地域住民主導による介護予防事業の取り組み~熊本県内市町村における

地域住民主導による介護予防事業の取り組み~熊本県内市町村における元気クラブ育成支援を通して~
○松尾洋1)、城井美礼1)、上田厚2)、原田幸一3)、魏長年2)、大森昭子2)
1)
くまもと健康支援研究所、2)熊本大学大学院医学薬学部環境保健医学分野、3)熊本大学保健学科
【目的】少子高齢化が進む中、地域において元気高齢者が虚弱高齢者を支える仕組みの構築は急務といえ
る。熊本県内において、地域住民から高齢者を支えるキーパーソンを育成し、地域住民主導による介護予
防事業の取り組みを行うことで地域に根ざした介護予防の仕組みを構築したので、その取り組みで得た知
見を報告する。
【方法】熊本県内の各市町において地域住民を対象に元気クラブリーダー養成講座を 4 回、フォローアッ
プ講座を年に 2 回開催。養成講座を終了し認定を受けた元気クラブリーダーは各市町村のそれぞれの地域
で「元気クラブ」の運営を行う。養成講座においては、地域の在宅高齢者を取り巻く現状を共有し、基礎
的な介護予防指導技術の習得に力点を置き、参加者のエンパワメントを図る。元気クラブは月に 2 回開催
され介護予防プログラム(関節痛予防、口腔機能低下予防、認知機能低下予防)の実施と介護予防プログ
ラムセルフモニタリングシートへのフィードバックにより在宅での介護予防プログラムの生活化を図っ
た。元気クラブの成果について、元気クラブリーダーをはじめとして、老人クラブおよび民生委員にフィ
ードバックを行い、地域における介護予防意識の高揚を図った。
【結果と考察】3 市町で約 160 名が元気クラブリーダーとして認定された。元気クラブは 3 市町 40 箇所
で実施され、虚弱高齢者の地域支援体制として機能を果たしている。元気クラブに参加することで、在宅
高齢者の生活機能、運動器、うつリスクについて最も有意な改善(P<0.001)がみられ、閉じこもり(P
<0.01)
、口腔機能、認知機能(P<0.1)リスクについても改善がみられた。また、参加者に在宅での運
動実施頻度を聞くと 94%が在宅で介護予防プログラムを実施しており、介護予防の生活化が推察できた。
【まとめ】地域住民が地域の現状をはじめとして、地域においての介護予防の重要性や在り方について
知識を深めることで、介護予防意識の高い地域づくりの基盤が形成された。さらにキーパーソンとなる
住民が主体的・自主的に介護予防活動に取り組める環境整備を定期的に行うことで、持続可能な地域に
根ざした介護予防の仕組みを構築することが可能であることが分かった。今後も継続して高齢者の生活
機能を維持向上する地域支援体制に取り組んでいきたい。