持続可能な開発のための 基準

持続可能な開発のための
基準
世界銀行のセーフガード政策の
見直しと改訂
世界銀行グループのコミットメント
「世界銀行グループは持続可能な形での貧困の削減と繁栄の共有
に向けた途上国支援に取り組む」*
貧困を撲滅し繁栄の共有を促進するには、社会と環境の持続可
能性のあらゆる側面を考慮に入れなければならない。
世銀プロジェクトにおいて環境および世界の最貧困・脆弱層を保
護することは、このビジョンにとって極めて重要である。
* 世界銀行グループ戦略、2013年10月、p. 5
2
なぜ見直しをするのか?
変わりつつある世界
•
世銀の借り入れ国が直面する問題は過去20年間で劇的に変
化している
•
多くの借り入れ国においても世銀においても、そうした問題に対
処する能力が大幅に向上している
•
世銀の改革に向けた努力
•
2010年の独立評価グループ(IEG)評価 変わりつつある世界
におけるセーフガードと持続可能性のための政策:世界銀行グ
ループの経験に関する独立評価
•
2012/2013年のマルチステークホルダー協議でも変革の必要
性が指摘された
4
コンサルテーション
第1フェーズ:2012/2013を振り返る
40か国以上のステークホルダー(市民社会、政府、民間セクター、
学界、開発パートナーなど)の見解
市民社会団体、政府、学界などからの提出文書
7つの新領域を対象とした専門家から成るフォーカスグループ
•
•
•
•
•
•
土地保有と天然資源
•
先住民族の十分な情報に基づいた事前の自発的同意
•
労働と職業安全衛生
•
気候変動
•
人権
•
障害
•
ジェンダー
先住民族との対話
プロジェクトの影響を受けたコミュニティとの対話
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第1フェーズ:コンサルテーションで提起された主な課題
非希薄化
ダム
コミュニティ
安全
DPF、PforRへの適用
道路
借り入れ国制度の活用
強固なリスク管理アプローチ
世銀と借入国の間での明確な役割
保護の強化
文化遺産
国内法令の尊重
苦情処理メカニズム
統合
生物多様性の保護
森林および自然生息地
実施、モニタリング、監督
汚染への取り組み
土地問題への取り組み
国内法との調和化
ステークホルダーが提起した課題
非自発的住民移転の改善
調和化
世銀グループ内の調和化
ドナー間の調和化
ステークホルダー関与の強化
権利の保護
先住民族
とFPIC
子供の権利
国連条約の反映
動物保護
LGBT(性的少数者)の権利
FPICの適用
対象の拡大
脆弱層・少数者集団
気候変動
人権
国際的な条約や協定の適用
児童労働の禁止
障害
国際条約の適用
国内状況への配慮
国際条約の適用
包括的な政策アプローチの活用
労働
強制労働の禁止
ジェンダー
7
7
7
第2フェーズ: コンサルテーションプロセス
•
借入国25か国を含む37か国を予定
•
コンサルテーションの期間を延長
•
国別コンサルテーション・スケジュールをオンラインで公開。ほとんどの国が確認済み
•
先住民族 を対象としたコンサルテーション
•
テーマ別の専門家会合:労働、生物多様性、脆弱層
•
大規模な国際会議(世界先住民族会議、CIVICUSの国際市民社会週間等)との協力
•
要請に基づきミーティングを実施(Eメール: [email protected])
•
1月にオンラインでのパブリックコンサルティング開催の可能性
•
開発パートナー(他の国際開発金融機関など)や国際機関(ILOなど)との
コンサルテーションやワークショップ
•
会議の概要や出席者名簿はウェブサイトで公開(個別の要請があれば氏名は非公開)
•
ウェブサイトを通じた意見の提出も可能
(フォーラム、個別の基準に関するコメント)
8
フレームワーク案
目標
コミュニティの生活や環境に対する保護を拡大・強化。
借り入れ国にとっても、プロジェクトにおける成果重視アプローチ、
設計の改善、実施策の改善を通じた開発成果の向上。
世銀にとっては、 説明責任が強化 され、社会と環境の保護を
強化する新たなルールを追加。
10
フレームワーク案
•
•
•
•
•
•
•
既存のセーフガードを基礎としつつ、世銀の基本的価値観を
維持
環境と人を保護するための近代的で、リスクに重点を置いた、
成果重視型のアプローチを提示
リスク管理とプロジェクトの全期間にわたる持続可能な開発
成果の達成を重視
社会アセスメントおよび環境・社会面のリスク管理を拡大
世銀と借入国の役割と責任をさらに明確化
開発パートナーとの調和および国際的なグッド・プラクティスを
適用
借入国とのパートナーシップの強化
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フレームワークの構成
持続可能性に関する世銀のビジョンステートメント
世銀の責任
手続
実施のためのガイダンス
情報管理システム
フレームワーク案の義務的要素
法的取り決め
とコミットメント
計画
評価と実施
プ
ロ
ジ
ェ
ク
ト
審査と
デューデリジェンス
環境・社会政策
借入国の責任
環境・社会基準 1-10
ガイダンス・ノート、
ケーススタディ、ツール
フレームワーク案の非義務的要素
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世銀と借入国の役割
世銀の役割:
借入国の役割:
政策案の中で詳述
世銀の責任:
10の環境・社会基準の中で規定
• アセスメントを審査し、基準遵守のた
めに借り入れ国に要求される措置の
実施を支援する。
• 借入国の環境・社会面の制度や法律
を強化し、その利用を促進する。
• ESCP(コミットメント計画)における措
置/行動について借入国と合意する。
• ESCPの厳密な実施を支援する。
• 現在同様、借入国は世銀支援プロ
ジェクトの環境/社会面のリスクと影
響に関するアセスメント、管理、モニタ
リングの責任を負う。
• 環境・社会アセスメントに基づいて世
銀と借入国がリスク緩和のための具
体的なコミットメント計画(明確なスケ
ジュールを含む)に合意する。
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借入国の義務:基準
基準
基礎
改正点
ESS1:環境社会リスクと影響の評価と
管理
OP/BP4.01(環境アセスメント)
差別禁止、適応的管理、遵守のための時間枠
ESS2:労働と労働条件
OP/BP4.01およびEHS(環境、健康及び
安全)ガイドライン
児童労働および強制労働の禁止、労働者の健
康及び安全の重視、苦情処理メカニズム
ESS3:効率的な資源管理と汚染防止
OP4.09(病害虫管理) およびEHSガイドラ
イン
エネルギー、水、その他の資源や素材の効率的
な管理
ESS4:コミュニティの衛生安全
OP/BP4.37(ダムの安全性) およびEHS
ガイドライン
インフラ、設備、製品、サービス、交通、危険物
の設計および安全性を通じ、リスクとコミュニティ
への影響を重視
ESS5:土地の取得、土地利用制限、非
自発的住民移転
OP/BP4.12(非自発的住民移転)
公有地の取り扱い、土地所有権、共有資源への
アクセス、自発的取引、強制的移転の禁止
ESS6:生物多様性の保全と生物天然
資源の持続可能な管理
OP/BP4.04(自然生息地)および
OP/BP4.36(森林)
生物多様性への影響の評価と緩和措置に関す
る義務
ESS7:先住民族
OP/BP4.10(先住民族)
定義の明確化、特定の状況でのFPICの導入
ESS8:文化遺産
OP/BP4.11(有形文化資源)
チャンスファインド手順の策定、影響を受けるコ
ミュニティとのコンサルテーションの強化
ESS9:金融仲介機関
OP/BP 4.01
金融仲介事業の特性及びリスクの水準と影響に
対応した環境・社会的手続きの構築
ESS10:情報開示とステークホルダー
の関与
世銀の関与に関する条項を統合
有意義なコンサルテーション、情報へのアクセス、
苦情処理
フレームワーク案
コンサルテーションで提起された主な
課題*
十分な情報に基づいた事前の自発的 FPICを導入。
同意(FPIC)
子供の権利への取り組み
世銀支援プロジェクトにおける児童労働を禁止。社会的
審査を強化。
国際的な規範に従った労働者の保護
ILO国際労働基準に即した労働基準を導入。
差別禁止の原則
差別禁止を基本原則として確立。
障害者の課題に対する総合的なアプ
ローチ
障害を差別禁止の原則に含める。社会的審査の強化を
導入。
ジェンダーの課題に対する総合的な
アプローチ
ジェンダーを差別禁止の原則に含める。社会的審査の強
化を導入。
SOGIE(性的少数者)の課題に対する
総合的なアプローチ
SOGIEを差別禁止の原則に含める。社会的審査の強化を
導入。
適用範囲
世銀プロジェクトの75%に適用する基準を導入。世銀は
セーフガードに特に注意を払いながらPforRおよびDPLの
審査を別途実施。
ステークホルダー関与の強化と苦情
処理メカニズムの改善
プロジェクトサイクル全体にわたるステークホルダーの関
与(苦情処理メカニズムを含む)に関する基準を提案。
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*順不同。コンサルテーションで議論に上ったすべての問題点を網羅しているもの
ではありません。
コンサルテーションで提起された
主な課題*
フレームワーク案
人権
(世銀は人権問題への対応にセーフガード政策を使用でき
ないことに留意しつつ)借入国が人権に関する義務と目的を
達成できるよう支援する規定を導入。
生物多様性の保護
生物多様性の保護と生物天然資源の持続可能な管理に関
する基準を導入。
汚染と気候変動の課題への
取り組み
効率的な資源管理と汚染削減の要件を導入。温室効果ガス
排出量に重点。
キャパシティビルディングと
制度強化
借入国の環境・社会制度との協力及び改善を通じてキャパ
シティビルディングを実現。
強固なリスク管理アプローチ
リスク評価を導入。プロジェクトライフサイクル全体にわたる
適応的なリスク管理を要求。初期アセスメント後に生じうるリ
スクを特定し、対応する能力を強化。
監督と遵守の重点化
監督と遵守の重点化を導入。プロジェクトの管理および監督
の要件を強化。
世銀と借入国の役割と責任の
明確化
各基準における世銀と借入国の役割/責任を明確に定義。
調和化
国際開発金融機関間および世銀グループ内での調和化を
推進。
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* 順不同。コンサルテーションで議論に上ったすべての問題点を網羅しているもの
ではありません。
複雑な課題
差別禁止
提案
• 貧困層やその他の脆弱層が世銀支援プロジェクトによって引き起
こされる負の影響から保護すべく、差別禁止を基本原則として確
立する。
• 個人やグループに対する差別に関する評価の強化を規定する。
• 差別に対処する。
 差別禁止の原則では、 ジェンダー、身体・精神障害、性的志向、
性同一性等に対応する。
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労働と労働条件
提案
• 労働に関係した主要な課題に明確に取り組むことを借入国に
義務付ける。
• 児童労働および強制労働を禁止する。
• 国内法上の義務を基礎とする。
• 世銀プロジェクトでの雇用における差別禁止/機会均等の原
則を取り入れる。
•
機会均等と公正な待遇の原則に基づいた事業労働者の雇用
19
先住民族
提案
• 十分な情報に基づいた事前の自発的コンサルテーションから、
十分な情報に基づいた事前の自発的同意に移行する。
• 先住民族が提言した課題への対応。
•
自発的孤立
•
遊牧民
•
国内の民族間での衝突のリスク
• 国内の民族間での衝突を回避するための代替アプローチを導
入する。
•
本アプローチは、原則ではなく例外、個別審査、オープンで説明責任を
伴うプロセスでの考慮、世銀理事会による承認、他の環境・社会基準を
通じた先住民族の保護を規定。
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土地と非自発的住民移転
提案
•現行の政策の高い水準を維持する。複数の基準案で土地問題に対応
する。
•プロジェクトに関係した土地取得および土地利用制限を通じた
潜在的な負の影響を評価する。
•土地アクセスに関するあらゆる種類の潜在的問題点を環境・社会
アセスメントの明確な焦点とする。
•既存の保護策を基礎とし、土地と非自発的住民移転に関係する
保護策を明確化する。
•先住民族の土地に関する権利を支援する。
•非自発的住民移転を回避、或いは最小限にする。
強制的移転の禁止。補償と支援を通じて負の影響を軽減させる。
21
生物多様性
提案
•森林と自然生息地に関する既存のセーフガードを統合する。
•生物多様性の保全について、より明示的かつ厳密な義務を導入
することにより、既存のセーフガードを強化する。
•自然生息地へのリスクや負の影響にどのように対処しなければな
らないかについて、より明確でかつ厳密な要件を導入する。
•重要な生息地の重大な転換または劣化を伴うプロジェクトへの融
資または支援のために世銀資金が使用されないよう確保する。
•オフセットは、例外的なケースのみにおいて、最後の手段としての
み認める。
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人権
提案
• 人権に直接関係する課題(差別禁止、ジェンダー、障害、子供
など)に関するアセスメントを通じた基準案の適用範囲の拡大
により、世銀プロジェクトが人権を支援することを明確にする。
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適応的リスク管理
提案
•
•
•
•
•
環境・社会への影響の範囲と重大性を判断するための厳密な事前アセスメントを
引き続き義務づける。
大規模かつ複雑なプロジェクトでは、特定のリスクに関するアセスメントの実施は
長期に渡るケースもあることを認識する(ただしそのようなアセスメントは、負の影
響をもたらす可能性がある活動が開始される前に実施することを要する)。
世銀と借入国が法的拘束力のある期限付きのコミットメント計画の中で借入国の
環境・社会要件に合意するよう義務づける。
負の影響のあるプロジェクトの開始前にコミットメント計画がしっかり策定され、関
係者と協議されるよう義務づける。
物理的影響のないプロジェクトのリスク管理の向上を可能にする。
課題の
綿密な分析と
微調整
リスク
アセスメント
借入国の
環境・社会制度
の評価
モニタリング
リスク管理の
計画立案
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今後のステップ
コンサルテーション
実施
フィードバック
分析とドラフトの
修正
理事会委員会への
提出
理事会による承認
今後の進め方に
関する理事会
委員会からの
指示に対応
25
ディスカッション
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