Alzheimer Special Care Units Compared With Traditional Nursing

2009/06/2
抄読会資料
担当:三井
Alzheimer Special Care Units Compared With Traditional Nursing Home
For Dementia Care
Are There Differences at Admission and in Clinical Outcome?
Alessandro Nobili, MD; Ilaria Piana, Clin Psychol; Laura Balossi, Clin Psychol;
Luca Pasina, Pharm MSc; Marina Matucci, MD; Massimo Tarantola, MD;
Silvia Trevisan, MSc; Emma Riva, MD, PhD; Ugo Lucca, MSc;
And Mauro Tettamanti, PhD
Alzheimer Dis Assoc Disord・Volume22,Number4,October-December 2008
評価:B
この研究は、イタリアでおこなわれたが、アメリカでの Special Care Units (SCU)を参考にイタリ
アにアルツハイマー病の SCU(ASCU)を開設し、その SCU の評価を縦断的に行った研究である。
イタリアで SCU を実施しているセンターからサンプルを抽出し、評価している。
方法としては、このような評価をする場合は、Randomized Controlled Trial(RCT)によって
センターを無作為に抽出することが望ましいが、やはり難しいため、非常に現実的なサン
プリングであった。しかしドロップアウトしたセンターの特徴を明らかにすべきであった。
また、ケアの質を評価するための項目が、身体拘束の使用、抗精神薬の中止、転倒の有無のみ
であったため、施設ケアを評価するためには、不十分だと考えられる。たとえば、抗精神薬を使用
しているから入所者が穏やかに生活できていないとはいえない。抱える疾患によっては、抗精神薬
を使用せざるを得ない場合もあり、適切に使用すれば、入所者が落ち着いて生活することもできる
からである。
ASCU は、従来の Nursing Home (NH)に比べ、入院、身体的拘束、抗精神薬に有意差がみられ
るが、例えばスタッフの構成は、職種のみの記載で何人くらいの配置でどのような勤務体制なのか
などが分からない。
また、各 ASCU のケアレベルがどのようなものかも不明であった。これらのことから、施設間に差
がなかったかどうかという点においても疑問である。施設ケアや認知症ケアにおいての、政府の指
針などで、ある程度標準化されたものがあるかどうかも明らかにすべきであった。
ASCU は、内容より、手厚いケアがおこなわれていることは推察されるが、そうであればもう少し
抗精神薬の中止率が下がるのではないかと思われる。また、抗精神薬の種類が何か、どのような
問題に対し、抗精神薬が使用されているのか、そのようなことが評価項目にあれば良かった。
上記のように、ASCU で実施されている、ケアの中身がわからず、評価項目も不十分であったた
め、評価を B とした。この研究は、段階的に実施しており、論文では、最後の段階であったが、途
中の、Phase Ⅱの Qualitative study の内容がわかれば、今回議論の中心となったケアの内容もわ
かると思われた。
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担当:三井
要旨
背景:Alzheimer Special Care Units (ASCUs)を Traditional nursing home(NHS)と比較する研究では矛盾し
た結果が報告されている。
目的:ASCUs か NHs に入所している患者の死亡率、入院期間、身体的拘束の使用、転倒、抗精神病薬
の特徴と効果を明らかにした。
方法:認知症患者の経時的なコホートは、ASCUs と NHs からランダムに選んだサンプルで 18 か月間追跡
し調査した。社会人口統計学、認知、機能性、行動、臨床特性と薬物曝露のデータは、18 か月までのベ
ースラインおよび 6 ヶ月間の間隔で集められた。
結果:35 か所の ASCUs349 人と 9 か所の NHs81 人が登録された。ASCU に入所している患者は、NH の
患者よりも若く、認知や機能の減弱も少なかった。
ASCUs の患者は、NH と比べ、入院のリスクが低いかった。(オッズ比 0.67(95%CI 0.64-0.99) p=0.04)、
身体的拘束が少なかった(オッズ比 0.66(95%CI 0.51-0.86) p=0.003)、抗精神薬中止率が高かった(p
=0.003)。死亡率、転倒は有意差なし。傾向スコア分析では類似していた。
結論:ASCUs の患者が臨床上のベースラインと機能的特徴が NHs の患者と違いがあった。6 か月フォロ
ーアップ中、入院期間、身体的拘束の使用率が低く、抗精神薬の中止の確率は高かった。
Introduction
認知症患者への地域か施設かどちらのサービスがよいのかということが、30 年近く議論されてきたこと
であった。
在宅療養は家族にとって好ましい選択の場合があるが、特に疾患の後期または行動の障害にかかっ
たケースでは、在宅は多くの認知症患者のための現実的な選択でない場合がある。
地域や在宅でのアプローチの違いは、質、臨床上のアウトカムの測定、家族の好みによって提案や評
価がされてきた。特別なケアユニットでの認知症患者のケアは従来の NHs より特有で効果的かどうか在宅
サービスの主な問題のひとつである。長年、認知症患者は特別な介護が必要になると施設入所させ、特
別でない環境は、認知症患者を混乱させて行動の問題を引き起こすか、悪化させるとみなされていた。
1980 年代に、アメリカの数かの所 NHs が、アルツハイマーの患者によりよいケアを提案するためにスペ
シャルケアユニット(SCU)を開設した。これは、個別ケアを望む人に反響があり、身体の装具や社会環境
のサポートは機能的、認知的障害を減らし、QOL を向上させることができると確信していた。SCU では、個
別ケアの高い質のモデルを拡大することが重要であり、プログラミングや環境をデザインすることが認知症
の人々を活気づけ、励まし、サポートした。また、悪影響をスタッフや認知症の患者に及ぼすことを防ぐこ
とも重要な SCU の役割であった。多くの SCU は NH に設置され、そこには環境のデザイン、スタッフの組
織、活動プログラム、家族の参加、入退院および評価基準が適合された。ある調査では、アメリカの NH の
10%ちかくがここ 20 年 1991 年に 745 から 2003 年に 2880 と着実に増加してきた。
進行した認知症患者のための SCU は、標準化された定義や基本原則がないが、①認知症による認知
障害の人の特別病棟の入院、②特別なスタッフの選択、訓練、配置、管理、③認知症患者のための特別
な活動計画、④家族関係や⑤適切な身体的な環境を作るという 5 つの領域があった。これらの特徴は、
すべての SCU の認知症をもつ人に同じように実行されなく、単一の構造や組織的な特徴のインパクトは、
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ベースラインの似たような特徴をもつ患者についての、臨床上のアウトカムにおいて違う影響を与えた。結
果として、その施設間(フィールド間)の変化の違いの差をだすためには、検出力が低かった。
これらの評価基準を共有したにもかかわらず、その年代の研究は、NH の比較で臨床上のアウトカムに
おける SCU の明らかな効果の確立ができなかった。しかしながらいくつかの SCU は、日常生活動作の向
上や認知、気分、行動の症状や QOL の向上を示しそれらに違いはなかった。
近年、QOL の縦断研究は、認知症ケアのための従来の入居施設での、特別なケアの施設を 1 年以上
比較した。特別なケア施設のなかで生活する患者は、コントロールグループより QOL や日常生活動作は
よりよかった。
アルツハイマー病の地域ネットワークの発展をアセスメントするため、ロンバルディ地方の
“Famiglia e Solidarieta Sociale”によって特別な計画の目的をサポートし、ASCU や NH に入
所した患者の特徴を比較するため、主な臨床上のアウトカムにおけるそれらの施設の効果をアセ
スメントするために前向き観察研究をおこなった。
(死亡率、6 か月入院、6 か月間での身体拘束
の使用、転倒、抗精神薬の使用を観察項目とした)
METHODS
北イタリア(900 万人以上の人口)のロンバルディ地方の政府は、1994 年にステージの違う認知症患者
のケアの向上を目的としたプロジェクトを始めた。最も重要な活動のひとつは、認知的、機能的障害の患
者のケアをすでに備えている NH の中に ASCU を設置した。そこは認知症及び行動障害の患者のための
20 床の病棟だった。それぞれの ASCU は、有害な刺激を最小限にする構造上の基準と一致し、適した環
境、目印、位置づけ、安全、休養、社会活動を患者に提供するデザインだった。ASCU に入所した患者は、
中等度の認知症と診断された(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorder Ⅳに一致する)
(MMSE14 以下)か、NPI24 以上の重度の行動障害か、NPI サブスケール 12 点のうちのひとつがあった。
特別な入院の尺度は、認知症か他の身体障害をもつ患者のために NHs への入所を必要とした。
ASCU のスタッフは医師、看護師、心理学者、リハ、職業セラピーで、残存の認知機能を刺激すること、
身体的、薬理学的な拘束の使用を最小限にすること、行動問題のアセスメントするために特に訓練された
ものである。それぞれのユニットもまた個別ケア、問題に適切なアプローチ、身体的セラピーのプランのよ
うな新たな関心のプログラムを試行した。さらに、それぞれの ASCU は、明確にデザインされた徘徊エリア
のような環境のリニューアル、ふつうの行動のための区分わけ、最小限の有害な刺激、容易に確認ができ
る明るい色のドアや手すり、デジタルコードで開くマグネットロックの安全な出口、患者を違うエリアやルー
トで助けるために発見する方法があった。
NH スタッフは同様に多く認知症を扱う特別な訓練を除いた。ACSU の患者は平均 1220min/wk で NH
の患者は 900min/wk だった。
2001 年 7 月、ロンバルディ地方でアルツハイマー病のサービスのネットワークの発展と質をアセスメント
するためのプロジェクトのような前向き観察研究は、環境と組織の構造化の適用を評価するため、ASCU
の患者のケアの質と効果をアセスメントするために始まった。地方の法律で認可された 58 か所の ASCU
からランダムに 35 か所が選択された。そのとき、ASCU と NH に入院している患者間の相違をアセスメント
し、そして特別な臨床上のアウトカムのケアの影響力を評価し、NHs の 9 か所はコントロールグループから
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ランダムに選択された。
そのプロジェクトは 4 段階に分けられた。1、2 段階は、センターの標本を登録し、構造上とケアの手順
上の特徴を分析した。3、4 段階は、NH と ASCU に入院している認知症患者のサンプルの特徴を比較し、
6、12、18 ヶ月後のユニットでケアを受ける主な臨床上のアウトカムの影響を評価した。
ランダムに選択されたそれぞれのユニットは、新規あるいは最近入院した 10 人の認知症患者、18 ヶ月
間 6 ヶ月ごとに再評価した。患者は臨床上認知症と診断されたものだった。
それぞれの患者は社会人口統計学と臨床上の特徴、薬物暴露のデータで、認知的、機能的な段階は
ベースラインと、訪問によるフォローアップ、構造化された特定の質問紙の使用で収集した。
認知動作、機能的状態、行動障害は MMSE、Severe MMSE(MMSE で 5 以下の患者のみ)、Barthel
Index、NPI によって評価した。CIRS と CIRS-C Severity の合併症は、コンピュータを使用した。構造化さ
れたフォームは、入院や訪問でのフォローアップの患者に投与する全ての薬を記録するために用いられ
た。
研究への同意は法律によって義務付けられている、介護者、家族から得て、そこには公的な介護者は
同定できなかった。
全てのデータは、ASCU か NH の医師より収集した。データ収集を始める前に、モニターは構造化され
た方法での臨床上の病型、認知、機能、行動手段を処理する訓練をした。2 人のセントラルモニターのス
タディコーディネーティングに送った完全なフォームは、特別のデータベースにインプットする前に、デー
タの完全性と信頼性をアセスメントした。研究中、データの一貫性と妥当性は、2 人のセントラルモニター
よってチェックされた。
報告された患者の記録情報と一致した研究フォームにおいて収集した ASCUs や NHs に入所している
患者の臨床上の機能的、認知的、行動の特徴はベースラインで比較した。同じ特徴での変化は、6 ヶ月、
12 ヶ月で評価した。18 ヶ月後の全死亡率、6 ヶ月での入院期間、身体拘束の使用や転倒、抗精神薬の
中止は結果の尺度として使った。
・抑制がどんなふうにおこなわれていたのか、またどういうふうにカウントしているかで結果が違ってく
る。その方法論の記載がない。
・認知症の診断が正しいのか?厳密な医学的診断がなされたかどうか不明である。
・6 か月のエンドポイントは長いのでは?記録がどこまで正確かわからない。例えば、抑制を使用したが
そんなふうに使用したかなど全ての記載がなされているか。
・倫理的配慮に関してはどのような手順を踏んだのかわからないが、州政府が関与しているため配慮
はできていると考えられる。
↓
Statistical Analysis
社会人口統計学と臨床上の特徴における 2 つのセッテイングの違いは、ウェルチの t 検定とχ2で分析
した。数の変数はウィルコクソンの順位和検定で分析した。
認知、機能、行動、治療、薬理学的な測定のベースラインから次のフォローアップまで変化において 2
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群間の 1 変量の相違には t 検定をおこなった。ASCU と NH の患者間のベースラインのアンバランスを修
正するために、前述の変数における共分散分析がセッテイングの使用や回帰推定としてのベースライン
値を使用しておこなわれた。
多変量解析は、共変量として既知の原因や推定のリスクファクターを使った結果、一定の時間と評価さ
れたときに Cox 比例ハザードモデルを使用した(入院、身体的拘束、転倒)、結果評価は追跡評価(死亡
率、抗精神薬の使用)が 18 ヶ月以上になりロジスティック重回帰分析を使った。
異なる 2 グループの患者は、“従来の”分析を確立するために準無作為の母集団を傾向スコア分析し
た。以下のベースライン値は傾向スコアを計算するために使用した:年齢、性、MMSE、Barthel Index、
NPI、ベースラインでの薬物量。それらは、ASCU よりわずかな患者が NH にいてマッチングする方式を使
った。そして NH 患者ごとに傾向スコアの上での人々と最もよく似た ASCU の患者をを選んた。我々は死
亡率が 2 変数間で違うかどうかを見るために Cox 比例ハザードモデルでデータの結果を分析し、転倒、
入院期間、身体拘束の違いにはロジスティック重回帰分析を使った。
RESULTS
6 ヶ月で、それぞれ、認知症と診断された 349 人と 81 人の患者は 35 の ASCU と9の NH に継続的に
登録された。ASCU の 37 人の患者は追跡不能で NH ではそれはなかった。
テーブル 1
社会人口統計、臨床上の特徴:NH の患者:より歳をとっている、教育レベルが低い、居住期間が長い
理由)退院がまれ、サンプルとして主に施設に住んでいる人々から構成された、ASCU の 10%の患者と NH
の 4%の患者は新規入院であった。
医者は患者の入院で治療の目的を示すように要求され、施設に収容された認知症患者のための治療
目的と一貫しているような医療記録のある患者を選定した。推測とおりで ASCU の 50%の患者の行動問題
の管理が中心で、一方、NH では、残存機能を維持するためリハビリテーションの介入始めるための包括
的な高齢者のアセスメントが高率だった(42%)。
テーブル 1 は、さらにベースラインの臨床、認知、機能性、行動の特性を現している。従来の NH の患
者は機能的に(バーセルインデックス 31:43 P=0.0005)、臨床的に(CIRS-C 4:3 P=0.003 CIRS-
S 1.9:1.6 P=0.002)ASCU より悪化していた。MMSE は同程度であり、多くの患者は床効果があった。
(認知機能が低い人が多い)
しかし severeMMSE を受けた ASCU の 123 人と 26 人の NH 患者において、NH のほうが、ASCU に比
べより認知的に障害があったようだった。NPI によって明らかにされるように、ASCU 患者は NH 患者よりよ
り重篤な行動の障害を有した(33.9:17.1 P=0.0001)。栄養状態、薬剤全体と抗精神病薬暴露に関して
は有意差はなかった。予測どおりに、NH の入所者よりも ASCU の患者のほうが、重篤な行動障害に苦し
んでいた。
特に NH では、2 つのコホートに認知、機能的な、行動および臨床特徴の進行率は、機能障害のそれら
のベースラインによって、有意に影響された。それらの評価のために使われる手段の床効果のため、試験
開始時に非常に悪化する患者より追跡調査ができなかった。単変量解析では、有意な差があった。(P<
0.05) 12 ヶ月の severeMMSE の変化 2.1:2.1(P>0.05)、バーセルスコア 11.2:3.8(P<0.05)、NPI 6、
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12 ヶ月 5.1:0.8(P<0.05) 7.2:1.3(P<0.05)、CIR-C 0.7:0.4(P<0.05) 0.9:0.5(P<0.05)。
追跡調査 57(16.3%)の中で、ASCU 患者 3 人(3.7%)と NH 退院の患者(P=0.0032)と同センターへ転
棟した患者:在宅には誰も帰らなかった。ASCU から退院した患者は年齢が若く(80:82.3y)、機能障害が
あり(バーセルインデックス 35.6:40.9)、退院しない患者より NPI が(11.6:3.5)の改善を示した。性や認
知の衰退する率で相違はない。しかし、NH より退院した患者は少なく比較は可能ではなかった。
死亡:92 人(26.3%)の ASCU の患者と NH の 25 人(30.9%)。テーブル 2 は臨床的に関連したアウトカ
ムの尺度の設定の効果を示している。単変量あるいは多変量解析のどちらか 18 ヶ月の総死亡率の上で
も効果がなかった(危険率 1.05:0.85 P>0.17)。6 ヶ月に身体的拘束の使用の有意な減少が、ASCU 患者
にあった(両方のオッズ比 0.66 P<0.01)。多変量解析においても、入院のリスクで有意な差異を示した。
(オッズ比 0.67
P<0.04)しかし転倒のリスクでは有意差はなった。試験開始時に少なくとも 1 つの抗精
神薬を投与されていた患者だけを考慮して、ASCU の患者は年齢、性、ベースラインの日常生活動作、
NPI スコア、MMSE、身体的拘束の使用を調整後、NH の患者より明らかな高率を引き出した。
テーブル 3 は、2 つの設定の患者間のベースラインの相違を調整するため使用された傾向スコア
分析において、144 の患者を含むサブグループ社会人口統計学との臨床の特徴を示している。全
ての変数は 2 グループにおいて調整がとれており、ASCU の 20 人と NH の 19 人のみで使われ
た severe MMSE スコアを除外した。アウトカムの尺度が調整の取れたベースラインの特徴を有
する ASCU と NH の患者のサブセットで評価された時、より少ないサンプルは結果として、相違
を見つけるための検出力が低かったが、傾向スコアモデルの使用、死亡率、入院のリスク、身体
的拘束の使用と転倒は全体のサンプルで比較された。
DISCUSSION
ASCU と NH の認知症患者のランダムに選択された長期的な比較研究で、2 つの選択されたコホートの
試験開始時の比較は臨床的、統計学的に有意な差異が示された。ASCUの患者はNHの患者より年齢
が若く、入院期間が短く、認知や機能の減弱もより少なかったが、行動障害は重かった。ベースラインの
相違は、ASCU と NH の入院基準の違いによって説明ができ、ASCUsでは認知症や行動障害の患者のみ
を受け入れ、NHsでは患者を制限しなかった。
重要なことは、認知症や行動障害をもつ患者の ASCU の入院は、臨床上のアウトカムにおいてより効果
があり(入院期間や身体的拘束の減少)、抗精神薬の中止率は高かったことである。
ASCU と NH の患者間の相違は、入院の主な目的によるエビデンスとして、治療的、介護的な違いが反
映された。これらの違いは、あらかじめ定義する構造や組織の特徴、入院基準、治療、介護の優先に関
連において潜在的に予測された。しかし、最近 10 数年の認知症患者の入所施設の増加率と ASCU の相
対的な数の少なさからみれば、社会人口統計学的および臨床的な特徴がその 2 つの施設(ASCU と NH)
で、さらに比較できると期待した。
調整のとれた準無作為のサンプルでの臨床のアウトカムの尺度は、傾向スコア分析の結果と一致する。
無作為化試験の方法論的な観点から、分析することができた患者の 2 つの群に帰着したにもかかわらず、
組織や実際的な制約によってこの種の研究を準備することができなかった。
ベースラインの特徴を調整した時、ASCU や NH の生活では、認知や機能の領域の進行率において明
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担当:三井
らかな有意差はなかった。それゆえに、それらの臨床機能を評価するのに使った多くの方法では、特定
のポイント以外変化を見つけることができなかった。
ASCU では、ベースラインの行動障害が NH より有意な差異を示し、NPI スコアは有意な改善を示した。
このことは、他の研究と一致し、ASCU を支持するひとつとして示唆された。
他の研究は認知症や行動障害の患者のケアでの質や特別な設定の効果を調査したが、大多数は記述
的で、患者の QOL、家族や介護者の満足感心理的測定をしたものだった。NH がより重篤な行動や機能
的障害、より重篤な疾患の患者の特定な必要に答えないことを示し、卓越した ASCU の存在をまだ論議し
ていた。行動障害が改善しないという研究は多いが、そうでないものもあった。National Institute on Aging
の調査では行動障害のケアで NH より効果があったと報告している。
これらの矛盾している結果は、方法論の限界(研究の型、サンプルは少ない、患者選択の基準、コントロ
ールグループの欠如、アウトカムの手段、サロゲートエンドポイント、短い追跡調査)、あるいは環境や組
織の特徴、スタッフの構成や訓練を反映しているかもしれない。
数々の研究では、ASCU の患者は、身体的、精神的な制限を受けそうにないことを示した。ASCU の患
者は物理的に抑制されるリスクは低く、各追跡調査で NH の患者より NPI スコアの有意な改善を示すこと
がわかった。
もうひとつの興味深い知見は、NH の患者と比較して ASCU の患者に抗精神薬の中止がより高い可能性
があった。抗精神薬は、行動障害の治療のために、両施設(ASCU の患者 60%、NH の患者 50%)で使われ、
有用性や有効性は検証できなかった。近年、国際的な薬物の取り締まる組織は、脳血管性の有害な発
生のリスクや不規則な抗精神薬の高齢者の認知症患者の治療おける死亡率がより高いと警告した。
この安全に関する警告は、他の神経弛緩薬で行なわれ、同時に典型、非典型的な抗精神薬のそれらの
よいリスクプロフィールに関して矛盾する証拠があり、さらに使用の注意や過量処方と適切さに再び注目
している。最近発表された臨床試験は、使用の減少、回数、行動の障害の重症度のほかになければ、使
用の減少を報告し、人中心のケアや良好な診療の推進は、認知症や行動障害の患者に抗精神薬の選
択肢を可能になると報告している。
我々の研究で、NH と比較して ASCU での行動障害の改善や抗精神薬の減少、身体的拘束の使用は、
臨床上明らかで、ASCU の有用性が示唆された。訓練されたスタッフと適切かつ支えとなる社会環境は、
他の研究によっても示唆されるとし、ASCU の効果を証明した。
本研究のいくつかの限界は、すでに述べてきた。最も効果的な研究方法は無作為化臨床試験で、無
作為化は、組織や法律の制約のため時として可能でない。しかし、実際のアプローチ、センターの選択、
一貫性のある包括的な患者、臨床的に関連したエンドポイント、追跡調査の継続と低いドロップアウト率を
ランダム化において信頼の高い選択肢を示した。さらに、ランダム化せず未知の重要な不均衡が、アウト
カムの手段に影響があることを除外することができない。
もうひとつの限界は、ASCU と NH の新規の患者の数とべースラインの特徴で調整がとれていなかった。
2 つのサンプルでの患者の数の違いは、研究の体制の影響であるが、ベースラインの特徴の違いは、ア
ウトカムに影響を及ぼしたのかもしれない。この潜在的なバイアスの制御において、スコア分析の傾向の
詳細な説明と結果は報告された。それは、全サンプルに対するものと類似のアウトカムの手段の上で結果
を示した。
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担当:三井
その結果、認知症患者と ASCU に行動障害で入院した患者は、適切な環境、入院のリスクの期間、薬
理学的、身体的拘束の使用におけるよりよい結果を NH の患者より臨床上の違いを示した。多くの疑問は
残り、大規模な、よりよい研究デザインは、認知症や行動障害の患者サポートするようであり、“specialized
unit”の役割と効果を示す必要がある。増加していくこのような患者と薬理学的戦略の効果の不足、コスト
効果、臨床効果のサービスを提供することは、定義され、系統化される必要があり、これは、ヘルスケアの
研究者や法律制定者(州政府)のために最も重要なチャレンジのひとつである。
資料:
【Wilcoxon Rank Sum Test】
比較的少数のデータに対して、特に母集団の正規分布が仮定できないような場合にノンパラメトリック
検定の一つとして使用される Wilcoxon の順位和検定を使う。この検定では、対応が無い2つの条件の中
央値を比較するもので、次の場合に適用が可能となっている。
 はずれ値がある場合
 ~以上、とか、~以下というような正確なデータでないので、算術平均が得られない場合
 標本数が小さくて分布に正規性が保証されない場合
【Behavioral Psychological Symptoms of Dementua:BPSD】
認知症では、物忘れ、今日の日付がわからない、うまく洋服を着るなどのある動作ができなくなるといっ
た認知する能力の障害を本体として位置づけし、これらを中核症状と呼ぶ。一方、認知症が始まってから、
暴言や暴力、精神的な落ち込み、徘徊などがみられることがあり、これらを中核症状に対して行動心理学
的兆候(BPSD)と呼ぶ。
代表的な BPSD の精神症状として幻覚、妄想、抑うつ、睡眠障害、誤認などが挙げられ、行動症状とし
て暴言、暴力、興奮、易怒性、喚声、不穏、徘徊などが挙げられる。
【Neuropsychiatric Inventory(NPI)スコア】
認知症に伴う精神症状の評価尺度(点数が高いほど精神症状が強い)
【多変量解析の目的】
・
従属変数を予測するモデルをつくる
・
交絡因子の制御をおこなう
・
交互作用の定量評価をおこなう
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担当:三井
【ロジスティック重回帰】
線形回帰分析が量的変数を予測するのに対して、ロジスティック回帰分析は発生確率を予測する
手法である。基本的な考え方は線形回帰分析と同じだが、予測結果が 0 から 1 の間を取るよう
に、数式やその前提に改良が加えられている。0 から 1 の間ということは、例えば 0.4 のよう
な確率で予測を行うということになります。そしてそのために従属変数(被説明変数)に 2 値の
質的変数を用いています。例えばある商品の購入有無(Yes or No)のように、2 値しかとりえな
い値を従属変数の実績値として用い、説明変数を用いてその発生確率を説明するという構造にな
っている。
【Cox 比例ハザードモデル】
危険因子や交絡因子への暴露と、疾病罹患(ハザード)との関係をモデルにあてはめて、罹患
と因子の関係を定量的に推定する。ロジスティックモデルの場合と同じく複数の要因を同時に配
慮し、交絡因子の影響を取り除いた解析だけでなく、要因相互の影響を除外した個々の要因の影
響や要因どうしの相互作用、修飾作用も評価できる。
モデルの性質:ハザード(罹患率)は特定の暴露 X に応じて、特定の影響を受け、この値を暴露
なし(標準状態)の場合のハザードとの比は時間的に一定である。
【Barthel Index】
ADL テストのひとつ。他の ADL-T(FIM など)に比べ、専門職以外にも容易に理解でき、あまり時間をか
けずに比較的正確な評価結果が得られる。米国の医師 Mahoney と理学療法士 Barthel によって作られた。
バーセル・インデックスの項目には、食事・移乗・整容・トイレ・入浴・歩行(移動)・階段昇降・更衣・排便・排
尿の 10 種類がある(トイレはズボンの上げ下ろし、後始末を含み、排便・排尿はそれぞれの自制・座薬や
尿器の取り扱いを含む)。これらは基本的 ADL の評価であり、手段的 ADL は含まれない。満点が 100 点
であり全自立、60 点が部分自立、40 点が大部分介助、0 点は全介助 である(車椅子使用者の全自立は
歩行と階段を評価しないので 80 点となる)。
【サロゲートエンドポイント】
治療行為の有効性を示すための評価項目のこと。臨床試験(治験)でのエンドポイントは、治療の
目的に合っており、なおかつ、客観的に評価できる項目が望ましいとされている。臨床試験におけ
る治療行為で本来求めたいアウトカムは、死亡率の低下、疾患の発症率の低下、QOL の向上、副
作用の低減などであり、これらの評価項目は、真のエンドポイント(true endpoint)と呼ばれる。しかし、
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担当:三井
それらを治験の期間内で評価することは難しいため、一般には、血糖値、血清脂質値、腫瘍サイズ、
血圧、など短期間で評価できる代用エンドポイント(サロゲートエンドポイント)が採用される。
サロゲートエンドポイントは、治療行為に対する評価を短期間で行うための評価項目である。それ自
体では臨床上の利益とならなくても、治療上のアウトカムを合理的に予測しうる場合には、プライマリ
ーエンドポイント(主要評価項目)として用いることができる。複数のエンドポイントがある場合には、
プライマリーエンドポイント(主要評価項目)とセカンダリーエンドポイント(副次的評価項目)が設定
される。プライマリーエンドポイントとは臨床試験において目的とする評価項目であり、薬理学的、臨
床的に意味のある客観的評価可能な項目が用いられる。セカンダリーエンドポイントは、治験の主
要な評価項目以外の効果を評価するための項目であり、必ずしもプライマリーエンドポイント(主要
評価項目)との関連性があるとは限らない。
エンドポイントに用いられる評価項目は、比率(発症率や死亡率、再発率)、時間(生存期間や再発
までの時間)、数値(血圧値やコレステロール値)、症状の緩和(変化)などがある。また最近では、
主観的要素が強いため評価の仕方が問題となるものの、QOL をエンドポイントにする場合も増えて
きている。