教科書 《第 12 章》溶接継手の強度と設計

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第 12 章 溶接継手の強度と設計
第 12 章 溶接継手の強度と設計
12.1 溶接の有効断面積
(1) グルーブ溶接
(2) すみ肉溶接
• 余盛 : 溶接部の盛り上がり部分
サイズ (脚長): ルートを頂点とする内接三角
• 静的強度 : 余盛分だけ高い
形の各辺に沿った長さ
• 疲労強度 : 余盛部応力集中 → 急低下
サイズ S の等脚すみ肉溶接 : a =
• 理論のど厚 (有効厚) a : 溶接継手で
√
2
S
2
有効に応力を伝達する最小断面厚
図 12.2
グルーブ溶接のど厚
図 12.3
すみ肉溶接ののど厚, サイズ (脚長)
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第 12 章 溶接継手の強度と設計
(3) 有効長
12.2 すみ肉溶接のサイズおよび長さの制限
計画ど おりの理論のど 厚を有し,十分質の高
い溶接が行なわれている長さ
(1) サイズ
• 橋梁 : すみ肉溶接のサイズ 6mm 以上
t1 ≥ S ≥
√
2t
S : サイズ(mm)
t1 : 薄い方の母材厚
t2 : 厚い方の母材厚
(2) 最小寸法 (長さ)
道路橋示方書
• すみ肉溶接の有効長さ
l ≥ 10S
図 12.4
溶接部の有効長
または
80(mm)以上
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12.3 静的強度の照査
• 設計における静的強度の照査
• 曲げモーメント
全断面溶込みグルーブ溶接
溶接部の許容応力度
(溶接部有効断面積): 有効厚,有効長
σ=
すみ肉溶接
• 引張,圧縮,せん断
図 12.5
溶接部の応力の計算
M
y
I
τ=
図 12.6
M
y
I
すみ肉溶接部の展開断面
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• 曲げモーメント とせん断力
– von Mises の最大せん断エネルギー説に
よる相当応力 σeq
σeq =
√
σ 2 + 3τ 2
– 許容応力度の割増し (10%)
√
σ 2 + 3τ 2 ≤ 1.1σa
√
τa = σ a / 3
2
σ 2
τ
+
≤ 1.21
σa
τa
– 道路橋示方書
全断面溶込みグルーブ溶接
σ
σa
2
すみ肉溶接
τ
τa
2
τ
+
τa
τs
+
τa
2
2
≤ 1.2
≤ 1.0
図 12.7
合成応力の照査
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第 12 章 溶接継手の強度と設計
12.4 溶接継手部の疲労強度
(1) 突合せ完全溶込みの板継ぎ溶接部の疲労強度
– 継手部の表面仕上げ状態に依存
• 溶接部の疲労特性
継手形状,溶接部形状,溶接残留応力
余盛を 残し たままの継手では 応力集中
により,溶接止端部から疲労き裂が発生
検討
し,破断に至る.
– 溶接継手の形式
– 作用荷重モード
– 軽微な溶接欠陥 −→ 余盛の影響 : 大
欠陥は疲労強度に影響しない
– 余盛を削除して仕上げた継手 −→ 欠陥
が疲労強度を支配
図 12.8
溶接継手の例
図 12.13
溶接割れを含む突合せ溶接継手
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(3) 附属物の取付溶接
(2) 縦方向継手部
• 作用する力に対して平行に溶接された継手
∗ I 形断面のフランジ – ウェブ間の継手
• 荷重非伝達型 :
垂直スティフナー,ダ イアフラム
∗ 箱断面の角継手
疲労強度
• 開先などの溶接ディテール,表面やルート部
∗ 完全溶込み,表面仕上 −→ 高疲労強度
∗ 余盛 −→ 応力集中で疲労強度は低下
図 12.21 荷重非伝達型すみ肉溶接継手
• 荷重伝達型:
図 12.14
縦方向溶接継手
図 12.24 荷重伝達型すみ肉溶接継手
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第 12 章 溶接継手の強度と設計
引張部材: 継手部 → 止端形状: 改善 → 疲労強度: 向上
∗
グラインダー処理
∗
ハンマーピーニング処理
∗
TIG 処理
疲労強度改善方法
ガセット取付け部
∗
曲率をつけたフィレットを設ける
∗
止端仕上げ
ウェブに取付けられたガセット (面外方向)
∗ すみ肉溶接
∗ 疲労き裂はルート部から生じることもある
カバープレート
図 12.26 溶接止端部の改善
∗
疲労強度が低い
∗
端部の形や溶接部の形状に注意
図 12.27 各種のガセット 板とその取付
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12.5 疲労強度に影響を及ぼす因子
(1) 鋼種
• 鋼材引張強さが強いほど ,疲労強度は高い.
• 溶接部の疲労強度 :
引張強さが高い鋼材でも疲労強度は変わらない.
• 高張力鋼 : 溶接性 ×,欠陥,残留応力
(2) 応力比
– 溶接継手部 −→ 高い残留応力
繰返し 応力の引張・圧縮は,部材の破断を除
いて無関係
応力比に依存しない
– 繰返し圧縮応力が作用する部材
溶接部には引張の降伏応力点に近い残留応力
局部的な応力 : 引張領域の繰返し
疲労破壊
図 12.32 箱形断面の曲げ疲労
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12.6 疲労設計
(1) 疲労設計曲線
図 12.34 疲労設計曲線 (せん断応力)
図 12.33 疲労設計曲線 (直応力)
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(2) 継手分類
図 12.36 合成桁の疲労照査位置,疲労等級と継手の種類
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(3) 疲労安全性の照査
レ インフロー法で応力範囲の頻度解析 → マイナー則
変動応力
∆σe =
m
σim ni /N
m = , ,
N=
ni
疲労安全性の照査
∆σd ≤ ∆σk
∆σd (= ∆σe) : 設計荷重による作用応力範囲
∆σk : 許容応力範囲
γb · γw · γi∆σd ≤ ∆σk
γb : 冗長度係数 1.00∼1.10
γw : 重要度係数 0.80∼1.10
γi : メンテナンス係数 0.90∼1.10
γb · γw · γi −→ 下限 : 0.80,
上限 : 1.25