序文・目次を見る - シーエーピー出版

iii
訳者序文
W. エンダーズ著の Applied Econometric Time Series(New York:John Wiley & Sons,1995) は,ア
メリカの大学で経済時系列分析のテキストとして多くの教師と学生から好評を得て,ベストセ
ラーとなった教科書である。本書は,この応用経済時系列分析の教科書をさらにやさしく解説す
るとともに,RATS による経済時系列分析の技法を解説したハンドブック,RATS Handbook for
Econometric Time Series(New York: John Wiley & Sons,1996) の日本語訳である。
著者のエンダーズ教授は本書を刊行したときはアイオワ州立大学教授であったが,現在,アラバ
マ大学の経済学・ファイナンス学部の教授であり,学部長の要職にある。主な研究分野は国際マク
ロ経済学と応用経済時系列分析であり,これらの分野で多くの優れた著作があるとともに,これら
の専門学術雑誌の編集委員をつとめている。
本書の特徴は,エンダーズ自身が原著序文で述べているように,Applied Econometric Time Series
で取り上げた経済時系列モデルを RATS(Regression Analysis of Time Series,Estima) でどのよう
に行えばよいのか,という読者からの質問に応えて,RATS を用いてこのハンドブックだけで経済
時系列分析ができるようにしている点である。この目的を達成するために,各章とも次のような 3
部構成になっている。まず第 1 部で,時系列分析の理論モデルをやさしく解説し,次の第 2 部で,
この理論モデルを実際に推定するための RATS コマンドやプロシージャを解説している。そして,
最後の第 3 部で,この理論モデルの応用例としてサンプル・プログラムを用意し,実際のデータを
用いて RATS により経済時系列分析を行い,その結果をどのように解釈すればよいかを示してい
る。このような仕組みになっているから,計量経済学の学部レベルの入門者や実務家の方々でも,
基礎的な統計学の知識があれば,難解な経済時系列分析ができるようになる。このサンプル・プロ
グラムの RATS プログラムとデータは,シーエーピー出版の次のホームページからダウンロード可
能である (http://www.cap-shuppan.co.jp)。
RATS は,現在 (2003 年 8 月)RATS Version 5 であり,以前の Version 4 に比べて格段に使いや
すくなり,初心者にも簡単に利用できる (ちなみに,筆者は 80 年代後半の RATS Version 3 からの
ユーザーである)。特に,学生諸君は,WinRATS-32 が学生割引で購入できるので,本書の付録の
RATS プログラムを利用して経済時系列モデルをマスターしてほしい (RATS の購入については,
直接 Estima 社のホームページ:http://www.estima.com/や ESTIMA 社の日本の正規販売代理店で
あるインフォーマティック社のホームページ:http://www.informatiq.com/などを参照)。
読者は,本書を教科書として利用するとともに,RATS を使って付録の「サンプル・プログラム」
の応用例を解き,ぜひ自分の手で現代の経済問題を分析していただきたい。
2003 年 8 月
徳永 澄憲
iv
原著序文
こ の ハ ン ド ブ ッ ク の 構 想 は ,Applied Econometric Time Series (New York: John Wiley &
Sons,1995) の出版後に浮かび上がった。というのは,幸いにも,この経済時系列分析のテキストで
取り上げたモデルをどのように推定すればよいのか,という質問を多くの読者から受けたからであ
る。この読者の要請を受けて,このハンドブックでは,RATS ユーザーがこのハンドブックだけを
利用して経済時系列分析を行えるようにしている。この目的を達成するために,各章では最初に時
系列分析の理論モデルを解説し,次に,この理論モデルを実際に推定するための RATS コマンドや
プロシージャを解説する。さらに,この理論モデルの応用例としてサンプル・プログラムを用意し
ている。このサンプル・プログラムは RATS コマンドの適切な利用を解説するとともに,アウト
プットに関しても詳細な解説をしている。付録の CD には,サンプル・プログラムのプログラムと
データが入っている (訳注) 。プログラムは*.PRG というファイルに含まれており,そのアウトプッ
トは*.OUT というファイルに含まれている。読者はこのサンプル・プログラムに習熟することに
より,読者自身の経済時系列分析プログラムを作成できるようになるであろう。
このハンドブックの中の解説やプログラムは,RATS のすべてのバージョンで利用可能である。
RATS4.0 以上のバージョンであれば,付録のプログラムは問題なく動くはずである。ある RATS
プロシージャは,RATS の掲示板からダウンロードすることができる。これらのプロシージャのよ
り重要なもの (特に,JOHANSEN.400 プロシージャ) の利用に関しては解説をしている。さらに,
CATS に関しても詳細な解説をしている。
第 5 章のフロッピーが壊れたときに積極的に入力してくれるとともに,このハンドブックの作成
期間中私を支えてくれた妻リンダに感謝したい。ハーヴィー・カトラー氏 (コロラド州立大学) は,
第 3 章の原稿の一部分を明瞭にしてくれた。とりわけ,比較的洗練された時系列モデルの推定用プ
ログラムを出版するようにと私を励ましてくれた拙著 Applied Econometric Time Series の読者に謝
意を表したい。
ウォルター・エンダーズ
訳者注:これらのサンプル・プログラムの RATS プログラムとデータは,次のホームページからダウンロードできる。
http://www.cap-shuppan.co.jp
目 次
v
目 次
訳者序文 iii
原著序文 iv
第 1 章 RATS 入門 ··········································································································1
1.1 データの準備 1
1.2 線形回帰分析 9
1.3 回帰分析の追加的なオプション 12
1.4 サンプル・プログラム 13
練習問題 21
訳者補論 23
第 2 章 定常時系列モデル ······························································································25
2.1 理論モデル 25
1. 定常性 25
2. ARIMA 過程 26
3. 自己相関関数と偏自己相関関数 27
4. ボックス・ジェンキンス法 32
2.2 RATS のコマンドとプロシージャ 38
1. BOXJENK 38
2. CORRELATE 39
3. FORECAST 40
4. BJIDENT.SRC 41
5. BJFORE.SRC 42
6. AIC と SBC 42
7. CDF 43
2.3 サンプル・プログラム 43
例題 2.1 AR(1) 過程のモデル 43
例題 2.2 ARMA(1,1) 過程のモデル 48
例題 2.3 卸売物価指数のモデル 51
練習問題 56
第 3 章 ボラティリティのモデリング···········································································59
3.1 理論モデル 60
vi
3.2 ARCH-M モデル 64
3.3 RATS の最尤推定法 67
3.4 RATS のコマンドとプロシージャ 70
1. MAXIMIZE 70
2. FRML 72
3. NLPAR 73
3.5 サンプル・プログラム 74
例題 3.1 回帰モデルの中の ARCH 誤差 74
例題 3.2 WPI の ARCH と GARCH モデル 77
例題 3.3 ARCH M 過程の推定 84
練習問題 89
第 4 章 トレンドと単位根の検定···················································································91
4.1 理論モデル 91
4.2 単位根検定の諸問題 97
4.3 RATS のコマンドとプロシージャ 104
1. LINREG 104
2. ADF.SRC 105
3. DFUNIT.SRC 106
4. PPUNIT.SRC 106
5. その他 106
4.4 サンプル・プログラム 107
例題 4.1 DF 検定と PP 検定 107
例題 4.2 季節単位根の検定 112
例題 4.3 構造変化と単位根 113
練習問題 116
第 5 章 ベクトル自己回帰分析 ····················································································119
5.1 理論モデル 119
5.2 イノベーション・アカウンティング 123
5.3 仮説検定 127
5.4 RATS のコマンドとプロシージャ
132
1. VAR の推定方法 132
2. インパルス応答関数と分散分解 134
3. 尤度比検定 135
4. 多変数の AIC と SBC 136
5. SUR 136
6. Sims-Bernanke 分解 137
5.5 サンプル・プログラム 139
目 次
vii
例題 5.1 仮説検定 139
例題 5.2 イノベーション・アカウンティングと予測 143
例題 5.3 SUR 151
例題 5.4 Sims-Bernanke 分解 154
練習問題 164
第 6 章 共和分と誤差修正モデル·················································································167
6.1 理論モデル 167
1. 共和分過程 167
2. 共和分と誤差修正モデル 170
3. 共和分の検定:Engle-Granger 法 172
6.2 Engle-Granger 法の例示 175
6.3 サンプル・プログラム 177
例題 6.1 Engle-Granger 法による 3 変数の分析 177
例題 6.2 共和分と金利の期間構造 183
6.4 Johansen 法 189
6.5 Johansen.400 プロシージャの利用 193
1. π のランクの決定 195
2. 係数制約の検定 200
3. 多項共和分ベクトルの制約 202
6.6 CATS 入門 203
1. π のランクの決定 205
2. 係数制約の検定 207
3. 多項共和分ベクトルの制約 209
練習問題 212
付録:付表
表 A τ 統計量の臨界値 (τ の実証的累積分布) 215
表 B Φ 統計量の臨界値 (Φ の実証的分布) 216
表 C 統計量 λmax と λtrace の実証的分布 217
参考文献 218
訳者あとがき 220
索引 221