S4 a班 1 年 R.H 暑さがピークに達し、時折吹きつける風が気持ちいい8月の上旬、私たちは東京を訪れました。東京は、まる で私たちを歓迎するかのように日差しが照りつけ、猛暑日となっていました。私は、特に印象に残っている企業 訪問と OBOG による懇談会について感想を書きたいと思います。 東京を訪れて1日目の午後、ディレクトフォースを終えて昼食を済ませた私は5人の班員と共に訪問先の企業 へ向かいました。弁護士や裁判官、検察官を目指す私たちが訪問した企業はアディーレ法律事務所です。弁護士 志望の者もそうでない者も、法に携わる職業という点で実際に弁護士をされている方に直接お話を伺いたいと考 え、アディーレ法律事務所を訪問しました。しかしながら、過去の東大見学でアディーレ法律事務所の仙台支店 を訪問していた班はあったものの、池袋にある本社を訪れるのは初の試みであったため、当日訪問するまでは緊 張が治まりませんでした。高層ビルの32階という、スカイツリーをまじまじと眺めることができる場所に、ア ディーレ法律事務所はありました。そんな東京を訪れて間もない緊張でがちがちの私たちでしたが、アディーレ 法律事務所の方々は親切にお招きしてくださいました。さて、私たちの班の訪問の主な内容は、私たちが事前に 用意した質問を弁護士の方にぶつけ、答えていただくといったものでした。時間にあまり余裕がなかったため、 1人3つほど質問をしました。私がした質問はこの3つです。①弁護士をするうえで、他にとっておくと便利な 資格。②弁護士として依頼人にもっとも気を付けていること。③全国に展開している各拠点の特色。他の班員が 大事な質問をほとんど考えてしまっていたため、わたしはより掘り下げた質問をしました。下に記すのがそれぞ れの答えです。①基本的にとっておきたい資格はない。就職の際重視されるのはあくまでもがくれきであり、他 の資格が役に立った例は少ない。②やはり笑顔が1番大事。悩みを抱える依頼人がどれだけ安心して相談できる のかが求められる。③目立った特色はないが、地域ごとに取り扱う事件が違う。このように、どの質問に対して も誠実かつ丁寧に答えていただきました。それは私たち1人1人を社会人として接してくださっていることの表 れだと考え、私にはそれがなによりもうれしかったです。質問タイムが終わり、実際に弁護士の方々が働いてい る仕事場を拝見させていただきました。弁護士という職業に対して、法律関係であるからか少し堅い印象を持っ ていましたが、仕事場はいたってシンプルな解放感あるつくりでした。実際の仕事場の空気感を味わい、弁護士 という職業への憧れが高まったところで私たちの企業訪問は終了です。1時間という短い訪問ではありましたが、 弁護士を目指す私にとってはかけがえのない時間となりました。 同じ日の夕飯後、私が最も心待ちにしていた OBOG 懇談会が行われました。約一五人ごとのテーブルに、 OBOG の先輩が1人つくようなかたちで行われ、私は三人の先輩方のお話をお聞きすることができました。正直、 幾度もの移動のせいか疲労がたまっていましたが、そんな疲労も忘れさせてくれるほど刺激的な懇談会でした。 3人の先輩方の話を聞き、特に今の自分にとって学ぶことが多かったのが3人目の経済学部の OB の話でした。 学ぶことが多かった理由は、今後私たちが歩んでいくであろう道を誰よりも具体的に語られていて、私の心を揺 さぶる現実味あふれるアドバイスが多かったからです。その OB の方の話の中で最も印象的であったのが、「き れいごとだけ並べても成功は掴み取れない。お金を目的に努力するのも1つの方法だ。」という言葉です。そし て、こう続けました。 「確かに、誰かの役に立ちたくてこの職業に就く、というのは職業選択のうえでは大切か もしれない。だが、自分のモチベーションを高めることには適さないことが多い。お金(給料)という明確な目 的の方がモチベーションを高めるにはいいのではないだろうか。」わたしも誰かの役に立ちたいという理由で職 業選択をし、心の支えにしてきた1人です。成績が伸び悩んでいたとき、この支えを糧に頑張ってきたつもりで した。いや、強がっていただけなのかもしれません。きれいごとで自分のうわべだけを飾り、「おまえは偉い」 と、自分に言い聞かせていただけだったのかもしれません。そんな私にとって、先輩の言葉は決して優しいもの ではありませんでしたが、 今後の生き方を導いてくれるようなアドバイスでした。 経済学部の OB の方以外にも、 医学部の OB の方からは研究職の面白さや苦悩を、法学部の OB の方からは法科大学院について詳しく説明を聞 き、理解を深めました。どの OB の方の話も、わたしには興味深く、魅力的に感じました。 二高生として、自分の将来のためにと臨んだ今回の東大見学会でしたが、多くの出会いや経験を得られた素晴 らしいものでした。正直、今回の東大見学会への参加の始まりは親のすすめや、周りに流されたからという理由 が少なからずありました。以前までの私は自分の将来にまったく見通しがつかず、高校へ入ってからというもの の、勉強に身が入らないでいました。そんなとき興味を持ったのがこの東大見学会でした。その後、今の自分を 変えるという本来の目的を見つけたのです。このように、些細な理由から本来の目的を見つけ、東大見学会を終 える前と今では勉強に対する意識はもちろん、部活動やその他学校生活に対する意識も高まりました。 今回の東大見学会で得たものが「出会い」と「経験」であると上で述べました。特に「出会い」には感謝して いる思いが強くあります。アディーレ法律事務所でお世話になった弁護士・広報部の方々。ディレクトフォース でお話しさせていただいた新日鐵住金の社員・元役員の方々。懇談会で多くのアドバイスをくださった OBOG の方々。また、企業訪問について補助してくださった二瓶先生や、東大見学会を計画して取り仕切ってくださっ た若林先生を含め、多くの先生方。そして何よりも、同じ目標を掲げたことで出会い、協力し合えた企業訪問班 のみんな。今まで本当にありがとうございました。私は班長という立場でいながらも、集合場所を間違えるなど 頼りない一面を見せてしまい班のみんなには迷惑をおかけしました。それでも、こうして無事企業訪問を成し遂 げることができたのは、班のみんなの支えがあってこそのことです。初めに決めていた訪問場所をお断りされ、 意気消沈したこともありました。企業訪問先への道のりが分からなくなり、予定時間に遅れそうになったことも ありました。そんなとき、支えあえる素敵な仲間と作った思い出は、これからも胸に残っていることでしょう。 最後に、今回の東大見学会を企画・運営してくださった、若林先生をはじめとする先生方、お世話になりまし た。特に二瓶先生には訪問先の企業へのアポとりから、当日の点呼まで多くの補助をいただきました。私のミス にも笑顔で応えている先生を私は尊敬しています。何から何まで助けていただき、本当にありがとうございまし た。 もし、来年、再来年と東大見学への参加に悩む後輩を見かけたら、私は自信を持ってこう言います「参加しよ う」。夏季課題が終わらないことになるかもしれない。部活も休むことになる。しかし、その勇気ある一歩は必 ず彼らの役に立つ。そう心から思っているからです。
© Copyright 2024 Paperzz