NO.104 - 人類働態学会

104
11. June 2016
■第51回全国大会 1
案内
プログラム
抄録
1
3
7
■第50回全国大会から 53
追悼集会「香原志勢先生が遺されたもの」報告 岡田守彦 53
追悼集会抄録
53
■働態の窓 59
元気を出すための、気分転換の、そして
働態学会へもっと参加したくなるための
会報データベース 大箸純也 59
■学会からの連絡・報告
2016年度人類働態学会夏季研究会の案内 5
会報のバックナンバー、製本、「働態研究の方法」の販売 63
おはずかしながらのお願い 大箸純也
64
理事会報告(議事録・議事メモ)
64 JHE原稿募集
74
■会員情報 74
編集(委員長)後記 74
東京都渋谷区千駄ヶ谷1-1-12 桜美林大学内
TEL:03-6447-1331
FAX:03-6447-1436
公益財団法人 大原記念労働科学研究所内
E-MAIL:[email protected]
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
第51回人類働態学会全国大会のご案内
下記の通り,第51 回人類働態学会全国大会を開催いたします.多くの会員および,関係の皆さまのご参加をお
願い申し上げます.
期日: 2016 年 6 月 11 日(土),12 日(日)
3.発表について
会場: 富山大学 五福キャンパス
★英文抄録について
大会当日までに英文抄録(200word 程度,JHE 掲載
共通教育棟 1 階 C13 教室(次ページ参照)
富山県富山市五福 3190 番地
用)を大会事務局へご提出ください.書式は英文
http://www.u-toyama.ac.jp/access/gofuku/index.html
abstract 用のテンプレートファイルにしたがってくださ
大会長,事務局:河原雅典 (富山大学芸術文化学部)
い.テンプレートファイルは発表者に E-mail で送付し
Tel:0766-26-4068
ます.
E-mail:[email protected]
提出ファイルは,大会当日までに E-mail で送付いただ
会費(当日支払のみ):
大会参加費
4,000 円(学生 2,000 円)
懇親会費
3,000 円(学生 1,000 円)
くか,大会当日に受付まで USB メモリでご持参くださ
い.
★口頭発表について
・口頭発表時間は 1 演題 15 分間(発表 12 分,質疑 2
1.大会スケジュール概要
6 月 11 日(土) 第 51 回大会 1 日目
11:30 受付開始
分,交代 1 分)です.
・発表形式は PC のみとさせていただきますので,原則
12:00 理事会(C12 教室)
としてプレゼンテーション用ファイルを保存した USB
12:55 開会
ファイルをご持参ください.
13:00 口頭発表
※パソコンは Windows7 版,ソフトは PowerPoint2013
14:45 特別講演『富山のものづくり』
をご用意いたします.
16:00 シンポジウム『歩いて暮らせるまちづくり:富山
※演台上にはレーザーポインタのみ用意します.
大学歩行圏コミュニティ研究会の取り組み』
※会場設置のプロジェクターの接続端子は,ミニ
18:00 懇親会 (富山大学生協本店食堂)
D-Sub15pin(オス)です.
6 月 12 日(日) 第 51 回大会 2 日目
9:00 口頭発表
※Mac など異種端子の PC をお持ちの方は,必ず接
12:30 総会
※Mac のパソコン,その他のソフト使用のご希望があ
続アダプターをご持参ください.
13:30 緊急企画
る場合は各自ご用意いただくとともに,発表セッ
『災害に対して人類働態学ができること』
ション前までに受付にお申し出ください.
・発表手順
15:10 表彰式,閉会
①各セッションの開始前までに,USB ファイルに入れた
2.参加予定の方へ
発表用ファイルをパソコンにご準備ください.
★大会参加は当日登録も歓迎いたします.しかし,懇
②前演題の発表時には,会場前方の次演者席に着席
親会などの利用参加人数を把握する必要があります
してください.
ので,参加ご予定の方は以下の事項について,でき
※円滑な進行にご協力をお願いいたします.
るだけ事前の早い時期にご連絡(メール)をくださいま
すようお願いいたします.
メール連絡先:[email protected]
4.アクセスについて
<登録事項>
◆ JR 富山駅から市内電車利用(約 20 分)
・氏名,所属,連絡先(電子メールアドレス,電話番号)
JR 富山駅南口から市内電車「富山駅」停留所が直結
・一般/学生の別
しています.そこから富山地鉄・市内電車 2 系統(大学
・懇親会の参加/不参加
前行)に乗車してください.15 分で終点大学前に到着
★参加費等の支払いは大会当日のみとなります.
します.停留所から徒歩約 5 分です.
-1-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
◆ JR 富山駅からバス利
キャンパスマップ関連部拡大図
用(約 20 分)
JR 富山駅南口バスター
ミナル 3 番のりばで富山
地鉄・路線バス「富山大学
前経由」に乗車してくださ
い.約 20 分で 「富山大
学前」バス停に到着しま
す.
◆ タクシー利用
タクシー利用の場合,JR
富山駅から約 15 分,富山
バスのりば(富山大学前)
高岡駅行き・富山大学附
属病院行き
空港から約 20 分です.
詳しくは大学ホームペー
ジをご覧ください.
https://www.u-toyama.
ac.jp/access/gofuk
u/index.html#how-t
o-access
会場:共通教育
棟 A6(C 棟)1
階 C13 教室)
バ スの り ば( 富山
大学前)富山駅
行き
←この部分を
拡大したもの
市内電車 大学前
-2-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
第51回人類働態学会全国大会 プログラム
全体構成
午前
6月11日 受付 11:30(土)
6月12日 セッション 2
(日) セッション 3
セッション 4
9:00-10:00
10:10-11:10
11:20-12:20
昼
午後
理事会
開会 12:5512:00-12:50 セッション 1 13:00-14:30
特別講演
14:45-15:45
シンポジウム 16:00-17:30
総会
緊急企画
13:30-15:00
12:30-13:15 表彰式・閉会 15:10-
夜
懇親会
18:00-19:30
全国大会 1 日目 6月11日(土)
富山大学 五福キャンパス共通教育棟 1 階 C13 教室
11:30- 受付開始
14:45-15:45 ■特別講演
12:55-13:00 ■開会 大会長 河原雅典
講演者:大熊敏之 /富山大学
「富山のものづくり」
13:00-14:30 ■セッション 1
座長:山岡俊樹 /京都女子大学
1-1.高齢者の自転車乗車時におけるふらつき
○谷田貝一男 /日本自転車普及協会 自転車文化セ
16:00-17:30 ■シンポジウム
「歩いて暮らせる街づくり:
富山大学歩行圏コミュニティ研究会の取り組み」
中林美奈子 /富山大学
河原雅典 /富山大学
鳴尾明子 /富山大学
髙松寛 /星井町地区長寿会
川添晋 /三協立山株式会社
ンター
1-2.自転車歩行者道における標識デザインとその視
認性について
今井駿,○岡田 明 /大阪市立大学大学院生活科学
研究科
1-3.自転車用ヘルメットのファッション性に関する大
学生の意識
○加藤麻樹・荒木鳳大 1), 下平佳江 2), 御子柴
慶治 3) /1)早稲田大学, 2)長野県短期大学,3)ライトウ
18:00-19:30 ■懇親会
ェイプロダクツジャパン(株)
1-4. 自転車専用ドライブレコーダー記録データ分析
から判った自転車走行の安全性
○堀野定雄 1), 浮穴浩二 2) /1)神奈川大学工学研
富山大学生協本店食堂
所,2)UK コンサルタント
1-5.車いす装着ドライブレコーダーで促進する共生交
通対話:鎌倉の事例
○堀野定雄・小木和孝・佐伯英敏・千 一・有山 誠・
西 和大 /鎌倉バリアフリー研究会
1-6.車いすのティッピングレバー形状が段差乗り上
げ操作を行う介助者の筋活動に及ぼす影響
○能登裕子 1), 村木里志 2) /1)九州大学大学院医
学研究院保健学部門, 2)九州大学大学院芸術工学研究
院デザイン人間科学部門
-3-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
全国大会2日目 6月12日(日)
富山大学 五福キャンパス共通教育棟 1 階 C13 教室
9:00-10:00 ■セッション2
座長:久宗周二/髙﨑経済大学
11:20-12:20 ■セッション4
2-1.ダイバーシティの取組状況に関する組織規模別
分析
○岩浅巧 1), 水野基樹 2) /1)順天堂大学大学院, 2)
4-1.WIB 船内向け自主改善活動での漁船員による改
善 作業の負担軽減
○久宗周二 1), 小木和孝 2) /1)高崎経済大学 経
座長:迫秀樹 /静岡文化芸術大学
順天堂大学
済学部, 2)大原記念労働科学研究所
2-2.参加型職場環境改善におけるトレーナー短期研
修の役割
○小木和孝・佐野友美 /公益財団法人大原記念労
4-2.離島でのワーキング・ホリデーの試み 島根県西
ノ島町を例にして
○久宗航太 1), 久宗周二 2) /1)上智大学 観光研
働科学研究所
究会, 2)高崎経済大学 経済学部
2-3.スマートフォン内蔵センサーによるライフログデ
ータの信頼性と応用可能性
○榎原 毅 1),秋山 知大 2),松河剛司 3),山田泰
行 4),庄司直人 1),山田翔太 1)/1)名古屋市立大学
4-3.制約条件に基づく発想・思考法
○山岡俊樹 /京都女子大学家政学部
4-4.個人情報とその保護の考え方
○大箸純也 /近畿大学産業理工学部
医学研究科, 2)名古屋市立大学医学部,3) 愛知工業大
学情報科学部,4) 順天堂大学スポーツ健康科学部
2-4.労働形態の多様化に伴う非特定作業空間にお
ける労働安全衛生上の課題
○松田文子・池上徹 1), 庄司直人・榎原毅 2) /1)
12:30-13:15 ■総会・昼食
公益財団法人大原記念労働科学研究所,2)名古屋市立
大学
10:10-11:10 ■セッション3
13:30-15:00 ■緊急企画
座長:大箸純也 /近畿大学
「災害に対して人類働態学ができること」
司会:河原雅典 /富山大学
3-1.身体運動の大きさと形を表象する発声音の特徴
○山内直人 1), 篠原和子・田中秀幸 2) /1)国士舘
被災者に力を借りる —レジリエンスデザインー
○尾方義人 /九州大学
大学体育学部, 2)東京農工大学大学院工学研究院
3-2.ふるえ疾患者(本態性振戦患者)に対するふるえ
抑制器(パームサポーター)の評価研究
○坂本和義 1), 井口竹喜・一柳健 2) /1)電気通信
東日本大震災から1年を経過した被災自治体職員の
メンタルヘルス
○山田泰行 1,2)、長須美和子 1)、原知之 1)、酒井
一博 1) /1)公益財団法人大原記念労働科学研究所,2)
大学 産学官連携センター, 2)菊池製作所 ものづくりメカト
ロ研究所
順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科
3-3.把持および膝伸展運動における筋張力維持の
加齢特性
○水戸和幸・吉田幸哉・白井礼 1), 曽我聡子・太田
宣康 2) /1)電気通信大学, 2)花王株式会社生物科学研
原発事故の被災地で垣間見た生活者と学術との間の
溝
○永幡幸司 /福島大学
超急性期災害看護の学術的動向と働態学的課題
○庄司直人、榎原毅 /名古屋市立大学大学院医学
究所
3-4.注視対象の運動特性に応じた身体各部の運動
軸の時系列変化
○髙橋雄三 /広島市立大学大学院情報科学研究科
研究科
15:10- ■表彰式・閉会 大会長 河原雅典
注:発表者,連名者の所属名の表記は原則部署を省
略してありますので,抄録に記載の所属番号および所
属表記と異なる場合があります.
-4-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
2016 年度人類働態学会夏季研究会
東京オリ・パラのために人類働態学ができること
~みんなで快善!サイクルスポーツセンター~
人類働態学会 2016 夏季研究会を伊豆サイクルスポーツセンター(CSC)にて開催いたします。2020 東京五輪の
自転車競技会場に選ばれた CSC は広大な敷地内に自転車競技場(ベロドローム)、テーマパークを保有し、競輪
学校も隣接しています。東京五輪や自転車競技に関わる方々との意見交換や人類働態学のフィールドワークを通
して CSC の魅力を発見し、施設の快善案や新たな活用方法を提案します。下記日程をご確認の上、奮ってご参加
ください。
記
1.日程詳細
研究会:2016 年度人類働態学会夏季研究会
主 催:人類働態学会(担当:順天堂大学・山田泰行)
テーマ:「東京オリ・パラのために人類働態学ができること~みんなで快善!サイクルスポーツセンター~」
開催日:平成 28 年 9 月 12(月)~13 日(火)
場 所:サイクルスポーツセンター(CSC) ※CSC に集合場所(三島駅から送迎バス有)
交 通:三島駅と CSC 間の送迎バス有(三島駅↔CSC)
広大な駐車場有(車での参加を歓迎します)
1日目で帰られる方は懇親会後に送迎車で駅までお送りします。
定 員:80 名
参加費:一般 15,000 円,学生 10,000 円(9/12 のみの参加は一般 8,000 円となります)。
※参加費には宿泊費、懇親会費、食費3回分(9/12 夕食、9/13 朝食・昼食)が含まれています。
9/12 の昼食は含まれませんのでご持参ください。
申込み:FAX または e-mail で申込書(下記参照)を提出する
申込書提出先:山田泰行
e-mail:[email protected]
FAX :0476-98-1011
提出期限:2016 年 7 月 31 日(月)
2.プログラム
【1日目(9/12)】
CSC ベロドローム前集合(12:00) ※JR 三島駅から送迎バス有
施設見学、フィールドワーク(サーキットの乗車体験有)
シンポジウム、懇親会、グループワーク
宿泊所サイテルに宿泊
【2日目(9/13)】
サイテル研修室にて終日研究会
グループ表彰
CSC ベロドローム前解散(14:30)※JR 三島駅への送迎バス有
申込書書式
E-mail 申し込み:以下の項目を記してお送りください(e-mail:[email protected])。
記載項目:氏名、 氏名ふりがな、 所属、 性別、 区分(一般、学生)、 会員(会員、非会員)、 電話番号、
e-mail アドレス、 5km サーキットの乗車体験の希望の有無(希望しない方はファミリーサーキット(ゆる
やかな短距離コース)を体験いただけます)、 備考
-5-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
FAX申し込み:以下の形式に、おおむね従って下さい(FAX :0476-98-1011)。
一般会員、個人単位の申し込みの場合
【記入欄】□枠には、黒の塗りつぶしまたは☑印で該当するものを選択してください。
ふりがな
氏名
所属
性別: □ 男
□ 女
区分: □ 一般
□ 学生
会員: □ 会員
□ 非会員
電話番号
e-mail
5km サーキット(本格的なコース)の乗車体験: □希望する □希望しない
※希望しない方はファミリーサーキット(ゆるやかな短距離コース)を体験いただけます。
備考
学生集団申込み用
2016 年度人類働態学会夏季研究会申込書(学生集団申込用)
学校名
指導教員名
研究室名
5km サーキット(本格的なコース)の乗車を希望する方は「希望する」に☑して下さい。
希望しない方はファミリーサーキット(ゆるやかな短距離コース)を体験いただけます。
氏名
氏名
氏名
氏名
氏名
氏名
氏名
氏名
□男
□女
5km サーキットの乗車体験
□学部生 □院生
□希望する □希望しない
□男
5km サーキットの乗車体験
□女
□学部生 □院生
□希望する □希望しない
□男
5km サーキットの乗車体験
□女
□学部生 □院生
□希望する □希望しない
□男
5km サーキットの乗車体験
□女
□学部生 □院生
□希望する □希望しない
□男
5km サーキットの乗車体験
□女
□学部生 □院生
□希望する □希望しない
□男
5km サーキットの乗車体験
□女
□学部生 □院生
□希望する □希望しない
□男
5km サーキットの乗車体験
□女
□学部生 □院生
□希望する □希望しない
□男
5km サーキットの乗車体験
□女
□学部生 □院生
以下、参加人数分の欄を繰り返して下さい。
-6-
□希望する □希望しない
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
第51回人類働態学会全国大会 発表抄録
特別講演: 富山のものづくり
大熊 敏之/富山大学 芸術文化学部
シンポジウム: 歩いて暮らせる街づくり:
富山大学歩行圏コミュニティ研究会の取り組み
緊急企画: 災害に対して人類働態学ができること
一般演題: 口頭発表18題
-7-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
特別講演
富山のものづくり
大熊 敏之
富山大学 芸術文化学部
1.富山県のイメージ
て近代的な産業工芸への途を摸索したが、その後は、
県外のひとびとが「富山県」に抱く一般的なイメージと
はかばかしい進展をみせなかった。一方、後者はごく
いえば、まずは立山、ついでチューリップやシロエビ、
近年に、旧来の欄間や獅子頭、天神像とは別に、エレ
ホタルイカなどの農水産特産品、鱒の寿司に細工かま
キギターの胴部や CAD 技術を用いた新製品等の開発
ぼこ等の名物といったところではないだろうか。二次産
を試みているが、必ずしも成功しているとはいえない。
業としては、豊かな水資源利用の電力業、そして、そ
これに対して、いち早く近代的産業化に向かったの
の次に、ようやく製造業のうち製薬とアルミ産業が盛ん
は、ひとつは繊維分野で、高岡では人絹に友禅染の
であることが思い起こされる程度であるに違いない。
手法を取り入れた高岡捺染を明治後期に開発して、
およそ昭和 40 年代までは、国内外に盛んに売り出して
しかし、富山県は、それに限らず、多様なものづくり
いた。また、昭和人絹を前身として昭和14年(1939)に
産業を育み続けてきた、「ものづくりの県」なのである。
創立した呉羽紡績はその後、東洋紡績と合併したのち
2.江戸時代の越中の製造業
も、県内各所に生産拠点を設けて操業を続けている。
富山県のものづくりの歴史は、江戸時代にはじまる。
だが、それ以上に著しい展開をみせているのは、高
その原点となったのは、やはり、第一に製薬であった。
岡鋳物を母体とする、多種多様な金属加工業である。
江戸初期の明生 16 年(1639)に加賀藩から分かれた
慶長 16 年(1611)から明治初頭にかけ、高岡で鋳物
富山藩は、全体としては、財政を潤す主力産業を持つ
師たちが主に製造したのは、鋳鉄製の鍋や釜、農耕
ことのない、きわめて生産性が低い、貧しい地だった。
具であったが、やがて地場産業としての芸術性が色濃
この状況が変化をみせはじめたのは、越中国(現・富
い美術銅器に方向性を転換させ、明治期を通じて海
山県)を治める第二代藩主・前田正甫が大坂、岡山で
外で大いに人気を博す。それが飽きられると、今度は
既に知られていた胃痛、腹痛の特効合薬に倣って、今
国内向け量産工芸のほか、銅像等の大型鋳物に腕を
日の富山反魂丹を工夫させ、売薬商法を奨励するよう
振るう。これが、高岡銅器である。しかし、それとともに、
になった 17 世紀末のことである。以後、丸薬であるた
高岡鋳物は大正期からアルミニウム工業への変容をも
め、印籠などにも入れやすく、日常的に携帯がしやす
図り、アルミを中心とする富山金属加工業隆盛の出発
い反魂丹の評判は諸国にひろがり、「越中の薬売り」は
点を形成する。それがあればこそ、不二越などの工具、
藩の主要一大産業に成長して、今日の富山県の医薬
工業製品製造業の展開が可能となったわけである。
品産業隆盛の礎をかたちづくっていくこととなる。
しかし、江戸時代の越中を見渡すと、他藩に負けず
4.富山のものづくりの特質と未来
劣らず、特産品としての地域工芸も藩の庇護を受けて
富山のものづくり全般を歴史的に追うと、①無駄で贅
栄えていた。官の工芸には見るべきものが少なく、漆
沢な美よりも、現実的な実用性に重きを置く。②質の高
工の杣田青貝細工や官窯陶磁の越中丸山焼が挙げ
い素材を、精度高くかたちにする。③作り手の都合だ
られる程度だが、対して領内各地では、民間の力を主
けを優先せず、常に使い手の都合も考慮する。④量産
として陶磁の越中瀬戸焼や小杉焼、漆工の高岡漆器、
工業品であっても、出発点は常に手業である。⑤伝統
城端塗、金工の高岡鋳物、木工の井波彫刻、それに
には拘泥せず、常に自らの変容を恐れない、の五点が
福野縞、福野絣に代表される木綿と麻、城端絹等々の
挙げられる。その特質は、伝統的工芸品の展開形であ
繊維、染織というように、実に多彩な各種工芸産業が
る福光の野球バット生産のありようや不二越の製造ポリ
創出され、他藩にも盛んに出荷されていたのである。
シーからも見て取れるように、現代にも脈々と受け継が
れ、さらには富山大学の研究者たちによって創出され、
3.近代化に向かう富山の工芸産業
既に実用化されているキャシュトレイや手すり、「まちな
近世期に芽生えた越中の工芸産業のうち、現在、経
かカート」にも創造的遺伝子として手渡されている。そ
済産業省が指定する伝統的工芸品としてそのままの
して、この創造力は、過疎化と超高齢化が進む近未来
名で残るのは、高岡漆器、井波彫刻である。うち前者
の日本で、必ずや力を発揮するに違いないと考える。
は、大正期以降に「むきみかん型火鉢」などを開発し
-8-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
シンポジウム
歩いて暮らせるまちづくり
−富山大学歩行圏コミュニティ研究会の取り組み−
河原雅典 1)、中林美奈子 2)、鳴尾明子 2)、髙松寛 3)、川添晋 4)
1)富山大学芸術文化学部, 2)富山大学医学部看護学科, 3)星井町地区長寿会,
4)三協立山株式会社
1.歩行圏コミュニティ研究会
若者や元気な高齢者だけでなく、足腰が弱くなった
高齢者も積極的にまちに出かけて、生き生きと交流を
楽しむことのできる生活圏を作りたい。それが私たちの
考える「歩行圏コミュニティづくり」である。それを実現
するために富山大学歩行圏コミュニティ研究会(通称
ホコケン)は、コンパクトシティを標榜する富山市中心
市街地を舞台に活動している。活動の特徴は富山大
学、富山市行政、富山市星井町地区長寿会、地元企
業、商店街等が協働で取り組んでいるところにある。
写真1 まち歩きイベントの様子
2.研究会の取り組み
具体的なまちづくり活動は、公共用歩行車「まちなか
カート」の開発、組織作りを基盤とし、①まちなかカート
の個人への貸し出し、②利用者に対する支援、③社会
発信活動、④都市空間の整備という流れで行ってき
た。
シンポジウムでは、第 1 にホコケン活動の基盤である
組織作り、社会発信、都市空間の整備についての報
告を行う(写真 1)。第 2 に、もうひとつの基盤である「ま
ちなかカート」の開発について報告する(写真 2)。第 3
に、これらの活動を通して利用者(モニター)の方々の
写真 2 「まちなかカート」と「カートステーション」
生活意識や健康状態の変化について報告する(写真
3)。さらに、研究会のメンバーである企業の立場から、
また長寿会の立場から、いずれもアクションリサーチャ
ーとしてどのように取り組んで来たかについて取り組み
を紹介する。
研究会活動の成果として、富山市内数カ所に「カート
ステーション(カートのシェアリングシステム)」を設置す
ることができ,現在も運用されている(写真2)。
しかし,この仕組みの利活用を促進することは容易で
はない。現在研究会としては、IoT を利用して、まち歩
きを楽しむ新しい仕組みを立ち上げるところである。そ
写真 3 健康測定会の様子
の紹介も含め、研究会が直面している問題点と今後の
展開についてシンポジウムで意見交換をしたい。
------------ << 連絡先 >> -----------河原雅典
富山大学 芸術文化学部
〒933-8588 高岡市二上町 180 番地
電話:0766-25-9174
E-mail: [email protected]
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人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
緊急企画-1
被災者に力を借りる —レジリエンスデザイン—
尾方義人
九州大学 大学院芸術工学研究院
抄録
研究方法として確立させることが重要である。
私たちは阪神淡路・中越・東日本、熊本などの地震
や経験し、様々な地震災害を経験してきた。
被災から何年かたった東日本大震災での被災者に
「みなさんの苦労や、はねかえしてきた事実は、みなさ
被災者は避難所や仮設住宅での生活を行う。しかし、
んが被災者でなく、次に必ずおこる災害の被災者への
体育館・公民館での暮らしは、段ボールを敷いて地べ
支援者になるのです。」と話をすると大きな理解を得ら
たに座るなど、阪神淡路の時と変わらないことも多い。
れる。これらの方法化(以下、図)が重要である。
しかし、被災者は自らの克服する力や知恵(レジリエ
ンス)をもって、課題を解決している。そのような知恵・
跳ね返してきた力を専門家がしっかりと抽出をし、デザ
インによる解決や働態学による改善・実験可能性を追
求していかなければならない。
1.なにが課題か、
熊本の地震の調査で感じていることは凡そ2つある。
1つ目:調査方法、現場との関わり方
参与観察にしろ、非参与観察にしろ、現場近くで、ま
た発災時に近いほど調査が難しいということがある。
避難所等の現場調査(写真撮影など)に対しての拒
否感がこれまでよりも高い様に感じる。被災者自身に
精神的負担をかけないことは当然であるが、管理者
3.レジリエンスデザインの社会実装
(市の担当者、自治会の役員、派遣されてきている他
の自治体職員)の責任の表れであったり、マスコミに対
解決方法は日常と非日常において実装しなければ
する拒否の現れであったりする。同様の研究調査が何
ならない。いつもともしもの時使えることを社会実装しな
であるかを伝えることの難しさを実感している。
ければならない。そのために働態学と人間工学とデザ
2つ目:具体的な問題解決
インが一緒に考えるべきことは幾つか想定できる。
被災地の避難所などでの生活空間で状況はあまり変
例えば
○ ウルトラマイク・ロモビリティ・スーパーショートレン
わっていないように思われる。
体育館や公民館が避難所になることは想定されてい
ジ・オートモーティブ:極めて短い距離の移動(数
るはずであるが、その対応準備が十分でない。コストや
メートルから数百メートル)のボトルネック化の改善
時間などその理由もある程度は推定できるからこそ次
○ 避難所内での姿勢維持や健康確保のためのセル
の準備が必要である。できない理由からの設計要件化
フメディケーション:湿度や温度照明環境の課題
が重要となる。
○ ゴミ問題や共同生活での集団心理や被災地では
2.調査方法のレジリエンスデザイン
土木や建築また広域行政や法律などとは異なるアプロ
必ずおこる詐欺・窃盗・性犯罪への対処
直接のインタビューや避難している状態、被災してい
る状態での調査は困難である。またすべきではない。
ーチが必要であり、その分析や対応が次の現場調査
方法と実験室実験につながっていくと考える。
しかし、現状の記録、人々が困難を跳ね返している事
実や問題発見のための根源として、「記述」しておくこ
難所の閉鎖直前での情報の記録やまた報道映像や記
------------ << 連絡先 >> -----------尾方義人
九州大学大学院芸術工学研究院
大学院芸術工学専攻、芸術工学部工業設計学科
電話:092-553-4542
録写真からの事実の読み解きやその分析をたしかな
E-mail: [email protected]
とは重要である。これが十分で無いからこそ同じことを
繰り返しているともいえる。避難者がいない状況や避
-10-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
緊急企画-2
東日本大震災から1年を経過した被災自治体職員のメンタルヘルス
○山田 泰行 1,2)、長須 美和子 1)、原 知之 1)、酒井 一博 1)
1)公益財団法人大原記念労働科学研究所,
2)順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科
東日本大震災の発生直後、被災自治体職員は住
ることが適当な項目等に関する調査研究報告書」6) に
記載されている尺度別カットオフ基準を採用した。本
民の避難誘導や 24 時間対応の避難所の運営、食料
基準は、疲労得点が 12 点以上、不安得点が 11 点以
の供給、仮設トイレの整備、治安維持などの初期対応
上、抑うつ得点が 10 点以上のいずれかに該当する者
1.はじめに
1)
に追われた 。彼ら自身も被災者であるとはいえ、これ
を「高ストレス者」とみなす。ストレッサーの質問項目に
らの自治体業務が最優先で遂行されたことは言を俟た
は、居住環境要因の項目(震災直後の自宅の被災状
ない。その後も、震災による劇的な生活の変化は、死
況、現在の住まい、震災時の自宅と原発の距離、等)、
亡届や住民票の移動、被災届の発行といった膨大な
職務ストレス要因(時間外労働時間、1カ月の休日数、
業務を被災自治体職員にもたらした。復興支援活動
においても、仮設住宅や災害復興住宅の整備、災害
繁忙感、睡眠時間、等。震災直後、3カ月後、1年後の
3時点の状態について記入を求めた)、労働安全衛生
廃棄物処理 2)、悪臭対策、害虫対策 3)、被災者に対す
要因(安全衛生活動の機能、安全衛生についての情
4)
など、彼らが果たす役割は
報提供、等)、惨事ストレス要因(PTSD と惨事ストレス
多岐にわたる。
それでは、震災直後から震災1年後にかけて、彼ら
の知識、犠牲者の遺体を扱う業務経験、等)、対人葛
藤要因(被災住民からの理不尽なクレーム、等)を採用
をとりまく災害関連業務の過酷さと、それに伴うメンタル
した。その他に、フェイスシートにおいて年齢、性別、
ヘルスの状態はどのように変化していったであろうか。
治療中の病気、等を質問した。
酒井(2011)が推奨するように、被災自治体職員の心
の動きを記録しておくことによって、将来的により効果
2-3.データ分析の方法
震災直後から1年後にかけての労働環境の変化を
的な災害時の人的支援やメンタルヘルス対策を実現
検証するため、震災直後~1カ月、震災1カ月~3カ月、
る「心のケア活動」の推進
5)
できる可能性がある 。
震災1年後の3時点を振り返って回答した職務ストレス
そこで本研究は、東日本大震災の1年後に全日本
自治団体労働組合と労働科学研究所が被災自治体
要因の得点を集計する。次に、ロジスティック回帰分析
(LRA)を実施し、調査地域、年齢、性別、治療中の病
職員に実施した「こころの健康」調査のデータ分析を
気、震災当時の住まいの5項目を補正した上でストレッ
行い、次の2点のエビデンスを示すことを目的とする:
サー得点とストレス得点(高ストレス者と低・中ストレス
①震災直後から1年後までの労働環境の変化、②震
災1年後のストレス反応に関連するストレッサー(居住
者のカテゴリ)の関連を示す。
環境要因、職務ストレス要因、労働安全衛生要因、惨
事ストレス要因、対人葛藤要因)。
3.結果と考察
3-1.震災直後から1年後までの労働環境の変化
震災直後~1カ月、震災1カ月~3カ月、震災1年後
の職務ストレス得点を集計した。その結果、時間外労
働時間、繁忙感、震災対策業務は震災直後から震災
2.方法
2-1.対象
本研究の対象者は東日本大震災で被災した岩手
後1年にかけて減少傾向にあり、休日数と睡眠時間は
県、宮城県、福島県の特に被害の大きかった沿岸部
増加傾向にあることを確かめた。その一方で、震災後1
の 34 自治体単組の全組合員である。全 13,085 名に郵
年を経過しても、震災前よりも時間外労働時間が増え
送法による質問票調査を実施し、6,318 名から質問票
た(または大幅に増えた)と回答した者は約 40%、休日
を回収した(回収率=48.3%)。有効データ数は 6,274
数が減った(または大幅に減った)と回答した者は約
名であった(回収率=47.9%)。
30%、震災前以上の繁忙感を訴えた者は約 45%、睡
2-2.質問票の構成
ストレス反応を評価するための質問票としてストレス
眠時間が震災前よりも減った(または大幅に減った)と
回答した者は約 30%に上った。これにより、震災から1
に関する自覚症状尺度を採用した。「高ストレス群」と
年を経過しても震災前以上の震災関連業務を抱え、
「低・中ストレス群」を分類するためのカットオフ基準は
休日数や睡眠時間の減少を訴えながら時間外労働に
「平成 22 年ストレスに関連する症状・不調として確認す
あたる自治体職員がかなりの割合で存在することを確
-11-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
5.結論
かめた。
3-2.震災1年後のストレス反応に関連するストレッサ
本研究は震災後1年時点で実施したメンタルヘルス
調査のデータ分析を通して以下の6点の結論を得た:
ー
居住環境要因とストレス反応の関連を検証した結果、
自宅の被害状況(OR=1.6,95%CI=1.1-2.4)、現在の住
①震災から1年が経過しているにもかかわらず、強いス
居 ( OR=1.6 , 95%CI=1.3-2.0 ) 、 自 宅 と 原 発 の 距 離
②仮住まいや自宅の半壊といった居住環境要因はスト
(OR=2.1,95%CI=1.5-2.8)という居住環境要因が被災
レス反応に関連する、②時間外労働時間の増加や休
自治体職員のストレス反応と関連を示した。職務ストレ
ス要因では、震災1年後の時間外労働時間(OR=4.6,
日・睡眠時間の減少などの職務ストレス要因はストレス
トレス反応を訴える被災自治体職員は確かに存在する、
95%CI=3.9-5.5)、休日数(OR=5.9,95%CI=4.8-7.4)、
反応に関連する、③労働安全衛生の機能不全や放射
線の防護対策といった労働安全衛生要因はストレス反
繁忙感(OR=4.5,95%CI=3.8-5.3)、睡眠時間(OR=8.5,
応に関連する、④遺体を扱う業務や親しい者との死別
95%CI=6.7-10.9 )、 震 災対 策 業務 ( OR=1.6 , 95%CI=
1.4-1.8 ) 、 業 務 支 援 の 必 要 性 ( OR=1.2 , 95%CI=
といった惨事ストレス要因はストレス反応に関連する、
1.1-1.5)がストレス反応と関連していた。労働安全衛生
要 因 で は 、 安 全 衛 生 活 動 の 機 能 不 全 ( OR=1.7 ,
95%CI=1.3-2.3)、安全衛生の情報提供不足(OR=1.6,
95%CI=1.2-2.0)、粉塵防護対策としてのマスク不着用
( OR=1.7 , 95%CI=1.3-2.4 ) 、 夏 場 の 熱 中 症 非 対 策
(OR=1.2,95%CI=1.1-1.4)、防災マニュアルの未整備
(OR=1.4,95%CI=1.1-1.8)、カウンセリング希望者への
対応不可(OR=2.2,95%CI=1.7-2.9)、放射線による健
康影響の不安(OR=1.7,95%CI=1.2-2.4)、放射線の情
報提供不足(OR=2.2,95%CI=1.8-2.7)、避難区域業
務における放射線の防護対策の未整備(OR=1.6,
95%CI=1.1-2.3)がストレス反応に関連していることを確
かめた。惨事ストレス要因では、犠牲者の遺体を扱う業
務経験(OR=2.1,95%CI=1.5-2.9)、同居している家族
や親戚との死別(OR=1.5,95%CI=1.0-2.2)、親しい友
人や知人との死別(OR=1.4,95%CI=1.2-1.5)、親しい
関係者との死別(OR=1.4,95%CI=1.2-1.5)がストレス
反応に関連していた。対人葛藤要因では、住民からの
理不尽なクレーム(OR=1.9,95%CI=1.7-2.2)、被災住
民からの暴言・暴力(OR=2.0,95%CI=1.7-2.3)、同僚
⑥住民からのクレームや暴言・暴力といった対人葛藤
要因はストレス反応に関連する。
【引用文献】
1)加幡 美音, 開沼 泰隆.東日本大震災における災
害救援活動に関する研究 日本経営工学会論文誌
2013;64 (3):480-7.
2)古澤 勉, 小澤 慶一, 菊池 憲夫.災害廃棄物処
理に係る悪臭対応等を含めた現地機関の取り組み
について.におい・か おり環境学会誌 2012;43
(5):327-34.
3)樋口 能士, 樋口 隆哉, 祐川 英基, 村上 栄造,
増田 淳二.東日本大震災における被災地の臭気
問題に関する現地調査.におい・かおり環境学会誌
2012;43(5):335-53.
4)泉水 宏臣, 甲斐 裕子, 柳澤 弘樹, 江川 賢一,
永松 俊哉.東日本大震災における運動を活用した
こころのケア活動.日本健康教育学会誌 2012;20
(2):111-8.
5)酒井 一博.被災地の安全と健康を守る(1)災害と向
き合う:東日本大震災と労働科学の立ち位置.労働
の科学 2011;66(10):5-9.
がストレス反応と関連を示した。
6)(独)労働安全衛生総合研究所.行政要請研究報告
書「ストレスに関連する症状・不調の確認項目の試
行的実施(平成 23 年度)」.(独)労働安全衛生総合
研究所;2011。
以上の結果から、睡眠時間と休日数の減少、繁忙
感の増加をはじめとする職務ストレス要因が震災1年
【謝辞】
東日本大震災からの復旧・復興活動に追われる中
後の被災自治体職員のメンタルヘルスに影響する可
で本質問票調査に協力くださった自治労組合員、組
能性があると推察される。
合役員の皆様と、いくども意見交換しながら調査を実り
4.研究の限界
本研究は横断研究であるため、ストレッサーとストレ
あるものにされた自治労東日本大震災対策本部の皆
ス反応との因果関係や震災直後から震災1年後までの
------------ << 連絡先 >> -----------山田泰行(Yasuyuki YAMADA, Ph. D.)
順天堂大学 スポーツ健康科学部 (同大学院) 助教
公益財団法人大原記念労働科学研究所 協力研究員
〒270-1695 千葉県印西市平賀学園台 1-1
電話 0476-98-1001(内線 354) FAX 0476-98-1011㈹
E-mail: [email protected]
が暴言・暴力を受けた経験(OR=1.3,95%CI= 1.1-1.5)
時系列的な心の変化を強く主張することはできない。
完全匿名化の調査であるため時系列研究の展開も不
可能である。しかし、今後も一定の周期で大規模な横
断研究を実施していくことによって、被災自治体職員
の心の状態を少しでも詳しく記録していく予定である。
-12-
様に心より感謝申し上げます。
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
緊急企画-3
原発事故の被災地で垣間見た生活者と学術との間の溝
○永幡 幸司
福島大学
1.はじめに
康の問題であるという形で社会に流布していくことにあ
東日本大震災において,著者の勤務校が所在する
る。先に述べた政府や県の発表は,それらのアドバイ
福島市は,地震そのものによる被害は相対的に小さか
ザーである,医学者の学術的な立場の見解をそのまま
った。しかし,地震により引き起こされた福島第一原子
社会に流布させたものであり,これらが健康の問題を
力発電所の事故に由来する放射性物質による汚染は
社会的に矮小化させることの先陣を切った。そして,そ
甚大であり,今なお,市内の除染作業が続いている。
れを端緒として勃発した,被曝による健康被害を異な
このような原発事故の被災地に,著者は,研究者で
って見積もるものの間の社会的論争は,福島で生活す
あると同時に,生活者として暮らしてきた。この地に暮
るものの間に亀裂を引き起こすまでに至ったが 5),そこ
らしている中で,生活者と学術との間の溝とでも言うべ
での議論は,件の発表に引きずられ,矮小化された健
きものが垣間見えてきた。本稿では,この溝が典型的
康という枠組みの中に留まるものであった。
な形で見られた原発事故による健康影響をめぐる言説
発事故による被曝によって,ガンなどに罹患するリスク
を事例とし,この溝についての小考を述べたい。
が上昇するか否かが,健康上の極めて重大な関心事
2.健康影響をめぐって
事故直後から政府や福島県が「直ちに健康に影響を
及ぼすものではない」という趣旨の発表を繰り返してき
たことが端的に示すように,原発事故の被災地では,
原発事故がもたらす健康への影響が生活者にとって
の重大な関心事であった。
まず,健康の定義について確認しておこう。WHO は
その憲章の中で「健康とは,完全な肉体的,精神的及
び社会的福祉(well-being)の状態であり,単に疾病又
は病弱の存在しないことではない」1)と定義している。こ
こで重要なことは,憲章は,国際法上,条約の一種で
あり,日本はこれを批准しているということだ。すなわち,
この健康の定義は,日本が公式に認めたものなのだ。
健康の定義がこのようなものであるのに対し,原発事
故の健康影響をめぐる,学術的な立場から発せられる
言説は,その影響に否定的な立場のもの 2)であれ,肯
定的な立場のもの
3)
であれ,主として,ガン(特に甲状
腺ガン)や白血病といった疾病の罹患率をめぐるもの
であり続けてきた。誤解がないよう,まず,述べておこう。
低線量被曝のリスクが科学的に不確定である現状に
おいて
4)
もちろん,福島で生活するものにとっても,今般の原
,今般の原発事故による被曝の影響として,
被災地でこれら個々の疾病の罹患率が上がるか否か
という問いが,医学という学術の枠組みの中で極めて
重要なものであろうことに異論はない。そして,そこで
の議論では,放射能の直接影響と間接影響は,厳密
に切り分けられなくてはならないだろう。
問題なのは,健康の問題が特定の病気になるか否
かという医学上の一問題に矮小化され,それこそが健
-13-
の 1 つであることは間違いない。それがゆえ,福島にお
いても,矮小化された枠組み内での健康をめぐる社会
的議論が行われ,その中で,意見の異なるものの間で
の対立が生じたのだ。
しかし,原発事故後の福島で生活者が直面した健康
の問題は,疾病の問題に限ったものではない。例えば,
子育て中の親子が強くストレスを感じていることは,
様々な研究 6)で明らかにされている(註)。ストレスを感じ
ている状況が精神的に良い状態(well-being)でないこ
とは,自明であろう。また,事故後かなりの間,子供た
ちが公園などの屋外で遊ぶ姿を見かけることは,ほと
んどなかった。被曝の影響を心配し,皆,不要不急の
外出を避けていたからである。そのような生活をするこ
とが,精神的に,そして,社会的に良い状態と言えるだ
ろうか 7)。さらには,同じ被災地に住むもの同士で,矮
小化された意味での健康をめぐる考えの違いから仲た
がいするような状況が,社会的に良い状況と言えるだ
ろうか。このように,原発事故直後から,福島の生活者
には,様々な形での原発事故の健康への影響があっ
たのだ。
さ らに重要な のは ,生活者にと っての健康と は ,
WHO の健康の定義からも読み取れるように,多面的
で総合的なものである,ということだ。それは個々の側
面から見た要素の単純な総和で表されるようなもので
はなく,それらの間の相互作用が存在する,複雑な構
造を持つものだ。また,原発事故に起因して何らかの
問題が発現すれば,それが放射能の直接影響であろ
うとなかろうと,生活者にとっては,原発事故による影
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
響であることに違いはない。そのため,原発事故による
註: 原発事故が引き起こしたストレスの問題について
健康影響をめぐって,医学由来の矮小化された枠組
も,学術の文脈での知見が,社会に対して発信されて
みの中での議論をいくら積み重ねたところで,生活者
きている。しかし,それらは,チェルノブイリの原発事故
の実感に見合った言説は,到底,生まれないであろ
の際,放射能の影響より精神的ストレスや長年親しん
う。
だ生活様式の破壊といった放射能以外の影響の方が
遥かに大きな損害を人々にもたらしたという報告と結び
3.溝を乗り越えるために
付けられること
ここまでで述べてきたように,原発事故の健康影響を
めぐっては,被災地で暮らすものに対して,彼ら/彼
女らの実感に見合った健康影響が語られてこなかった
という問題があった。その根底では,「1.多面的で総
合的な議論が必要であるところを,単一の側面での議
9)
で,矮小化された健康の問題の社会
的な議論の中で,健康影響に否定的な論陣の補強に
使われてしまうことが少なくない。残念ながら,この視点
からの議論が,原発事故による健康影響を巡る議論の
枠組みを広げるまでには至っていないのが現状だ。
論に始終していた」「2.医学という一分野内での議論
文献
に限定して用いられるべき検討の枠組みが,社会的議
1) World Health Organization (1946)
論の枠組みまで規定してしまった」という2つの問題が
Constitution of the World Health
組み合わさっているように見える。
Organization, Geneva: WHO. (邦訳:(1951)
自然科学であれ社会科学であれ,科学という学術的
営みは,各々の研究者が,その分野の専門家の間で
共有されるパラダイムに則って研究を進めることで成
8)
立する 。従って,学術の枠組み内での言説であれば,
官報 7337: 618.)
2) 例えば,福島県県民健康調査検討委員会 (2016)
県民健康調査における中間取りまとめ, 福島: 福
島県.
専門家が特定のパラダイムに即した言葉を発すること
3) 例えば,津田敏秀, 山本英二 (2013) 多発と因果
に,何も問題がない。しかし,学術的知見が,社会に
関係:原発事故と甲状腺がん発生の事例を用いて,
対して発せられる時にまで,その枠組み内での決め事
科学 83(5): 497-503.
に従った言葉で語られたのでは,その言葉は生活者ま
4) 例えば,後藤忍 (2013) みんなで学ぶ放射線副
読本, 東京: 合同出版.
で届かない。
生活者と学術の間にある溝を乗り越えるためには,
5) 例えば,永幡幸司 (2014) 原発事故後の福島大
学術に携わるものが,生活者が暮らす社会で通用する
学をめぐる覚書, 現代思想 42(14): 99-107.
言葉を語る必要がある。そして,学術的な知見は,社
6) 例えば,成元哲,牛島佳代,松谷満,阪口祐介
会的な問題の枠組みのなかで,どのような位置を占め
(2015) 終わらない被災の時間, 福岡:石風社.
るのか,丁寧に語られる必要がある。研究者がこのよう
7) 永幡幸司 (2014) 原発事故後の福島の音の世界
な適切な言葉を選び取って語った時,初めて,生活者
が私たちに問いかけてくること―福島サウンドスケ
と研究者との間でコミュニケーションが成立するのだ。
ープをめぐって―, 地方自治職員研修 47(3):
28-30.
4.結びにかえて
災害時の生活に関する種々の研究は,現在あるい
は将来の被災地における生活者の暮らしを改善する
ためになされるものであろう。この目的を実現するため
には,それらの研究の成果は,学術の文脈で語られる
8) トーマス・クーン(中山茂訳) (1971) 科学革命の
構造,東京: みすず書房.
9) 例えば,中川恵一 (2012) 放射線医が語る被ばく
と発がんの真実, 東京:KK ベストセラーズ.
だけでなく,生活者に向けた言葉としても語られる必要
がある。被災地に入る研究者には,このことを忘れない
でもらいたい。
謝辞
本論考は,JSPS 科研費 26350002 の成果の一部を含
------------ << 連絡先 >> -----------永幡幸司
福島大学共生システム理工学類
〒960-1296 福島市金谷川1
電話&FAX:024-548-5154
むものである。
E-mail: [email protected]
草稿段階でご議論いただいた福島大学の荒木田岳
氏,鹿児島女子短期大学の園田美保氏に謝意を表す。
-14-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
緊急企画-4
超急性期災害看護の学術的動向と働態学的課題
○庄司 直人、榎原 毅
名古屋市立大学大学院医学研究科環境労働衛生学分野
1.はじめに
は、その場に“居合わせた看護師”が、最も混乱する不
2015 年までの 10 年間の災害(自然災害、テロなどの
人的災害を含む)による死傷者数は約 210 万人にのぼ
1)
る 。我が国においても幾多の災害を経験し、平成 28
確実性の高い時期の看護を担うことである。もう一つは、
想定し難い諸問題が頻発する高い不確実性のなか考
え得る最善の看護を模索することである。
年 4 月に発災した熊本地震は、現在もその渦中にある
看護師は最大母数を持つ医療の担い手であり、災
と言えよう。こうした増加する災害への備えとして、災害
害医療においても中心的役割を果たす。予測不可能
看護の充実は急務である。
な災害への備えとして、看護師の臨機応変な対応力
(レジリエンス)を養うことは災害医療の充実に大きく寄
2.超急性期災害看護における学術的動向
災害看護のフェーズは、以下のように表される。①
Preparedness、②Response、③Recovery
2)
。近年の急
与する。被災地におけるより良い医療のために看護師
のレジリエンスを喫緊の課題として提案したい。
性期災害看護に関する研究を概観すると、①
文献
Preparedness にあたるマニュアルの整備や災害発生
1) WHO(2015) Sendai Framework for
後の対応計画の策定に関する研究が多数を占める。
Disaster Risk Reduction 2015-2030. Geneva:
超急性期災害看護に関する研究は、求められるコンピ
UNISDR.
2) WHO & ICN(2009) ICN Framework of
テンスの特定と、それを身につけるための教育カリキュ
ラムに関する研究がほとんどであり
3)
Disaster Nursing Competencies. Geneva:
、これらの一連の
ICN.
研究も災害に対する備えと位置づけられる。
超急性期において、②Response に焦点を当て、実
3) Loke A. & Fung O. (2014) Nurses’
際に何が起きて、どのような問題があるのか、それらに
Competencies in Disaster Nursing:
どう対処したのかなど具体的なことはほとんど明らかに
Implications for Curriculum Development
されておらず、災害看護の現場の経験は暗黙知となっ
and Public Health. Int. J. Environ. Res.
ていることが推察される。
Public Health, 11:3289-3303.
4) Veenema T., et al.(2016) Nurses as Leaders
3.働態学的課題
超急性期(発災から 48 時間まで)に焦点を当てると、
災害看護の専門チームよりも、むしろ非専門職の一般
の看護師が重要な役割を担うことが浮かび上がる。
災害看護においては専門職チームが重要とされ
4)
、
我が国でも DMAT など災害医療チームの充実が図ら
れる。しかし、東日本大震災時、ある DMAT チームは
発災直後に応援要請を受けたが、被災地での初動ま
でに 25 時間を要した 5)。原因は通信網及び交通インフ
ラの断絶による情報伝達と移動の困難と考えられる。さ
らに、熊本地震では 、全国知事会に対し て最初に
DMAT の派遣、支援を依頼したのが 4 月 19 日であり、
被災地に派遣されたのは発災から実に 5 日を経過した
4 月 20 日であった 6)。こちらは、関係機関の意思決定
手続きの複雑さや権限の所在に原因があったと考えら
れる。その現状を鑑みると、有事における権限の在り
方を検討することも必要なことの一つと言えよう。
この超急性期の看護現場を議論する際に重要なこと
-15-
in Disaster Preparedness and Resonse-A
Call to Action. Journal of Nursing
Scholarship 48(2):187-200.
5) 難波裕子(2015) 東日本大震災で救護活動と救
護員の養成-初動救護班看護師としての活動を
通して-.日本赤十字豊田看護大学紀要
10(1)51-61.
6) 熊本県災害対策本部会議(2016) 平成 28 年熊
本地震 第 30 回熊本県災害対策本部会議次第.
http://www.pref.kumamoto.jp/common/Uploa
dFileOutput.ashx?c_id=3&id=15459&sub_id
=1&flid=66696 (2016.05.12).
------------ << 連絡先 >> -----------庄司 直人
名古屋市立大学大学院医学研究科
名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1
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人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
1-1
高齢者の自転車乗車時におけるふらつき
○谷田貝一男
日本自転車普及協会 自転車文化センター
人同年代同性の50.0%、60歳代後半2人10.0%、7
1.はじめに
東京都内在住の60歳以上の高齢者を対象として仕
0歳代前半15人36.6%、70歳代後半14人51.9%、
事をあっせんする公益法人であるシルバー人材センタ
80歳代1人25.0%)、26インチ選択者62人64.6%
ーには、会員として82445人(男性54410人女性28
(60歳代前半2人50.0%、60歳代後半18人90.0%、
035人 2014年3月現在)が登録している。この会員
70歳代前半26人63.4%、70歳代後半13人48.1%、
が自転車を利用して仕事の勤務中及び勤務途上中に
80歳代3人75.0%)、女性は24インチ選択者12人75.
おいて発生した事故は2010年4月から2016年3月ま
0%(60歳代前半0人、60歳代後半3人60.0%、70
での6年間で881件ある。これを発生原因としてルー
歳代前半6人100.0%、70歳代後半3人75.0%、80
ル違反と運転操作ミス・バランス調整ミスに分けると、6
歳代0人)、26インチ選択者4人25.0%(60歳代前半
6.0%が運転操作ミス・バランス調整ミスである。
1人100.0%、60歳代後半2人40.0%、70歳代前半
演者はこれまでにこれらの事故データ、会員に対す
るアンケート並びに乗車体験の各結果に基づいて運
転能力の低下状況やルール違反による事故の特徴に
ついて発表した
1)2)3)
0人、70歳代後半1人25.0%、80歳代0人)である。
スタート時の踏み込むときのペダル位置
地面と水平な面から上70度前後48人42.9%、同上
。今回は高齢者であるシルバー
30度前後9人8.0%、地面とほぼ水平42人37.5%、
人材センター会員を対象として乗車体験を行う際に、
地面と水平な面から下30度前後2人1.8%、同下70
ビデオカメラを設置して乗車状況を録画観察して自転
度以上9人8.0%、同下90度で反対側の足を使って
車乗車時のふらつき状況とその原因を求めた。
地面を蹴りながらの乗車2人1.8%である(図1)。
2.調査方法
調査対象者
60歳以上のシルバー人材センター会員112人(男
性96人女性16人)に対して調査を行った。年代別男
女別構成は60歳代前半5人(男性4人女性1人)、60
歳代後半25人(男性20人女性5人)、70歳代前半47
人(男性41人女性6人)、70歳代後半31人(男性27
人女性4人)、80歳代4人(男性4人女性0人)である。
調査方法
用意した自転車は車輪径24インチ(重さ15㎏)と26
インチ(重さ20㎏)のシティサイクル型で、調査対象者
がいずれかを選択した。コースは長さ7m・幅30㎝の
直線コースで、室内の床にラインを引いて設定した。
時速7km(道路交通法で定められている歩道通行時
の徐行の解釈として一般的に言われている速度の上
図1 スタート時の踏み込むときのペダル位置
左上:地面と水平な面から上 70 度 右上:地面と水平
下:地面と水平な面から下 70 度以下
スタート時のふらつき
スタート時にふらつきがあったのは59人52.7%(60
歳代前半2人同年代の40.0%、60歳代後半7人28.
0%、70歳代前半25人53.2%、70歳代後半22人71.
限)で進行(調査対象者別速度の相違を減らすために
調査実施関係者が同速度で歩行し、これに並行しな
がら進行してもらった)した際の運転状況を、進行方向
先端に設置したビデオカメラの映像と、横からの目視
0%、80歳代3人75.0%)(男性49人同性の51.0%、
女性10人62.5%)である。
ふらつきがあった人の中で、7m先のゴールに到達
できなかった人は16人14.3%(スタート時にふらつき
で調査を行った。
があった人の27.1%)(60歳代前半0人、60歳代後半
3.結果
2人同年代の8.0%、70歳代前半6人12.8%、70歳
使用自転車の車輪径
代後半7人22.6%、80歳代1人25.0%)(男性12人
同性の12.5%、女性4人25.0%)である。
男性は24インチ選択者34人35.4%(60歳代前半2
-16-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
表1 通行時のふらつきによって発生した状況
進行時のふらつき
ふらつきはあるがコースを外れた
り、足が地面に着くことはなかっ
た
スタート時にふらつきがなかった53
人の中で、進行時にもふらつきがな
く真っすぐに進行できたのは15人1
スタート時
ふらつきなし
ふらつきあり
ふらつきなし
ふらつきあり
ふらつきなし
0人
2人
0人
0人
1人
0人
0.0%
40.0%
0.0%
0.0%
20.0%
0.0%
2人
4人
0人
4人
0人
1人
8.0%
16.0%
0.0%
16.0%
0.0%
4.0%
9人
11人
3人
2人
4人
5人
19.1%
23.4%
6.4%
4.3%
8.5%
10.6%
6人
3人
2人
6人
4人
0人
19.4%
9.7%
6.5%
19.4%
12.9%
0.0%
2人
0人
0人
0人
0人
0人
50.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
60歳代前半
代前半4人8.5%、70歳代後半0人、
80歳代1人25.0%)、進行時にふら
60歳代後半
つきがあったのは38人33.9%(60
歳代前半2人40.0%、60歳代後半
70歳代前半
9人36.0%、70歳代前半18人38.
3%、70歳代後半9人29.0%、80歳
70歳代後半
代0人)である。
スタート時にふらつきがあった人も
途中で足が地面に着いた
ふらつきあり
3.4%(60歳代前半1人同年代の20.
0%、60歳代後半9人36.0%、70歳
途中でコースを外れた
80歳代
含めた71人の、進行時のふらつきに
%は同年代の人数に対する割合
によって発生した状況の結果が表1
である。
最初にペダルを踏み込んだときにふらつきが発生し
ている人48人のうち4人はハンドルの持ち方による車体
の傾きが最初からあり、44人は踏み込みが弱く、この中
でペダルが水平もしくはそれより低い位置で踏み込ん
だ人は34人で同位置から踏み込んだ人の67.9%、高
い位置から踏み込んだ人は10人で同位置から踏み込
んだ人の17.5%である(表2)。また、反対側の足をペ
ダルに乗せるときにふらつきが発生した11人全員が高
い位置から踏み込み、踏み込みの弱さはない。
この結果としてふらつきが足をペダルに乗せて踏み
込んだときに発生した場合、反対側の足がペダルに乗
らなかった人全員を含めて24人、ふらつきが反対側の
図2 左はペダルを踏み込んだとき、右は反対側のペ
ダルに足を乗せたときにふらついたときのようす
足をペダルに乗せるときに発生した場合の2人(スター
ト時にふらつきがあった人の44.1%)が一度地面に足
が着き、この中の16人がゴールに到達できなかった。
4.考察
また、スタート時にふらつきがあった59人の使用自
スタート時のふらつき原因
転車の車輪径は24インチ30人、26インチ29人で差
スタート時にふらつきがあった59人は年代の上昇とと
はなかった。
もにその割合が高くなる。またゴールまで進めなかった
したがってペダル位置が低いだけでなく、高い位置
人はすべてスタート時にふらつきがあった人で、年代
にあっても最初の踏み込み力の弱さがスタート時のふ
の上昇とともにその割合も高くなる。
ふらつきが発生したことで確認できた状況は
表2 スタート時のペダル位置とふらつきの関係
片側の足をペダルに乗せて踏み込んだときに
地面と水 地面と水
地面と水 地面と水
ハンドルを
平な面か 平な面か 地面とほ 平な面か 平な面か
押しなが
ら上70度 ら上30度 ぼ水平 ら下30度 ら下70度
らの乗車
前後
前後
前後
以上
反対側の足がペダルに乗らなかった21人、反
対側の足をペダルに乗せることはできたがペ
ダルを回転させることができなかった3人・反対
側の足をペダルに乗せて回転させることができ
た35人である。ふらつきが発生する時点は片
側の足をペダルに乗せて踏み込んだとき48人
と、反対側の足をペダルに乗せたとき11人が
ある(図2)。
参加者全員の踏み込み
足のペダル位置
48人
9人
42人
2人
9人
2人
スタート時にふらつきが
あった人の踏み込み足の
ペダル位置
18人
3人
27人
2人
7人
2人
スタート時の踏み込みが
弱い人のペダル位置
9人
1人
25人
2人
7人
0人
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人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
らつきの発生とそれに伴う高い位置にあるペダルに足
中で、スタート時にふらついた人の割合は年代の上昇
を乗せられないことの主要因と考えられるので、最初の
とともに高くなるので、この点からも最初の足の踏み込
足の踏み込み時のペダルの適正位置と踏み込み力の
み時のペダルの適正位置と踏み込み力の指導がより
指導が必要である。
一層重要である。
進行時のふらつき原因
スタートしてからの進行状況を見ると、ゴールに到達
できなかった人を除いた96人の中でふらつきがあった
のは71人74.0%、このうち57人59.4%は進行中に
足の膝が横に開く状況が見られた。ふらつきがなく真
っすぐに進行できた25人26.0%に膝の開きはなく、
進行の途中で足が地面に着いたりコースを外れたりし
た32人全員に膝の開きが見られた。ふらつきながら途
5.まとめ
高齢者を対象とした自転車安全利用講習会は近年、
全国各地で警察関係、交通安全指導団体、自転車関
係団体等の協力で開催される機会が多くなっているが、
いずれもその内容は交通ルールの周知を主眼として
いる。この背景には高齢者の事故原因の認識にあると
考えられる。警察庁の自転車事故に関する統計による
と、2010年1月から2015年12月までの6年間で発生
中での足の地面着きやコース外れがなくゴールに達し
した転倒並びに工作物衝突11373件4)がすべて60歳
た39人のうち、膝の開きが見られたのが25人いた。す
なわち進行中の膝の開きがふらつきの誘引原因のひ
とつと考えられ、膝が横に開くと体が横に振れ、その足
と反対側の方向にハンドルが向いてコースを外れるこ
ともある(図3)。そのふらつきによるバランスを調整する
方法としてハンドルの使用のみが31人、上半身とハン
ドルを併用しての使用が8人であった。
進行時の膝の横への開きが起こる人は年代の上昇と
ともにその割合が高くなる.また男女別では男性64.
7%に対して女性18.2%に過ぎない。しかし、自転車
の車輪径による差はなかった。また、膝の横への開き
がないにも関わらずふらつきがある14人(60歳代後半
2人、70歳代前半8人、70歳代後半4人)の、運転操
作状況の解明はまだ行っていない。
これらの結果として、特に男性に対して意識しながら
進行時に膝が横に開かないようにしてペダルを回転さ
せる指導がふらつき解消のひとつとして必要であると
考えられる。
また、ふらつきがなく真っすぐに進行できた25人の
以上であったと仮定しても、同年代のすべての自転車
事故の6.5%に過ぎず、東京都内のシルバー人材セ
ンター会員の運転操作ミス・バランス調整ミスによる転
倒並びに工作物衝突等の6年間の事故割合66.0%と
は大きくかい離している。この違いはシルバー人材セ
ンター会員にはセンターへの事故報告義務が課せら
れているのに対して、会員外の高齢者の警察への報
告が極めて少ないことによると考えられる。しかし、高
齢者の自転車事故の少なくとも過半数は運転操作ミ
ス・バランス調整ミスによる事故と推定されることから、こ
れを防止する対策としての指導が必要であり、そのた
めに指導方法の体系化を確立することが求められる。
体系化のための今後の課題として、膝の横への開き
がないにも関わらずふらつく原因、ハンドルとサドルの
高さの比率によるふらつきへの影響、ふらつきによるバ
ランス調整をハンドルだけでなく上半身も使えるための
指導方法の解明がある。
文献
1) 谷田貝一男 (2014) 高齢者の自転車運転技能.
人類働態学会第49回全国大会
2) 谷田貝一男 (2015) 高齢者の加齢による自転車
事故. 人類働態学会第50回全国大会
3) 谷田貝一男 (2015) 高齢者の交通ルール違反
による自転車事故. 人類働態学会第44回東日本地
方会
4) 警察庁交通局 (2016) 平成27年における交通
事故の発生状況 11・29
図3 膝が横に開いたときのようすでその足と反対側
の方向にハンドルが向く
-18-
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〒141-0021 品川区上大崎 3-3-1
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人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
1-2
自転車歩行者道における標識デザインとその視認性について
今井 駿、○岡田 明
大阪市立大学大学院生活科学研究科
1.はじめに
の 3 種類ある.参加者は,イラストにあるべき標識
公共空間に設置される標識類は,ユニバーサルデザ
やピクトグラムの場所をイメージして描きこむ.ま
イン思想の浸透や国際化を背景に,文字の大きさや
た,参考資料として自歩道にあり得る複数の標識が
配色上の配慮,あるいは絵文字の採用等により,見や
描かれた用紙(図 2)が同時に配布された.
すく分かりやすいデザインに改善されつつある.しかし,
〇解析:描かれた標識やピクトグラムをタイプごとに分
こうした空間施設の大型化や複合化に伴い,設置され
る標識の数も増え,一つ一つのデザインは改善される
ものの,空間全体の中から目的の標識を見つけだす
困難さが増大している.
これに対して筆者らが実施した調査・実験1)2)では,
目的の標識の気づきやすさに影響を与える要因として
標識自体の視認性だけでなく,通行者が目的の標識
のデザインやあるべき場所として予め抱くイメージ(メン
タルモデル)との一致度が影響している可能性が示唆
された.
図1.開始イラスト
一方,こうした標識の気づきやすさについては公共
の自転車道についても近年課題となっている.特に,
自転車と歩行者が併進する自転車歩行者道(以下,
自歩道)における安全性を高めるためには両者のレー
ン遵守率の向上が重要であり,その有効策のひとつが
自転車走行路を示す標識のデザインにある.筆者らは
そこに着目し、京都市五条通に設置された自歩道を対
象とした調査を行ってきた3).その結果,レーンの分離
の気づきやすさは標識デザインに大きく影響されると
共に,そのデザインと設置位置に関して通行者が持つ
メンタルモデルにも左右されることが示唆された4).
そこで本報告では,これらの調査の続報として,自歩
図2.標識の参考資料
道における標識のメンタルモデルについて実験的に
類した.実際の自歩道で用いられていたものに基づき,
検討した.
頭上に設置された「標識型」,路面に描かれた「路面
2.方法
実空間での検討に先立ち,まず自歩道上の標識と
してイメージされるデザインとその設置場所を明
型」,腰高さに設置された「支柱型」とした.標識タイプは
さらに設置位置別に「自転車道端側」「自転車道中央」
「境界線上」「歩道中央」「歩道端側」に分類した.描か
らかにするための机上実験を試みた.
れた標識の内容についても「標識」「ピクトグラム」「ピク
○実験参加者:22-25 歳 大学生男女 23 名
トグラム+文字」「文字」「その他」と分類した.
○手順:参加者には,実験の目的や内容を説明し,
3.結果と考察
同意を得た.参加者には,自転車道のある歩道が描
かれたイラストが渡される.イラストは,自転車道
ここでは,開始イラストの結果のみ記載する.ま
が開始する地点(以下,開始イラスト(図 1)),自転
ず,
「路面型」のみ描いた参加者,「路面型」と「標
車道・歩道が分離されている地点(途中イラスト),
識型」など複数の標識タイプを組み合わせて描いた
自転車道側にバス停のある地点(バス停イラスト)
参加者など,標識タイプの組み合わせごとに参加者
-19-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
の位置にある枝分かれ標識は,メンタルモデ
ルには合致していないと推測される.
途中イラストでは,「路面型のみ」
「標識型
のみ」
「何も描かない」のみに分けられ,複数
の標識タイプを組み合わせる参加者はいな
かった.自転車道の途中では,あまり標識は
ないというイメージを持っていることがわ
かる.また,バス停部で,自転車に注意を促す
標識や横断歩道などを描きこんだ参加者は
半数以下であり,バス停部の標識イメージを
図3.標識デザインの組み合わせ別分類の割合
持つ人が少なく,設置には一層の配慮が必要
である.
以上の結果は先行調査4)と矛盾するもの
ではなく,自歩道における標識のデザインと
設置場所について通行者はある程度のメン
タルモデルを有していることが推測された.
次のステップとして,この結果に基づく再度
の実空間での検証も必要となる.また,今回
の実験参加者はすべて若年者であったこと
から,メンタルモデルが異なることも予想さ
れる高齢者や子供による影響も検討する必
要がある.これら一連の調査研究により,気
づきやすい標識の在り方についてさらに明
図4.標識タイプの設置位置別分類(開始イラスト)
らかにしていきたい.
文献
を分類した結果を図 3 に示す.
1) 山口理絵,岡田明,山下久仁子(2012)公共空間
次に標識タイプを設置位置別に分類した(図 4).
におけるサインのデザイン要素が気づきやすさに及
参加者を標識タイプの組み合わせ方ごとに分けた
ぼす影響,第 47 回人類働態学会全国大会,12.
結果,約 8 割の参加者が「路面型」の標識を描いて
2) 廣瀬有加,岡田明,山下久仁子(2014)自転車
いた.また,「路面型」を描いた参加者の半数以上が
標識の適切な設置位置とデザインに関する人間
歩道側路面にも標識を配置していた.また,内容に
工学的研究,
人類働態学会第 49 回全国大会抄録,
ついては,「ピクトグラム」か「ピクトグラム+文字」
38-39.
が使われており,割合はほぼ同数であった.このこ
3) 今井駿,岡田明(2015)京都市における自歩道
とから,自転車道標識として路面ピクトグラムをイ
整備に関する調査-歩行者行動をふまえて-,第
メージすることが多く,通行者はこれらが歩道・自
50 回人類働態学会全国大会発表抄録,53-54.
転車道両方に配置されているイメージを持つ傾向
4) 今井駿,岡田明(2015)京都市に於ける自歩道
があると思われる.また,「支柱型」のみを描いた参
整備と標識デザインに関する研究,平成 27 年度
加者はおらず,「支柱型」はその他の標識と組み合
日本人間工学会関西支部大会講演論文集,15-18.
わせ,補助的標識としてイメージされていると考え
られる.
標識タイプを設置場所別に分類した結果では,
「標識型」の殆どは自転車道端側であり,「路面型」
とは対照的に,歩道側に標識があるイメージをもつ
参加者が少ないことがわかる.また,内容では,「標
識」と「ピクトグラム+文字」が用いられ,割合はほ
ぼ同数であった.標識が自転車道と歩道の中央頭上
-20-
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人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
1-3
自転車用ヘルメットのファッション性に関する大学生の意識
○加藤麻樹 1)、荒木鳳大 1)、下平佳江 2)、御子柴慶治 3)
1)早稲田大学,
2)長野県短期大学, 3)ライトウェイプロダクツジャパン(株)
効果を挙げていると考えられる.一方で販売期間がま
抄録
自転車が関わる事故においてヘルメット着用は被害
拡大抑止に効果をもたらすが,特に髪型の乱れや暑さ,
携帯性などを理由にヘルメット着用が避けられる場合
が多く,自転車利用の多い諸外国でも着用が義務付
けられている場合は少ない.これは自転車の事故に対
するリスク評価が低いことと,ヘルメット着用によるファ
ッション性の低下が背景にあると考えられる.本研究で
だ短いことから,ファッション性の観点で利用者がどの
ように評価されているかは明らかになっていない.
そこで本研究では従来の形状をしたヘルメットとエア
バッグとを対象とした,自転車用ヘルメットのファッショ
ン性に関する定量的評価を行い,自転車利用者の頭
部保護とファッション性に対する意識を明らかにするこ
とを目的とした調査を行う.
は自転車利用時のヘルメット着用によるファッション性
の低下に着目し,自転車用ヘルメットに対する利用者
の印象について SD 法を用いた定量的評価を行った.
調査では一般的なヘルメットと共にファッション性を考
慮したエアバッグ式の自転車用ヘルメット Hövding を用
い,大学生 101 名を対象とした形容詞対評価を行った.
因子分析を行った結果,「新しさ」と「力動」の因子が抽
出された.
1.はじめに
自転車が関係する事故のうちそのほとんどは対自動
車事故であるため自転車側が一方的に傷害を受ける
場合が多い 1).2009〜2011 年の自転車にかかる交通
事故における死者数 1981 名のうち損傷部位の 64%は
頭部である 2)ことから,自転車利用時は事故時に備え
て頭部を保護することが望ましい.
図 1 自転車用エアバッグ“Hövding”(左)と
通常のヘルメット(右)3)
スキーやスノーボード等のスポーツ分野において従
来ヘルメットはレーサーや子どもの利用に限られたが,
その効果は高いものの 3),一般的に着用されるようにな
ったのは最近のことである.これはスキー場利用の安
全性に対する意識向上とともに,ヘルメットのデザイン
性やファッション性の向上があると考えられる.これに
対して自転車利用時のヘルメット着用は小中学校では
学校単位で義務化されるがその後着用が避けられる
傾向が高い.これはヘルメット着用に対して良い印象
を抱いていないことと,特に女性の間で髪の乱れの原
因となることが理由と考えられる.
これに対して,髪型等のファッションは維持しながら
2.方法
大学生 101 名(男性 48 名,女性 53 名,平均年齢
20.59 歳)を被験者とし,ヘルメットに対する SD 法によ
る評価を行う.すなわち被験者はヘルメットを着用した
自分の姿を鏡で見てから 7 件法で示された表 1 の形容
詞対 35 項目に対して回答を行う.このとき従来型のヘ
ルメットと上記の Hövding を無作為の順序で使用する.
回答に対して因子分析によりそれぞれの印象に掛かる
因子をファッション性にかかる因子として抽出する.
3.結果
頭部を保護する方法として,図 1 に示すエアバッグ式
図 2 に示す通り被験者の約 47%の被験者が自転車に
の頭部保護装置 Hövding が現在スウェーデンで開発さ
危険性を感じているが,普段ヘルメットを使用している
4)
れている .走行中に転倒トラブルを検出すると自動的
のは 1 名であった.米国在住時に義務付けられていた
に頸部に巻つけたエアバッグが膨らんで頭部と頸部を
ことが理由であった.表 2 に他の被験者がヘルメットを
保護する機能を有しており,髪の乱れの課題に対して
使用しない理由として回答された頻度を示す.
-21-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
表 1 評価に用いられた形容詞対
図 3 に各ヘルメットに対する評価の素点を示す.また
表 3 に因子分析で抽出された 2 因子のそれぞれで因
子負荷量の高い項目上位 5 つをそれぞれ示す.
表 3 抽出された因子負荷量が高い項目
第 1 因子
第 2 因子
嫌い/好き
0.756
賑やか/寂しい
0.675
不快/快い
0.733
陽気/陰気
0.668
閉鎖的/開放的
0.597
外交的/内向的
0.655
古臭い/新鮮な
0.548
元気な/疲れた
0.653
狭い/広い
0.534
積極的/消極的
0.646
4.考察
図 2 および表 2 から不所持,面倒が未着用の理由と
して頻度が高く,自転車利用の危険評価とヘルメット
着用との間の関連性は低いと考えられる.ヘルメットの
効果については周知されているが所持していない場
合が多い点で購買に至る利用者のモチベーションを
向上させる必要があると考えられる.例えば本研究で
着目するファッション性に関しても格好悪さが回答とし
て少なからず挙げられている点で,ファッション性向上
が着用を促す要因となると考えられる.
図 2 自転車の危険性に対する評価
また図 3 からは幾つかの項目で従来のヘルメットと
表 2 ヘルメットを使用しない理由と頻度
持っていない
25
他者が使わない
6
Hövding とで平均得点が対照的になる傾向を示してお
面倒臭い
格好悪い
不要
邪魔
られる.表 3 で抽出された因子負荷量より第 1 因子は
22
12
10
9
自転車に乗らない
危険を感じない
暑い
その他
り,新しい安全装具としての特徴が示されていると考え
3
3
2
各1
ヘルメットに対する評価性,第 2 因子は力動性を示し
ていると考えられる.直交軸ではの評価性に関する平
均得点はいずれも従来型よりも高いことから,新しさ等
が評価されて好まれる傾向を示した.また力動性につ
いても Hövding の方が高い得点を示す傾向にあること
から,自転車利用の活性化に関連付けて行くことが可
HOVDING
能と思われる.特に購買に至るプロセスの生成にかか
る利用者要因の抽出が必要と考えられる.
文献
1) 警察庁(2015)平成 27 年における交通事故の発生
状況
2) 交通事故総合分析センター(2012)交通事故分析レ
ポート
3) 福田修(2015) 冬季競技と外傷・障害 スキー・スノ
ーボード競技における頭部外傷,臨床スポーツ医
学,32(11), 1046-1052
4) 御子柴慶治 (2015) 自転車エアバッグ“ホーブディ
ング”,人間生活工学, 16(1), 44-47.
CONVENTIONAL HELMET
------------ << 連絡先 >> -----------加藤麻樹
早稲田大学人間科学学術院
359-1192 埼玉県所沢市三ヶ島 2-579-15
電話 04-2747-6754
E-mail: [email protected]
図 3 ヘルメットに関する質問ごとの素点平均
-22-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
1-4
自転車専用ドライブレコーダー記録データ分析から判った自転車走行の安全性
○堀野定雄 1)、浮穴浩二 2)
1) 神奈川大学工学研所, 2) UK コンサルタント
1.目的
タクシー装着ドライブレコーダーが記録した対自転車
事故・ニアミスの誘発要因を分析すると、全体の 95%
は自転車側に起因する(2006、図1)。そこで、自転車
利用者視点で「加害行為」発生背景要因を調査した。
2.方法
本学工学研究所内に学生と社会人で組織する「安
心安全快適自動車運転サークル」(2011-)自転車通
学生 5 名が数年間自転車専用ドライブレコーダー“リン
図1 自転車対タクシーの事故・ニアミス誘発要因
分布 (2006、堀野ら)
レコ”やウェアラブルカメラを装着、スポーツ車/シティ
車(図 2)で国道 1 号、環状 2 号や鎌倉街道など横浜
市内通学路を常時記録、データ分析し、走行安全性
を評価した。″リンレコ"(“チャリンコ”+“レコーダー”)
は設計アメリカ、製造台湾の自転車専用ドライブレコー
ダー:BVR-01 で、単 4 電池 2 個で連続 2 時間駆動、
図 2 左:スポーツ車(通称ロードバイク、高速・安
定)、右:シティ車(通称ママチャリ、低速・不安定)
映像/音声/速度/GPS 情報を同時記録する。ウェアラ
ブルカメラ(Panasonic 製、画素 1920×1080pixel)は補
助電源付で 2 時間、高画質記録できる(図 3)。
3.結果と考察
道交法第 17 条第 1 項では自転車を「軽車両」扱いで
車道左端走行を規定しているが、実際の走行場面で
は安全促進要因は殆ど見つからず、逆に多種多様な
安全阻害要因を発見、その具体的対応を巡ってスポ
図 3 左:リンレコ(BVR-01)、右:ウェアラブルカメラ
ーツ車とシティ車間の断絶が明らかになった。
道路管理面安全阻害要因
道路管理面では、路面荒れ、路肩排水溝蓋のデザ
インと設置、マンホール、車道に伸びる雑草などである。
一例は、反対車線がタクシー乗り場で狭い道の歩道側
を走行中、突然リンレコがずれる衝撃で、ハンドルを取
られ、バランスを崩し車道に飛出しそうになった。下車
して調べたら自転車から見えない窪み(深さ 3cm)を発
見した(図 4)。この様な車道不整備で怖い経験の累積
がシティ車を歩道に追いやった。北欧の様に自転車専
用レーンが少なく、設置しても駐車等で中々浸透しな
い道路環境が迷惑自転車背景要因と言える。自転車
は自動車と歩行者に挟まれ中途半端状況で判断ミス
図 4 リンレコで判る道路安全性。片側1車線通学路左端
15k/h 走行、窪み(3cm)で衝撃!(横浜市鶴見区 2012)
を誘発されている。合理的な居場所がない現場任せ
の安全管理は潜在的に危険で、事故死亡率も高い。
因は植栽である。観察の結果、危険度を A、B、C ラン
クに分類、出現頻度を距離間隔、時間間隔別に分析
安心安全な車線左端走行を阻害する重要危険要
-23-
した(図 8、表 1、表 2)。これから低危険度 C の距離・時
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
表1 道路別植栽危険遭遇平均距離間隔(m)
A 白線越え伸長 B 白線上伸長
C 路肩伸長
図 8 植栽危険度分類(環状 2、鎌倉街道、国 1)
表 2 道路別植栽危険遭遇平均時間間隔(sec)
(時間値は区間平均速度 20km/h で算出)
間の出現間隔が短くなっている、頻繁に植栽が妨害
していることが判る。季節変動もあるが冬季、枯草が
伸びて危険な箇所も多数観察された。
交通管理面安全阻害要因
更に重大・深刻な安全阻害要因は、車線左端走行
規定に不整合な交叉点での右折分岐である。スポー
至 西神奈川
ツ車とシティ車で決定的相違が観察された。
スポーツ車は Y 字路交叉点で右分岐する際、不本
意な左側誘導を避けるため意図的に車線変更して右
分岐する。後続車安全確認のため 12 回も後ろを振り
返り、流れに乗り加速する。ここで危険が発生する。
一方、シティ車は荷物積載や構造上加速は無理で上
至 川崎
流部分から右側歩道上走行となる(図 5)。
図
字路交叉点右分岐(国
1 横浜市神奈川区立町)
図54 Y構造的危険
Y 字路交差点右分岐(国道
1 号線
スポーツ車:右車線変更・分岐は構造的危険を内包
左折専用レーン付交叉点直進は後方接近する左
折追越車の無理な左折や横断歩道上歩行者を待つ
左折車の進路妨害を克服して直進を敢行する(図 6)。
三叉路交叉点での右分岐では、上述 Y 字路交叉
点右分岐と同じく車線変更して車の流れに乗り右分
岐する(図 7、A)。交通量が多くそれが不可能な時、
車線沿いに一旦左折して「軽車両」から「歩行者」に
変身、2 段階右折し、「歩行者」として横断した後「軽
図 6 左折専用レーン付交叉点直進(国 1、横浜市神奈
川区浦島丘) 潜在危険が内包
車両」に戻り、再合流、車線左端を走る(図 7、B)。
構造改善で安全性確立
道交法規定と走行実態の間に多種多様な不整合
点を発見し、道路管理と交通管理の狭間で自転車が
苦悩している姿が浮き彫りになった。日本が歩行者・
国1
自転車、又高齢者の死者比率が 50%を超える国際
的に見た異常さもここに由来する。対策は、車優先交
通体系を見直し、自転車走行ゾーンが曖昧な現行交
叉点安全阻害要因を道路使用者のニーズを反映し
県道
て、構造的に順次解消する。約 40 年前、同様に車優
先交通体系だったが問題解決マネジメント組織造りを
短期間で成功させたオランダは良い参考となる。
図 7 三叉路交叉点右折:保土ヶ谷橋(国 1・県道、横
浜市保土ヶ谷区) A:スポーツ車、右へ車線変更、
右折、B:シティ車、「軽車両」左折専用レーン沿いに
左端走行、2 段階右折、「歩行者」横断、再度合流
4.結論
自転車専用ドライブレコーダーデータ分析から自転
車の「加害行為」は自転車に不利に働く多様な安全
阻害要因、車優先道路環境、走行規制と判った。各道
路利用者が平等に参加する自主改善を軸にした仕組
み造りが喫緊課題である。
-24-
------------ << 連絡先 >> -----------堀野 定雄 (神奈川大学工学研究所)
〒221-8686 横浜市神奈川区六角橋 3-27-1
E-mail [email protected]
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
1-5
車いす装着ドライブレコーダーで促進する共生交通対話:鎌倉の事例
○堀野定雄、小木和孝、佐伯英敏、千 一、 有山 誠、西 和大
鎌倉バリアフリー研究会
1.目的
当研究会は 2003 年以来、国際観光都市、古都鎌倉
の、安心して行き来できる UD 街づくりで GIAP(官産学
民)アプローチで一定成果を挙げて来た。映像記録型
ドライブレコーダーが事故解析など事後”reactive”利
用に加えて、交通環境や事故予防措置を「見える化」
する歩行者(自転車、車いす)・自動車・道路間の「対
話促進」”proactive”ツールにもなるとの展望で、今回、
会員常用車いすに映像記録型ドライブレコーダーを装
着、通勤路と観光路の常時記録映像を分析、市内の
図 1 左:千会員追突ニアミス。白い車急接近、無
理に追越す(2015-6-10-09:26:34)。図 2 右:有山
会員鎌倉駅地下通路を足制動下り、後向き上る。
道路環境改善対話に活用、新たな成果を挙げた。
2.方法
車いすに装着した自転車専用映像記録型ドライブ
レコーダー”リンレコ”(米国開発、台湾製、ネット調達)は
小型で、単 4 電池 2 個電源で 2 時間駆動、映像/音声
/GPS 情報/速度を同時記録する。千会員電動車いす
(図 1)は通勤路今小路 1.3km(自宅-鎌倉市議会)、有
山会員足動車いす(図 2)は鎌倉駅周辺 1.7km(駅西口
-市役所前-六地蔵-下馬-駅入口-東口 JR 地下通路駅西口)を周回、会員が随伴し道の UD、使い易さを検
証した(図 3)。研究会主催「第 11 回鎌倉バリアフリーシ
ンポジウム 2015」参加者全員が記録映像を見てグルー
プ討議し、鎌倉の道の、良い点/改善点をまとめた。
3.結果と考察
自動車用ドライブレコーダー分析に対し、車いすで
は、視点高(車いす:地上 0.5m、自動車:同 1.2m)と速
度(車いす:3-5km/h、自動車:30-70km/h)が顕著に異
なり、見える内容も大きく変化した。映像分析で判った
図 3 千 会 員 通 勤 路 A(1.3km) と 有 山 会 員 観 光 路
B(1.7km、鎌倉駅西口-六地蔵-下馬-駅東口-駅
地下通路-駅西口)
表1 リンレコ分析主要項目と車いす利用者視点評価
No.
1
項
目
(1) JR 鎌倉駅地下通路は車いすに不適切:実測勾
3
配角度 7°は車いす用傾斜路勾配基準の 2 倍以上で
4
5
道幅、路面傾斜角度、カーブ変化度
路面マーク線数:0、1、2本
設置位置:車線の左側、右側
路面線の色:白色、黄色
マンホール蓋:今小路102 枚
消火栓用黄色枠蓋:同上7 枚
雨水排水用側溝蓋
路肩の段差
自力走行は危険で困難。有山会員は靴底の路面摩擦
6
交通量分布の粗密
制動で下り、反転バック姿勢で必死に上る(図 2)。
7
電柱:路肩(車道と歩道の境界線)設置
項目と評価を整理した(表 1)。特筆すべき結果は項目
2
No.1(1)、No.6(2)(3)と No.7(4)である。
(2)ニアミス(市役所前交叉点手前):交叉点横断の
評
価
多様であるが基本的に狭い。
組み合わせは多様である。
全て、路面と整合、滑らかで
車いすに優しい。
構造/デザインは車いすに優しい。
大半は無い。
狭い道で追越車/対向車/自転車/歩
行者など多様で緊張を強いられる。
対車いすバリアフリー(BF)度(A、B、C
ランク)→BF 度分布(表2)
際、車いす用待機空間がないので千会員は片側 1 車
正確に記録され、迅速処理出来たと確信する(図 1)。
線左端や歩道を通行出来ず止むを得ず反対側歩道
(3)鎌倉駅東口小町通り入口で立ち往生:多数の観光
上へ横断して移動する。その際、後方から青信号を目
客で激しく混雑、有山会員は数分間人の流れが絶え
指し急接近した乗用車が接触ニアミス。万一、事故に
るのを待つしか、術がなかった。
なったとしても、車種/プレートナンバー/時刻/行動が
-25-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
(4)電柱妨害度別分布(表 2):電柱による走行妨害負担
感は極めて大きい。全体で 31-58 本、その 19-29%は宅
地内(図 4)や隅切内設置(図 5)で BF 度 A 好事例、
42-71%は BF 度 B で車いすに優しい(図 6)。BF 度 C
は改善を急ぐ電柱で全体の 29-10%、合計 15 本で少な
い(図 7)。好事例が多く、電柱の路外設置、地下化を視
表 2 電柱のバリアフリー度分布 本数(比率)
BF度
道ルート
A
B
C
今小路1.3km(千宅ー市議会)
9(29%)
13(42%)
9(29%)
鎌倉駅周回(市役所前ー六地蔵
ー下馬-駅前)1.7km
11(19%)
41(71%)
6(10%)
B F ラ ン ク
A:車いすに大変優しい。宅地内設置で走行妨害なし。
B:車いすに優しい。側溝蓋より内側、隅切り内に設置。
C:車いす通行妨害。歩道/車道境界に、はみ出し設置。
野に水平展開の明るい展望が持てた。
グループ討議では、多様な交通者が狭い道を互譲
精神で安全担保する肯定的現状を共有出来た収穫は
大きい。通り易い歩道幅、障害物としての電柱と車いす
に対する心遣いの重要性に関心が集中した。交叉点
で歩行者向けに設置した安全ポールが車いすにとっ
て障害物となっている 2 面性も指摘され、真のバリア
フリー達成困難性も実感した。0~2 本に分断して布置
されている路面白線数やカラーの意味が整理され共
有されると交通共生が促進すると思われた。
鎌倉の道が具備する良い点/改善点を整理出来た
電柱5A
図4
電柱バリアフリー(BF )度 A の実例
のは今回調査の意義深い成果である (表 3)。
4.結論
鎌倉の道は狭くて難問も多いが工夫と努力によ
り車いす通行にやさしい要因が多数確認できた。
電
柱設置好事例が多数確認でき改善方向が定量的に
示された。道路属性や性能特徴の「見える化」ツー
ル”リンレコ”の低速記録映像の有効性が確認でき、
車いす利用者その他誰にも優しい共生交通を目指
す対話ツールとして、リンレコ活用に展望が開けた。
電柱12A
小さな隅切に立つ電柱は車椅子にや
さしい
図 5 電柱バリアフリー(BF)度 A の実例
参考文献
日本人間工学会編、堀野定雄、岡田明他、ユニバー
サルデザイン実践ガイドライン、共立出版(株)、2003
------------ << 連絡先 >> -----------堀野 定雄
神奈川大学 工学研究所
〒221-8686 横浜市神奈川区六角橋 3-27-1
電話 045-481-5661
E-mail [email protected]
表3
属性
電柱3 B
図 6 電柱バリアフリー(BF)度 B の実例
車いす利用から見た鎌倉の道の良い点/改善点
(グループ討論結果、N:25 人)
視 点
指 摘 内 容
側溝の整備が進んでいる、段差
通行路の確保
のない歩道の普及
良い点
電柱もある程度妨害にならない努力
電柱
が長年にわたり続けられている
人の心
譲り合いの精神、車の徐行
車いす・歩行者からみて安全に誘導
歩車分離の歩道幅 できる通行路の確保、車側からみた
安全配慮視点の抜本的転換
改善点
電柱設置の改善(妨害となる17%を
電柱・植栽の改善
5%へ)、植栽への住民配慮
譲り合いの拡がり、みんなで考え合う
心のバリアーフリー
交通安全文化のすすめ
-26-
図 7 電柱バリアフリー(BF)度 C の実例
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
1-6
車いすのティッピングレバー形状が
段差乗り上げ操作を行う介助者の筋活動に及ぼす影響
○能登裕子 1)、村木里志 2)
1) 九州大学大学院医学研究院保健学部門,
2) 九州大学大学院芸術工学研究院デザイン人間科学部門
測定項目
1.はじめに
車いすによる移動の補助への取り組みは重要な課
題である。段差は走行上大きな障害となり、10 ㎜高さ
以上の段差を通過する場合、乗車者への衝撃低減の
ため介助者が前輪を持ち上げ通過する必要がある1)。
前輪を持ち上げ段差へ乗り上げるには、ティッピングレ
バーの踏み込み操作が必要となり熟練を要するが、テ
ィッピングレバーの形状が介助者の身体的負担感や
踏み込み易さに及ぼす影響は検討されていない。
本研究は、ティッピングレバー(以下、レバーとする)
の形状と位置を条件とし、高齢女性介助者の主観評
価と段差乗り上げ操作時の筋活動から、介助者の身
体的負担の軽減と操作の容易性につながるレバー形
状および位置について検討した。
介助者の段差乗り上げ操作に伴う負担を評価するた
め、グリップの押し下げとレバーの踏み込みに関与す
る右上腕三頭筋、右上腕二頭筋、右前腕撓側屈曲筋、
右大腿直筋の表面筋電図を記録した。電極は、増幅
器内蔵型の筋電図用アクティブ電極(日本光電社製
ZB-150H)を用い、A/D 変換した。測定周波数は、
1020Hz とし、3 次元動作解析装置と同期させた。分析
は KisseiComtec 社製 KineAnalyzer を用い、帯域フィ
ルター(ハイカット 1020Hz、ローカット 10Hz)処理後、レ
バー踏み込み区間の 100ms 毎の RMS 値及び全波整
流した積分値(以下、IEMG)を得た。
介助者には、操作終了ごとに前輪・後輪の持ち上げ
やすさやレバーの踏み込みやすさ等について数値が
大きいほど「容易」とする 5 段階評価、操作時の各部位
の負担感について 0 を「感じない」、4 を「非常に感じる」
2.方法
とする 5 段階評価を行った。
被験者と車いすおよび段差条件
統計処理
介助者は 65 歳以上の女性 15 名(身長 152.6±5.3cm、
筋電図と主観評価は、形状を要因とした対応のある 1
体重 52.5±8.5kg、左右の握力平均値 218.8±38.3N)、
元配置分散分析、高さと長さを要因とした対応のある 2
乗車者は若年男性 2 名(身長 163.1±2.0cm、体重 60.3
元配置分散分析を行った。いずれも主効果が認めら
±0.4kg)とした。車いすは自走式標準型車いす(カワム
れた場合には Bonferroni 法による多重比較検定を行
ラサイクル KR-501‐VS)を用いた。段差は、木製通路
った。全ての統計解析には SPSS Version 17(IBM)を用
に高さ 90 ㎜の階段状段差を設置した。
い有意水準は 5%未満とした。
ティッピングレバー条件
車いすの右側レバー部をアタッチメント加工し、踏み
込み部の形状を円筒型(標準型)・円筒ゴム型・平坦ゴ
●:レバー位置条件
基準レバー
ム型の3条件とした(図1-a)。位置条件は、基準位置
(Y0,Z0)(車軸から水平方向 150mm,床面から垂直方向
145mm)を含む水平方向3パターン(Y0,Y-40,Y-80)お
よび垂直方向2パターン(Z0,Z-40)を組み合わせた6条
件を設定した(図1-b)。
150
円筒ゴム
40
基準位置(Y0,Z0) 145
(z)
(Y-80, Z-40)
(y)
平坦ゴム
車いす操作内容および実験手順
40 40
円筒(標準)
車いすの操作は、前輪はレバーを踏み前輪を浮か
せて乗り上げ、後輪はグリップを持ち後輪を浮かせな
がら段差に押し付けて乗り上げる方法とした。操作指
a)レバー形状
b)レバー位置
図1.ティッピングレバー条件
標を図示したマニュアルを用いた説明の後、練習時間
を設け習熟度を統制した。レバー条件の試行順序は、
順序効果を考慮して設定した。
-27-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
ANOVA
高さ:p < 0.05
長さ:n.s.
高さ×長さ:n.s.
ティッピングレバー形状と筋電図
介助者の主観評価は、前輪の持ち上げやすさ、レバ
ーの踏み込みやすさに形状の主効果が認められた。
150
150 150
多重比較検定の結果、いずれの項目も円筒ゴム型、
100
筋活動低減には至らない。しかし、踏み込み面の接触
面積が拡大することにより踏み込み操作が主観的に容
0
RMS、IEMG に形状の主効果は認められなかった。こ *
の結果から、踏み込み面の形状変化のみではグリップ
の押し下げとレバーの踏み込みに関与する上下肢の
50
易となると考える。
0
ティッピングレバー位置と筋電図
介助者の主観評価は、前輪の持ち上げやすさ、レバ
*
100
RMS Max(mV)
RMS Max(mV)
一方で、筋電図は、いずれの部位においても最大
RMS Max(mV)
平坦ゴム型は円筒型に比べ有意に高評価であった。
100
ANOVA
高さ:p < 0.01
長さ:p < 0.05
高さ×長さ:n.s.
150
Y0
Y-40
Y-80
*
50
50
IEMG(mVs)
3.結果と考察
Z0
Z-40
0
レバー位置(高さ)
*
*
Y0
Y-40
Y-80
100
50
0
Z0
Z-40
レバー位置(高さ)
Z0
Z-40 Z0
Z-40
図2.踏み込み中のレバー位置別筋電図(上腕三頭筋)
レバー位置(高さ)
レバー位置(高さ)
ーの踏み込みやすさに高さと長さの主効果が認められ
たが、交互作用は認められなかった。多重比較検定の
結果、前輪の持ち上げやすさ、レバーの踏み込みや
すさは、高さ Z0 条件、高さ Z-40 条件とも、Y-80 条件
は Y0 条件に比べ有意に高評価を示した。前輪の持ち
上げやすさの高さ Z0 条件のみ、Y-40 条件も Y0 条件
に比べ有意に高評価を示した。
筋電図は、上腕三頭筋は最大 RMS に長さの主効果、
IEMG に高さと長さの主効果が認められたが、交互作
用は認められなかった。多重比較検定の結果、最大
RMS、IEMG とも、高さ Z0 条件では、Y-80 条件は Y 条
件に比べ有意に低値を示した(図 2)。また、IEMG の高
さ Z0 条件では Y-40 条件も Y0 条件に比べ有意に低
値を示した。
上腕二頭筋は、最大 RMS に主効果は認められなか
った。IEMG は長さの主効果が認められ、交互作用は
認められなかった。多重比較検定の結果、IEMG は、
高さ Z0 条件、Z‐40 条件とも、Y-80 条件は Y0 条件に
比べ有意に低値を示し、高さ Z0 条件では Y-40 条件も
Y0 条件に比べ有意に低値を示した。
前腕撓側手根屈筋は、最大 RMS に高さと長さの主
レバー位置は、特に高さ Z0 条件において、上腕三
頭筋、上腕二頭筋、大腿直筋とも長さが Y0 条件よりも
介助者側に長くなるに伴い、操作の容易性が高まると
ともに IEMG が低減していることから、踏み込み位置が
介助者の体幹に近くなることにより踏み込みがスムー
ズに行え、筋負担が減少することが推察できる。レバ
ーの高さと長さの関係により踏み込み位置が変化する
ことが操作姿勢や力の発揮効率に影響を及ぼしてい
ると考える。一方で、前腕橈側手根屈筋では、Y0 条件
よりも介助者側に長くなるに伴い最大 RMS が低減して
いたことは、レバー長さがグリップの押し下げを行う前
腕の筋力発揮に影響を及ぼすものと考える。現行の標
準型に対して、レバーの形状および長さの改善により
介助者の操作負担の軽減とスムーズな段差乗り上げ
操作につながる可能性が示唆された。今後は介助者
のフォームと走行軌跡との関連について分析し、さら
に検証実験により検討する。
本研究の一部は、科研費(25862135)の助成を受け
行った。
効果が認められたが、交互作用は認められなかった。
文献
多重比較検定の結果、最大 RMS は、高さ Z0 条件にお
1) 能登裕子,村木里志 (2011) 乗り心地および介
いて、Y-80 条件、Y-40 条件とも Y0 条件に比べ有意に
助負担を考慮した凹凸段差車いす介助通過方法に関
低値を示した。IEMG に主効果は認められなかった。
する研究, 日本福祉のまちづくり学会誌,
大腿直筋は、最大 RMS に主効果は認められなかっ
た。IEMG は長さの主効果が認められ、交互作用は認
められなかった。多重比較検定の結果、IEMG は、高さ
Z0 条件において、Y-80 条件、Y-40 条件とも Y0 条件
に比べ有意に低値を示した。
13(2):14-25.
------------ << 連絡先 >> -----------能登裕子
九州大学大学院医学研究院保健学部門
福岡市東区馬出 3-1-1
電話 092-642-6718
E-mail [email protected]
-28-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
2-1
ダイバーシティの取組状況に関する組織規模別分析
○岩浅 巧 1)、 水野 基樹 2)
1) 順天堂大学大学院,
1.はじめに
2) 順天堂大学
進に必要なものを問う 15 項目を参考にして、重複や取
2016 年 4 月、女性活躍推進法と障害者差別解消法
りこぼしなく、両調査の質問内容を充足するための包
が相次いで本格施行された。わが国では、多様な人
括性に留意しながら、筆者が作成した。15 の質問項目
材が価値観を共有し、多様性を受容するダイバーシテ
に対して「そう思わない」、「どちらかというとそう思わな
ィの推進に向けた職場環境の整備が今まさに進みつ
い」、「どちらともいえない」、「どちらかというとそう思う」、
つある。
「そう思う」の 5 件法で回答を求め、それぞれ 1~5 点を
しかしながら、このダイバーシティの流れを、実際の
現場で職務に従事する従業員がどのように感じている
のだろうか。たとえば東洋経済新報社 (2014) による
調査のように、組織の代表者や広報・総務担当者に、
ダイバーシティの取組状況について調査をしているケ
ースは多数あるが、現場にその状況を問うている調査
は散見される程度である。現場レベルの従業員の実感
をより反映させたものにするべく、本研究では、実際に
今現在、企業・組織に従事する従業員を対象として、
現場におけるダイバーシティの推進状況について調
査を行った。
配点し、これらを単純加算してダイバーシティの取組
状況をスコア化した。
3.結果
3-1.ダイバーシティの取組状況(全体)
ダイバーシティの取組状況について、1,018 名全体
の結果として、もっとも取組が進んでいると回答された
ものは、「年齢や性別に関係なく、職場内のコミュニケ
ーションがスムーズに行われている」 (M = 3.36, SD =
0.98, range = 1-5)、次いで、「子育て後の復職や介護
休業後の復職がスムーズに行われている」 (M = 3.27,
SD = 1.06)であった。一方、もっとも取組状況が低かっ
2.方法
たものは「性的少数者(LGBT)の活躍推進の取組が現
2-1.調査方法および対象
場レベルで実践されている」 (M = 2.40, SD = 1.05) 、
本調査は 2015 年 10 月 27 日から 11 月 13 日の期
次いで、「外国人の活躍推進の取組が、現場レベルで
間に、筆者のネットワークを通じたスノーボールサンプ
実践されている」 (M = 2.65, SD = 1.20) であった。女
リング方式で募った参加者と、日本全国で約 180 万人
性・高齢者・中途採用者の活躍推進に関する項目は、
のモニターを有するインターネット調査会社のモニター
規模に関係なく総じてスコアが高い一方で、LGBT・障
を対象に、Web 調査を実施し、合計で 1,298 名から回
害者・外国人の活躍推進に関する項目は総じて低か
答を得た。データクリーニングを施した後、1018 名 (男
った。
性: 611 名、女性: 407 名、平均年齢 44.5 歳、SD =
3-2.ダイバーシティの取組状況(組織規模別)
8.42、最年長 59 歳、最年少 22 歳) を分析対象とした
ダイバーシティの取組状況について組織規模別に
(有効回答率 78.4%)。
集計したところ、「年齢や性別に関係なく、職場内のコ
2-2.調査内容
ミュニケーションがスムーズに行われている」と「仕事と
質問項目は、所属する企業・組織の従業員数を含
プライベートの調和 (ワークライフバランス)」に関する
むフェイスシートと、ダイバーシティの取組状況に関す
取組は、組織規模間におけるスコア差は少なかったも
る 15 項目について回答を求めた。
のの、それ以外の項目については、300 名未満の組織
ダイバーシティの取組状況に関する項目は、経済産
は他の組織規模よりも顕著にスコアが低かった。とくに、
業省による「平成 27 年度新・ダイバーシティ経営企業
「女性の活躍推進」、「社員の意識向上や理解促進の
100 選」の審査項目である (a) 計画策定・推進体制の
教育・研修」、「管理職の意識改革やスキルの改革」、
構築、(b) 人事制度改革・人材登用推進、(c) 勤務環
「障害者の活躍推進」の低さが目立った。また、300 人
境・体制整備、(d) 社員の意識改革・能力開発、 (e)
未満の組織では、すべての項目において全体的にス
組織風土・マネジメント変革の大項目からなる 15 項目
コアが低く、組織規模が小さいほど、ダイバーシティの
と、NPO 法人 GEWEL による「ビジネスパーソンの働く
取組状況は低かった (図)。
意識調査 2008 年」のなかで、職場のダイバーシティ推
-29-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
4.考察
「どちらともいえない」
を示すスコア”3”よりも低
い項目が 15 項目中 10
項目に上り、総じてダイ
バーシティの取組状況
を、現場レベルは低く認
識していた。とくに、法整
備が進む障害者に関す
る取組は低く認識されて
いた。また、女性活躍に
関する取組では 、女性
活躍推進法において努
力義務範囲に留まる 300
人未満の中小企業で低
かったことが明らかにな
った。
近年、ダイバーシティ
を深化するうえで重要な
概念として、インクルー
ジ ョ ン (inclusion) が 注
目されている。ダイバー
シティは 成員の多様性
に着目する視点を提供
したが、インクルージョン
図 ダイバーシティの取組状況
はダイバーシティの強み
主要参考文献
を活かして、多様性を受容していく組織風土や組織文
化を醸成することを意味する。しかし、今回の調査では
「管理職の意識改革と教育・人事評価の取組」および
「ワークライフバランスの取組と風土」の取組状況という
インクルージョンに繋がると考えられる項目のスコアが
低く、この点に関する取組も必要であろう。
より一層の多様な人材が協働する日本において、人
材の多様性を十分に活かした企業がより良いパフォー
マンスを上げることは何ら不思議なことではない。しか
しながら、性別や年代、国籍や人種など異質な人材が
交差する組織では、成員間のコンフリクトの原因となる
断層線 (フォルトライン) が存在することが明らかにさ
れている (岩浅 et al., 2015)。その断層線を乗り越え
るためには、単なる法的義務として、ダイバーシティに
取り組むのではなく、従業員個々の能力発揮と育成を
念頭にした企業姿勢と、偏見に対する教育などを通し、
組織が多様性をありのままに受容して理解し、尊重し
合う職場風土の醸成によって、現場レベルにおけるダ
イバーシティの推進が実感されるのではなかろうか。
-30-
岩浅巧, 庄司直人, 水野基樹 (2015). フォルトライン
の発生状況に関する実証的研究 人類働態学会第
44 回東日本地方会プログラム・抄録, 20-21.
経済産業省 (2015). 平成 27 年度 新・ダイバーシティ
経営企業 100 選 応募要領
<http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/div
ersity/kigyo100sen/entry/pdf/detail2016.pdf>
(December 26, 2015)
NPO 法人 GWELL (2009). ビジネスパーソンの働く意
識調査 2008 年
<http://www.gewel.org/event2009/bpworks-report
.pdf> (December 26, 2015)
東洋経済新報社編 (2014). CSR 企業総覧 2015 年版,
東京, 東洋経済新報社
------------ << 連絡先 >> -----------岩浅 巧
順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科
〒270-1695 千葉県印西市平賀学園台 1-1
電話:0476-98-1001 FAX:0476-98-1011
E-mail: [email protected]
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
2-2
参加型職場環境改善におけるトレーナー短期研修の役割
○小木和孝、佐野友美
公益財団法人大原記念労働科学研究所
要約
・自治体職員の職場ドック推進担当者の研修
多業種に広まっている参加型職場環境改善で改善
・中小企業・医療介護・船員の参加型推進者の研修
計画の作成と期限内の実施を支えているトレーナー研
・トレーナー養成の一環としての参加型手法の研修
修手順を比較して、実効ある職場活動に結びつく短期
・日本で行われている海外トレーナーの短期研修
研修の役割を検討した。取り上げた中小企業、医療介
護、自治体職場で普及している数時間から数日にわ
たる短期研修は、良い実践事例をもとに実施可能な改
善策を提案し、職場ごとに期限内に実施する手順をそ
のまま経験する方式で共通していた。改善策の範囲は、
人間工学対策に力点をおく場合と、ストレス対策に力
点をおく場合とでやや異なったが、多領域の低コスト
策を同時に計画する手順は同様だった。とりわけ、良
い実践例をリストにした提案式ツールを用い多域改善
策に合意するグループワークを容易化する手順の研
修が実効ある改善の推進に効果的だと認められた。
1.ねらい
職場環境改善を目的にした参加型改善活動は、ア
ジア地域の中小企業・農業における普及を端緒として、
国内外とも多業種で広く取り組まれ、実効ある改善活
動を支えるトレーナーの役割が注目されている。最近
は、中小企業、医療介護、自治体などで、作業負担、
3.結果と考察
取り上げた参加型改善活動では、対象職場ですで
にある実践例を参考に改善策を実施していく点が共通
していた。トレーナー研修では、この改善策提案をグ
ループ討議で話し合う手順を短期間で把握するので、
表 1 に示すように短期化するようになっていた。
表1.参加型職場環境改善トレーナー短期研修の現
状
トレーナー
対象の職域
職場改善の期間
研修期間
自 治 体 職 場 ド ッ ク 2.5〜
各年度の5―12月
(高知,北海道,京都) 3時間
中 小 企 業 ・ 医 療 介 2時間〜
数日〜数カ月
護・船員
1/2日
1.5〜
各種養成コース
専門活動の一部
4時間
海外からの来日者 2時間〜 各自作成のアクシ
短期研修
1/2日
ョンプランによる
過重労働、メンタルヘルスに視野を広げた問題解決型
これらの参加型職場環境改善トレーナーが果たす役
「職場ドック活動」として応用が進んでいる。いずれの
場合も個別職場内の参加型推進者としてのトレーナー
割は、図 1 のように集約することができる。
研修を 2〜3 時間までの短期で行う動きが注目される。
実際の職場環境改善の参加型計画・実施のすすめ
方は、さまざまな期間にわたる。短時間の職場検討会
をもとに多領域で職場環境改善を行う「職場ドック」が
普及し、職場ごとにその参加型改善手順を推進するト
レーナー(推進担当者、ファシリテーター)の研修も短
期で行って成果を挙げている。このようにトレーナー研
参加型ステップ1
良い実践例で可能策
を学ぶ
多領域のよい実践例を提示
ステップ2
良い 実践と 改善策 を
提案
修を短期で行えるようにするキーポイントをまとめた。
トレーナーによるサポートの
内容
実効ある改善策選定を支援
ステップ3
2.方法
優先改善策を実施し
研修事業として毎年参画して行っているトレーナー
短期研修を取り上げ、その有効性を検証しながら有効
報告
期限内実施と報告を促進
図1.参加型改善各ステップでトレーナーが行う役割
な研修を容易化するキーポイントを抽出した。研修手
順として、職場の良い点・改善点点検に基づく新たな
この改善提案手順を一巡する短期研修は、図 2 に示
改善策の提案、職場単位の改善計画作成と実施が共
すように、個別職場で行う参加型の職場検討会と同様
通しており、効果的に短期研修する手法に注目した。
の内容を核にしていた。
参画した次のトレーナー短期研修を取り上げた。
-31-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
トレーナー研修
チェックリスト適用
有効だと確かめられている。計画と報告用の簡易な書
式も、トレーナーを含めた研修に有効だと認められる。
個別職場の職場検討会
このように現地条件に即した参加型手順の容易化が、
個人別のチェックリスト適用
トレーナー短期研修を可能にし、多業種に普及させた
良い点改善点討議
とみることができる。この関係を表 3 に示した。
良い点改善点の討議
計画実施の手順
容易化されていた。職場活動を容易化する手順の採
表3.参加型手順の容易化とトレーナー短期研修の
関係
ポジティブな取り組 -良好実践例で、実施可能な目標
をねらう
み
-問題指摘でなく、すぐの小さい解
決策を討議
幅広い改善視点 -健康なワークライフの多領域を
カバー
-低コスト策中心に提案から報告
までのわかりやすい手順
-参加者と同じツールを使用
成果の見える化
-すぐの合意形成による成果の
共有を促進
用により、短期に習得する研修が可能となっていた。
4.まとめ
グループ報告と計画案
図2.トレーナー研修と職場検討会に共通した手順
このように共通手順をとることにより、トレーナー研修
を的確に短時間内に行って実際に有効かを検証した。
この短時間研修では、写真投票やアクションチェックリ
スト応用により、効果的な職場検討会をどう行うかを体
験するので、短期研修でも十分役立っていた。理解し
やすいように改善策の提案、その計画と報告の書式が
特に重要な点は、職場ごとに改善策を提案していくと
参加型職場環境改善の普及に伴い、通常ボランティ
きの改善範囲を習得しておくことである。このためには、
アとして活動するトレーナーの短期研修が行われるよう
職場環境改善に実効のある多領域にわたる低コスト改
になったのは、実際の参加型活動で改善策を提案・実
善策を研修しておく必要がある。この改善策の範囲は、
施する手順を容易化してきたからだと認められる。トレ
作業負担に力点をおく人間工学対策を主にする場合
ーナーの短期研修が有効である根拠として、(1)良好
と、メンタルヘルスに役立つ幅広いストレス対策を目標
実践を目標に多領域に目配りして実施可能解決策を
にする場合とでやや異なっていた。表 2 に示すように、
選んで合意するポジティブな取り組み方と、(2)提案し
現場作業に直接かかわる低コスト策が中心で、例示し
フォローしやすい共通ツールの使用による成果共有過
やすく、応用が容易であり、その範囲は重なっていた。
程の見える化、の 2 つの軸を挙げることができる。
種々な業種で改善実例と多領域提案用ツールによ
表2.参加型職場環境改善における多域低コスト策
の範囲
って触発されるポジティブな視点が役立っている。これ
らツールの並行利用が参加型プロセスを見える化し、
人間工学応用中心では メンタルヘルス向上では
チームワー コミュニケー ミーティング
ション
情報共有
作業組織
ク
自律作業 勤務時間 残業・休憩休暇
トレーナー短期研修を実効化していると確かめられる。
文献
1) 小木和孝 (2010) 産業安全保健領域の動向と良
好実践. 労働科学 86:1-8.
保管と運搬 少ない負担
動線見直し
仕事しやすさ 作業姿勢
ワークステ
姿勢・判別
ミス防止
ーション
作業場環境 有害源隔離
快適環境
作業場環境
休養施設
厚生施設 衛生・休養
安全・緊急 機械防護 相互支援 支援と交流
時
緊急対策 安心な体制 助言・緊急時
2)
これらの多領域について実施可能な改善策を提案し
ていくための個人・集団ツールとして、改善事例、低コ
スト策を一覧表にした「アクションチェックリスト」が用い
られていた。職場ドック活動でも、多領域低コスト改善
策からなる改善チェックシートを活用し、職場の現状検
討と改善策提案に役立っていた。これら提案用ツール
Kogi, K, Yoshikawa, T, Kawakami, T, Lee, MS,
Yoshikawa, E (2016) Low-cost improvements for
reducing multifaceted work-related risks and
preventing stress at work. J. Ergonomics, 6:147.
doi.erg/10.4172/2165-7556.1000147.
3) 吉川徹、小木和孝編 (2015) メンタルヘルスに役
立つ職場ドック、東京:労働科学研究所.
------------ << 連絡先 >> -----------小木和孝
公益財団法人大原記念労働科学研究所
東京都渋谷区千駄ヶ谷 1-1-12 桜美林大学3F
電話 03-6447-1330
E-mail [email protected]
は、一連の介入研究により、職場内合意形成と実施に
-32-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
2-3
スマートフォン内蔵センサーによるライフログデータの信頼性と応用可能性
○榎原 毅 1)、秋山知大 2)、松河剛司 3)、山田泰行 4)、庄司直人 1)、山田翔太 1)
1)名古屋市立大学大学院医学研究科, 2)名古屋市立大学医学部,
4)順天堂大学スポーツ健康科学部
3)愛知工業大学情報科学部,
ションの開発を進めている.
1.はじめに
近年の情報通信技術による急速な情報化により,ク
ラウドワーク型テレワーク従事者(エンジニアやデザイ
ナーなど専門技能者個人がネット上で仕事を受注し,
自由な場所・時間で仕事をするフリーランス)が増えて
いる.また,私物の携帯端末を業務で利用する BYOD
本報告では,同アプリケーションにより計測される各
種スマートフォン内蔵センサーの信頼性について概説
し,産業保健人間工学・産業疫学研究としての応用可
能性について展望を述べる.
2.学術用ライフログ測定アプリケーションの概要
(Bring Your Own Device)の導入は営業系社員などを
市場普及率 40%を超えるスマートフォンに標準的に
中心に約 4 割の企業で進み,スマートフォン・タブレット
内蔵されている各種センサー情報と利用ログデータ,
などの携帯端末利用は労働・生活場面の境界無く浸
また各種質問票項目の回答データを一元的に継時記
透している.このような技術革新は,社会における働き
録 で き る 学 術 研 究 用 ラ イ フ ロ グ ア プ リ ケ ーシ ョ ン :
方を変え,オフィス内労働という時空間的制約を開放
Motion Logger ver.1.4 を開発中である(図1).携帯端
することで,ワークライフバランス重視による柔軟な働き
末 OS の国内シェアが 63%と利用者が多く,ソースコー
方の実現など,我々に多くの恩恵をもたらしている.
ドの技術仕様が公開されている Android 端末(OS 4.4
一方で,労働・生活のボーダーレス化による,新た
以降, sampling rate:500ms, GPS:0.5-60sec)をプラッ
な健康リスクも懸念されている.例えば,ある系統レビ
トフォームとして,加速度センサー(歩行・シェイク動作
1)
ュー によれば,近年,頸肩部筋骨格系症状(MSD;
などの検知),磁気センサ(端末の角度を検出),照度セ
首・肩の痛みなど)の各国の有病率は 30-50%と急増し
ンサー (環境照度を検知),GPS 情報,歩数カウンタ情
ており,携帯端末利用の普及との関連性が示唆されて
報やアプリケーション情報などのパラメータについて,
いる.このような,携帯端末利用の影響を明らかにする
バックグラウンドにて 1 週間連続測定を行うことがで
ためには,その実態を明らかにする必要があるが,従
来の研究手法では限界がある.携帯端末利用は,電
車内,喫茶店,歩行中などでのいわゆる「すきま時間」
を活用した数十秒~数分に細分化された断続利用が
多いが,分割された経過時間・長さと主観的感覚は整
合しないことは時間記憶研究からも知られており,既存
の疫学研究手法(質問票等の主観報告)で累積利用
時間や頻度は捉えにくい.また,移動中や生活場面に
及ぶ利用文脈を捉えることは,従来のビデオ撮影など
によるタスク分析を応用することも困難となる.また,近
年では人の労働・生活文脈における個人要因・物理要
因・心理社会要因など多面的なリスク要因と,健康・生
産性の両アウトカムとの関係性を包括的に捉えていく
ホリスティック・アプローチが求められている 2).
図 1 ライフログアプリケーションの画面サンプル
きるパッケージとなっている.
このように,技術革新がもたらす急激な労働形態の
変化による健康影響の大きさを包括的に評価し,恩恵
と許容可能なリスクレベルの適正化をはかり,深刻な社
会問題となる前に予防策を社会へ発信していくことは
労働安全衛生上急務である.我々は,このようなホリス
ティック・アプローチによる新しい研究手法として,スマ
ートフォンを活用した学術用ライフログ測定アプリケー
-33-
3.スマートフォン内蔵センサーの信頼性検証
加速度センサーによる歩数の推定については,手
でスマートフォンを持ちながら歩行する握持条件,胸
ポケット保持条件,ズボンポケット保持条件において,
それぞれ通常歩行,競歩(早足),階段昇降の利用シ
ーンについて 100 歩歩行テスト( 100-step walking
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
test)を実施した.各条件下における級内・級間変動係
用に伴う精度情報はほとんど見当たらない.各環境下
数は 5%未満,測定誤差も 5%未満,系統誤差も認めら
において測定されるセンサーの特徴(精度・系統誤差
れなかった.一方,誤検出(偽陽性)については,電
など)を把握することで,学術研究への応用可能な測
車・クルマなどでの移動中の誤作動を検証した結果,
定パッケージとして開発・公開していく予定である.
ズボンポケットに保持すると誤検出(0.42%)が認められ
このような,スマートフォン内蔵センサーを用いたラ
たが,胸ポケットでは誤検出はほとんど認められなかっ
イフログデータを利用したビッグデータ解析は,新たな
た.歩数情報を利用し,身体活動性の強度判定(通常
産業疫学調査・産業人間工学研究の手法となりうる可
歩行・早足・ランニングの 3 区分)の弁別性を ROC 曲
能性を秘めている.
線を用いて評価した結果,「通常歩行」と「早足」の弁
第一に,主観的評価(質問票)+行動情報・物理環
別力は感度:90.9%, 特異度:95.5%, 「早足」と「ランニ
境情報の融合による,分析粒度の向上が期待される.
ング」の弁別力は感度:93.2%, 特異度:95.5%と高い信
多くの人が所有している汎用の携帯端末媒体を用いる
頼性を示した(図 2).
ことにより,安価に時系列データを測定可能であり,疫
学研究への応用可能性は高い.第二に,近年注目さ
れる研究課題である身体活動性と各種健康アウトカム
との関連性を明らかにするために,活動性の経時デー
タを取得できるのは大きな利点となる.第三に,実態把
握が困難であった情報端末の長期利用に伴う首・肩の
筋骨格系症状の解明に際し,実生活における利用実
態を定量的に測定する手段を提供できる点が挙げら
れる.第四に,交絡要因としての物理環境情報(天候・
気圧・照度など)を活用し,健康影響を統計的に調整
可能な点である.労働・生活場面の情報を包括的かつ
連続長期間収集できる新技術として,疫学研究への応
用が期待されるであろう. なお,本研究は JSPS 科研
費 2656078 の助成を受けたものである.
文献
1) Hogg-Johnson S. et al (2008) The Burden
図2
and Determinants of Neck Pain in the
ROC 曲線による身体活動性の強度判定(通常
General Population - Results of the Bone and
歩行・早足・ランニングの 3 区分)の弁別性(一例)
Joint Decade 2000–2010 Task Force on Neck
また屋内・屋外の様々な条件下(天候・気候・場所
(市街地・地下街・車内)・時間帯など)における照度セ
ンサー,気圧センサー情報のデータをサンプリング(延
べ 720 分)した結果,複数のセンサー情報・タイムコー
ドを用いた判別アルゴリズムにより,端末利用時の視環
境情報および天候の物理環境情報の弁別が可能とな
Pain and Its Associated Disorders, Eur Spine
J., 17:39–51.
2) 榎原 毅:産業人間工学の次の 10 年を考える-
Evidence Based Ergonomics in
Practices(EBEPs)の展開,産業保健人間工学研
究, 15(suppl), 30-35, 2013
ることを確かめた.その他,地磁気センサー情報を利
用し,端末の保持角度(矢状面)の推定も可能であるこ
とが確認された.
4.まとめにかえて:産業疫学研究への応用可能性
多様な利用環境下における,スマートフォン内蔵セ
ンサーを用いたライフログデータ測定の信頼性検証を
現在重ねている.各端末に内蔵されているセンサーの
技術仕様は OS 側で規定されているが,実環境での利
------------ << 連絡先 >> -----------榎原 毅
名古屋市立大学大学院医学研究科
名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1
電話 052-853-8171
E-mail [email protected]
-34-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
2-4
労働形態の多様化に伴う非特定作業空間における労働安全衛生上の課題
○松田文子 1)、池上徹 1)、庄司直人 2)、榎原毅 2)
1)公益財団法人大原記念労働科学研究所,
1.はじめに
2)名古屋市立大学大学院医学研究科
自由な場所・時間で仕事をするフリーランスのことを指
平成 27 年度「テレワーク人口実態調査」(国土交通
省)によると、テレワーク人口は、2012 年まで増加傾向
す。内容はデータ入力・分析から、デザイン、設計など
多岐に渡る。
にあり、ピーク時は 930 万人に上ったものの、その後、
テレワークが働く場所に着目した概念であるのに対
減少傾向に転じ、2014 年の時点では 550 万人と推測
し、クラウドソーシングは主に人材の調達方法に着目し
され、就業人口の 1 割近くを占めるに留まっている。ま
た概念である。クラウドワーカーは、自営型テレワーカ
た、クラウドソーシングサービスの規模は増加傾向にあ
ーであることが多いため、クラウドソーシングサービスが
り、今後、クラウドワーカーが増えることが予想される。
拡大傾向にあることを踏まえると、今後、自営型テレワ
ハード面をみてみると、タブレットの出荷台数がノー
ーカーが増加すると考えられる。
ト PC のそれに年々、迫っており、いつ逆転してもおか
クラウドワーカーやテレワーカーの作業場所につい
しくない状況にあり、ワーカーのタブレットの使用率が
て主なものを上げ、その場所における作業環境(特に
増加することが予想される。
VDT 作業に関わる部分)について、労働安全衛生上
テレワークやクラウドワークは、人材を有効活用でき
の課題を検討し、表1に示した。
る、経費を節約できる、どこでも自分の好きな場所で、
これまで、賃金を軸とした時間管理、能力評価等の
好きな時間に仕事ができる、育児や介護と両立できる、
問題は指摘されてきたが、作業環境・健康管理の点に
通勤の負担が減らせる、機動性が高いなどの利点が
おいては、自宅では裁量の多い分、本人任せになりが
挙げられてきた。反面、ワーカーの労務管理が難しい、
ちであり、その他の場所では、必ずしも作業に適して
人事評価がしにくい、対面でないためコミュニケーショ
いない状況であることが推察される。
ンがとりにくい、セキュリティが心配、クオリティを重視す
労務管理の中でも、労働時間の管理は、インターネ
るあまり長時間勤務になりがち、私用との切り替えが難
ット環境下において業務を行うことが多くなっていること
しい、賃金が安いなどの課題が指摘されてきた。
から、通信を介して管理することが比較的容易になっ
本研究では、労働形態の多様化に伴い、従来のよう
ている。しかし、作業環境の整備や健康管理の実践面
な単一の事業所に集合することなく、多様な場所で仕
においては、取り組みが遅れていると考えられる。また、
事をするワーカーにとって、労働安全衛生上の配慮は
自営者の場合は特に、労働安全衛生費用が賃金報酬
どのようにあるべきかを検討した。
に盛り込まれていないことも多く、万が一の場合に労災
適用が困難な場合も多い。
2.方法
まず、本稿で使用する用語について整理した。次に、
テレワーカーやクラウドワーカーの主な作業場所別に、
4.おわりに
在宅勤務者やモバイルワーカ―、自営者にとって、
その作業環境における労働安全衛生上の課題を整理
労働安全衛生に関する情報が届きにくいことから、問
した。
題意識が持ちにくい状況であることが推測される。とり
わけ、クラウドワーカーの増加により、この傾向はさらに
3.結果と考察
「テレワーク」とは、その雇用形態から、雇用型(企業
に勤務する被雇用者が行うテレワーク)と自営型(個人
事業者や小規模事業者等が行うテレワーク)に分けら
れる。雇用型には、在宅勤務(自宅が仕事場)、モバイ
強まると考えられる。自身の作業環境を容易に評価・
改善する仕組みを整え、作業管理や健康管理に関心
をもってもらい、例えば、作業環境を簡便に測定する
方法を開発する、腰痛や肩こり、眼精疲労等について
予防的措置を講じられるような情報の発信、またアセス
ルワーク(仕事場が場所に依存しない)、施設利用型
勤務(サテライトオフィスなどが仕事場)の3つの形態が
ある。
「クラウドワーク」とは、クラウドソーシングサービスを
利用して、専門技能者個人がネット上で仕事を受注し、
-35-
メントを行うなど、研究者や行政が関与することが求め
られる。
なお、本研究は JSPS 科研費 16H03137 の助成を受
けたものです。
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
表1 テレワーカー、クラウドワーカーの作業空間と作業環境の例
作業空間
自宅
仕事部屋
電車
バス
喫茶店
ファミレス
図書館
ネットカフェ
カラオケ
レンタルオフ
ィス、コワー
キングスペー
ス等
一般の
事業所
クラウドワー
カー、テレワ ・雇用型在宅 ・雇用型モバ ・雇用型モバ ・雇用型モバ ・雇用型モバ ・雇用型モバ ・雇用型施設
ーカー等の 勤務
イルワーク イルワーク イルワーク イルワーク イルワーク 利用型
△
主な作業場 ・自営型
・自営型
・自営型
・自営型
・自営型
・自営型
・自営型
所
自己負担 △光熱費、
○無料
する費用 家賃
×変動が
照明および
△本人次第
採光
大きい
グレア
○調整可能 ×大きい
△お茶代
△店舗、
席による
△店舗、
席による
○無料
△利用料
△利用料
△利用料
○無料
○良い
○良い
○良い
○良い
○良い
○調整可能 ○良い
○良い
○良い
○良い
VDT 機器
からの騒音 ○不要
への配慮
×必要
×必要
×必要
×必要
○不要
○不要
△作業による
周辺の騒音 △環境次第
×変動が
大きい
△店舗による ○静か
○静か
○静か
○静か
○静か
作業時間
△しにくい
△しにくい
△協業等に
管理の ×しにくい
×しにくい
×しにくい
×しにくい
○しやすい
すきま時間的
すきま時間的
よる
しやすさ
×多い
△やや多い
(家事、
△変動する。
△やや多い
△やや多い
(気晴らしの
仕事以外の
育児、介護、
混
雑
時
は
作
○少ない
(
気
晴
ら
し
の
( 気 晴 ら し の ○少ない
○少ない
外的要因
ネット検索、
趣味、昼寝、 業困難
読書等)
カラオケ等)
動画鑑賞等)
間食等)
×非常に変
作業時の ○ 変 化 さ せ 化させにくい △ 変 化 さ せ △ 変 化 さ せ △ 変 化 さ せ △ 変 化 さ せ ○ 変 化 さ せ ○ 変 化 さ せ
姿勢変化 やすい
( た だ し 長 時 にくい
にくい
にくい
にくい
やすい
やすい
間ではない)
ノート PC
デスクトップ
タブレット
ノート PC
ノート PC
ノート PC
ノート PC
ノート PC
ノート PC
スマートフォ
デスクトップ
タブレット
タブレット
タブレット
タブレット
タブレット
使用機器 タブレット
ン(セキュリテ
ノート PC
スマートフォスマートフォスマートフォ
スマートフォスマートフォ
スマートフォ
ィ上、店舗の
タブレット
ン
ン
ン
ン
ン
ン
PC は 不 使
用)
椅子
作業台
○OA チェア
○OA チェア ○OA チェア
△本人次第
× リク ラ イ ニ △ リク ラ イニ △ リク ラ イニ 導 入 で、リク △ リク ラ イニ 導 入 で、リク 導 入 で、リク
ソ フ ァ ー 、座
ング、高さ調 ング、高さ調 ング、高さ調 ライニングあ ング、高さ調 ライニングあ ライニングあ
布団、座椅
節なし、狭い 節なし
節なし
り、高 さ調 節 節なし
り、高さ 調節 り、高 さ調 節
子、OA チェア
あり
あり
あり
△本人次第
コ タ ツ 、 ち ゃ ×(特急等を
ぶ台、テーブ 除き)膝の上 △テーブル
ル、OA デス または手持ち
クなど
作業環境改
善の自由度 ○あり
○閲覧机
×低めのテ
ーブル(椅子
○OA デスク と の 関 係 性 ○OA デスク ○OA デスク
は作業に不
適)
×なし
×なし
×なし
×なし
×なし
△ややあり
△ややあり
コミュニケー
△本人次第 ×なし
ション
×なし
×なし
×なし
×なし
△ややあり
○あり
健康管理 △本人次第 △本人次第 △本人次第 △本人次第 △本人次第 △本人次第 △本人次第 ○あり
労働安全
×困難
×困難
×困難
×困難
×困難
×困難
○容易
衛生教育 ×困難
労働安全 △ 個 人 型 労 ×一般損保, ×一般損保, ×一般損保, ×一般損保, ×一般損保, △ 個 人 型 労 ○労災保険,
衛生費用の 災保険,事業
災保険,事業
生保
生保
生保
生保
生保
共済組合
受け皿 別組合
別組合
所属住所 渋谷区千駄ヶ谷 1-1-12 桜美林大学内 3F
電話番号 03-6447-1330
------------ << 連絡先 >> -----------代表者名 松田文子
所属
公益財団法人大原記念労働科学研究所
E-mail
-36-
[email protected]
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
3-1
身体運動の大きさと形を表象する発声音の特徴
○山内直人 1)、篠原和子 2)、田中秀幸 2)
1)国士舘大学体育学部, 2)東京農工大学大学院工学研究院
要約
2.方法
1
本研究は,ジェスチャー動画を用いて,Berlin の実
被験者
験パラダイム(図形に関する偽単語創作課題)を追試
年齢 19〜21 歳の大学生 44 名が,書面にて被験に
した.44 名の大学生が実験に参加した.半数の被験
同意した後,実験に参加した.被験者全員の母国語
2
者は,Köhler の maluma と takete 図形の軌道を描く運
は日本語であった.実験は,著者らの所属研究機関の
動サイズの異なる計 4 種類のジェスチャー動画を観察
研究倫理委員会の承認を得て実施した.
した.残りの被験者は,同じ軌道を描く光点動画を観
実験設備と実験課題
察した.各被験者は,4 種類の動画に最もあてはまると
成人男性 1 名が,Köhler2 の maluma 図形または
感じた架空の名前をそれぞれ 3 語創作することを要求
takete 図形の軌道を描くジェスチャーを,2 種類の運
された.創作された単語の音声学的分析の結果,尖っ
動振幅で行なった.手の動きを含む上半身の範囲をビ
た動きは丸い動きよりも多くの阻害音を含んでいた.有
デオカメラに記録した(ジェスチャー動画).同時に,中
声阻害音は,尖った動きと大きい動きに有意に関連し
指先端に取付けた赤外線反射マーカーの動きを 3 台
ていた.前舌母音は尖った動きや小さい動きに有意に
の高速度カメラを用いて集録し,その 3 次元座標計測
関連し,後舌母音は丸い動きや大きい動きに有意に
値から指先軌道の光点動画を作成した.図1は,実験
関連していた.これらの結果は,身体運動を表象する
に用いたジェスチャーの,前額面に平行な 2 次元平面
ために選択される言語音が形やサイズの動的イメージ
に投射された中指先端の動きの軌跡図である.
と有意に関連する仮説を示唆する.
1.はじめに
スポーツ指導者は,選手に運動スキルを指導する際,
しばしば擬態語や擬音語を使用する.擬態語・擬音語
が運動イメージを想起する基本的機序,特にその音声
特性と運動学的表象又は運動力学的表象との体系的
関係は,共感覚的音象徴に基づいている可能性が指
摘されている.本研究の目的は,共感覚的音象徴現
図 1.指先軌道の線図(左)と加速度プロフィール
象が身体運動イメージの言語表現においても観察さ
(右):maluma 図形(上段)/takete 図形(下段)
れるか否かを確認することである.
これまでの音象徴研究の大半は,主として Sapir3 ,
被験者の半数はジェスチャー動画を観察し,他の半
Köhler2,Ramachandran と Hubbard4 などの実験方法を
数は光点動画を観察した.各観察群において,4 種類
元にしており,なかでも視覚領域での音象徴を研究す
の全動画が PC 上の Quick Time Player を用いて繰り
る際には図形の形状特徴を静止画で表した刺激を用
返し再生され,液晶プロジェクターを通して講義室内
いて実験する方法をとるものが殆どであった.Berlin1
のスクリーンに投影された.
は,Köhler2 の図形(曲線で丸みのある図形 vs.直線的
実験課題は,Berlin1 のドロイド語創作実験パラダイム
で鋭角的な図形)が特定の言語音(たとえば共鳴音 vs.
に準拠した.被験者は,投影された動画を観察し,男
阻害音)と関連づけられるのは,言語音の波長の突然
優の手または光点の動きを意味するドロイド語(日本語,
の変化と,図形を見たときの視線の動きにおける突然
英語,その他の実在する言語の語彙にはない架空の
の方向変化に共通の感覚が働くためではないかと推
単語)を直感で 3 語創作することを求められた.その表
測している.だが,これは実験的方法で実証されては
記は,日本語のカタカナ 3 文字(CVCVCV)に限定さ
いない.そこで我々は,言語音と視覚像の音象徴的連
れた[注:日本語のカタカナ1文字は C 子音+V 母音
想に身体運動イメージが介在している可能性に注目し,
で構成される].4 種類の動き対して,異なる計 12 個の
これを実験的に検証した.
ドロイド語を創作することが求められた.
-37-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
データ解析
創作されたカタカナ 3 文字のドロイド語の 3 語に含ま
れる合計で 9 個の子音と 9 個の母音を分析対象とした.
各被験者の各ジェスチャー別に,9 個の子音中の阻害
音(/p/, /t/, /k/, /s/, /b/, /d/, /g/, /z/),有声阻害
音(/b/, /d/, /g/, /z/),無声阻害音(/p/, /t/, /k/,
/s/)および 9 個の母音中の前舌母音(/i/, /e/)の出
現頻度を計算した.出現頻度データは,次式の方法で
図 2.有声阻害音と無声阻害音の出現率
逆正弦変換した.
Xij=sin-1√Pij,
これらの結果は,有声阻害音は尖った動きと大きい
Pij=fij/n, n=9
ここで,f は,被験者 i のジェスチャーj における上述し
動きに有意に関連することを示唆する.また,前舌母
た音声特徴の出現頻度である.P=1.0 または P=0.0 の
音は尖った動きや小さい動きに有意に関連し,後舌母
場合には,逆正弦変換のために次式の P 値が代用さ
音は丸い動きや大きい動きに有意に関連することを示
れた.P=1.0→P=(n-0.25)/n,P=0.0→P=0.25/n
唆する.本研究の被験者は,動きの軌跡が描く静止図
形を事前に観察してはいなかった.それにも関わらず,
3.結果と考察
音声特徴の出現率に関して,有意な動画観察群間
差は認められなかった.そのため,形要因とサイズ
要因を被験者内要因とする反復測定モデル二元配
置分散分析を用いて仮説検証した.
静止画で見られた先行研究の知見(Köhler2, Berlin1 )
と一致する傾向が,身体運動イメージの表現において
も確認されたことは,非常に興味深い.
4.まとめ
阻害音出現率に関して,形の有意な主効果
これまで静止画で観察された音象徴現象が,身体運
( p<0.001 ) が 検 出 さ れ た . サ イ ズ の 主 効 果
動イメージによっても観察されることを実験的に示すこ
(p=0.616)と要因間交互作用(p=0.137)は有意で
とができた.今後,身体運動イメージに関する音象徴
なかった.出現率の平均値は,maluma に比べて
効果をさらに調べることで,運動スキルの改善や修正
takete の方が有意に大きかった.
等に役立つ言語音の実践的応用についての示唆を得
有声阻害音出現率において,形の有意な主効果
(p<0.05)とサイズの有意な主効果(p<0.001)が
検出された.要因間交互作用は有意でなかった(p =
0.141)
.出現率の平均値は,maluma に比べて takete
の方が有意に大きく,Small 条件に比べて Large 条
件の方が有意に大きかった(図 2a)
.
無声阻害音出現率に関して,形の有意な主効果
(p<0.001)と有意な交互作用(p<0.05)が検出さ
れた.サイズ要因の主効果は有意ではなかった
(p=0.061).事後検定としての多重比較の結果,出
現率の平均値は,takete に関して Small 条件に比べて
Large 条件で有意に小であった(p<0.05/4).maluma ジ
ェスチャーに関して,Small 条件と Large 条件間に有意
差は認められなかった(p>0.05/4)(図 2b).
前舌母音出現率において,形の有意な主効果
(p<0.001)とサイズの有意な主効果(p<0.05)が検出さ
れた.要因間交互作用は有意でなかった(p=0.819).
出現率の平均値は,maluma に比べて takete の方が有
意に大きく,Small 条件に比べて Large 条件の方が有
意に小さかった.
-38-
ることができると期待される.
文献
1) Berlin B (2006) The first congress of ethnozoological
nomenclature. J. Royal Anthrop. Inst., 12(1): 23-44.
2)
Köhler
W
(1947)
Gestalt
Psychology:
An
Introduction to New Concepts in Modern Psychology.
New York: Liveright.
3) Sapir E (1929) A study in phonetic symbolism. J. Exp.
Psych., 12: 225–239.
4)
Ramachandran
VS
&
Hubbard
EM
(2001)
Synaesthesia: A window into perception, thought and
language. J. Consciousness Studies, 8 (12): 3–34.
------------ << 連絡先 >> -----------田中秀幸
東京農工大学大学院工学研究院先端健康科学部門
東京都小金井市中町2−24−16
電話 042-388-7965
E-mail: [email protected]
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
3-2
ふるえ疾患者(本態性振戦患者)に対する
ふるえ抑制器(パームサポーター)の評価研究
○坂本和義 1)、井口竹喜 2)、一柳健 2)
1) 電気通信大学 産学官連携センター, 2) 菊池製作所 ものづくりメカトロ研究所
はじめに
2.5. 計測と解析: 計測は手の動きを3次元加速度
手や足などの “ふるえ” を発症する疾患は多くの
センサーで計測し、計測データーはセンサー内蔵の
種類が存在している。動作をする時にふるえる症状が
発信器でパソコン伝送し収録した。解析は、加速度デ
発生する“本態性振戦”が知られている。箸の使用時
ーターについて周波数範囲を1Hzから50Hzの区間
や書字時に不便をきたす。ふるえ抑制法としては電気
におけるパワースペクトルを求めた。3次元(x,y,z)の
1)
刺激法が報告されている 。本研究は、ふるえを抑制
加速度のパワースペクトルをそれぞれ方向毎にPx、
する機器(パームサポーター;PS)を作成し、本態性振
Py、Pzとして求めた。3次元の合成した値(SQRT)と
戦疾患者に対して物理的にふるえを抑制する方法を
して、SQRT=((Px2+Py2+Pz2))(1/2) を求めて、S
検討し、計測・評価した。
QRT値で書字時の手の動きの評価量とした。
2.6. 被験者: 本態性振戦患者 4名(男性2名、女
2.方法
2.1.
性2名、年令69歳~85歳)、ふるえの程度は患者で大
書字時の手の動作は、3次元加速度センサー
きな差異が見られた。
で検出した。センサーには発信器が内蔵されている。
2.2. ふるえ抑制器 : アルミ素材を使用した変形
3.結果
容易なフレーム(図1)であり、手に巻きつけて使用す
3.1. ふるえ抑制器の使用の有無による書字の例:
る。ペンを持ち書字している状態を図2に示す。手の
4種の書字の内、例として“円”を例に取り上げて図3に
甲に手の動きを検出する加速度センサーが貼付され
示す。円の書字結果は、ふるえ抑制器使用しない場
ている。
合(WRと表示)では円が明確でないが、ふるえ抑制器
使用の場合(PSと表示)は各円が示された。 書字に
於いて、PSの使用は書字をより明確に書くことが定性
的に認められた。
図1.ふるえ抑制器(パームサポーター;書之助と命名)
図3. 書字 “円” (上図WR;下図PS)
図2.ペンを持ち書字している状態
3.2. ふるえ抑制器の定量的評価
(1)本態性振戦患者のふるえの特徴: ふるえ値(加
2.3. 書字の種類: 横線、縦線、円、漢字(書之助
速度値)に個人差が見られた。大きいふるえの患者は
と書字)の4種を各10回書字した。
動作時にふるえが目視された。一方、小さいふるえの
2.4. 測定方法: (1)静止状態、(2)ふるえ抑制器
患者はふるえをほとんど目視できなかった。 そこで、
を装着しない場合の書字、(3)ふるえ抑制器を装着し
大きいふるえの患者と小さいふるえの患者に分けて評
た場合の書字の3種の測定条件を設定して、手の動き
価した。
(加速度)の計測を行った。
(2)安静状態のふるえ: ペンを1分間保持した状態
-39-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
(図2)における安静状態のふるえ評価量を3次元加速
SQRT(G2)
度の各パワースペクトルの合成値(SQRT値)で求め
た。大きいふるえの患者のSQRT値は 50.0 G 2 を与
えた。ここで、Gは重力加速度を表し、G=9.8 (m/s2)で
示される。小さいふるえの患者のSQRT値は10.0 G 2
前後を示した。
(3)大きいふるえを示す患者の場合:書字の種類によ
るが、ふるえ抑制器を使用しない場合(WR)のSQRT
値を図4に示す。SQRT値は最大で 3600 G 2 を示し
た。書字時のふるえは目視からも容易に認知できるふ
るえであった。ふるえ抑制器を使用した場合(PS)は、
SQRT値は最大で 600 G2 と使用しない場合と比較
すると約 80%激減した。WRの時は、横線が大きなふ
るえを示した。ふるえ抑制器使用(PS)により、書字時
の手の動きは大きく抑制された。他の書字(縦線、円)
も同様に抑制されたが、漢字の書字ではPSの効果は
明確には示されなかった。
図5.”ふるえの小さな患者” のふるえ抑制器の効果
4.考察
ふるえ抑制器の効果は、大きいふるえを示す患者で
は一次元の書字である縦線と横線に於いて明確であ
った。特に、横線ではふるえ抑制効果は大きかった。
二次元の書字である円と漢字に於いてはふるえ抑制
効果は小さかった。一方、小さいふるえを示す患者で
SQRT(G )
2
は大きいふるえを示す患者と比較するとふるえを示す
量(SQRT値)は小さかった。小さいふるえを示す患者
では一次元の書字である横線は抑制効果が見られた。
ふるえ抑制器は横方向に書字する場合に手のふるえ
を抑制する効果が大きい事が判明した。二次元方向
に書字する“円”や複雑な手の動きが必要な“漢字”の
書字では、ふるえ抑制効果は小さいと評価された。
5.結論
本態性振戦患者を対象に、ふるえ抑制器を用いて
効果を評価した。ふるえ抑制器は動作時にふるえが目
図4.”ふるえの大きい患者” のふるえ抑制器の効果
視される患者に有効であることを評価した。
文献
(4)小さなふるえを示す患者の場合:書字時の結果
(SQRT値)を図5に示す。大きなふるえの患者と大き
く異なるのは手のふるえ値(SQRT)が最大で約 180
G2 程度で、大きなふるえの場合の5%程度であり、ふ
るえは小さく、殆ど目視できない。ふるえ抑制器を使用
した場合は、WRの時は、横線の書字時に手の動きが
最大であった。ふるえ抑制器使用(PS)により、書字時
の手の動きは大きく抑制された。他の種類の書字時の
PSによる抑制効果は示されなかった。
-40-
1)Hoe JH,Kim JW, Kwon Y, et al (2015) Sensory
electrical stimulation for suppression of postural
tremor in patients with essential tremor. Bio-Medical
Materials and Engineering, 26, S803- S809.
------------ << 連絡先 >> -----------坂本和義 電気通信大学 産学官連携センター
〒182-8585 東京都調布市調布ヶ丘 1―5-1
電話 042-443-5803 ; FAX 042-443-5726
E-mail: [email protected]
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3-3
把持および膝伸展運動における筋張力維持の加齢特性
○水戸和幸 1)、吉田幸哉 1)、白井礼 1)、曽我聡子 2)、太田宣康 2)
1)電気通信大学, 2)花王株式会社生物科学研究所
1.はじめに
膝伸展運動において、被験者は座位にて、ロードセ
ヒトの加齢に伴う生活の質(QOL)の低下の原因とし
ルを用いて膝関節角度 90°における利き足の伸展運
て、最大筋力や力量感覚機能などの神経・筋機能の
動を行った。実験手順は把持運動と同様に行い発揮
低下が原因であることが示唆されている。
筋張力は 20%、40%、60%MVC の 3 条件で順に行っ
力量感覚機能の評価において、最大筋力に対する
た。
相対的な目標値に視覚・聴覚フィードバックが無い条
2.3 筋力計測および解析方法
件で筋力を合わせる手法が多く報告されている。神
握力計、ロードセルから導出された信号は 10kHz で
経・筋機能の低下に伴い、目標筋力が低い場合には
A/D 変換し、PC に記録した。解析区間は初めて筋張
過剰に力を発揮し、高い場合には過小に力を発揮す
力が指定した筋張力の 8 割を越えた地点から、最後
ることが知られている。また、目標値が低い場合に一筋
に指定した負荷の 8 割を下回る点の間の区間とした。
1)
力の維持も不安定になることが報告されている 。
解析区間で筋張力の安定性を明らかにするため、解
本研究では把持運動と膝伸展運動において、低負
析区間での筋張力の平均値と標準偏差から変動係数
荷から中負荷の筋力を発揮する際の筋張力維持に注
(Coefficient of variation : CV)を算出した。解析区間
目し、筋力調節と年齢との関係について評価した。
で筋張力が安定しているほど CV は低く、不安定であ
るほど大きな値を示す。また各条件における CV の年
2.方法
代間の比較を行うため、スティール・ドゥワス検定(有意
2.1 被験者
水準 5%)による多重比較を行った。
表 1 に被験者数を示す。被験者は 20 代から 70 代
の運動可能と診断された男女 127 名である。なお、本
3.結果と考察
実験は、ヘルシンキ条約に従い、電気通信大学ヒトを
3.1 最大随意収縮力(MVC)
対象と す る実験 に関す る倫理委員 会(審査 番号 :
表2、に握力運動および膝伸展運動における最大
14018)および、花王株式会社ヒト試験倫理委員会の
随意収縮力(MVC)の平均値および標準偏差を年代
承認(審査番号:14-22)を得て実施された。
別に示す。MVC は、両運動において加齢とともに低下
表 1: 被験者数
20 代
30 代
40 代
50 代
60 代
70 代
計
18
20
18
19
18
34
127
(9)
(10)
(8)
(10)
(10)
(18)
(65)
( ) 内はうち女性数
2.2 実験手順
被験者は、把持運動と膝伸展運動において低から
中程度の筋力を約6秒間維持する。
把持運動において、被験者は座位にて握力計を用
図 1:筋張力発揮の一例(把持運動)
いて肘関節角度 90°における利き手の把持運動を行
っ た。ま ず、最 大随意 収縮 力 (Maximum Voluntary
Contraction : MVC)の計測を、休憩を挟み 2 回行い、
大きい方を 100%MVC とした。その後、筋張力をリアル
タイムでモニタに表示し、視覚フィードバッグ(図1)に
より目標量を維持するように指示し、筋張力が安定した
と判断した地点から 6 秒間維持させ、その後脱力を指
示した。発揮筋張力は 20、30、40%MVC の 3 条件で順
に行った。
表2: 最大随意収縮力の平均値と標準偏差
運動
最大随意収縮力:MVC (kg)
20 代
30 代
40 代
50 代
60 代
70 代
把持
30.7
28.4
30.7
27.4
23.0
21.1
運動
(8.4)
(8.8)
(8.2)
(7.9)
(6.0)
(5.9)
膝伸展
45.5
36.3
38.8
33.5
27.2
23.7
運動
(19.2)
(14.5)
(15.3)
(12.7)
(13.3)
(8.4)
(
-41-
)内は標準偏差
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
した。
代の CV に有意な差が見られた。このことから、20%
3.2 筋張力の変動係数(CV)
MVC 以上の筋張力においては、筋力維持の若齢者
図 2 に把持運動時の負荷・年代ごとの筋張力の変
と高齢者に差異は小さいことが考えられる。
動係数(CV)を示す。各筋張力において年代とともに
一方、把持運動では全ての負荷において若齢者と
CV は増加する傾向が認められた。20%MVC におい
高齢者の筋張力の CV に有意な差が見られ、高齢者
て、高齢者(60、70 代)は 20~50 代全てに比べ有意
は若齢者に比べ筋張力維持が不安定になるという加
に CV は増加した。また、30、40%MVC においても、
齢特性が明らかになった。把持運動と膝伸展運動で
高齢者は若齢者(20、30 代)に比べ有意に CV は増
は筋張力維持の CV に違いがあったが、これは神経
加した。
支配比の違いが影響する可能性もある。精密な動きを
図 3 に膝伸展運動時の負荷・年代ごとの筋張力の
する指や眼球を動かす筋は神経支配比が小さく、力
CV を示す。各筋張力において年代とともに CV が増
強い大まかな運動を行う筋では神経支配比は大きいこ
加傾向にあった。40%MVC における 30 代と 70 代に
とが知られている 3)。今回の結果より、神経支配比の小
おいて、CV は有意に増加したが、他の負荷・年代間
さい筋が多数活動する把持運動は、力感覚特性の加
においては高齢者と若齢者による大きな違いは認めら
齢評価の指標として有効である可能性が示唆された。
れなかった。
4.まとめ
本研究では、発揮筋張力の大きい下肢と小さい手
指において、中負荷を中心とした筋張力維持の加齢
特性を明らかにすることを目的とし、20~70 代の男女
において把持運動と膝関節伸展運動を行った。
結果として、1)加齢とともに筋張力維持が不安定に
なる傾向があり、特に手指では顕著な差異が認められ
た。2)中・高負荷になると下肢の筋張力の安定性は増
加することが示唆された。3)神経支配比の小さい前腕
の筋では加齢による筋張力維持の差異が明確となる
可能性が示唆された。
以上より中・高負荷時における筋張力維持の加齢
図 2: 把持運動における筋張力の CV
特性は筋の種類によって異なり、神経支配比が関連し
ていると考えられる。
文献
1) Brian LT,Enoka RM (2002) Older adults are
less steady during submaximal isometric
*
contractions with the knee extensor muscles,
J. Appl. Physiol. 92,1004-1012.
2) Roger M., et al. (2003) Mechanisms that
contribute
to
differences
in
motor
performance between young and old adults, J
Electromyogr. Kinesiol. 13, 1-12.
3) 中村隆一,斉藤宏(2000) 基礎運動学,医歯薬
図4: 膝伸展運動における筋張力の CV
出版株式会社,70-71.
1)
Brian LT.らの報告 によると、膝関節角度 90 度に
おける膝関節 伸展運動において 筋張力が 2、5、
10%MVC 時の CV は高齢者のほうが若齢者に比べ有
意に増加したが、50%MVC において差は見られなか
った。本研究は中負荷を中心に実験を行ったところ、
膝伸展運動では 40%MVC においてのみ 30 代と 70
-42-
------------ << 連絡先 >> -----------水戸和幸
電気通信大学 大学院情報理工学研究科 総合情報学専攻
〒182-8555 東京都調布市調布ヶ丘 1-5-1
電話 042-443-5554 (直通)
FAX 042-498-0541(専攻事務)
E-mail: [email protected]
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
3-4
注視対象の運動特性に応じた身体各部の運動軸の時系列変化
○髙橋雄三
広島市立大学大学院情報科学研究科
ことを口頭と文書の両方で説明した.
要約
補助椅子を用いた立位姿勢維持支援を検討する際,
支援を行う部位と部位毎の運動特性を明らかにする必
要がある.本研究では,立位姿勢維持時に注視する
対象の運動特性に応じた身体各部の運動軸の時系列
変化を実験的に検討した.実験では身体 8 か所に加
速度センサを設置し,併せて重心動揺も測定した.起
立時間は 10 分間,注視対象の運動特性は運動方向 4
水準×運動速度 2 水準とした.参照条件として開眼,
閉眼,背景だけの条件でも実験を行った.実験の結果,
2-2.装置・実験環境
実験では,被験者の眼前 120 cm の位置(設置高は
被験者毎に調整)に 19 インチ液晶ディスプレイ(19
LE1, iiyama)を設置した.画面の白色背景の輝度は
150 cd/m2,直径 2 cm の黒色円の輝度は 0.5 cd/m2 とし
た.また,眼前水平面照度は 650 lx,画面の鉛直面照
度は 110 lx,水平面照度は 410 lx に設定した.
2-3.実験条件
注視対象(黒色円)の運動特性は運動方向 4 種(左
身体各部の運動軸における回転角度の時系列データ
右,上下,対角線上)と運動速度 2 種(0.08 Hz と 0.25
相互の相互相関は胸椎 T1 部と T8 部の間と左右の肩
Hz)の組合せとした.また,参照条件として,画面上に
峰部の間で特異的な関係が認められ,注視対象の運
提示した黒色円を注視する開眼条件,黒色円のない
白画面の注視する背景条件と閉眼条件を実施した.
動特性は立位姿勢の剛体化との関連が示唆された.
2-4.測定項目
1.はじめに
身体各部の運動は 3 軸加速度センサ MA3-04AC
生産現場では短時間,立位姿勢で微細作業を行う
(MicroStone)を用いて計測した.設置場所は頭頂部,
場面が多く見受けられる.生産システムのセル化が進
胸椎 T1 部,胸椎 T8 部,腰椎 L1 部,左右の肩峰部,
むと,様々な作業が立位姿勢と歩行の組合せの中で
左右の腸骨稜部の計 8 か所とした.また,床面 2 次元
行われることから,静立位姿勢でも微細作業を行うこと
平面に射影した身体重心位置の運動は 4 点支持式フ
ができる補助具・補助椅子の開発が急務となる.
ォースプレート S510-U(サカモト)を用いて計測した.
著者らは,人は静立位開始後,3~4 分程度経過す
ると姿勢制御モードを変化させて重心動揺の不安定
化に備える可能性を提起した 1).また,立位姿勢で微
細部品組み付け作業を行う際,下肢を基点に体幹軸
周りに上体を 5~8 度程度回転運動できる環境では,
完成品の品質が高くなり,負担感も小さくなる可能性を
示唆した
2)
.加えて,腰部の回転運動量・速度は作業
内容,特に視線(部品を見る)の運動との間の関連も
示唆された.そこで,本研究では,被験者に規則的に
運動する注視対象を液晶画面上に提示し,注視対象
の運動特性に応じて,身体各部の運動軸の時系列変
化について検討することを目的とする.
両データとも Sampling Rate は 100 Hz とした.
2-5.データ解析
(1)運動軸の導出:本研究では運動軸は各測定点を
床面 2 次元平面に射影した回転運動軸とした.最初に,
各出力データに対して血管動態や体動の影響を除去
するために 0.5 Hz のローパス・フィルタ(Butterworth)
処理を施した.次に,運動軸での回転運動は 5 秒間の
次の測定点に向かう方向角の平均値とした.重心位置
の運動は 4 個のセンサの相対比を用いて角度を求め
た.加速度センサからは,床面上に射影した加速度の
比を用いて角度を求めた.姿勢制御の結果である重
心動揺との間の関連性を検討するため,重心位置の
2.実験概要
運動データより 5 秒間の運動方向の平均値を求めた.
2-1.被験者
(2)各運動軸の相互相関解析:立位姿勢制御が剛体
被験者は 19-22 歳の健康な男子大学生 8 名とした.
制御されていた場合,すべての運動軸での回転運動
実験前に実験内容を十分に説明し,書面で実験参加
は同一となり,柔軟な姿勢制御が行われていれば,回
への同意を得るとともに,実験終了後,広島市立大学
転運動は相互にランダムな状態となる.そこで,各回
が定める被験者謝金を支払った.倫理的配慮として,
転軸の回転運動の時系列データに対して相互相関解
被験者の自由意思で実験参加を中止することができる
析を実施し,2 測定点間の相関係数を求めた.関連の
-43-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
強さを通常次元に戻して比較するため,各相関係数よ
0.14
り決定係数を求めた.解析区間は,起立時間の前後
の内,高校卒業までに一定の運動経験を有していた 5
名の被験者について分析を行った.有意差検定には
Friedman 検定を用いた.有意水準は 5%とした.
0.12
決定係数 [a.u.]
半各 5 分の 2 区間とした.本報告では,8 名の被験者
0.10
0.08
0.06
0.04
3.結果と考察
0.08 Hz
0.02
解析区間前半では,注視対象の運動特性に応じて
0.25 Hz
0.00
身体各部の運動軸に有意の同調運動が現れた部位
左上-右下
峰部(χ(3)=8.28, p<0.05;図 2)であった.図 1 より,黒
右上-左下
運動方向
は T1 部と T8 部(χ(3)=8.28, p<0.05;図 1)と左右の肩
図 1:胸椎 T1 部と胸椎 T8 部との間の相互相関
色円が画面の右上と左下の間を往復運動する刺激へ
0.14
速(0.08 Hz)の時は上体,胸椎部は一体となって運動
0.12
するものの,運動速度が高速(0.25 Hz)になると T1 と
T8 の間で運動軸の乖離現象が発生していた.一方,
左右肩峰部の運動軸(図 2)では,黒色円が画面の左
上と右下の間を往復運動する際に両部の間に同調運
決定係数 [a.u.]
の同調運動に顕著な差異が認められ,運動速度が低
0.10
0.08
0.06
0.04
動が認められた.この同調運動は前傾-後傾の場合
0.08 Hz
0.02
よりも体幹軸周りの回転運動で多く観察された.最後
0.25 Hz
0.00
に,姿勢制御の結果である重心動揺と T1 部との間に
左上-右下
右上-左下
運動方向
有意の同調運動が認められた(χ(3)=8.51, p<0.05;図
図 2:左右の肩峰部間の相互相関
3).図 3 より,黒色円の運動方向が横方向の時に同調
運動が強くなり,その傾向は 0.08 Hz で強くなった.
0.14
4.まとめ
方向に運動周期 12 秒を越える,ゆっくりとした往復運
動する対象を注視すると,身体各部位の運動軸での
運動において同調化が進行する可能性が示唆された.
0.12
決定係数 [a.u.]
以上の検討より,立位姿勢維持中に,視野内で横
0.10
0.08
0.06
一方,視野内に左上から右下に往復運動する注視対
0.04
象が存在する場合,肩部付近での体幹軸を中心とす
0.02
る回転運動が促進される傾向が認められた.以上の検
0.00
討より,注視対象の運動特性によって運動軸の運動方
向における同調の程度が変化することから,立位姿勢
0.08 Hz
0.25 Hz
縦
横
運動方向
図 3:重心動揺と胸椎 T1 部との間の相互相関
での微細作業を支援する補助具には姿勢の柔軟さの
程度に応じた支援機構を備える必要性が示唆された.
謝辞
本研究の一部は,JSPS 科研費 25350025(「腰部の回
転運動を抑制しない立位作業補助椅子開発のための
基礎的検討」)の助成を受けて実施した.
引用文献
1) Yuzo TAKAHASHI, Masaharu KUMASHIRO
(2007) Time series analysis of postural coordination
during quiet stance. Proc. of the 8th Pan–Pacific
Conference on Occupational Ergonomics, Conference
Official CD–ROM, 5 pages .
-44-
2) Yuzo TAKAHASHI, Seijiro ISHIHARA (2015)
Adequate hip rotation reduces physical load on the
trunk and improves quality of work during
micro-parts assembly. Proceedings of 19th Triennial
Congress of the International Ergonomics Association,
Official web site, 5 pages.
------------ << 連絡先 >> -----------髙橋雄三
広島市立大学大学院情報科学研究科
〒731-3194 広島市安佐南区大塚東 3-4-1
電話 082-830-1817(研究室直通)
E-mail: [email protected]
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
4-1
WIB 船内向け自主改善活動での漁船員による改善
○久宗周二 1)、小木和孝 2)
1) 高崎経済大学 経済学部,
2) 大原記念労働科学研究所
要約
WIB の漁業者の改善案を分析したので報告する。
船員の労働災害を減少させるためには、仕様が異
なる個々の船舶毎に船員自ら自主的に船内を改善す
ることが効果的である。船内向け自主改善活動(Work
Improvement on Board 以下 WIB とする。) は、WISE
(中小企業向け自主改善活動)などの参加型改善活
動の一つである。水産庁は平成 25 年度より 5 か年計
画の補助事業で「安全な漁業労働環境確保事業」を
開始し、平成 25~27 年度に約 70 箇所で講習会を行
い、約 2,700 人が安全推進員となった。平成 24~25 年
度の参加者 1183 名に、無記名によるアンケート調査を
行った。安全推進員の講習、自主改善活動のいずれ
においても、参加者の 8 割が「わかりやすさ」、「有効性」
に肯定的な評価を示した。講習会の後に参加者が、
漁船を実際に点検して 20 カ所で、198 隻が参加して、
301 件(平均して一隻あたり約 1.5 件)の改善案が出さ
れた。低価格、時間のかからない改善が多くを占めて
おり、改善が促進されると考えられる。
2.方法
水産庁補助事業「安全な漁業労働環境確保事業」
講習会では、漁業の労働環境のカイゼンや海難の未
然防止などの知識を持った「安全推進員」を養成す
る。
1) 参加型自主改善活動(POAT)をベースにした、
WIB 活動として、良い改善事例の紹介と選択、アクショ
ン型チェックリストと改善の使い方シートの講習、可能
な時は船の点検を行った。WIB の基本的な考え方、
WIB の具体的な進め方(よい改善事例の選び方、チェ
ックリストの使用方法、改善事例の共有方法など)、船
内労働安全衛生マネジメントシステムについて、受講
者が理解し易く、効率・効果的に習得できるテキストを
作成したほか、優良改善事例を示したパネルを作成し
た。
3)可能な限り座学の後に、船舶内において実習を行
ない、その場で改善案を提案した。
4)講習会終了後、講習を受講した漁業者に修了証を
1.はじめに
船員労働災害の発生率は、他の産業に比べて高い。
船員の労働災害を減少させるためには、仕様が異なる
個々の船舶毎に船員自ら自主的に船内を改善するこ
とが効果的である。船内向け自主改善活動(WIB) は、
WISE(中小企業向け自主改善活動)などの参加型改
交付した。
3.結果・考察
年間で毎年 500 人、5 年間で計 2500 人を養成する
予定であったが、平成 25~27 年度に北は北海道稚内
市から、南は沖縄県那覇市まで全国約 70 箇所で講習
善活動の一つで、船内で実現可能なリスクアセスメント
の手法の一つとして考えられている。水産庁は平成 25
年度より 5 か年計画の補助事業で「安全な漁業労働環
境確保事業」を開始した。船内労働安全衛生マネジメ
ントシステムの導入とともに、船員自らがチェックリスト
による船内点検を通じて、船内の危険個所・問題点等
を認識し、その対策を講じるとともに安全意識の向上を
図るための WIB を普及促進することを施策に挙げてい
る。漁業者に安全に関する知識の他に、自主改善活
動の手法を学び現場で安全を進める「安全推進員」を
育成する事業で、計画では 5 年間に 2500 人を育成す
る計画である。また、国土交通省では平成 25 年度より
はじめた第 10 次船員災害防止基本計画において、主
として中小船舶所有者を対象とした WIB の普及啓発を
はじめている。本稿では、専門的な知識は必要とせず
に、短時間で簡単に船内の危険をチェックできる、
-45-
会を行い、約 2,700 人が安全推進員となった。
3.1 受講者による評価
安全推進員の講習会について、平成 24~25 年度
の参加者 1183 名に、無記名によるアンケート調査を行
った。(n=951) 「わかりやすさ」では、「わかりやすい」が
83.4%、「わかりにくい」は 2.5%、「どちらでもない」は
14.1%であった。「役に立った(有効性)」は 87.6%、
「役に立たない」1.5%、「どちらでもない」は 10.9%でし
た。自主改善活動については 、「わかりやすい」が
83.5%、「わかりにくい」は.2.5%、「どちらでもない」は
14.0%であった。「役に立った(有効性)」は 85.7%、
「役に立たない」0.9%、「どちらでもない」は 13.4%であ
った。安全推進員の講習、自主改善活動のいずれに
おいても「わかりやすさ」、「有効性」は高い値を示し、
否定的な意見は僅かであった。
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
3.2 改善提案の分析
ていた(表1)。
講習会の後に参加者が、海上の近辺に接岸した漁
運搬・物の管理においては、80%超が「すぐできる」
船を実際に点検して改善案を出すプログラムを 2014
となっており、作業の安全においては、「すぐできる」が
~15 年に 20 カ所で行い、198 隻が参加して、301 件
20%弱、労働環境においては、「3日以下」が 100%を
(平均して一隻あたり約 1.5 件)の改善案が出された。
占めた。衛生・福利においては、「すぐできる」が 40%
弱、「4日以上」が 60%以上を占めた(表2)。いずれに
改善案を以下のように分類した。
運搬・物の管理:整理整頓、はしごの移動等
おいても、低価格、時間のかからない改善が多くを占
作業の安全:スイッチの表示をわかりやすく、
めており、改善が促進されると考えられる。
虎マーク、頭上保護、入口のクッション
材、機械の動く部分カバー[高温・低温
の部分も含む]、落下防止の柵、足場
(甲板・サイド)の凸凹修理、階段のペン
キ・色分け、ステップの色分け、滑り防
止全般、ドラム缶・パイプの色分け等
労働環境:LED 照明の設置・調整等
衛生・福利:換気、窓の掃除・くもり止め、清掃、トイレ
の改善、ウォーターサーバーの新設等
表 1 改善案の費用別の分類
0円
1 万円未
満
1 万円
以上
運搬・物
の管理
55
(87%)
8(13%)
0
作業の
安全
0
162
(91%)
16(9%)
労働環
境
0
44
(100%)
0
0
10
(62%)
衛生・福
利
6(38%)
計
61
(20.2%)
214(71.1
%)
計
図1ホタテ漁船の改善例
63
(29%)
図1は青森県陸奥湾のホタテ漁船の改善例である。
178
船上の照明を LED に変えることによって、足元が明る
(51%)
く作業しやすくなったとともに、燃費も良くなりコスト削
減につながった。
44
(15%)
謝辞
16
本研究を解析するにあたり、高崎経済大学久宗ゼミ
(5%)
ナール7期生の為脇雅弘氏、橋本浩希氏の両氏に感
26
(8.6%)
謝いたします。
文献
1) 水産庁(2015)水産の動向
表 2 改善案の費用別の分類
すぐできる
3日以下
4日以上
運搬・物の管理
55(87%)
0
8(13%)
作業の安全
29(16%)
46(26%)
103(58%)
労働環境
0
44(100%)
0
衛生・福利
6(38%)
0
10(62%)
計
90(30.0%)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h25_h/
trend/1/t1_2_3_1_04.html
2) Shuji Hisamune, Kazutaka Kogi (2015) Findings of
the Work Improvement on Board (WIB)programme
by the Fishery Agency in Japan. Int Marit
Health.,66, 3: 1–8
90(30.0%) 121(40.0%)
分析をした結果、運搬・物の管理においては、0 円
が 80%以上を占め、作業の安全においては、10000
円未満が 90%を占めており、衛生・福利においては、0
円が 40%弱を占めており、残りが 10,000 円以上となっ
-46-
------------ << 連絡先 >> -----------久宗 周二
高崎経済大学 経済学部
群馬県高崎市上並榎 1300
電話 027-344-7541
E-mail [email protected]
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4-2
離島でのワーキング・ホリデーの試み -島根県西ノ島町を例にして-
○久宗航太 1)、久宗周二 2)
1)上智大学 観光研究会, 2)高崎経済大学 経済学部
要約
島根県西ノ島町は日本海に浮かぶ隠岐の島の四つ
の島の一つである。産業は観光と酪農、水産業であり
特に岩がきの養殖を日本で初めて成功させたことで有
名である。島の中で岩がきの加工ができれば、収入を
上げられるが、人手がなく加工が間に合わない。
今までは、島外から学生等の短期アルバイトを受け
入れることがなかった。島では人口が減少しており、今
後は、積極的に島外からのマンパワーを受け入れるこ
とを考えている。単に労働力として受け入れるばかりで
なく、滞在中は島を巡って、島の良さを知ってもらい、
将来リピータとして島に訪れるなど、島の応援団を増
やしたいとも考えていた。観光会社、ホテル、行政が共
同して、東京の大学生を受け入れて、ワーキング・ホリ
デーを試行したので報告する。
2.方法
国内版ワーキング・ホリデー
長期滞在型のアルバイトは、北海道での鮭定置網
での加工作業や、沖縄のサトウキビの収穫などがある。
個人で行う場合は、作業でほとんどの時間を費やし、
休みが少なく観光やその他の体験をする機会がない。
また、休みなく働くことにより、観光やホリデーの部分が
乏しく、いいイメージを持てない。また、時には給料の
未払いなどのトラブルが発生すると、逆にマイナスイメ
ードを持ってしまう。
若者が海外で多く利用している働きながら観光する
ワーキング・ホリデー制度は、二国・地域間の取決め等
に基づき、各々が相手国・地域の青少年に対し、休暇
目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金
を補うための付随的な就労を認める制度である。各々
の国・地域が,その文化や一般的な生活様式を理解
1.はじめに
島根県西ノ島町は日本海に浮かぶ隠岐の島の四つ
する機会を相手国・地域の青少年に対して提供し、二
の島の一つである。産業は観光と酪農、水産業であり
国・地域間の相互理解を深めることを趣旨としている。
特に岩がきの養殖を日本で初めて成功させたことで有
日本では昭和 55 年(1980 年)にオーストラリアとの間で
名である。西ノ島町は、漁業(まき網漁業、貝の養殖な
ワーキング・ホリデー制度を開始したのを皮切りに 14
ど)・畜産(肉用和牛の繁殖)・観光が主な産業だが、
か国・地域との間で同制度を導入しており、合計で年
人口は減少し続けている。
間約 1 万人となっている。ワーキング・ホリデーは海外
西ノ島の漁業は浦郷支所と別府支所の二つに大別
ばかりでなく、国内でも異なる地域で文化や一般的な
することができる。漁業協同組合JFしまね浦郷支所は
生活様式を理解する機会を作ることも考えている。国
組合員数 981 名で、主な漁業種類はまき網漁業、ズワ
内でも、田舎での暮らしや農作業を通した自然の営み
イガニ・ベニズワイガニ等のかご漁業、定置網漁業、刺
への興味の芽生えを持つ都市住民と、過疎化、高齢
し網漁業、一本釣り漁業、採貝藻漁業などで、平成 24
化による労働力の確保、地域振興の課題をもつ地方
年の総水揚げ量は約3万トン、金額にして約 25 億円と、
地域を繋ぐ制度として拡がりだしている。
小さい島ながら、県内でも有数の漁師町である。また、
国内ではグリーン・ツーリズムの一環として、宮崎県
西ノ島は平成4年に日本で最初にイワガキ養殖に成功
西米良村などの地方自治体、NPO 法人が中心となる
した「イワガキ養殖発祥の地」でもあり、現在、その技術
比較的、新しい取り組みでなっている。基本は、農村
は隠岐4島へ波及し、「隠岐のいわがき」として隠岐全
に滞在して農作業を無償で手伝う補償がないボランテ
体でブランド化に取り組み、平成 19 年以降は総販売
ィアだが、賃金が支給されるものや、参加費制のワー
金額にして常に 1 億円を突破する産業にまで成長して
キング・ホリデーもある。現地までの交通費は実費で、
いる。島の中で岩がきの加工ができれば、収入を上げ
代わりに、農家が寝食を提供し、あくまで作業の手伝
られるが、人手がなく加工が間に合わない。
いに行くシステムである。
そこで、大学生を島に滞在して働きながら、島の生
西ノ島では、ワーキング・ホリデーばかりか、縁故者
活や文化を理解して、島の活性化を図る離島版ワーキ
以外の島外から学生等の短期アルバイトを受け入れる
ングホリディのプログラムを試行したので報告する。
ことがなかった。島では人口が減少しており、今後は、
積極的に当該からのマンパワーを受け入れることを考
-47-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
えている。単に労働力として受け入れるばかりでなく、
業に慣れていった。漁師さんたちといろいろな話なが
滞在中は島を巡って、島の良さを知ってもらい、将来リ
ら仕事を行い、よいコミュニケーションできた。
ピータとして島に訪れるなど、島の応援団を増やした
いとも考えていた。検討した事項としては、
漁業会社から「学生が来ることで現場の方々にも活
気が出て、元気を貰った様でした。」などのコメントを頂
・
就業の受け入れ態勢
いた。学生自身が西ノ島町のファンになり、観光資源
・
宿泊先の確保、食事の手配
の開発として、大学生の視点による観光プランを考え
・
島の探検する機会
て、島を再訪する予定である。
漁業・観光会社、ホテル、行政と大学で話し合い、
東京の大学生を受け入れて体制を考えた。
結論として、カキの加工作業などの労働力を確保し
ながら、島のファンを増やすという当初の目的は達成し
た。また、岩がきやサザエなど特産品への宣伝という
3.結果
産学で受け入れのシステムを検討し、下記のように
形で東京の大学生 1 名を受け入れた。
効果もあったといえる。今後、西ノ島町でワーキング・
ホリデーを定着させるには、複数の大学へ募集、選考、
管理など対応方法を検討していかなければならない。
期間: 平成 28 年 3 月 14~26 日 12 日間
特に、募集は西ノ島を知らない学生に PR するので、最
内容: ① 岩ガキの水揚げ、加工の手伝い。(7日)
水揚げした養殖の岩がきは塊になっているため、
道具で個々に分離した上で、殻に付いたフジツ
大の課題であろう。
謝辞
ボなどの付着物をヘラで外し、磨く作業である。
協力をして頂きました隠岐観光株式会社竹谷実社
常時 4 人の漁師さんと岩がきの加工を行った
長、つる丸汽船観光竹谷克則社長をはじめ島根県西
② ホテルの客室、配膳の手伝い (3日)
ノ島町の皆様に心より感謝いたします。
宿泊: ホテルの別棟の客室に滞在 (シーズンオフ
のため) 三食付給料: 岩がきの剥き作業につ
いて日当をもらう
(宿泊費、食費はホテルの手伝いをすることによ
り、相殺した、東京~島までの交通費は自己負
担)
文献
1) 島根県西ノ島町:概要 2015
http://www.town.nishinoshima.shimane.jp/
cho_tsuite/gaiyo/index.html
2) 安達達:ござんせ、隠岐 西ノ島の海へ-海のファ
ンづくりが広げた輪、全国漁業協同組合連合会
全国青年漁業者交流大会資料 2013
3) 外務省:ワーキング・ホリデー制度
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/working_h
.html
4) 農林水産省農村振興局グリーン・ツーリズムの現
状について 2006
http://www.maff.go.jp/j/study/tisan_tisyo/h18_01
/pdf/data7.pdf
写真1 筏の上で行うカキの加工作業
島の観光: 1日は、観光会社の社長が自ら島を案内
した。2 日目は、レンタカーを使って自分で観光を
した。レンタカーは終日使用できたために、仕事
帰りに島内を巡った。毎日同じ漁師さんと、コミュ
ニケーションがはかれた。
4.考察
岩がきの加工では作業方法を教えてもらいながら作
-48-
------------ << 連絡先 >> -----------久宗 周二
高崎経済大学 経済学部
群馬県高崎市上並榎 1300
電話 027-344-7541
E-mail [email protected]
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
4-3
制約条件に基づく発想・思考法
○山岡俊樹
京都女子大学家政学部
1.始めに
既存の発想法は緩い制約条件の下で,様々な発想
を行うアルゴリズムを採用している.雑貨などの機能が
単純なものは良いが,サービスのような構成要素が多
くあり,複雑な機能を持っているシステムに対して有効
で あ る のか ? 世界有 数のデ ザイ ン ファ ー ムで あ る
IDEO が 世 界 中 に 広 め た デ ザ イ ン 思 考 (Design
Thinking)は,デザイナーが従来行ってきた手法で,観
察と体験により,要求事項を抽出する方法である.この
方法もある意味では,前述した緩い制約条件化で,体
験(共感)を基にした発想方法でもある.
本報告では,これらの方法の特徴と著者が考えてい
る制約条件に基づく発想・思考方法を紹介する.
3.制約条件の効用
制約条件が果たして効果的なのか,簡単な2つの実
験を行ってみた.
(1)実験1: 鉄道駅にある KIOSK のビジネスアイディの
提案
①方法
実験協力者は 3 年ゼミ生 6 名(A グループ 3 名,B
グループ 3 名)である.A グループは制約条件なしで自
由に発想してもらい,B グループは 5 つの制約条件に
基づいて,発想してもらった.制約時間は 30 分であっ
た.
②結果・考察
A グループは 6 アイディア,B グループは 10 アイディ
2.デザイン思考の特徴と限界
アを創出し,B グループの方が幅広く,提案内容も高
先に述べたようにこの手法の特徴は,様々体験を通
かった.制約条件により触発されて,幅広いアイディア
して獲得した共感を基に可視化することである.人間
が出たと思われる.
にとって,自然なやり方であり,他の分野でも同様のア
(2) 実験 2:腕統計のデザイン提案
プローチをしている.芸術の分野ならば,音楽家や画
①方法
家などのアーチストが感じたことを,様々なやり方があ
実験協力者はデザイン経験のない女子学生1年 6
るが,そのまま表現すれば良い.一方,モノ作りの世界
名(C グループ 3 名,D グループ 3 名)である.C グル
にいるデザイナーやエンジニアの場合,感じたことをそ
ープは制約条件なしで自由に発想してもらい,D グル
のまま具現化すればいいとは言えない.デザイナーや
ープは下記に示す 5 つの制約条件に基づいて,発想
エンジニアの感じたことと想定ユーザの感じることが同
してもらった.制約時間は 1 時間であった.
じかどうか厳密に吟味する必要がある.つまり,デザイ
②結果・考察
ナーやエンジニアの感じたこととユーザの感じることが
ほぼ同じ程度のデザイン提案数であったが,D グル
同値でない場合があるからである.例えば,一昔前に
ープの方が提案の種類が多く,範囲も広範囲にわたっ
家電製品での表示文字は 2mm 程度の小さい文字であ
ていた.
ったが,ユーザから苦情が殺到し,現在では5mm 程度
実験1,2 を通じて,もともと 5 つの制約条件自体が
の見やすい文字になっている.確かに,デザイナーの
感性にウエイトを置くことは大事だが,それだけでは不
十分で,ユーザのレベルも把握しなくてはならない.ユ
ーザのレベルを知るには,人間に関する知識(認知系,
人間工学系の知識)が必須である.現在の提案されて
いるデザイン思考の限界は,モノ作りにおける知識とい
体験し,共感する
う制約条件を考慮に入れていない点である.この手法
の前提条件として,①デザイナーやエンジニアがその
ような知識を保有していること,あるいは②デザイナー
やエンジニアは,人間工学専門家などの支援を受けコ
ラボレーションを行う,が考えられる.確かに,IDEO は
②の形態を採用している.
図 1 滑りやすく押しづらい凸状のボタン
-49-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
厳密なコンセプト(制約条件)
甘いコンセプト(制約条件)
であろう.
この制約条件に基づいて,マクロ情報(目的
など)からミクロ情報(可視化案など)に絞り込ん
でゆくのがシステム思考によるデザインプロセ
×
×
スである.著者はこのシステムプロセスを汎用
システムデザインプロセス 1)として定義している.
×
図 3 にて示す.基本的な考え方は,企業や組
×
織の理念の確認に基づき,絞り込んでいき最
後の評価で終わるという手順である.以下,詳
説する.
(1)企業や組織の理念の確認
(2)大まかな枠組みの検討
図 2 制約条件によるアイディアの創造と絞り込み
デザインするシステムの事前調査を行い,
概要の
情報を入手しておく.
(3)システムの概要
(1)企業や組織
の理念の確認
大まかな枠組みを決めた後,より具体的
に目的と目標を決める.
①目的,目標の決定
(2)大まかな方針
②システム計画の概要
(3)システムの概要
(4)システムの詳細
システムの概要を受けて,ユーザ要求事
(4)システムの詳細
項や構造化コンセプトなどのシステムの詳
(5)可視化
細を決める.
③市場でのポジショニング
(6)評価
④ユーザ要求事項の抽出
⑤ユーザとシステムの明確化(仕様書)
⑥構造化デザインコンセプト
(5)可視化
構造化コンセプトに基づき,可視化を行
う.
⑦可視化
(6)評価
ソリューション
可視化案はV & V(Verification &
Validation)評価を行う.
図 3 汎用システムデザインプロセス
⑧評価
幅広い範囲を扱っているため,それらに基づき発想す
ることは広範囲のアイディアが生まれるのは当然であ
ろう.
文献
1) 山岡俊樹 (2014) デザイン人間工学,共立出版,
177-184
4.制約条件とシステム思考による発想・思考法
使いづらい製品の共通点は,形状優先でデザイン
になる可能性が高い.イメージを重視するのは大事な
------------ << 連絡先 >> -----------山岡俊樹
京都女子大学
〒606-8501 京都市東山区今熊野北日吉町 35
電話 075-531-7172
ことであるが,前提条件として制約条件を検討すべき
E-mail [email protected],
した可能性がある.図 1 のように制約条件を考えずに,
イメージを優先し体験を重視してゆくと使いづらい製品
[email protected]
-50-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
4-4
個人情報とその保護の考え方
大箸純也
近畿大学経営ビジネス学科
の特定化自体は行わず、個人情報ではない。ただしビ
1.はじめに
「個人情報は守らないといけない。そのために法律も
ッグデータから個人に特定した情報を得ることはできる。
できている。」ということを感じてはいる。しかしその重
例えば、「新飯塚駅から水曜日に始発に乗って、中間
要性を理解できていないため、「個人情報」ということ
駅で下車する人は、特定の個人であって、必ず駅前の
ばに過剰な反応をしているように感じる。そのため「個
コンビニエンスストアでその自社ブランドの缶コーヒー
人情報」において考慮すべきことについて検討した。
を購入する」といった情報はあり得る。その条件に該当
する者を追尾して確認すれば、その情報と実体として
2.個人情報の性質と問題
の個人とを結び付けることは可能である。しかし、実体
2-1.個人情報保護法の意義
との結び付けにはそのような手間を要する。一方、個
個人情報とは、「個人を特定できる状態での個人に
関する何らかの情報」である。これは、「(作用)対象特
定化情報を伴う対象の何らかの情報」の対象が個人で
ある場合と考えるのが、その重要性を理解するために
はよい。重要なことは、「目的とする特定の対象に対し
て作用・効果を及ぼすことができること」である。作用と
は様々であるが、中には対象に対して危害を加えるも
のもある。危害を生じさせるようなことは、治安上防ぐべ
きである。防ぐためには、目的とする対象を特定できな
くすることが有効である。そのため、統治者としては、
「個人に対して作用を生じさせることを可能とする情報
を、他者が発することを規制する」のであり、個人情報
保護法となる。
人を特定化できなくても特定の対象に作用をすること
は可能である。例えばこの例において、その対象者が
着座する正面の液晶モニターへ他社の缶コーヒーの
広告を流すなどである。ここでの目的とする対象は、
「目的とする特性を有する者」であって、特定の個人で
はない。「氏名+住所」は個人情報であるが、商用で
の利用目的は、「商売の対象になり得るという特性を有
する者」としてでしかないであろう。商用としては個人情
報もビッグデータも個人の特定の目的・効果に大差は
ない。しかし、個人情報の場合、対象特定情報が比較
的単純で、その情報だけで、第 3 者でも目的とする特
定の個人に対して危害を含めた作用を行うために利
用できる。その点でビッグデータとは異なる。
2-2.個人情報となる条件
個人情報となるためには、個人という作用対象を特
定化する情報を伴うことが必要である。この対象特定
化情報の代表的なものが住所、電話番号、電子メール
アドレスである。これらによって、広告を送りつけること
が可能となる。なお、情報の種類自体は同じであって
も、対象特定化の効果は個別の状況によって異なる。
「大箸純也」は筆者しか存在しないようなので、「大箸
純也+住所」で筆者の住所を特定することは可能であ
る。しかし「田中祐樹+住所」では、その情報が目的と
する「田中祐樹」のものであるかどうかは確定できない。
目的とする「田中祐樹」が「福岡県飯塚市柏の森 2 丁
目」に住んでいる程度の既知の情報と照合する必要が
ある。「おおはしじゅんや+住所」、「たなかゆうき+住
所」では、さらに不明確であり、誤配が許されないもの
を送付するための情報としては不十分である。顔写真
も個人を特定するための有効な情報である。襲撃目的
においては、欠くことのできない個人情報である。
ビッグデータは個人の識別は行っても、実体の個人
-51-
2-3.情報流出での問題発生の実際と今後の危惧
個人情報流出関連の記事でセキュリティネクストにお
いて掲載されているものは、2004 年 4 月から現在
(2016/5/26)までで 6000 件近い。しかし、その中の初
期部、近年部、中間部から抜粋した計 600 件の中で、
実際に訴訟が起きた事例、補償が発生した事例は合
わせて 25 件しか確認できていない(池田 2016)。「個人
情報を流出させたということでの問題」が発生しても、
「その流出による情報根源者の損害問題」が深刻にな
る割合は低いのである。
個人情報は多種あり、個人情報流出による効果は、
情報自体に依存するのは当然である。しかし個人情報
の守秘は重大なこととの意識が強いため、全ての「個
人情報」について提示しないことを過剰に求めていると
感じている。その過剰な守秘を求めがちになる理由と
しては、様々な個人情報がどのような効果を持つもの
であるのかが不明確だからであろう。例えば、個人情
報となる性のみでは、大した効果は生じないであろう。
しかし、他の情報源から年齢を得れば、対象としての
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
適性を決めやすくなる。そのように、個々の個人情報
・学籍番号は当該機関において、完全な特定化情報
自体は大きな効果を持たないものであっても、複数の
である。掲示するなら、名前の方が学籍番号よりも、
情報源からの情報の集積を行うことで、かなり作用力
あいまい性が高い。さらにひらがな、苗字のみの方が
のあるデータベースとなってしまうことを予想でき、強い
あいまい性が高い
守秘を求めると考える。このことは、ささいな個人情報
の流出にも配慮は必要であるが、単独の流出のみで
3-3.個人としての生活における個人情報への対応
親子・夫婦や「店員と客」、そして「振り込め詐欺や押
し売りと被害者」の関係でも、他者と付き合うには、互
被害が生じるわけではないということでもある。
いに何らかの認識が必要となる。個人情報は、その認
3.個人情報の取り扱いでの対応
識のための情報である(狭義では、その中でも広域で
3-1.基本的考え
試験の合否を掲示することでの個人情報の提示が話
題になったことがある。合否の掲示情報を興信所など
を介して得ることで、本人が望まない結果になるのであ
れば、掲示が問題発生に関与したことにはなる。しかし、
情報を利用した結果が、本人の希望する方向へ作用
するのであれば、問題にされることはないであろう。こ
の場合は、合格者のみの掲示であれば、無難となる。
ただし、入試の合格者の場合は、売込・勧誘などの望
まぬ効果を生じる可能性もある。
対象特定情報を含まなければ、個人情報にならず、
複数情報源の集積も生じない。従って、この「対象特
定情報」を含ませないことが重要である。また実存と匿
名人の別々の電子メールアドレスのように、対象特定
情報を複数設けて、提示情報の範囲を変える方法も
考えられる(ただし、両者のつながりを断つことが必要)。
一方で、住所・氏名・電話番号・電子メールなどの対象
特定情報自体は、実存証明にしか過ぎない。また、こ
のような対象特定情報自体は、様々な場面、登録で利
用されるため、流出源・機会が多い。従って、ストーカ
ー対策のように実存の隠匿が必要な場合以外は、流
出による問題は小さいと考える。住所録が流出した場
合、各人の特定情報自体よりも、同一住所録に存在す
る他者および住所録所有者と、何らかの関係があると
いう情報のみが新たな情報となる場合もあるであろう。
有効なもの)。必要となる情報、提示することになる情
報は、当然、その接し方に依存する。積極的に交流を
求めるのなら、自己紹介をするであろうし、接触を避け
るためには、存在情報も示すべきではない。その状況
は、関わる社会の状態と本人が求める社会との関わり
合い方によって決まることである。あいさつを交わす程
度であるなら、顔を認識できればよいし、ことばを交わ
すようになれば、何らかの呼称を使いたくなるということ
である。当然のことであって、何ら新たな解決法となる
わけではないが、どのような個人情報を提示するかは、
関わる社会と自分が望む関わり合い方を考え・意識す
ることで、決めやすくなるのではないかと考える。
人間社会は互いに相手を知っている限られた範囲で
運営され、個人は閉じた社会の一員であったと考える。
そのため、以前は電話帳に個人名と住所が載ってい
たが、閉じた社会でしか利用されなかったため、問題
は生じなかったと考える。しかし、情報技術の発達によ
って、自分の情報を自分の知らない社会で利用される
ことについて、不気味さを感じているのではないか。
LINE、SNS は閉じられた範囲で機能・運営されるもの
であり、その閉じた社会で活動できる安心感が支持さ
れる理由であると考える。業務の社会では、確実性を
確保するために、明文化された情報の元で運営される
が、閉じられた社会においては、構成員が有する暗黙
知を利用した運営も可能である。1 対 1 の個々の通信、
3-2.個人情報の管理側としての問題・配慮事項
業務上生じそうな「調査・検査対象者・学生などの個
人情報の管理」への対策として、以下にまとめた。
・不合格、処罰などのように負の評価につながりやす
い情報には配慮する
・被調査者、被験者などの個人情報の保護
・仮名、ひらがなを使う
・対象特定化情報と性質部を分離する。両者間は番
号で結合する。異なるメディアに保存する。
・政治集会、治験などのように、参加した調査から、
個人の考え、信条、境遇、身体状況などが推測で
きる場合は、特に配慮する
-52-
実際に会ったり配布したりすることによる情報伝達を利
用することが、個人情報を守りつつ生活の場の社会を
運営するのに有効であると考える。
引用文献
池田強太,2016:情報社会における個人情報の扱い方.
近畿大学経営ビ ジネ ス 学科卒業研究・論文概要
集,p61.
------------ << 連絡先 >> -----------大箸純也
近畿大学 産業理工学部 経営ビジネス学科
〒820-8555 飯塚市柏の森 11-6
電話 0948-22-5655(内線 351)
E-mail: [email protected]
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
第 50 回全国大会から
期日:2015年6月20、21日(土、日)
会場:大阪市立大学学術情報総合センター
(会報101号に抄録、102号にも大会報告があります)
追悼集会「香原志勢先生が遺されたもの」報告
岡田守彦
筑波大学
香原志勢会員には予てご療養中のところ、2014 年 11 月 16 日に逝去された。香原先生は人類働態学会の前身、
人類働態学研究会(働態研)がヒューマン・エルゴロジー研究会と呼ばれていた時代に入会され、後に働態研の代
表幹事、さらに研究会から学会になって初代の会長を務められた。自然人類学を本籍とする香原先生は、表情運
動やケイタイの拇指操作から頭上運搬や潜水漁労などに至るまで、働態の原点ともいえる様々な身体の使い方に
着目し、社会生態学的文脈の中におけるその変異や適応のあり様に照らして働態学的意味を読み解くことに注力
された。さらに、それらのアイデアを働態研/働態学会の場で発信しつづけることにより、ご自分より若い世代の会員
に多くの影響を与えられた。
われわれ、香原先生より1〜2世代下の会員が相図り、香原先生のご逝去を悼むとともに、先生が働態学会に遺
されたものに改めて思いを致し、香原先生にインスパイアされた、われわれの内なる香原働態学を通じて、働態学
の原点について考える機会とするために、2015 年 6 月の第 50 回人類働態学会大会(大阪市立大学)において、
下記の内容による追悼集会を開催したものである。
追悼集会プログラム
1. “好奇心の巨人”に触発されたもの―趣旨説明をかねて···························· 岡田守彦
2. 香原志勢「人類働態学」にみる未来志向の生活行為研究 ························ 小木和孝
3. 香原志勢先生の知の世界:SL の世界・ぬかり田の世界····························· 岸田孝弥
4. 伊勢志摩海女潜水漁法や琉球島民頭上運搬のフィールド
ワークで共有した香原先生の働態視点と方法 ··············································· 堀野定雄
5. 香原人類働態学からみた海女の生活力 ························································· 真家和生
6. 香原志勢先生の人類働態学研究:
構想半ばのいくつかの未実施テーマについて·············································· 松村秋芳
コメント
早弓 惇・小島龍平・大箸純也・河原雅典
追悼集会は大会1日目の午後に開催され、シニア世代の会員に加えて若い会員も多く出席するなか、香原先生
がお若い頃のスナップ写真をスライドで上映しながら、まず全員で黙祷し、つづいて 6 名の口演者とコメンテーター
4 名から、香原先生の思い出や働態学との関わり合いなどが熱く語られた。それらの中で取り上げられた様々の議
論は、追悼集会にひき続いて開催された若手会員による企画 「人類働態学再考:みんなで作る人類働態学!」 へ
の導入としても有意義であったように思われる。
追悼集会抄録
好奇心の巨人に触発されたもの
岡田守彦/筑波大学
私は香原さん(以下、香原先生をご生前同様に「さん」
香原さんは、ドイツの進化生物学者 E. ヘッケルの造
づけで呼ばせて頂く。先生は私達後輩も「くん」でなく
語 "Ergologie" を「働態学」と翻訳した長谷部言人教
「さん」で呼んで下さった)の大学の 9 年後輩にあたる。
授の流れを汲む人類学者であり、身体機構と行動生
-53-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
態を結びつける生来のフィールドワーカーだった。私
ある。①では頭上運搬時の姿勢、歩容、脊柱起立筋
が香原さんと親しくさせて頂くようになったのは、働態
EMG などを記録したところ、負荷が重いほど「姿勢が
研が発足する前、1960 年代の国際生物学事業計画
良くなる」ように湾曲が変化することなどがわかり、人類
(IBP)「ヒトの適応能」研究班によるアイヌ民族生態調
進化における大脳の発達と直立姿勢の進化の関連に
査にご一緒したときのことである。香原さんは北海道日
ついて示唆を得ることができた。
高地方の中学生を対象に、ご自分が創案された「片眼
また③の木登りについては、梯子登りを利用して垂
つぶり/片眉上げ」テストを始めとする運動機能テストの
直移動時の上肢・下肢の筋活動とエネルギー代謝をし
データを集めておられた。
らべたところ、上肢筋の負担が非常に大きいことと、
働態研に入ってからも香原さんからはヒトが Homo
RMR にして 10 を超える高強度作業であることがわかっ
ergon(?)であることをさまざまに教えられた。この時期
た。筋力(横断面積)は体長の2乗に、体重は3乗に比
にインスパイアされたものとしては、①重いものやかさ
例するというアロメトリーを考慮すると、樹上における身
ばる荷物の頭上運搬②海女の伝統的潜水漁撈③高
体の大型化は高いエネルギー消費とムキムキの筋肥
木の枝打ち作業にともなう木登り行動、などがある。とく
大―ゴリラなど現生類人猿の姿はまさにそうである―を
に①②については宮古島や伊勢志摩など、フィールド
招く筈である。こう考えると、初期人類が樹上から地上
の現場でじかにご指南頂いたことは忘れられない。働
に進出したひとつの理由がエネルギー経済性にあっ
態とからだの多様な関係を読み解く香原流働態学の
た可能性が示唆される。
魅力を知ったのはこの頃である。
香原さんに触発されたものは少なくない。恵美須さま
フィールドワーカーではなく一応実験屋の端くれだっ
た私は、これらのうちの①と③を自分の研究プログラム
そっくり(ご本人が仰っていた)のあの笑顔にもう接する
ことができないのは言いようも無く寂しい。
に組み入れて、院生とともに実験に取り組んだもので
香原志勢「人類働態学」にみる未来志向の生活行為研究
小木和孝/労働科学研究所
1.ヒトの意識的行為としての働き
る。そして人間工学と人類働態学の対比にふれて解
香原志勢による人類働態学の枠組みのとらえ方に、
説している。人間工学は、働くことを対象にした応用科
多くを学ぶことができる。働態研究の枠組みは、1987
学であり、複雑な産業社会における作業の分析と能率
年労働科学研究所が刊行した「現代労働衛生ハンド
化にその威力を発揮する。人類働態学は働くことを対
ブック」に香原が寄稿した「人類働態学」の中で明確に
象にした基礎科学として、人類の各種社会に固有な作
述べられている。エルンスト・ヘッケルや長谷部言人ら
業を全体的に把握し、また比較研究するにあたって、
により、働態学は、人類の意識的な生活行為を対象に
その能力を展開する、とする。人類働態学は、有用無
する研究としてとらえられていることが背景にある。人
用にかかわらず身体各部の使い方や動かし方を精査
類生態学が生活圏内の個体群生態研究とすれば、人
し、それらの起因を探索し、また同類の作業を他の産
類働態学は、実生活における個体群の意識的生活行
業に求めて比較する、さらには人類進化、文化発展上
為の研究とみることができる。食したり、子育てしたりす
におけるそれらの意義を検討しようと努めると述べる。
る動物の生活行為は働くこととはみなされないから、人
こうした人類働態研究の意義は、未来志向の生活行
類働態学は、働くことを人類特有のものとみなし、人間
為としての働き特性の討究にある。働態学会での討議
中心の学問となることを試みると提言している。
に慣れ親しんでいる私たちは、つよく共感できる。
2.未来志向の働き特性の討究
3.生活行為研究の両面
香原のもう一つの提言は、「ひとつ間をおいて目的を
このように、香原志勢「人類働態学」にみる生活行為
果たす場合、働くという語が用いられる」との指摘であ
研究の両面が注目される。まとめてみると、一つは、個
る。「人間は自己の将来のためや、自分に家族や仲間
体群の生活史の中の意識的行為の研究であって、
のために働くのであるが、人類進化とともにその働く内
「人類の各種社会に固有な日常的な働きを包括的に
容は複雑化し、また道具の発明・使用、作業環境の設
精査し、また同類の働きを他の産業に求めて比較し、
立により、働きの形態をいちじるしく変えていく」と述べ
生活史をふまえた文化発展上におけるそれらの行為
-54-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
の意義を討究する」面である。もう一つは、「将来のた
あります。ヒトの母指は決して退縮していませんが、2 指
めに(ひとつ間をおいて)目的を果たすために行われ
節で太く短く、不器用にも見え、他の指と働く際には、
る意識的な生活行為を、実生活サイクルの中で捕捉し、
裏方に徹しているように見えます。しかし、昨今普及の
また比較研究して、働く内容が変容するさまを動的に
携帯電話の片手使用では、その母指が文字盤いっぱ
把握する」面になる。この未来志向の生活行為研究が
いに動き回り、指先でボタンを押します。それは今まで
働態研究の基点であり、展開する基盤となる。
考えられなかった母指の動きです。これを親指革命と
呼ぶのはいささか大袈裟ですが、なお、人体における
4.未来志向の親指革命論考に学ぶ
新しい体の使い方といえましょう。」
人類働態学会編「働態研究の方法」の第 1 章の最初
これと同じような生活史の新展開は、組みかえられて
に載った香原志勢「いささか大袈裟ですが、親指革命
いく地域・職域内の多様な心身適応、多彩に構造化
―携帯電話と母指の動き」は、この両面を備えた生活
する中の小集団合議による生活文化、高齢化社会の
行為研究の面目躍如な研究報告である。その「ねらい」
中の世代間交流などスモールネットワークの立ち位置、
にこう述べられている。「サルは『手と目の動物』といわ
情報社会の中のシンプルな参加型連携による健康とり
れますが、ヒトはその手を存分に使い、今日の技術社
もどしなど、いくつも例がある。未来志向のヒト特性を生
会を築くに至りました。反面、道具を扱う手に器用・不
かした意識的行為の変容とその意義を、研究者どうし
器用の差が生じました。類人猿の母指は退縮傾向に
で補完しながら討究していきたいと、今感じている。
香原志勢先生の知の世界:SL の世界・ぬかり田の世界
岸田孝弥/中京大学
SL(蒸気機関車)の人気は相変わらず高い。香原先
ついて、現場での実験を踏まえた検討をすることにし
生は SL を動かしている機関士、機関助手の労働に思
ていたにもかかわらず、十分な検討を行うことなく人員
いをはせていた。現在の SL ブームは、SL を動かして
削減計画を実施した。鉄道技術における石炭から電
いた人々の苦汗労働についてはほとんど知らず、走っ
気への転換という大きな変化が、労働現場を大きく変
ている景観の美しさのみをとらえて、SL はかっこいい、
えたということを知っている人が、SL ブームの渦中の人
SL に乗るのは楽しいというばかりである。SL を運転して
にどれだけいるか、香原先生ならずとも興味のあること
いた機関士は、機関車が吐き出す煙により、目と鼻、
である。
気管支・肺を侵され、また火室にスコップで石炭を投入
今世の中は棚田ブームである。日本における米作は
する機関助手はエネルギー代謝の大きな重筋労働を
泥湿地を田に仕立て、山間部では沢の上の方から沢
こなしていた。このような労働も産業のエネルギー転換
沿いに堰を築いて小さな田を作り、これを順々に下方
により、1960 年代、日本の鉄道に石炭から石油への転
に作っていけば、棚田ができる。水は上から下の田へ
機が訪れ、さらに主要路線については電化が進み、乗
順に流れていく。こういう棚田が田毎の月を映した。こ
務員の勤務形態に影響を及ぼす変化が起きた。電車
の風景だけを見て棚田はきれいだという人の多くは、
運転士は運転室という刺激の少ない密室に長時間座
ぬかり田を知らない人が多い。農作業の中でも水稲栽
して、ひたすら前方の進路を見つめ、時折注意事項を
培は重労働を伴う。機械化農作業が進むと確かに作
口にしては、手でハンドルを動かすだけなので、当然
業は楽になるが、農業経営が楽になるとは限らない。
睡魔に襲われる。睡魔に襲われれば事故が発生する
新技術は人間の労働に何をもたらすのかを働態学
可能性が大となる。二人だと互いに注意し合う。その当
的に考えるきっかけを、香原先生は我々にもたらしてく
時国鉄当局は人員削減計画を考えていて、長距離、
れたように思う。
夜間運転などの運行状況に合わせた人員削減計画に
香原人類働態学からみた海女の生活力
真家和生/大妻女子大学
私が香原志勢先生と最初にお会いしたのは、学生時
午後の談話会とそれに続く夕食の機会であったと記憶
代、毎週火曜日に大学の人類学教室で行われていた
している。それ以前にも「人、ヒトを見る」という記事で香
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人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
原志勢先生のお名前は存じ上げていたのだが、談話
ない朗らかな笑い声が、香原志勢先生の笑顔とともに
会後の夕食で(夕食といっても我々学生はただ御馳走
私の脳裏に今でも焼き付いている。
になりながら談話会での話題の解説などを先生方に伺
また亡くなられる数年前、松村秋芳先生と田中秀幸
うのが常であったが)人類学関係の方々の人物評を伺
先生と一緒に香原志勢先生のお話しをじっくりと聞く機
うのがとても楽しかったことを記憶している。
会に恵まれた。インタビュアーとして香原志勢先生のこ
こうしたご縁で、小田急会と称する香原志勢先生を
れまでの研究の話を伺ったのである。信州大学での肥
中心とする会にも参加させていただき、またその延長
満の研究などなどを伺ったのだが、「農業の問題は難
線上で、院生時代に香原先生の「海女」の科研費研究
しくて大変だけどやりたい問題の一つだった」と述懐さ
にも参加させていただいた。私は伊勢の海で海女さん
れていたことが印象に残っている。また、立教大学を定
たちの呼気分析などを担当させていただいたのだが、
年になられてから、好きな比較動物学(?)の研究に勤
青い海での研究は実験室しか知らなかった私にはとて
しまれ、「ゾウの鼻は環境作動器」です、などと、人の気
も新鮮なものであった。また海女さんに日本女子体育
づかない重要な視点を開拓されているお姿にある種の
大学に来ていただいて、頭上運搬や肺活量の測定な
感動を覚えたのを記憶している。
どもお手伝いしたのも得難い楽しい記憶である。この
研究者というよりは学問体系というものをご自分の中
時に香原志勢先生からお伺いしたのは、「海女は世界
に作り上げておられる学者であると、私は尊敬申し上
のなかでも珍しい、女性が経済的に自立した職業なの
げている先生であり、心からのご冥福をお祈りする次
だ」というお話しであった。海女さんたちのあの屈託の
第です。
香原志勢先生の人類働態学研究:構想半ばのいくつかの未実施テーマについて
松村秋芳/防衛医科大学校
香原志勢先生は人類働態学に関連した分野で、長
縛は赤子をおんぶするときなどに親が手を使わずに、
年にわたって研究を続けてこられました。私たち(松村、
手の力の弱い未熟な子を保持するために大きな効力
真家、田中、河原)は以前から、豊かでユニークな発想
を発揮します。サル類などでは子が手足の指で親の毛
をお持ちの香原先生が、どのような姿勢で研究に取り
をしっかりと掴みますが、ヒトではそれができないからで
組んでこられたのか、あの発想の源は何なのか、大変
す。ほかの霊長類との違いを念頭に置きながら、運搬
に興味がありましたので、先生の働態学研究について
と結びについて働態学の側面から追求する必要があ
お話を伺う計画を企て、お願いしたところ、快く引き受
るというお考えでした。しかし、働態学的な視点に立っ
けてくださり、2010 年の 4 月に東京の市ヶ谷でそれを
た「結び」の研究は、未だに多くの課題を残したままに
実現することができました。その全容を録音テープから
なっています。
書き起こして、『香原志勢先生が語る「私と人類働態
二つ目は「対面交通」の研究です。江戸時代までは
学」』という記事にまとめて会報 94 号と 96 号に掲載さ
武士は左腰に帯刀していたので、左側通行でした。左
せていただきました。そのなかで、先生のこれまでの研
側に刀を差していれば、対向者に腰の鞘が触れてしま
究生活では、関心を持ちながらも、研究に本格的に取
うことはありません。町民や農民もこの対面交通の習慣
り組むには至らず、今後に課題を残しているテーマが
に従っていました。それは明治維新後も一般的なルー
少なからずあることを伺いました。今回はそれらの中で、
ルとして続いていましたが、右利きの多いヒトの集団の
構想半ばとも言えるいくつかのテーマについて振り返
習性に合ったものでした。ところが第二次世界大戦の
り、紹介させていただくことにしたいと思います。
敗戦後に占領軍は、当時の劣悪な交通事情を緩和す
そのひとつは「結び」の研究です。「結び」(結縛)の
るために、歩道のない道では、「車は左、ヒトは右」とい
行動や文化については、1950 年代に「働態学」を提唱
う従来の習慣とは異なったパターンの対面交通を強制
された東京大学理学部人類学教室教授の長谷部言
的に施行しました。その流れで、今日でもすべての場
人先生が、働態学研究のひとつのテーマとして既に着
所で歩行者は右側通行という規則が慣行として続いて
目されていました。長谷部先生の着想を人類進化学
います。その一方で、ヒトの持つ本来の習性に従って
的な観点から深く理解されていた香原先生は、この
行動する人々もいるために、近年整備されてきた一般
「結び」に関する研究を働態学分野でやらないのは手
歩道、鉄道駅、公共施設などで混乱を来す原因にな
ぬかりである、とのご意見でした。おんぶ紐の結び・結
っています。先生は、「ヒトの本来の習性を踏まえて単
-56-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
純な左側通行にもどすべき」とのお考えでした。「その
いるのかといった環境に漂う化学物質との関わり合い、
ほうが歩行者に混乱をもたらさない」からです。しかし、
目から入る速度感覚はなぜ恐怖感を引き起こすのか
この問題については、いろいろなところで話題にされ
などといった問題です。たとえば、私たちの顔は遺伝
たりしましたが、具体的な調査や公への提案などには
的にサルの形質を受け継いでいるために、2 つの目が
至りませんでした。
顔の前面に並んでいます。ヒトは乗り物の速度などを
家とベッドの問題も先生が関心をもたれていたことの
恐怖の程度によって知りますが、この問題は私たちの
ひとつです。ヒトは家の中にベッドを置いて寝ます。ヒト
祖先が樹上生活をしていたころから既に始まっていま
の遠い親戚であるサルは木の枝の上でうずくまって寝
した。ヒトの目はサルと同様に枝への距離は読めるにも
ます。サルは森が家なのです。サルは手が器用なのに
かかわらず、前面に並んでいて視野が限られているた
住処をつくろうとしません。サル類よりも遺伝的にヒトに
めに速度をよく読めないので、それが恐怖へとつなが
近いチンパンジーも住拠を作りませんが、木の上で枝
るのです。知覚系、運動感覚の人類学を探求すること
を組み合わせてベッドを作ります。ヒトは家をつくり、さ
は先生の夢でしたが、この課題について実際に研究を
らにそのなかにベッドを作って置くという習性を持って
進める機会はあまりありませんでした。
います。このような手で物を工夫してつくるという習性、
これまで先生が関心を持って着目されてきた多岐に
作った物を組み合わせて使うといった習性を追求する
わたる課題は、ここに示した未完成のものも、すでに本
ことは、手の特段の器用さの探求にもつながる働態学
や論文になっているものも、ほとんどがヒトの働きや生
のひとつの課題と思われます。これは、霊長類の特殊
活と身体の相互作用に関わるものでした。これらの課
性と関連しており、興味深く重要な問題であることは間
題に関心を持つに至った経緯や解決に向けた展開の
違いありません。先生はこの課題についてもいろいろ
裏にある“物の見方・考え方”は、先生の残された貴重
なところで話題にされましたが、探求に関わる部分は
な遺産なのではないかと思います。先生は、「人類働
宿題として残されました。
態学とは、働くことは何かを考えるだけでなく、その働く
上記の諸課題のどれとも関連しますが、先生が最も
ことの実態が人間にとって何を意味するのかを考える
やりたかったのにできなかった研究は総じていえば、
学問である。」というコンセプトを示されています。これ
「知覚系の関与した生活の人類学」を展開することであ
を念頭に置きながら、先生の関心を示されていた課題
ったようです。具体的には、ヒトが行うことのできる細か
を思い起こし、現在の知見と照らして見直してみること
い手の動きの進化的背景、それらをどのように生活に
は、きっとわれわれに何かをもたらしてくれるでしょう。
役立てることができるか、それらが文化とどのように関
香原流の“物の見方・考え方”は、働態学分野の研究
わっているかという問題、労働やスポーツなどを通して
のこれからのさらなる発展に必要なヒントを与えてくれ
工夫して作り上げた体の動きや運動感覚は何を意味
るのではないかと思われます。
するか、匂いがわれわれの生活にどのように関与して
コメント
早弓 惇/日本女子大学
村の「夜明け前」は、人類学であるとの趣旨が印象に
プレゼンテーションの冒頭、若々しい香原先生の写
残っています。
今で言う認知症についても早くから言及されていまし
真に、降臨されたとのお話がありました。
人類働態学会の創設に深く関わられた、人類学教室
学生第一回生の篠崎信男先生が、戦後すぐの時期に
た。時代の大きな変化に対する人々の「適応」を見よ、
ということかと考えます。
霊媒実験を繰り返されたことを書かれています。心霊
現象も“好奇心の巨人”としての香原先生の視野に入
小島龍平/埼玉医科大学
っていたかと想像されますが、お話を伺ったことはあり
香原先生のあの笑顔にもう接することができないと思
ません。この世のことがあまりに面白く、あの世のことは
うと寂しいかぎりです.私自身は残念ながら,香原先生
後回しということだったでしょうか。
の調査や実験(海女などの)に直接参加する機会はあ
香原先生の人類学は、人類働態学と大きく重なって
りませんでした.香原先生を最初に知ったのは学部生
いると思います。多々いただいた課題の中で、島崎藤
の時代,「人類生物学入門」(中公新書,1975)を通し
-57-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
てでした.体育・スポーツを専攻しながら,生物としての
河原雅典/富山大学
ヒトの運動や動作の歴史や意味に興味をいだいてい
香原先生に初めてお目にかかったのは、人類働態
た時でしたから,夢中になって読みました.その後,岡
学会の全国大会で、私が山村での背負運搬について
田守彦先生に人類働態学会(「働態研」の時代)や人
発表したときのことでした。発表を終え質疑に入るやい
類学会のキネシオロジー分科会を紹介していただき,
なや、こちらが圧倒されるようなコメントを頂戴したこと
香原先生とも直接お話しする機会をもつようになりまし
を思いだします。そのとき「この研究,大いにやってくだ
た.香原先生はあるとき「私はアームチェア・ディテクテ
さい」と激励をいただいたことで、今にいたるまでその
ィブならぬアームチェア・アンソロポロジスト」とおっしゃ
研究を続けています。先生の御著書「人類生物学入
ったことがあるように記憶しております.そのときは十分
門」には「その身体から直接出発し、人類文化の基本
に意味を理解できないままでしたが,今考えると「デー
的構造を作るものが運搬である」と書かれ、人力運搬
タを得ただけで安心するなよ,そこからいかに考察し思
の重要性について述べられています。私にとっては音
索するかだぞ」とおっしゃっていたのかと思います.あ
叉のような一冊で、私自身の調律が狂ったときに元の
らためてご冥福をお祈り申し上げます.
状態に戻してくれます。
もう一つ思いだされるのは、「働態学とは自然人類学
大箸純也/近畿大学
と文化人類学の架け橋」という先生のお考えを聞いた
香原先生の追悼に関してコメントを求められてしまっ
ことです。この働態学観は私にはたいへん理解しやす
た。しかし、私は先生のことをあまり知らないのである。
く、いまでは私の働態学観となっています。最近では
私が本会に最初に参加させていただいたのは、1981
年賀状で近況を報告することしかできておりませんで
年であったが、その後の参加はあまり良くは無かった。
したが、毎年香原先生からは励ましの言葉を頂戴し、
せいぜい 3 年に 1 回程度であったろうか?香原先生が
私の活力源となっておりました。これからも先生から頂
本会の会長をされていた頃であるが、先生が壇上で発
戴した数々のお言葉は、ときに音叉、ときに活力源とな
表されている印象は弱い。
り続けることでしょう。この場をお借りして、これまでのこ
しかし、私にとっての人類働態学のイメージは、先生
そのものようなところがある。現代社会において様々な
問題が生じ、その解決を目的に多くの研究が行われる。
検討をつきつめて、細かいところばかりを追い求めてし
まう。そんな自分の状況において、どこかでうかがった
先生のお話の印象は「ヒトってこんな特性があるよね、
それが生活での行動を形成していますよね、昔も今も
変わらないよね、種々の生活を見てみましょう、その人
の特性って貴重ですよね」といった感じである。
学会の会場へまでの道で一緒になって、「親指革命」
の話をお聞きしたことがあった。ヒトを興味深く楽しそう
に話して下さった。実際には、このような考えで研究さ
れている方は、自分の周りにも多くおられるものの、そ
れを感じさせてくれるのが、香原先生の力であり、魅力
だと感じる。私にとっての人類働態学は、そんな香原
先生から発せられる魅力を、様々な分野の研究が取り
込んだり補強したりしたものです。あえて「人類働態学
とは」などと定義づけする必要を感じていない。それゆ
えに、「なぜ人類動態学会は、人類働態学の特集が多
いのか、そんなに自信が無いのか」と思い、話してしま
った。そんな魅力を教えていただいたことに感謝し、ご
冥福をお祈り致します。
-58-
とすべてに御礼申し上げます。ありがとうございました。
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
働態の窓
元気を出すための、気分転換の、そして働態学会へもっと参加したくなるための会報データベ
ース
大箸純也/近畿大学経営ビジネス学科
(「働態の窓」として記すための前書き。読み飛ばして
分の名字・姓名(姓名の場合、姓と名の間に空白
下さい。)作業効率を高め、誤操作を減らして安全性を
の有無で検出結果が異なります。空白無のデータ
高めるための人間工学的な方法として、機器・環境の
の方が多いでしょう)を入れる。
改善による支援がある。作業状況の改善に、人間自体
2.「Ctrl + Alt + l(エル)(エクセル 2007 以降)」(または、
の作業能力の向上・負担増加に大きな比重をおくべき
I列のフィルタの設定のボタンを押して、そのまま「O
ではない。しかし、人間側の精神状態も作業効率・安
K]のボタンを押す)す。
全性に大きく作用し、考慮すべき事項である。その人
3.検出結果行がスクロールで隠れている可能性もあり
間の精神状態、作業への姿勢に大きく影響する要素と
ます。どの列でもかまわないので、10 行目にカーソ
して、動機がある。本学会の研究、組織の活性化にお
ルを置いて、下へ移動してみる。
いても、この動機付けは検討されるべき事項であり、そ
さて、いくつか出てきませんか?出てこなかったら、
先生、先輩の名前でも入れてみて下さい。結構、出て
のための方法の提供として、以下の検討を行った。
インターフェースの設計方法の 1 つである構造化ユ
くるんじゃないでしょうか?そう、あなた、あなたの仲間
ーザインタフェース設計評価法(SIDE)においても、
が働態学会でされてきた貢献が示されているのです。
「やる気の醸成」は設計項目の 1 分類になっている。そ
ちょっと元気は出ないでしょうか?これから、このデー
の「やる気の醸成」を高めるための検討項目として、
タベースには新たにデータが追加されていきます。あ
「達成感」があり、行為に対するフィードバックが重要で
たなたの貢献、発表、投稿は、データベースに積まれ
ある。研究において達成感を高めるものは、期待した
ていきます。一回一回、地道な活動ですが、積み上げ
研究成果を得ることである。しかし、期待通りの結果を
られていくのを想像して、今後のご協力、お願い致しま
得ることは難しく、それは経験の少ない学生にとっては
す。え!でも、このデータベースの更新は大丈夫なの
特に言えることであろう。しかし、研究成果が期待通り
かが心配ですって。効果的なフィードバックとするには、
にならなくても、自分の個々の研究活動が、多くの地
素早い応答が必要ですね。でも、そんなことは(私は)
道な研究活動の積み重ねの 1 つとして認められている
気にしない。その理由は、「働態の窓」に投稿させてい
ことを知れば、研究活動への励み・動機付けになると
ただきます。
考える。その各人の研究活動をわかりやすく提示・フィ
ードバックするための方法として、データベースによる
研究活動の提示を提供する。以下に、その紹介を記
す
データベース改善への協力のお願い
このデータベースを有用なものとするための修正の
検討をお願い致します。修正とは、単純に会報の記述
が正確に載っているかということと共に、検索しやすい
内容にすることです。必ずしも、会報の記述と同じデー
(ここからが本題です)
会報の 100 号を記念して提供する計画だった「会報
タとすることがよいとは限りません。会報の記述自体に
のデータベース」が、ようやくできました(できたことにし
間違いがある場合もあります。
ました)。2 年も遅れてしまい、全くを持って申し訳ござ
特にデータベースとしての検討をお願いするのは、
いません(ま、別に期待はされていなかったでしょうけ
「題名」、「著者」、「KW](キーワード)の項目です。以
ど)。遅れたものの、「会報のデータベース」であると共
下のような修正があると考えています。
に「大会のデータベース」でもあるようにしました(それ
・データ入力ミスによる誤り(単純ミス、菊池と菊地など)
に伴って問題も発覚しました。「おはずしかしながらの
・同一人における旧字体利用の統一(澤と沢、髙と高、
お願い」に記してあります)。大会のデータベースとし
たことで、各発表の研究者で検索ができます。以下で、
自分の名前で検索をしてみて下さい。
冨と富など)
・姓名の姓と名の間に空白が入っているために、姓名
の入力で検出できない
1.セルの「F 列の 2 行目(「大箸」が入っている)」へ自
-59-
・適したキーワードの入力
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
また、分類の「性質」の内容もご検討お願いします。
フィルタの列はそれぞれが独立しているので、組み合
わせて利用することも可能である。
修正方法
以上のような修正・改善個所がございましたら、以下
のいずれかへご連絡下さるようお願い致します。
1.検索語検索:各記事の題名、著者名、および適宜
追加したキーワードから、検出する。
2.フィルタ検索:各記事はある程度分類付けている。
大箸純也([email protected])(当面)
その特定の分類で、エクセルのフィルタ機能を用い
働態学会事務局([email protected])
また、変更箇所は、以下のように示して下さるようお
願い致します。
変更の印:変更した行は、「T列」(「変更は1」)のセル
へ「1(何らかの文字を入れてくれればそれで構いま
せん)」を入れて下さい。また、修正したセルを赤く塗
っていただくようお願いします。以下に記すように、行
を追加した場合は、その行全体を赤くして下さい。
て抽出する。
以下は、各検索法についての利用法、補足である。
「1.検索語検索」について。
9 行目の左端に青色の枠で囲み「以上の検索全体:」
と記してある部分がある。その右端のセル(E 列)で、以
下のように設定できる。
利用:検索語検索がフィルタにおいて有効になる。
(不使用):「検索語検索」はフィルタにおいて無効
行の追加:有用な図、連絡事項など、新たに項目とし
て追加したい場合もあるでしょう。その場合は、行を
になる(すべてのデータが該当となる)。
設定できる語は 7 つまでである。その設定を組み合
挿入追加してもらって構いません。しかし、追加をし
わせて検出する。
ても、「検索語検索」では有効に機能しません。それ
設定項目で、検索対象語以外は、設定は選択制に
は非表示になっているセルやI列に式が入っていな
なっている。設定部分をクリックすると右側に現れる▼
いためです。何らかの行をコピーするか、コピーした
ボタンをクリックすると表示される項目から選択する。以
行を挿入するようにした上で、編集すべき項目を編
下に設定項目の意味を記す。
集すれば、検索語検索も有効になります。
検索対象語(F 列):検索対象語である。大文字・小文
字、半角・全角は区別される。長さに実質的な制限
ファイルへの誤変更防止について
変更されると検索語検索で問題が生じるセルは、基
はない。
本的には図形でおおったり、非表示にしています。た
題名/著者(E 列):検索対象語を検索する対象が記事
だし、「I列(検索語検索の検索対象語の設定での「適
の題名(F 列)か著者(G列)かの選択。題名にはキー
合:●、不適合:.」を表示する」の式も変更禁止の項目
ワードも含める。キーワードは H 列に入っている。シ
ですが、変更可能状態になっています。「シートの保
ンポジウムや特集の場合、それらのタイトルが、各記
護を有効」にすれば、変更できないようになります。た
事・発表においてキーワードとして入力している。他
だし、その場合は「Ctrl+Alt+l(エル)」でのフィルタの更
に適宜、キーワードを入れている。このキーワードは、
新ができません。I列のフィルタ設定ボタンをクリックし
今後会員の協力で充実していくべきだと考える。
存在/除外(D 列):検索対象語が存在したら採用する
て、更新をする必要があります。
なお、データベースのデータ自体は全く保護が無く、
か、存在するものを対象から除外するかの選択。
誤操作で変更が生じ得ます。それへの対策としては、
必要/選択/(不使用)(C 列):以上の設定を検出の「必
「変更部分の記録」が有効かもしれません。しかし、変
須(論理積 and)」とするか「選択(論理和 or)」とする
更するつもりが無いのであれば、ファイル自体をプロパ
か。「選択」とした場合、「選択」としたすべての検索
ティで「読み取り専用」にするか、再度ダウンロードす
条件の中で 1 つ以上が成立すればよい。「選択」が 1
ればよいでしょう。
つだけの場合は、結果的に「必須」と同じになる。「必
須」はその条件の全てが成立することが必要である。
(不使用)とした場合は、その設定条件は検索に用い
データベースにおける検索法
会報における個々の文章を「記事」と記す。発表抄録
られない。設定条件の順番は検索結果に影響しな
も個々の発表(抄録がなくても題名だけでも)について
い。
記事と記す。この記事の検索法としてはエクセルでの
すべての検索条件を満たした記事は、I 列が「●」と
通常の検索で行う以外に、以下の 2 種類がある。なお、
なる。フィルタで「●」を抽出すれば、目的とする検出が
どちらの検索もエクセルのフィルタ機能を用いている。
行われることになる。フィルタの条件は設定してあるの
-60-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
で、フィルタの条件を設定するボタン(I10 のセルのボタ
著者の所属と連盟の著者の記述を「他」として略した
ン)をクリックして、そのまま Enter とするだけで検出の
例がある(「著者」を「他」で検索可能)。その例は、所
更新となるが、「Ctrl + Alt + l(小文字のエル)」でも更
属が多くて、名称が長い場合や、シンポジウムの全体
新される。
としての項目で、共同担当者が多くて、それぞれの共
同担当者の名前は、個々のシンポジウムの発表で出
補足
記事が存在する場合は著者欄においては筆頭著者
の最初に「◎A」を加えている。発表題名があっても、
抄録が存在しない場合は、「◎A」は付加していない。
抄録の存在する発表、筆頭著者かどうかの検索条件
に利用できる。
てくる場合である。修正が必要だと思われたら、ご連絡
下さい。
「2.フィルタ検索」について
フィルタでは以下の 4 種類の分類がある。
1.大分類(J 列)
キーワードとして「連載」がある。
2.対象(K 列)
検索の「題名」にはキーワードが含まれる。シンポジ
3.インデックス(L 列)
ウムや特集のテーマは、個々の発表のキーワードへ入
れているので、検索語(例えば「高齢」)が個々の発表・
執筆の題名に含まれていなくても、検出される。
4.性質(M 列)
これらの分類で、適宜絞り込みを行う。概念的には
「大分類」が上位分類、「性質」が下位分類である。し
データは基本的には会報の記述に従っている。その
かし、階層的に分類されていない部分も多々ある。「イ
ため、同一対象でも時期によって記述が異なることが
ンデックス」と次の「性質」のフィルタは、上位の分類に
多々ある(特に所属機関)。
よっては、それと組み合わせずに、単独で用いた方が
所属機関は基本的に、機関のみを記し、部署は省略
効果的な場合もある。フィルタの分類相互間の構成を、
している。部署は会報自体から知ることができるもので
表1に示す。この表は、データベースにも「分類構成」
あり、データベースへ掲載する必要はないと判断した。
のシートに載せている。
所属機関の表記で、修正が必要な場合は、ご連絡下
さい。
表1.各分類でのフィルタの項目の構成。「<」と「>」でのくくりは、フィルタ項目で非常に例数の少ないもの。分類の
階層関係が整然としていないため生じている。分類としての存在意義はほとんどないと考える。また、各分類の項
目の順番は、エクセル上で表示されるものとは異なる。また、分類項目名は、エクセルにおいては、表 1 に示した
ものの最初の一字のみとなっているものもある(例えば「全国大会」、「東日本地方会」はそれぞれが「全」、
「東」)。
インデックス
以下の2つの分類は、上位の分類とは関係なく、種々の
大
分類で存在する。
対象
分
代表:特集(各特集の最初のページ)
類
代表:特集.副(特集の一部が後続の号に掲載される場合
の継続掲載部)
● ( ← 各巻の見出しを示します。「対象」、「インデックス」、「性質」での項目はありません)
索引(データベース検出例)
事 DB・索引
総目次.JHE
業
総目次.会報
総目次.大会
名簿
<代表:特集>
JHE
案内
運営
編集(投稿規定)
掲載論文要旨
-61-
性質
様々なもの
が存在は
するが、ほ
とんど利用
価値はない
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
会報
編集後記
案内・連絡
編集(募集)
<代表:特集>
憩
会議
挿絵
総会
理事会
編集委員会
記念大会運営
他会議
運営部(執行部、事務局などの交代時のメッセージなど)
地方会・国際
会則
案内
会費・刊行
企画他
報告
他事業
情
報
研
修
・
催
事
大
会
シ
ン
ポ
ジ
ウ
ム
他
一
般
(
一
般
の
記
事
)
書籍(書評)
研究室紹介
働態ミニ情報
催事(他学会開催など)
国際(国際学会参加記など)
夏季研修会
秋季研修会
講演
講習会
国際
発表会(発表抄録のある夏季
研修会など)
催事(退職、交流会関係など)
国際
全国
東日本地方会
西日本地方会
九州地方会(後に西日本地方
会へ移行)
(「大会」の項目に以下を追加)
共生
他(他学会との共催)
(単独開催のシンポジウム形
式のものは、「研修・催事」の
「発表会」にある)
(以下は「研修・催事」、「大会」、「シンポジウム」
(「代表:」は特集・文集の先頭を示す)
代表:会(大会記事の最初、案内であることが多い)
代表:会.副(開催記(大会開催報告)が多い)
代表:テーマ.会(特定のテーマを持つ会で、研修会であ
ることが多い。全国大会の第1回と第2回はこれに該当)
代表:抄録(最初の抄録集)
代表:抄録.副(分割された抄録集や司会者のまとめ)
代表:テーマ(主にシンポジウムのテーマ)
<代表:特集>(会報としての特集記事となっている場合)
<代表:特集.副>
提示(プログラム、開催案内など)
発表:一般(一般演題の各演題)
発表:シンポジウム(シンポジウムの各演目)
発表:特別講演
発表:研修会他
開催記(個々の文章で、大会開催報告や参加記、受賞の
感想など)
<話題らん>(参加記が2題)
(各分類間での階層関係はほとんどない)
(「対象」「インデックス」の分類では、分類項目以外の「空白」部が主要部)
会員だより
代表:特集
会報
代表:特集.副
国際
働態の窓
話題らん
(実際には、これら以外の性質の文章が多い。)
-62-
で共通)
開催案内
案内
プログラム
記録(口述
の記録)
開催記
参加記
受賞記
抄録
抄録まとめ
(司会者な
どがまとめ
たもの)
題名(発表
はあるが抄
録はないも
の)
<論説>
<記事>
思う
海外文化
記事
記録
論説
慶事
国際会議
題名(特集な
どのタイトル
が多い)
追悼・訃報
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
事務局から
人類働態学会会報
バックナンバーと製本版販売のご案内
人類働態学会の「働態研究の方法」を販売し
ています
◆人類働態学会会報の第 1 号(1970 年 9 月 1 日)か
人類働態学会会員の最近
ら第 77 号(2000 年 6 月 1 日)までを 1 冊にまとめた製
の成果をまとめた「働態研究
本版を、よりお求めやすい安価にて提供しています。
の方法」が学会創立 40 周年
研究会時代から会員の議論の場として、また情報交
の機会に合わせて出来上が
換の場として活用されてきた会報の貴重なバックナン
りました。すでに会員の皆様
バーを一括してそろえるチャンスです。第 1 回からの人
にはお手元に届いているこ
類働態学会大
とでしょう。幸いに多くの会
会開催一覧もつ
員からご投稿いただき、102
いております。
編が収録されています。人の働態をとらえる視点を俯
価格:25,000 円
瞰するよい冊子となりました。
↓
働態をみる視点の広がりと深みは、この本の 4 章の
6,000 円
区分けにもよく現れています。集まった投稿を反映して、
(税・送料込み)
この 4 章は、「生活の構造をみる」、「働態を観測する」、
「生活働態を調べる」、「改善を支える」に分けられてい
ます。内容は多岐にわたりますが、研究視点の拠りど
ころと方法の工夫や展開ぶりを知るのに役立つ研究方
◆人類働態学会会報の第 78 号(2000 年 9 月 1 日)
から第 95 号(2011 年 11 月 4 日)は通常版(冊子)です。
価格:1,000 円(税込み・送料別)
法コンテンツ集となっています。
本書は、人類働態学会の研究動向をお互いに知って、
深みのある示唆と手がかりを共有する目的で企画され
※送料は冊数によります。実費のご負担をお願いしま
ました。その目的にそった刊行ができたことを喜んでい
す。個人で、研究室で、図書館等で、ぜひご購入くださ
ます。随所に目を通されて、大いに活用してくださるよう、
い。
編集ワーキンググループ一同心から願っています。
人類働態学会「働態研究の方法」編集
申込方法:
ワーキンググループから
(小木和孝 記)
メール([email protected])で「送り先」
をお知らせください。
「働態研究の方法」の購入方法
お送りする際に振替用紙を入れさせていただきま
◆E-mail にてお申し込みください。代金の振込用紙を
す。
お送りします。入金の確認後、「働態研究の方法」を
※公費でのご購入など、必要書類がある場合はお
問い合わせください。
お送りします(振込受領書をもって領収書とさせてい
ただきます)。
※E-mail
[email protected]
(事務局代表)へ、
人類働態学会事務局(http://www.humanergology.com)
〒151 -0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷 1-1-12
桜美林大学内 3F
公益財団法人大原記念労働科学
研究所内(担当:鈴木)
TEL: 03-6447-1331 FAX: 03-6447-1436
E-mail [email protected](事務局)
[email protected] (入退会専用)
①購入者名 ②冊数 ③送付先 ④電話番号
を明記してください。
◆1 冊 2,000 円(税込み・送料別)です。
◆送料は購入者でご負担ください。冊数により異なりま
すのでお問い合わせください。
※送料の例 1 冊なら『レターパックライト』でお届け
→ 送料 360 円(全国一律)
*お問い合わせは極力メールでお願い致します。
◆購入にあたり、ご所属先等で所定の書式がある場合
や別途領収書が必要な場合は、お申し出ください。
-63-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
おはずしかしながらのお願い
会報編集委員長 大箸純也/近畿大学
本号を持って、私が編集の責任者となるのは終わり
ての責務かなと考えています。もう、今さら抄録の執筆
ます。本当は「編集するのは終わり」と記したかったの
もお願いできないので、プログラムの掲載ぐらいしかで
です。しかし、今頃というか、この 1 年間、会報のデー
きないだろうなとは思います。でもしなければいけませ
タベース作成をしていて、大きな穴を作っていたことに
ん。ということで、申し訳ございません。以下の大会に
気付きました。全国大会・地方会で、プログラム・抄録
関してのプログラム、発表抄録、大会情報をお持ちの
が全く掲載されていないものがあったのです。本来は、
会員の方、ご連絡いただけないでしょうか。よろしくお
会報が未掲載の抄録を大会事務局へ請求して集めて
願いいたします。これが終われば、私は編集委員とし
掲載しなければならなかったのですが、していません
ても退任できます。
でした。私が編集委員となってから開催された大会は
掲載していますが、編集委員となる時点で、まだ未掲
連絡先:大箸純也 [email protected]
情報が記載されていない大会(回[年度])
載だったものが、手つかずになっています。この未掲
全国大会: 35[2000], 36[2001], 37[2002], 39[2004]
載部の存在を、データベースでの検索結果における、
東日本地方会: 9[1980?], 12[1982?], 24[1995],
不在部・穴として知りました。ということで、その未掲載
部分をできるだけ埋めることが、私の元編集委員長とし
33[2004]
西日本地方会: 30[2004], 31[2005]
理事会報告(議事録・議事メモ)
人類働態学会第 23 期第 1 回理事会
・前回議事録について確認し承認された。
日時:平成 26 年 8 月 18 日(土)17:00~19:00
3.理事の各担当について・・・・・・・・・・・・・・【資料2】
会場:順天堂大学本郷キャンパス 10 号館 2 階 203 会
・理事の担当する委員会について提案がなされ、承認
議室
された。
出席者:植竹照雄、岡田明(会長)、加藤麻樹、川田
裕次郎、岸田孝弥、酒井一博、下田政博、申紅仙、
4.担当幹事の起用について
竹内由利子、城憲秀、橋本修左、堀野定雄、松村
・各委員会において幹事の起用が必要であれば、若
秋芳、水野基樹(副会長)、水野有希、水戸和幸、
手の会員(若手研究者や大学院生等)を次回の理
山田泰行(事務局長)、吉村眞由美
事会までに岡田会長まで推薦することが確認され
欠席者:榎原毅、大箸純也、河原雅典、小木和孝、
た。
鈴木一弥、真家和生、松田文子、瀬尾尚聡、平野
5.東日本地方会・共生シンポジウム(2014)案につい
和彦(敬称略)
て
1..第 23 期理事会会長挨拶
・下記の案が承認された。
・冒頭、第 23 期理事会会長に選出された岡田会長よ
大会長:名古屋和茂先生(横浜 YMCA 学院専門学
り、これまで人類働態学会が積み上げてきた伝統を
校作業療法科)共生シンポ:12 月 20 日(土)13
守り、さらに学会を発展させていくことを目標に、力
~17 時「自転車」「介護ロボット(検討中)」地方
を合わせて取り組みたいとの挨拶があった。
会発表:12 月 21 日(日)9~11 時,13~15 時
2.理事・監査自己紹介
スケジュール:8 月初旬 1st 案内,8 月末 2nd 案内,
・理事及び監査の自己紹介が行われた。
9/27(土)エントリー締切,
11/8(土)和文抄録締切,12/8(月)会報用和文抄
●審議事項
1..第 23 期理事会の組織体制について
録締切
・会員に周知するため、第 1 回の案内を早急に送るこ
・理事会の組織体制について提案がなされ、承認され
た。具体的な方針としては、組織の継続性が保たれ
とが決定された(担当:水戸理事)。
るように、各委員会に経験のある理事と若手の理事
・共生シンポとして行いたいテーマがあれば水戸理事
を配置する形で編成を行った。
まで連絡をする。
2.第 22 期第 9 回理事会議事録の確認・・・・・・【資料1】
6.第 50 回全国大会・夏季研究会(2015)について
-64-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
・開催日候補(6 月 19 日(金)~21 日(日)または 26
1.各担当より報告
日(金)~28 日(日))があげられ、8 月中に他の学会
○JHE
と重ならないように調整を行うことが決定された。
・JHE42 号合併号を印刷する段階であることが報告さ
・大会と一緒に開催していた見学会については、別日
れた。
程で開催する形がよいのではないかとの意見が出さ
○会報
れた。
・会報の 100 号は印刷を検討していることが報告され
た。
・岡田会長より、50 回の記念大会なので記念企画を実
○研究推進
施する予定であることが報告された。
・岡田会長より、科研費の申請の準備をしてほしいとの
7.人材育成企画について・・・・・・・・・・・・・・・【資料3】
提案がなされた。
・加藤理事より、これまで日本経営工学会で行われて
○国際交流
きた研究部会である人材育成のための研修会を継
・城理事より、6 月に開催された IEA の理事会に出席
続的に行っていくために、今年度より人類働態学会
できなかったが、理事会の内容はニュースレターが
において実施していく案が提案された。この研究会
届き次第周知すること、2015 年にオーストラリアで
の立ち上げと開催に尽力をされてきた堀野理事と岸
IEA が開催されることが報告された。
田理事より研修会の趣旨や意義についての説明が
○将来計画
なされ、人類働態学会において実施していくことが
・岡田会長より、加藤理事からの提案を早急に進めて
承認された。
ほしいとの提案がなされた。
・人材育成企画については、将来計画委員会の中で
○働態研究ツール集
検討していくことが確認された。また、これまで行わ
・働態研究ツール集の作成が企画されていることが報
れてきた夏期研修会の内容を含める案が出された。
告された。
・加藤理事より、本年度は、次年度以降の流れをつくる
○財務
ために、夏期休業中に 1 日で実施できる案として、
・会費未納者に対しては個別に入金を求める予定。
千葉市原市トヨタ L&F(物流)での企画が提案され、
承認された。日程は、9 月 18 日(木)に実施すること
2.会員動向
が決定した。会員への案内については、水野有希
・下記の通り会員動向について報告がなされた。
理事から学会員のメーリングリストを使用して発信す
現在の会員数 215 名(一般 185 名、学生 27 名、名誉
会員 3 名)
る予定である。
入会:井筒紫乃(日本女子体育大学)、坪井恭紀、高
8.堺市講演会(別紙)と経費支出について・【資料4】
橋秀子、岩浅巧(順天堂大学大学院)、永井正太郎、
・人類働態学会が主催する堺市での講演会について
清水翔太、岸田朋大、今井駿(大阪市立大学大学
報告がなされ、その際に経費としてかかった参加者
院)
飲料代と会場土産代について学会経費として支出
退会:山崎和彦(実践女子大学)
することが提案され、これが承認された。
3.その他
・講演の内容を共有するために、講演の要旨について
・新しく会長の挨拶と理事名簿をホームページへ掲載
会報に掲載することが決定した。
する。
9.今年度理事会開催日について(回数、開催地、等)
・今月中に全国大会の日程確定し、ホームページで案
・これまでは 2 ヶ月に1回(年 6 回)を目処に理事会を
内する。
開催していたが、一同に会して審議する必要がある
・ホームページの理事の所属の表記方法については
場合に、理事会を開催することが承認された。
申告された表記方法で掲載する。
・次回は、東日本地方会のお昼の時間に実施する予
・加藤理事より、人類働態学会のホームページに 12
定。
月 6・7 日で開催される人間工学会関東支部大会の
10.その他
リンクを作成することが提案され、承認された。人類
・特記事項なし
働態学会が後援として協力することが確認された。
人類働態学会の会員が、人間工学会の会員と同じ
●報告事項
参加費で参加できるのかどうかについて、加藤理事
-65-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
が人間工学会事務局に問い合わせることが確認さ
案が提案され、これが承認された。
れた。
・これらの書籍の編集については、執行部において編
(文責:川田裕次郎)
集委員会の設置を検討することが確認された。
5.賛助会員の加入推進について
人類働態学会第 23 期第 2 回理事会
・賛助会員の加入を推進していくことが確認された。な
日時:平成 26 年 12 月 21 日(日)12:00~13:30
お、賛助会員 1 名(個人)(12 月 12 日現在)。
会場:横浜 YMCA 学院専門学校 7 号館 703 号室
出席者:植竹照雄、岡田 明(会長)、加藤麻樹、川田
6.次回理事会の開催と場所について
裕次郎、小木和孝、下田政博、竹内由利子、橋本
・次回の理事会の開催場所について、大阪での開催
修左、平野和彦、堀野定雄、真家和生、松田文子、
可否が審議され、これが承認された。次回の理事会
松村秋芳、水野基樹(副会長)、水野有希、水戸和
の開催日程案については、後日、執行部から提案さ
幸、山田泰行(事務局長)
れることが確認された。
欠席者:榎原 毅、大箸純也、河原雅典、岸田孝弥、
酒井一博、鈴木一弥、瀬尾尚聡、申 紅仙、城 憲
7.その他
・2015 年の東日本地方会の開催場所は、2014 年度
秀、吉村眞由美(敬称略)
に引き続き、横浜 YMCA 学院専門学校(大会長:名
●審議事項
古屋氏)で開催されることが決定した。開催日程に
1.追悼文掲載について
ついては、関連学会との日程調整を行ったうえで決
・香原志勢が 11 月 16 日に逝去されたことを受けて、
定することが確認された。
以下の通り、追悼文を掲載することが決定した。
●報告事項
JHE への obituary の掲載(執筆担当:岡田守彦、
1.JHE 発行について
掲載予定:JHE Vol43(2))
・JHE43 号の発行を進めていることが報告された。
会報への追悼記事の掲載(執筆担当:酒井一博、
・日本からの投稿が少ないので、日本からの投稿を増
掲載予定:2015 年 2 月発行号)
やすための工夫が必要であることが確認された。
2.夏期研修会について
2.会報について
・加藤より、資料 1 に基づいて、2015 年度は若手育成
・100 号記念号の内容について創刊号からの目次総
合宿例会と併設して、夏期研修会を夏休み中に実
覧の掲載を行うことが確認され、水野副会長のもとで
施することが提案され、これが承認された。今後は、
作業が進んでいることが報告された(発行時期は、2
加藤を中心にWGを編成して準備を進めていくこと
月を予定)。
が確認された。なお、具体案として、学生の学びを
深めるために 2 泊 3 日での実施すること、英文レポ
3.第 50 回全国大会について
ートのミニワークショップの実施などがあげられた。
・以下の通り大阪市立大学での開催が決定した。
・会期:2015 年 6 月 20 日(土)~21 日(日)
3.会報 100 号の紙媒体発行について
・大阪市立大学学術情報総合センター大会議室(250
・水野より会報 100 号を記念して紙媒体での発行計画
名収容)
が報告され、これが承認された。これに伴い、経費の
JR 阪和線杉本町下車徒歩 5 分(新大阪、伊丹、
捻出について財務担当の竹内より報告が行われ、
関西空港から約1時間)
費用を賄えることが確認された。発行部数について
・内容:研究発表(口頭・ポスター)、特別公演・シンポ
は、在庫を残さない程度の部数にすることが確認さ
ジウム等(未定)、懇親会、理事会
れた。
(夏期研修会は別に設定)
4.書籍発行計画について
4.各担当幹事の起用について
・水野より会報 100 号記念の他に紙媒体の記念書籍
・第1回理事会で決定した通り、幹事の起用が必要で
の発行計画が提案され、これが承認された。
あれば、岡田会長に若手の会員を推薦することが確
・また、科研自転車研究の成果として一般向けの書籍
認された。現在、以下の部署は、幹事の起用を検討
の発行が提案され、これが承認された。
中であることが報告された。
・バス研究の成果についても一般向けの書籍の発行
-66-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
「JHE 編集委員会」、「事務局」、「若手育成企画
●審議事項
担当」
1.全国大会企画について
・全国大会のスケジュールが承認された。
5.各担当より報告(上記以外)
・大会期日:2015 年 6 月 20 日(土)~21 日(日)
○広報
・開催場所:大阪市立大学杉本町キャンパス学術情報
・ホームページを更新したので、確認をしてほしいとの
総合センター(JR 阪和線杉本町駅前;
ことが報告された。
http://www.osaka-cu.ac.jp)
○西日本地方会
・大会案内:シンポジウム(案)
・西日本地方会について、資料 2 に基づいて、12 月
①自転車科研の総まとめと次期企画研究について
26 日(金)に産業医科大学で開催されることが報告
自転車科研の総まとめとしてシンポジウム企画が提
された。
案され、承認された。シンポジウムの一般公開は植
○研究推進
竹、真家に検討いただくことが承認された。
・科研費の申請を進めて行くことが報告された。
②「人類働態学再考:みんなで作る人類働態学!」
○国際交流
(仮題)
・2015 年にオーストラリアで IEA が開催時のアフィリエ
人類働態学を再考するためのシンポジウム企画
イトメンバーの会議には、城と吉川が参加する予定
(発案:榎原)の提案が承認された。具体的な企画は
であることが確認された。
4 月初旬に提出される予定。研究発表(口演、ポスタ
○働態研究ツール集
ー)、懇親会、他
・働態研究ツール集の作成についての発行企画案
・大会参加費:4,000 円(学生 2,000 円)
(別紙資料)が報告され、この企画案に基づいて発
・懇親会費:3,000 円(学生 1,000 円)
行準備を進めていくことが報告された。
・申込方法:(3 月上旬頃に案内予定)
○財務
・演題申込締切:3 月末~4 月上旬頃を予定(3 月上旬
・会費請求を 11 月 12 日に当年度分、11 月 30 日に
頃に案内予定)
当年度分+未納分の会員に郵送したことが報告され
・和文抄録締切:5 月頃を予定(3 月上旬頃に案内予
た。会費未納者に対しては個別に入金を求める予定
定)
である。
・英文抄録締切:学会当日
6.会員動向
・抄録書式:(3 月上旬頃に案内予定)
・下記の通り会員動向について報告がなされた。
・プログラム:(4 月頃に案内予定)
現在の会員数 212 名 (一般 182 名、学生 28 名、名
2.夏季研究会について
誉会員 2 名)
・2015 年度は若手育成合宿例会と併設して、夏季研
入会:梅原彰宏(帝京平成大学)
究会を夏休み中に実施することを検討していたが、
退会:北川睦彦、岩切一幸、内藤宏、(香原志勢)
本件について加藤より、夏季研究会企画として
(文責:川田裕次郎)
JAXA 施設見学についての提案があり、これが承認
された。今後は JAXA の見学日程の検討と駅からの
人類働態学会第 23 期第 3 回理事会
移動手段を検討する必要があることが報告された。
日時:平成 27 年 3 月 7 日(土)17:00~19:00
日程については、担当の加藤と執行部で確定させる
会場:順天堂大学本郷キャンパス 8 号館 7 階(742 号
ことが承認された。
室)
出席者:植竹照雄、榎原毅、岡田明(会長)、加藤麻
3.書籍発行計画について
樹、川田裕次郎、河原雅典、岸田孝弥、小木和孝、
・書籍発行計画の担当者について以下のように承認さ
下田政博、竹内由利子、城憲秀、平野和彦、堀野
れた。
定雄、松田文子、水野基樹(副会長)、水野有希、
・ツール集(日本語版)働態学事例集→担当 水野基
水戸和幸、山田泰行(事務局長)
樹:和文原稿と英文原稿を同時に集めるという意見、
欠席者:大箸純也、酒井一博、申紅仙、鈴木一弥、
専門家向けまたは一般向けの書籍にするのかという
瀬尾尚聡、橋本修左、真家和生、松村秋芳、吉村
意見が出され、現在進行中の英文“Practical
眞由美(敬称略)
Tools”の投稿募集と調整するため、同ワーキンググ
-67-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
ループと協議してすすめることとした。また、前回出
追悼文(酒井),香原先生の偲ぶ会の報告
版した「働態研究の方法」を学会ホームページに掲
(田中)、菊池安行先生記念事業の報告(岡田)、全国
載する案が提出された(著者全員の掲載許可が必
大会案内、第 49 回大会報告、地方会抄録などを掲
要)。本件に関わる 担当は、当面の間、執行部で行
載することが確認された。
うことが承認された。
・発行スケジュール 全国大会の受付に見本を展示す
・科研自転車研究の成果集→担当 真家,植竹:現在、
真家、植竹を中心に進行中であることが報告された。
報告書をベースにして書籍の発行を検討することが
る予定であることが報告された。
3.学会HPについて
学会 HP のタイムリーな更新とメンテナンスの推進
承認された。
を目的として、若手担当幹事:稲葉健太郎(三菱総
・バス車内事故研究成果集→担当 堀野:堀野を中心
研 DCS(株))の起用が承認された。尚、現在の学会
に成果集をまとめることが承認された。
HP の更新には HTML 言語の知識を要するため、
4.全国大会(来年第 51 回大会)候補地について
更新しやすい HP を再構築すべきとの意見が出され、
・河原(富山大学)より富山大での全国大会開催を前
今後検討することとなった。
向きに検討したいとの提案があった。
4.各担当より報告(上記以外)
5.次回理事会について
○東日本地方会(水戸)
・次回は、全国大会 1 日目(6 月 20 日(土))昼休み(1
・第 43 回東日本地方会と第 11 回共生シンポジウムの
時間半程度)に開催することが承認された。会議の
報告が行われた。第 43 回東日本地方会:参加人数
効率化をはかるため、議題は事前にメールで回覧す
44 名(会員 24 名、学生 20 名)
・第 11 回共生シンポジウム:参加人数 43 名(会員 15
る予定。
名、学生・一般 28 名) 懇親会:参加人数 31 名(会
6.その他
員 13 名、学生 18 名)
・会報記事の多様化について次回以降の理事会にお
・収支:収入 219,500 円、支出 219,240 円、残金 260
ける再検討事項とした。
円
・書評の依頼:日本生理人類学会から「人間科学の百
○国際交流(城)
科事典」について書評の執筆依頼があり、岡田より
2015 年 8 月にオーストラリアのメルボルンで開催さ
適任者(坂本先生を予定)へ執筆依頼を行うことが
れる国際人間工学会において、IEA カウンシルミー
承認された。
ティングが行われるため、本学会からも国際交流担
●報告事項
当を中心に学会参加者が出席する予定であることが
1.JHE 発行について
報告された。
○財務(竹内)
主な報告は以下の通り(下田)。
会員からの会費納入状況について報告が行われ
・Vol.43(2014)発行計画
-No.1:Original 4,Communications 1(近日中発
た。JHE 発行の進捗によっては財政を圧迫する可
行予定)
能性があることについて報告が行われた。
-No.2:Original 3,Communications 2,第 49 回
5.会員動向(3/6 現在)
大会英文抄録(全国大会前に発行予定) 現在、査
・現在の会員数については以下の通りであることが報
読中の原稿が 4 編、岡田守彦先生の依頼している
告された。現在の会員数 209 名(一般 179 名、学生
香原先生の追悼文を掲載予定。
28 名、名誉会員 2 名)
・投稿規定の改訂
【入会】千葉馨(公立はこだて未来大学)
論文別刷りについて、今後は PDF 形式にて提供する
【退会】白垣潤、勝浦哲夫、江村綾野、武山英麿
ことが承認された。
6.その他
2.会報 100 号発行について
・竹内より「働態研究の方法」の注文(大学のテキスト
・総目次は、各号の目次を詰めて印刷し、別冊として
指定として)入っていることが報告された。
発行することが承認された。
・小木より「Ergonomics Checkpoints」の新刊を出版
・その他の内容として、堺市講演会(堀野),香原先生
予定であることが報告された。
-68-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
・堀野より、ドライブレコーダーの現状が報告された。
点を進めていく:原稿作成用テンプレート(英語版・
日本版)を作成する。/原稿受付用のメールアドレ
人類働態学会第 23 期第 4 回理事会
スを設定する。/原稿募集を学会員へ案内する。
日時:平成 24 年 6 月 20 日(土)12:20・13:20
7.次回理事会日程
会場:大阪市立大学杉本キャンパス学術情報総合セ
次回の理事会は 9 月・10 月の間に実施することとした
ンター10 階
(日程の詳細は後日連絡する)。
出席者:植竹照雄、榎原 毅、大箸純也、岡田 明(会
(文責:川田裕次郎)
長)、加藤麻樹、川田裕次郎、河原雅典、岸田孝弥、
小木和孝、下田政博、鈴木一弥、竹内由利子、城
人類働態学会第 23 期第 5 回理事会
憲秀、橋下修左、平野和彦、堀野定雄、真家和生、
日時:平成 27 年 10 月 30 日(金)18:00~19:30
松田文子、松村秋芳、水野基樹(副会長)、水野有
会場:順天堂大学本郷キャンパス 10 号館 1 階 105 カ
希、山田泰行
ンファレンスルーム
欠席者:酒井一博、申 紅仙、瀬尾尚聡、水戸和幸、
出席者:植竹照雄、岡田 明(会長)、加藤麻樹、川田
吉村眞由美(敬称略)
裕次郎、岸田孝弥、下田政博、竹内由利子、城 憲
●審議事項
秀、松村秋芳、小木和孝、水野基樹(副会長)、水
1.全国大会の中間報告
野有希、水戸和幸、山田泰行(事務局長)
・全国大会が順調に進行していることが報告された。
欠席者:榎原 毅、大箸純也、河原雅典、酒井一博、
申 紅仙、鈴木一弥、瀬尾尚聡、橋本修左、平野和
2.優秀発表賞について
彦、堀野定雄、真家和生、松田文子、吉村眞由美
・優秀発表賞の規定(11 年前に作成)を改訂する必要
(敬称略)
性があるため、執行部で修正案を作成し、次回以降
の理事会で継続審議することとした。なお、修正案
●審議事項
の作成にむけて以下の意見が出された:(学生対象
1.第 51 回全国大会について ・・・・・・・・・・・【資料1】
の賞と若手研究者対象の賞を設定すること。/事前
・資料1に基づいて、第 51 回大会の準備状況が報告
に選出基準を作成して公開すること(発表者が賞を
された。大会は、2016 年 6 月 11 日(土)、12 日(日)
目指すための参考にできるようにするため)/表彰
に富山大学芸術文化学部(高岡キャンパス・河原大
を担当する役割を理事会内に設置して業務を担当
会長)で行われる予定である。
すること(大会ごとに大会運営者が担当することは負
2.優秀発表賞について
担になるため)。
・前回から審議が継続されている優秀発表賞の取り扱
3.決算・予算、監査報告について
いについて、次回の理事会までに、理事の中から担
・適正に予算が執行されたことが報告され、これが承
当者を決定し、執行部との協議を経て、3 月の理事
認された。
会までに方向性を示すことが承認された。意見とし
て、若手の研究者の受賞枠を増やすこと、受賞者に
4.総会議事内容
JHE への積極的な論文投稿を促す工夫が必要で
・各委員会より 2014 年度活動報告及び 2015 年度
ある等があげられた。
活動計画が報告された。
3.役員選挙について
5.会報
・選挙管理委員として推薦できる候補者がいれば事務
・会報は電子版で発行しているため、ホームページに
局まで連絡することが報告された。人選については
アップした時点でメーリングリストから会員に周知す
事務局に一任することが承認された。今後は1月上
ることとした。
旬に投票を行う予定である。
6.「働態研究に役立つツール」と「Practical Tools in
4.次回理事会について
Daily Work Life Research」の原稿募集
・東日本地方会の際に理事会を実施することが承認さ
・資料 3 に基づき、原稿募集の案内を会員へ案内す
れた。平成 27 年 12 月 19 日(土)、20 日(日)を候
ることとした。今回の書籍発行は、学会の発信力を
補日として、詳細な時間は後日メールにて打ち合わ
高める目的があることが共有された。今後、以下の
-69-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
せることが決定された。
○会報(大箸)
・岡田より、会報の編集作業が以下のとおり進んでいる
●報告事項
ことが報告された。
1.菊池安行氏・田中純夫氏ご逝去
100 号と 101 号は編集を終了していること、102 号
・菊池安行氏、田中純夫氏のご逝去について報告が
は今年 6 月の第 50 回全国大会案内、抄録、自転車
行われ黙祷が捧げられた。また、会報に菊池氏の追
シンポジウム原稿(堀野)を掲載することが報告され
悼文を掲載することが承認された。
た。これに加えて、102 号に夏季研究会の記事、菊
2.夏季研究会について
池先生の追悼記事、ワークショップの記事(植竹)を
・加藤より今年度の報告が行われた。当日は、古川宇
掲載する案があげられ、これらが承認された。
宙飛行士に登場いただいて盛会に行うことができた
○東日本地方会(水戸)
こと、今後の予定として研究会の成果集の作成を行
・水戸より、資料に基づいて、シンポジウムを 2 つ企画
うことが報告された。また、次回以降の課題として、
していることが報告された。
初日のみの参加では勉強が不十分になってしまう可
○西日本地方会(大箸)
能性がある点があげられた。
・岡田より、九州共立大学の船津先生のもとで開催さ
れることが報告された。
・山田より、来年度の夏季研究会の予定について報告
が行われた。いくつかの実施案(競輪スポーツセンタ
○研究推進(植竹)
ー、八街スイカ農業、ショッピングモールなど)があげ
・研究の論文化を推進する具体的な案を理事会で検
討したいとの報告がされた。
られ、今後、具体的な内容について詰めていく予定
○国際交流(城)
であることが報告された。
・城、川田より、資料に基づいて、国際人間工学会
3.第 50 回全国大会報告
(IEA)の理事会への参加報告が行われた。次回の
・岡田より、第 50 回大会の収支決算報告が行われた。
IEA がフィレンツェ(イタリア)で開催されることが報
4.科学研究費申請
告された。また、小木より Ergonomics
・加藤より、人類働態学会のメンバーを中心に自転車
Checkpoints の編集状況について報告が行われ、
の研究を発展させる形で科学研究費の申請を行っ
国際人間工学会(IEA)においてレビューミーティン
たことが報告された。ワークショップの開催を企画す
グを実施したことが報告された。人類働態学会と国
ることや夏季研究会の取り組みも科研費の研究と連
際労働機関(ILO)の協働で本稿のドラフトを作成し
動させることで発展性と継続性を保つことができるの
ており、さらに国際人間工学会(IEA)の協力を得る
ではないかとの意見が出された。
ことで国際的な連携関係が強化できることが報告さ
れた。
5.各担当より報告
○働態研究ツール集(小木)
○JHE(下田)
・小木より、資料に基づいて、26 名で 33 編の投稿があ
・下田より、JHE の編集作業が以下のとおり進んでい
ったことが報告された。今後は、和文と英文のテンプ
ることが報告された。
レートを作成し、ホームページにアップロードするこ
43(2)2014:10/30 納品予定で 1 週間以内に発送
とが承認された。また、50 編を目指して追加募集を
作業である
行うことも承認された。
44(1)2015:Original 2 編,Comm.1 編を掲載決
○財務(竹内)
定で来年1月頃発刊予定である
・転居先不明者が多数おり連絡が滞っているので、理
44(2)2015:Original 2 編を掲載決定、第 50 回
事から声をかけることが決定された。
大会 Proceedings、2015 年度(来年 3 月ま
で)発刊を目指すこと
7.会員動向(10/28 現在)
・現在の会員数 211 名(一般 182 名、学生 28 名、名
また、現在の状況として、Original5編、Comm.1
誉会員 1 名)
編が査読中であり、東南アジアの投稿が多いことが
報告された。そのため、日本人からの投稿並びに学
【入会】湯川治敏(愛知大学)、粂川美紀(所属確認中)
会員からの投稿数を増やす活動の必要性が指摘さ
【退会】池田良夫(愛知工業大学)、熊倉博雄(大阪大
れた。
学・逝去)、田中純夫(順天堂大学・逝去)、菊池安行
-70-
人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
(名誉会員・逝去)
しいことが報告された。
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷 1-1-12 桜美
8.その他
林大学大学院内 3F
・JHE の国内投稿者を増やすための方策として、会員
公益財団法人大原記念労働科学研究所内
へのメーリングリストで呼びかけること、これまでの研
TEL:03-6447-1331 FAX:03-6447-1436
究発表や賞を受賞している人に呼びかけることが挙
E-mail [email protected](事務
げられた。本件は、次回の理事会での継続審議とし
局代表)
た。
[email protected](入退会専用)
(文責:川田裕次郎)
2.JHE への論文投稿促進について
人類働態学会第 23 期第 6 回理事会
・JHE への論文投稿促進方法として、①今年度の大
日時:平成 27 年 12 月 20 日(日)12:30~13:25
会の座長から推薦のあった方に投稿を促すメールを
会場:横浜 YMCA 学院専門学校(7 階 703 会議室)
編集委員長名で行うこと、②会員にメーリングリスト
出席者:植竹照雄、岡田 明(会長)、加藤麻樹、河原
で投稿を呼びかけること、以上を近日中に実施する
雅典、川田裕次郎、小木和孝、下田政博、申 紅仙、
予定であることが報告された。
・また、今後の検討事項として、①理事が 1 編ずつ投
鈴木一弥、竹内由利子、橋本修左、堀野定雄、真
家和生、松村秋芳、水野有希、水戸和幸、山田泰
稿への働きかけを担当すること、②発表者に
行(事務局長)
Communications でもよいので投稿を促すこと、③
欠席者:榎原毅、大箸純也、岸田孝弥、酒井一博、
西日本地方会の担当者に働きかけること、④論文執
瀬尾尚聡、城 憲秀、平野和彦、松田文子、水野基
筆合宿(夏季研究会の夜に実施する案を含む)を行
樹(副会長)、吉村眞由美(敬称略)
う案、等が提案された。
●審議事項
3.役員選挙について
1.優秀発表賞担当者について
・竹内より、選挙管理委員として、田中諒介会員(㈱社
・岡田より、優秀発表賞担当者を河原先生に担当して
会安全研究所)から快諾を得たことが報告された。3
名の委員を要するため、残り 2 名を選出予定である
いただくことが提案され、これが承認された。
ことが報告された。
2.2016 夏季研究会について
・山田より、サイクルパークセンターにおいて夏季研究
4.第 51 回全国大会について
・河原より、第 51 全国大会の準備状況について報告
会を実施することが提案され、これが承認された。詳
細については、次回の理事会で提案する予定であ
が行われた。
ることが報告された。
5.各担当より報告
3.次回理事会について
○JHE(下田)
・岡田より、次回の理事会を 2 月末~3 月中に実施予
・下田より、JHE の編集状況について、以下のとおり
定であることが報告された。開催日程については、
報告が行われた。
44(1) 校正段階 original 2 編、communication 1
後日、メールを用いて決定することが承認された。
編、第 50 会大会 proceedings
4.その他
44(2) 編集段階 original 3 編、communication 1
・真家より、大妻女子大学に保管してある JHE の保管
編
場所の移転が提案され、次回の理事会での審議事
・図表の校正に時間を要するため、投稿規定の見直し
項となった。具体的な量については、真家より連絡
を進めていることが報告された。
をいただく予定である。また、竹内より、保管場所の
○広報(河原)
提案があった。
・河原より、会報の活性化を検討中とのことが報告され
た。
●報告事項
1.学会事務局の住所移転について
○東日本地方会(水戸)
・竹内より、学会事務局が移転されたことが報告された。
・水戸より、東日本地方会 19 件の発表申し込みがあっ
たこと、3 件の優秀発表賞を出す予定であることが報
また、連絡は電話ではなくメールで行うようにしてほ
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人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
告された。
(副会長)、水野有希、水戸和幸、山田泰行(事務局
○西日本地方会(大箸)
長)
・山田より、第 2 報が作成され送られていることが報告
欠席者:植竹照雄、榎原毅、大箸純也、岸田孝弥、酒
された。
井一博、城 憲秀、橋本修左、真家和生、鈴木一弥、
○研究推進(植竹)
松田文子、瀬尾尚聡、吉村眞由美(敬称略)
・植竹より、研究推進の方法を検討していることが報告
●審議事項
された。
1.前回議事録の確認(資料1)
○国際交流(城)
・前回の議事録の確認を行った。
・川田より、IEA の新理事会からの連絡について報告
が行われた。
2.第 51 回全国大会について
○働態研究ツール集(小木)
・河原大会長が大会の準備状況について報告を行っ
・小木より、テンプレートをアップする予定であることが
た。
報告された。
3.優秀発表賞について(資料2)
・JHE 大会抄録集と同じものを使用
・資料2の「人類働態学会優秀発表賞規定」について
○財務(竹内)
意見が出された。①賞は研究テーマに対して与える
・竹内より、年会費の納入が順調に行われていること、
こと、②受賞者の枠は大会の応募状況を考慮して決
学会事務局の住所移転に伴い封筒をリニューアル
めること(若手に限定する必要はない)、③賞の授与
したこと、IEA の分担金が納入されたことが報告され
は学会大会の行事のひとつであるため、受賞対象
た。
は大会の参加者であれば学会員である必要はない
7.会員動向(12/19 現在)
こと、④受賞者には、会報に掲載する受賞者の挨拶
・現在の会員数 206 名(一般 169 名、学生 36 名、名
をお願いすること、以上を踏まえた形で、規定を修
誉会員 1 名)
正することを決定した。今後は、メール審議を経て、
【入会】大城卓也(順天堂大学)森田陽子(日本女子
次回の理事会の時に修正を行った規定について決
体育大学)
定する予定である。
【退会】市丸直人(福岡教育大学)※市丸先生は3月
4.第 52 回日本交通科学学会学術講演会シンポジウ
末付、上野満雄(自治労安全衛生対策室)、神部順
ムの開催について(資料3)
子(江戸川大学)、仲尾豊樹(東京労働安全衛生セ
・加藤より、人類働態学会が上記の学会大会に協賛す
ンター)、藤家馨(総合せき髄センター医用工学研
るという形でシンポジウムの開催が提案され、これが
究室)、横山真太郎(北海道大学大学院)、福島諒
承認された。人類働態学会の取り組みを対外的にア
(帝京平成大学大学院)
ピールする機会となるように取り組むことが確認され
8.その他
た。
・水野(有)より、福岡大学から進藤宗洋先生(福岡大
5.JHE,会報バックナンバーの保管について
学)が賞の受賞されるにあたり、学会活動状況につ
竹内より、保管場所についての提案があり、これが承
いて問い合わせがあったことが報告された。そのた
認された。
め、状況を把握している方は水野(有)まで連絡する
ことが確認された。
6.会員増加策の検討
(文責 川田裕次郎)
・岡田より、会員増加策について説明があり、すぐに検
討したい項目「学生会員の卒業後の確保」、「JHE
人類働態学会第 23 期第 7 回理事会
投稿者に対する入会要請」について意見が出され
日時:平成 28 年 3 月 31 日(木)17:30~19:00
た。会員情報を最新に保つために、会員情報の変
会場:順天堂大学本郷キャンパス 10 号館 1 階(105
更に対応するための専用のメールアドレスを設定す
会議室)
ることが決定された。また、12 月末にメーリングリスト
出席者:岡田 明(会長)、加藤麻樹、河原雅典、川田
で会員情報変更に関するメールを送ることが確認さ
裕次郎、下田政博、竹内由利子、堀野定雄、松村
れた。今後も引き続き議論を行っていくことが確認さ
秋芳、小木和孝、申 紅仙、平野和彦、水野基樹
れた。
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人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
・働態研究ツールの投稿状況について報告された。投
7.会報 105 号からの編集担当者について
・山田より、これまで会報の編集を担当してきた大箸か
稿状況を考慮して、締め切りを延期することが報告さ
ら、会報 105 号からの編集担当者を変更できないか
れた。
との打診があったことが報告された。今後、執行部で
○財務(竹内)
会報の担当候補者に依頼をすることが確認された。
・予定していた支払いが済んでいること、財務状況に
ついて報告が行われた。
8.その他
・河原より、「働態の窓」を復活することが提案され、こ
4.会員動向(3/31 現在)
・現在の会員数 182 名(一般 157 名、学生 24 名、名
れが承認された。働態の窓の編集委員を組織するこ
誉会員 1 名、賛助会員 1 名)
とを決定した。下記の意見が出され、今後、発行に
向けて編集委員で検討することが確認された。①リ
・下記の退会者の中に連絡のとれない者がいるため、
レー方式(執筆担当者に次の執筆者を紹介してもら
理事から連絡をとってもらうように竹内より情報提供
う方法)で実施すること、②これまでの大会の受賞者
を行うこととした。
【退会】小野雄一郎(藤田保健衛生大学) 、瀧澤友美
の現在についての記事、③発行方法として紙媒体も
(武蔵野大学大学院) 、守和子(労働科学研究所)
有益であること。
【音信不通者】落合孝則、田渕舞(筑波大学大学院)、
●報告事項
中村英三(常磐大学)、藤島遙香(日本女子体育大
1.役員選挙について
学)、松本一弥(広島文教女子大学)、山下陽子(厚
・竹内、水野(有)より、役員選挙の結果について報告
生労働省)、和智綏子(城西国際大学大学院)、金山
が行われ、新理事の候補者に依頼が行われたこと
千広(神戸女学院大学)、菊池哲彦(茨城大学)、澤
が報告された。
井睦美(桐蔭横浜大学)、村上玄樹(広島大学大学
院)
2.夏季研究会について
・山田より、8 月・9 月第 2 週の平日に、1泊 2 日で開催
【確認予定者】小清水豊(日産自動車)、羽深太郎(日
する予定であることが報告された。日程によっては、
産自動車)、泉貴嗣(武蔵野大学)、伊藤匠、植田知
宿泊施設を準備することが難しいため調整中である
明(本田技研工業株式会社)、王國霖(高崎経済大
ことが報告された。
学)、小川祐紀(順天堂大学大学院)、川又華代(東
京労災病院)、松本彪(高崎経済大学大学院)
3.各担当より報告
○JHE(下田)
5.その他
・現在の発行状況について報告が行われた。
○第 13 回(平成 28 年度)日本学術振興会賞受賞候補
○広報(河原)
者の推薦について
・「働態の窓」の発行を目指すことが報告された。
・岡田より、候補者の推薦について報告があり、会員に
○東日本地方会(水戸)
メーリングリストで案内し候補者をあげてもらうこととし
・東日本地方会で 76 名の参加があり、余剰金の返金
た。
について報告された。
○第 7 回(平成 28 年度)日本学術振興会育志賞受賞
○西日本地方会(岡田)
候補者の推薦について
・西日本地方会が盛会に開催されたことが報告され
・岡田より、候補者の推薦について報告があり、会員に
た。
メーリングリストで案内し候補者をあげてもらうこととし
○国際交流(川田)
た。
・2016 年 10 月 30 日・31 日に IEA council meeting
○第 51 回全国大会への企業出展について
がコロンビアで開催されることが報告された。また、
・問い合わせがあり、河原大会長が対応することとし
小木より、チェックポイントの作成状況について報告
た。
があり、フランスのトゥールースで開催されるレビュー
6.次回の日程
ワークショップで再検討する予定であることが報告さ
・第 51 回大会期間中 1 日目(6 月 11 日)の昼に開催
れた。人類働態学会からも参加してもらいたいとのこ
することとした。
とが報告された。
(文責:川田裕次郎)
○働態研究ツール集(小木)
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人類働態学会 会報 第104号 2016年6月11日
会員情報
訃報
本学会会員の大越有近先生が 2015 年 12 月にご逝
去されました。ご冥福をお祈りすると共に、ご連絡致し
ます。
編集(委員長)後記
最後に、編集後記ならぬ委員長後記を記しておわり
とします。委員長とは言っても、正式な委員会(?)とし
てのメンバーは私だけ。長も平もありません。しかし、水
野有希先生をはじめ、会報編集サポートメンバーの方
に多くの原稿の企画、手配、作成をしていただきました。
おかげで、漫然としながらも、続けてくることができまし
た。ありがとうございました。他の編集をしてきての感想
などは、「働態の窓」へ投稿するとでもします。皆様も、
編集への協力として投稿をお願いいたします。
最後に一言。発行が大会に間に合いました。嬉しい
(その後、修正追補が必要とはなりましたが)。
(大箸純也)
JHE
論文原稿募集中
人類働態学会の英文機関紙 Journal of Human Ergology では、新規投稿論文を募集しています。論文の形式は
Original papers または Communications の 2 種類があります。原稿の投稿要領の詳細については、本誌掲載の
投稿規定をご覧ください。
原稿ファイルは、メールに添付してつぎの投稿受付アドレスまでお送りください。 [email protected]
(JHE 編集委員長)
編集委員会では、6 月と 12 月の年 2 号の定期刊行継続を目指しています。正常な定期刊行を維持していくため
に、会員の皆様からの積極的なご投稿をお待ちしています。とくに若い会員からの投稿を期待しております。本学
会の全国大会や地方会で発表した内容をまとめて発表する場として JHE を活用していただきたいと思います。まず
は学会発表の内容を短くまとめた Communications に挑戦してみてはいかがでしょうか。この形式では、含まれる図
表は 1-2 個が目安となります。投稿論文の受付、査読、受理までの一連の手続きの短縮化を図り、できるだけ早く
掲載するように努めます。
なお、本学会大会、地方会で発表された優秀な研究に対しては、個別に投稿を依頼する場合があります。その
折にはよろしくお願いいたします。
(JHE 編集委員会 〔編集委員長 下田政博〕)
人類働態学会 会報 第 104号
2016(平成 28)年 6 月 11 日発行(7 月 6 日修正追補版発行)
発行者 人類働態学会 会長 岡田明
編集者 会報編集委員長 大箸純也
発行所 人類働態学会事務局
公益財団法人 大原記念労働科学研究所内
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷 1-1-12 桜美林大学内 3F
TEL: 03-6447-1331
FAX: 03-6447-1436
E-mail: [email protected]
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