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2005年 プロジェクト実習レポート
究極の顧客価値創造企業
「ジャパネットたかた」
~「感動と幸せ」を全国のお茶の間へ~
Aug/6th/2005
「ジャパたか友の会」
本レポートは、第 2、14 グループによる合同研究をまとめたものである。
第 2 グループ:
飯島 勝、石神 慎二、市橋 佳代子、稲葉 剛、今川 昌之
第 14 グループ:
山田 穣二、山本 恵司、好井 康祐、和田 圭司
【 目 次 】
1. はじめに
2. 沿革
3. 企業概要:「ジャパネットたかた」とはどんな会社?
4. 「ジャパネットたかた」流 顧客関係のリ・デザイン
1) 「モノ」から「こと」へ
2) お茶の間提案販売
5. 競争優位な事業システム
6. 競合他社との比較
7. まとめ
-1-
1.はじめに
テレビの通信販売でお馴染みの「㈱ジャパネットたかた」は、20 年前は地方の小さなカメラ店
であった。それがいまや”通販の革命児”と称されるほどの全国に名だたる通販企業として、確
固たる地位を築き上げた。
ジャパネットたかたといえば、テレビで高田社長のなまりを利かせた商品説明やキャラクター
が印象的である。しかし、社長一人のキャラクターだけで、あれほどの急成長を支えることがで
きるであろうか。社長のキャラクターだけではないジャパネットたかたの躍進を支えた様々な仕
組みを分析し、解明することを目的に本研究を行うこととした。
2.沿革
1986年
1 月 たかたカメラグループより分離独立し、「株式会社たかた」を設立。カメラ店ソニーショップとして
事業展開
1990 年
3 月 NBC 長崎放送で第一回ラジオショッピングをスタート。通販事業を開始
1991 年
3 月 北は北海道から南は沖縄まで、ラジオショッピングの全国ネットワークを完成
1994年
5 月 長崎県佐世保市大塔町に、大塔第一ビルを建設
6 月 深夜の 30 分番組で「ジャパネットたかたテレビショッピング」をスタート。テレビショッピング事業開始
1995年
5 月 顧客会員向けに通信販売カタログを発行
12 月 新聞折込チラシ「ジャパネット倶楽部」を発行。全国に向け、紙媒体での通販事業に本格参入
1997 年
1 月 事業の拡大に伴い、大塔第一ビル隣に大塔第二ビルを建設
1999 年
4 月 「第一回利益還元祭」キャンペーンのハワイ旅行を実施
5 月 社名を「株式会社たかた」から「株式会社ジャパネットたかた」に変更
2000 年
3 月 大型総合カタログ「ジャパネット倶楽部」を創刊。本格的カタログ通販事業を開始
3 月 インターネットホームページ開設。オンラインショッピング事業を開始
4 月 「第二回利益還元祭」キャンペーンのロサンゼルス旅行を実施
4 月 郵政省より、CS デジタル放送委託業者の認可を取得
2001 年
2 月 長崎県佐世保市日字町に、大規模な物流センターと受注センターを備えた日字本社ビルを
建設。本社を移転
3 月 大塔第二ビルを大幅改装。本格的テレビスタジオ「ジャパネットスタジオ 242」を開設
3 月 CS デジタル放送「スカイパーフェクト TV!」に、専門チャンネル 242ch を開局。全国放送を開始
4 月 「第三回利益還元祭」キャンペーンのゴールドコースト(オーストラリア)旅行を実施
4 月 資本金 1,000 万円を増資して、計 8,000 万円とする
5 月 日字本社ビル隣に「ハウス型スタジオ」完成
6 月 NBC 長崎放送で第一回生放送テレビショッピングをを開始
2002年
2 月 「第四回利益還元祭」キャンペーンの総額現金 1,000 万円プレゼントを実施
4 月 資本金 2,000 万円を増資して、計 1 億円とする
7 月 福岡市中央区天神に「ジャパネットたかた福岡コールセンター」を開設
2003 年
2 月 「第五回利益還元祭」キャンペーンの総額 1,000 万円(旅行券 100 名様)プレゼント実施
3 月 CS 開局二周年記念 50 時間ライブを実施
9 月 ホームページにて 3D ショールームを開設
2004 年
2 月 「第六回利益還元祭」キャンペーンの総額現金 1,000 万円プレゼント実施
12 月 インターネットホームページをリニューアル
-2-
3.企業概要:「ジャパネットたかた」とはどんな会社?
ジャパネットたかたは、創立 1986 年、
長崎県佐世保市に本社を構える通信販売
「ジャパネットたかた」はこんな会社!
¾
企業である。2003 年の売上高 705 億円、 ¾
¾
経常利益 43 億円、従業員数は 238 名であ ¾
る。
¾
社長は、テレビから流れてくる親しみ ¾
創立
所在地
売上高
経常利益
従業員数
業態
1986年(非上場)
長崎県佐世保市
705億円(2003年)
43億(2003年)
238名
通信販売
<創業当初>
ある独特なトークでおなじみの高田明氏
<現在>
である。
創業時は小さな町のカメラ屋(写真左)
であったが、現在では地下にTVスタジ
オまで備えた本社ビル(写真右)を構え
る企業にまで成長してきており、いまだその勢いは衰えるところを知らない。なお、2005 年 8 月
時点において非上場である。
ジャパネットたかたが取り扱う
ジャパたかの主な取り扱い商品!
商品は、主に電化製品である。
注目すべきは、個々の商品が高
額ということである。1 台数万円の
デジタルカメラから 10 数万円のノ
ートパソコン、さらには 30 万円前
後の大型テレビといった商品を販
売しており、これらの高額商品を
通信販売で売ってしまうところに
「ジャパネットたかた」の強さが
ある。さらに最近では、ポータブ
ル・カラオケ・マイクといったような、独特な商品の販売も行っている。これも1台3万円前後
の価格でヒット商品の一つになっており、ユニークな商品の販売もジャパネットたかたの特徴の
一つである。
次に、ジャパネットたかたの売上
高の推移と通信販売におけるメディ
ア展開についてみていく。
ジャパネットたかたの売上高推移
が示すように、創業から現在までの
同社の急成長ぶりは著しい。ジャパ
ジャパネットたかたの売上高推移
840
800
CS専門チャネル
地上波生放送
700
600
400
1 月に実父が経営する「たかたカメラ
300
グループ」より分離独立し、カメラ
200
店ソニーショップとして創業した。
100
0
706
624
663
ネット通販
500
ネットたかたは、前述の通り 1986 年
ジャパネットたかたの転機は、1990
予測
億円
900
利益還元祭
1991年
ラジオ通販
全国ネットワーク
テレビ通販
24
15
1992
1993
-3-
43
1994
72
1995
421
449
347
カタログ通販
新聞折込チラシ
225
112
1996
149
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
年 3 月に訪れる。地元長崎のラジオ番組に高田氏自らが応募・出演する機会があり、当時高額で
あったコンパクトカメラを 5 分程度の説明によって約 50 台(約 200 万円)を販売したのである。
当時の一般的なカメラ屋の月商が 300 万円程度であったことから、1つのカメラ店にとって衝撃
的とも言える出来事であった。高田氏は、ラジオ番組出演での出来事から大きなビジネスチャン
スを見出した。そこからの高田氏の動きは早かった。翌年 1991 年 3 月には、北は北海道から南は
沖縄まで、ラジオショッピングの全国ネットワークを完成させたのである。
それ以降、1994 年 6 月に現在のメイン事業であるテレビショッピング事業を開始、翌年 1995
年 5 月には、顧客会員向けの通信販売カタログを発行し、事業を順調に拡大していった。
さらには、2000 年 3 月にインターネット上にホームページを立ち上げ、当時としては先駆けで
あるオンラインショッピング事業を開始、翌年 2001 年 3 月には、本格的な自前テレビスタジオで
ある「ジャパネットスタジオ242」を開設するとともに、CSデジタル放送「スカイパーフェ
クトTV!」に専門チャンネル242chを開局し、生放送など全国放送を開始した。
以上見てきたとおり、ジャパネットたかたの事業展開の特徴としては、その時代の一歩先の展
開を見据え、失敗を恐れることなく決断し、直ちに実行に移す「決断と実行の速さ」にあるとい
える。
なお、2004 年に一旦売上が急激に落ちた理由としては、55 万件にものぼる顧客情報流出により、
テレビ・ラジオを含めて一切の営業活動を自粛したものによるが、高田氏の迅速な判断、かつ顧
客に対する真摯な対応により、急速に信頼を回復し 2005 年度の売上高は回復する見込みである。
4.「ジャパネットたかた」流 顧客関係のリ・デザイン
ジャパネットたかたの急成長の秘密は、どこにあるのだろうか。最近、メディアがその急成長
ぶりから取材対象としてよく取り上げ、注目は高田社長に集中している。高田社長の独特のなま
りと話し方で自らが商品を提案し、販売するスタイルは視聴者に強烈な印象を与えている。
社長の個性にばかり注目が集まっているが、ジャパネットたかたの強さは、社長の話術だけだ
ろうか。その答えは「No」である。もちろん高田社長の存在は大きいと考えられるが、同社の
本当の強さは、今回の研究テーマでもある「顧客接点のリ・デザイン」が競合他社とは大きく異
なる点にあると考える。
同社の「顧客接点のリ・デザイン」の特
徴は、次の2つが挙げられる。それは、
『
「モ
ノ」から「こと」へ』と『お茶の間提案販
売』
(「ジャパたか友の会」による造語)で
あり、さらにこの 2 つを同時に実現してい
るということで、「融合型リ・デザイン」
といえる。
同社の「顧客接点のリ・デザイン」とは?
ただ家電を売るのでは
「感動と幸せ」
なく、
を提供!
メディアミックスで
「感動と幸せ」を全国
のお茶の間へお届け!
「モノ」から
「こと」へ
お茶の間提案販売
「モノ」から「こと」へとは、同社の姿
勢が、製品ありき、販売ありきといったプ
ロダクトアウト的な発想ではなく、家電を
融
融合
合型
型リ
リ・
・デ
デザ
ザイ
イン
ンを
を実
実現
現
通してその人に「感動と幸せ」を提供する
といった顧客のベネフィットを重視したマーケットインの考え方であるということ。
しかも、同社は「家電(高額商品)を売る=店頭販売」という一般的通念を打ち破り、ラジオ、
テレビやチラシ、インターネットといった様々なメディアを有効に組み合わせること、つまりメ
-4-
ディアミックスを活用することにより、全国に 1 つの店舗も構えることなく、「全国のお茶の間」
に入り込み「感動と幸せ」を提案する仕組みを構築したことにある。
以下に、この2つの融合型リ・デザインについて詳細に分析した。また、次章において、融合
型リ・デザインを支えるジャパネットたかたの競争優位な事業システムについて考察する。
1) 「モノ」から「こと」へ
ジャパネットたかたでは、単にモノを販売するだけではなく、モノを販売することで商品を受
け取った人の人生に感動を与え、その人を幸せにすることを理念としている。そして、この理念
を実際の商品販売の現場で実践しているのである。
ジャパネットたかたが実践している商品販売を通して人生を豊かにする販売方法とは、商品提
案の場において商品を使うことで生まれる幸せな生活を視聴者に思い描かせることである。
例えば、ボイスレコーダーの使い方の提案として、通常であれば、ビジネスマンを対象に、会
議での利用を勧めるのが一般的であるが、ジャパネットたかたは、母と子が、伝言メモの代わり
に、声でメッセージを伝えることを
高田社長の理念
提案している。これは、人と人との
コミュニケーションの充実という、
生活の一つの「豊かさ」への提案で
あると言える。
また、カメラの場合では、機能や
大
切
な
こ
と
は
、
大
切
な
こ
と
は
、
モ
ノ
を
モ
ノ
と
し
て
提
案
し
な
い
モ
ノ
を
モ
ノ
と
し
て
提
案
し
な
い
こ
と
で
し
ょ
う
。
そ
の
先
で
こ
と
で
し
ょ
う
。
そ
の
先
で
そ
の
人
の
生
活
を
い
か
に
豊
か
に
す
る
か
、
そ
の
人
の
生
活
を
い
か
に
豊
か
に
す
る
か
、
と
い
う
こ
と
に
思
い
が
至
る
こ
と
で
す
ね
。
と
い
う
こ
と
に
思
い
が
至
る
こ
と
で
す
ね
。
価格にのみ注目するのではなく、
「旅
行が好きじゃない人もカメラがあれ
お
お客
客様
様の
の「
「豊
豊か
かな
な生
生活
活」
」
を
を実
実直
直に
に提
提案
案し
しつ
つづ
づけ
ける
る
同
同社
社の
の姿
姿勢
勢そ
その
のも
もの
の
ば、楽しくなる」という提案を行っ
てきた。ここからさらに進んで、カ
メラが人生の楽しみにつながること
を顧客に感じさせるのである。
さらに、ビデオカメラの商品説明
では、
「普通はビデオカメラで子供を
撮るが、ビデオカメラを構えるお父
モノから「こと」を生み出す秘密
~社長のトーク~
さんを撮ると、その映像が将来には
9 ただ、訛っているだけじゃない
子供にとっての宝物になる」という、
9 商品の使い方説明だけじゃない
「今」だけでなく長期的視野に立っ
た提案を行っている。
• 主役:子供
• 黒子:お父さん、お母さん
でも…
• 若かりし頃のお父さん、お母さん
→20年後、子供の宝になる
• お父さん、お母さんを撮って下さい
以上の例は、商品をモノとして販
売するのではなく、商品を通しての
人生を豊かにするという高田社長の
ビデオ
カメラ
理念に基づいて実践された商品説明
である。
奨める商品で人生が豊かになるトーク
ジャパネットたかたは、2004 年に顧客情報流出事故をおこしたが、信用を第一に考え、全ての
営業を自粛した。このこと自体、顧客に対して真摯な姿勢の現れであると言えるが、さらに、こ
の自粛期間中に、顧客から「ジャパネットたかたの声がテレビから聞こえなくて寂しい」という
-5-
意見が届いたという。
通常、企業は「顧客を囲い込む」を考えるが、ジャパネットたかたは顧客から指名される企業、
すなわち「囲い込まれる」企業であると言える。
つまり、商品を販売する際に「生活に根ざした利用方法」と、そこから生まれるであろう「豊
かな生活のイメージ」という付加価値を提供しており、
「独自の商品イメージ」
(=「こと」)の提
供を実現させている。これが第一の顧客接点のリ・デザインであると言える。
2) お茶の間提案販売
一般的には、家電製品の販売は、量販店か個人商店である町の電気屋が担っている。量販店は、
多様な顧客のニーズに応えるために店舗を大型化し、品揃えを充実されている。また、複数店舗
展開している量販店では大量に仕入れることにより、低価格販売を実現している。一方、町の電
気屋は、家電を分かりやすく説明して、おせっかいなまでのサポートを提供している。また、ご
近所であることの安心感を顧客に提供している。
では、どのような顧客が量販店で購入し、町の電気屋を活用しているのかを考察した。
パソコン購入を例に考える。顧客の中には、雑誌やインターネットなど、自分で積極的に家電
製品情報を収集し、商品を選ぶ力を持っている顧客は、自分が欲しいのはノートかデスクトップ
か、使用するシーンは、予算など具体的に
商品のイメージを確りと持っている者が
いる。このような顧客は、価格が安く、品
量販店
いらっしゃい
揃えが豊富な店で情報を補強し、価格を他
顕在ニーズ対応型
顕在ニーズ対応型
大型店舗化
⇒品揃え充実
大型店舗化⇒品揃え充実
大量仕入⇒
⇒
低価格販売
大量仕入
大量仕入⇒低価格販売
店などと比較して購入に至る。積極的に購
お店選びのポイント
買活動を行うことから、能動的顧客と定義
品揃えと価格重視
する。この能動的顧客は、自らのニーズに
合う商品を提供してくれる店舗を求めて
おり、品揃えの充実と低価格販売を実現し
ている量販店へ向かうことになる。
能動型顧客
一方、顧客の中には、情報収集力が弱く
て電気製品が苦手であったり、大きな店舗
での買い物が苦手な者がいる。このような
元気のある電気屋
町の電気屋
顧客は、家電製品によっては、どう使って
地域密着型
地域密着型
提案営業
良いのか自体が分からないことも多い。従
潜在ニーズ開拓型
潜在ニーズ開拓型
・家電を分かり易く説明
・おせっかいなまでのサポート
・近所であることの安心感
って、店の人から懇切丁寧な使い方を教え
てもらうことで、購買動機が芽生えて購入
?? 電器製品が苦手
電器製品が苦手
?? 買い物が億劫
買い物が億劫
③
情報収集力が弱い
③情報収集力が弱い
に至る。受け身な購買活動を行うことから、
受動的顧客と定義する。この受動的顧客は、
自らのニーズが掴めておらず、ニーズを教
えてくれるようなサポートを求めている。
受動的顧客
受動的顧客には、地域密着型の町の電気屋による提案営業が、自分のニーズを掘り起こしてくれ
るので、ここから購入することになる。
-6-
<能動的顧客>
<受動的顧客>
特徴
①自分で積極的に家電製品を選ぶ力を持つ
①電気製品が苦手
②他店と価格などを比較しながら店舗選択
②買い物が億劫
③情報収集力が弱い
店選び
品揃えと価格重視
特になし
ただ、量販店は気後れする
家電購
入先
価格が安く、品揃えが豊富な家電量販店に足 町の元気な電気屋からの地域密着型提案
を運び購入
営業により購入
ジャパネットたかたは、
「商品販売を通して人生を豊かにする」という高田社長の経営理念を実
践しており、顧客に対しては提案営業型の販売方法を取っている。これは、上述の町の電気屋に
共通していることが多い。しかし、ジャパネットたかたが町の電気屋と大きく異なるのは、ラジ
オ、テレビ、チラシ、カタログなどの各種メディアを活用することにより、
「地域密着」から「全
国」の顧客のお茶の間に入り込んで行けるのである。そして、店側からの提案を待っている全国
の受動的顧客が、ジャパネットたかたの顧客の対象となったと考えられる。
ジャパネットたかたの営業の基本は,提案型営業による顧客ニーズの開拓であり,それをメデ
ィアミックスによって全国の潜在的顧客へと展開していくユニークな方法である。すなわち、こ
れまでどの通販業者も行ってこなかった全国エリアでの「お茶の間提案販売」を実現したのであ
る。ジャパネットたかたが、ラジオやTVで通販を始めたときも通販自体は目新しいことではな
かった。しかし、商品の売り買いだけ
ジャパたか式 提案型営業
「モノ」ではなく「こと」を売る
ではなく、人間同士の心が通じ合うよ
うな暖かい営業方法が、顧客の心に響
いたのである。
チラシ
ラジオ
カタログ
以上のように、
「モノ」ではなく「こ
テレビ
通販の仕組み活用
インターネット
と」を販売する提案営業をラジオ、テ
レビ、チラシ、カタログなど通信販売
の仕組みを活用して、全国エリアでの
受動的顧客に向けて「お茶の間提案販
売」を実現した点が、ジャパネットた
かたの第二の顧客接点のリ・デザイン
受動的顧客
提案型営業で潜在ニーズ開拓
+
メディアミックスで全国へ
受動的顧客
受動的顧客
全国エリアでの
「お茶の間提案販売」
を実現
である。
高田社長は、我々のインタビューで次のように語っている(2005 年 7 月 25 日
ジャパネットた
かた本社ビルにて)。
「そもそも、ジャパネットたかたをどういう会社にしたいのか?を考えたときに、ただモノを
売るだけでは全く面白くなく、モノを通して買って頂いたお客様に感動を売りたい、と考えてい
た。」
これは、同社の営業の心得の根底にあるものであり、ジャパネットたかたが船出したときの源
流とも言えるものである。顧客満足度の追求は、下記に示すようなさまざまな恩恵があり、マー
ケティングの基本戦略といえるものである。
-7-
また、次のようなコメントも印
象的であった。
「それとラジオ販
売をするにあたって心がけてい
たことがある。一つは、ラジオ
はしゃべり手の心が確実に見え
る、ということである。意外か
もしれないが、声だけで相手に
伝えると、表情だけ笑顔にする
といったごまかしが一切きかな
いのである。二つ目は、難しい
言葉を使わないことである。で
きるだけやさしい言葉でしゃべるよう心がけた。それは決してうまくしゃべることではなく、自
分の言葉で心をこめてしゃべることである。これが現在のテレビ通販でのしゃべりの原点になっ
ている。」これらの社長のコメントから感じ取れることは、常に顧客接点を意識した営業活動を心
がけていることであり、通信販売であっても常に顧客は自分の前にいるという認識を忘れないこ
とである.
5.競争優位な事業システム
これまで、ジャパネットたかたの「顧客接点のリ・デザイン」を説明した。本章では、ジャパ
ネットたかたの顧客接点のリ・デザインを支える「事業システム」について考察する。その事業
システムとは①商品の絞込と、②自前主義に代表される。
ジャパネットたかたは、バリューチェーンにおいて明確な戦略とそれを支える事業システムを
持っている。同社バリューチェーンを下図に記す。
調達
・メーカー別担当者による社内コンペ
・感動を与える商品への絞込み
感動を与える商品
販売
・自前スタジオでの製作(ラジオ、TV)
自前
・わかりやすい提案型説明
・金利手数料ジャパネット負担
物流
・全数検品
・自前倉庫での管理/開梱/梱包
自前
TV自前スタジオ
コールセンター
・自前コールセンター
自前
アフターケア ・社員全員で顧客対応
同社のバリューチェーンにおいて特徴的なことは、調達からアフターケアまですべて自前のシ
-8-
ステムを構築していることである。最近は、バリューチェーンにおいて自社が最も付加価値を提
供できるフェーズに資源を集中し、それ以外のフェーズは外注や提携などに依存することが多い。
しかし、同社はそのような時流とは逆行し、自前主義を徹底している。
ジャパネットたかた社が、従来不可能であった個人商店なみの顧客関係を維持しながら全国展
開できたのには、競争優位な事業システムが隠されている。ここでは、同社の調達、販売、物流
及びアフタサービスという価値連鎖について、その仕組みについて分析する。
取り扱い商品を同社の主力である電気製品に限定し、同社と家電量販店の事業システムの比較
を表に示す。
ジャパネットたかたと家電量販店の事業システムの比較
何を
(物質)
ジャパネット高田
家電量販店
電気製品
電気製品
ジャパネットたかた厳選の少数精 メーカーが提供する全商品
鋭品
(機能)
顧客のニーズを創出すること
顧客のニーズを充足すること
生活を豊かにできる商品
使い方が分かりにくい商品
誰に(顧客層)
受動的(ウィンドウショッピング嫌い)
能動的(ウィンドウショッピング好き)
電気製品に弱い
自分で使い方が分かっている人
何に使えるのかもわかってない人
多数の商品から選びたい(機能・デザイン)
勧められる商品を信じる人
どこよりも低価格にこだわる
価格とサービスを求める人
「お取り寄せ」嫌い
価格を重視する人
いかに(仕組み) 低価格:同一商品の大量仕入れと関 全メーカー、全機種、全グレードの展示販売
連商品のセット販売
関連商品も全て同時に自分で選べる
通信販売(メディアミクス*)
郊外型あるいは都心型の大型店舗
自前主義:
メーカー社員による商品説明
自前スタジオから生出演で説明販売
メーカー保証と販売店保証(お金だけ)
自前倉庫での管理・セッティング・梱包 物流は「お持ち帰り」
自前コールセンター
ブランド戦略
アウトソーシング
全数検品と物流(配送)
* テレビ、ラジオ、カタログ及びインターネットなど多種類メディアによる通信販売
取り扱い商品:
まず、取り扱い商品は多種にわたるが、主力はパソコン、デジカメ、カラオケ、ビデオなどの
家電製品である。ただし、ジャパネットたかたがそれらを通じて提供するのは「豊かな生活」と
いうサービスであり、電気製品はそのためのツールのひとつでしかない。したがって、家電量販
店のように全メーカーの全商品を取り扱う必要がないかわりに、厳選された少数の商品のみを取
り扱っている。この取扱商品の決定には、ジャパネットたかたのこだわりと隠されたシステムが
存在する。具体的には、次のような手順で商品が決定される。
-9-
ジャパネットたかたの「メーカー担当社員」と実際のメーカー担当者がまず推薦商品と値段の設定
を予め済ませておく。なお、古い商品などは全く取り扱わず、常に最新機種を取り扱う
ジャパネットたかたの各メーカー担当社員が、社内会議で順番に「高田社長(を初めとするお客さ
ん役社員)」にその商品の販売活動を行う。その際、1社のメーカー担当社員からは1商品のみが推
薦され、その特徴を売り込む。同様に、他社メーカー担当者も順番に売り込む。
高田社長はその特徴を聞き出した後、メーカー担当社員と値引き交渉を行う。このとき興味深いの
は、高田社長はあくまで「お客さん役」に徹しており、値段も「販売価格」で交渉する。
最終的に1社の1商品のみ選択し、さらにそれに組み合わせるセット商品を選ぶ。
図
ジャパネットたかたにおける商品厳選プロセス
この商品選定プロセスの利点として、特に以下の 4 点があげられる。
① 顧客の視点で、利便性及び価格の両面からみて価値のある商品を厳選できる
② 商品を1つに絞ることで、大量仕入れが可能となり、販売価格を下げられる
③ 商品を1つに絞ることで、商品に対する知識が深まり、濃密な顧客サービス(アフタケア)
が可能となる*
④ 商品を見るポイントなどを解説しながら行うので、社員教育の場として活用できる
*インタビュー情報:ジャパネットたかたのカスタマーサービスセンターには取り扱う全ての商
品が近くに置いてあり、電話を受けた社員はお客様と全く同じ商品を手にとってみながら説明で
きるのである。取扱商品が多くなると空間的に全商品を側におくことが不可能となり、結果的に
顧客サービスの質を維持できなくなるので、取扱商品は増やさないとのことであった。
以上のような商品選定プロセスを経て、厳選された商品が通信販売に登場するのである。
顧客:
ジャパネットたかたと家電量販店について、顧客の目からみた違いを検討した。まず、ジャパ
ネットたかたのチラシと家電量販店のチラシの比較を行った(下図表)。
表
ジャパネットたかたと家電量販店(ミドリ電化)のちらし広告の比較
ジャパネットたかた
ミドリ電化
商品掲載数
47 商品
1051 商品
チラシ面積
0.891 ㎡(両面)
1.804 ㎡(両面)
1 ㎡あたりの商品掲載数
57.4 商品
582.6 商品
- 10 -
ジャパネットたかたのちらしの特徴は、全体サイ
ズが小さめで、文字が大きく、写真が大きく、使い
方がひとつひとつ記載されており、そして何より、
商品数が圧倒的に少ない。
1 ㎡あたりの商品掲載数で比較しても、ジャパネ
ットたかたの商品数は約 1/10 しかない。これに対
し、家電量販店の大判チラシ1枚には、計 1000 以
上の商品の情報が詰め込まれ、同じ商品群の中にも
当然であるがグレードによって異なった値段が記
載されている。パソコンの場合、機種間の差を把握
するためには、虫めがねを用意してメモリーの容量
やらハードディスクの容量やらバンドルソフト、
CPU のクロック数などの意味を理解し、自分の求め
る機能を見極める知識が必要となる。
多くの能動型顧客が、それを理解し、目指す商品
を求めて家電量販店に行くのである。なぜなら、す
図 ジャパネットたかたのちらし広告
でに説明したように、能動型顧客の多様なニーズを
家電量販店のちらし広告とは異なり、商品
満たす品揃えは、大型家電量販店しか実現できなく
数が少ないかわりに 1 商品の説明に力を
なってしまったからである。
入れている
家電量販店にいくと、広い店内に星の数ほどある商品の中を数時間も飛び歩き、自分のニーズ
にあう商品を探し出す。ただし、説明は商品の前に置かれたパンフレット(時々切らしている)
と、忙しそうに客の対応に追われている、半被を着たメーカー派遣社員に求めなくてはいけない。
しかも、他の客の用事で移動中のところを捕まえて、
「少々お待ち下さい」の対応にめげず、質問
を矢継ぎ早に繰り出す勇気がなければ、十分な説明をしてもらうことはまず不可能な状況である。
世の中には、この流れに乗り遅れた人が沢山いる。安く、価値ある商品を見分ける方法をもた
ず、今やどの電気製品で何ができ、どれとどれを組み合わせれば良いのかわからないという状況
にある。勇気を出して買ってみたら「思ったのと違っていた」、「ちゃんと動かない」、「セッティ
ングがわからない」という悔しい思いをすることが容易に想像できるのであるから、このような
人たちは家電量販店で買うのを諦め、ますます電気製品から取り残される。
ジャパネットたかたが手を差し伸べて豊かな生活を提案している人は、この人達が中心である。
事実、下表に示すように、ジャパネットたかたの主力販売チャネルであるテレビ通販番組の視聴
率(世帯数)調査では、最も視聴率の高い年齢層は男女ともに 50 代以上である。
■ジャパネトたかたTV通販番組 6月7日WEBより
エリア
関東
放送局
放送曜日
放送開始時間
TX テレビ東京 毎週月~木 9:28~生放送!
平均視
聴率
1.2
視聴世帯数
(単位 千)
16,815
推定 視聴世帯数
女性
男性
20-34 35-49 50以上 20-34 35-49 50以上
50
17
101
34
34
また、ジャパネットたかたでは主製品と関連製品のセット販売を行っているが、例えば、テレ
ビを無線で見ることのできるノートパソコン(14万円程度)セットを販売するときに、フロッ
- 11 -
50
ピーディスクドライブを付けて販売している。フロッピーディスクドライブを今だに必要とする
人というのは、まさに電気製品から取り残された顧客層であろう。
顧客の視点からみると、ジャパネットたかたによって自分では購入できなかった(諦めていた)
商品を買えるようになり、人生が豊かになっていると言えよう。事実、我々が佐世保にインタビ
ューに行った時に乗ったタクシーの運転手は、ジャパネットたかたで購入した経験を持っており、
「全てセットで売ってくれるので商品の組み合わせを自分で選ばなくても済むので楽だ」と仰っ
ていた。また、数字の裏付けは社外秘のためとれなかったが、ジャパネットたかたはリピータ率
の向上にも注力しているとのことであった(社長インタビュー)。ちなみに、インタビュー時に同
席頂いた秘書さんのお話では、通常の健康食品などのテレビ通販のリピータ率は8割程度であり、
それよりはやや低いとのコメントであった。また、ジャパネットたかたは将来へのビジョンとし
て、
「子の代まで」のおつきあいをしたいと考えているとのことであった。そのビジョンを実現す
るための一例として、ジャパネットたかた顧客を招いての「旅行プレゼント」などを実施してい
る。この旅行には、高田社長自ら参加しており、顧客との深い絆を非常に大事にしていることが
見て取れる。我々がジャパネットたかたの佐世保本社に伺った際に、社員が最も多くいる事務所
に、お客様から送られてきたという「一期一会」の大きな書と手紙が飾られており、このような
点から、顧客の側からもジャパネットたかたとのつながりを大切にしたいと感じさせることにジ
ャパネットたかたは成功している。
以上、ジャパネットたかたの顧客セグメントの特徴をまとめると、下図に示すように、①電気
製品に弱い、②受動的でウィンドウショッピングが苦手、③通信販売で商品を購入することに拒
否感がない、の3点にあると言える。そして、ジャパネットたかたは顧客育成に力を入れており、
ロイヤルカスタマーを育てあげている。
電気製品に弱い
中心顧客層
受動的でウィンドウ
通信販売で
ショッピングが苦手
商品を購入できる
図
ジャパネットたかたの顧客セグメント
どのように:
先に述べた如く、ジャパネットたかたでは少数製品を大量仕入れすることから、低価格仕入れ
が実現できる。その一方で、顧客セグメントを考慮すると、価格よりもサービスを重視する必要
がある。しかし、ジャパネットたかたの驚異的な売上増加を支えるのは、販売力であるはずであ
る。さらに、ジャパネットたかたは顧客との関係を「子の代まで」維持したいと考えている(社
長インタビュー)ことから、育客にも力を入れているはずである。このような仕組みについて述
べる。
- 12 -
(1)低価格
ジャパネットたかたの販売価格を家電量販店ちらし価格と比較した結果、両者に殆ど差はなか
った。下表にコンピュータの値段比較の実例を示す。
ジャパネットたかたと量販店の散らし価格の比較例
ジャパネットたかた
ヤマダ電器
プリンタ、無料設定つき
¥189800(さらに値引きします)
PC-VR500CD
179800 円
さらに 16%ポイント還元
Fujitsu FMVNB50LB
プリンタ、無料設定つき
¥159500(さらに値引きします)
159800 円
さらに 16%ポイント還元
NEC
ハ ゙ リ ュ ー ス タ ー
このように、ジャパネットたかたは付加価値を加えた上で、さらに低価格を十分に達成できて
いると言える。これは、同社が特定商品を大量購入することで、仕入れ価格を下げていることと、
同社の売上が大きくなったため、メーカーから無視できない販売チャネルになったことが大きい。
(2)メディアミクス通信販売
ジャパネットたかたを利用する顧客が、受動的な顧客であることはすでに述べた。このような
顧客に全国規模でアプローチする営業戦略として、ジャパネットたかたは通信販売メディアを並
行利用して顧客との接点をひ広げる戦略をとっている。これをジャパネットたかたでは「メディ
アミクス」と呼んでいる。
ラジオでは声のみ、テレビでは商品と顔と声、チラシ・カタログでは紙ベースの商品と文字、
そしてインターネットではコンピュータ画面の大きさまでしか拡大できない商品と文字(最近は
動画配信も開始している)により、商品を説明する。この中で最も直感的かつ情報量の多いのは、
テレビショッピングであろう。にもかかわらず、何故「紙ベース」のチラシ・カタログ販売も並
行させるのかインタビューで、高田社長に聞いてみたところ、
「ご老人は、テレビで言っただけの
ことは信用しない。紙に書いてあることでなければ、信用できない人が多い」とのことであった。
このように、声で、テレビで、本で、インターネットで、そしてチラシで同じ商品を「高田社長」
が常に登場して、説明するのである。このように、顧客の特性に合った様々なメディアを絨毯爆
撃のように並行利用することによって、顧客を獲得しているのである。
(3)自前主義
ジャパネットたかたの通信販売事業は、「自前主義」の上に成り立っている。特に、TV 通販の自
前スタジオ、お客様からの第一報を受け取る自前コールセンター、お客様に商品を送り出すため
に、セット商品を設定・再梱包する自前倉庫、などのハード面には短期的利益よりも顧客価値(サ
ービス)を重視した同社の経営姿勢が伺える。さらに、自前主義はソフト面でも発揮されており、
社内 TV スタジオの運営、出演者等もすべて自前である。
以下に、自前スタジオ、自前倉庫、自前コールセンターの意義について詳述する。
1) 自前スタジオ
自前 TV スタジオを持つ理由は、高田社長自らが毎日出演して正しく価値を伝えることを可能
にし、臨場感あふれる生放送を行うためである。生放送のメリットは、今その時点で必要とされ
- 13 -
る商品を紹介して販売できることであり(例えば寒い日には予定されていたクーラーの紹介をや
め、掃除機に急遽切り替えるなど)
、事実、生放送での売上は録画放送での売上の○倍とのことで
あった。また、TV スタジオを運営する特殊技術をもった社員も、自前で育成しているが、興味深
いのはこれらの社員は短期的には専属であろうが、基本的にはローテーションで配置換えが行わ
れることである。例えばコールセンターにいた人が、来月から収録スタッフということもあり得
る。この人事ローテーションの利点は、社員・現場の活性化のみならず、社員の社内事業に関す
る知識の共有、最適職種の見極め、などにも役に立つと推察される。
2) 自前コールセンター
同社は、福岡に自前のコールセンターを所有している。一般に通信販売業界では、コールセンタ
ーは自前ではない場合が多いが、高田社長のインタビューによると、お客様からの1本の電話を、
お待たせすることなく受け取り、商品に関する質問等に適切にお応えするには、自前コールセン
ターでなければならないとのことであった。上述の、商品の数を絞っていることと重なって、自
前コールセンターはいわばジャパネットたかたの玄関として、位置づけられているのである。
3) 自前倉庫
同社では、以前から「セット販売」と、
「設定サービス」を行ってきた。これは、電気製品に取り
残された人にとって最も大きな参入(購買)障壁なのである。例えばコンピュータを買った場合、
インターネットプロバイダからの設定情報や付属品のドライバまで予めインストールしておき、
家庭ではコンセントに差し込んでケーブルを接続するだけで、使用可能な状態にまでしておいて
から、出荷するのである。そのため、設定のために一旦開梱し、出荷前に全商品とセット販売商
品をまとめて再梱包する作業が発生する。これを、ジャパネットたかたは自前で行っているので
ある。また、この自前倉庫を持つことで、スピーディな商品発送が可能となっている。
(4)ジャパネットたかたのブランド戦略
ジャパネットたかたは、メーカーではなく、販売チャネルであるが、そこにブランド戦略を持っ
ている。特に、通信販売業者であり、顧客から実態が見えにくいという構造的な問題から、同社
は「信用」という点について細心の注意を払ってきた。例として、同社が通信販売を開始した頃、
常にナショナルブランドのみを取り扱っていたという事実がある。高田社長インタビューでは、
「通信販売では、商品の返品などのクレームは、ラジオやテレビ局へ直接行くので通販を続ける
ためには、絶対避けなければならなかった。知名度が低かった頃は、ナショナルブランド以外は
手をださなかった。それが良かったのか、通販開始後3年間はノークレームであった」とのこと
であった。そして、高田社長をイメージさせる Mr.J をキャラクターとして印刷物には必ず登場さ
せる。2003 年に起こった個人情報漏洩事件では、同社は一時販売を自粛し、内部情報管理システ
ムの見直しを行っている。このような姿勢は、新聞等によると顧客からも社会的にも評価されて
おり、信頼を獲得しつつあるようである。高田社長のインタビューで「以前は上述の如くナショ
ナルブランドのみを扱っていたが、最近ではジャパネットたかたが扱っているから大丈夫だろう
という認識を顧客から頂いている」との言葉も、あながち嘘ではなさそうである。
以上の通り、ジャパネットたかたの事業システムを説明したが、これらは全て顧客満足を創造
するためのシステムに他ならない。これを購買プロセスに当てはめると下記の通りとなる。
¾
購買前(商品の提案)
- 14 -
厳選された商品を分かりやすく説明してもらえるプレゼンテーション
どんな媒体からでもアクセスできるメディアミックス
¾
購買時(買い易い仕組み)
すぐに使えるセット販売
金利手数料負担
すぐにつながり購入直前まで商品確認を行えるコールセンター
¾
購買後(カスタマーサービス)
自宅でのセットアップサービス
商品について詳しい説明を受けられるカスタマーサービスセンター
このように、購買プロセス全てに
「顧客満足創造システム」
おいて、顧客に優しいシステムとな
っているのである。そしてこのシス
厳選された商品
分かりやすい説明
テムからは、展示品まで売り切るこ
商
商品
品の
の提
提案
案
とを目標とする通常の家電量販店と
は異なり、本当に顧客に満足しても
コールセンター
アフターサービス
セットアップサービス
金利負担ゼロ
セット販売
らおうとする同社の顧客志向の姿勢
が見て取れる。顧客に豊かな生活を
お
お客
客様
様
提供するという理念を貫き、自身を
持って商品を提供しているのである。
顧客志向企業だからこそ、成し遂
買
買い
い易
易い
い
仕
組
み
仕組み
カ
カス
スタ
タマ
マー
ー
サ
ー
ビ
ス
サービス
げることができる事業システムであ
る。
6.競合他社との比較
家電量販店市場と通販市場の成長率を対照としたジャパネットたかた社の売上高の成長率を比
較した.
ジャパたか売上高・市場規模伸長率
比較
1000%
ジャパたか売上高
900%
約10倍
10倍
800%
700%
600%
500%
400%
家電量販店市場規模
300%
約1.7倍
1.7倍
200%
100%
通販市場規模 約1.6倍
1.6倍
1995年を100%
0%
1995
1996
1997
1998
1999
- 15 -
2000
2001
2002
2003
2004
図が示すように、ジャパネットたかた社は比較対照とした市場の伸びを大幅に上回っているこ
とがわかる。すなわち、同社の成長要因は市場の伸びではなく、競争優位のビジネスモデルの確
立によるものである。図は 1995 年から、2004 年までの売上高の伸びを示しているが、これは同
社のメディアミックスの軌跡と重なる。1994 年 6 月にTVショッピング事業を開始し、1995 年
12 月に新聞折り込みチラシ「ジャパネット倶楽部」の発行によって紙媒体での通販事業にも本格
参入した。2000 年 3 月からカタログ通販事業を本格展開し、同時にインターネットによるオンラ
インショッピング事業に乗り出している。2001 年 3 月に CS デジタル放送「スカイパーフェクト
TV!」に専門チャネルを開設し、全国放送を開始している。これら積極的なメディアミックス戦
略が実を結び、飛躍的な成長を遂げることができたと思われる。
次に、競合企業との比較を、従業員一人あたりの年間売上高で比較する。競合企業としては、
①テレビ通販最大手のジュピターショップチャンネル、②家電カメラ量販店大手 10 社平均、③家
電カメラ量販点の上位 2 社であるヨドバシカメラおよびヤマダ電機を選んだ。
データおよびグラフを表に記す。
競合との比較
ネ
ャ
チ
均
平
社
ョ
10
シ
手
ー
機
0
0 .5
1
1.5
2
2.5
3 億円
ヤ
マ
ダ
ヨ
電
ド
家
バ
電
シ
カ
カ
メ
メ
ラ
ラ
大
タ
ピ
ュ
ジ
約 2 .4 倍
プ
ッ
ジ
ャ
パ
ネ
ッ
ト
た
か
た
従業員1人当りの年間売上高
企業
従業員一人あたり売上
たかたとの比較
高
ジャパネットたかた
2.96
-
ジュピターショップチャンネル
0.93
3.2 倍
家電カメラ量販店大手 10 社平均
1.39
2.1 倍
ヨドバシカメラ
2.23
1.3 倍
ヤマダ電機
2.10
1.4 倍
単位:
億円
※たかたとの比較は、競合比較企業に対してジャパネットたかたの売上高を倍率で示した
ジャパネットたかたは従業員一人あたりの売上高が 2.96 億円と他社と比較して最も大きい。
- 16 -
ジャパネットたかたをテレビ通販とみなし、テレビ通販最大手のジュピターショップチャンネ
ルと比較すると 3.2 倍であり、同社がテレビ通販大手を比較して非常に生産性が高いことが分か
る。
同様に、ジャパネットたかたを家電量販店とみなして、家電量販店大手 10 社平均と比較しても
2.1 倍である。したがって、通販、家電量販店という二つの側面から分析しても、同社の生産性
が高いことが分かる。
次に、家電量販店で最も業績のよい企業と比較してみた。近年、都心への大型店舗展開に積極
的なヨドバシカメラとは 1.3 倍、日本全国に郊外型量販店を展開している業界最大手のヤマダ電
機とは 1.4 倍であり、彼らと比較しても全く遜色のない業績である。
このような、生産性の高さは、①店舗を持っていない、②CS 放送で専有のチャンネルを確保し
ている、③番組を自前で制作している、④多能な従業員に支えられていることが、インタビュー
によって明らかとなった。それぞれメリットを詳述する。
①店舗を持っていないメリットは言うまでもないだろう。借用、所有いずれにしても店舗には
多額の維持費を要する。特に、市場の大きい都市部に店舗を構えることは非常に大きな店舗固定
費を必要とする。ジャパネットたかたのような全国ネットの通信販売業では、都市部、地方を問
わず顧客接点を持つことが可能になると同時に、店舗費用を抑制することができる。
②CS の専有チャンネルを持っているメリットは、24 時間常に顧客接点を持ち続けられることで
ある。地上波でも深夜は一商品に 30 分以上を費やした通信販売番組が放送されている。しかし、
たかたは朝でも昼間でも常に放送されている。現代人はますます夜更かしするようになっている
とはいえ、やはり日中に番組を放映できることが多くの潜在顧客への接触機会を増やしているこ
とは確かである。
③番組を自前で制作できるメリットとして、番組やセット作りを柔軟に迅速に、そして、安価
に行えることがある。たかたは商品ごとに3から 5 分の番組を制作している。この番組制作の外
注委託費用は非常に高いことが分かった。この番組制作を自前にすることで大幅なコスト削減が
可能になる。
また、一つの番組を制作するために多額の費用を投じたとしても、すぐにその番組は使えなく
なってしまう。なぜなら、最近の家電製品は性能アップのスピードが激しく、すぐに陳腐化して
しまうからである。番組制作を自前にすることで、番組制作費用を気にせずに、新しい良い商品
を素早く顧客に提案することが可能になる。
最後に、④多能な従業員が生産性の高さに貢献していると推察される。通常、通販番組制作は
外注、あるいは自前であっても専門化が進んでおり、販売や顧客に関わる部署と、番組放送に関
わる部署はそれぞれ別個の専門職として扱われていることが多い。しかし、ジャパネットたかた
はそのような専門職による区分をせず、ほとんどの職種をローテーションしているように推察さ
れた。このローテーションにより、従業員が会社でどのような部署に配属されようと、隣接する
業務内容が理解できる。その結果、無駄な折衝やコミュニケーションミスが抑制できる。
ジャパネットたかたは顧客接点を店舗ではなく、メディアミックスに絞っている。したがって、
それらのメディアの良否が商品の売れ行きを左右する。そのメディアは決して一人の優秀な社員
で作られているのではない。従業員はそのことをしっかりと意識し、業務に当たっていることが
取材で明らかになった。
ヤマダ電機やヨドバシカメラの店員は直接的な顧客接点を持つ。そして、彼らは豊富な商品知
識や迅速な行動が評価されている。しかし、ジャパネットたかたの社員は一般の店員とは異なり、
- 17 -
メディアミックスという顧客接点しか持てない代わりに、チームの成果を大切にする印象を受け
た。
メディア制作における人員数や職種などの構成要素は明らかにされなかったが、ジャパネット
たかたが極めて少数精鋭、自由な意見交換、統一した目標意識によって、効率的な業務を行って
いることが推察される。
7. まとめ
ジャパネットたかたの「顧客リ・デザイン」と、それを支える「事業システム」を説明してき
たが、これらをまとめると下記の通りとなる。
まずジャパネットたかたは、単なる
まとめ
商品ではなく、それによって与えら
顧客接点のリ・デザイン
れる感動と幸せといったベネフィッ
トまでもふくめて顧客に提案し、し
「感動と幸せ」の販売 +
お茶の間提案販売
かも本来なら対面販売でしかできな
かった売り方を、メディアミックス
を行うことで全国のお茶の間にまで
入り込んで行ったのである。さらに
は、商品を提供する背景で、社内で
お客様の生活をより豊かに
リ・デザイン!!
多種多様の商品群から自身をもって
提供できる商品だけを絞り込み、そ
れを自前主義のもと提供している。
商品の絞込み
+
自前主義
事業システム
それによって顧客の生活を、とりわ
け、現代の情報過多・過剰スペックの時代に取り残された顧客の生活を、より豊かにリ・デザイ
ンしていったといえるであろう。そしてこのシステムを作り上げたのは、同社の全従業員に染み
渡っているたかた社長の強い経営理念と顧客志向の姿勢であることを忘れてはならない。
謝辞
本研究のためにご多忙にもかかわらず、インタビューに協力してくださったジャパネットたか
た社長の高田明氏、副社長の高田恵子氏、および社員の皆様に感謝致します。
以
- 18 -
上