ミルカー装着と離脱のタイミング

デーリィジャパン誌
2007年6月号原稿
テーマと内容;シリーズ『ヤング DJ~これってどういうことですか?~』
Q ミルカーを装着するタイミング、外すタイミングは、いつなのでしょうか?
1)ミルカー装着のタイミング
搾りの記事参考
ミルカー装着のタイミングは、オキシトシンの利用により決まります。オキシトシンの
作用により、乳頭が張ったらミルカーを装着します。搾乳作業を開始してから60から9
0秒くらいです。早すぎでも、遅すぎても問題です。体細胞数などの乳質に影響します。
①
②
③
④
⑤
乳頭の前搾りをする。
プレディップをする。
時間を少しあける。
乳頭壁、乳頭口を綺麗に拭く。
ユニットを装着する。
以上の行程を60から90秒で行う。
ユニット装着が早すぎると、搾乳直後の過搾乳が生じます。遅すぎればいつまでもだら
だらと牛乳を搾り、搾乳時間が長くなり、乳頭口を傷めます。
搾乳中のクロー内圧を測定した波形図(図-3)を見て下さい。測定したクロー内圧は
ミルカー装着後5秒後(横1目盛り10秒間隔)には低下していますが、その後20秒間
は本格的射乳状態にはならず、だらだらと牛乳を出しています。ユニット装着後25秒く
らいを経てから本格的射乳状態となり、クロー内圧が安定してきています。この間の最初
の25秒間が装着直後の過搾乳です。その後安定したクロー内圧となりますが、次第に乳
量が少なくなるとクロー内圧は上昇し高くなります。この時間が長いと、これも過搾乳と
いいます。従って過搾乳はユニット装着の最初と最後に出現します。この過搾乳の時間を
できるだけ短くする様に、ユニットの装着と離脱を行います。
図-3
2)繋ぎ牛舎でのユニット装着と離脱のタイミング
繋ぎ牛舎ではユニットの装着は、搾乳しようとする牛個々で行います。ユニットを搾乳
する牛の所に移動して、開始します。上記①から⑤の行程を60から90秒間で行い、乳
頭の張りを確認してからユニットを装着します。装着時には脈動チューブとライナーが捻
れないように注意します。装着後はクローが捻れないように、上下左右前後のバランスを、
ホースフック、ホースタイトナー、紐などを使って取ります。
写真-3
写真-4
写真-5
右前ライナーと脈動チューブを装着時に捻った状態で装着したもの
左後側ライナーを捻って装着、脈動チューブが潰れている
装着時のクローの持ち方が悪く、捻って装着したので乳頭が捻れている。
これらの捻れは、乳頭4本同時に搾乳が終了しない原因となり、1本取り後の過搾乳や、
3本乳の原因となり得ます。
写真-3
写真-4
写真-5
ユニット離脱のタイミングは、ミルクチューブ内を牛乳が上下運動をし始め、ライナー
の出口からクローの縁を伝い、牛乳を流れるようになったら離脱です。装着のタイミング
が良ければ、勢いよく出ていたものが、急に出なくなることがわかります。出ているかど
うかを判断するには、クロー内をよく観察することが重要ですが、牛舎内の照明が暗く判
らない牛舎がほとんどです。過搾乳を防ぐには、照明の工夫がポイントです。
離脱の時、乳房を揉みながら搾乳するマシンストリッピングは行ってはいけません。ラ
イナースリップを誘発し、乳房炎の危険性を高めます。離脱のポイントは、きちんと腰を
落としてしゃがむこと、または片膝を付きます。クローで真空を遮断し、一呼吸置いてク
ローが落ちてくるのを待ち受けて、受け取ります。決して中腰でクローを引っ張るように
しながら真空を遮断して、離脱してはいけません。外し方は体細胞数に大きな影響を与え
ます。
3)パーラーでの装着の仕方
ミルキングパーラーでのユニット装着は、何頭を1セットにするかで、オキシトシンの
作用時間が決まります。最初の1頭目から、前搾り、プレディップをセット頭数分行い、
最初に戻ってきて乳頭清拭、ユニット装着するまでの時間がどのくらいになるかで、何頭
を1セットにして作業するかを決めます。オートタンデムでは2頭毎に装着、パラレルで
は4頭から6頭、ヘリーボーンでは3から5頭くらいでしょう。1セットを多くすると、
乳頭清拭がおろそかになり、乳房炎の危険性が高まります。乳頭清拭の時間を取れるよう
に、少なめに配慮します。
4)パーラーでの離脱のタイミング
パーラーでは当然自動離脱に任せますが、この離脱の調整が問題です。搾乳終了をどの
ように判断するかで、過搾乳にもなり、搾り残しにもなります。一番良いのは残乳量を調
査することです。自動離脱後、手搾りでそれぞれの残乳を調べます。ユニットを外した時
に乳房の中の残乳量が250ml以下であれば、牛は完全に搾り切られています。調査し
た所、多くの日本の離脱装置の調整が、搾乳後の乳房内残乳量が4本で50ml以下にな
るように調整されています。これは過搾乳ですので、少しずつ多くなるように調整します。
1分房で多く残るのであれば、先の装着時のライナーの捻れ、クローの捻れ、ミルクチュ
ーブの取り回しなどを見る必要があります。3回搾乳では、残乳量はもっと多く残るよう
に調整します。ユニット装着のタイミングが良くなると、牛乳は短時間で搾乳され、すぐ
に出なくなります。きれが良くなりますので、離脱のタイミング調整が必要になります。
過搾乳の牛では乳頭の創傷が多く、後搾りする時にうるさい傾向があります。自動離脱
前に自分で蹴落として離脱させることもあります。搾乳終了頃、足を頻繁に踏み替える、
うるさくなるのは、牛が教えてくれる終了のサインです。一番は離脱の瞬間のクロー内の
牛乳の流れを観察することが極めて重要です。見ているとまだ上がらないかと、思わせる
ことが多いものです。照明が暗いことも判ります。