表面波素子を用いたセンサと アクチ エ タの開発

表面波素子を用いたセンサと
アクチ エ タの開発
アクチュエータの開発
静岡大学創造科学技術大学院
(工学部システム工学科兼担)
近藤研究室
Surface Wave Electronics Laboratory
研究内容の紹介
私たちの研究目標は
1 研究成果の実用化
1.研究成果の実用化
2.新しい機能素子の開発
です.実用化を目指して,
・横波型弾性表面波(SH
・横波型弾性表面波(
SH--SAW
SAW)を用いた液体用センサ
)を用いた液体用センサ
・弾性表面波(SAW
・弾性表面波(
SAW)を用いた液体アクチュエータ
)を用いた液体アクチュエータ
・表面プラズモン共鳴(SPR
・表面プラズモン共鳴(
SPR)を用いたセンサ
)を用いたセンサ
の研究開発を行っています.新しい機能素子として,液
液
体搬送と計測を同一平面で行う新しいディジタル式マイ
体搬送と計測を同一平面で行う新しい
ディジタル式マイ
クロ流体システム(マイクロ実験室と命名)やワイヤレス
クロ流体システム
SAWセンサの研究を行っています.
URL:http://www.sys.eng.shizuoka.ac.jp/~j-kondoh
横波型弾性表面波(SH-SAW)を用いた液体用センサ
★検出可能な液体の物性値
★液相系SH-SAWセンサに要求される条件
機械的摂動 → 密度粘度積(分離計測も可能),ずり弾性率
Rayleigh-SAW(R-SAW)は固液界面で液体中に縦波を放射して減衰す
る⇒液相系センサに利用できない(気相系センサなら◎)
電気的摂動 → 導電率,誘電率
Longitudinal wave
Rayleigh-SAW
Input IDT
Liquid
★SH-SAWセンサの構造
Output IDT
Liq u id cell
Piezoelectric substrate
C h. 1
横波型SAW(SH-SAW)は固液界面を伝搬する.このとき,液体の物性
液体の物性
値に依存して波の伝搬促成(速度や振幅)が変わる. ⇒液相系センサに
利用可能.
→ 機械的摂動
C h. 2
Ch.2とCh.3の差動出力
C h. 3
→ 電気的摂動
SH-SAW
Input IDT
Ch.1とCh.2の差動出力
Liquid
F r ee su rf ace
Output IDT
★SH-SAWセンサの測定系
ベクトル電圧計やネットワークアナライザを用いてリファレンスチャネルと
センシングチャネル間の位相差,振幅比を測定.
Pi
Piezoelectric
l t i substrate
bt t
位相差 → 伝搬速度変化(ΔV/V)
SH-SAWが伝搬可能な圧電結晶:36YX-LiTaO3
振幅比 → 減衰変化(Δα/k,k:波数)
★SH-SAWセンサの検出原理
★SH-SAWセンサの特徴
圧電結晶上伝搬するSAWはひずみと静電ポテンシャルが結合している
⇒ ひずみと液体の相互作用(機械的摂動)とポテンシャルと液体の相互
作用(電気的摂動)を検出可能.
一つのセンサで液体の力学的・電気的特性が同時に測定
同時に測定できること
SH--SAW
SH
SAWセンサを用いた応用測定
センサを用いた応用測定
★混合溶液評価 アルコール発酵過程検出のためのシミュレーション実験
1.1
10
1.0
0.9
5
0.8
0.7
0
0
5
10
15
06
0.6
20
Concentration of ethanol (vol.%)
1.目的
1.3
8
Phase shift (degree)
●,○:Channels 1&2
■,□:Channels 2&3
★ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)用メタノールセンサの開発
●,○:Channels 1&2
■,□:Channels 2&3
6
1.2
1.1
4
1.0
2
0.9
0
0.8
-2
0.7
0
5
10
15
20
負極
Amplitude ratio
1.2
Amplitude ratio
Phase shift (degree)
15
正極
空気と水蒸気
の出口
水分の分離と貯蔵
メタノールセンサ
既存のメタノールセンサは高価
水供給システムの
制御弁
メタノールタンク
陽極
Concentration of glucose (wt.%)
ポンプまたは制御弁
主成分分析
空気入口
電解質
Ethanol
Glucose
20 vol.%
2.基礎実験
15 vol.%
10 vol.%
1:3
o
1:1
3:1
-1
20 wt.%
-2
-4
主成分分析により,グルコース水溶液と
エタノール水溶液を各濃度毎にグループ
分けできた.また,2つの液体の混合比
を変えた結果は 混合した水溶液を結ん
を変えた結果は,混合した水溶液を結ん
だ直線上に存在する.
5 wt.%
10 wt.%
15 wt.%
□: Mixture
-2
0
2
4
第1主成分
•電 気 的摂 動 検出用SH-SAWセン サの 応答と
メタノール濃度の間に線形関係が成立.
40
•温度が高くなるほど傾きが大きくなる
温度が高くなるほど傾きが大きくなる
高感度化
30
20
•センサの分解能より,メタノール水溶液の
濃度分解能は0.1wt%.
10
0
2
0.4
0.6
10
20
30
40
Concentration (wt%)
0.8
1.0
Concentration (wt%)
1.2
0
50
◎小型センシングシステムの開発
200
100
20
Phase (deg)
微 粒 子 が 混 入 し て い る 液 体 計 測 に SHSAWセンサを応用するための基礎実験と
して 希薄な絵の具水溶液の実験を行った
して,希薄な絵の具水溶液の実験を行った.
その結果,電気的摂動検出用チャネルを
用いると,色(顔料)の違いを検出可能であ
ることが分かった.
0.2
→
3.実用化に向けた開発
4
0
0.0
o
45 C
o
25 C
◎特性の優れたSH-SAWセンサの開発
一方向性電極の利用による特性改善
Loss (dB)
-4
6
50 C,
o
30 C,
50
★微粒子混合溶液の測定
blue
red
yellow
o
55 C,
o
35 C,
60
0
8
o
60 C,
o
40 C,
5 vol.%
Phase sh
hift (deg )
第2主成分
1
ΔV/V
V (x10 )
SH-SAWを用いた
SHSAWを用いたDMFC
DMFC用メタノー
用メタノー
ルセンサ開発
陰極
ポンプ
2
0
DMFCの発電効率はメタノール濃度に依
存するためメタノールセンサが必要.
二酸化炭素出口
メタノールと水の混合物
40
0
SH-SAW sensor
-100
60
50
51
52
Frequency (MHz)
53
-200
50
51
52
Frequency (MHz)
53
SH-SAW sensor
keyword: 横波型弾性表面波,液相系センサ,密度粘度積,導電率,誘電率,複合計測
弾性表面波(SAW)を用いた液体用アクチュエータ
★SAWを用いた液体アクチュエータの原理
★SAWストリーミング現象
SAW伝搬面上に液滴を付加するとSAWは液体中に縦波を放射する漏
洩弾性表面波(leaky SAW)となる.
液滴搬送
Longitudinal wave
SAW
Liquid
IDT
SAW
128oYX-LiNbO3
液滴飛翔(ポンプ)
Leaky SAW
水中に放射した縦波により発生する力,SAWストリーミング力を利用す
ると,様々な液滴ダイナミクスを観測することが出来る.この現象をSAW
SAW
ストリーミング現象と呼ぶ.SAWストリーミング現象により,液滴搬送,液
ストリーミング現象
滴飛翔(ポンプ),さらには極微小液滴飛翔(霧化)が生じる.これらの現象
は,
,SAW
SAW素子に印加する電気信号で制御
素子に印加する電気信号で制御できる.
SAW
霧化(極微小液滴飛翔)
SAW
SAW
薄膜作成への応用
薄膜作成
用
SAW
IDT
電気的制御によるSAW
電気的制御による
SAWを用いた液体アクチュエータが実現
を用いた液体アクチュエータが実現
SAWによる液滴搬送機能と計測機能を組み合わせたデジタル式マイクロ流体システム“マイクロ実験室”の開発
SAW
による液滴搬送機能と計測機能を組み合わせたデジタル式マイクロ流体システム“マイクロ実験室”の開発
1.着想
3.圧電結晶表面を利用したマイクロ実験室
SAWを用いると
①液滴搬送が可能.
②液滴内に発生する音響流により均一攪拌が可能.
③液滴の温度制御が可能.
IDT
IDE
IDT
128YX-LiNbO3
Distilled water
①横波型弾性表面波(SH-SAW)センサ
②表面プラズモンセンサ(プリズム型,導波路型,ファイバ型)
③微小電極を用いた電気化学センサ
・バルクタイプの表面プラズモンセンサの代わりに,金微粒子を
用いる局在表面プラズモンセンサを利用すれば,液滴搬送面
に 集積化が可能.
・微小電極(IDE)はSAW励振用電極であるIDTと同じ構造なの
で集積化は容易.
・SH-SAWセンサの集積化にはモード解析が必要.
Impedance (Ω)
2.研究室で開発しているセンサ
50
40
30
Mixed in the beaker
Mixed on the SAW substrate
20
10
0
20
40
60
80
100
Concentration of glycerol/water (wt%)
マイクロ実験室の最初の構成図
ID
T
Matching
layer
Drop
let
Sensor
plate
128YXLiNbO3
Glass/liquid/128YX-LiNbO3
Water droplet
搬送・混合
•センサプレート/マッチング層/圧電結晶構造.
•センサプレー ト上の液体を搬送.(液滴搬送機構
と計測機構の分離)
•これまでに報告例のないユニークな研究
IDT
IDE
Droplet
SAW
LCR meter
(HP 4285A)
KCl水溶液を
4000
用いた測定
計測以外にも,複数の微小
液滴を用いた化学反応や
合成などにも利用可能であ
る.このため,“マイクロ実
験室”と呼んでいる.
局在表面プラズモンセンサ
IDT
利点
・電気信号により液滴の位置制御が可能.
・複数のIDTにより液滴の方向制御が可能.
・温度制御可能
・センサを集積化可能
欠点
圧電結晶は高価なので使い捨てが不可能
(生体分子計測等に応用が困難)
Impedance (Ω)
新しい“マイクロ実験室”
LCR meter
(HP 4285A)
4.使い捨て可能なマイクロ実験室の提案と基礎研究
Glass
圧電結晶上にSAWによる液体搬送機構とIDEによ
る液体計測機構を集積化.
128YX-LiNbO3
Glycerol
60
SAW伝搬面に計測機構を設けると,液滴を用いた新しいセンサ・アク
チュエータ一体システムが実現できる.
IDE
SAW
LCR meter
(HP 4285A)
3000
Mixed on the micro-laboratory
Theoretical value (*)
2000
1000
IDTとIDEの兼用
0
0.000 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005
Molar concentration (mol/l)
排出
計測
IDTとIDE
の兼用
圧電結晶
*P. V. Gerwen, et al., Sens. & Act. B, Vol. 49, pp.73-80 (1998).
3層構造を用いた液滴搬送実験結果
3層構造を用いた液滴搬送・混合・計測実験結果
keyword: 弾性表面波,液体アクチュエータ,液滴搬送,飛翔,霧化,マイクロ実験室
表面プラズモン共鳴(SPR)を利用したセンサ
表面プラズモン共鳴センサの高感度化
•表面プラズモン共鳴(SPR)センサ:免疫反応検出に利用
•生体分子の屈折率は1.5以上→高屈折率プリズムを使用
→高屈折率プリズム=高感度検出となるのか疑問
バッファ
SPW
生体膜層
検出対象層
1層で表現
SPW
金薄膜 プリズム
金薄膜
プリズム
提案するSPRバイオセンサの
モデル(等価的3層構造)
SPRバイオセンサの構造
(多層膜構造)
SPWから見た場合,バッファ層と生体膜層を合わせて1層
と見なすことが妥当.→“等価的3層構造”の提案.バッ
ファ及び生体膜を見かけの屈折率で表す
ファ及び生体膜を見かけの屈折率で表す.
数値解析
見かけの屈折率
計算条件
生体膜屈折率:1.45
バッファ:1.335
プリズム:1.70
1.45
1.43
1.41
1.39
1.37
1.35
1 33
1.33
0
2波長光ファイバSPRセンサの開発
•低価格なセンシングシステムの実現
•光源を白色光からLEDに変更
•検出器を分光器からフォトダイオード(PD)に変更.
•LEDの波長の選択が重要.
•共鳴波長の左側:反射光強度増加
•共鳴波長の右側:反射光強度減少
(右図参照)
•反射率の差分を検出
•2波長を利用→高感度化が実現
共鳴波長の左右の波長を選択
λ1
λ2
予備実験により金薄膜の厚みとLEDの波長を決定.
波長:609.6 nm,675.9 nm
金膜厚 64.1
金膜厚:
64 1 nm
市販されているLEDから最も近いものを選択
612 nm,680nm
To photodiode
SPR sensor
Optical couplers
200
400
600
生体膜層の厚さ(nm)
Dual LED
センサプローブ部分
生体膜層が薄いとき,見かけの屈折率はバッファの屈
折率に近い値となる
→低屈折率プリズムの方が高感度検出可能.
低屈折率プリズムの方が高感度検出可能.
2波長光ファイバSPRセンサ
の測定系.2個のLEDを交
互に点滅させる.検出は1個
のフォトダイオードで行う.
ダ オ ド 行う
実験による検討
BK7プリズム(1.51391)を用いて生体膜の屈折率と見かけの
プ ズ
屈折率を求めた.
・生体膜:抗BSA抗体 → 屈折率 1.53
・バッファ:リン酸バッファ(PBS) → 屈折率 1.332
・見かけの屈折率 → 1.335
実験結果
80
1.0
0.8
06
0.6
0.4
0.2
0.0
60
PBS/Au/Prism
PBS/anti-BSA/Au/Prism
S-TIM5
BK7
Quartz
70
Incident angle (deg)
80
シミュレーション結果
プリズム屈折率:S-TIM5 1.597, Synthesized quartz 1.456
実験結果,シミュレーション結果どちらも低屈折率プリズ
ムの方が角度変化が大きくなる,つまり高感度化できる
ことを示している.
→SPR
SPRセンサの高感度化に関する新しい考え方の確立.
センサの高感度化に関する新しい考え方の確立.
10mm
センサプローブ
Ethanol,
Water
1.2
Normalizedd reflectance
Respon
nse
Respo
onse
PBS/Au/Prism
PBS/anti-BSA/Au/Prism
1.0
0.8
06
0.6
0.4
0.2
BK7
0.0 S-TIM5
Quartz
60
65
70
75
Incident angle (deg)
Φ 0.4mm
Glucose
y= 8.698x-10.88
1.0
0.8
y= -8.408+11.91
0.6
0.4
y= 17.11x-22.79
0.2
612 nm
680 nm
Difference
0.0
-0.2
1.33
1.34
1.35
Refractive index
1.36
2波長LED光ファイバSPRセンサを用いた測定結果.
2波長LEDにより高感度化を実現 規格化光強度の
2波長LEDにより高感度化を実現.規格化光強度の
分解能は0.015.開発した2
2波長光ファイバ
波長光ファイバSPR
SPRセン
セン
サは屈折率が1
サは屈折率が
1.33から
33から1
1.36の液体計測に有効
36の液体計測に有効.
.
keyword: 表面プラズモン共鳴(SPR),プリズム型,光ファイバ型,高感度化,屈折率センサ