道路改良工事における 墜落事故事例

事故・トラブル対応事例
道路改良工事における
墜落事故事例
国土交通省北海道開発局事業振興部工事管理課
工事評価管理官
たにぐち
ひでゆき
谷口
秀之
港湾・空港,農業,漁港等の整備,官庁営繕等の
社会資本整備を総合的・一体的に実施しており,
1. はじめに
出先機関として道内各地域に11の開発建設部を置
北海道開発局は,北海道における河川,道路,
き,地域に密着した開発行政を推進しています。
20
18
15
発
生
件
数
平成15年
平成16年
平成17年
14
11
10 8 9
8
5
7
9
8
2
111
1
2
1
1
5
444
5
44
2
1
10
7
6
4
1
10
9
2
2
3
3
2
11
1
倒
崩
落
設
等
物
接
架
触
空
等
線
接
触
濁
等
水
等
流
出
そ
の
他
転
地
下
埋
土
砂
等
・
火
災
揚
重
機
自
動
車
建
設
機
械
取
扱
運
搬
工
具
取
扱
爆
飛
発
落
盤
倒
壊
墜
落
来
・
落
下
0
分 類
図―1 事故分類別工事事故発生件数の推移
20
16
15
発
生
件
数
12
11
10
9
8
5
6
5
5
7
3
4
2
2
1
2
3
2
3
1
4
3
5 5
5 5
4
13
9 8
平成15年
平成16年
平成17年
8 8
6
6
4
2
0
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
月 別
図―2 月別工事事故発生件数の推移
7
6
建設マネジメント技術
2006 年 6 月号
その中で,北海道開発局では,年間約2,
7
00件の
工事を発注しており,工事事故の防止のため,発
(同44m)を運搬し,高さ42m の法面天端まで4
往復する作業でした。
注者として各工事現場における安全管理体制の充
被災者は,ケーブルを肩に抱えていたため,仮
実を図るとともに,安全対策の取り組みに従前か
設階段を最上階まで登った後,急勾配(平均勾配
ら努めてきましたが,平成1
7年の工事事故件数は
30度)の親綱区間を避けて,通路ではない法枠天
8
3件となっており,ここ数年のほぼ横ばい状態か
端上(幅64cm)を通っていたが,担いでいたケ
ら前年度比で1
9件増という残念な結果となってい
ーブルの先端が法面に設置されていたラス網に引
ます。また,月別発生件数を見ると,工事稼働件
っかかり,バランスを崩して約4m 下の小段コ
数が少なくなるにもかかわらず,積雪・気温の低
ンクリート上に転落し被災しました。
下等の条件が悪化することから冬期における発生
件数が多くなっています。
3. 原
因
今回,北海道開発局における労働災害事故の中
で大きな比率を占める墜落事故事例についてご紹
介いたします。
当初は法面すべてに昇降階段(4
0m)と単管高
所足場(44m)が設置されていましたが,法面仕
上げのため昇降階段から上の単管高所足場が撤去
2. 事故発生の概要
され,事故発生時には親綱のみ設置となっていま
した。また,足場や通路が設置されていないにも
! 工事の概要
かかわらず,KY では重機との接触注意のみで作
道路改良工事における落石防護柵工
業方法・運搬経路等についての適切な打合せや指
" 事故の概要
示がなく,作業手順書も守られていなかったこと
当日の作業は,落石防護柵のバックステーケー
や危険個所への立入禁止表示がないことに加え,
ブルを2名がトラックから荷下ろしし,被災者を
高所での作業にもかかわらず被災者が安全帯を着
含む2名がケーブル(15kg)を肩に掛け,法面
用していなかったことが本事故の発生原因として
上の仮設階段区間(法長40m)と親綱設置区間
考えられます。
現場状況
ワイヤー運搬状況
建設マネジメント技術
2006 年 6 月号 7
7
図―3
4. 対
応
事故の発生状況
5. おわりに
事故後の対応として,当該事務所管内の全工事
北海道開発局においては,平成17年における工
現場の緊急点検の実施,工事災害防止連絡協議会
事事故のうち,労働災害事故が約半数を占めてい
の緊急会議を開催するとともに,事故調査委員会
ます。今回の事故形態である墜落事故について
による現地調査を行い,再発防止へ向けた対応と
は,労働災害事故の中でも大きな割合を占めてお
して,以下の対策をとることとしました。
り,発生件数はここ数年,わずかながらとはいえ
!
増加しているという状況です。また,公衆災害事
親綱しか設置されていなかった区間について
は,適切な足場・階段等を設置する
"
故については,地下埋設物や架空線への接触とい
高所・荷揚げ作業等を行う場合,搬入経路お
ったものが平成16年から急増しており,工事事故
よび作業方法についての周知徹底と作業手順の
全体の中でも40%以上と大きな割合を占めるよう
見直しを図る
になっています。北海道開発局としては,今後と
#
通路以外の危険個所への立入禁止表示を行う
も発注者はもとより受注者とも協力して,同様な
$
安全帯未着用者については,作業前の相互確
事故の再発防止のための安全対策に向けて,さら
認を行い未着用者は入場させない
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8
建設マネジメント技術
2006 年 6 月号
により一層の努力をしていきます。