東北スマコミ-3 資料 2-1 震災時の各種ライフライン途絶の状況及び各種設備の使用状況 1.調査概要 1.1 目的 「災害に強いまち」としてのスマートコミュニティに必要な機能を見出すため、震災被災地を 含む東北各地域へのヒアリングを実施した。 1.2 調査方法 調査の実施方法とヒアリング先一覧を下記に示す。 図表 1 調査の実施方法 <実施方法> 震災被災地を含む東北各地域の自治体(一部企業・業界団体を含む)に対し て、直接面談によるヒアリング調査を実施 <実施期間> 2012 年 1 月 10 日~2012 年 1 月 24 日 <主なヒアリング項目> ○震災時の各種ライフライン途絶の状況 ・ 電気、ガス、燃料、上下水、情報・通信、交通の各種ライフラインの 途絶の状況 ・ 停止の影響が大きかったライフライン ○震災時の各種設備の使用状況 ・ 電気、ガス、燃料機器等の各種機器が使用可能になるまでに要した日 数 ・ 各種機器のうち、震災後も使用可能であった機器、使用可能時間 ・ 各種機器が使用できない際にとった代替策 ・ エネルギーインフラの復旧にあわせて優先的に使用した機器、その理 由 ○震災前後の情報・連絡について ・ 通常の災害時(火事、台風等)の連絡手段 ・ 震災後の状況把握と復旧の際に主に使用した連絡手段 ・ ライフライン・設備の復旧で主に連絡した機関等(官公庁・企業・NPO 等) ○震災時の地域コミュニティーの役割 ・ 震災時に有効に働いた地域コミュニティーでの取組み ○その他 ・ 震災を契機に生じたエネルギーに対するニーズ ・ 災害に強い街に望むこと ・ 平時のエネルギー消費の状況 1 図表 2 ヒアリング先一覧 県 青森県 市 地域特性(産業 特性) スマコミ事業 八戸市 (漁業共同協会を含 水産業地域 む) ・2003~2007 年にかけてマイクログ リッド実証実験を実施(NEDO) ・NEDO「新エネルギー等地域集中実 証研究」を実施中 久慈市 住居系地域 ・(METI FS 事業)再生可能エネルギー や船舶の逆潮、電鉄のインフラを活用 したスマートコミュニティの構築事業 住居系地域 ・(METI FS 事業)大規模発電と家・集 落単位での小規模発電を組み合わせ たスマートエネルギータウン計画調査 岩手県 大槌町 宮城県 福島県 仙台市 住居系地域 栗原市 農業地域 県内工業団地 工業系地域 会津若松市 観光業地域 相馬市 住居系地域 ・(METI FS 事業)AC/DC ハイブリッド グリッド活用住宅と住戸間のエネル ギーシェアモデルの調査研究(=ス マートヴィレッジプロジェクト) ・再生可能エネルギーの導入、エネル ギーマネジメントによる省エネ等に関 する調査 ・(METI FS 事業)会津若松地域スマー トコミュニティ事業化可能性調査 - 1.3 調査結果 ヒアリングで情報が得られた東日本大震災時の住宅・避難所におけるエネルギーの途絶状況及 び各種設備の使用状況を図表 3に示す。また、各種産業におけるエネルギーの途絶状況及び各種 設備の使用状況を図表 4~図表 8に示す。 2 図表 3 住宅・避難所におけるエネルギーの途絶状況及び各種設備の使用状況 エネル ギー種 用途 機器 種類 震災発生直後 ~1日 ~3日 ~1週間 ~2週間 ~1ヵ月 病院・中心部等から優先的に電気が復旧 給水給湯 一部地域を除いて電気が復旧 通常の機器 停電・断水のため使用不可 非常用機器 非常用発電機で使用可 燃料不足により発電機使用制限 代替品 代替品なし 給水車により、避難所等で使用可 全域で電気の復旧 電気温水器、ポンプ等 断水のため使用不可 上下水設備の復旧 燃料供給の復旧とともに使用可 病院・中心部等から優先的に電気が復旧 厨房 冷凍冷蔵庫、電子レンジ、電 通常の機器 気レンジ、電子オーブンレン ジ、食器洗い機、食器乾燥 器、クッキングヒーター等 非常用機器 停電のため使用不可 一部地域を除いて電気が復旧 全域で電気の復旧 非常用発電機で使用可 燃料不足により発電機使用制限 代替品 カセットコンロ 通常の機器 停電のため使用不可 非常用機器 非常用発電機で使用可 代替品 自動車の暖房、毛布等で代替するが、機能としては不十分 自衛隊等からの反射式ストーブ等の支援 燃料供給の復旧とともに使用可 炊き出し、食糧支援 病院・中心部等から優先的に電気が復旧 冷暖房 一部地域を除いて電気が復旧 エアコン、電気床暖房装置、 電気カーペット等 全域で電気の復旧 燃料不足により発電機使用制限 病院・中心部等から優先的に電気が復旧 電気 保健衛生 洗濯機、衣類乾燥機、換気 通常の機器 扇、温水洗浄便座、浄化槽 用ポンプ、サウナバス、空気 清浄機、イオン整水器等 非常用機器 代替品 一部地域を除いて電気が復旧 停電・断水のため使用不可 全域で電気の復旧 断水のため使用不可 非常用発電機で使用可 代替品なし バッテリー駆動のものは使用 可(ワンセグ放送、モバイル 通信規制により使用制限または機器本体・基地局のバッテリー切れにより使用不可 インターネット接続、ラジオ) 通電により、一部機器は使用可(テレビ等) 通常の機器 電気の復旧とともに使用可 一部地域を除いて電気が復旧 停電・基地局被災のため使用不可 テレビ、ビデオ、コンピュー ★情報・通 ター、ワードプロセッサー、電 信 話、ファクシミリ等 上下水設備の復旧 燃料供給の復旧とともに使用可 燃料不足により発電機使用制限 全域で電気の復旧 基地局被災のため使用不可 上下水設備の復旧 非常用機器 代替品 非常用発電機で使用可 防災無線による情報発信 発電機があったにもかかわら 燃料不足でも優先的に使用 ず、通信規制により使用制限 機器のバッテリー切れにより使用不可 通信できないため、直接移動して情報伝達等 かわら版 コミュニティFM立ち上げ 病院・避難所等から優先的に電気が復旧 ★照明 通常の機器 停電のため使用不可 非常用機器 非常用発電機で使用可 代替品 自動車のライト、懐中電灯等で代替するが機能は不十分 一部地域を除いて電気が復旧 照明器具、庭園灯等 全域で電気の復旧 燃料不足でも非常用照明は優先的に使用 電気不使用のLPガス機器は使用可(瞬間湯沸器、風呂釜等) 通電により、LPガス機器は使用可(ガス給湯器、ガスボイラー) LPガス機器 給水給湯 一部地域を除いて電気が復旧 LPガスはあったとしても、停電または断水のため使用不可 全域で電気の復旧 給湯器 断水のため使用不可 都市ガス機器 ガス供給停止、停電、断水のため使用不可 非常用機器 非常用機器なし 代替品 代替品なし 電気が復旧するも、ガス供給停止または断水のため使用不可 上下水設備の復旧 ガス供給の復旧とともに使用 可 給水車により、避難所等で使用可 電気不使用のLPガス機器は使用可(ガスコンロ等) 通電により、LPガス機器は使用可(ガスレンジ、オーブン等) LPガス機器 ガス 厨房 一部地域を除いて電気が復旧 LPガスはあったとしても、停電のため使用不可 全域で電気の復旧 ガスコンロ、ガスレンジ、オー ブン 断水のため使用不可 都市ガス機器 ガス供給停止、停電のため使用不可 冷暖房 発電 ガスファンヒーター ガスエンジン 非常用機器 非常用なし 代替品 カセットコンロ LPガス機器 LPガスファンヒーターは一般的ではない 燃料 ★交通 ストーブ 自動車、バイク ★発電 ディーゼル発電機 電気が復旧するも、ガス供給停止のため使用不可 非常用機器 非常用機器なし 代替品 自動車の暖房、毛布等で代替するが、機能としては不十分 自衛隊等からの反射式ストーブ等の支援 LPガス機器 LPガスエンジンは使用可 ガス供給の復旧とともに使用 可 ※ただし、非常用として設置してあることを知らない例あり 都市ガス機器 ガス供給停止、停電のため使用不可 非常用機器 ガスエンジン発電機時代が非常用機器として機能 代替品 代替品なし 電気が復旧するも、ガス供給停止のため使用不可 電気不使用の機器は使用可(反射式ストーブ等) ガス供給の復旧とともに使用 可 避難所等では優先的に燃料使用 燃料はあるものの、停電のため使用不可(石油ファンヒーター 通電しても、燃料不足により使用制限 非常用機器 非常用機器なし 代替品 自動車の暖房、毛布等で代替するが、機能としては不十分 自衛隊等からの反射式ストーブ等の支援 通常の機器 使用可 非常用機器 非常用機器なし 代替品 上下水設備の復旧 ガス供給の復旧とともに使用 可 炊き出し、食糧支援 都市ガス機器 ガス供給停止、停電のため使用不可 通常の機器 冷暖房 電気が復旧するも、ガス供給停止のため使用不可 燃料供給の復旧とともに使用可 緊急車両・消防車等は優先的に燃料を使用 燃料供給の復旧とともに使用可 燃料不足により使用制限 LPガスタクシー 公共バスは運休 通常の機器 使用可 非常用機器 ディーゼル発電機自体が非常用機器 代替品 代替品なし 公共バス復旧(ただし、燃料不足により間引き運転) 燃料不足により使用制限 燃料供給の復旧とともに使用可 優先的に燃料を使用 (注)色つきは使用できた時間を表す。 ★はヒアリングで重要と回答があった事項を表す (以上) 3 図表 4 水産業におけるエネルギーの途絶状況及び各種設備の使用状況 水産業 エネルギー需要の特徴等 参考地域:八戸市 用途 機器(エネルギー種) 船内暖房(灯油) 船舶 機関(ガソリン、軽油・重油) 情報 ・通信 停電からの復旧には2週間程度を要した。 500隻の船舶のうち300隻に被害発生。3月24日の市場販売再開は例外的とも言える早さ。 震災発生直後 使用可 夜まで沖合へ退避した。 使用可 夜まで沖合へ退避した。 ~数日 ~数週間 復旧 1か月程度、燃料調達困難が継続。 復旧 使用不可 ★スーパー等小売店と連絡がつかず、適切な商品 発送ができず。 復旧 テレビ・ラジオ 停電のため使用不可 復旧 無線:主に漁船との通信 使用可 ☆自動車バッテリーの電力を利用 使用可 ☆ディーゼル発電機の電力を利用。 ~数ヵ月 1か月程度、燃料調達困難が継続。 電話:主に陸上との通信 カーラジオ、自動車ワンセグテレビ 陸上物流 船舶側のエネルギー需要は主に燃料。漁協(漁港)側のエネルギー需要は主に電力。 通信が重要な役割を果たしている。 1か月程度、燃料調達困難が継続。 復旧 復旧 フォークリフト(軽油) 供給制限の範囲内で使用可 1か月程度、燃料調達困難が継続。 製氷・冷蔵設備(電力) 停電のため使用不可 ★浸水後の動作確認にも時間がかかった。 ★在庫の発送作業を急いだ。繁忙期でなかったた め、被害は最小限だった。 復旧 トラック等(ガソリン、軽油) 使用可 燃料切れにより使用不可 4 供給制限内で使用可 復旧 復旧 図表 5 農業におけるエネルギーの途絶状況及び各種設備の使用状況 農業 エネルギー需要の特徴等 参考地域:栗原市 用途 燃料から電力まで様々なエネルギー需要があるが、生産サイクルの都合から、機器の稼働率は季節特性が大きい。 トラクターのエンジンは発電機として利用されている。 停電は市域中心部で1週間、郊外で2週間程度続いた。 機器(エネルギー種) 震災発生直後 ~数日 ~数週間 ~数ヵ月 トラクター(軽油) 使用可 燃料切れにより使用不可 供給制限内で使用可 復旧 田植機(ガソリン) 使用可 燃料切れにより使用不可 供給制限内で使用可 復旧 コンバイン(軽油) 使用可 燃料切れにより使用不可 供給制限内で使用可 復旧 トラック(軽油) 使用可 燃料切れにより使用不可。 ★出荷できず。路上販売する農家もあった。 供給制限内で使用可 復旧 乾燥機(灯油) 使用可 燃料切れにより使用不可 供給制限内で使用可 復旧 暖房器(灯油) 使用可 燃料切れにより使用不可 供給制限内で使用可 復旧 温水ボイラー(灯油) 使用可 燃料切れにより使用不可 供給制限内で使用可 復旧 育苗電熱線(電力) 停電のため使用不可 スプリンクラー(電力) 停電のため使用不可 灌水エンジン(ガソリン) 使用可 自走設備 固定設備 ★ビニールハウス内で散水できなかった。 燃料切れにより使用不可 5 供給制限内で使用可 復旧 図表 6 畜産業におけるエネルギーの途絶状況及び各種設備の使用状況 畜産業 エネルギー需要の特徴等 参考地域:久慈市 用途 牧草地 管理 畜舎管理 燃料から電力まで様々なエネルギー需要があるが、生産サイクルの都合から、機器の稼働率は季節特性が大きい。 トラクターのエンジンは発電機として利用されている。 停電からは2日程度で復旧。 ガソリンは1週間程で供給再開後、供給制限が1か月程続いた。軽油はガソリンよりも供給に余裕があった。 機器(エネルギー種) 震災発生直後 ~数日 ~数週間 ~数ヵ月 各種トラクター(軽油) 使用可 燃料切れにより使用不可 供給制限内で使用可 復旧 洗浄用等温水ボイラー(灯油) 使用可 燃料切れにより使用不可 供給制限内で使用可 復旧 照明(電力) 停電のため使用不可 復旧 暖房(灯油) 使用可 燃料切れにより使用不可。 ★ブロイラーで障害発生。 供給制限内で使用可 復旧 給餌システム(電力) 停電のため使用不可 復旧 搾乳機(電力) 停電のため使用不可 復旧 海運(重油) 日本海側各港湾の被害のため運行に制限 ★飼料調達に障害発生し、肉牛の成長期に十分に 給餌できず。 (復旧時期は不明) 復旧 トラック等(軽油) 使用可 供給制限内で使用可 復旧 飼養管理 物流 燃料切れにより使用不可 6 図表 7 製造業(自動車関連)におけるエネルギーの途絶状況及び各種設備の使用状況 製造業(自動車関連) エネルギー需要の特徴等 参考地域:企業A 用途 機器(エネルギー種) 貯蔵管理・調整設備 塗料循環ポンプ(電力) 他社事例:加温設備(ガスボイラー) 加工・組立設備 他社事例:鏡面加工設備 生産設備 搬送設備 生産管理システム 生産環境設備 他社事例:クリーンルーム 照明(電力) 業務設備 物流 冷暖房・空調(電力) 業種・工程毎の差が著しいが、電力・熱ともに大規模な需要がある。 原材料等の貯蔵管理等、加工・組立ラインが停止していても、温度管理等を継続が必要な場合がある。 工業団地への都市ガス供給に中圧管が使用されていたこともあり、震災でも供給は停止しなかった。 サプライチェーンの途絶により、震災直後より長期間生産を停止。 震災直後には従業員、従業員家族及び地域住民が避難所として利用した。 震災発生直後 一部を除き使用不可 ★塗料の循環ポンプだけは優先して稼働。 ~数日 ~数週間 都市ガス供給停止により、メッキ液を加温できず。 都市ガス供給再開とともに通常運転再開 一部を除き使用不可 ★出荷ニーズの大幅減で不要に。 復旧 NC加工機の故障で作業停止 代替設備としてラップ盤を使用し、加工再開。 一部を除き使用不可 ★出荷ニーズの大幅減で不要に。 一部を除き使用不可 ★出荷ニーズの大幅減で不要に。 一部を除き使用不可 ★出荷ニーズの大幅減で不要に。 停電のためクリーンルーム環境の維持不可 使用不可 ☆食堂等は避難所として機能。 使用不可 ☆食堂等は避難所として機能。 厨房機器(ガス) 使用可 トラック等(軽油) 使用可 ★出荷ニーズの大幅減で不要に。 ~数ヵ月 復旧 通常運転再開 復旧 復旧 復旧 重油途絶のため温度環境の維持不可 重油途絶のため温度環境の維持不可 通常運転再開 供給制限内で使用可 復旧 復旧 復旧 燃料切れにより使用不可 7 図表 8 観光業におけるエネルギーの途絶状況及び各種設備の使用状況 観光業 エネルギー需要の特徴等 参考地域:会津若松市 用途 給湯 照明 エネルギー需要は居住エリアと類似する。温泉地の場合、暖房や給湯といった熱需要が極端に小さくなる場合がある。 停電は2回あったが、いずれも24時間以内に復旧。 温泉地であり、入浴のための給湯には大きなエネルギーを必要としなかった。 暖房器具としては石油ファンヒーターがほとんどで、ストーブはあまり普及していない。 震災時に多数の宿泊客が来訪中だった。ホテル・旅館の多くが一時避難所として施設・食糧等を提供した。 震災直後から観光客数は激減し、半年以上経過してから徐々に回復しつつある。 機器(エネルギー種) 震災発生直後 給湯器(ガス) 使用可 給湯器(ボイラー等) 使用可 温泉 使用可 電灯(電力) 停電のため使用不可 調理器(ガス) 使用可 調理器(電気) 停電のため使用不可 給湯器(ガス) 使用可 給湯器(ボイラー等) 使用可 石油ファンヒーター ~数日 燃料切れにより使用不可 ~数週間 ~数ヵ月 供給制限内で使用可 復旧 燃料切れにより使用不可 供給制限内で使用可 復旧 停電のため使用不可 燃料切れにより使用不可 供給制限内で使用可 復旧 停電のため使用不可 使用可 ★暖房能力としては不十分。 復旧 復旧 厨房機器 冷暖房 ・空調 エアコン ストーブ(灯油) ストーブ(薪・ペレット) 使用可 ★ほとんど普及しておらず。 使用可 ★ほとんど普及しておらず。 公共交通 供給制限内で使用可(間引き運転) 自動車等 使用可 燃料切れにより使用不可 復旧 供給制限内で使用可 復旧 復旧 復旧 交通 燃料切れにより使用不可 8 供給制限内で使用可 復旧
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