デジタルアーカイブ研究レター No.3<PDF638KB

2012 年(平成 24 年)2月
デジタルアーカイブ研究レター
No.3
岐阜女子大学(文化情報研究センター)
◇大学院 文化創造学研究科 文化創造学専攻
◇文化創造学部 アーカイブ専修 沖縄サテライト校
1.資料のデジタル記録(撮影)の体系化
デジタル・アーカイブの資料の収集、記録(提示)にあたっては、これまでの機器の視点からで
はなく、情報としての機能(内容)の面からの構成を考えるべきである。
かつては、デジタル化するにも、撮影等の機材の選択が限られていて、機
何をデジタル化
材の機能の向上や、デジタル・アーカイブの開発するとき、その利用方法が
必要な記録内容
記録の方法の機能
大きな課題であった。しかし最近は、多様な機能の機材が利用できるように
なり、デジタル・アーカイブを開発するとき、まずその内容構成を考え、そ
れに必要な機能を検討し、次に適する機材の選択が可能な時代になってきた。
撮影等機材の選定
そこで、デジタル・アーカイブの構成上必要なデジタル資料の収集で利用す
る機能を整備し、その実施にあたって、現状の技術等では何が利用できるか検討を進めた。
ただし、対象とする資料によっては、機能の追加や収集の視点の変更等により再検討・編成する
必要がある。
(1) 音声(音)記録
(7) 図形記録
(2) 文書(文字)記録
(8) デジタル(情報)記録
(3) 画像(静止画)記録
(9) 位置・時間記録
(4) 画像(動画)記録
(10) 環境情報記録
(5) 多方向(画像)記録
(11) その他
(6) 立体(画像)記録
なお、映像と画像の使い分けは、以下の意味に従っている。
映像(えいぞう)
1. 映画、ビデオ映画、テレビ番組などの業界や、その作品(コンテンツ)自体などを全般的に映
像と呼ぶ。
2. テレビジョン分野において、動画で表現されるコンテンツを指す。通常音声も含めて考える場
合が多い。
画像(がぞう)
2 次元平面上に描かれた絵を指す。画像には静止画(静止画像)と動画(動画像)とがあるが、
動画像は映像と呼ばれることが多い。
そこで、デジタル・アーカイブの撮影・記録で必要とされるデジタルメディアの中から主なもの
を以下の通り採り上げ、それらの撮影・記録の意図(デジタル・アーカイブの効果)、方法、事例
をまとめた。
1
デジタル・アーカイブの撮影・記録の構成
デジタルメディア
撮影・記録の方法
自然、人の声、音楽などのデジタル・
アーカイブには音声の記録が重要で
あり、ときには現物が存在しなくと
も、そのものの周囲の環境の雰囲気や感情なども伝わりやすい。
オーラルヒストリー等は、今後のアーカイブの重要な情報である。
1)音声(音)記録
○機材としては、一般に録音機材を用いるが、遠方での録音、多様な
位置での録音、方向性の強い集音や弱音の録音、雑音が多い中での
録音など、目的に応じたマイク、ミキサー、録音装置を使用する。
長良川の清流の音の録音
デジタル化により、これまでの印刷物の
文字から手書きまでの画像が記録でき
る。さらに、必要な情報と取り出して編
集した資料を作成できる。印刷物の記録からキャラクター(文字)デー
タの変換も重要である。手書き文字を直接入力も必要である。
また、接写は現物に触れることなく資料を扱うことができるので、古
文書など劣化しやすいものの保護に有効で、今後、最初からデジタルデ
ータとして作成が主となる。
(ワープロ等で)
2)文書(文字)記録
○機材としては、スキャナー、接写台などを用いる。
接写台を使用した撮影
一般に、多くの視覚的な情報を容易に得
ることができる。また、貴重な文化財や
伝統文化などを記録し保存することがで
きる。デジタル化とともにフィルム撮影をしておけば、資料の長期保存
が可能となる。
(フィルムをデジタル化も用意する。
)
デジタルアーカイブの最初は、フィルム、写真をスキャナーで入力し
ていた。
(デジタルカメラの撮影は、古くは、精度を高めるのに重点が置
デジタルカメラ
かれたが、最近は GPS 等他の機能の組み合わせが重要となってきた。
)
現状の長期保存の信頼性から、重要な資料は、6×7 版フィルム等での
撮影とデジタル化が必要である。
3)画像(静止画)記録
古文書(巻物)
ものの動きを撮影・記録することができ
る。また、普段目にすることの難しい伝
統文化などの記録を残すことができる。
最近は、デジタルカメラにも動画機能があり、簡単な操作で利用でき
る。デジタルアーカイブとして、高精度の映像も必要であり、ハイビジ
ョン等の映像記録が可能になってきた。また、撮影の位置情報も重要で
あり、地図上にプロットする機能や GPS 等の機能も必要である。
また、水中での動画撮影の機能も必要である。
4)画像(動画)記録
ビデオカメラ
2
5)多方向(画像)記録
多くの方向からの状況が観
察できるので通常では得ら
れにくい画像の記録が可能。
また、現状の正確な映像を伝えられる。利用
の面では、利用者の目的によって多数の映像の
中から選択できる。
多視点、多地点の同時撮影は、静止画、動画
とも舞踊、体育等の運動の状況、建物、物品の
多視点撮影が必要である。
また、物品を回転台等で回転させ、一定角度
で撮影など多様な方法がある。
多視点撮影
多視点撮影画像
現状の全景を記録できるの
で、対象物がどのような環境
に置かれているかの状況(位置関係、植物の生
育環境など)を把握することができる。
球状(球体)360°(上下左右)の撮影、パ
ノラマ撮影など、全方位撮影には、いろいろな EGGレンズと撮影画像
データ化が、またパノラマの動画など多くの撮
影方法があり、その中の選択が可能になった。
多視点撮影
全方位撮影
魚眼レンズ
パノラマ画像
6)立体(画像)記録
より現物に近い映像が得
られ、認識・理解しやすい。
とくに 3D カメラ、3D ビデオカメラで撮
影された映像は、今後、多視点等と併せて利
用が進みだすであろう。
立体視画像
○機材としては、すでに、3D 撮影対応カメ
ラ等が市販されている。
立体物を自由な方向から
観察できる映像を記録で
きる。また、触れて見ることができない貴重
な実物を、いつでもどこでも誰でも見られる
映像資料として提供できる。高密度な立体座
標データが得られるため複製の制作も可能。
対象物としては、小さい物体から建築物等
の大きなものまで立体スキャナがある。ま
た、立体モデルデータを長期に保存し、将来、
その模造品(replica)の作成が必要である。
立体視(3D)撮影カメラ
立体モデル
< 発 行 >
◇岐阜女子大学
〒500-8813
◇文化創造学部
〒501-2592
◇岐阜女子大学
〒902-0075
三次元スキャナ
三次元情報のデジタル化
http://dac.gijodai.ac.jp/archivist/da_letter/
大学院 文化創造学研究科(文化情報研究センター)
岐阜市明徳町10番地 杉山ビル4階 TEL 058-267-5237
文化創造学科 文化創造学専攻 アーカイブ専修
3
岐阜市太郎丸80
TEL 058-229-2211(代)
沖縄サテライト校(沖縄女子短期大学記念館内)
沖縄県那覇市国場405
TEL 098-835-4681
7)図形記録
地図、CG、アニメ、デジタル書道等、新しい分野
の情報。
建物等の設計図、地図等の図形の保管とそれを用
いた CG 等の復元図形など今後、現物がなく、その
図形復元の作成が必要となる。
書道と併せた映像・図形としてのデジタル書道の
作成が必要である。また、三次元の仮想空間図形も
今後必要となる。また、模写など写し取った図形の
保管も必要である。
CGによる復元
必要な情報を取り出し保管
8)デジタル(情報)記録
選定
通信ネットワークやデジタルデータ記録媒体(メデ
ィア)等を用いて収集したデジタルデータ(情報)
などの新しい情報収集方法としての記録が進みだし
た。インターネット等には、世界の多様な情報が流
通していて、これらの中から目的に一致したデータ
を収集し保管する。また、企業、行政、学校等で、
最初からデジタルデータとして作成され、各機関内
のネットワークで流通しているデータの選定保管が
必要である。
インターネットなど
Item Pool
9)位置・時間記録
時間や地形、社会的要因による変化にほぼ左右され
ることなく対象物の位置を表すことができる。
(GP
S等の利用)デジタル・アーカイブの基本データ(メ
タデータとしても)の記録が進みだした。
GPS測定装置
GPS機能付きデジタルカメラ
10)環境情報記録
動物の生息地、植物の自生地などの温度や湿度を計測し対象の周囲の変化を知ることができる。
また、いろいろな“もの”の保管、生活等は、気温、湿度、日照時間、風など多様な条件での存在が可能になる。
このため、環境情報はメタデータとしての役割もある。
11)その他
赤外線、X-ray などを用いた撮影・データなど、今後、新しい撮影方法等が出てくる。
デジタル・アーカイブの記録
調査表
デジタル・アーカイブは、多様な観点から撮影・記録する。このため全体の撮影計画(何を利用して
撮影するか)を立てる必要がある。このために、次のような撮影計画表が作られている。
4
(注)これらの撮影の計画表は、デジタル・アーカイブ速報集で報告している。
(参照されたい。
)