放射線と放射能

放射線と放射能
原子の構造と放射壊変の仕組
原子の構造と放射壊変について学び、放射壊変の
法則(壊変律)と放射能について説明できるようにな
る。また、電離放射線の種類を列挙し、それらの物
質との相互作用について説明できるようになる。
また、核反応および放射平衡について学び、原子核
反応や放射性同位元素の製造法について概説でき
るようになる。
原子と原子核の構造及びエネルギー
• 物質(分子)の基本単位は原子である。原子
は軌道電子と原子核から構成される。
• 放射線と放射能は、原子が直接関与する現
象である。
(軌道)電子
核
1
軌道電子とX線
自由電子
軌道電子
軌道
電離
核
M殻
K殻
L殻
核との間に拘束されている軌道電
子が電離して自由電子となるため
には高いエネルギーを必要とする。
こういった高エネルギーの電子が
関係した電磁波が放射線のX線で
ある。
X線には、軌道電子が関与した
元素に特有な線スペクトルを示
す特性X線と、自由電子が関係
し連続スペクトルを示す連続X線
とがある。
原子核の構造及び質量とエネルギー(1)
• 原子核が、整数Z 個の陽子と、N 個の
中性子が核内で結合しているという原
子核構造模型により、放射能などの現
象を説明できる。
• 陽子の数Z は原子番号であり、通常は
元素記号で表され数値は省略される。
• 質量数A=Z + N とすると、個々の核は
Z とA及びエネルギーの状態で決定で
きる。
• それら個々の核を「核種」と呼び、その
記号表示には元素記号の左肩に質量
数を与えた記号を用いる。例えば、12C、
14C、137Csのように示す。
陽子
核
中性子
~10-12 cm
原子
電子
~10-8 cm
分子
2
原子核の構造及び質量とエネルギー(2)
• 原子の質量は、小さな原子核に集中している。
• 質量は物質に固有の物理量であり、原子や分
子を扱う分野では「原子質量単位」を用いる。
それは12C原子の質量を 12 u とすることを基
準としている。
• 質量は不変なものではなく、エネルギーと等
価なものである(特殊相対性理論)。
• 放射線と放射能を扱う分野では、エネルギー
の単位として電子ボルト[ eV ]を用いる。
放射壊変
• 同じ元素に属する質量数の異なる核種群を示
す言葉として「同位体」があるが、核種とほぼ
同意語として用いられている。
• 同位体は元素が同じなので化学的性質(同位
体効果)の差は小さいが、原子核の性質であ
る放射能は大きく異なっている。
• 同位体は、放射壊変する放射性同位元素 RI
と、安定同位体の2種類に分類できる。
– RI:radioisotope, radio active isotope
• 『放射能』は、原子核が放射線を放出する核
種の性質であり、RI自体を指しても用いられる。
3
原子核の安定性と放射壊変(1)
• 放射壊変する原子核はその構造、すなわち核
子(陽子や中性子)間の結合がエネルギー的
に不安定なものと考えられる。
• 原子核の安定性は基本的には核を構成する
陽子と中性子の数のバランスに依存している。
• 結合エネルギーが小さく不安定な原子核が、
より安定な原子核に自発的に変換する原子核
反応の性質が放射能である。
• こうのような変換を放射壊変とよび、一般に余
剰のエネルギーが放射線として放出される。
原子核の安定性と放射壊変(2)
• 放射壊変する核種を「親核種」 、壊変により生
成する核種を「娘核種」とよぶ。
• 放射壊変の際、親核種の質量と娘核種の質量
との差は、壊変エネルギーとよばれ、放射能の
エネルギーと関連している。
α壊変
放射壊変
βー壊変
β壊変
軌道電子捕獲
γ転移と核異性体転移
β+壊変
自発核分裂
放射壊変の主な形式
4
放射壊変の形式(1)
α壊変
原子核からα粒子(ヘリウムの原子核:4He2+)が放
出される放射壊変で、一般に質量数の大きな原子
核で起きる。α壊変によって親核種は原子番号が
2、質量数が4だけ減少した娘核種となる。
A
Z
X
A-4
Z-2
X’ + 42 He
(α線)
原子核から放射されるα線の運動エネルギーは
一定値の線スペクトルを示す
放射壊変の形式(2)
β壊変
原子核内の陽子と中性子が電子を仲介にして相互
交換する過程をβ壊変と総称する。
β壊変では親核種と娘核種の質量数は変化しない。
放射されるβ線の運動エネルギーは連続スペクトル
を示す。これは一定であるはずの壊変エネルギーと
矛盾するが、β壊変の際に中性微子(ν:ニュートリ
ノ)が壊変エネルギーの一部を持ち去るためと説明
されている。
β壊変は、更に、βー壊変、軌道電子捕獲、β+壊変
の三つの形式に分類される。
5
放射壊変の形式(3)
βー壊変
核内中性子の1個が陽子1個に変換される壊変で
あり、その際、電子が原子核外に放出される。
原子核から放出される電子はβー線と表現される。
A
Z
X
A
Z+1
X’ + βー + ν
放射壊変の形式(4)
軌道電子捕獲
陽子が、核外にある軌道電子を取込み、中性子に
変換する壊変である。軌道電子捕獲により原子番
号を1減少した娘核種となる。その際にはK殻の軌
道が捕獲されることが多い。
軌道電子捕獲により空位となったK殻の軌道に外
殻の軌道電子が移動する際、娘核種の特性X線
が放射される
A
Z
X + e-
A
Z-1
X’ + ν
6
放射壊変の形式(5)
β+壊変
原子核内の陽子が、陽電子(positron)を放射して中
性子に変換する壊変である。
原子核から放射される陽電子はβ+線とよばれる。
A
Z
X
A
Z-1
X’ +
β+ + ν
陽電子は核から放射された後、その運動エネルギーを失っ
た状態で電子と結合し消滅する。その際、180°をなす2方
向へ、0.511 M eVのγ線が放射される(消滅放射線)。
また、一般にβ+壊変はある程度の割合で軌道電子捕獲を
伴い、壊変エネルギーが比較的小さい場合には軌道電子
捕獲が主体となる。
放射壊変の形式(6)
γ転移と核異性体転移
α、β壊変と同時に原子核からγ線が放射される場合がある。
これはα、β粒子を放射した直後の娘核種が励起状態にあり、
その状態から更に安定な状態にエネルギー転移する際に、γ
線が放射されるもので、γ転移とよばれる。核の励起状態は一
般に非常に短く、γ転移を独立した壊変形式とはしないで、親
核種のγ放射と表現することが多い。
一方、娘核種の励起状態が長い原子核や、励起状態から直
接α、β壊変する原子核も存在する。それらは基底状態の娘核
種とは別核種として区別される。すなわち原子核が励起状態に
あり、1秒以上の寿命を持つような原子核を核異性体とよぶ。例
えば、99mTc、113mInのように基底状態の99TC、133Inとは別核種と
して表す。核異性体の大部分はエネルギー準位間のγ転移、
すなわち核異性体転移(IT)で壊変する。また、γ線のエネル
ギーは総て線スペクトルである。
7
放射壊変の形式(7)
自発核分裂
原子番号90以上の原子核では中性子などの衝突
がなくとも核分裂反応が自発的に起きることが知
られている。これを、自発核分裂という。
自発核分裂の娘核種は、通常2個の質量数75~
155程度の原子核である(より安定な二つの核種
に分裂する)。
原子番号が93以上の超ウラン元素では自発核分
裂が主となる核種も多い。
放射壊変の法則(壊変律)と放射能(1)
統計的性質
半減期
放射壊変する原子の数が半分に減少する
のに要する時間 T を半減期とよび、一般
的には寿命と表現している。
1.0
相対放射能(A/A0) 対数目盛
放射能とは、放射壊変する原子核の性質を
表すと同時に「単位時間に壊変する原子の
数」と定義される物理量をも表す。その場合、
放射能は時間の関数であり、寿命を持つ。
放射壊変する原子が初めに多数あり、ある
時間経過後に残存する原子の数との間には、
統計確立的な指数法則が成立する。
放射能の時間変化を表示した図を減衰曲
線といい、対数で示すと直線となる。
0.5
32P
半減期
8.02日
14.3日
0.2
0.1
0
131I
20
40
t (日)
減衰曲線の例
8
放射壊変の法則(壊変律)と放射能(2)
放射能の単位と量
国際単位系(SI)では放射能の量の特徴を表すのにベクレル(Bq)の単
位名称が与えられている。1 Bq = 1 s-1 であり、1秒間に1個の放射壊
変をする放射性核種の原子数を表す。これにより放射能Aは無担体状
態(RIがその元素の安定同位体などと共存しないで100%純粋に存在
するとした状態)での放射性核種の質量wと半減期Tにより、次式で表
すことができる。
A 〔Bq〕 =
〔 〕内は単位
原子質量M は質量数で
近似できる
4.17 x 1023 x w 〔g〕
M 〔u〕 x T 〔s〕
比放射能
単位質量当たりの放射能を比放射能といい、放射性核種の純度ある
いは希釈度の指標として用いられ、MBq g-1などの単位で表される。
比放射能は標識化合物(分子)へも準用され、単位物質量(mol)当た
りの放射能を表し、kBq nmol-1などの単位が用いられる。
放射壊変の法則(壊変律)と放射能(3)
壊変図式
放射性壊変にとって壊変形式、放射線のエネルギー、壊変の
確立と半減期などの情報は重要である。これらの情報を一見し
てわかるように工夫して図式化したものを壊変図式とよぶ。
1/2+
99Mo
66 h
β- 0.45, 17 %
3/2+
β- 1.23, 81 %
74 %
26 %
5/2+
スピンとパリティー
1/2-
0.921
0.181
99mTc
6.2 h
0.1426
IT 99+ %
9/2+
99Tc
2.14 x 105y
励起エネルギーレベル
核 種
半減期
壊変形式
最大エネルギー
壊変割合
β- 0.29, 100 %
5/2+
99Ru
9
電離放射線と物質との相互作用(1)
• 電離放射線の種類
– 電離放射線:物質を直接あるいは間接に電離する
能力(陽イオンと電子をつくる作用)をもつ原子核、
中性子、電子などの粒子線と、電磁波。
電磁放射線の分類と代表的な線種
粒子放射線
電離放射線
原子核粒子線:α (電価:+2)
電子線:β-、β+ (電価:-1)
中性子線:n (電価:なし)
電磁波放射線(光子線):γ、X (電価:なし)
電離放射線と物質との相互作用(2)
放射線は、人間の五感では感じ取ることが出
来ないエネルギーの一種であり、直接または
間接的に空気を電離する作用を持っている。
放射線の持つ作用には、電離作用、励起(蛍
光)作用、写真(感光)作用、透過作用などが
あり、電離作用、励起(蛍光)作用、写真(感
光)作用をまとめて「放射線の物質相互作用」
という。
10
電離放射線と物質との相互作用(3)
• α線と物質との相互作用
– 本体:陽子2個、中性子2個(Heの原子核)
– 物質相互作用:極めて大きい
– 飛程(放射線が物質内で到達できる距離;cmま
たはg cm-1):小さい(空気中で約 9 cm未満)
– 透過力:極めて小さい(厚紙程度で遮蔽可能)
– スペクトル:線スペクトル(核種により一定値)
– 代表的放出核種:226Ra、222Rn、239Pu、238U、
210Poなど
電離放射線と物質との相互作用(4)
• β-線と物質との相互作用
– 本体:電子1個(陰)
– 物質相互作用:α線より小さい
– 飛程:α線より大きい(~数 m)
– 透過力: α線より大きい(厚めのプラスチック板で
遮蔽可能)
– スペクトル:連続スペクトル
– 代表的な放射核種
• 低エネルギー:3H、14C、35P
• 高エネルギー:32P、90Sr、40K
• γ線も放出:60Co、131I、137Cs
11
電離放射線と物質との相互作用(5)
• β+線と物質との相互作用
– 本体:陽電子(ポジトロン)1個
– 物質相互作用: +
β 線自身には着目しない(陽電子
消滅の際に生成する消滅γ線の相
– 飛程:
互作用や透過力を考慮する)
– 透過力:
– スペクトル:連続スペクトル
– 代表的な放射核種:11C、13N、15O、18F、22Na
電離放射線と物質との相互作用(6)
• γ線と物質との相互作用
– 本体:壊変直後の励起状態の原子核から放出され
る電磁波
– 物質相互作用:極めて小さい
– 透過力: 極めて大きい
– 飛程:この概念は当てはまらない
– スペクトル:線スペクトル
– 代表的な放射核種
• α改変に伴うもの:222Rn、226Ra
• β壊変に伴うもの:60Co、131I、137Cs
• EC(軌道電子捕獲)に伴うもの:123I、125I
12
電離放射線と物質との相互作用(7)
• γ線と物質との相互作用
– 高エネルギーの電磁波であるため、そのエネル
ギーは振動数または波長でも表現される。
– 光電効果:総てのエネルギーを軌道電子に与えて
消滅する。軌道電子は電離し(光電子)電子線とし
て物質と相互作用する。
– コンプトン効果:エネルギーの一部を軌道電子に与
え、自身は長波長へとエネルギー減少しながら散
乱し、弾かれた電子は電子線として振舞う。コンプト
ン散乱ともよばれ、ガンマ線の粒子性を示す。
– 電子対発生:エネルギーが1.022 MeVを超える場
合、原子核近傍のゆがんだ電磁場で電子と陽電子
の対を生成してγ線自身は消滅する。
電離放射線と物質との相互作用(8)
γ線と物質との相互作用
光子
光電効果
核
光電子
コンプトン電子
光子
コンプトン効果
核
散乱光子
陰電子
電子対生成
光子
1.022 MeV以上
核
陽電子
0.511 MeV
0.511 MeV
消滅放射線
13
電離放射線と物質との相互作用(9)
• X線と物質との相互作用
– 本体:波長の短い電磁波
– 物質相互作用:極めて小さい
– 透過力: 極めて大きい
– 飛程:この概念は当てはまらない
– スペクトル
• 制動X線;連続スペクトル
• 特性X線;線スペクトル
電離放射線と物質との相互作用(10)
• 中性子線と物質との相互作用
– 無電荷の中性子は物質の軌道電子と相互作用す
る確率がほとんど0なので、物質を直接には電離し
ない。
– エネルギー損失は物質の核との衝突であり散乱す
るが、その確率も低いため飛程は長くなる。
– 通常、中性子線は物質による吸収として扱われる。
– 中性子と原子核との衝突による反動または核反応
で二次的に発生する原子核粒子線が物質を間接
的に電離する。
14
電離放射線と物質との相互作用(11)
放射線の物質による吸収
γ線をはじめ、中性子線や高エネルギーの電子線な
どの透過力の強い放射線と照射を受ける物質との間
の相互作用は、吸収として扱われる。
これら放射線の吸収は近似的
入射
透過
吸収物質
に(γ線の光電効果では厳密 放射線量
放射線量
I0
d
I
に)指数法則に従う。
I = I0 e-μd
μ:放射エネルギーと物質によって決まる線吸収係数(cm-1)
または質量吸収係数(cm2 g-1)
電離放射線と物質との相互作用(12)
入射と透過放射線量の関係を、
吸収物質の厚さの関数として
表した図を吸収曲線といい、対
数で表すと直線となる。
I = I0 e-μd
I
ln I =-μd
0
半価層の値が小さいほど、吸収
物質の放射線遮蔽効果が高い
相対透過放射能(I/I0) 対数目盛
放射線の物質による吸収
1.0
0.5
半価層
0.2
0.1
d 〔cmまたはg cm-2〕
15
電離放射線と物質との相互作用(13)
放射線量とその単位
放射線量は単位質量の物質が吸収した放射線のエネ
ルギーで定量できる。国際単位系ではグレイ(Gy)の単
位名称が与えられている。
1Gy = 1 J kg-1である。例えば、吸収線量4.2 Gyは水1
kgを0.001℃だけ温度上昇させる放射線量であるが、ヒ
トの半致死線量の値に近い。
吸収線量は物質種や線量の相違を問わない物理量で
あるが、放射線障害など放射線の影響を評価する量を
表すにはやや不適当である。そのために線量当量が用
いられ、シーベルト(Sv)単位が使われる。それは線量
に対応し、1 Svは、β-線とγ線では1Gy、中性子線で
0.1 Gy、α線で0.05 Gyとしている。
電離放射線と物質との相互作用(14)
放射線による被曝
ヒトは1年間に世界平均 2.4 mSvの自然放射線(40K、
222Rn、226Raなど)により被曝を受けている。
体内被曝と体外被曝
体内被曝の生体効果(物質相互作用の大きい放射線
ほど危険)
α線 > β線 > γ線
体外被曝の生体効果(透過力の大きい放射線ほど危
険)
γ線 > β線 > α線
16
電離放射線と物質との相互作用(15)
放射線(能)の組織集積性
骨
:32P、45Ca、90Sr、226Ra
甲状腺:123I、125I、131I
全身 :3H、14C、137Cs
放射線の感受性
放射線の感受性は、細胞分裂が盛んであるほど、また未分化
な組織であるほど高い
高感受性
リンパ組織
骨髄、脾臓
胸腺、生殖器
胎児の組織
中感受性
皮膚
眼
消化器
低感受性
筋肉
結合組織
更に低感受性
脂肪細胞
神経
電離放射線と物質との相互作用(16)
放射線の影響
{
{
急性影響
{
身体的影響
晩発影響
}
皮膚の紅斑、不妊
白血球減少、脱毛
確定的影響
白内障
しきい線量がある
}
白血病、がん
確率的影響
遺伝的影響・・・・・・ 代謝異常、軟骨異常
しきい線量がない
しきい線量:一定の線量以下の放射線では影響が出なくても、
その一定量を超すと何らかの影響が発現するような線量
17
放射性核種の薬学領域における利用(1)
• トレーサー法:注目する物質と同じ挙動をする
放射性同位元素(RI)またはRIで標識された
物質を添加して、放射能を目印にしてその物
質を追跡し、更に定量解析する方法。用いら
れるRIまたはRIで標識(ラベル)化された化合
物をトレーサーという。
CH3COOH
標識化
cold
14CH COOH
3
hot
3H、14C、32P、35Sなどの主にβ-線放射核種が用いられる
放射性核種の薬学領域における利用(2)
• ラジオイムノアッセイ法:競合的抗原抗体反応
(免疫反応)を利用した微量定量法。試料にRI
で標識した一定量の抗原を添加して、試料中
に含まれる抗原物質と競合的に抗体と反応さ
せ、放射能測定から試料中の未知量の抗原物
質の量を求める。生体微量成分(ホルモン、タ
ンパク質、酵素)や薬物の定量に用いられる。
125I
などが用いられる
18
放射性核種の薬学領域における利用(3)
• ラジオイムノアッセイ法の概略
競合的
抗原抗体反応
放射能測定
抗体
標識抗原物質
BF分離
試料
+
沈殿
上清
放射性核種の薬学領域における利用(4)
• 放射線滅菌法:RIを含む線原からのからのγ
線や、電子加速器からの電子線などを照射し
て微生物を殺菌する。手術用手袋、縫合糸、注
射針などの滅菌や消毒に用いられる。加熱を
避けたい滅菌・消毒に有効。
60Co
などが用いられる
19
放射性核種の薬学領域における利用(5)
• 放射医薬品
– 放射医薬品とは、放射性核種を含んだ無機
化合物か、若しくは放射性核種が共有結合
など何らかの形で結合した化学物質(標識
化合物)で、それぞれの核種が放出する放
射線を利用して病気の診断(X線検査、核医
学検査)や治療(がん等)に用いられる薬剤
である。
放射性核種の薬学領域における利用(6)
• 画像診断
– X線CT:X線をいろいろな角度から照射し、透過したX線を
測定し画像処理する。
– シンチグラフィー:核医学検査の一つで、放射性医薬品を
投与しシンチレーションカメラで撮影することで、特定の
臓器や全身に分布したRIを外から計測記録する。
– ポジトロン断層撮影法(PET):11C、13N、15O、18Fなどの長
短寿命の陽電子放出核種を用いる。消滅γ線が双方向
の検出器に到達する時間からその距離を求めることがで
きる。がんの病変部の大きさや形状などの情報が得られ
る。
20
核反応及び放射平衡と放射性同位元素の製造(1)
• 自然放射性同位元素と人工放射性同位元素
– 薬学の領域で利用されているのは、ほとんどが人
工放射性同位元素
• 原子核反応(核反応)
– 原子核に外から他の原子核や陽子、中性子、光
子などを衝突させるときに起こる反応で、人工的
に放射性同位元素を製造する際には積極的に利
用される。
• 放射平衡
– 娘核種の半減期が親核種の半減期よりも十分短
い場合、娘核種の放射能は時間の経過とともに、
見かけ上、親核種の半減期で減衰するようになる。
核反応及び放射平衡と放射性同位元素の製造(2)
• 原子炉を利用した製造
– 核分裂生成物から取り出す方法と、中性子を照射
して製造する方法とがある。
– 3H、14C、32P、35S、125Iなど
• 加速器を利用した製造
– 陽子、重陽子、電子などの荷電粒子を電場や交
流磁場で加速して運動エネルギーを与える。
– 加速器としてはサイクロトロンなどがある。
– 67Ga、201Tl、123I、111In
– 15O、18F (PET用)
• ジェネレーターを利用した製造
21
核反応及び放射平衡と放射性同位元素の製造(3)
• ジェネレーターを利用した製造
– 放射平衡にある親核種と娘核種から、娘核種のみ
を分離して取り出す。→再び親核種から無主目核
種が生成されて放射平衡が成立する。→娘核種
のみを取り出す。これを繰り返す。
– こういった操作を「ミルキング」(雌牛から乳絞りす
る操作に似ている)とよぶ。ジェネレーターを「カウ
(cow)」と言う。
– 半減期の短い放射性同位元素を得るのに有効
– 99Mo→99mTc
放射線の測定と測定原理(1)
• 放射線は人間の五感には直接感じないため、物質と
の相互作用により物質に生じる変化を利用する
• 電離作用(電離電荷検出方式)
– 一次電離作用:電離箱、半導体検出器
– 電子流れ現象:比例計数管、ガイガー・ミュラー(GM)計数
管
• 励起作用(発光検出方式)
– 励起直後の発光:シンチレーション係数装置、チェレンコフ
検出器
– 蓄積励起エネルギー:イメージングプレート、蛍光ガラス線
量計、熱ルミネッセンス線量計
• 化学作用(照射効果検出方式)
– 写真作用:写真乳剤
– 酸化・還元反応:化学線量計
22
放射線の測定と測定原理(2)
• 放射線は人間の五感には直接感じないため、物質と
の相互作用により物質に生じる変化を利用する
• 電離作用(電離電荷検出方式)
– 一次電離作用:電離箱、半導体検出器
– 電子流れ現象:比例計数管、ガイガー・ミュラー(GM)計数
管
• 励起作用(発光検出方式)
– 励起直後の発光:シンチレーション係数装置、チェレンコフ
検出器
– 蓄積励起エネルギー:イメージングプレート、蛍光ガラス線
量計、熱ルミネッセンス線量計
• 化学作用(照射効果検出方式)
– 写真作用:写真乳剤
– 酸化・還元反応:化学線量計
放射線の測定と測定原理(4)
• 電離電荷検出方式
– 電離箱:比較的光線量の放射能測定に利用され
る。α、β、γ、X線。
– 比例計数管:入射した放射線の種類やエネル
ギーを区別して測定可能。α、β、γ、X線、中性
子用などがある。
– ガイガー・ミュラー(GM)計数管:比較的エネル
ギーの高いβ線の測定に有効。γ線やX線の測
定も可能だが、低エネルギーのα線の測定は難し
い。放射線のエネルギー測定は出来ない。
– 半導体検出器:α、β、γ、X線。
– ガスフロー計数管:α線や低エネルギーのβ線の
測定が可能。
23
放射線の測定と測定原理(5)
• 発光検出方式
– 液体シンチレーション計数管(カウンタ)
放射線エネルギー→溶媒→溶質→光電子増倍管
低エネルギーβ-線(ソフトβ線)や微弱放射線の測定に
有効
放射線のエネルギー分析が可能
– NaI(Tl)シンチレーション計数管(カウンタ)
固体シンチレーションカウンタの一つ
γ線、X線の測定に適している
多検体の自動分析に適用可能
– イメージングプレート
輝尽性蛍光体を塗布したプレートに放射線エネルギーを蓄
積させた後に、レーザー照射による蛍光を観察する。
放射線の測定と測定原理(6)
• 放射線測定の必要性
– サーベイ、環境モニター
• 放射線防護の目的で放射線の線種、線質、強弱を探査す
ること
• 放射性核種による表面汚染、水や空気の汚染の有無や
程度を測定すること
• この目的で使用される小型の可搬型測定器を「サーベイ
メータ」という
• 電離箱式、GM管式、比例計数管式、NaI(Tl)シンチレー
ション式など
– 個人の被爆線量測定
• 放射線に関わる業務(教育、研究を含む)に携わる個人の
外部被爆の測定
• 蛍光ガラス線量計(ガラスバッジ)、フィルムバッジ、ポ
ケット線量計、熱ルミネッセンス線量計など
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