• 俊和会 寺田病院 • 寺田俊明

『 当院における下痢型過敏性腸症候群患者
に対する塩酸ラモセトロンの有効性の検討 』
•
俊和会 寺田病院
• 寺田 俊明
はじめに
過敏性腸症候群は、近年ストレス社会の中で増加傾向にあり、
国内患者数も1200万人存在すると推定されている。
当院でも散見される症例であり、治療に取り組んでいたが、
従来の治療では十分な患者満足を得ることが出来なかった。
2008年10月に下痢型過敏性腸症候群治療剤として
イリボー錠®(塩酸ラモセトロン)が新発売
新規作用機序の薬剤のため、下痢型過敏性腸症候群の
当院でのイリボーの有効性の検討を実施
治療の新しい選択肢となりうる可能性?
TERADA HOSPITAL
塩酸ラモセトロンの有効性の検討
【対象】
2008年11月∼2009年7月の間に、
当院を受診した男性の下痢型IBS患者のうち、
イリボーを処方した症例38例
【評価方法】
イリボー(2.5∼10μg)による1ヶ月後の効果を、
患者からの聞き取りと主治医による判断によって
「改善」、「改善傾向」、「不変」に分類して評価
改善:主訴とする症状が消失した、もしくは、かなり改善した
改善傾向:主訴とする症状がある程度改善しているが十分ではない
不変:主訴とする症状に変化がない
TERADA HOSPITAL
患者背景
平均年齢
前治療有り※
45.7歳
10例
初回2.5μg投与
12例 (31.5%)
初回5.0μg投与
26例 (68.5%)
初期平均投与量
4,2μg
併用薬有り
7例
※ポリカルボフィル単独6例、塩酸ロペラミド単独1例、
マレイン酸トリメブチン単独1例、ポリカルボフィル+ロペラミド2例
TERADA HOSPITAL
結果
改善
改善傾向
転機不明
45%
45%
総数:38例
10%
<転機不明患者の理由は?>
・ 実際効かなかったのであき
らめた
・薬が著効し改善継続
・薬が著効し他院処方継続
など・・・
TERADA HOSPITAL
結果②
【1ヶ月以上フォローできた患者】
改善
改善傾向
19%
改善傾向
総数 :21例 改善
81%
TERADA HOSPITAL
まとめ①
• 1ヶ月以上フォローできた21例で検討した結果、
17例で改善、4例が改善傾向であり高い有効率
であった。
• 忍容性も概ね良好であり、3例で硬便傾向が認め
られたが、用量を調節することにより改善できて
いた。
全体の有効率を確認することはできたが、
下痢型IBSの細かい症状(排便回数・腹痛等)
などに対する効果を検討することができなかった。
TERADA HOSPITAL
各症状の評価方法
【おなか日誌による検討】
1点
3点
2点
4点
評価項目
・腹痛
・腹部不快感
・排便回数 ・残便感
・ブリストル便形状スケール
患者背景 (7例)
年齢
罹病
期間
(年)
初期
投与量
最終
投与量
前治療薬
A
45
1.5
5
5
ロペラミド
B
51
5
5
2.5
乳酸菌整腸剤
C
56
1.5
5
10
ポリカルボフィル
D
46
35
5
10
ロペラミド
乳酸菌整腸剤
E
75
−
2.5
5
なし
F
49
10
5
5
ポリカルボフィル
G
61
−
2.5
平均
54.7
10.6
4.3
2.5
5.7
なし
ブリストル便形状スケール
6.0
5.5
5.0
5.0
4.5
4.0
投与前
1週後
2週後
1ヶ月後
2ヵ月後
3ヶ月後
n=7
n=6
n=6
n=6
n=4
n=5
TERADA HOSPITAL
ラモセトロン治験時の便形状の改善効果
投与量の調節により、便形状を改善します。
減量または増量開始
ブリストル便形状スケール
6
便形状スケールの週スコア平均
5
5.8
〈5μg投与期〉
タイプ7
5.6
5.4
5.1
4.8
4.5
4.5
4
2.5µg減量群(n=21)
5µg維持群(n=209)
10µg増量群(n=41)
3
平均値
2
観察期 1
2
3
4
5
6
7
投与期間
8
9
10
11
12 (週)
水様で、固形物を含まな
い液体状の便
タイプ6
境界がほぐれて、ふにゃ
ふにゃの不定形の小片便、
泥状の便
タイプ5
はっきりとしたしわのある
柔らかい半分固形の
(容易に排便できる)便
タイプ4
表面がなめらかで柔らか
いソーセージ状、あるいは
蛇のようなとぐろを巻く便
タイプ3
表面にひび割れのある
ソーセージ状の便の便
タイプ2
ソーセージ状であるが硬
い便
タイプ1
硬くてコロコロの兎糞状の
(排便困難な)便
4.1
3.4
全くの水状態
Longstreth GF, et al.: Gastroenterology. 130(5): 1480,
2006.
【試験方法】男性の下痢優位型IBS患者(ROMEⅡ基準)272例にイリボー5µgを経口投与。治療効果に応じて投与4週後より2.5µgに減量または10µgに増量。
【評価方法】患者日誌に記載されているブリストル便形状スケールをそのまま数値化(例:タイプ1=1、タイプ7=7)して週ごとの平均値を求めた。
松枝啓 他: 臨床医薬. 24(7): 655, 2008.改変
腹痛
2.3
2.0
1.5
1.0
0
投与前
1週後
2週後
1ヶ月後
2ヵ月後
3ヶ月後
n=7
n=6
n=6
n=6
n=4
n=5
TERADA HOSPITAL
ラモセトロン治験時における
腹痛・腹部不快感の改善効果
腹痛・
腹部不快感重症度スコアの平均値
2
検定法:対応のあるt検定観察期平均 vs 各時点
*p<0.05、 **p<0.01、 ***p<0.001
減量または増量開始
1.94
1.76
1.70
**
**
2.5µg減量群(n=21)
5µg維持群(n=209)
10µg増量群(n=41)
*1.67 *
***
1.5
***
1.44
***
***
**
***
**
***
1.24 **
***
***
***
***
**
***
***
2
3
4
5
***
6
7
投与期間
8
***
***
**
**
**
〈5μg投与期〉
1
観察期 1
***
***
***
9
10
1.29
*
***
11
*
1.19
***
1.06
12 (週)
【試験方法】男性の下痢優位型IBS患者(ROMEⅡ基準)272例にイリボー5µgを経口投与。治療効果に応じて投与4週後より2.5µgに減量または10µgに増量。
【評価方法】患者日誌に記載されている情報に基づき、腹痛・腹部不快感の重症度スコア(0=なし、1=弱い、2=中程度、3=強い、4=非常に強い)の週平均
値を算出した(2.5μg減量群、10μg増量群は投与開始5週目より減量、増量しているため、投与期間1∼4週の評価は5μg投与期の平均値を示し
ている。)。
松枝啓 他: 臨床医薬. 24(7): 655, 2008.
排便回数
6
5
5.0
4
3
2
2.3
1
0
投与前
1週後
2週後
n=7
n=6
n=6
1ヶ月後
n=6
2ヵ月後
n=4
3ヶ月後
n=5
TERADA HOSPITAL
症例①
51歳 男性
合併症 : 逆流性食道炎
現病歴 : 下痢型IBS罹病暦は5年以上。
発症早期は正露丸・ストッパ等のOTCを飲んでい
たがコントロール不十分であった。
その後IBSの治験に参加し、コントロール良好で
あったが、治験終了後より下痢症状が再発してし
まったため、イリボー錠®5μgを投与開始
TERADA HOSPITAL
症例①治療経過
乳酸菌整腸剤 3g
イリボー 5μg
6
排便回数
4
排便回数
ブリストル便形状
5
3
2
4
1
開始時
1週後
2週後
1ヶ月後
2ヶ月後
ブリストル便形状スケール
5
症例① まとめ
• 下痢型IBSの潜在患者に見られる典型例である
⇒潜在患者の多くはOTCでコントロールを試みる
• イリボーによる早期改善が認められ、特に排便回数
は1週目から減少傾向が認められた。
• ブリストルは、投与開始時から5点とやや良好であっ
たが、イリボー投与後も4∼5点以内を推移した。
⇒硬便・便秘の副作用は認められず
• 投与開始3ヶ月以降も良好にコントロール出来ており、
この時期から患者自ら頓服に切り替えており、
今後は、薬剤の減量・離脱も可能であると期待される
症例②
75歳 : 男性
合併症 : 慢性胃炎
現病歴 : 数年前から下痢と便秘を繰り返していた。
下痢症状が強い時は、1日4∼5回の強い便意が認
められていた。
しかし、最近になり通勤前3回以上トイレに駆け込
む様になり、悩んで来院。内視鏡検査実施後、イリ
ボー錠®2.5μgにて治療を開始した。
TERADA HOSPITAL
症例② 治療経過
イリボー 2.5μg
5μg
5
排便回数
4
排便回数
ブリストル便形状
4
3
2
3
1
開始時
1週後
2週後
1ヶ月後
2ヶ月後
ブリストル便形状スケール
5
症例② まとめ
• 出勤・登校時などに下痢をおこす症例は、IBS症例に
よく認められる典型例であり、特にライフイベントの変
化時に起こりやすい。
• 本症例は出勤前に3回トイレに駆け込んでいたが、
イリボー2.5μgの投与により、2週間でトイレの回数が
1回に減少した著効例であった。
• その後、2.5μgで2ヶ月程度良好にコントロールしてい
たが、自己判断での休薬により症状が再燃し、以前よ
り便意切迫感が強くなっているため、イリボー5μgに
増量し、現在も良好にコントロールできており、
増量により懸念された忍容性も問題がなかった。
TERADA HOSPITAL
考察
• 塩酸ラモセトロンは効果・忍容性共に優れており、下痢型
IBS治療において新しい選択肢になることが確認された。
• 効果に関しては大変優れており、何人もの患者が自己で
頓服に変更し減量ができ、その後薬剤を離脱出来た症例
も散見された。
• おなか日誌を実施することによって、点から線へ病状の評
価を行いやすくなる。
• 薬剤の特性上、硬便傾向に促される為、副作用を未然に
防ぐ為にも患者さんに合わせた、用量調節が重要になっ
てると考えられる。
TERADA HOSPITAL