評価(約1
時間) ミニパス評価・トレーナー C
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/
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r
) によるデモンストレー
ションの後、実際の運転を行い評価を受ける
Module2 ミニパス運転のための訓練(半日)ミニパス運転上の講義(守りの運転、ミニパス運転手の法的責任、
乗客の安全、子どもの乗客の安全、運転手の安全、事故など緊急時の対応)
Module3 車いす周ミニパス運転のための訓練(半日)車いす用のミニパス運転のための講義と実践(利用者の
理解、介助方法、リフトとスロープの使い方、とめ具の使い方など)
4
8
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0
2
しでも、実際にそこに行くことができなければ、
NHSトラストの予算から支出される。
医療サービスを受けることはできないので、医療
実際の送迎は NHSの救急サービス部門が担う
サービスのアクセシビリティーの確保も重要であ
ことが多かったが、供給主体の決定に強制競争入
る。一般の公共交通の利用が難しい移動困難者の
札が導入されたため、入札の結果、ボランタリー
場合は、特に通院を保障する制度が必要である。
組織が病院と契約をして送迎サービスを担ってい
ここではそのような観点からイギリスの通院保障
る例もでできている。
NHSによる送迎サービスの対象とはならない
について検討する。
英国では、医療サービスは国民保健サービス
が、自分で通院することが難しい人のための送迎
(
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e、 以 下 NHSとする)
サービスを提供する活動がソーシャル・カー・ス
という包括的な保健・医療提供システムの中で提
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. community c
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キーム (
供されている。 NHSは基本的には国税によって
s
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m
eともいう)である。これは通常は運転ボ
運営される行政サービスで、処方筆など一部を除
ランティアが自分の車両を使って送迎を行なうも
き原則として自己負担なしで医療サービスを受け
ので、実費程度の料金を支払う(図 4参照)。高
ることができる。対象者は地域の一般開業医
齢者、障害者、児童が利用する際には割引となる
(
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r
、以下 GPとする)に登録
し、緊急の場合を除いては、まずその GPを受診
が多い。ボランタリー組織によって運営されるこ
し
、 GPが必要と認めた場合に、大きな病院への
とが多いが、病院や救急サービスが直に運転ボラ
(
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s
) 制度を持つ地方自治体
が行なう。
受診依頼やそのための移送の手配を GP
ンティアを募り、 NHSの受診と連動させてソー
実際の通院送迎には、 NHSによる送迎とソー
シャル・カー・スキームで患者送迎を確保している
シャル・カー・スキームによる送迎がある。
こともある。
NHSによる送迎は GPなどの医療専門職 (GP
、歯
9
9
8年 NHS
また、通院費用の補助として、 1
医者、助産婦、看護婦)から病院や施設に紹介さ
(通院費用と料金の減免)規則 (
N
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れて通院または入・退院する場合で、医学的にみ
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、
て患者送迎サービス (
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eともいう)の利用が必要
だと判断された場合には、 NHSの中の患者送迎
還 (
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n
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o
s
p
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)
サービスの対象となる(図 3参照)。
活手当受給など、一定の条件を満たしたものにつ
この送迎のための費用は、独立行政法人である
C
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o
n
s1
9
8
8
) による通院費用償
がある(注 (
4
)
)。これは所得補助受給や障害者生
いて、必要な通院の費用を償還するという制度で
病 院 蛾 ぷ 五 シ 送 叩
送迎のアレンジ
送避の受託契約
図 3 NHS
による送迎システム
高橋・秋山・藤井・津田:イギリスのコミュニティ・トランスポート
4
9
J
i
鴻
君
主
ヂ
ト
鎗
助
金
図 4 ソーシャル・力一・スキームのシステム
ある。通院費用手当の額は、基本的には公共交通
争や自由診療の導入など、今までイギリスでは考
を利用した場合の最小限の金額だが、医師が認め
えられなかったような事態がおこっている。また
ればタクシーを利用しその費用を償還してもらう
5ペンス程度の費用
る場合には、 1マイルあたり 2
1
9
9
9
年の保健法 (
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hA
c
t
) により、 2
0
0
1年
P
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度よりプライマリー・ケア・トラスト (
C
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r
u
s
t
) という地域の保健・医療・福祉を
が償還されることが多いが、病院によってその額
統合した予算を運営する組織を設立することとな
こともできる。また、クルマを使って通院してい
り、その中で NHSも運営されることになってい
は異なる。
CTでは NHSと 地 域 の 社 会 サ ー ビ ス 局
る
。 P
(
2
) 健康における不平等と通院保障
イギリスでは、 1
9
7
0
年代後半から、所得や人種、
く異なるということに注目し、これを健康におけ
(
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lS
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s、 D
S
S
) の予
算が一部統合されるので、 D
SSの送迎サービスが
必要ない昼間に病院送迎を D
SSが分担し、費用は
PCTの共通予算でまかなうということも可能となっ
性別、年齢といった属性によって健康状態が大き
る不平等の問題として、様々な角度から調査や研
てきている。今後は、地域に応じた通院保障のシ
5
)
)。病院送迎のシス
究を行なってきている(詮 (
ステムを作り、地域の中でどのように地域住民の
テムを用意し、経済的な援助をすることは、通院
送迎を考えていくのかが重要な課題となってきて
の機会を高める有効な手段のひとつであり、全般
いるといえる。
的な移動に関する経済的支援とともに、健康にお
ける不平等を是正するためには不可欠と考えられ
(
3
) 社会的排除と移動
る。しかし、このようなシステムを充実させるよ
うな財政的裏付けは十分にはされていないのが現
1
9
9
6
年に政権についた労働党ブレア政権は、
「社会的排除 (
s
o
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x
c
l
u
s
i
o
n
) の克服」に取り
状である。
組むことを大きな政治的課題として掲げている。
1
9
9
0
年の国民保健サービスおよびコミュニティ
これは、民族、ジェンダ一、年齢、貧困、低所得
ケア法によって、一定の条件のもとで G
Pや病院
といった理由によって社会から排除されることが
が独立した予算を持ち独立採算で運営することが
ないように、社会への平等な参加のための条件を
可能となった
(
G
Pについては予算保持GP
制度、
整備していくことを意図する。コミュニティ・ト
病院については NHSトラスト)。さらに、 NHS
で
ランスポートの整備はこの「社会的排除の克服」
はなく自由診療でのサービス供給が可能になるな
のための重要な方策のひとつとして期待されてい
どNHSは全国一律的な制度ではなくなってきて
る
。 2
0
0
0
年に出された環境・交通・自治省(当時)
いる。そのような体制の変化の中で、病院聞の競
の『社会的排除と公共交通のあり方(“ S
o
c
i
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l
総合都市研究第 7
9号
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2
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"
)
jでは、失業者、子育て
ニティ (
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n
i
t
y
)
J政策は、コミュニ
中の家族、若者、低所得者にとって、社会的排除
ティ・ビジネスやコミュニティの再生事業を通し
と交通とは密接に関連していると指摘している
て、雇用の創出と市民の自発的な貢献を促進しよ
また、ブレア政権が推進する「活力あるコミュ
(
注(
6
)
)。例えば、戦後すぐには個人が週に移動
うというものだカ昔、コミュニティ・トランスポー
5マイルだったのが、今では週に 1
3
0
する距離は 2
トはそういった事業のひとつとして、またコミュ
マイルも移動しており、移動の保障は重要な課題
ニティの再生の要として大きな役割を果たすもの
であることが強調されている。
9
9
9
年に環境・交通・自治省(当時)に
である。 1
9
9
6
年から 1
9
9
8
年の英国移動調査のデー
また、 1
より発表された『ボランタリー交通の見直し
タによれば、年代別、移動困難の有無別に移動距
いReviewo
fV
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r
yT
r
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n
s
p
o
r
tつ』ではコ
離をみた場合、自動車を持つ世帯と持たない世帯
ミュニティ・トランスポートの主要な担い手とし
では、大きな違いが生じている。同じ移動困難で
てのボランタリー・セクターの役割が強調され、
も、自動車を持っているかどうかで、移動の自由
そのための財政的、制度的支援のための提言が盛
度は大きく異なっていることがわかる。前出の
り込まれている。
『社会的排除と公共交通のあり方』では、このよ
その中でも、特にここ数年、集中的に助成や支
うな特に移動が困難な状態を「移動における貧困
援策が施されてきたのは、田園地域 (
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)Jと捉えている。
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) のコミュニティ・トランスポートである
表
3 英国におけるタイプ別移動距離(一人当たり一年間): 1
9
9
6
/
9
8
単位:マイル
自動車非保有世帯
0-S
歳
歳
16-29
移動困難でない
移動困難あり
全体
歳
30-49
移動困難でない
移動困難あり
全体
歳
50-64
移動困難でない
移動困難あり
全体
歳
65-79
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全体
1
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5
5
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高橋・秋山・藤井・津田:イギリスのコミュニティ・トランスポート
5
1
(
注(
8
)
)
01
9
9
7年の時点で田園地域のパーリッ
一方で、都市部で多いダイヤル・ア・ライドへの
シュを調べたところ、 75%でパスサービスがなく、
44%では朝 9時までパスサービスがなく、 77%で
資金提供不足を心配する声もある。都市部では今
9
)
)。
は夜 7時以降にパスサービスがなかった(注 (
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) にコミュニティ・トランポー
また、所得階層で下から 10%以内の世帯で比較す
トを組み込んでいくかが課題となっていくと思わ
ると、田園地域に住む世帯は、都市部に住む世帯
れる。イギリスの交通政策および地域振興政策の
の半分しか自動車を所有していない。
中で、このような交通における地域や地方の違い
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後は、いかに統合的交通システムCin
をどのように調和させていくかも考えていく必要
(
4
) 社会的排除解消のための移動保障
がでできている。
このような状況を解消するために、 1
9
8
6
年から
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は、田園地域交通整備基金 (
おわりに
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ね
3年を限度として、新規に立ち上げるコミュニ
日本で 2
0
0
0
年に導入された介護保険では、介護
ティ・トランスポート事業にも助成が行なわれて
保険指定事業者の認定を受けたタクシ一事業者、
きた。これに加えて、三つの新しい助成がプレア
すなわち「介護タクシー」が、介護保険にはない
政権になってから始まった。まず、「田園地域交
送迎介助というサービスを提供することで定着し
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通パートナーシップ基金 (
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年度の介護報酬見直し
た。その結果として、 2
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J は、田園地域が社会的に孤立して
の議論の中から、厚生労働省は訪問介護メニュー
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) 状態の改善を目的とす
いる (
に「通院等のための乗車文は降車の介助(乗降介
る助成である。これは、新規事業だけでなく、既
J を新たに設定した。生活をしていれば当然
助)
存の事業に対しでも、最大 3年間の助成を行な
必要な「移動」という行為を保障する仕組みが介
う。管轄は地域ごとの地域開発局 (
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護保険の中になかったということは、今までの日
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) である。次に、「田園地域
本では、交通・福祉政策の中で移動をどのように
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保障するかという観点が欠けていたということを
ある。これは既存のパスサービスへの資金援助の
0
0
2
年
示唆している。一方で、国土交通省からは 2
ための補助金で、 3年間ζ
l約 9,
5
0
0万ポンドの助
になって、なんらかの運営団体の資格基準を示し
成が行なわれる。管轄はカウンティ政府 (
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て、ボランタリー組織にも移送サービスを認めよ
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)、
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) である。
は、本稿で検討したようなイギリスの制度と重な
最後が、交通省 (
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)
るところが多く、日本の今後の移送サービスを考
による補助制度で、開拓的なパスサービス事業に
える上で非常に参考になると考えられる。しかし、
対する助成である「田園地域パスチャレンジ基金
現在、イギリスは、ブレア政権下での急激な変革
(
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が続いている。それは交通・福祉政策でも例外で
政権以降、特に、地方への権限委譲が進んでおり、
はない。そのような影響は、今回中心的に扱った
田園地域の交通に関することも中央政府ではなく、
移動困難者など社会的弱者に特に強く影響すると
イングランドの中では 8つの地域開発局の管轄と
考えられるので、今後もさらに注意深く考察を深
なり、より地域のニーズにあったサービスの展開
めていきたい。
が考えられるようになってきている。また、スコッ
トランド、ウエールズ、北アイルランドについて
は、イングランドとは違った、独自の政策を展開
できるような機構改革が行なわれてきている。
5
2
総合都市研究第 7
9号
2
0
0
2
参考文献
注
本稿の内容には、 2
0
0
0
年、 2
0
0
2年のイギリス調査の
r
秋山・中村編 (
2
0
∞) パスはよみがえる』日本評論社
r
1
9
9
6
) 交通と福祉一欧米諸
松尾・中村・小・池・青木 (
内容が反映されている。
1)この法律で障害は「日常生活を送る能力に相当に
不利で長期的な影響を与えるような身体的または
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知的な障害 (
国の経験から』文真堂
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交通エコロジー・モビリティ財団 (
2
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における高齢者・障害者の移動に関する調査報告書』
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)より。インターネットサイト
のためページなし。
∞
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) 人口閑散地域への助成などに関する情報について
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∞
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sGetGoing" (CTA 2
0 pp.
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8
6
0
) を参考にした。
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) カントリーサイド・エージェンシー (
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国における高齢者・障害者の移動に関する調査報
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U.K. (イギリス), Community Transport (コミュニティ・トランスポート), S
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高橋・秋山・藤井・津田:イギリスのコミュニティ・トランスポート
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