JREIT投資の見方・考え方 REITアナリスト 山崎 成人 EUの金融不安、米国景気の行方の不透明等によって世界の投資市場が神経質に なっています。この状況は早期には改善されないと予想されますので、投資家はリ スクにより敏感になりますが、こういう時代には確実なキャッシュフローがある投資 商品が注目されそうです。 この視点で見ると、JREITはもう少し評価されても良いと思いますので、今回は今の 状況に応じた見方でJREITを考えてみようと思います。 2011年12月8日 18:20-20:50 ベルサール八重洲 主催/アイビー総研㈱ 1 《本日の内容》 1. 混迷時代の投資商品とは 2.JREIT投資について 2 1.混迷の時代の投資商品とは(1-1) 投資商品別変動率 (2011/01/04~2011/11/30の期間) 期間単純変動率 平均変動率 直近1ヶ月の変動率 TOPIX 58.93 8.62% -11.9% 東証REIT指数 68.19 8.28% -16.4% 0.09 9.31% 11.7% 10年物長期国債利回り ※1;長期国債は2011/01/04~2011/10/31迄の期間。 ※2;期間単純変動率は、EXCELのAVEDEV関数にて算出。 ※3;平均変動率は、EXCELのSTDEV/AVERAGEにて算出。 「期間単純変動率」 ① REIT指数の変動率はTOPIXよりも高い数値を示している。これは時価総額が小さいREITでは売買 に対する反応度が高い為と考えられ、実質的にはTOPIXとほぼ同じ変動率になっていると考えられる。 ② REIT指数の月間変動率を見ると、一桁台は5月が6.32と最低値、4月が8.32、7月が9.58となっていて 一方、3月は36.37と最高値、9月が21.77、11月が14.13を示した。 ② 国債は利回りの推移なので変動率は小さくなる為、数値の比較は出来ない。 3 2.混迷の時代の投資商品とは(1-2) 「平均変動率」(標準偏差) ① 期間の平均値に対する上下の変動率を示す。REITが低くなっているが、TOPIXとは大きな差がない。 ② 長期国債の利回りはかなり上下していて、必ずしも安定投資商品だとは言えない状況になっている。 「直近1ヶ月の変動率」 ① TOPIXの11月の変動率は、年内平均値に対して11.9%下落している。 ② REIT指数の11月の変動率は、年内平均値に対して16.4%下落している。 ③ 長期国債利回りの11月の変動率は、年内平均値に対して11.7%下落しているので、 国債価格は上昇している。(株式と逆相関) 以上から、 1. REITは株式と順相関で動いていて、売買益を追求した取引が主体になっている。 2. 国債も売買益を狙えば、安定投資商品にはならない。 3. 今の状況では、売買益を追求するキャピタルゲイン投資は、どのような商品を選んでも ボラティリティ(予想変動率)が高くなると考えるべきである。 4 3.混迷の時代の投資商品とは(1-3) キャピタルゲイン投資からインカムゲイン投資に切り替える インカムゲイン投資とは 1. 配当金等のインカムによる利回りによって投資判断を行う。 2. インカムゲインではリターンとリスクが一対になっていて「高い利回り=相対的に高い価格 変動リスク」になるので、闇雲に高利回りを追わない。 3. 長期保有が原則になるので、最低でも1年は保有して配当金を享受する必要がある。 (3年程度の保有を前提として、商品を選ぶのがベスト) 4. インカムゲインの代表商品は個人向国債であるが、その利回りは、3年固定で0.2%/年(平均値)、 5年固定で0.8%/年と、元本保証があるとは言え、余り魅力的ではない。 5 4. JREIT投資について(2-1) 「JREITは、個人投資家向けの長期保有型ミドルリスク・ミドルリターンのインカム 投資商品として開発された」 (日本の投資市場にはそれまでなかった性格の商品) 然しながら現実は・・・ その誕生の背景からは逸れて、キャピタルゲインを狙った投資商品として市場取引されていて、 且つ、地銀等の機関投資家が主たる投資家層になり、これに外国法人(ヘッジファンド等)が加 わって、売買益を追求するキャピタルゲイン投資商品として性格を持つようになった。 但し、実態は・・・ 銘柄側の資産運用は飽くまでもインカム重視で行われていて、資産運用会社には市場における 投資口価格の変動の理由が分からない。 「結果としてREITは難解な投資商品になっているが、本来のインカムゲインで見ると 今までとは違った見方が出来る」 6 5. JREIT投資について(2-2) 「REITは賃貸収益を前提にした収益用不動産によってポートフォリオを組んでいる事業体」 特徴1) 特徴2) 特徴3) 特徴4) 賃料は2年~3年契約によって固定されているので、賃料の変動は極めて小さい。 賃料は月次現金収入なので、確実なキャッシュフローが見込まれる。 契約期間内は原則として賃料の変動がないので、マクロ経済動向の影響が少ない。 投資法人の破綻確率は一般事業体に比べると極めて小さい。 確実な現金収入を前提として運営されている形式的不動産保有主体なので、 取引市場で価格が変動する根拠は薄い。 (インカムゲイン投資商品として仕組まれている) 7 6. JREIT投資について(2-3) 配当金一覧表 直近実績配当 11/30現在の 金(半年単位で、 次期予想配当 次々期予想配 11/30現在の 投資口修正価 11/30現在の 順位 銘柄 変動率 補正変動率 決算実績回数 50万円/口換 金 当金 投資口価格 格(50万円換 予想配当率 算) 算) フロンティア 1 15.59% 3.06% 14回 18,478円 18,500円 640,000円 5.78% 福岡リート 2 4.29% 13回 16,922円 16,300円 16,000円 505,000円 6.46% 日本アコモ 3 4.49% 10回 13,508円 14,100円 506,000円 5.57% アドバンス 4 14.90% 6.57% 11回 13,500円 13,500円 13,500円 143,000円 429,000円 6.29% 野村オフィス 5 7.68% 15回 14,512円 14,900円 12,300円 396,000円 6.21% トップリート 6 7.84% 10回 13,922円 12,600円 12,400円 344,500円 7.20% ユナイテッド 7 7.96% 15回 17,046円 16,500円 16,500円 82,100円 492,600円 6.70% 日本ロジスティクス 8 9.36% 11回 15,991円 17,400円 16,700円 627,000円 5.55% 野村レジデンシャル 9 9.54% 9回 9,728円 9,808円 10,015円 320,500円 267,083円 7.50% 10 東急リアル 89.01% 9.73% 15回 13,239円 12,200円 11,000円 352,500円 6.92% 11 オリックス 9.75% 19回 12,571円 11,800円 11,000円 326,000円 7.24% 12 森トラスト 10.35% 16回 18,819円 19,200円 19,000円 639,000円 6.01% 13 ジャパンリアル 19.96% 11.09% 20回 15,850円 15,700円 15,700円 643,000円 4.88% 14 日本リテール 20.37% 11.09% 19回 13,036円 14,636円 14,720円 118,300円 473,200円 6.19% 15 阪急リート 11.35% 12回 12,694円 12,300円 335,000円 7.34% 16 プレミア 24.71% 12.32% 17回 10,846円 9,200円 10,100円 248,300円 8.14% 17 日本プライム 12.84% 19回 14,028円 14,250円 188,000円 470,000円 6.06% 18 ジャパンエクセレント 14.15% 10回 12,000円 11,400円 11,600円 309,500円 7.37% 19 日本ビルファンド 14.29% 20回 15,138円 15,100円 15,100円 710,000円 4.25% 20 ケネディクス 16.99% 12回 9,891円 9,300円 9,300円 220,200円 8.45% 21 産業ファンド 16.30% 8回 10,919円 12,285円 390,500円 6.29% 22 ビ・ライフ 18.95% 10回 16,320円 16,000円 16,000円 466,000円 6.87% 23 グローバル・ワン 52.15% 19.66% 16回 11,167円 13,000円 491,500円 5.29% 中間小計平均値 17.95% 10.85% 14回 13,918円 13,912円 13,584円 391,387円 6.46% 中間小計中央値 14.15% 10.35% 14回 13,508円 14,100円 13,500円 352,500円 6.29% 24 スターツ・プロシード 20.64% 11回 9,425円 9,300円 99,800円 249,500円 7.45% 25 日本ホテル 23.50% 10回 8,502円 7,400円 186,300円 7.94% 26 積水・SI 23.78% 12回 10,045円 10,150円 284,000円 7.15% 27 森ヒルズ 26.28% 9回 8,352円 8,500円 247,800円 6.86% 28 MIDリート 31.48% 10回 7,605円 7,293円 7,427円 189,400円 7.70% 29 平和不動産リート 38.86% 13回 6,200円 6,200円 36,650円 146,600円 8.46% 30 ジャパンホテル 48.87% 6回 8,722円 12,017円 163,400円 7.35% 31 インヴィンシブル 56.24% 13回 1,000円 1,000円 7,280円 36,400円 3.00% 32 大和証券オフィス 68.72% 11回 3,671円 4,100円 4,850円 160,300円 6.05% 33 日本賃貸 74.34% 11回 4,404円 4,600円 30,550円 122,200円 7.53% 平均値 23.86% 25.86% 13回 11,871円 11,959円 12,871円 309,871円 6.65% 中央値 16.30% 16.30% 12回 12,694円 12,300円 13,500円 309,500円 6.86% ※順位は過去の実績配当金の変動率の低い順番で並べてある。 ※配当金額は1口50万円として換算している。 7 7. JREIT投資について(2-4) 前掲の表から分かることは・・・ ① 配当金絶対額の多寡は、その銘柄のパフォーマンスを表す。 1位) 森トラスト総合リート投資法人 2位) 日本ロジスティクスファンド投資法人 3位) ユナイテッド・アーバン投資法人 ② 予想配当金の安定度はインカムゲイン投資では重要。 1位) 2位) 3位) アドバンス・レジデンス投資法人 (次期予想利回り 6.29%) ビ・ライフ投資法人 (次期予想利回り 6.87%) ユナイテッド・アーバン投資法人 (次期予想利回り 6.70%) ③ 投資口価格が相対的に高いと将来の変動幅が大きくなる可能性がある。 現在の市場評価は必ずしも合理的ではなく、またインカム重視で見た場合は現在の格差は 説明し難いので、上位が圧縮されて格差縮小の動きも予想される。 (50万円/口に向けて少しずつ収斂する可能性がある) 9 8. JREIT投資について(2-5) 今の状況での銘柄選別基準 その1) 投資口価格が50万円以下の銘柄をメインにする。 その2) 過去の実績配当金の変動率が相対的に小さい銘柄を重視する。 その3) 予想配当金の安定度を重視する。 その4) 予想配当率の上下は上位23銘柄間では余り重視しなくてよい。 (リスクとリターンが対になっていない) その5) 年内は下げ基調なので、価格が下がった時(配当率が上昇)が狙い目。 その6) 賃貸市場動向に余り神経質にならなくて良い。(REITはポートフォリオを 形成しているので、賃貸市場の動きがストレートには反映されない) その7) REITを購入したら、少なくとも2012年内は保有しながら様子を見る。 10 より専門的なデータを入手したい方は Webサイト「REIT DATA」(有料会員制、一部無料コン テンツもあり) http://www4.plala.or.jp/real-estate/ 主宰:REITアナリスト 山崎成人 ・各銘柄モニタリングレポート ・投資銘柄のパフォーマンス ・全銘柄全決算実績 ・J-REIT全物件データ ご利用料金/月額8,400円 本資料は当セミナーにおける情報提供のみを目的としたものであり、投資勧誘を目的として作成されたものではありません。 本資料で提供している情報は万全を期していますが、その情報を保証しているものではありません。 また、本資料の記載されている内容は将来予告なしに内容が変更される可能性があります。 11
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