Q11.教科書無償給与の趣旨,制度実施の経緯,仕組みの概要について

Q11.教科書無償給与の趣旨,制度実施の経緯,仕組みの概要について説明
してください。
A.1.無償給与の趣旨
義務教育教科書無償給与制度は,憲法第26条に定められている「義務教育は,これを
無償とする。」という義務教育無償の精神をより広く実現する施策として,国が義務教
育諸学校の児童生徒の使用する教科書を無償で給与する制度であり,我が国の未来を担
う児童生徒に対し,国民全体の期待をこめて実施されているものです。
2.無償給与制度実施の経緯
教科書の無償給与が部分的に初めて実施されたのは昭和26年度です。「昭和26年度に
入学する児童に対する教科用図書の給与に関する法律」に基づき,小学校第1学年に入
学する児童に対し,国語,算数の教科書が無償配布されましたが,これに要する経費が
国と地方公共団体が折半すること,私立学校の児童は対象とならなかった等の問題があ
りました。
昭和27年には,経費は全額を国庫負担とし,私立学校の児童にも給与することに改め
られた「新たに入学する児童に対する教科用図書の給与に関する法律」が成立しました
が,翌28年限りで廃止され,その後は,要保護・準要保護の児童生徒にのみ給与される
こととなりました。
その後,義務教育の教科書について無償とすべき意見が高まり,昭和37年3月に「義
務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律」が成立し,第1条で「義務教育諸学校
の教科用図書は無償とする。」という教科書無償給与の原則を示し,無償措置について
の手続きは別に法律で定めることとしました。同年,昭和38年度小学校に入学する児童
に対して,全教科の教科書を無償給与するための経費7億円が計上されるとともに,昭
和38年には「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」が成立しました。
これによって,教科書を無償とする措置について必要な事項を定め,義務教育諸学校の
教科書の採択・発行制度の整備を行い,この総合的な運営によって教科書無償の趣旨が
達成されることとなりました。
昭和38年度にまず小学校(当時の盲学校,聾学校及び養護学校の小学部を含む。)の
第1学年の児童を対象として実施され,以後,学年進行方式によって毎年拡大し,昭和
44年度において義務教育諸学校の全児童生徒がその範囲に含まれ,全学年の児童生徒に
対する無償給与が完成し,現在に至っています。
3.無償給与の仕組み
教科書の無償給与の具体的な方法は,
無償措置法の第3条から第5条までに規定されて
いるとおり,国が経費の全額を負担して,義務教育諸学校の児童生徒が使用する教科書
を発行者から一括購入し,これを義務教育諸学校の設置者に無償で給付し,給付を受け
た設置者が校長を通じてこれを児童生徒に給与するというものです。これは無償措置の
最終的責任を負う国と,義務教育諸学校を設置しその管理運営に当たっている設置者と
が互いに協力し,それぞれが分担した事務を責任をもって遂行することにより,この制
度の円滑かつ確実な実施を期するためです。
ア.購入
設置者に無償給付する教科書は,
文部科学大臣が教科書発行者との購入契約に基づき,
国が購入します(無償措置法第4条)。
この契約は,教科書発行の特殊性から事前に締結しています。従って購入に要する経
費も国の予算において前期用教科書については給与される前年度に,後期用及び転学用
の教科書については給与される当該年度にそれぞれ計上されることになっています。
また,購入契約に係る代金は,文部科学大臣が財務大臣と協議して定める範囲及び割
合で,あらかじめ概算払いをすることができるように措置されています(予算決算及び
会計令臨時特例第3条第6号,第4条)。
イ.発行者による教科書の供給
発行者は教科書・一般書供給会社や教科書取扱書店へ送本し,教科書取扱書店から学
校へ供給されます(自ら荷造発送を行う設備を有しない発行者は,教科書の配送や代金
回収の業務の全部(または一部)を配送業者に委託しています。)。
ウ.設置者等からの教科書取扱書店への納入指示
国から教科書を無償給付される設置者及び国立大学学長等は,
必要とする教科書冊数
を納入場所,納入期日等を教科書取扱書店等に指示します(納入場所は,各学校の本校
又は分校とし,納入期日は各学校において教科書を給与すべき日の前日または当日とす
ることが適当です)。
エ.児童生徒への給与
教科書取扱書店は,納入指示に基づき,各学校へ教科書を納入します。
納入された教科書は,
入学式又は始業式の当日等に校長が教科書無償給与の趣旨を説
明して直接児童生徒に給与することが適切です。また,昭和41年度から,新たに小学校
等に入学する児童に対しては,入学を祝い,かつ教科書無償給与の趣旨の徹底を図ると
ともに,給与の便に資するため,前期用教科書は紙袋に入れて給与することとなってい
ます。この紙袋は,文部科学省において作成し,教科書・一般書籍供給会社に送付され,
小学校等第1学年の児童数に応じた数量のものが教科書取扱書店から搬入されることと
なっているので,各学校の校長は,これを受領し,これに教科書を収納して入学式の当
日等に児童に給与します。