対照言語学:日本語と英語のように任意の言語の異同点を明らかにする

第1回−試験Ⅰ
⒅ 4
言語の二重分節性によって,話し手は,これまでに発したことのない文を無限に生み出
すことができたり,逆にこれまで聞いたことのない文でも同じ母語の聞き手は,共通の
コードと照合して解釈したりすることによって,意味内容を理解できる。動物のメッセー
ジの伝え方に比べて,人間の言語は非常に生産性が高いという特徴がある。
⒆ 3
イタリアの地方で使われていたラテン語が中世には,それぞれ独自の変貌をとげて,現
在のイタリア語,スペイン語,フランス語,ポルトガル語,ルーマニア語などになった。
試験に出やすい語族・語派は,印欧語族では,スラブ語派とイタリック語派。語族では,
ウラル語族とアルタイ語族である。正解は選択肢3の印欧語族・イタリック語派である。
語族(諸語)
印欧語族
主要語
インド・イラン語派
ヒンディー語,ベンガル語
スラブ語派
ロシア語,ウクライナ語,チェコ語,ブルガリア語
ギリシア語派
ギリシア語
イタリック語派
イタリア語,スペイン語,フランス語,ルーマニア語
ゲルマン語派
ドイツ語,英語,オランダ語
ウラル語族
フィンランド語,ハンガリー語
アルタイ語族
トルコ語,モンゴル語
系統的に孤立した言語
日本語,アイヌ語,朝鮮語,バスク語
【試験に出やすい語族・語派】
⒇ 2
共に言語を比較・検討するという点で,比較言語学と対照言語学は似ているが,両者は
以下の点で決定的に異なっている。選択肢3は,両者の説明が完全に逆である。
比較言語学:同系と思われる言語を比較する。祖語の再建。
対照言語学:日本語と英語のように任意の言語の異同点を明らかにする。外国語教育。
(P28)
■ 問題4
区分4「言語と教育」は,オーディオ・リンガル法とコミュニカティブ・アプローチを
対比する形で理解しておきたい。この教授法は,それぞれ初級と中上級で採用されており,
誤用観の違い,目標と手段の違い,教師の役割の違いなど,多くの点で対照的である。
問1 2
ミムメムとは,Mim-Mem(Mimicry-Memorization)のことで,教師などのモデル発話
を正確に模倣し,暗記し,記憶にとどめるために何度も反復をする練習。また,代入練習
や拡張練習,転換練習などは,文型練習(パターン・プラクティス)の一種である。ロー
ルプレイとディスカッションは,コミュニカティブな教室活動で採られる練習である。
─ 13 ─
解答解説.indb 13
13.4.26 4:23:49 PM
第1回−試験Ⅰ
問2 3
選択肢3は,意味のある交渉を重視するコミュニカティブ・アプローチの特徴である。
2つの教授法を前提にした出題が多いので,相違点を整理しておきたい。
オーディオ・リンガル法
コミュ二カティブ・アプローチ
構造シラバス(目標=言語能力)
概念・機能シラバス(目標=伝達能力)
完全学習・過剰学習(Mim-Mem)
学習者のニーズ分析が出発点
パターン・プラクティス(文型練習)
タスク(課題解決作業)
言語=習慣(誤りは「排除」
)
言語=生成(
「試行錯誤」を伴う)
正確さ重視(構文レベル)
滑らかさ重視(談話レベル)
教師(権威者)中心vs学習者(他律的)
教師(援助者)vs 学習者中心(自律的)
問3 1
プログラム学習では,まず教えるべき課題を明確化し,これを細かな下位課題に分割す
る。学習者はこの課題に対し自発的に解答し,正答の場合,即座に正の強化フィードバッ
ク(チャイムなど)を受ける。選択肢1は「マシンのペース」が誤りである。
【プログラム学習の特徴】①学習者自己ペースの原理
②スモールステップの原理
③積極的反応の原理
④即時確認の原理
問4 2
コミュニカティブ・アプローチでは,現実に近い状況設定のもとで,発言の自由度の高
いタスク(課題解決作業)を課す。情報の差を埋めるためのインターアクション(やりと
り)の中で,自分の言語を調整し,意味のあるコミュニケーションができるようにする。
他の選択肢は,1=TPR,3=サイレントウェイ,4=CLLである。
問5 4
ウィルキンズの提唱した概念・機能シラバスは,「広さ」「時間」「量」「頻度」など人間
の認識に基づく概念を学習の柱にした概念シラバスと,「依頼」「勧誘」「感謝」「拒否」な
どの言語の機能(働き・作用)を学習の柱にした機能シラバスとで構成される。概念・機
能シラバスは,オーディオ・リンガル法の構造シラバスが言語形式のみを扱っていること
への批判から提案され,これを契機にコミュニカティブ・アプローチが生まれた。
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解答解説.indb 14
13.4.26 4:23:49 PM