フラット型ロープの曲げ疲労及び滑車部における振動について 交通システム部 ※千島 美智男 佐藤 久雄 細川 成之 表1 ロープ曲げ疲労試験装置の主な仕様 1 .は .はじめに 近年、索道等のロープ駆動式の交通システムが 近年、 索道等のロープ駆動式の交通システムが ロープ駆動式の交通システムでは、車両がロー ロープ駆動式の交通システムでは、 車両がロー 項 目 実 験 用 ロ ー 全 滑 車 滑車中心間距 ロ ー プ 速 曲 げ 速 プによって牽引されている。このため車両の有無 プによって牽引されている。 このため車両の有無 緊 都市内輸送機関として検討または建設されている。 都市内へ導入する際には、安全性はもとより振動 都市内へ導入する際には、 安全性はもとより振動 等による環境への影響を少なくする必要がある。 張 装 に関わらずロープの走行に起因する連続的な振動 仕 様 プ 直 径 : 24∼37.5mm 長 35000∼39000mm (ロングスプライス) 径 直径 : 3000mm (ゴムライニング) 離 13000mm∼15000mm 度 0∼10 m/s 度 2000 回/時 (最大) 油 圧 緊 張 置 緊張力: 390 kN 等が発生する。この振動等の低減方策の一つとし 等が発生する。 この振動等の低減方策の一つとし ては外周がフラットなロープを使用することによ り滑車通過時の振動等を軽減させることが考えら れる。索道等のロープ駆動式システムでは、 れる。 索道等のロープ駆動式システムでは、ロー ロー プはエンドレスで使用されることが多く、フラッ プはエンドレスで使用されることが多く、 フラッ ト型ロープについても使用に際しては、接続部を ト型ロープについても使用に際しては、 接続部を 含めた疲労及び振動の検討が必要である。しかし 含めた疲労及び振動の検討が必要である。 しかし ながら、フラット型のロープについて接続部を含 ながら、 フラット型のロープについて接続部を含 図1 ロープ曲げ疲労試験装置 めた疲労実験、振動等の測定例は極めて少ない。 めた疲労実験、 振動等の測定例は極めて少ない。 そこで、安全上問題となるロープの曲げ疲労に そこで、 安全上問題となるロープの曲げ疲労に フラット型 6×{(3×2+3)+9} フィラー 型 6 × Fi (17) ついて接続部を含めた実験を行った。また、 ついて接続部を含めた実験を行った。 また、ロー ロー プが滑車を通過する際の振動についても測定を 行ったのでその結果について報告する。 2 .曲 .曲 げ 疲 労 実 験 の 概 要 ロープの曲げ疲労実験は、当所に設置された図 ロープの曲げ疲労実験は、 当所に設置された図 図2 ロープの断面 1に示す試験装置を用いて行った。装置の主な仕 1に示す試験装置を用いて行った。 装置の主な仕 様を表1に示す。 表2 フラット型ロープの諸元 2 .1 .1 供試ロープ 実験に使用したロープはロングスプライス法に よりエンドレスに加工した 6 × F[(3 × 2 + 3 )+ 9] のフラット型ロープであり、スプライスによる差 のフラット型ロープであり、 スプライスによる差 込部が全周で6カ所ある。フラット型ロープは外 込部が全周で6カ所ある。 フラット型ロープは外 周がフラットになるようにストランドを構成し ロ ー プ の 構 造 6×F[(3×2+3)+9] ロ 上 ー 層 プ 素 線 径 径 素 線 の 引 張 強 さ 計 単 算 位 断 面 質 30 mm 2.78 mm 1860 積 404 量 3.93 N/mm mm 2 2 kg/m たロープでありストランドの形状が三角である。 (最大) 比較のためフラット形ロープと索道等で使用され 表3実験条件 ているストランドが丸いフィラー型ロープの断面 を図2に示す。またフラット型ロープの諸元を表 を図2に示す。 またフラット型ロープの諸元を表 項 目 6×F[(3×2+3)+9] 素線の引張り強さ 1860 N/mm 曲げ径と素線径の比 D/δ 1079 2に示す。 2 .2 .2 実験条件 今回の実験では索道等の動索の安全係数の算出 最大曲げ応力 σb=E・δ/D 最大引張り強さ σt ロ ー プ 張 力 σt・A に用いられている次式における最も厳しい曲げ状 態となるように最大張力を設定した。 σ / (σt+σb) (σt+σb)>4 >4 σ=素線の平均引っ張り強さ( σ=素線の平均引っ張り強さ (N/mm2 ) σt=最大引張り強さ= T/A T/A( (N/mm2 ) σb=滑車に巻き付くことによる最大曲げ応力 2 182 N/mm2 282 N/mm 2 114 kN 曲げを考慮した安全係数 σ(σt+σb) 4.0 =E・ =E ・δ / D(N/mm2 ) 20 E=素線の弾性係数(1.96 × 10 5 N/mm2) E=素線の弾性係数( δ=上層素線の直径( δ=上層素線の直径 (mm mm) ) D=滑車の直径( D=滑車の直径 (mm) また、滑車径とロープ径の比 また、 滑車径とロープ径の比( (D/ d) d)は は 100 で ある。供試ロープについての実験条件を表3に示 ある。 供試ロープについての実験条件を表3に示 す。 2 .3 .3実験方法 15 実験用ロープに緊張力及び繰り返し曲げを負荷 して、ロープの直径変化、 して、 ロープの直径変化、素線断線数等を計測し 素線断線数等を計測し た。曲げ回数については、 た。 曲げ回数については、これまでに実施した他 これまでに実施した他 の型式のロープの最大曲げ回数である 3 × 10 5を 上限とした。なお、 上限とした。 なお、曲げ回数は滑車を一回通過し 曲げ回数は滑車を一回通過し た時を曲げ回数1とカウントした。 3 .曲 .曲 げ 疲 労 実 験 の 結 果 今回行ったフラット型ロープの曲げ疲労実験の 結果は以下のとおりである。なお、 結果は以下のとおりである。 なお、比較のため、 比較のため、 過去に当所において同様の条件で実験を行った、 ウォーリントンシール型ロープの結果も同じ図に 記した。 3 .1 .1素線断線 フラット型の最初の素線断線は、 フラット型の最初の素線断線は、2 2 × 10 5回曲 げでスプライスのための差込部の上層素線に発生 した。その後、 した。 その後、3 3 × 10 5回曲げまでに全体で13 累積素線断線数 T=最大引張力(N) T=最大引張力( A=索条の有効断面積( A=索条の有効断面積 (mm2 ) 6×WS(36) 6×WS(36)異形線 フラット型ロープ 10 5 0 0 10 20 30 40 4 曲げ回数(×10 ) 図3 曲げ回数と素線断線数 断線が発生していない。接続部分の素線 断線が発生していない。 接続部分の素線断線数と 断線数と 曲げ回数の関係を図3に示す。 フラット型の接続部分で発生した13本の素線 断線のうち8本がスプライスのためのストランド 差込部であった。また、 差込部であった。 また、残りの5本は、 残りの5本は、差込部と 差込部と 差し込まれたた金心部分と繊維心部分との変わり 目付近及び金心部分の1 /5 ∼ 1/3 程度の上層素線 に発生したが、ウォーリントンシール型では差込 に発生したが、 ウォーリントンシール型では差込 部で発生している。フラット型で発生した差込部 部で発生している。 フラット型で発生した差込部 以外の断線については、差込まれたストランドの 以外の断線については、 差込まれたストランドの 形状が三角形であり、金心とストランドの接触状 形状が三角形であり、 金心とストランドの接触状 態が影響しているものと考えられる。 差込部については、断面形状の変化が大きく、 本の素線断線が発生した。一方、 本の素線断線が発生した。 一方、ウォーリントン ウォーリントン 構造的にも不連続であるため、いずれのロープに 構造的にも不連続であるため、 いずれのロープに シール型では、8 シール型では、 8 × 10 4回程度で最初の断線が発 おいてもこの部分の素線が疲労するものと考えら 生し、3 × 10 5回曲げまでに全体で9本の素線断 生し、3 線が発生している。いずれの型のロープも断線は 線が発生している。 いずれの型のロープも断線は 接続部分で発生しており、スプライス部以外では 接続部分で発生しており、 スプライス部以外では れる。 3 .2 .2ロープ径 ロープ径については、いずれの型のロープも曲 ロープ径については、 いずれの型のロープも曲 げ負荷に伴い減少する傾向にあり、 フラット型では 100.0 3 × 10 回曲げでロープ径が約3%、ウォーリント ンシール型では約2%減少している。 非差込部の直 5 4 .滑 .滑 車 部 に お け る 振 動 測 定 の 概 要 今回、 今回、曲げ疲労試験とともに滑車部通過する際 曲げ疲労試験とともに滑車部通過する際の の 振動について測定を行った。 ロープ径( %) 径変化の推移を図4に示す。 98.0 96.0 94.0 6×F{(3×2+3+) +9} 6×WS(36) 92.0 6×WS(36) 90.0 振動測定については、 フラット型ロープと索道等 0 10 20 30 4 曲げ回数( 10 ) で使用されており、 上層素線径が同程度のストラン 図4 ロープ径の推移 ドが丸いフィラー型のロープについて行った。 4 .1 .1 測 定 方 法 及 び 測 定 条 件 振動の測定は図5に示す装置の索輪支持部に加速度 計を取り付けて行った。 荷重条件は、索輪荷重が 荷重条件は、 索輪荷重が 490 N及び 980 Nの2条件 とした。また、 とした。 また、運転速度は2 運転速度は2 m/s 及び4 m/s の2条件 として測定を行った。 なお、索輪通過時の振動加速度 は上下方向が大きいと考えられるため、上下方向振動 は上下方向が大きいと考えられるため、 上下方向振動 加速度を対象に測定を行った。 4 .2 .2測定結果概要 非差込部及びスプライス差込部の部位ごとの振動加 図5 実験装置 速度の最大値を図6、7に示す。 速度の最大値を図6、 7に示す。振動加速度の最大値 振動加速度の最大値 は加速度波形の片振幅の値である。 10 2m/s : 490 N 度が大きい。これは、 度が大きい。 これは、今回の実験では早い段階で差込 今回の実験では早い段階で差込 部及び差込部前後の金心部分に型くずれが発生してお り、この部分が滑車を通過する際に発生している。 り、 この部分が滑車を通過する際に発生している。本 本 8 2 型のロープに比較してフラット型のロープの振動加速 振動加速度(m/s) 今回の測定では、いずれの条件においてもフィラー 今回の測定では、 いずれの条件においてもフィラー 6 6× Fi (17) 6× F{(3×2+3+)+9} 4 試験機で使用した供試ロープ長は約 36m であるが、 であるが、こ こ 2 のうちスプライス部が約 24m を占め、 を占め、スプライス以外 スプライス以外 0 非差込部 差込部1 差込部2 差込部3 差込部4 差込部5 差込部6 の部分は約 12m で全体の1 /3 程度しかないので差込 部の振動が全体に影響しているものと考えられる。 負荷荷重の違いによる差異については、最大値で見 負荷荷重の違いによる差異については、 最大値で見 10 2m/s : 980 N が、平均的な値で見るとフラット型の4 が、 平均的な値で見るとフラット型の4 m/s 運転時に 僅かではあるが負荷荷重 980 Nの振動加速度が 490 N の時の振動加速度より小さくなっている。 また、運転速度の違いによる差異については、 また、 運転速度の違いによる差異については、いず いず れの型のロープも運転速度の増加に伴い振動加速度が 大きくなっている。 振動加速度(m/s2 ) ると、いずれのロープも差異がほとんど認められない ると、 いずれのロープも差異がほとんど認められない 8 6×Fi (17) 6 6×F{(3×2+3+)+9} 4 2 0 非差込部 差込部1 差込部2 差込部3 差込部4 差込部5 差込部6 5 .ま .まとめ 今回、フラット型ロープの接続部を含めた曲げ疲労 今回、 フラット型ロープの接続部を含めた曲げ疲労 図6 振動測定結果( 図6 振動測定結果 (2m/s) 40 4m/s : 490 N 10 8 振動加速度(m/s ) 8 2 6× Fi (17) 6 6× Fi (17) 2 振動加速度(m/s ) 4m/s : 980 N 10 6× F{(3× 2+ 3+ )+ 9} 4 2 6 6× F{(3× 2+ 3+ )+ 9} 4 2 0 0 非差込部 差込部1 差込部2 差込部3 差込部4 差込部5 差込部6 非差込部 差込部1 差込部2 差込部3 差込部4 差込部5 差込部6 図7 測定結果( 図7 測定結果 (4m/s 4m/s) ) 実験ならびに振動測定を行った。その結果は以下 実験ならびに振動測定を行った。 その結果は以下 レスで使用する場合においては、型くずれを起こ レスで使用する場合においては、 型くずれを起こ のとおりである。 しにくいスプライス方法の検討が今後の課題であ ①本実験における曲げ負荷回数( ①本実験における曲げ負荷回数 (3 × 10 回) 5 では非差込部に素線断線は発生しなかった。接続 では非差込部に素線断線は発生しなかった。 接続 部では、3 部では、 3 × 10 5回曲げまでにフラット型は 13 本 の素線断線が発生し、そのうちの8本がスプライ の素線断線が発生し、 そのうちの8本がスプライ スのためのストランドの差込部に発生した。ま スのためのストランドの差込部に発生した。 ま た、差込部前後の金心部分で残りの5本が断線し た、 差込部前後の金心部分で残りの5本が断線し た。一方、 た。 一方、ウォーリントンシール型は ウォーリントンシール型は 3 × 10 5回 曲げで9本断線し、いずれも差込部であった。 曲げで9本断線し、 いずれも差込部であった。 ②ロープ径の減少についてはいずれの型のロー プも曲げ負荷に伴い減少する傾向があり、フラッ プも曲げ負荷に伴い減少する傾向があり、 フラッ ト型では 3 × 10 5回曲げで約3%減少し、 回曲げで約3%減少し、ウォー ウォー リントンシール型では約2%減少している。 ③滑車通過時の振動については、今回の実験の ③滑車通過時の振動については、 今回の実験の 範囲では、フラット型がフィラー型と比較して振 範囲では、 フラット型がフィラー型と比較して振 動が大きい。また、 動が大きい。 また、いずれの型のロープも運転速 いずれの型のロープも運転速 度が高い場合に振動が大きくなった。 6 .お .おわりに 今回、接続部を含めたフラット型ロープの曲げ 今回、 接続部を含めたフラット型ロープの曲げ 疲労実験及び振動の測定を行った。耐久性の面で 疲労実験及び振動の測定を行った。 耐久性の面で は、索道等で使用されている他の型のロープと同 は、 索道等で使用されている他の型のロープと同 程度と考えられる。しかしながら、 程度と考えられる。 しかしながら、振動について 振動について はスプライスのため差込部付近で早い段階で型く ずれが発生し、振動が大きくなった。 ずれが発生し、 振動が大きくなった。 フラット型ロープのストランドは、三角形をし フラット型ロープのストランドは、 三角形をし ているためスプライスの際に差込まれたストラン ドと外層ストランド内部の接触状態の変化が大き く、ストランドが型くずれを起こしやすいと考え く、 ストランドが型くずれを起こしやすいと考え られる。したがって、 られる。 したがって、フラット型ロープをエンド フラット型ロープをエンド ると考える。
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