食品産業センター

別紙3(様式2)
「本場の本物」地域食品ブランド表示基準(Ⅰ種・Ⅱ種共通)
1.名 称
紀州灰干さんま(きしゅうはいぼしさんま)
(1)名称の由来
昔からさんま漁が盛んであり、さんまと食文化は切り離せない紀州において、より乾
燥しやすくうまみ成分が残りやすい灰で乾燥させた製法が伝わったことから「紀州灰干
しさんま」と呼ばれている。
2.産 地
(1)範 囲
和歌山県和歌山市雑賀崎
(2)範囲の設定根拠
製造地は1960年代から「灰干し製法」がはじまった和歌山県和歌山市雑賀崎であるが
、それは四季を通じて漁が盛んな和歌浦に位置しているということ。そして、その昔、
この周辺では魚を砂に広げ、その砂の吸湿力で乾かす製法が行われていたことから、「
灰干し製法」を受け入れる土壌があったと思われる。
また、紀州は千島列島沖から秋になると道東付近から産卵の為、南下した脂がほどよ
く落ちたさんまを使用した郷土料理が多いだけでなく、文献にも記載があるように、さ
んま漁は紀州・熊野が発祥の地で、江戸時代初期に刺網漁法が開発され漁が盛んになり
、紀州の漁師が漁場を求めて北上したと言われている。
その結果、房総のさんま漁は紀州・熊野の漁師が漁法を伝え、江戸の魚河岸にさんま
が入るようになったと言われ、他の地域の魚食文化に大きな影響を与えている。
「紀州灰干しさんま」については、紀州の郷土料理のなかでも比較的新しく、その歴
史は1960年代ごろであり、兵庫県明石と加工原魚が共通していることが多く、その両産
地の技術交流のなかで製法が伝わったとされている(元々は約150年前の江戸時代に徳
島県鳴門市の名産「鳴門の灰干しわかめ」を発明した前川文太郎の製法が、兵庫県にも
伝わったとされている)。
なお、原材料のさんまの産地については、より「灰干しさんま」を美味しく食すこと
ができる南下直前の北海道根室沖産さんまを使用しており、それは灰干し製法が伝わっ
た1960年代から変わらない。
参考文献:2008年『食彩の王国』扶桑社
2012年 京都大学豊原治彦氏の調査結果を引用
3.歴史的伝統性
紀州では昔からお正月などに「さんまの姿寿司」が食べられ、和歌山県勝浦・新宮の
名物でもさんま料理が郷土料理となっているため、勝浦駅前には佐藤春夫のさんまの歌
詩碑が建っているなど、和歌山の食文化では、さんまは切っても切り離せないものであ
る。
このような背景には、『食彩の王国』にも記載があるように、「サンマ漁は紀州・熊
1
野が発祥の地で、江戸時代初期に刺網漁法が開発され漁が盛んになり、紀州の漁師が漁
場を求めて北上したことが言え、房総のさんま漁は紀州・熊野の漁師が漁法を伝え、江
戸の魚河岸にさんまが入るようになった」と記載されていることからも言えるだろう。
また、江戸中期の『俚言集覧』(文化・文政年間 1804~1829年)に、「さんま、三
馬、魚の名、サヨリに似たり、塩漬けにして江戸へ送る」と記載があることから、加工
品が紀州から江戸に送られていたことが伺える。
灰干しの製法については、『食材図典2』に、「和歌山県を中心に生産している。(
中略)さんまの塩干しには、セロファンに包んだ魚体に灰をかける灰干しという特殊な
乾燥法を使ったものもある」と記載されている。
この製法が伝わった起源は明らかではないが、京都大学の豊原治彦氏の調査結果によ
ると、1960年代に兵庫県明石において灰干し製法が行われており、その明石と和歌山で
は加工原魚が共通であったため、製法の技術交流が盛んであったことから、その製法が
伝わったのではないかとされているが、元々は約150年前の江戸時代に徳島県鳴門市の
名産「鳴門の灰干しわかめ」を発明した前川文太郎によるところが大きい。
また、1960年代から和歌山県和歌山市雑賀崎で「灰干し製法」が行われ始めたが、そ
の理由としては、その土地が四季を通じて漁が盛んな和歌浦に位置しているということ
。そして、その昔、この周辺では魚を砂に広げ、その砂の吸湿力で乾かす製法が行われ
ていたこと。そして、紀州人とさんまのつながりであり、古くは「さえら」と呼び、熊
野灘側では丸干しや寿司に用い、雑賀崎周辺では干物にされ、その日ものは将軍家献上
品とされていたため、この土地に「灰干し製法」を受け入れる土壌があったと思われる
。
なお、製法の起源である「灰干しわかめ」は、徳島県の鳴門市や里浦町、兵庫県の南
あわじ市西淡町など 鳴門海峡に面した地域において約150年以上前からはじまり、北陸
や東北地方でも古くから生産され続けてきたが、近年は草木灰の減少、後継者不足、環
境問題などで生産量が年々減少傾向であったことに加えて、 平成12年1月に施行さ
れたダイオキシン対策法で、「灰干しわかめ」に使用する灰をつくる小型焼却炉が規制
の対象になったため、良質の灰の確保が困難になり、 灰干しわかめの生産がほとんど
できない状況になった(「紀州灰干しさんま」では、伝統製法を継承しつつも、安全性
等に配慮した製品を作るため、木灰ではなく火山灰を使用している)。
また、「灰干しさんま」については上記経緯のほか、温度管理が難しく冷蔵庫が普及
する以前では不可能であったことから、紀州のさんまを扱った食文化のなかでも比較的
新しいものであることが言えるが、紀州の食文化から切っても切り離せない「さんま」
の食文化を今後も後世に伝えていく必要がある。
注:ある説では、奈良県の水産加工業者が開発し伝えたとも言われているが、それを
証明する史実はみあたらない。
参考文献:2008年『食彩の王国』扶桑社
2001年『食材図典2』小学館
2012年「京都大学豊原治彦氏の調査結果」
2005年『全国水産加工品総覧』光琳
2009年『J-B Style』JCB
4.食品の独自性
(1)食品特性
天日干しや機械乾燥と違い空気に触れずに乾燥する為、酸化を抑え鮮度を保ちながら
魚本来のうま味が凝縮される。
また、灰の中に魚を入れるため、うまみ成分を含んだ水分のみを残し、余分な水分は
均一に取り除かれるため、干物ならではの濃い味が残っている。
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(2)原材料の特徴
脂が乗って鮮度の良い状態の北海道根室沖産さんまを使用し、副原料である塩や灰に
ついても国産を使用する。
(3)原材料の使用理由
紀州灰干しさんまに適した脂がのっている鮮度の良いさんまを使用する必要があるた
め(紀州では郷土料理にあったさんまを使用する)。
(4)製法の特徴
工
程
内
容
解凍・開き作業
冷凍したサンマを自然解凍し、頭をのこした背開き(紀州開き)をする
。
冷水洗い
塩漬
冷水洗い
背開き(紀州開き)したサンマを、冷水でよごれを取り除き、樽の中で
塩水に漬け込む。その後、再度、冷水にて脂やよごれを除去する。
セロファン巻・ 冷水洗いのあと、パルプで作られたセロファンを素早く巻き、無害の火
灰干乾燥
山灰の中に給水紙、サンマを敷き詰め乾燥させる。
選別・箱詰め
灰干乾燥後、目視で選別し、紀州杉より作られた箱に詰め合わせる。
(5)品質・衛生管理基準
工
程
内
容
着替え・
開き工程
異物混入を防ぐため、帽子、手袋、マスクの着用する。
解凍したサンマは、目視で異物除去し、開き作業においては、包丁・ま
な板をアルコール除菌し使用する。
水洗い
セロファン巻
物混入を防ぐため、帽子、手袋、マスクの着用する。
各工程では、目視で異物除去をする。
乾燥
選別
目視で異物除去をする
箱詰
目視で異物除去をする
3
5.生産量
(1)全体の生産量
平成19年
生産量
210
(全体)
資料:自社資料による
平成20年
平成21年
195
平成22年
210
230
単位:t
平成23年
225
(2)該当商品の生産量(全体の生産量のなかで、「本場の本物」に該当する商品)
単位:t
平成19年
平成20年
平成21年
平成22年
平成23年
生産量
210
195
210
230
225
(該当商品)
資料:自社資料による
6.製造者(「本場の本物」に該当する商品を製造できる者)
製造者名
有限会社西出水産
従業員数
住
20
所
和歌山県和歌山市雑賀崎755-3
7.該当商品名(「本場の本物」に該当する商品名)
商品名
製造者名
小売希望価格(税込)
一匹厳選灰干さんま(3L)
6尾入り
有限会社西出水産
1,930円
8尾入り
有限会社西出水産
2,490円
10尾入り
有限会社西出水産
3,050円
12尾入り
有限会社西出水産
3,610円
6尾入り
有限会社西出水産
2,470円
8尾入り
有限会社西出水産
3,210円
10尾入り
有限会社西出水産
3,950円
6尾入り
有限会社西出水産
1,640円
8尾入り
有限会社西出水産
2,000円
10尾入り
有限会社西出水産
2,360円
一匹厳選灰干さんま(4L)
灰干しさんま(2L)
4
12尾入り
有限会社西出水産
3,080円
6尾入り
有限会社西出水産
1,580円
8尾入り
有限会社西出水産
2,040円
10尾入り
有限会社西出水産
2,500円
12尾入り
有限会社西出水産
2,960円
6尾入り
有限会社西出水産
2,120円
8尾入り
有限会社西出水産
2,760円
10尾入り
有限会社西出水産
3,400円
灰干しさんま(3L)
灰干しさんま(4L)
8.取りまとめ団体もしくは特認者
団体もしくは特認者名
(代表者役職名 氏名)
有限会社西出水産
代表取締役 西出隆一
住
所
和歌山県和歌山市雑賀崎755-3
9.識別マークの貼付と管理
認定後は基準に合致した商品のみの貼付を徹底し、年1回、審査認定機関である財団
法人食品産業センターに報告するものとする。
10.第三者認証
認定後は認定商品が基準通りに製造しているかの有無を検査すべく、和歌山県水産加
工業協同組合に依頼する予定。
11.認定後の業界活性化の展開方法
灰干の伝統を守りながら多くの人に認知度をたかめ喜んでいただける商品を作りな
がら、紀州の食文化とさんまのつながりを多くの人に知っていただく努力をする。
12.認定後の地域振興への貢献方法
紀州の食文化とさんまのつながりを多くの人に知っていただくために、行政や業界と
連携し、さんまの食文化を切り口に地域活性化をはかる努力をする。
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13.認定後、当該地域に同様の基準で製造する新たな製造者が出現した場合の連携およ
び展開方法(特認者のみ記載)
昔ながらの灰干し製法の継承を確固たるものにすべく、新たな製造者と任意団体を設
立し、継承だけでなく業界の活性化や地域活性化を視野に様々な取組みを行う。
14.参考(社会的評価)
【表彰】
(1)全国水産加工業協同組合連合会「第十六回全国水産加工品総合品質審査会」会長
受賞(2006年)
(2)感謝状(和歌山市より平成23年3月14日授与)
【テレビ】
(1)テレビわかやま「@あっと!テレわか」(2009年9月)
(2)NHK「おはよう日本」(2009年11月)
(3)NHK「NHK World」(2010年10月)
(4)関西テレビ「スーパーニュースアンカー」(2010年11月)
(5)日本テレビ「世界一受けたい授業」(2010年12月)
(6)毎日放送「ちちんぷいぷい」(2010年12月)
【新聞】
(1)朝日新聞(2010年5月23日)
(2)Fuji Sankei Business I (2010年5月5日)
(3)産経新聞(2010年4月21日)
(4)読売新聞『ふるさとの逸品』(2012年5月)
【雑誌】
(1)国際グラフ(2009年12月号)
(2)「旬」がまるごと(2009年11月号)
(3)J-B Style (2009年6月号)
(4)週刊文春『おいしいごはんの友』(2009年10月29日)
(5)ポプラ社『旬がまるごと』(魅惑の灰干しさんま)(2009年9月20日)
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