(社)日本都市計画学会 都市計画報告集 No. 4 2006 年 2 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 4, February, 2006 都市内河川と市街地における一体的整備手法に関する研究 A study on integrated development schemes of river and the vicinities in built-up area 島田貴子* 室田昌子** Shimada Takako* Murota Masako** Abstract: Integrated developments of river and the vicinities have been recognized widely with focus on the affinity in addition to flood control and irrigation function in river improvement projects in urban areas. The purpose of the present study is to overview the present state and issues regarding integrated development schemes of river and the vicinities in built-up area in Japan. After existing projects and the schemes are collected and reviewed, Metoba River in Matusmoto city is selected for a detailed case study. In the case study, the impact of the integrated development is estimated with the means of hedonic approach. From the literature review of exiting projects and hedonic analysis cooperative institutional set–up for the stakeholders are most essential to make the integrated implementation of the project feasible. Keywords: Hydrophilic function, River, Built-up area, Integrated development scheme, Hedonic approach 親水機能、河川、市街地、一体的整備制度、ヘドニック・アプローチ 2.都市の水辺空間機能 (1) 水辺空間機能とは 都市は河川区域と市街地で区分することができるが、 本研究では図1のように河川区域と市街地側の堤内地を 含んだ部分を水辺空間とし、本研究の対象領域とする。 堤防敷 堤防敷 高水敷 提内地 低水路 高水敷 提外地=河川用地 市街地 提内地 = 河川区域 市街地 水辺空間 = (2)研究方法 都市の水辺空間における親水機能と機能向上のための 一体的整備の手法を整理し、これら整備手法に基づき、 事例より一体的整備の実施状況と適用制度を把握した。 把握の方法としては、各事例の報告書やその他の資料、 現地調査、インタビュー調査である。また、河川整備と の連続性を持った市街地整備が行われている、事例の一 つとして、長野県松本市の女鳥羽川縄手地区を選定し、 ヘドニック・アプローチを利用して一体的整備の社会的 便益を計測した。計測にあたっては地価を被説明変数と し、利便性や景観、親水機能などを説明変数として評価 を行い、地価としては路線価を使用し、その他変数につ いては地図、及び実地調査により把握した。 = 1. はじめに ( 1)研究の 背景と目 的 河川は、生活用水や農業用水としての利用に加え、物 流やコミュニティの場、遊びの場など、人々の生活の中 で大きな役割を担ってきた。しかし、急速な都市化に伴 い、治水や利水を中心とした整備が進み、水質悪化等も 指摘されるなか、河川は遮断され、かつての機能を失っ た。近年、川に親しむ文化的な側面の見直しや、景観の 一部としての見直しを行う動きが出始め、河川の親水機 能を高めるための、河川を生かした街づくりが行われる ようになってきた。 このような背景をふまえ本研究では、都市内河川を対 象として、親水機能の向上を目ざし、河川と市街地にて 一体的に整備を行うための実態と課題を明らかにする。 河川との一体的な整備に関する既存研究としては、水 辺を感じさせるパターン1)やヒアリングによる人々の利 用特性 2)の研究はなされているが、 河川の親水機能に着目 した一体的整備の状況把握を研究しているものはない。 そこで、本研究では、市街地を流れる都市内河川を対象 とし、河川整備と市街地整備を一体的に計画、または一 体的に事業を実施している、全国 21 河川 23 地区の一体 的整備状況を把握する。さらに、長野県女鳥羽川縄手地 区を対象とし、ヘドニック・アプローチを用いて整備の 効果の計測を行う。整備実施状況と、効果の計測から、 一体的整備の方向性を見出すことを目的とする。 本研究対象とする空間 図1 水辺空間の定義 この水辺空間における機能として、河川区域の持つ機能 を流水機能と親水機能に2分し、市街地側の機能として は市街地環境形成機能と親水機能に2分した。親水機能 は、河川区域と市街地にまたがる機能として位置づけた。 この水辺空間における機能として、河川区域側で持つ機 能としては、流水機能と親水機能があり、市街地側では *非会員 武蔵工業大学大学院環境情報学研究科(Musashi Institute of technology) **正会員 武蔵工業大学環境情報学部環境情報学科 (Musashi Institute of technology) - 99 - (社)日本都市計画学会 都市計画報告集 No. 4 2006 年 2 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 4, February, 2006 市街地環境形成機能と親水機能がある。 図2にそれぞ れの機能を示す。 治水機能 流水機能 利水機能 (河川用地) 河川区域 レクリエーション機能 水辺景観機能 都市景観機能 生物育成機能 防災機能 親水機能 文化機能 商業 住宅 業務 公園 景観 防災 インフラ レジャー 市街地 市街地環境 形成機能 図2 親水機能の定義 ここで、河川区域と市街地の両者に共通している、親 水機能としては、レクリエーション機能(水と触れ合っ たり遊具を利用したりすることを通して、活動を行い 人々の憩いの場や交流の場となる) 、水辺景観機能(水辺 側の良好な景観構成要素の一部となる) 、都市景観機能 (市街地側の良好な景観構成要素の一部となる) 、生物育 成機能(生物を育み、空気・水を浄化する) 、防災機能(消 化用水の供給源、避難経路、避難場所となる) 、文化機能 (環境教育の場、歴史的保存、人々の交流の場となる) の6つが上げられる。親水機能には河川区域側と市街地 側の両方向から機能向上が必要であると考える。この親 水機能向上に向けた河川整備に着目する。 (2)親水機能を向上させるための整備方法 図2で示した、各親水機能について、それぞれを向上さ るための目的と、それにともなう整備手法を河川区域と、 市街地に分け考えた(図3) 。 <レクリエーション機能> 【河川区域整備の整備方法】 遊び場の創出 イベントの開催 川幅の改修 観光・レジャースポットの創出 河道の掘り下げ <水辺景観機能> 緩傾斜堤防 憩いの空間の創出 親水性護岸 遊歩道整備 水質の浄化 生態系の回復 <都市景観機能> 憩いの空間の創出 <生物育成機能> 自然再生 <文化機能> 植栽 水辺の広場 船着場の整備 河川の学習空間 イベントの開催 地域住民の参加・学習 【市街地の整備方法】 住宅の開発・建替え 商業施設の開発・建替え 公共施設の開発・建替え オフィスの開発・建替え 歩行者専用道路 道路 公園 ポケットパーク デザインのルール化 道路・歩道デザイン舗装 <防災機能> 経路の確保 (2)一体的整備における適用制度 適用の多い制度として、河川整備の事業と土地区画整 理事業や市街地再開発事業といった面整備の事業が多く 見られる。同時に、地区計画制度の利用も多く見られる。 これらの特徴としては、容積率の割り増し、用途の緩 和といった、規制緩和制度を利用していることである。 例えば、墨田川箱崎地区では、スーパー堤防の整備に伴 い河川区域は拡大するが、この拡大部分の用地を民有地 のままとし、事業者が総合設計制度による容積割り増し をうけている。このような規制緩和制度の適用による再 開発などの面整備の特徴は、河川沿いに規制緩和による 高さの高い建物が建設されることであり、すなわち、局 所的には一体的で豊かな親水機能が実現されているもの の、より広範囲で見ると、河川沿いの超高層建物の点在 化により河川への視界を遮ることになる。また同時に、 河川整備としての連続性を欠くということが指摘できる。 新規開発のデザインコ ントロール ストリートファニチャー 避難地 したまちづくり事例集Ⅰ・Ⅱ」を参考にして 21 河川 23 地区を抽出し、図2で表記した整備手法と適用された事 業制度を把握した(表 1) 。調査対象区域では、河川区域 での整備としては護岸整備が最も多く、水辺の広場の整 備、遊歩道整備の順である。また、親水性護岸と水辺の 広場整備の2つを河川区域で同時に行っているものも多 くみられる。水質の浄化や生態系の確保といった本来の 河川の自然の回復について、対策や整備がされている箇 所は少なかった。市街地側では面整備、線整備と全体的 に整備がなされており、多いものとしては歩行者専用道 路と公園整備、住宅・商業・オフィスと複合型の建物整 備が多くみられた。一体的整備として、河川区域と市街 地の組み合わせた整備パターンでみると、親水性護岸+ 公園整備+水辺の広場の3つの整備を同時に行っている 箇所は、14 地区(表1)あり最も多い。次に親水性護岸 +道路整備、親水性護岸+建物整備の組み合わせとなっ ている。親水性護岸整備とその周辺の施設整備が多いの は、護岸整備と同時に周囲のスペースの確保が可能なた めである。また、道路整備と同時に行うことで、水辺へ のアプローチが容易となり、人々を水辺に近づけること ができる。 植栽 消防施設 河川の学習空間 防火用水の確保 図3 親水機能から見る整備手法 3.一体的整備の実施状況 (1)実施状況のパターン 一体的整備が実施されている地区として、 「河川を活か 4.ヘドニックアプローチによる河川評価 −松本市女鳥羽川を対象としてー (1) 女鳥羽川縄手地区の特徴 松本市女鳥羽川縄手地区においては平成10年松本市中 心市街地地区市街地総合再生計画報告書、平成 11 松本市 中心市街地活性化基本計画の両者において、河川整備が 位置づけられ、上位計画で河川と市街地の一体化が考慮 された。また沿川の各市街地整備事業においても河川と の整合性を図った護岸整備や歩道整備、建物整備など計 画がされ実施された。当地区では、女鳥羽川沿いに約 1km - 100 - (社)日本都市計画学会 都市計画報告集 No. 4 2006 年 2 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 4, February, 2006 表 1 事例別にみた一体的整備の実施状況 河川 ― ― ― × × × × e × × × ― ― 18 広島市京橋川/JALシティ広島 × 19 広島市古川/古川リバーサイド地区 × 20 徳島市新町川/しんまちボードウォーク ― 21 宇部市真締川/山口大学医学部周辺 j 22 北九州市紫川/紫川馬借地区 b 23 福岡市博多川/博多リバレイン × 3 横手市横手川/羽黒町地区 4 七尾市みそぎ川/府中町地区 5 中央区隅田川/箱崎地区 6 品川区目黒川/荏原市場跡地地区 7 沼津市狩野川/上土町地区 8 松本市女鳥羽川/縄手地区 9 名古屋市堀川/黒川地区 10 名古屋市堀川/納屋橋地区 11 名古屋市 堀川/白鳥地区 12 大阪市大川/大阪OAP 13 大阪市道頓堀川/湊町リバープレイス 14 大阪市木津川/尻無川岩崎橋地区 大阪市安治川・正連寺川 15 /此花西部臨海地区 16 宝塚市武庫川/湯本第一地区 6 f f,g ― ― ― e ― ― e × ― e × ― a × × × × ― f e e e × C b,C × × b × ― b × 単 単 × × c × ― ― f e e e a × f e × × b 単 c d f ― ― ― a × ― e b b b 単 c d × × ― × × × × e c c c × × × × a,d a,d a × × ― a,d ― e × × ― j ― × × × × 3 8 20 17 4 ― × × × 単 ― × × × × a 17 神戸市都賀川/都賀川公園 合計値 f × × × a × × e × × b b e e 単 H c c,f c × c,単 R × j,g g × b ― × 単 c,A ― ― × ― ― ― × × × ― A e e e × H H c c f ― c ― ― g ― × ― b × × c 4 公 共 施 設 オ 歩 用 フ 行 道 者 路 ス 専 × B,K B B,I ― B,C × B × B × B × × × × × C,E e × I,K I I I,K,M × × × × J × × N,O,K,J O,J O K K × A A A A A × A A,B B B A,B × × × × × C × A A × × ― b F × × F F × P,K P,K P,K P,K ― c K K,単 K,単 単 K × × B B ― B,D 道 路 整 備 B,C B C,E K,M × K A ― ― × F K K B,K 公 ポ デ パ の 園 ケ ザ 植 統 整 イ 栽 ク 一 備 ト ン ッ ー ― e e × × × × e × × b 2 弘前市腰巻川/城東第6地区 住 宅 商 業 施 設 ィ 番 号 河川名/地区名 1 旭川市忠別川/ 駅南地区 市街地 川 河 緩 親 遊 水 生 水 船 り 幅 道 傾 水 歩 質 回態 植 辺 整着 修 下 防 岸 備 場 の の 斜 性 道 浄 復系 栽 の 備場 げ 改 掘 堤 護 整 化 の 広 の C,L ― E,K M,K 消 防 施 設 B H E,単 I a K A B ― × F K K B,D I e ― I J × × E C A × ― 単 D,K C,I,K ― ― ― ― ― ― E C × × × × × × ― × ― × E × × × ― × × ― c,F × ― K × c,単 ― × D D × B ― ― G,K h,i i B B,K B B B,K I,B × × × × R × × × A × K B × B × × A × K ― × B A A A A C A ― 単 C × × H × H ― ― ― e,H ― 単 × H J,Q 単 ― × ― B,K × B B,K K K × × × × H H ― H × ― B B,C B ― C B,C × × A ― ― A b,A ― × ― A,D A × ― D ― × 9 18 5 ― × ― ― 単 B A A 14 15 14 10 19 14 19 13 12 11 2 注1 ×整備なし −不明 注2 a スーパー堤防事業 b 都市基盤河川改修事業 c 河川環境整備事業 d 低地対策事業 e 広域河川改修事業 f 河川改修事業 g 地方特定河川 h 港湾環境 整備事業 i 特重 j 統合二級河川改修事業 A市街地再開発事業 B土地区画整理事業 C街路事業 D街並み・街づくり総合整備事業 E街並み環境整備事業 F住宅市街地総合整備事業 G都市 再生推進事業 H都市公園事業 I街づくり総合支援事業 J総合設計制度 K地区計画制度 L鉄道高架事業 M地方道路整備臨時交付金 N公営住 宅整備事業 O特定公共賃貸住宅建設事業 P優良建築物等整備推進時事業 Q地域総合整備資金 R高度化事業 単;市町村単独事 に渡り連続した河川整備が行われた。 長野県松本市の中心部を流れる女鳥羽川は、昭和 63 年 にふるさとの川整備事業に指定され、平成 14 年秋に完成 した。女鳥羽川を流れる地域は、中心市街地区域の対象 であり、周囲は地区の拠点、広域商業拠点、歴史文化拠 点といった重要拠点である。表2のような5つの整備事 業制度を用いて河川周囲地区は整備されている。 先に述べた21河川23地区のうちの多くの地区では、 1地区と河川整備といった、狭い範囲での整備が多く、 河川整備の連続性がほとんどなかった。そこで、河川整 備との連続性を持った市街地整備が行われていた松本市 女鳥羽川を対象として、ヘドニックアプローチを用いて 評価することにした。ヘドニックアプローチは環境資源 の整備や環境劣化の防止に伴う社会的便益を、不動産な どの資産価格を利用して評価する手法である。 備、親水施設を検討した。水際までの距離については、 バルコなどの商業施設が女鳥羽川に近接して立地するた め、商業施設からの距離を変数に加えた。護岸は全ての 区間において整備されており水際までの距離と同じにな るので除外した。また、対象地区内で川を見渡せる施設 である、ポケットパーク・公園・ベンチなどの休憩スペ ースを親水施設とした。市街地の景観項目として、電柱 の地中化・歩道のデザイン舗装・建物のデザイン性・ス トリートファニチャーとした。それ以外に最寄り駅まで の距離、前面道路の幅員を設定した。また、これら、9 項目以外にも、水辺への眺望、街路樹有無、遊歩道整備 の有無、松本城からの距離の変数も計測したが、相関関 係が高く除外した。 (2) 変数の設定計測方法 本研究では、女鳥羽川河川の改修が終了した平成 14 年 9月の翌年の平成 15 年路線価を合計 117 路線で把握し、 各路線別の調査(調査日平成 18 年 12 月)を実施した。 説明変数は親水機能として、水際までの距離、護岸整 - 101 - (社)日本都市計画学会 都市計画報告集 No. 4 2006 年 2 月 Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 4, February, 2006 表2 女鳥羽川整備概要 対象地域概要 女鳥羽川(信濃川水系) 延長;17.3km 標高差;1,200m 流域面積;54.8㎢ 計画区間; 長野県松本市中心部 JR篠の井線陸橋∼大橋間の延長 約1km 川幅;20m前後 昭和63年 「ふるさとの川モデル河川」指定 整備事業概要 対象地区全体図 中心市街地の街づくりとの一体化 主な整備事業 ①広域基幹河川改修事業 ②土地区画整理事業 ③市街地再開発事業 ④街並み環境整備事業 ⑤なわて通りまちづくり事業 ↓ 「ふるさとの川整備事業」 整備基本理念 1)都市の自然軸の保全 2)歴史を醸す河川景観の形成 3)観光拠点としての親水空間の創造 4)治水機能の確保 (3)結果 推定結果は表3のようになった。水辺への眺望の有無 は期待に反して有意な推定結果が得られなかった。また 上で述べた他の項目も同様であったため結果からは除外 した。そして、説明変数間の相関では前面道路の幅員と 電柱の地中化において 0.6 と高かったが、最終的には表 3 を採用した。 表 3 のt値に着目すると、水際までの距離が高い数値 となった。これは、河川の氾濫や、危険性などの従前か らの自然的要因が反映したものと思われる。また、親水 施設の有無が1.36と高くはないが有意いに推定されてい る。よって、親水施設の有無が、河川と市街地の一体整 備効果を高める上で有効な施設であるということが出来 る。言い換えると、河川が近くにあっても、親水施設が なければその整備効果が顕在化しないということが出来 る。以上、局地的な差異においては親水施設の有無程度 しか地価に影響を与えないことがわかったが、この松本 市女鳥羽川の整備は、街の整備と広域に渡り一体的に行 ったため、河川だけに特化した有意な推定結果が得られ なかったと考えられる。局地的にも一体整備の有無によ り明確な差がある地区が含まれていたならば、その効果 がより明確に計られたと考えられる。 表3 推定結果 変数 単位 最寄り駅までの距離 m 前面道路の幅員 m 水際までの距離 m 商業施設からの距離 m 電柱の地中化 ダミー 歩道のデザイン舗装 ダミー 建物のデザイン性 ダミー ストリートファニチャー ダミー 親水施設の有無 ダミー 寄与率=決定係数 標本数 (各番号は左記の整備事業箇所) 係数 t -166.9 -5.80 6331 5.16 206.3 3.92 -68.87 -1.69 13737 1.07 26216 2.07 17404 1.66 16688 1.40 26849 1.37 0.737 117 5.おわりに 本研究において、河川と市街地の両方の親水機能を高 めるために、全国における一体的整備の実施状況を把握 し、連続的な河川整備の見られる女鳥羽川縄手地区を対 象としたヘドニックアプローチによる評価を行った。 一体的整備の実施状況から、多くの地区で再開発事業 などの面整備を行う際に、容積緩和などの規制緩和制度 を用いて河川整備を行っている実情が把握された。すな わち、再開発等に併せて整備を行い、容積緩和制度を利 用するために、河川沿いに高さの高い建物が点在し、か つ河川整備の連続性に欠ける方式が現段階では多く採用 されていると言える。 ヘドニックアプローチによる計測からは、一つの事例 ではあるものの、親水施設、景観整備等の有用性が把握 できた.当地区は、上位計画で位置づけられ、連続性の ある河川環境整備と一体的な市街地の景観整備が行われ た地区であり、このような整備の有効性を把握すること ができたと言える。 現状では一体的整備はいまだ数少ないが、今後は、上 位計画での一体化や整備の整合性を確保すると共に、関 係組織の連携や地域住民の連携などのソフト面も考慮し、 河川整備としての連続性の確保や、広範囲における市街 地の景観を考慮した上で一体的な整備を図ることが重要 であると考える。 参考文献 1) 2) 3) 4) 5) - 102 - 飯田進史、窪田陽一;沿川土地利用を考慮した都市河川の空間構 成手法 土木学会第54回年次学術講演会平成11年9月 Ⅳ −305 P,608−609 柳原、赤松、中川、尹;都市河川における水辺空間の整備方針に 関する研究 土木学会第52回年次学術講演会平成9年9月 Ⅳ−246 P,492−493 藤田・盛岡 ヘドニック価格法による親水区間整備の社会的便益 評価に関する実証研究 土木学会論文集 NO,573/Ⅶ4 ,27-37 1997 年 萩原良巳、萩原良子、高橋邦夫;都市環境と水辺計画 1998 年 肥田野登 環境と社会資本の経済評価 1998年
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