第 21 巻第 1 号,2006 年 原 著 当院における子宮頸部新生物の治療と成績 八戸市立市民病院産婦人科 山 口 俊 也・鈴 木 則 嗣・清 水 健 伸 島 田 勝 子 八戸市立市民病院臨床検査科(病理) 方 山 揚 誠 Therapyand Outcomeof Uter ineCerv i ca lNeop l a smain Our Hosp i ta l To sh iya YAMAGUCHI, Nor i t suguSUZUKI, TakenobuSHIMIZU Ka t sukoSHIMADA Depar tmentofObs tetr i csand Gyneco l ogy, HachinoheCi ty Hosp i ta l Yo se iKATAYAMA Depar tmentofPatho l ogy, HachinoheCi ty Hosp i ta l された 567 例を対象とした。また, 5 年生存率 は じ め に に関しては, 1996 年 6 月 1 日より 2001 年 5 月 子宮頸癌の罹患率は,1950 年から減少傾向 31 日までに手術を施行した症例のうち追跡 にあったが 1990 年以降はほぼ横ばいから微 可能であった症例を対象とした。なお,1997 1) 平均発症年 増の状況を呈している 。しかし, 年 9 月から当院には,腔内照射の施設が存在 齢が約 50 歳と他の癌と比較して若く, 特に 20 しないので,そのために他院に紹介した症例 歳代では上皮内癌,浸潤癌とも圧倒的に増加 は今回のデータからは除外した。 がみられており,死亡による社会的損失も大 結 果 きい。当院における子宮頸癌の診断と治療, 主として手術療法について過去 10 年間にわ 1.子宮頸部扁平上皮癌 たり後方視的に検討することによって,その 1)背景 傾向を探り,反省点をあげ,今後の治療方針 発症時年齢を図 1 に示した。30 歳代と 60 の立案の一助とすることを目的とし,若干の 歳代にピークが存在する 2 峰性の分布を示し 文献的考察も含めて述べる。 た。平均発症年齢は 49.4 歳であった。 2)治療 対 象 と 方 法 a.進行期別手術療法 1996 年 6 月 1 日より 2006 年 5 月 31 日まで 進行期別にみた手術療法を図 2 に示した。 の 10 年間に,当院で子宮頸癌と診断され加療 Ⅰa1 期においては単純子宮全摘が多く選択 された扁平上皮癌 57 例と腺癌 16 例,ならび されていた。円錐切除を施行したのは 33 歳 に当院で施行した狙い組織診で CIN 3 と診断 の未婚女性で,今後の妊娠を強く望んだため ― 5 ― 青森臨産婦誌 図 1 子宮頸部扁平上皮癌症例の発症時の年齢分布 図 2 子宮頸部扁平上皮癌の進行期別にみた手術療法 RTH=radi ca ltota l hys terectomy ; ETH=extended tota l hys terectomy; TH=tota l hys terectomy. 図 3 子宮頸部扁平上皮癌の進行期別にみた術前 補助化学療法(neoadjuvantchemotherapy; NAC)の有無 図 4 子宮頸部扁平上皮癌の進行期別にみた 術後の放射線療法(LINAC)の有無 例外的に選択した。Ⅰa2 期に相当する症例 は存在しなかった。Ⅰb1 期では主に広汎子 しては全例 NAC を施行していた。 c.術後放射線療法 宮全摘を選択したが,単純子宮全摘を施行し 術後に放射線療法(LINAC)を施行した症例 た症例もあった。Ⅰb2 期以上は,Ⅳ期の 1 症 は, Ⅰ期では 10 %に満たなかった。Ⅱ期では 例を除き全例,広汎子宮全摘が選択された。 約半数,Ⅲ期,Ⅳ期では全症例に施行されて b.術前補助化学療法 いた(図 4) 。Ⅱ期における照射の有無は,手 当 院 に お け る 術 前 補 助 化 学 療 法(neo- 術の完遂度に左右されていた。すなわち,腟 ad j uv antchemo the r apy; NAC)のレジメンの変 壁断端に腫瘍細胞が残存または近接していた 遷は,以下のとおりであった。1996 ∼ 2000 年 り,傍子宮組織に浸潤が強かったりした症例 l eomyc i n+v i nc r i s t i ne+ は低用量 BOMP療法[b の多くは, 術後照射が実施されていた。また, mi tomyc i nC (MMC) +c i sp l a t i n (CDDP) ]が主流 骨盤リンパ節転移が陽性の症例では 70 %に, であり,2001 ∼ 2004 年は CDDP単剤の動注化 陰性の症例では約 14 %に術後放射線療法が 学療法,また 2004 年後半は CDDPと MMC を 施行されていた。 併用した動注化学療法を行っていた。 d.術後補助化学療法 進行期別にみた NAC の有無を図 3 に示し BOMP療法を 1996 年から 1999 年にかけて, た。Ⅱb期以上の症例では原則的に NAC を 1 ∼ 3 コース行った症例が 4 例あった他は施 施行したが,Ⅱb期で比較的腫瘍径が小さか 行されていなかった。 った 1 例に対しては NAC を施行していなか 3)成績 った。また,進行期にかかわらず,来院時に 術後 5 年以上追跡が可能であった 43 例の 5 大量の出血による貧血を来していた症例に対 年生存率は,Ⅰ期が 100 %,Ⅱ期が 93 %,Ⅲ ― 6 ― 第 21 巻第 1 号,2006 年 表 1 子宮頸部扁平上皮癌の再発症例 年齢 進行期 (pTNM) NAC 47 Ⅱb − 70 Ⅱb BOMP× 1 54 Ⅱb CDDP× 2 (動注) CDDP× 2 39 Ⅳb (pT1b1, pMA)(動注) 手術 (リンパ節) 後治療 RTH LINAC (n+ 3/26) RTH (n− 0/21) 13 M (PAN) − RTH LINAC (n+ 4/23) TH+BSO PAN 再発 (部位) 治療 BIP 療法 転帰 不明 9M (腟断端) RALS (他院) 不明 35 M (SCLN) LINAC 生存 BIP× 3 LINAC 術後 19 M 死亡 低用量 BOMP× 1 LINAC LINAC 62 Ⅲb 低用量 BOMP× 2 RTH (pT 3bN 1 M 0) (n+ 12/52) 9M 低用量 (腟入口部・肺) BOMP× 1, RALS 術後 26 M 死亡 48 Ⅱb 低用量 BOMP× 2 RTH 低用量 BOMP (pT 2bN 1 M 0) (n+ 2/23) (腰椎) 術後 54 M 死亡 希望せず pTNM ; pathol og i ca ltumor- node- metas tas i ss tag ing; NAC=neoadj uvantchemotherapy; CDDP=c i spl at in; MMC=mi tomyc in C ; BOMP=bl eomyc in+vincr i s t ine+MMC+CDDP ; RTH=radi ca ltota l hys terectomy ; TH=tota l hys terectomy ; BSO=b i l atera lsa lp ingo-oophorectomy ; PAN=paraaor t i c lymph nodectomy ; LINAC=l inearacce l erator; SCLN=suprac l avi cul arlymphnode; BIP=bl eomyc in+i fos famide+CDDP; RALS =remote af ter-l oading sys tem . 図 6 子宮頸部腺癌の進行期別にみた治療法 図 5 子宮頸部腺癌症例の発症時の年齢分布 RTH=radicaltotalhysterectomy ; ETH=extended tota lhys terectomy; TH=tota lhys terectomy; BSO= b i l atera lsa lp ingo-oophorectomy. 期とⅣ期では 0 %であった。5 年間の追跡に 癌のそれとは異なっていた。 おける生存者は,すべて無病生存であった。 2)治療 再発は 6 例(表 1)で,再発後の転帰が不明 進行期別にみた治療法を図 6 に示した。Ⅰ または経過観察中の症例が 3 例,死亡した症 期とⅡ期では原則として広汎子宮全摘を施行 例が 3 例あった。再発例はすべてⅡb期以上 した。Ⅱb期の腺扁平上皮癌 1 例では拡大子 BIP療法または BOMP療法が選択され,再 で, 宮全摘が選択されていた。Ⅲ期とⅣ期では, 発部位への放射線照射も施行された。 腫瘍縮小手術,保存的治療が行われていた。 3)成績 2.子宮頸部腺癌 5 年以上追跡が可能だった症例は 8 例で, Ⅰ 1)背景 期またはⅡ期の 7 例の 5 年生存率は 100 %で 子宮頸部腺癌の発症年齢を図 5 に示した。 あった。 40 歳代に 1 峰性のピークがみられ,扁平上皮 再発症例は 2 例(表 2)で,1 例はⅠb 2 期 ― 7 ― 青森臨産婦誌 表 2 子宮頸部腺癌の再発症例 年齢 進行期 (pTNM) NAC 58 Ⅰb2 * (pT1b2N0 M 0) − 54 Ⅳb (pT 2 bNXM 1) − 手術 (リンパ節) RTH (n− 0/42) 再発 (部位) 後治療 治療 転帰 wTJx3 (腟断端) RALS 治療中 TH+BSO MEPx4 大網部分切除 18 M (腟断端) MEP× 1 術後 37 M 死亡 pTNM ; pathol og i ca ltumor-node- metas tas i ss tag ing; NAC=neoadj uvantchemotherapy; RTH=radi ca ltota l hys terectomy; TH=tota l hys terectomy; BSO=b i l atera lsa lp ingo-oophorectomy; wTJ=weekly pac l i taxe l +carbopl at in; RALS=remote af ter-l oading sys tem ; MEP=MMC+etopos ide+CDDP ; *類内膜腺癌. 図 8 CI N 3 症例の発症時の年齢分布 図 7 CI N 3 症例数の年別推移 * 2006 年は 5 月 31 日までの 5 か月間. で 骨 盤 リ ン パ 節 転 移 陰 性(組 織 型 は endome t r i o i d adenoca r c inoma)であった。この l i taxe l+ca lbop l at in(CBDCA)の 症例は pac ad j uvant chemo the r apy中に腟断端に再発を認 emo t e め,その後他院に紹介となり腔内照射(r a f t e r-l oad i ngsys t em ; RALS)が施行され,現 在は経過観察中である。もう 1 例はⅣb期の 横隔膜下転移症例で,単純子宮全摘+両側付 図 9 年齢別にみた CI N 3 の受診時主訴 属 器 切 除 を 施 行 し,術 後 MEP(M MC+ e topo s i de+CDDP)のad j uvantchemo the r apyを 3 コース施行したが腟断端に再発し,さらに 峰性のピークがみられ,扁平上皮癌Ⅰ期以上 MEPをもう 1 コースを施行したが奏功せず, のそれよりも発病年齢が低かった。高度異形 それ以上の治療を患者が拒否し, 術後 37 か月 成と上皮内癌の症例数はほぼ並行し,年齢に で死亡の転帰をとった。 よる偏りは見られなかった。また 19 歳で発 症した高度異形成が 2 例存在した。年代別に 3.上皮内癌 受診時の主訴をみると,20 歳代では他の年代 1)背景(高度異形成も含む) と比較して検診による発見率が低かった(図 高度異形成を含む CIN 3 症例発見数の年別 9)。 推移を図 7 に示した。特に,高度異形成が増 2)治療 加傾向にあるのは明らかである (図 7) 。CIN 3 上皮内癌に対しては,1996 年に 2 例に対し 症例の発症年齢を図 8 に示した。30 歳代に 1 て施行されたラジウム管による保存的治療を ― 8 ― 第 21 巻第 1 号,2006 年 い。これは当院で治療された症例に限って抽 出したためで,実際に受診した症例はこれよ り多かった。当院には 1997 年以来,RALSの 設備がないため,原則としてⅢ期以上の症例 は RALSの設備を有する近隣の病院に紹介せ ざるを得ない。これは紹介先病院に負担をか けるうえ,患者とその家族に通院の不便を強 いている。 図 10 年代別にみた子宮頸部上皮内癌の治療法 さらに, Ⅲ期以上の症例の 5 年生存率が 0 % となっており,進行癌に対する治療の限界も 除けば,全例に対して円錐切除術または単純 示されている。また最近,Ⅱ期の症例に対し 子宮全摘術が選択されていた(図 10) 。その ては放射線と化学療法併用の治療成績は手術 うち 3 例を除けば, 40 歳未満では円錐切除術, 療法と差がないという報告4)や,進行子宮頸 40 歳以上では単純子宮全摘術と手術術式が 癌に対する放射線と化学療法の併用が死亡の はっきりと異なっていた。 相対危険度を 30 ∼ 50 %低下させるという報 告5)もあり,今後 RALSの適応は増加すると 3)成績 上皮内癌の円錐切除後に 1 年間追跡可能だ 考えられる。したがって,青森県南地域に った症例については,89 %が治療終了となっ RALSを行える施設がない現状は,早急に改 ており,11 %が残存または再発のため再円錐 善を要する課題である。 切除が施行されていた。子宮全摘を行った症 当院における扁平上皮癌の基本的な治療方 針は,Ⅰa1 期では単純子宮全摘,Ⅰb1 期では 例では再発はなかった。 単純子宮全摘,拡大子宮全摘または広汎子宮 考 察 全摘, Ⅰb2 期およびⅡa期では広汎子宮全摘, 当院における子宮頸癌Ⅰ期∼Ⅳ期の発症年 NAC 未施行のⅡb期では広汎子宮全摘,NAC 齢の分布は,全国的な調査の平均発症年齢が を施行したⅢ期以上は放射線,化学療法併用 40 歳代にピークを示していること2)と比較 (他院に紹介) となっていた。Ⅰa1 期の 3 例で し,明らかに若年にシフトしている。特に扁 広汎子宮全摘が施行されたが,これは術前に 平上皮癌においては 30 歳代が最も多い。こ 円錐切除術を行わなかった症例であり,Ⅰa2 れには種々の要因が関与しているが,生活環 rd i agno s i sされ手術が施行されたもの 期とove 境も見逃せないと考えられる。特に喫煙に関 である。子宮腟部が萎縮していた等の理由で しては,国民生活基礎調査(2001 年)による 円錐切除が不可能であった症例もあるが,原 と, 青森県における女性の喫煙率は 20 歳代が 則どおり「治療前に進行期を確定する」こと 26.5 %,30 歳代が 24.4 %でともに北海道に が重要であると考えられる。同様にⅠa1 期 次いで 2 位というデータがある。喫煙が子宮 で円錐切除を行った 33 歳の未妊女性は, 術後 頸癌,特に扁平上皮癌に及ぼす影響は明らか に厳重な管理が可能であるとの判断の基に円 3) であり ,予防医学的な見地から解決が望まれ 錐切除を選択した例外的な症例であった。手 る。また,全症例の平均経妊数は 3.2,経産数 術の 3 年 8 か月後に出産し,妊娠・分娩経過 は 2.1 と高く,本県における HPV 感染率等の 中においても再発は認めなかった。 調査データはないものの,疫学的調査と矛盾 Ⅱb期に対する NAC については,治療予後 しない結果であった。 にどれだけ寄与したかを論じることはできな 進行期別の症例数であるが,Ⅲ期,Ⅳ期症 い。しかし,NAC は傍子宮組織浸潤やリンパ 例は扁平上皮癌,腺癌とも各 3 例ずつと少な 節転移に対して有効との報告6)どおり,当院 ― 9 ― 青森臨産婦誌 でもほとんどの NAC 施行症例で術前の腫瘍 腺癌の治療法としては,Ⅰ期とⅡ期では腺 径の縮小を認め,手術の完遂度を高めてい 扁平上皮癌の 1 例を除き広汎子宮全摘が施行 る。さらには,性器出血のため貧血を呈し, されていた。術後照射,NAC や術後化学療法 そのままでは安全な手術ができない症例にお は施行していなかった。しかし,最近は治療 いて止血を図るという有用性もあった。今 の個別化が可能と言われ,Ⅰa期では縮小手 後,NAC の評価を厳密に行うためには,ラン 術(単純子宮全摘,場合によっては円錐切除 ダム化試験等,何らかの臨床研究が必要であ 術),Ⅰb期やⅡ期では CDDP または CBDCA る。 を主体とした多剤併用化学療法や放射線併用 術後照射は主に,リンパ節転移陽性例,子 今後は治療法も変化して も施行されており7), 宮傍組織に浸潤が強い例,腟壁摘出が不十分 くるであろう。 と考えられる例に施行され, 術後の局所再発, 5 年生存率は, Ⅰ期とⅡ期では 100 %であっ 遠隔転移症例にも施行されていた。この選択 た。扁平上皮癌と比較し,5 年生存率が 10 % は妥当と言えるだろう。しかし,リンパ節転 以上低下する腺癌としては良好な数値を残し 移陽性例の 70 %にしか施行されていなかっ た。 た点は反省しなくてはならない。幸い,リン 再発症例に対しては,術後,化学療法(MEP パ節転移陽性で術後照射未施行例における再 療法)や放射線療法といった集学的治療が必 発は認められなかったが,今後は個別化より 要になる。ただし,再発症例に MEP 療法を も,エビデンスに基づく治療ガイドラインの 行っても 5 年生存率は 21.7 %にすぎないとい 遵守が必要であると思われる。 再発時の治療には苦慮すると う報告があり8), 5 年生存率は,Ⅰ期とⅡ期では全国統計を ころである。 上回り,Ⅲ期とⅣ期ではそれを下回る結果と 最後に CIN 3 に関して若干の考察を加え なっていた。すなわち,Ⅰb 期では当院の る。発症年齢は 20 歳代と 30 歳代が多く,改 100 %に対し全国が 80.4 %,Ⅱ期は 91.6 % めて若年化が示された。上皮内癌が微小浸潤 vs. 69.2 %,Ⅲ期は 0 % vs. 52.1 %,Ⅳ期は 癌に進展するのは 12 年で 71 %という報告9) 全国統計は 0 % vs.16.7 %であった。ただし, や,異形成から浸潤癌に変化するのに必要な 1989 年からの追跡であり,当院の統計より 7 期間は細胞の自然史からみて 3 ∼ 20 年という 2) Ⅲ期とⅣ期の 年程度古いものである 。また, 報告3)があり,Ⅰ期∼Ⅳ期の症例の発症年齢 症例では 5 年以上追跡可能であった症例がど と矛盾しない結果となっている。また上皮内 ちらも 1 例のみと少なく,データとしての意 癌の受診時の主訴は,各年代とも「検診で異 味は低い。ただⅠ期とⅡ期において 5 年生存 常を指摘」が多かったが,20 歳代では例外的 率が全国平均を上回ったことについては,当 に不正性器出血が最も多かった。したがっ 院の手術法の選択,NAC,また術後照射のエ て,この年代の検診率を他の年代程度に高め ントリーが適切であったと言えるかもしれな られれば,発見数はさらに増加するはずであ い。 る。それにより, ひいては 30 歳代における浸 再発,死亡症例については,6 例中 5 例で骨 潤癌の頻度が減少すると考えられる。 盤リンパ節または傍大動脈リンパ節転移が陽 治療法については,妊孕性を温存する必要 性で,やはりリンパ節転移陽性はハイリスク がある年代では円錐切除術を,必要がない年 と考えることができる。これらの再発部位は 代では単純子宮全摘を選択するのが一般的で 一定しておらず,術後は頸部から骨盤までの ある。ただし当院においては,円錐切除術を 広範囲を CT 等により検索することやマー 施行した症例の約 11 %に残存 / 再発がみられ カーを頻回にチェックすることが,再発を早 たため,細胞診による術後の厳格な経過観察 期発見するポイントであると思われた。 を必要とすることは言うまでもない。一方, ― 10 ― 第 21 巻第 1 号,2006 年 子宮全摘術後は残存 / 再発が 1 例もなかっ た。症例数は十分とは言えないが,子宮全摘 術後の経過観察の必要性は円錐切除術に比較 して低いと考えてもよいと考えられた。 Concomitant chemoradiation versus neoadjuvant chemotherapy in locally advanced cervical carcinoma: results from two consecutive phase II studies. Ann Oncol. 13 : 1212-9, 2002. 5)室谷哲弥 , 他 : 術後治療―化学療法併用放射線 療法 . 産と婦 . 70 ; 617-626, 2003. 参 考 文 献 1)黒石哲生 : 婦人科がんの疫学特性 . 日産婦誌 . 55 ; 944-951, 2003. 2)日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告 : 1980 年から 1989 年までに治療した子宮頸癌 , 体 癌の 5 年治療成績について . 日産婦誌 . 55 ; 743-769, 2003. 3)Essentials of Obstetrics and Gynecology(3rd edition). Hacker NF and Moore JG (eds). pp645-659, Philadelphia, WB Saunders Company, 1998. 4)Duenas-Gonzalez A, Lopez-Graniel C, Gonzalez-Enciso A, Mohar A, Rivera L, Mota A, Guadarrama R, Chanona G, De La Garza J. ― 11 ― 6)佐能 孝 , 他 : 子宮頸部扁平上皮癌症例に対す る術前動注化学療法の効果 . 産婦世界 . 47 ; 197-200, 1994. 7)加耒恒壽 , 他 : 子宮頸部腺癌の管理は特別か? 産と婦 . 70 ; 635-640, 2003. 8)梅咲直彦 , 泉 陸一 , 宇田川康博 , 他 : 進行お よび再発子宮頸部腺癌に対する MEP 療法の効果 . Oncol Chemother. 182-186, 2000. 9)Principles and Practice of Gynecologic Oncology (3rd edition). William J. Hoskins WJ, Perez CA and Young RC(eds), Lippincott Williams & Wilkins, pp841-918, 2000.
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