国連気候変動枠組条約(UNFCCC) 気候変動問題への対処のための国際的な取組み IPCC公開シンポジウム、「気候変動に関する最新の科学的知見と緩和策の評価における温室効果 ガスインベントリの重要性」 沖縄県那覇市ANAクラウンプラザホテル沖縄ハーバービュー 2015年3月16日 ウィリアム・コジョ・アイェマン‐ボンス 非附属書 I 締約国支援部 部長 国連気候変動枠組条約事務局 概要 気候行動のた めのリマ声明 ワルシャワの 成果 ドーハ気候 ゲートウェイ ダーバンの 成果 カンクン合意 バリ・ロード マップ 京都議定書 国連気候変動 枠組条約 国連気候変動枠組条約 人間活動が大気中の温室効果ガスの濃度を著しく増加させて きていること、その増加が自然の温室効果を増大させているこ と並びにこのことが、地表及び地球の大気を全体として追加的 に温暖化することとなり、自然の生態系及び人類に悪影響を及 ぼすおそれがあることを憂慮し、 地球の気候の変動及びその悪影響が人類の共通の関心事で あることを確認し、 気候変動対策のための国際条約の交渉のため、政府間交渉 委員会(INC)が設立された。 国連気候変動枠組条約 INCの成果として、1992年のリオ地球サミットでは国連気候変 動枠組条約(UNFCCC)が採択された。これは1992年のリオ 地球サミットで採択された3つの国際環境合意(リオ条約)の1 つである。 リオ条約は、気候変動枠組条約のほか、生物多様性に関する 条約と砂漠化対処条約である。これらの条約は、相互に強い 関連性を持っている。 気候変動枠組条約は1994年3月21日から施行され、今日で はほぼ全世界の国々が参加している。条約を批准した195か 国は締約国と呼ばれている。 条約の目的 気候系に対して危険な人為的 干渉を及ぼすこととならない水 準において大気中の温室効果 ガスの濃度を安定化させること を究極的な目的とする。 締約国としての責任 条約は、先進国に先導役としての責務を課し ている。 過去及び現在における温室効果ガスの排出量の大部分は 先進国において排出されたものであるため、先進国は自国 の排出量を削減するための最大限の努力が求められる。 附属書1の締約国は、2000年までに排出量を1990年のレベ ルまで削減することが期待された。 多くの国々がそのための行動を起こした。その中には、すで に成功に収めた国もある。 締約国としての責任 開発途上国における気候変動対策のための、新たな資金を供 給。 先進国は条約に基づき、開発途上国における気候変動対策を 支援することに合意。すでに供与されているその他の支援にと どまらず、さらなる資金支援を気候変動対策のために実施。 資金メカニズムが条約によって設立され、地球環境ファシリティ (GEF)によって運営されている。最近では、新たに緑の気候基 金(GCF)が加わった。 先進国は、途上国における能力構築、技術開発及び技術移転 への支援に合意。 締約国としての責任 問題点と現在の取り組み 先進国(附属書1締約国)は、京都議定書の下での報告(=京都 議定書批准国のみ)も含めて、気候変動に関する政策・措置を定 期的に報告すること。 また、基準年(1990年)を含め、それ以降のすべての年のデータ を含む温室効果ガスの排出に関する年次目録(イベントリー)を 提出すること。 開発途上国(非附属書1締約国)による気候変動対策および気候 変動による影響への対応に関する報告は、附属書1締約国の報 告書と比べて、より概括的で、不定期でよい。特に、後発開発途 上国よる報告は、報告書作成のための資金提供を条件として作 成される。 持続可能な発展と気候変動対策とのバランスを取る 貧しい国々にとって、経済的発展は非常に重要である。気候変動 の影響を受けていない状態であったとしても、それらの国々にとっ て経済的発展は困難である。 条約ではこの点を考慮し、途上国から排出される温室効果ガス が今後増加することを容認している。 しかし、条約の究極の目的を達成するために、途上国が経済的 発展を犠牲にすることなく排出量を抑制できるよう支援することを 目指す。 先進国と途上国の両者にとってメリットのある(Win-Win)解決策 の1つ、クリーン開発メカニズム(CDM)は、京都議定書の採択時 に誕生した。 適応への取り組み 条約は、すべての国が気候変動の影響を受けやすいことを認め、そうし た影響を小さくするための特別な努力を締約国に求めている。特に、独 力で対応するだけの資源を持たない開発途上国において、そのような 取組を進めることが重要である。 条約締結後数年間は、締約国は気候変動の影響の度合いを確かめる 段階にあり、緩和と比較して適応についての関心は低かった。 IPCC第三次評価報告書(2001年)が発表されたことで、適応への関心 が高まった。締約国は、気候変動の悪影響や、気候変動対策による副 産物として起きる悪影響に取り組み、適応のための資金供与の枠組み を作ることに合意した。 現在、適応に関する作業は条約の下で個々の機関において行われて いる。カンクン合意の一部として採択されたカンクン適応枠組に従い、 締約国は適応委員会を設置した。これは、条約に基づき結束して適応 の取組みを進めていくための、大きな前進であった。 京都議定書 京都議定書は1997年12月11日、京都で採択。2005 年2月16日に発効。 京都議定書は、国連気候変動枠組条約の下の国際的 な合意で、先進締約国に、国際的な義務として温室効 果ガスの排出削減目標を達成することを約束させた。 議定書の実施に関する詳細な規則は、2001年にモロ ッコのマラケシュで開催されたCOP7で定められた「マ ラケシュ合意」である。議定書の第1約束期間は2008 年から2012年であった。 京都メカニズム 議定書の下で、各国は主に国内における対 策により目標達成に取り組むこととなった。 しかしその一方で、議定書では、市場を基盤 とする3つのメカニズム(=国内対策以外の 方法)によって目標を達成する方法も併せて 用意された。 国際排出量取引 クリーン開発メカニズム(CDM) 共同実施(JI) バリ・ロードマップ バリ・ロードマップは、2007年12月にインドネシアのバリ島で、気 候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)及び京都議定書第3 回締約国会合(COP/MOP3)で採択された。 バリ・ロードマップの一部を成すバリ行動計画は、気候変動への取り 組みへの新たな交渉プロセスの指針を示した。 バリ行動計画は、現在(2007年当時)、2012年まで、及び2012年以 降にわたる長期的協力の行動を通して、完全かつ効率的、継続的に 条約を実施するための、包括的なプロセスを示すものであった。 COPは、条約に基づいて設置された補助機関、「気候枠組条約 の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA )でこのプロセスを実施することを決定。 バリ行動計画の5分野:共有のビジョン、緩和、適応、技術、資金 バリ・ロードマップ COP15では多くの重要な課題について進展が見られ た。 気候変動政策を、政治的な最高レベルまで引き上げ。 気候変動に対する国際的な協力関係を十分に機能させるた めのインフラに関する交渉が進展。 コペンハーゲン合意の成立。全会一致は見なかったが、合意 により重要な課題が進展。 先進国は、開発途上国における適応と緩和のための300億ド ルの早期開始資金を供与(2010-2012年)。後発開発途上国 を優先する。 カンクン合意 2010年12月、メキシコのカンクンで開催されたCOP16 では大きな進展が見られた。長期的な気候変動の難 題に、世界各国が現在および将来にわたって協力的 かつ包括的に対処していくための、数々の決定から成 るカンクン合意が作り上げられた。 各国が排出削減について公式に誓約すべきことが決 定された。これは、相互に説明可能な方法で世界各国 が排出削減を進めていくための努力としては、かつて 見ぬほど大きな規模のものであった。 カンクン合意 カンクン合意は、国連の気候変動への取り組みの歴史の中 で、重要な成果の一つであった。 カンクン合意は、相互に説明可能な方法で世界各国が協力 して排出削減を進めるための、かつて見ぬほど大規模な取 組みの柱を定めたものである。各国の計画は、気候変動枠 組条約の下に国際的なレベルで把握されることになった。 カンクン合意には、開発途上国の気候変動対策を支援する ための従来の各国による合意・決定のどれよりも、包括的 なパッケージが含まれている。 途上国は、気候変動に適応し、また気候変動による負の影 響を抑えるべく低排出型経済構造に転換する継続的な取組 みを促進する必要に迫られている。カンクン合意は、途上 国のそうしたニーズに応えるための資金、技術及び能力開 発支援を含んでいる。 カンクン合意 カンクン合意は、行動 と支援の透明性が必 要であると説き、条約 の下、すべての締約 国のための測定、報 告、検証の枠組みの 基本を定めた。 ダーバンの成果 2011年12月のダーバンでの国連気候変動会議(COP17/CMP7) は、気候変動に関する交渉の転機となった。ダーバンでは、2020 年以降の気候変動対策に関する、世界全体による新たな法的合 意の青写真が必要であることを、各国が明確に理解した。新たな 合意の下、各国が持てる能力を最大限に発揮し、ともに成功を分 かち合うことが期待される。 つまり、ダーバンでは、条約の究極の目的達成に向けての包括的 な計画の立案を、すべての国が約束したのである。 条約の究極の目的とは、気候系に対して危険な人為的干渉を及 ぼすこととならず、また持続可能な発展を進める権利を損なわな い、そのような水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定 化させること、である。 ダーバンの成果 ダーバンの成果は、条約における従来の尺度よりもより 長い視点で実施のためのロードマップを具体化し、諸課 題を相互を関連づけながら対処することを目指すもので ある。 このロードマップには、国家間での信頼を構築・維持で きるよう、相互に関連性と補完性を持つ行動と実行の4 分野が示され、各国がこれに合意した。 京都議定書の第2約束期間 交渉のための新たなプラットフォームの構築 – ADP(強化さ れた行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会) 現行の交渉プロセスの2012年における終結 グローバルレビュー(条約の実施についての包括的な吟味・ 見直し) ドーハ気候ゲートウェイ 2012年12月にカタールのドーハで国連気候変動会議 (COP18/CMP8)が開催され、参加国はそれまでの3年間の 気候変動に関する国際交渉の成果を集約し、すべてのレベ ルにおけるより大きな野心的目標と行動に向かって一歩を 踏み出した。以下は参加国による主な決定事項。 参加国は決意を固め、気候に関する全世界的な合意を2020年に発効させるべく、そ れを2015年までに採択するためのタイムテーブルを設定した。 交渉を合理化し、バリ行動計画に基づく作業を完成し、強化された行動のためのダ ーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)という単一の交渉プロセス下での 2015年の合意に向けての新しい作業に集中する。 温室効果ガス削減への野心(意気込み)の強化と、気候変動の影響を受けやすい国 々の適応支援についての必要性を強調した。 京都議定書の新たな約束期間について決定。これにより議定書の重要な法的かつ排 出量管理モデルが存続し、温室効果ガスの排出に必要な行動について先進国が先鞭 を取る姿勢が強調された。 資金および技術支援の確立に向けての更なる進展。開発途上国におけるクリーンエ ネルギーへの投資と持続的成長のための新たな組織づくり。 ドーハ気候ゲートウェイ-ドーハの改正案 京都議定書は、先進国が温室効果ガス排出削減の定量的目標 を設定する唯一の国際合意。第1約束期間後も引き続き議定 書を存続させるための改定が、ドーハの改正案である。 2013年1月1日から8年間を第2約束期間とする合意が成立。 議定書の円滑な継続に必要な法的要件について合意され、重 要な温室効果ガス会計規則(温室効果ガス排出量の計算・報 告・管理についての規則)が維持された。 京都議定書の下で継続的に努力を続ける国々が、より高い目 標設定を視野に入れ、2014年までに排出削減目標を見直すこ とに合意。 京都議定書の市場メカニズムであるCDM、JIおよび国際排出 量取引の継続。 第2約束期間の目標を受け入れたすべての先進国に対して、 これらのメカニズムへのアクセスが引き続き保障される。 ワルシャワの成果 2013年11月のワルシャワでの国連気候変動会議 (COP19/CMP9)で、2015年の気候変動に関す る国際協定合意を確実にするため、さらに重要な 決定を行った。協定の目標は以下の2つ。 第一に、適応能力を構築するとともに、気候変動の 危険状態から脱却するための長期的な人類の取り組 みの指針として、国家間の協力関係を強化し、より 効果的で早急な排出削減への世界的な取り組みを実 現すること。 第二に、より早急かつより広範な行動を促すこと。 ワルシャワの成果 2020年以降の枠組み合意に関して各国が自主的に決定す る約束草案(INDCs)を、2015年のパリ会議に十分先立 って報告することに、各国が合意。 2015年の合意をより強固なものとするため、国内の行動 に関して必要となる測定・報告・検証(MRV)について の取り決めを最終決定。 また、画期的な成果の1つとして、森林減少や森林劣化 による温室効果ガス排出を削減するための規則が合意さ れた。あわせて、森林保護策および森林保護促進のため に成果主義に基づき資金を提供するシステムも合意され た。(REDD+のためのワルシャワ枠組) さらに、長期の気候変動の影響による損失と被害に対応 するメカニズムへの合意がなされた。これが損失と被害 に関するワルシャワ国際メカニズムである。 気候行動のためのリマ声明 2014年12月の、リマにおける気候変動会議 (COP20/CMP10)では、以下の2項目を基 本とする「気候行動のためのリマ声明」が採 択された。 ADPの作業の範囲を明確にする決定 (決議1/CP.20) 2015年のパリ合意のための「交渉文書 草案の要素」を含む決議附属書 気候行動のためのリマ声明 決定書1/CP.20は、以下の点を明示: 強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会は 、その作業を強化し、条約の下ですべての締約国に適用される議定 書、法的文書または法的効力を有する合意成果のための交渉文書 を、2015年5月までに作成し各国に提示する。 締約国が自主的に決定する約束草案(INDCs)を、明確で透明性が 高く理解しやすいものとするために、その草案を報告する際にあわせ て提供する情報の種類について合意。ただし、それらの情報は、締約 国それぞれの状況を踏まえて提供されるべきことも、併せて合意。 条約第2条に定める目標達成に向けて締約国が自主的に決定する 約束草案は、現在締約国が取り組んでいるレベル以上のものである こと。これを逆戻り不可の原則という。 すべての締約国が適応についての取り組みを公開するか、もしくは 適応をINDCsの1つの要素とみなすように促す。 気候行動のためのリマ声明 「交渉文書草案の要素」を構成する12セクション。 セクション A – 序文 セクション B – 定義 セクション C – 概論・目的 セクション D – 緩和 セクション E – 適応・損失・被害 セクション F – 実施のための協力と支援 セクション G – 資金 セクション H – 技術開発と技術移転 セクション I – 能力構築 セクション J – 行動と支援の透明性 セクション K – 約束に関する時間枠とプロセス / 貢献 / 実施と野心に関するその 他の事項 セクション L – 実施と遵守(コンプライアンス)の促進 セクション M – 手順と組織に関する規定 前進へのプロセス 2015年2月のジュネーブ会議では、リマで作成された文書(交 渉文書草案の要素)の読み合わせを初めて実施。 2015年の合意のための基礎として、交渉文書をすべての国 連公用語で3月までに公表し、それを6月の締約国間の交渉 でさらに検討・精査すること。 6月の条約補助機関会議では、交渉文書草案の検討をさらに 進め、可能な限り整理する。 6月に検討された文書をより深く検討するため、2015年秋に はさらに2つの会議が開催される。 パリでのCOP21では交渉を継続し、気候変動に関する国際 協定を採択。その協定は2020年から施行される。 結論 国家、準国家、自治体などあらゆるレベルの政府が、排出を削 減し、現在の気候変動に対処し、2015年の気候変動世界合意 が効果的なものとなるよう道を整えるために、より大規模で大胆 な行動をとっていくことは、依然として重要である。 また、産業界や技術業界や市民社会が、持続可能で回復力の ある環境を持つ社会を世界中に構築する一方で、国内および 国際的な気候対策の推進により今後ますます増えるであろう機 会(ビジネスチャンス)を積極的に利用することも、重要である。 政府の賢明な政策、事業への賢明な投資、知識を持つ市民か らの要求。これらすべては相互利益への理解により動機づけら れ、促進される。われわれは気候変動に対処し、それを管理す るという共通の目標に向かって、手を携えて前進しなければな らない。 ご清聴ありがとう ございました 問い合わせ先: ウィリアム・コジョ・アイェマン‐ボンス 国連気候変動枠組条約事務局 緩和、データおよび分析局 非附属書1締約国支援部 部長 [email protected]
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