D-4 急性期脳虚血におけるPET、MRI での最終梗塞巣予測の検討 (豚

D-4
急性期脳虚血における PET、MRI での最終梗塞巣予測の検討
(豚中大脳動脈閉塞モデルにおける検討)
分担研究者:大西丘倫(愛媛大学医学部 脳神経外科学講座)
共同研究者:渡邉英昭、福本真也(愛媛大学医学部 脳神経外科学講座)
酒向正春(東京女子医科大学脳神経センター脳神経外科)
【目的】
虚血性脳血管障害の治療決定には、脳虚血組織の回復能を短時間で正確に把握することが必要
であり、このために脳梗塞急性期に MRI 検査を行うことが一般的である。今回我々は、豚中大
脳動脈閉塞(MCAO)モデルを用いて急性期(発症6時間)に施行した MRI、PET 検査にて最終
梗塞巣を予想しうるかどうかについて検討した。
【方法】
動物モデル:豚の MCA は解剖学的に個体差が大きいため虚血作成 2 週間前に血管撮影を行い、
MCA の走行を確認し適切な雌豚を選択した。その後、全身麻酔下に経頭蓋窩的に左 MCA 遠位部
を凝固切離し MCAO モデルを作成した。(n=4,体重 38-42 kg)
。検査終了後は全身麻酔から覚醒さ
せたのち、次回の検査まで農場にて管理を行った。
MRI:虚血後6時間に MRI 検査を施行し、通常撮影に加え、Diffusion ならびに Perfusion 撮影を施
行し、3D-T1, T2, ADC, DWI, CBF, CBV, MTT マップを作製した。尚、28 日後には解剖学的に梗塞
面積を得るため MRI を施行した。
PET: 虚血後6時間に 15O-water 静注法にて CBF、15O-oxygen 吸入法にて CMRO2 を測定し、CBF,
CMRO2, OEF マップを作製した。
解析法:MRIおよびPET検査にて得られた全てのパラメーターマップを3D-T1 imageに投影したの
ち以前我々が確立した立体標準豚脳図[1]に投影した。この操作で全ての豚MCAOモデルから得ら
れた全パラメーターを同一空間に置換し、各ピクセル毎にgeneralized linear model アルゴリズム[2]
を用いて解析を行い予測梗塞巣マップを作成し、術後28日の最終梗塞巣と比較検討した。また、
今回予測梗塞巣マップとしてMRIパラメータのみ、PETパラメータのみ、MRI&PETパラメータ
ーの3種類のマップを作成しこれらの比較検討も行った。
【結果】
予測マップは、MRI パラメータ、PET パラメータ、MRI&PET パラメーター共に最終梗塞巣と
非常によい相関を認めたが、MRI&PET パラメーターが最も相関が良く、感受性 90.4%、特異性
91.6%であった。MRI パラメーターからの予測マップは感受性 87.2%、特異性 91.4%であり、PET
パラメーターからのものでは、感受性 92.1%、特異性 86.6%であった。なお、最終梗塞巣が比較的
小さいものでは予想マップとの差が大きく、予想マップでは過大評価する傾向が認められた。
【考察】
症例数は少ないが、Generalized Linear Model アルゴリズムを用いた解析は急性期において脳梗塞
の範囲を予想できる可能性があると考えられた。
PET 検査を加えることで感受性、特異性とも上昇し、より正確な予後予想が可能となったが、MRI
単独でも比較的良い結果が得られたことより、MRI 単独の検査でも予後予想が可能な可能性が示
唆された。
今回は、永久閉塞モデルでの検討であり、今後は再開通モデルでの検討が必要と思われた。
【文献】
1)
Watanabe et. al, NeuroImage, 14:1089-96. 2001
2)
Wu et. al.:Stroke, 933-942, 2001