第 4 分野 牧場で飼養されているクリオージョ種について 遠藤 麻衣子 農学生命科学研究科附属牧場 1.はじめに の中間種場にカテゴライズされる。 農学生命科学研究科附属牧場は茨城県笠間市にあ いわゆるポニーのくくりに入るのだが、これらの る。もともとは、練成施設だったそうだ。昭和 27 年 品種は、非常にタフな体質で、基本的に忍耐強く温 に東京大学に払い下げられ、現在に至る。昔は馬耕 厚な性格が多いことから、牛追い荷物運びなどに使 のために生産育成されていたが、やがては競走馬の われることが多い。クリオージョも本国アルゼンチ 生産育成に移行、現在は平成6年にアルゼンチンのラ ンでは牛追いに使われているそうである。 ・プラタ大学との教育連携プログラム修了記念に贈ら れたクリオージョの生産育成を中心に、厩舎活動が 欧米では、エンデュランス競技に使われたり、野 外騎乗で乗られることが多いと聞く。 行われている。 4.クリオージョ種の特徴 2.馬の飼養頭数 クリオージョはスペイン語読みでcriolloと表記する 私は2000年に牧場に配属され、当時サラブレッドが ので、英語読みだとクリオロとなる。この言葉は 繁殖牡馬が1 頭、繁殖牝馬が6 頭、育成が1 頭、クリ 「スペインの子孫」を意味するのだが、もともとは オージョは牡馬が1 頭、牝馬が3 頭、育成が2 頭、乗用 16世紀のスペインの南米侵攻の馬たちが再野生化した 馬が1 頭の合計 15 頭だった。サラブレッドに関しては 個体から作り上げられたといわれている。 馬房への出し入れを行っていたため、作業時間の大 背中には鰻線と呼ばれる色の濃い線が正中線に走 半は馬房の清掃にとられることが多かった。現場の っており、脚の関節部分にはトラ模様が見られる。 人数の削減もあり、サラブレッドの生産は徐々に縮 毛色はサラブレッドより豊富で、薄墨色と呼ばれる 小、替わりにクリオージョの生産が中心になってき 灰色はクリオージョ特有らしい。 て、現在はサラブレッドは功労馬となっているウィ ナーズサークル1頭、乗用馬としているセル・フランセ 5.当初の目的 が1 頭、クリオージョの種牡馬が2 頭、候補が1 頭、繁 クリオージョの初駒が生まれ、払い下げの時点で 殖牝馬が3 頭、候補が1 頭、乗用馬が1 頭の計 11 頭であ 馴染みのない品種だった故、なかなか買い手がつか るが、クリオージョ種は頑強な体質と粗食に耐えう なかったと聞く。最近では海外でクリオージョに乗 るタフさを持ち合わせているため、昼夜放牧管理が ったことがある方や、払い下げられた馬に乗ったこ できる。そのため厩舎作業時間は以前と比べて減っ とのある方が訪ねてきたり、購入の打診に来ること ている。 が増えてきた。もともとはセラピーホースとしての 普及を押していたのだが、思うようには進んでいな 3.クリオージョ種について い。 馬は体格の大きさから3つに分かれることが多い。 馬車やばんえい競馬で使われる重種馬、日本の競馬 6.クリオージョのこれから で使われる軽種馬、サラブレッドより小柄のものは 現在、繁殖を担っているのは二世達なのである 中間種馬といわれている。クリオージョ種はこの中 が、近親交配になってきている。本国より凍結精 1 東京大学技術発表会予稿集 (2016) 液、あるいは新たな種牡馬の導入を計画している 化に寄与できるよう、続けていきたい。 が、諸事情で10 年ほど前からあまり進んでいない。 日本への導入理由のひとつに、新たな乗馬資源とい 参考文献 うことを考えると、ほかの品種との掛け合わせも視 1)著者 E.H.Edwards 監訳 楠瀬良 『アルティメイ 野に入れて検討している。 トブック 馬』 緑書房 7.おわりに 今年でクリオージョが導入されて22 年を迎えた が、昨今の畜産事情が厳しい中ではあるが、大きな 連絡先 可能性を秘めた彼らの能力を生かし、日本での馬文 E-mail:[email protected] 東京大学技術発表会予稿集 (2016) 2
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