内部体制の充実 - 労働衛生協会

Ⅲ
内部体制の充実
24
Ⅰ
1.内部体制
1)組織改正・人事関係について
り設置している公益法人制度改革対応作業部会におい
て、現行事業・財務関係・諸機関(認定後の評議員会・
Ⅱ
健診機関間の競争が激しさを増す環境に備えるため、
理事会)及び関係諸規程の見直しを行ってきました。8
2010年4月1日付で健診事業部の新設を始めとした、かな
月に入り、先に厚生労働省から認可を受けていた「最初
り大幅な組織改正を実施しました。具体的には、健診事
の評議員」を選任するための評議員会を開催し、公益財
業の効率的な運営を図っていくための体制作りを主軸と
団法人認定後に評議員会を構成する評議員の選任を行い
した部の新設・グループの統廃合等です。これに合わせ、
ました。また、9月に財務関係の見直しを強化するため、
部署間及び部署内の協力体制の構築、業務の効率化を進
シンクタンクとコンサルタント契約を交わし、財務関係
めてきました。
及び周辺諸手続きについて相談しながら認定申請作業を
また従来、活動が消極的であった対外的広報活動の充
進めてきました。3月から8月にかけては、「公益法人」
実を図る目的で、2011年4月に企画広報室を新設し、広
の認定申請を準備している複数の健診機関を訪問し、教
Ⅲ
報活動の運営強化と様々な事業運営の企画立案をできる
示を仰ぎながら情報の収集に努めました。特に5月には、
Ⅳ
体制を整えました。この2年に亘る組織改正により職員
「公益財団法人」の認定を受けた中国地方の健診機関を
が一丸となり、運用面や業務面で更に協力し、連帯感を
訪問し、多くの示唆に富む教示を受けることができ、大
高められるようになってきたのではないかと思います。
変参考になりました。
今後は、「より良い健診」に発展させるために顧客サー
この一年で、当協会の主力事業である「健康診断事業」
ビスや顧客志向に徹し、より一層顧客満足度アップを図
が、社会的に「公益性」のあるものとして認められつつ
ることに重点をシフトさせていきたいと考えています。
あり、実際に健康診断事業を行っている全国労働衛生団
人事関係については、
企画広報室新設に伴い人事異動、
体連合会傘下の数機関も「公益社団・公益財団法人」の
同年4月に昇格・昇任人事を通じて、より業務の効率化
認定を得ていることを鑑みて、2012年前半での認定申請
を図りました。また2011年8月には、2年の任期満了に伴
に向けて最終調整作業を進めています。
う役員の交代で長年協会を牽引してこられた林部会長と
早川理事長がご勇退され、新しく木村理事長を中心とし
た新体制がスタートしました。またこれに伴い、理事と
3)健診システム再構築への取り組み
Ⅴ
評議員の方々も大幅な交代がなされ、従来からの協会の
2010年度に発足しました「健康情報管理委員会」から、
特色を活かしつつも、新たな協会へ向けて発展的運営を
2011年度は、当協会基幹システムの再構築にフォーカス
進めています。新役員の下、各職員が自身のポジション
を絞った「健診システム再構築プロジェクト」を始動さ
での役割や組織内の位置づけを自覚し、組織的な報告・
せました。
連絡・相談の徹底を図り、指示命令系統の再確認により
本プロジェクトは来る2012年度以降の新システム稼働
スピーディな業務運営が行われるよう、協会運営の強化
に向け、より健診における作業品質の向上や業務の最適
が図られました。
化を目指し、現状業務の見直し及びIT化を推進して参
ります。
Ⅵ
2)
公益法人制度改革の活動経過
常務会での「公益法人制度改革」に対する決議事項(①
「公益財団法人」を目指すこと②2011年中または2012年
(1)主な目的
①ビジネス環境の変化に柔軟かつ迅速に対応する
②業務改善を行い、正確かつスピードアップを図る
③健診データを一元管理し、多角的な統計・分析を実
の前半までに申請を行うこと等)について、2010年(平
現させる
成22年)12月の理事会・評議員会にて説明を行い、諒承
(2)対象機能の範囲
Ⅶ
を得ました。これを受けて2011年(平成23年)2月の理
①契約、請求、会計等経営に関わる機能
事会・評議員会にて、
「公益財団法人」へ移行すること
②検査結果、判定、読影など健診結果に関わる機能
が承認され、協会を挙げて「公益財団法人」認定申請に
③WEB予約、受付、結果閲覧などの対外運用に関わ
向け進むこととなりました。2011年(平成23年)2月の
る機能
理事会・評議員会の決議をもって4月、主務官庁であり
④検査結果の画像デジタル化に関わる機能
ます厚生労働省に公益財団法人申請を行うための「最初
⑤巡回のオンライン化など、インフラ整備に関わる機能
の評議員の選任方法」を「委員会方式にて行う」ことと
また、上記におけるプロジェクト体制として、「プロ
する旨の申請を行い、認可を受けました。以後、前年よ
ジェクト事務局」を設置し、業務単位で分ける部門横断
2011年度 労働衛生協会事業年報
25
型の組織体を形成しています。これにより個々の部門の
5)各種研修会等の参加者一覧
行う事が可能となっています。更に本プロジェクトは、
検体検査実務者等研修会
2
純音(気導)聴力検査研修会
社)全国労働
衛生連合会
2
4)精度管理の推進
保健師・看護師研修会
社)全国労働
衛生連合会
1
2011年も引き続き協会一丸となり健診サービス全体の
内部監査(評価)員
研修プログラム
社)全国労働
衛生連合会
1
特定保健指導事業従事者
養成研修
財)東京都福祉
保健財団
2
特定保健指導実践者育成
保健指導スキルアップ研修
財)東京都福祉
保健財団
1
第一回乳がん検診従事者講演会
東京都がん検診
センター
1
第二回乳がん検診従事者講演会
東京都がん検診
センター
1
の本稼働を予定しています。
精度を確実に保持すると共に、資質の向上を目指して努
力を重ねています。
まずは内部精度管理の充実を図るため、精度管理責任
者による機器の始業・保守点検記録の確認および指導は
もとより、健診現場、また内部処理に関しても、漏れ、
間違いのない結果報告を目指しています。そして協会全
体がその目標に向かい、各部署では業務の精度向上に対
する意識向上に重さをおいたミーティングや研修会など
を開催し、品質保証室では新人教育に対し、日々の健診
現場での精度は機器の校正や点検のみならず、採血時の
室温や体勢、血圧測定前の安静、目視尿検査時の照度、
検体の持ち帰り時間・温度・搬送方法、聴力検査におけ
理・ハムの防止、レントゲン撮影時における体位など日
常行っている精度管理の重要性についても教育していま
す。また協会全体のインシデントに対しても同様の事象
を引き起こさないよう直接および根本原因の究明や改善
点のポイントと対策の妥当性などについてアドバイス
し、
改善に取り組むよう指導しています。そして年一回、
員で実施し、精度を維持する上でのリスクの低減に努め
ています。
しかし様々な問題点がまだ散積しており、特に本年は
様々な予期せぬ出来事も多く、精度の維持に気が抜けな
腹部超音波ハンズオンセミナー ㈱日立メディコ
1
職場ストレス調査の進め方
セミナー
中災防
2
メンタルヘルス対策に活かす
職場ストレス調査の進め方
中災防
1
トラブルに学ぶ
実践労基法実務
社)新宿労働
基準協会
1
労務管理講習会
社)新宿労働
基準協会
1
人事評価・等級制度の見直しと SMBC
昇格・降格の留意点
コンサルティング
1
変形労働時間制とみなし労働時 ㈱オービックオフィス
間制の導入と割増賃金の対応
オートメーション
1
Ⅴ
リスクアセスメントの一端としてヒアリハットを職員全
2
Ⅳ
る室内の騒音、心電図測定時のベッドの安定性や温度管
乳房超音波検査を学ぼう! 2011 アスリード㈱
Ⅲ
人数
にかけてシステム企画・要求定義を行い、2013年度以降
研修会名
Ⅱ
主催
社)全国労働
衛生連合会
年度を越えての計画となるため、2011年度から2012年度
Ⅰ
みでは解決できない課題や、部門間連携部分をより密に
6)機器等の整備
やインシデントに対する再発防止・改善に向けた対応策、
ル化を図っています。
再発防止策実施等、日々の努力の積み重ねがリスクの低
本部では2011年度、
(財)日本宝くじ協会からの助成
減、如いては確実な精度の保持へと繋がり、このような
を受け、胃・胸部X線デジタル健診車を1台、整備致し
有効性がある改善力が当協会の大きな財産となっていく
ました。
と確信しています。
長野県支部でも2011年度、(財)JKAからの補助を受
今後とも今まで以上に精度管理に力を注いでいく所存
け、胸部X線デジタル健診車を1台、整備致しました。
であります。
既に稼働している胃・胸部X線アナログ健診車について
また、外部精度管理については、他団体の実施する精
も、胃部X線装置のみではありますが、1台デジタル装
度管理調査への積極的な参加、また試薬メーカー主催の
置に変更致しました。
精度管理調査、各種学術研修会及び機器セミナー等へも
健診全体の効率化に繋がると共に、当協会「中長期検
積極的に参加し、非常に優秀な成績を収めております。
討委員会」等で将来の方向性を決めていく中で、Ⅹ線装
各種標準化作業が進む今日、当協会の結果報告も皆様に
置の全面デジタル化は、優先度の高いものと考えます。
安心してお伝えできる情報となるよう日々努力してまい
また、今後は健診車のデジタル化は勿論、他の健診検査
ります。
機器についても順次デジタル化を図っていきたいと考え
ています。
2011年度 労働衛生協会事業年報
Ⅶ
時代の要請を受け2010年度より順次、健診車のデジタ
Ⅵ
い状況であることも事実であります。このような問題点
26
(2)2011年10月より機関誌「ばらんす」を健康情報誌と
Ⅰ
7)広報活動
して年4回発行することとし健康診断を実施してい
2011年度、広報活動等の強化を図る目的として、4月
る事業所や関連施設に配布し、地域住民には図書館
に新たに企画広報室が新設されました。活動の内容とし
や地域のコニュニティ等で頒布し、広く一般の閲覧
ましては、事業概要の説明を含めて、不特定多数の方の
に供しています。
健康維持増進のための啓発や公衆衛生の向上を目的とし
(3)パンフレット
「How’s your Life?
(健康診断のご案内)
」
Ⅱ
た情報や活動報告・各種統計データ等を、冊子等にまと
では、業務内容を中心に掲載し、顧客等に当協会の
め、広く一般の閲覧に供しています。また、地域住民へ
業務の概略について理解していただくため、配布し
のPRも含め、路線バスでのアナウンス・高井戸駅構内
ております。
の事業案内ポスターの掲示等を行い、各種健康診断・産
(4)ホームページにおいては、トップページの改訂を行
業保健・作業環境測定など当協会のご案内をしています。
い健診施設としてイメージアップを図りました。事
その他広報のツールとしましては、パンフレット・ホー
業内容や各種健診の案内、特に施設健診における
「女
ムページ等の掲出も行い事業の推進を図っています。
性のためのがん検診フロア」については、担当医・
詳細の内容としては
休日等案内・がん検診のQ&Aなども含め、より詳
Ⅲ
(1)
「事業年報」として、当協会の年度ごとの活動内容
しく掲載し内容の充実を図っています。また、「事
や健診データを集計・統計化し、冊子にまとめ官公
業年報」
・機関誌「ばらんす」は、ホームページに
庁や健康診断を実施している事業所等の顧客に配布
掲載しています。
し、広報活動の充実を図っています。
Ⅳ
2.品質管理体制
1)品質保証・情報セキュリティへの取り
組み
本部:
「健康診断(施設および巡回)及
び作業環境測定の実施」
支部:
「健康診断(施設および巡回)の
実施」
当協会は顧客満足と品質保証を重視し、またお客様か
Ⅴ
らお預かりする個人情報を適正に取り扱い確実に情報を
2008年11月 プライバシーマークの認定取得
保護し、より優れた保健医療サービスを継続的にお客様
2009年 6月 ISO9001:2005から:2008への規格の変
更:「健診の計画」を追加。
に提供するために以下の取り組みを行っている。
1.経営理念と共に基本方針、品質方針、情報セキュ
認証範囲:高井戸健診クリニック婦人科
リティ方針、個人情報保護方針などを軸にした強
および乳腺科含。認証更新審
査終了
いトップマネージメントによる組織的な保証体制
2010年 「ISO27001:2005情報セキュリティマネー
を確立
ジメントシステム導入」を計画し、年度
2.QIS委員と品質保証室の連携によるマネージメン
内の取得を目指して活動を開始。この際、
トシステムの組織的運営の確認
Ⅵ
3.あらゆる改善への取り組みの推進
ISO9001:2008品 質 マ ネ ー ジ メ ン ト と
4.品質管理・情報セキュリティを重視した人材育成
ISO27001:2005情報セキュリティマネー
5.協力会社(アウトソーシング)をふくめた品質・
ジメントのマニュアルを統合し、他機関
ではきわめて稀であるQISMS(Quality・
情報管理の徹底
information・security・management・
6.各種総合精度管理事業への参加
systems)マニュアルを構築。個人情報
(1)マ ネージメント推進のための認証取得とその動向
については、プライバシーマークによる
Ⅶ
について
マネージメントではなくISO27001:2005
情報セキュリティマネージメントシステ
2003年 5月 全国労働衛生団体連合会の労働衛生サー
ムにより維持管理していく事を決定
ビス機能評価の認定
2004年 ISO9001取得を目指し準備委員を設置
2010年11月 「品質マネージメントシステム」認証継
続審査終了
2006年12月 ISO9001:2000の認証を取得。
認証取得範囲:
12月 「情報セキュリティマネージメントシス
2011年度 労働衛生協会事業年報
27
員によるサーベイランスを実施し認証を継続している。
テム」新規認証取得
人情報保護をISO27001に統合して対応
11月 「品質マネージメントシステム」認証継
今後もこれらのマネージメントシステムをよりしっか
りとしたPDCAサイクルとして循環させ、より高い品
Ⅰ
2011年 5月 プライバシーマークの認定終了、以後個
質・情報セキュリティシステムの構築を目指し日々努力
を重ねていく所存である。
続審査終了
12月 「情報セキュリティマネージメントシス
情報セキュリティマネージメントシステムにおいては
リスク管理を重要視しており、品質でのリスクを含め、
テム継続認証審査終了
ISO9001と27001の同時審査が出来る審査
全グループで各業務工程に潜在するリスク・現存するリ
し、さらに手順書にも危機管理としての対策を盛り込ん
Ⅱ
スクを洗い出しリスクを低減させる管理策を考え実施
機関を検討開始
でいくという極めて合理的なリスクアセスメント、リス
(2)2011年 QISMSの概要
クマネージメントが構築されつつある。
1月 :アウトプット
前年のマネジーメントレビューを受け年頭
式に理事長より職員全体に業務に対する取
り組み及び改善についての所信表明
2)個人情報保護に対する取り組み
9〜10月:内部監査実施
加工・編集送信が簡単に行え、ネットワークの普及により、
前年の外部審査結果・内部監査結果・協会メ
それが瞬時に世界中を駆け巡るような状況である。この
モに対する改善点や有効性の確認、手順書
状況に伴い社会では管理や取り扱いが不適切であるため
の整備状況、記録の管理状況、情報セキュ
顧客データが外部に漏洩するような事故が起きている。
リティに関する管理状況などが監査され全
このため、2005年4月1日、個人情報保護法が全面施行
部門で合計91件の指摘及び観察事項が報告
され、事業者は今まで以上に個人情報の適正な取扱いが
され、それに対し各部門より改善計画書を
求められることとなった。
提出
当協会では健康診断を受診されるお客様の個人情報の
11月 :2012年の品質目標発表
有用性に配慮しながら、個人の権利・利益を保護するこ
12月 :各部門目標発表
とを目的とし個人情報保護法を遵守することを社会貢献
職員研修会実施:他部門の協会メモに対す
と考え、その取り組みを実施してきた。結果「医療の情
る原因追及と改善案を考えるケーススタディ
報システムの安全管理に関するガイドライン」等関連す
方式による研修会を開催、各グループで発
るガイドラインにも配慮し、2008年5月JIS15001:2006プ
に発展させ、世の中に存在する危機感を危惧し、協会の
るマネージメントが維持されていることを確実にするた
有する情報全体のセキュリティ確保を目的とし、個人情
めに、部署ごとの責任の明確化・業務の迅速化と完全性・
報保護関連規程とISMS関連規程を統合した上で、2010年
機密性(精度)
・可容性の維持・顧客満足度を高めるサー
12月ISO27001:2005(ISMS)認定を取得。これに従い
ビスの向上などを図り、事故・事件を含む多々ある諸問
2011年5月にプライバシーマーク認定は期間終了とした。
題に対し継続的改善を行っているかを監査する内部監査
現在、昨年に引き続き各部署では業務内容の再確認と
および外部監査の実施が要求されている。
業務フローの作成、そこに存在する情報資産の洗い出し、
内部監査は上記内容に加え、情報の伝達、文書・記録
情報資産台帳の作成、それと共に業務フローを中心とし
類の管理、
業務および情報処理関連に関するリスク管理、
た品質及び情報セキュリティに現存するリスクの洗い出
業務改善や予防措置がなされているか、の進行状況も監
し、リスクの整理と分析、適用している現在の管理策(リ
査している。
また内部監査委員教育は外部機関に委託し、
スク回避、改善対策など)の実施、更には残存リスクの
毎年一回内部監査実施前にセミナーを開催し力量の維持
想定、改善策や効率化に対する内容を盛り込んだ手順書
に努めている。
の改訂など協会職員が一丸となり推進している。
協会全体のクレーム処理においては、原因追求・改善方
今後もお客様の個人情報を「漏らさない」
「間違えない」
「適切に扱える」(CIA)を重視し、常に適切な管理をす
各QIS管理者により水平展開に繋げ、トラブルの発生を未
ることを念頭に置き、更にお客様に信頼される健診を目
然に防ぐよう日々努力を重ねている。また毎年外部監査委
指すこととした。
2011年度 労働衛生協会事業年報
Ⅶ
法の確立・その実施状況・それらをQIS委員会にて検討し
Ⅵ
ライバシーマーク認定を取得するに至った。この事を更
Ⅴ
表し改善に対する情報や手段の交換を実施
QISMSにおいては、品質と情報セキュリティに関す
Ⅳ
個人情報は情報処理技術の発達により、
その入手・利用・
Ⅲ
8月 :内部監査委員教育実施