資格の大原 2017年受験対策 宅建講座 体 験 講 義 Ⅲ 知って得する相続分の計算方法 知って得する相続分の計算方法 (民法民法-相続) 相続) Ⅵ-17-1 ≪目 次≫ ~ 知って得する相続分の計算方法 ~ ◇ 民法-相続 テキスト ・・・P2 ◇ 民法-相続 過去試験問題 ・・・P12 体験講義Ⅲ テキスト テキスト 1 体験講義Ⅲ 第1講 テキスト 相続の方法 「相続」とは、ある者(被相続人)が死亡したことにより、その死亡した者の財産(遺産) を一定の者(相続人)が受け継ぐことをいう。相続は、被相続人の死亡によってのみ開始 するため、相続人は、相続が始まってからその相続に関する権利を行使し、また、義務を 履行することになる。 ここでは、誰が相続人となり、どのくらいの割合で被相続人の遺産を受け継ぐことがで きるのかを学習する。 1 相続人 〔1〕相続人と相続順位 配偶者 ① ② 被相続人の配偶者解1は、常に相続人となる。 配偶者は、他に相続人がいないときは一人で、また、他に相続人がいるとき は、その相続人と共同して相続人となる。 以下の者は、「子」、「直系尊属」、「兄弟姉妹」の順で相続人となる。 ① ② 子 被相続人の子解2は、相続人となる。 相続人である子が、以下a.~c.のいずれかに該当する場合には、その者の 子が代襲(〔2〕参照)して相続人となる。 a.相続の開始前に、既に死亡しているとき b.相続人の欠格事由(〔3〕参照)に該当するとき c.廃除(〔3〕参照)されているとき ① 直系尊属 被相続人の直系尊属(被相続人の父母・祖父母等)は、被相続人の「子」がいな いときに限り、相続人となる解3。 ② 親等の異なる者の間では、被相続人に近い者を先にする解3。 ① 兄弟姉妹 2 被相続人の兄弟姉妹は、被相続人の「子」も「直系尊属」もいないときに限り、 相続人となる解4。 ② 相続人である兄弟姉妹が、以下a.b.のいずれかに該当する場合には、その 者の子が代襲(〔2〕参照)して相続人となる。但し、その代襲者の子は、再代襲し ない(〔2〕参照)。 a.相続の開始前に、既に死亡しているとき b.相続人の欠格事由(〔3〕参照)に該当するとき 体験講義Ⅲ テキスト 解説1 婚姻関係にある者同士(夫婦)を、互いに「配偶者」という。ここでいう婚姻関係とは、 法律上の婚姻関係を指すため、いわゆる内縁関係にある者は含まれない(「内縁関係にあ る者」には、相続権は認められていない)。 解説2 「子」は、 嫡 出 子(法律上の婚姻関係にある男女間に生まれた子供のこと)、非 嫡 出 子(法 ちゃくしゅつ し ひ ちゃくしゅつ し 律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子供のこと)ともに実子として相続人となる。また、 養子は、嫡出子として相続人となる。 さらに、胎児は、相続については、既に生まれたものとみなされるので、相続人とな ることができる。 解説3 「直系尊属」は、一人でも相続権のある「子」がいる場合においては、相続人とならない。 また、親等の異なる者の間では、被相続人に近い者から相続人となる。すなわち、父 母・祖父母といった順で相続人となる。 解説4 「兄弟姉妹」は、一人でも相続権のある「子」又は「直系尊属」がいる場合においては、相 続人とならない。 だいしゅうそうぞく 〔2〕代 襲 相続 代襲相続 解説1 解説2 相続人となるべき者(被相続人の子・兄弟姉妹)が、「相続の開始前に、既に死亡 しているとき」、「相続人の欠格事由(〔3〕参照)に該当するとき」又は「廃除(〔3〕参照) されているとき」は、その者の子が相続人となる。 被相続人の子に代襲原因が発生すれば、被相続人の孫が代襲相続人となる。また、こ の孫に代襲原因が発生すれば、被相続人の曾孫が代襲相続人となる(再代襲)。なお、兄 弟姉妹については、再代襲は認められない。 相続人となるべき者が、相続を「放棄」した場合には、代襲相続は行われない。 〔3〕相続人の欠格事由・推定相続人の廃除 欠格事由 「被相続人」・「相続について自己より先順位又は同順位にある者」を故意に死亡 させたり、又は死亡させようとしたために、刑に処せられた者等は、相続人とな ることができない。 廃除 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)が、被相 続人に対して重大な侮辱を加えたとき等一定の場合には、被相続人は、その推定 相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。 3 体験講義Ⅲ 2 テキスト 相続分 相続人が数人いる(共同相続)場合、これらの者が遺産を相続することができる割合は、相 続分の指定(指定相続分)解1がある場合を除き、「法定相続分」の規定により定められる。 「配偶者」と「子」が相続人である場合、その相続分は、以下のとおりとなる。 配偶者 + 子 法定相続分 配偶者 + 直系尊属 → 2分の1(子の人数に影響されない) 子 → 2分の1(子全体の相続分となる) 子が数人いる場合、各自の相続分は平等となる。 子の代襲者の相続分は、子が受けるべきであったものと同じとなる。ま た、代襲者が複数いるときは、その代襲者の各自の相続分は平等となる。 「配偶者」と「直系尊属」が相続人である場合、その相続分は、以下のとおり となる。 配偶者 → 3分の2(直系尊属の人数に影響されない) 直系尊属 → 3分の1(直系尊属全体の相続分となる) 直系尊属が数人いる場合、各自の相続分は平等となる。 「配偶者」と「兄弟姉妹」が相続人である場合、その相続分は、以下のとおり となる。 配偶者 → 4分の3(兄弟姉妹の人数に影響されない) 兄弟姉妹 → 4分の1(兄弟姉妹全体の相続分となる) 配偶者 + 兄弟姉妹 解説1 4 ① ② 配偶者 ① ② 兄弟姉妹が数人いる場合、各自の相続分は平等となる。 「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹」の相続分は、「父母の双方を同 じくする兄弟姉妹」の2分の1となる。 ③ 兄弟姉妹の代襲者の相続分は、兄弟姉妹が受けるべきであったものと同 じとなる。また、代襲者が複数いるときは、その代襲者の各自の相続分は 平等となる。 法定相続分(上記の相続分)の規定にかかわらず、被相続人は、遺言で、共同相続人の相 続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる(指定相続分)。相続 分の指定(指定相続分)は、法定相続分に優先するため、相続分の指定がある場合には、法 定相続分の規定は、適用されない。 体験講義Ⅲ 事例1 テキスト Aが、6,000万円の遺産を残して死亡した。 ① 配偶者B、実子C(既に死亡)・D、Cの子E・Fがいる場合 ② 配偶者B、父C及び母Dがいる場合 5 体験講義Ⅲ 3 テキスト 相続の効力 〔1〕相続の一般的効力 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産(遺産)に属した一切の権利義務を承継す る。但し、被相続人の一身に属したもの(例:宅地建物取引業の免許)は、承継しない。 解説1 相続人は、被相続人に属していた一切の権利義務を承継する者であるため、被相続人 の財産(例:不動産)のみならず、借金等も承継することになる。 〔2〕共同相続 ① ② 相続人が数人あるとき(共同相続)は、相続財産は、その共有に属する。 各共同相続人は、自己の相続分(法定相続分・指定相続分)に応じて被相続人の権利義務 を承継する。 解説1 共同相続の場合、相続財産は、共同相続人の共有となる。従って、各相続人は、相続 分を「共有持分」として有することになるため、自己の持分を自由に(他の相続人の同意な しに)第三者に譲渡することができる。 〔3〕遺産分割 遺産分割 → 共有財産である遺産を分割して、各相続人の単独財産にすること ① 分割の実行 遺言による 分割の指定 又は禁止 遺産分割の 効力 6 共同相続人は、被相続人が遺言で遺産分割を禁じた場合を除いて、いつで も、協議(相続人全員の合意による。多数決で決定するものではない。)で、遺産 分割をすることができる。 ② 遺産分割について、共同相続人の間で「協議が調わないとき」又は「協議を することができないとき」は、各共同相続人は、遺産分割を家庭裁判所に請 求することができる。 ① 被相続人は、「遺言」で、遺産の分割の方法を定めることができる。また、 これを定めることを第三者に委託することもできる。 ② 被相続人は、「遺言」で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、 遺産の分割を禁ずることができる。 遺産分割は、相続開始の時に遡って、その効力を生じる。但し、第三者の権 利を害することはできない。 体験講義Ⅲ 4 単純承認・限定承認・放棄 単純承認 限定承認 放 テキスト 棄 → → 無限(無条件・無制限)に被相続人の権利義務を承継すること 相続人が相続によって取得した財産の範囲内においてのみ、被相続人の債務 及び遺贈を弁済することを条件として、相続を承認すること解1・3 → 相続人が全面的に権利義務の承継を否定すること(相続の放棄をした者は、は じめから相続人とならなかったものとみなされる)解2~3 ① 承認・放棄の 選択期間 法定単純承認 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月 以内に、相続について、「単純承認」若しくは「限定承認」又は「放棄」をしな ければならない。但し、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によっ て、家庭裁判所において伸長することができる。 ② 相続人が、「単純承認」、「限定承認」、「放棄」をしないで死亡したときは、 ①の期間は、その死亡した者の相続人が自己のために相続の開始があった ことを知った時から起算する。 ③ 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、①の期間は、その法 定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったこと を知った時から起算する。 以下a.~c.の場合には、相続人は、「単純承認」したものとみなされる。 a.相続人が、上記①の期間内に「限定承認」又は「放棄」をしなかったとき b.相続人が、相続財産の全部又は一部を処分したとき c.相続人が、「限定承認」又は「放棄」をした後に、相続財産の全部又は一 いん とく 部を隠匿し、ひそかに消費したとき等 承認・放棄の 撤回及び取消 し 一度なされた「単純承認」・「限定承認」・「放棄」は、自己のために相続の開 始があったことを知った時から3ヵ月以内であっても、撤回することができ ない。 但し、これらが詐欺・強迫等によるものである場合には、取り消す(撤回す る)ことができる解3。 解説1 「限定承認」は、相続人が数人いるとき(共同相続)には、共同相続人の全員でのみするこ とができる。 解説2 「相続の放棄」をした者の子は、代襲相続人とはならない。また、相続人が数人あると きには、放棄した者の相続分は、他の相続人に帰属する。 解説3 「限定承認」・「放棄」・「限定承認の取消し」・「放棄の取消し」は、その旨を家庭裁判所 しんじゅつ に申 述 しなければならない。 7 体験講義Ⅲ テキスト ≪参考≫ 親族・親等図 8 親 族 6親等以内の血族、配偶者及び3親等以内の姻族をいう。 親 等 親族関係において自分からの遠近度を測る単位(上図の丸囲数字)をいう。 血 族 血のつながりのある親族をいう。 姻 族 配偶者の血族をいう(婚姻による親族)。 直 系 人と人との血統が親子関係でつながる系統をいう。 傍 系 血統が共通の祖先から分かれてつながる系統をいう。 尊 属 自分より目上の親族をいう。 卑 属 自分より目下の親族をいう。 体験講義Ⅲ テキスト MEMO 9 体験講義Ⅲ MEMO 10 テキスト 体験講義Ⅲ 過去試験問題 過去試験問題 11 体験講義Ⅲ 過去試験問題 ~過去試験問題の利用にあたって~ ・各問題の〔平○-問△〕は、宅建試験で出題された年(出題年)とその年に出題された 問題の番号を示します。 例:〔平10-問1〕 → 平成10年の本試験〔問1〕で出題した問題 相続 過去試験問題 1.〔平5-問13〕 Aが、5,000万円相当の土地と5,500万円の負債を残して死亡した。Aには、弟B、母C、 配偶者D及びDとの間の子E・F・G並びにEの子Hがいる。この場合、民法の規定によ れば、次の記述のうち正しいものはどれか。 1 2 3 4 限定承認をするときは、D・E・F及びGが、共同してしなければならない。 Eが相続放棄をしたときは、Hが、代襲して相続人となる。 E・F及びGが相続放棄をしたときは、B及びCが、Dとともに相続人となる。 E・F及びGが相続放棄をしたときは、Cは、相続開始のときから3ヵ月以内に単純 若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。 2.〔平8-問10〕 居住用建物を所有するAが死亡した場合の相続に関する次の記述のうち、民法の規定に よれば、正しいものはどれか。 1 Aに、配偶者B、Bとの婚姻前に縁組した養子C、Bとの間の実子D(Aの死亡より 前に死亡)、Dの実子E及びFがいる場合、BとCとEとFが相続人となり、EとFの 法定相続分はいずれも8分の1となる。 2 Aに、配偶者B、母G、兄Hがいる場合、Hは相続人とならず、BとGが相続人とな り、Gの法定相続分は4分の1となる。 3 Aに法律上の相続人がない場合で、10年以上Aと同居して生計を同じくし、Aの療養 看護に努めた内縁の妻Iがいるとき、Iは、承継の意思表示をすれば当該建物を取得す る。 4 Aに、その死亡前1年以内に離婚した元配偶者Jと、Jとの間の未成年の実子Kがい る場合、JとKが相続人となり、JとKの法定相続分はいずれも2分の1となる。 12 体験講義Ⅲ 過去試験問題 3.〔平11-問3〕 相続に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。 1 相続開始の時において相続人が数人あるとき、遺産としての不動産は、相続人全員の 共有に属する。 2 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定めることができ、また相続開始の時から 5年を超えない期間内で遺産の分割を禁ずることもできる。 3 遺産の分割について共同相続人間に協議が調わないとき、各共同相続人は、その分割 を、相続開始地の地方裁判所に請求することができる。 4 相続開始の時から3年以上経過した後に遺産の分割をしたときでも、その効力は、第 三者の権利を害しない範囲で、相続開始の時にさかのぼって生ずる。 4.〔平14-問12〕 相続の承認及び放棄に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものは どれか。 1 2 相続の放棄をする場合、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをする ことができる。 3 相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月(家庭裁判所 が期間の伸長をした場合は当該期間)以内に、限定承認又は放棄をしなかったときは、 単純承認をしたものとみなされる。 4 被相続人の子が、相続の開始後に相続放棄をした場合、その者の子がこれを代襲して 相続人となる。 13 体験講義Ⅲ 相続 過去試験問題 過去試験問題 解答解説 1. 正解1 1 ○ 限定承認は、共同相続人(本肢の場合、配偶者D、子E・F・G)の全員でのみす ることができる。 × 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、はじめから相続人とはならなかっ たものとみなされるため、その者の子(被相続人の孫)が代襲して相続人となること はない。従って、Eが相続の放棄をしたときは、Hが代襲して相続人となることは ない。 × 子(第1順位)の全員が相続の放棄をしたときは、直系尊属のC(第2順位)が、配 偶者Dとともに相続人となる。兄弟姉妹のB(第3順位)は、相続人とはならない。 × Cは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に単純承 認若しくは限定承認又は放棄をしなければならない。相続開始の時(Aの死亡時)か ら3ヵ月以内ではない。 2 3 4 2. 正解1 1 ○ 本肢の場合、子全体の相続分は2分の1となる。養子Cの相続分は、子全体の2 分の1になるため4分の1となる。実子Dを代襲相続したE・Fの相続分はさらに その2分の1になるため8分の1となる。 × 本肢の場合、相続人は配偶者Bと母Gであるが、Gの法定相続分は3分の1であ る。 × 法律上の相続人がいない場合、被相続人と特別の縁故があった者の請求により、 家庭裁判所は、相続財産の全部又は一部を特別縁故者に与えることができる。従っ て、特別縁故者は、承継の意思表示をするだけで、相続財産を取得できるものでは ない。(肢3 テキスト未掲載) × Kは、Aの実子であるため、相続人となる。離婚により婚姻関係が解消している Jは、相続人とはならない。 2 3 4 14 体験講義Ⅲ 過去試験問題 3. 正解3 1 2 3 4 ○ 相続人が数人あるときは、相続財産は、共同相続人の共有となる。 ○ × 遺産分割は、地方裁判所ではなく、家庭裁判所に請求することができる。 ○ 共同相続人は、被相続人が遺言で遺産分割を禁じた場合を除いて、いつでも、そ の協議により、遺産分割をすることができる。遺産分割の効力は、相続開始の時に 遡って生ずることになるが、第三者の権利を害することはできない。 4. 正解4 1 2 ○ 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。 ○ 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人全員の共同でのみすることが できる。 ○ × 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、はじめから相続人とはならなかっ たものとみなされるため、その者の子(被相続人の孫)が代襲して相続人となること はない。 3 4 15
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