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「下水道施設のコンクリート防食」

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070660
「下水道施設のコンクリート防食」
講演者:会員 上下水道部門技術士
工学博士
三品 文雄
1.下水道建設とコンクリート防食の歴史
近代下水道の建設は、日本では明治に始まり第二次世界大戦で破壊されたものの戦後整備が急速
に進められ、普及率も 70%に達した。これまでに投資された予算は、80 兆円、再建設費に換算す
ると 100 兆円にも上る。
社会資本としては道路に次ぐ規模の資産である。
これらの資産を私たちは、
次の世代に引き継いで行かなくてはならないが、下水道特有の硫酸による生物腐食といった激しい
コンクリート劣化に見舞われている。これらを放置すると、下水道の資産価値は当初見込みの 1/5
以下になると予測される為、対策としてコンクリート防食が実施される必要性がある。
2.古代文明や中世社会の下水道施設の材料
下水道施設は、古代文明や中世社会ではそのような問題は発生していなかったのかという疑問が
発生する。それらを考察するため、古代文明や中世時代での下水道施設の材料やシステムを西洋社
会、東洋社会、日本社会に分け紐解いてみた。その結果、古代文明や中世の下水道施設は、石材や
陶器、瀝青材料、木材と硫酸腐食に強い材料で建設されたため、硫酸腐食はあまり問題にならなか
った事がわかってきた。現在主流材料になっているコンクリートが、何時ごろ発明され使用されて
きたかを調査した結果、19 世紀に発明されたものであること、世界的に本格的に使用されたのは
20 世紀になってからである事が判った。
3.現在の最先端技術、防食に関する新工法
硫酸雰囲気における生物腐食の研究は、20 世紀の後半にようやく始まったことも判ってきた。微
生物の存在の発見が遅れたのと、悪質下水犯人説が横行した事によるものである。現在ではコンク
リートの生物腐食の研究は、日本をとりわけ日本下水道事業団が最先端の研究を行っている。その
先駆け的研究や、今日の防食技術に最初から携わってきた演者が、これまでの研究成果や、現在の
最先端技術、防食に関する新工法などについて説明した。現在防食の主流になっている有機樹脂の
塗布型工法や、工場で樹脂シートを生産し現地で組み立てるシートライニング工法、現在開発が進
んでいる耐硫酸コンクリートによる樹脂被覆を省略した工法について、現在の研究最先端の話題を
提供した。これまで下水管路を含むコンクリート施設の管理、点検は殆ど行われてこなかったこと
を踏まえ、今後の管理、点検のあり方、コンクリート診断や改築設計のあり方を、現在国土交通省
で行われている全国の一斉緊急点検をもとに、その重要性とその手順について説明した。大きな課
題としてシールド工事で建設された大口径で長スパンの管は、水深が深く、流速も速く、有毒ガス
が発生している場合、現在の管更生の技術では修理不可能であり、今後これら重要幹線管路の修理
技術開発が急務であると結んだ。
◎ ご講演は、映像を用いて説明されました。プレゼンテーションに使用された内容は以下のページで
ご覧頂けます。
下水道施設のコンクリート防食
2007年6月7日
JER認定施工協会
三 品 文 雄
下水管の歴史と材料の変遷
古代文明における下水道の位置付けと
建設材料
„ 近代下水道の位置付けと建設材料
„ コンクリートの歴史と生物腐食の関係
„
日本防食協議会
日本防食協議会
ミノア文明の下水管
日本防食協議会
日本防食協議会
日本防食協議会
◆
下
水 道 の 歴 史
(古代西方文明)
◆
BC5000 メソポタミアのウル、バビロン、
ラガシュ等で下水道築造
メソポタミアの都市が発
„ BC2900∼2700
達し、下水道築造
クレタ島の宮殿に腰掛式水洗
„ BC2000
便所がつくられ、排水管に接続される
„
日本防食協議会
西安五角形の排水溝
日本防食協議会
沖縄の豚便所(ウヮーフール)
日本防食協議会
日本防食協議会
◆
„
„
„
„
下
水 道 の 歴 史
(古代東方文明)
◆
BC3000 モヘンジョ・ダロ、カーリーバンガン
等の都市に下水溝、水洗便所築造
BC2000∼1400 中国河南省淮陽県平糧台で排水
管築造
BC1100 中国洛陽近郊の二里類で排水管築造
BC300∼200 秦の都威陽で5角形の管使われる
日本防食協議会
日本防食協議会
紫香楽宮跡から発見された陶管
日本防食協議会
日本防食協議会
日本防食協議会
◆
645
„ 694
„ 708
„ 784
„
下 水 道 の 歴 史
(日本の古い下水道)
大化1
持統5
和銅1
延暦3
難波宮に排水溝築造
藤原京に排水溝築造
平城京に排水溝築造
長岡京に排水溝築造
日本防食協議会
◆
近代下水道の歴史(西欧)
„
„
„
„
„
„
1347
1370
1606
1728頃
1750
1848
する
全ヨーロッパでペスト流行
パリに最初の円天井の下水道築造
パリに最初の下水主幹線できる
ベルサイユ宮殿に最初の水洗トイレを設置
セーヌ川に流入する開きょ式下水道築造
ロンドンで便所の下水道への接続を義務と
日本防食協議会
近代下水道の歴史(戦前日本)
„
1873
1877
1881
1884
1894
1895
1900
1922
1930
„
1934 昭和9
„
„
„
„
„
„
„
„
明治6
明治10
明治14
明治17
明治27
明治28
明治33
大正11
昭和5
東京銀座に下水管布設(側溝を暗きょ化)
コレラ流行
横浜区で下水道築造(石造り馬蹄形管で底部は松板)
東京府神田下水施工
大阪市、上下水道改良事業開始
大阪市、本田抽水所完成(わが国初のポンプ所)
下水道法公布
東京三河島汚水処分工場運転開始 (標準散水ろ床法)
名古屋市堀留熱田処理場運転開始
(わが国初の散気式活性汚泥実用化)
岐阜市わが国初の分流式下水道事業に着手
日本防食協議会
日本防食協議会
近代下水道の歴史(戦後日本)
„
„
„
„
„
„
„
„
1948
1966
公布
1967
1970
1972
団)
1975
1981
1996
昭和23 福井市で戦後初の公共下水道事業起工
昭和41 流域下水道で初の処理場猪名川流域基本法
昭和42 公害対策基本法公布施行
昭和45 水質汚濁防止法制定公布
昭和47 下水道事業センター発足(現日本下水道事業
昭和50 特定環境保全公共下水道事業の実施
昭和56 第二種流域下水道の創設
平成8 第8次下水道整備七箇年計画
日本防食協議会
イフタフで発見された世界最古の
コンクリートの床
(約9000年前)
日本防食協議会
初期の立窯(Northfleet)
1847年
日本初期の徳利窯(小野田市)
1883年
日本防食協議会
コンクリートの歴史(世界史)
„
„
セメントのルーツ
約9千年前イスラエル・イフタフの住居の床
約5千年前中国西安近郊住居の床
1756年低温焼成「水硬性の接合材」が発明
1796年高温焼成「ローマンセメント」開発
1824年「ポルトランドセメント」を 人造石製法の改
良 と言う表題で特許取得
建設資材として本格使用
英国エジストーン灯台の復旧工事
テムズ川のトンネル工事
1910年ヒューム兄弟により遠心力コンクリート管の
製造法の発明
日本防食協議会
横須賀造船所第1ドック
1871年
長崎小菅修船場(ソロバンドック)
1867年
日本防食協議会
日本初の鉄筋コンク
リート構造物
(琵琶湖疎水1903
年)
琵琶湖疎水にかか
るアーチ橋(1904年
明治37年)
日本防食協議会
コンクリートの歴史(日本史)
„
„
„
ポルトランドセメントの使用
1865年横須賀製鉄所内煉瓦建築物?
1867年長崎小菅修船場(ソロバンドック)?
1871年横須賀造船所第1ドック工事
我国のセメント製造開始
明治8年(1875)大蔵省土木寮摂綿篤製造所(深川)
1905年「日本ポルトランドセメント試験法」制定(農商務省告示
による規格)
建設資材として本格使用
1882年JR北陸本線長浜駅(無筋2階)
1903年琵琶湖疎水路上に架けられた橋(長さ7.3m)
1910年名古屋市で内径680~1360の鉄筋コンクリート管採用
1950年遠心力鉄筋コンクリート管JIS規格となり本格使用
日本防食協議会
これまでの研究
最初の報告
ロサンゼルスの管路施設(1900)
化学的腐食と考えられていた
„ 微生物腐食の報告
1945年オーストラリアのC.D.パーカーに
より報告
„
日本防食協議会
日本防食協議会
下水道投資額と今後の更新費
投資額約80兆円内訳(第1次∼8次計画)
<単位兆円>
投資項目
管路施設
投資額 現在評価額 年間更新費 耐用年数等
50年(1.3)
67
1.3
48
50年(0.3)
処理場土木
15
0.3
10
17年(0.2)
10
0.6
処理場機械
7
処理場電機
設計・調査
用地等
合計
4
4
7
80
6
0.3
0.1
17年(0.1)
工事費の5%(0.1)
(0.2)
98
2.6
(2.2)
第1次∼8次計画: 1963年∼2005年、( )は2005年投資額
日本防食協議会
2004年の管理費約3.8兆円の内訳
„
„
„
„
„
„
„
„
„
„
„
起債償還費:約2.7兆円 (32千円/人・年、195円/ m3)
人件費
:約2,000億円(14円/m3)
委託費等 :約2,600億円(18円/m3)
補修費等 :約1,200億円(9円/m3 、管は4割)
電力費
:約 840億円( 6円/m3)
汚泥処分費:約 520億円(13千円/汚泥‐t)
薬品費
:約 160億円(1.1円/m3)
燃料費
:約 60億円(0.4円/m3)
調査費
:約 80億円(0.6円/m3)
その他
:約3,000億円(21円/m3)
(財源としての使用料収入は16千円/人・年、約1.4兆円)
日本防食協議会
主要社会資本ストックの推計(1998年公共+民間1200兆円)
民間住宅
37%
道路
16%
港湾 地下鉄
賃貸住宅
1%
2%
2%
下水道
3%
私立学校
2%
廃棄物
水道 1%
ガス
3%
公園
電力 0%
林業
1%
5%
1% 治山
学校
1%
電気通信
民鉄 国有林 漁業 農業 治水 社会教育
5%
3%
1%
2%
1%
5%
1%
5%
日本防食協議会
日本防食協議会
日本防食協議会
日本防食協議会
日本防食協議会
日本防食協議会
④H2SO4 + Ca(OH)2
→ CaSO4・ 2H2O(ニ水石膏)
3Ca(OH)2 + 3H2SO4 +3CaO ・ Al2O3 + 26H2O
→ 3CaO ・ Al2O3 ・3CaSO4 ・ 32H2O(エトリンガイト)
③H2S + O2 → H2SO4 硫酸の生成
気相部
結露
腐食・
劣化が特に激しい部分
硫黄化酸化細菌
H2O
温度差による
結露
②
H2S
④
SO4
2−
硫化水素の放散
H2S
H2S
SO42−
スライム層
硫化水素の生成域
汚泥堆積層
①SO42- + 2C + 2H2O → 2HCO3- + H2S
硫酸塩還元細菌
日本防食協議会
C A U
目的の微生物のrRNA
G
A U
A
C
C
C
A
G
G
U
U
T
A
G
A
蛍光物質
G
C
U
C
A
G
T
プローブ(15∼20塩基対)
紫外線
紫外線による蛍光を観察
することに微生物を検出
日本防食協議会
二 水 石 膏 の 生 成
エトリンガイトの 生 成
鉄 筋
消 失 部
Fe層
C a S O 4・ 2 H 20 + C a (0 H )2
pH
C a (0 H )2 の み
C a S O 4・ 2 H 20 の み
12∼ 13
pH 12∼ 13: 健 全 部
p H 11 以 下 : 鉄 筋 腐 食 可 能 範 囲
11
フ ェ ノ ー ル フ タ レ イ ン で 呈 色 す る が
硫 酸 イ オ ン の 侵 入 し て い る 範 囲
8∼ 10
pH 8∼ 10 以 上 : フ ェ ノ ー ル フ タ レ イ ン 呈 色 範 囲
1∼ 3
消 失 部
コ ン ク リ ー ト 表 面
図 2
pH 1∼ 3: 劣 化 部 分
コ ン ク リ ー ト 内 部
硫 酸 に よ る コ ン ク リ ー ト 腐 食 の 進 行 と 硫 酸 の 浸 透 状 況 の 概 念 図
日本防食協議会
4 )
日本防食協議会
日本防食協議会
日本防食協議会
20
y = 1.76Ln(x) + 1.40
(■)R = 0.643
劣化速度(mm/年)
18
16
y = 1.42Ln(x) + 1.05
(●)R = 0.459
14
12
10
8
y = 1.36Ln(x) + 1.37
(□)R = 0.645
6
4
y = 1.40Ln(x) - 0.54
(○)R = 0.542
2
0
1
10
100
平均硫化水素濃度(ppm)
腐食速度
硫黄侵入速度
腐食速度最大値(最大速度を基に換算)
硫黄侵入速度最大値(最大速度を基に換算)
日本防食協議会
1000
検知管によるガス測定の例
日本防食協議会
日本防食協議会
硫化水素ガス連続測定器(6秒毎)
日本防食協議会
日本防食協議会
管路施設の腐食要因
日本防食協議会
日本防食協議会
ライニングの構成例(D種)
日本防食協議会
シートライニング工法の施工断面例
防食シート
断面修復材
断面修復材
エポキシ樹脂
防食シート
防食シート
無機質系
グラウト材
シートライニング工法A シートライニング工法B
シートライニング工法C
(不飽和ポリエステル樹脂FRP板)
(高密度ポリエチレン樹脂成形板)
(ビニルエステル樹脂FRP複層板)
日本防食協議会
コンクリートの表面状態
型枠脱型後
表面処理後
高圧水(15Mpa)
巣穴
日本防食協議会
コンクリート表面表面処理後
(断 面)
型枠脱型後の面
レイタンス層
スキン層
3~5mm
日本防食協議会
素地調整後の状態
日本防食協議会
防食被覆施工後の状態
日本防食協議会
劣化コンクリート改修対策の手順
維持管理
・日常点検・定期点検・緊急点検
実施者は管理者(役所・メンテ会社)
調査・診断
設計
改修施工
・環境(水中、気中)・劣化度
・維持管理特性・施工条件
(コンサルタント)
・施工範囲、程度(深さ、厚さ)
・要求性能品質(施工、材料)
・施工時期、工期
・工程管理・施工環境管理・工程
毎品質管理・安全管理・検査
日本防食協議会
環境調査の項目
「気相部」
„ 硫化水素ガス濃度
„ 炭酸ガス濃度
「液相部」
„ 酸化還元電位(ORP)
„ pH・水温
„ 溶存硫化物
„ H2Sポテンシャル
„ 侵食性イオン等
24時間連続測定
24時間連続測定
採取試料により測定
日本防食協議会
腐食環境分類
分 類
Ⅰ類
Ⅱ類
Ⅲ類
Ⅳ類
腐食環境
年間平均H2Sガス濃度50ppm以上、腐
食が極度に見られる環境
年間平均H2Sガス濃度10~50ppm以上、
腐食が顕著に見られる環境
年間平均H2Sガス濃度10ppm未満、腐
食が明らかに見られる環境
腐食はほとんど生じない、液相が酸性
になりえる環境(中性化)
日本防食協議会
補修設計仕様の概要
主要工種
補修仕様のガイドライン
劣化部除去工
150N/mm2以上の超高圧水に
よる除去処理
断面修復工
耐硫酸性モルタル
防食被覆工
・塗付型ライニング工法
・シートライニング工法
鉄筋処理
・アルカリ含浸処理
・錆除去・防錆剤塗布処理
・補強筋配置
日本防食協議会
劣化部除去工
(超高圧水処理:200Mpa以上)
日本防食協議会
劣化部除去後のコンクリート表面
日本防食協議会
断面修復工施工例(吹付け)
日本防食協議会
断面修復工完了写真
日本防食協議会
30
侵食深さ(mm)
25
20
15
10
5%硫酸溶液に9ヶ月浸漬したコンクリート断面
5
※上面のみ硫酸に接触
断面にはフェノールフタレイン溶液を噴霧
0
0
1
2
3
4 5 6 7 8
浸漬期間(月)
9 10 11 12
(赤色部分は未中性化)
普通コンクリート
日本防食協議会
耐酸コンクリート
石灰石粉末添加
30
普通モルタル
侵食深さ(mm)
25
20
15
10
5
補修モルタル
0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
浸漬期間(月)
5%硫酸溶液に6ヶ月浸漬したモルタルの外観
日本防食協議会
石灰石粉末添加
耐酸性試験状況
∼20℃,10%硫酸水溶液90日浸漬後∼
普通コンクリート
新耐酸コンクリート
浸漬期間(日)
0
50
100
150
質量変化率 ( %)
0
水ガラス、汚泥スラグ粉体
日本防食協議会
-10
ecoNOVEL
-20
普通コンクリート
-30
-40
-50
-60
200
コンクリートとの配合比較
コンクリートとの配合比較
骨材
粗骨材
スラグ他
細骨材
水
バイン ダー
コンクリート
コンクリート
バインダーと骨材の付着性が良い
バインダー
密度 約2 g/cm3
硫黄*
環境負荷が小さい
硫黄固化体
80
溶融スラグを高配合しても十分な強度
緻密な構造 (空隙率 <1vol%)
強アルカリ性のセメントを使わない
100
硫黄固化体
硫黄コンクリート
圧縮強度(N/mm2)
セメント
改質により
硫黄ネットワーク構造
60
40
20
コンクリート
0
0
日本防食協議会
3
6
9
塩酸(10重量%)浸漬の期間(月)
図-7 浸漬中の強度変化
管渠での耐酸抗菌モルタル吹き付け施工状況
腐食環境が比較的穏やかな部位では、樹脂系防食被覆の省略が可能
日本防食協議会
耐酸コンクリート製品
深型フリューム900×900×2000mm
ボックスカルバート1000×1000×2000mm
日本防食協議会
恒温・硫化水素濃度調整槽(エイジトロン)
による硫酸生成量模擬試験
日本防食協議会
お疲れ様でした
御清聴有難うございました
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