No.10_2015.07.13

戦争法案 廃案ニュース
戦争法案を廃案に追い込むまで、発行します。(中野貞彦)
No.10
2015.7.13
☆重要な記事を集めて紹介し、短い感想、コメントを付します。出所の URL を明記します。
「海外で死ぬと(国の見舞い金で)家が建つよね」
――母親が自嘲気味に語った言葉が忘れられない、元自衛官の若者
これは、
『しんぶん赤旗』
(7 月 12 日)の1面トップの記事「“戦争法案”で日本壊れる」の最初に出て
くる言葉です。橋本浩三さん(32,元守山駐屯地所属)の顔写真入りで、取材した内容をトップ記事扱
い。母親の言葉は 2002 年 7 月の朝、前年 9 月の米同時多発テロを契機に、日本がアメリカの対テロ戦争
に組み込まれた時期です。橋本さんは、面接官から「アフガニスタンやイラクに行くかもしれない。あ
なたは行けますか、家族は反対しませんか」と「覚悟」が問われた、という。
この記事を読んで、イラク戦争時に自衛隊員が死んだ場合、国から見舞い金がいくらでるか、どう扱
うか、制服組が議論した、という記述を思いだした。前号 No.9 で紹介した半田滋氏の『日本は戦争をす
るのか-集団的自衛件と自衛隊』
(岩波新書、2014.5.20)に出てくる。関連した部分を紹介する(p.130)
。
陸上自衛隊初の「戦地派遣」となったイラク派遣は、危険な活動が制服組の力を強めることを実証し
てみせた。戦火くすぶるイラクで死亡した場合、どのような扱いを受けるのか。
防衛省にある陸上自衛隊の頭脳中枢・陸上幕僚監部では「戦場死」をめぐる議論があった。
「イラクは
戦場なのだから、戦死ではないのか」と主張し、靖国神社に祀るべきと話す幹部も出てきた。
自衛隊の行動は、防衛相の命令を受けて陸海空の各幕僚長が「般命」と呼ばれる命令文を出す。訓練
はいずれも「乙般命」。防衛出動や PKO といった実任務が「甲般命」に当たる。
小泉純一郎首相が「危険」と認めるイラク派遣は、もちろん「甲般命」となった。しかし、死亡時の
扱いは「戦死」や「戦場死」の想定がないため、訓練時の死亡と何ら変わりない。金銭的には危険度を
勘案して賞恤金(しょうじゅつきん)が六千万円から九千万円にアップし、これに首相が支払う特別褒
賞金の一千万円を上乗せして合計一億円が支払われることになった。
このとき、陸上自衛隊の幹部は「カネの問題ではなく、名誉の問題だ。例えばイラクで死亡した米兵
は、国家のために戦い、死亡した勇気をたたえられ、アーリントン国立墓地に埋葬される。国立墓苑が
ない日本では靖国神社に祀るのがいちばん近いが、政教分離の建前からそれも難しいのだろう。自衛隊
に『死者の名誉』は与えられていない」と不満を述べた。・・・中略
隊員が銃弾に当たり、亡くなる事態をどう受けとめればよいのか。当時の先崎一(まっさきはじめ)
陸上幕僚長は、私の取材に次のように答えた。
「イラクで隊員が死亡したらどうするか、陸上幕僚監部でひそかに検討した。隊員の遺体を首相か、
最低でも官房長官に引き取りに現地に出向いてもらい、防衛省で国葬に準じる葬儀を行う。記帳所を設
け、国民に哀悼の誠を捧げてもらうようにする」・・・・・中略
制服組が「隊員の死」をめぐり独走したのは、危険な任務を命じながら、任務に相応しい名誉を与え
ようとしない政治への不満があったからである。その不満の裏返しが、制服組が勝手に決めた「国葬」
だった。
自衛隊員がイラクで亡くなった場合、一億円が見舞い金として支払われる、そして「国葬」扱いにす
る。半田氏は、制服組が政治への不満から「独走」した、としている。そこで、考えてみるならば、現
在の戦争法案が成立すれば、イラク戦争やアフガン戦争のようなアメリカの戦争に自衛隊が参加するこ
とになり、見舞い金も死者の扱いも現実問題になる。ということは、戦争法案の審議に於いて、そうい
うことは当然に想定して議論しておかなければならないことになる。私たちも、想像力を働かせて、そ
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戦争法案 廃案ニュース
うなった場合、日本の社会はどうなるのか、考えてみる必要がある。憲法九条の下で「戦死者」が出る
とはどういうことか? その不合理、不整合がまかり通る社会で暮らすことに耐えられるか? そういう
社会にしないために、戦争法案を絶対に通してはならない。
半田氏の著書の、この先にも重要なことが書かれているので、続けて紹介する。
二〇〇九年三月に就任した火箱(ひばこ)芳文陸上幕僚長は、陸幕長として初めて米国の米陸軍病院
を視察した。ベッドで上半身を起こし、待ち構えていた兵士がイラク戦争で負傷し、手足を失っている
のを見ると、火箱氏は歩み寄って抱きしめた。この訪米時、退役軍人省も訪問している。病院や退役軍
人省への訪問は日本の制服組トップとしては初めてだった。どのような意図があったのか。火箱氏はこ
ういう。
「陸上自衛隊はイラク派遣を経験し、無事に帰国した(正確には公表ベースで帰国時の自動車事故で
二人が負傷した)。今後、どのような海外派遣があるか分からない。戦争を続けている米軍の実態を自分
の目でみる必要があると感じた」
幕僚長は、日本にも米国のような病院、負傷した兵士を受け入れる病院、どんな海外派遣にも対応で
きる病院が必要だ、と意識して、視察をしたと思う。どんな海外派遣=どんな戦争が起きても対応でき
るようにしておかなくてはならない、と強く思っているだろう。それは、制服組の責任として、戦争法
案に対応していくことである。ところで、入間市に自衛隊の病院を建設する話が急に浮上しており、戦
争法案との関連性を思わないわけにはいかない。新聞記事を紹介する。
「入間の米軍基地跡
防衛省、市民利用に一定の配慮」 『埼玉新聞』2015 年 3 月 17 日(火)
航空自衛隊入間基地に隣接する入間市の米軍ジョンソン基地跡の留保地(約28ヘクタール)の活用
策について入間市は16日、防衛省が具体的な利用内容と建設スケジュールを示したとして内容を明ら
かにした。同所の一部を平時に運動場として開放することや自衛隊病院の二次救急受け入れなど市民利
用に一定の配慮をしている。同市はジョンソン基地跡地利用計画審議会に図り、最終判断する。
防衛省はこれまで、大規模災害などに対応し、自衛隊病院を拠点化・高機能化するためとして、同留
保地に「災害対処拠点」と「新病院(仮称入間病院)」を整備する計画を示していた。2015年から1
7年度にかけて調査検討と設計業務を行い、17年度から本体工事に入り、19年度に整備を完了させ
る予定。
災害対処拠点は災害時に部隊の展開、活動拠点としての利用、物資の集積のための用地として整備。
具体的には山林を敷地に造成し、電気、水道などを設ける。平時には入間基地所在部隊の訓練を実施す
る計画で、一部は運動場として整備する。周辺を緑地帯(4・5ヘクタール)で囲み、災害対処拠点は
指揮所区域、支援物資集積場、野営区域、駐車場など18ヘクタールを占めている。
一方、病院は北西側の3ヘクタールに配置し、既存の自衛隊病院と同程度の診療科のほか、新たに救
急科、歯科口腔外科、航空医学診療科を整備する。病床数は60床程度で、看護師養成所の設置も検討
している。自衛隊の操縦者に対する航空身体検査、航空医学診療などの機能も保持する予定。
災害対処拠点に設ける運動場は入間基地を使用しない時間帯で、土・日、休日、平日夜間の市民の利
用ができるとし、自衛隊病院も自衛隊員の診療に支障を来さない範囲で、搬送されてくる二次救急患者
を受け入れるという。同市は17日午後1時半から市民活動センターで第4回ジョンソン基地跡地利用
計画審議会を開き、防衛省の利用内容とそれに対する市の考えを協議する。
入間市は現在、ジョンソン基地跡地利用計画審議会で審議を行っている
(https://www.city.iruma.saitama.jp/shingikai/kaigi/014983.html)
。 日本共産党入間市委員会は、”
「戦争する国」づくりと一体の基地拡張に反対です”というビラをだしている。
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