質問と回答 - 一般財団法人日本建築センター

2003年版 丸太組構法技術基準・同解説」講習会
における質問と回答
㈶日本建築センター
ログハウス協会
㈶日本建築センター・ログハウス協会では、平成15年2月∼3月にかけ東京・大阪・仙
台・福岡・名古屋の5都市において標記講習会を開催いたしました。
平成12年6月1日施行の建築基準法令の改正に伴い、平成14年5月15日に丸太組構法を
用いた建築物又は建築物の構造部分の構造方法(平成14年国土交通省告示第411号)が制
定されました。
本告示の制定に当たっては、旧告示(昭和61年建設省告示第859号)の仕様規定に加え、
旧法第38条に基づき認定された構造方法の実績を踏まえた規模や構造方法の多様化に対応
した規定や時刻歴応答解析や限界耐力計算による場合に適用すべき耐久性等関係規定につ
いての指定が行われたものとなっております。
本講習会では告示及びその運用並びに実務における技術基準の適用方法に関する解説を
行いました。
この講習会の受講者より質疑が寄せられ、講師の方々に回答をとりまとめていただきま
したので、以下にご紹介いたします。
(注:質問と回答は、講習会テキスト「2003年版 丸太組構法技術基準解説及び設計・計算例」に従っています。
)
質
問
回
1. ドーマーの規模制限で、一般に妻壁∼妻壁の大き
答
1. 構造計算を行う場合は、p.82図3.9にあるように、
さのものを見るが、4/5でなければならないの
面積が2/3以下であることのほか、長さについて
か?
は L1/L≦4/5又は W 1/W ≦4/5となっている。
5/5ではだめなのか?
つまり幅と高さのどちらかが4/5であればよいの
で、妻壁∼妻壁がドーマーというものも可能であ
る。
2. だぼの間隔は?
2. ちどり配置のだぼの、最小あき寸法は、はしあき
と同様に最低7d が必要である。最大あき寸法は、
建築物に配置されただぼ間隔の1/2程度が妥当と
えられる。
3. 壁の風圧による面外曲げを検討する場合、許容応
力度を満足していればたわみ量については
3. 解説書 p.80で、通しボルト、だぼ、補強材等を
慮の必
設けていない場合 M ≦Pb/6の確認をすることが
要はないか?
推奨されている。この確認が変形量チェックと同義
と
4. セトリングをしないことを担保する含水率はどの
程度と
えられる。
4. 気乾状態に達していれば、乾燥に伴うセトリング
えられるか?
は問題にならない程度である。気乾状態の含水率
― 21 ―
ビルデイングレター
は、15%程度とされているが、屋内で暖房設備があ
るなど条件が変われば更に乾燥することもある。ま
た、材の乾燥収縮以外にも、建設時の
間などがセ
トリングの原因となるので、セトリングがゼロとい
うことはない。
5. 告示では、開口部の大きさ等の制限がないが、計
5. 告示では、耐力壁に設けられる開口部の大きさに
算で折り合えば、4m を超える開口部も可能か?
関する規定は設けられていない。構造計算を行わな
い場合は、告示第4第三号に定める耐力壁線間隔
(6m 以下)等の規定により、開口部の幅は概ね4
m 程度が上限となると
えられるが、許容応力度
計算によって安全性を確かめる場合は、耐力壁線間
隔を大きくする等の設計が可能となるので、幅4m
を超える開口部を設けることは可能である。
6. だぼの防
処理についての規定は特にないと
え
6. 令第37条では構造部材の耐久について規定されて
てよいか?
おり、鋼製だぼについても本規定に従って適切な防
措置を行う必要がある(pp.52∼53参照)。この場
合、p.51に掲げる金物の防
措置の方法が参
とな
ろう。
7. 確認申請に添付する構造計算書類はどこまで必要
7. 構造計算書に必要な項目は「3.7 構造形式別の
なのか?
計算法」に記載してある。具体的な中身は構造計算
例を参照されたい。なお、構造計算例では、必ずし
も例として示す必要がない部分は省略していること
があるので注意されたい。
8. 2階部分に丸太組構法を用いた場合、含水率20%
8. 告示第2第三号の規定に基づき含水率を確認する
以下とあるが含水率の検査表を確認申請に添付する
必要があるが、確認に際しての具体的な取扱い(検
必要があるのか?
査時期及び検査方法等)については、建築確認窓口
の建築主事又は指定確認検査機関に確認されたい。
9. 1F 部分に木造等で斜線のようなログ構造とは別
なもので部屋を合わせることができるのか?
9. 以下の設計方法が
えられる。
①両構造をエキスパンションなどにより分けて別々の
このような構造にもできるのか?
建築物とすれば建築が可能。
②きわめて軽微な構造であれば、木造等に水平力を負
担させずに丸太組構法の構造とすれば建築が可能。
ビルデイングレター
― 22 ―
10. 旧法第38条認定の丸太組構法の仕様については、
10. 旧法第38条の認定を受けた構造方法(仕様)につ
一度評価を受けた設計法や施工方法等の技術的な内
いても、平13国交告第411号に適合するものは有効
容については、旧法第38条失効後も引き続き有効で
である。なお、改正建築基準法においては旧法第38
ある」とあるが、国交告第411号に適合する限りに
条認定時と荷重外力及び許容応力度の数値が異なっ
おいて有効と解してよいか?
ているので、構造計算に係る範囲は現行の規定(令
第3章第8節)に拠ることが必要である。
11. p.18 3行目
イの規定について、アンカーボル
11. 第2第二号ただし書の規定に基づき、イ∼ハに定
トの定着長さは計算による緩和規定がないのはなぜ
める接合と同等以上に存在応力を伝達することがで
か?
きることが確かめられた構造方法は、採用すること
が可能である。
12. p.22 下から p.23にかけての告示第4第三号の規
12. 告示第4第三号の本文の規定に基づき、「丸太材
定のロで、「イに掲げる建築物以外の建築物の丸太
等は、これらに接する部材に円滑に存在応力を伝え
材等の断面積は、105cm 以上1400cm 以下」と、上
ることのできる形状」とすることが必要である。
下に接する部分の幅の規定がないが、下図のよう
従って、原則として上下部材間の応力伝達が円滑に
に、平屋建てであれば、交点部分のみで乗っかって
行われるよう丸太材相互が接するように積上げる方
いて、それ以外の壁面部は、上下の材間にスリット
法(図2.9参照)が適切であり、本告示ではスリッ
があいているような設計をすることは可能か?
ト状の耐力壁は対象外となる。
ただし、だぼのせん断強度算定式における D は、
スリットを含まない材せいを D として用い、だぼ
1本あたりのせん断剛性を計算する場合の dyはス
リットを
慮した値をとる。なお、交点部分の断面
でのめり込みの検討は必ず行う。
スリット高
D
13. 丸太等の断面積(p.23)について1400cm の根拠
13. 丸太材等の断面積の規定は、旧告示(昭61建告第
は?
859号)制定前の建設大臣認定取得実例の実績を踏
まえて定められたものである。
14. p.24 上の図について※印の部分がすき間か?
14. 貴見のとおりである。
重なり幅となっているが、※印のすき間も重なって
いると
え、長さにカウント可能という解釈でよい
か?
― 23 ―
ビルデイングレター
15. p.25 図2.12 耐力壁の高さについて図示の A、
15. 第4第四号の規定では、階数が1の建築物の耐力
B 部分についても、C の壁の高さ h をカウントし
壁の高さを算定するに当たっては、「土台等の上端」
て0.3h 以上の幅が必要か?
A、B 部分は、実質
から「耐力壁と屋根版が接する部分のうち最も高い
の壁高さが低いので、上記では制約が厳しすぎるの
部分における耐力壁の上端」までとされており、
ではないか。
A、B の耐力壁の幅を算定する場合についても当該
高さを用いることとなる(図2.12参照)。従って、
当該高さの0.3倍未満の幅とする場合は、規定上耐
力壁とはみなされない。
16. 2.5 耐力壁等
p.25 片流れ屋根でこの部分を
木造にすることができるのか?
16. 当該部分を木造とすることは可能であり、耐力壁
できるとすればそ
の高さの算定の
え方も、指摘のとおり丸太組部分
の時の耐力壁の高さは丸太組部分が4m を超えな
のみが対象となる。ただし、「第7小屋組等」の規
ければよいのか?
定により、当該木造部分についても風圧力等に対す
る安全性の検討を行う必要がある。
17. p.26 五において下記のような耐力壁により囲ま
れた部分の
17. 可能である。また、耐力壁線相互の距離が10m
え方は可能であるか?
を越える場合又は耐力壁線によって囲まれる部分の
耐力壁線相互の距離6.0m 以下、水平投影面積が30
水平投影面積が60m を超える場合についても、同
m 以下、また耐力壁線相互の距離が10m 以下、水
様の
え方である。
平投影面積が60m 以下の場合についても同様の
えでよいか。
18. 木造は床倍率を計算するため大きな吹き抜けが作
18. 床倍率を用いた検討は、住宅の品質確保の促進等
れないが、丸太組はチェックしないためにできる
に関する法律(品確法)に基づく住宅性能表示制度
が、これはなぜなのか?(枠組にも同じことが言え
に係る告示によるものである。建築基準法上は、木
るが。)耐力壁線6m、面積30m の制限があるため
造(在来軸組構法)や枠組壁工法について、大きな
なのか?
吹き抜けを制限しているわけではない。
19. p.28 耐力壁交さ部のただし書きで交さ部の形状
はテキスト以外にはどのようなものが可能か?
19. 例示されている交さ部の形状は、補強した場合で
具
体的に下記の仕口では不可であるか?
あっても十分な耐力を確保するのは難しいと
れる。なお、テキストに掲載されている形状の例以
外にも適切な補強方法が えられる。
ビルデイングレター
えら
― 24 ―
20. p.37 耐力壁がオーバーハングした場合、構造計
20. 2階部分の耐力壁がオーバーハングした立面形状
算で安全が確かめられれば認められるか?
の場合は、限界耐力計算による安全性確認が必要と
なる(p.60、4∼5行目参照)。
21. p.37のだぼのせん断強度の計算式中に、D と D
21. D → D、」に訂正されたい。
があり、D のみしか説明がない(告示の p.309の表
においても同じ)が、D は何か?
22. p.38「第十二項の二」アンカーボルトや通しボル
22. アンカーボルトや通しボルトを採用する際の施工
トが、だぼの代替品として使用できると書かれてい
時の遊びがある場合について、最終的に必要となる
るが、アンカーボルトや通しボルトは、水平力に対
降伏耐力は発揮されると
して有効でないように思えるが。ボルトはボルト径
以上に遊びが大きい場合は、この限りでない。
えられる。ただし、必要
よりも大きな穴をあけて施工するので、初期剛性が
期待できない。
23. p.45だぼ間隔45cm 未満の場合は1本だけを有効
23. ○印だぼを耐力にカウントしないことには、①だ
とするとあるが、p.265の○印部分は耐力にカウン
ぼ間隔が450mm 未満であるものと、②丸太組耐力
トしないだぼとあり、どちらが正しいのか?
壁そのものが耐力壁と評価できない(0.3h 未満等)
ものである理由がある。
それぞれのだぼについて内容を確認されたい。
24. 第5
床板について、シックハウス対策として合
24. 通常の野地板の仕様では、p.69の床倍率の表でも
板を望まない消費者が多く、野地板(ムク材)を張
わかるように、水平構面として同等の性能を確保す
るケースが多いが、この場合の対応方法はあるの
ることはできない。野地板同士をだぼで接合する、
か?
幅広の板材を接着したパネルを用いる等により、せ
ん断剛性を高くすることは可能である。ただし特別
な計算又は実験が必要となる。
25. p.46 2.6床板について、2F の床材 は12mm の
25. 質問24の回答と同様。
構造用合板又は構造用パネルとなっているが、40
mm の杉板は同等以上の耐力を有するものになるの
か?
26. 第8
防腐措置について、薬剤塗布を望まない消
26. 解説で示されているように、該当部分の有効な防
費者が多い。公庫では薬剤塗布をしなくとも樹種を
腐措置を講ずる方法は、現状では薬剤による防蟻、
ひのき、ひば等にすれば防腐材とみなされるが、対
防腐処理によらざるを得ない。ただし地域によって
応方法はあるか?
は薬剤処理と同等の方法、例えば JAS の耐久性区
分 D1の樹種を用いて、かつ、構法上の工夫を行う
ことにより支障がない場合もある。
27. ①耐力壁がオーバーハングした場合、②同一階で
27. ①、②とも限界耐力計算によって安全を確認すれ
の混構造:丸太組と P&B、P&P のようなプラン
の場合、限界耐力計算をすれば認められるか?
ば建ててよい。
また、同一階での混構造のうち、第1第二号のた
だし書きにあるような混構造は、許容応力度計算で
安全の確認を行えばよい。
― 25 ―
ビルデイングレター
28. 丸太材の基準強度(p.62)について、オウシュウ
28. p.16表2.1では、S-P-F にオウシュウアカマツも
アカマツの基準強度は S-P-F の基準強度の数値で
含まれており、同じ基準強度の数値を採用すること
よいか。
は可能である。
29. だぼの算定の方法で、丸太組壁が傾斜している場
29. 耐力壁が X 軸 Y 軸に対して斜めになっていると
合はどのように算定すればよいか。この部分のだぼ
きの耐力は、cosθではなく、cos2θを乗じるのが
の本数は1/ 2本で計算するのか?
適当である。従って、45度方向であれば1/2本と
だぼの釣合
して計算することができる。
い量の算定の方法について、形態が不整形の場合、
4分の1法においては、雁行した平面形態であっ
このような場合の1/4は?
また、六角形のような場合の1/4は?
ても、最も外側から4分の1をとる。4分の1法の
また、
適用が不適当と
だぼは2/ 2本でよいのか?
えられる場合には、偏心率を計算
するとか、極端にくびれているなど、建物を分割し
て
える方が適当であれば、各部で釣合い良い配置
を
える。
4分の1法では六角形は想定していない。偏心率
を求めるのが望ましい。偏心率の計算でも、だぼ本
数を X 軸 Y 軸方向に振り分ける必要はある。
30. p.65 下から4行目で、Fc=23.5N/mm を設定
30. 従来から実績のあるせん断強度を用いており、こ
して、告示第4第十二号のだぼのせん断強度式を導
れは改正前の施行令に定められていた許容応力度を
いているとあるが、Fc=23.5という値は、p.62の
用いているためである。構造計算としては、現行基
表3.2で最も高いベイマツの Fc の値よりも高い。
準の数値を用いる必要がある。新しい木質構造設計
これはなぜか?
規準の支圧強度も樹種群の違いはあるが、数値とし
もし23.5で正しいとしたら、p.65
の Fc 及び F に用いる「繊維方向の圧縮強度」は、
ては現行基準の Fc と同様である。
新しい木質構造設計規準における支圧強度の値を用
いる、とすべきではないのか?
31. 横架材の曲げ、せん断(p.70)について、複数本
31. そのとおりである。
の丸太材等のはりの場合にボルト補強(段数全てボ
通常のボルト補強程度では、一体化されたほどの
ルトにて締め付けて)を行う時も、1本当たりの断
曲げ剛性を確保することはできない。
面係数に本数を乗じたものをはり全体の断面係数と
して計算するのか?
32. 全体転倒の検討(p.75)について、フレームごと
32. 各フレームに浮き上がりを生じさせないために、
に行うのか、建物全体で行うのか、両方か?
フレームごとに行うことが基本となる。
36. ドーマーの大きさ等には告示上の制約はないと
36. 告示上では特にドーマーの規模については規定さ
えてよいか?
れていないが、本解説書ではドーマーを含む小屋組
との相対的な規模の関係により、⑴特別な構造計算
を行わなくても設けられる場合と、⑵構造計算を行
うことにより設けられる場合についての規模の目安
を図3.9にそれぞれ示している。
37. 桁の端から端までドーマーを設ける場合等は現基
37. 桁の端から端までドーマーを設ける場合等は、
準法では認められないのか?
36. の回答⑵の規模の目安を超えるドーマーを設け
る場合は、原則として小屋裏ではなく耐力壁を有す
ビルデイングレター
― 26 ―
る階とみなして構造計算を行い安全性を確認するこ
ととなる。
38. 小屋裏利用2階建て定義を教えてほしい。(ドー
38.
マーの扱いはどうなるのか。
)
小屋裏利用2階建て建築物」とは、2階部分に
耐力壁を設けずに当該部分を小屋裏とした2階建て
の建築物をいう。この場合、ドーマーを小屋裏に設
ける場合は、原則としてドーマー部分の規模が図
3.9に示す範囲に納まることが必要である。ただし、
当該壁面部分を耐力壁とみなして構造計算を行う場
合は、小屋裏ではなく耐力壁を有する階と取り扱わ
れる。
39. p.81 3.6.4 ドーマーの設計について、⑴特別
39. ドーマー壁は、妻壁の直上に設けることは構わな
な構造計算を行わない場合、⑵構造計算を行う場
いが、丸太組の壁を妻壁と一体的に立ち上げること
合、図3.9では⑴、⑵の両方のケースで、妻壁から
は、この階に耐力壁を設けることとなり、認められ
ドーマー壁が立ち上がっている。ドーマー壁は妻壁
ない。
と一体としてもよいのか?
40. 構造計算によらないで、必要だぼ本数のみで設計
40. 構造計算によらない建物でも、p.81図3.9⑴の範
できる建物(小屋裏利用2階建)のドーマーの構造
囲で p.82図10の仕様を参
について、pp.81∼82の構造にすればよいか?
とができる。p.82にあるドーマー部分及び周辺の構
ここのドーマーの壁は妻壁から立ち上げてよいの
造計算を行えば、p.82図3.9⑵の範囲でドーマーを
か、また丸太組で立ち上げてよいのか。
設けることができる。
ここのドーマーの壁は軒ログの上から立ち上げて
よいのか?
にドーマーを設けるこ
ドーマーが切妻の両側にある場合は、片面に対し
またログで立ち上げてよいのか。
て pp.81∼82の構造にすればよい。
ドーマーが切妻の両側にある場合は、片面に対し
ドーマー壁は、妻壁の直上に設けることは構わな
て pp.81∼82の構造にすればよいのか?
いが、構造的にはドーマー受け材を介して妻壁とは
別に設ける。
41. p.86 混構造建ての中の特定建築物の規定を教え
41. 1階部分の RC 造又は S 造について、特定建築
てほしい。
物を定める規定は昭55建告第1790号に定められてい
る。混構造を対象としたルート2又は3の構造計算
が必要となる場合の内容については、p.59の3.1.4
節を参照されたい。
42. p.87 3.7.7 ⑶留意事項「同一階に……確認す
る必要がある。」について、⑴:この4行の文章は、
42.
⑴必ずしも丸太組の壁のみで負担しなければならない
「枠組壁工法等の耐力壁が先行破壊しないことを確
とは限らない。枠組壁工法の壁が先に破壊しても、
認すれば、計算上、丸太組構法耐力壁のみで外力を
周囲の丸太組の壁や柱等で鉛直荷重が支持できるこ
負担できるように設計しておけば、安全上十分であ
とを確認する。
る場合がある。」と解釈してよいか。
⑵水平耐力を失うこと、又は設計上水平耐力を失った
⑵: 在来軸組構法の耐力壁の破壊」及び「枠組
と見なされる程度に変形が生じたことをいう。通
壁工法の耐力壁の破壊」とは、どのような現象をさ
常、水平耐力の最大耐力から80%にまで耐力が低下
すのか。
したところを指す。
⑶: 枠組壁工法等の耐力壁の破壊」があるとす
⑶だぼ接合部がせん断耐力を失うような状態、又は壁
ると、
「丸太組構法耐力壁の破壊」という現象もあ
のせん断変形に伴う圧縮で壁が座屈して面外に孕ん
― 27 ―
ビルデイングレター
るのか。もしあるなら、それはどういうものを指す
だ状態。
のか。
43. p.89 設計・計算例における小屋組について
43. 小屋組について、和・洋についての制限はない。
設計例についての小屋組は和小屋か、洋小屋か。
構造的に安全な設計が行われていれば、様式の選択
妻部で下部に耐力壁のある部分の妻壁において、小
は自由であると
える。小屋ばり(登りばり)等も
屋伏図では小屋束(又は小屋柱)に母屋をのせて垂
有効な設計方法であると える。
木にて小屋組を形成しているが、下図のような小屋
ばり(登りばり)等は
えなくても可能か。
(特に
広間等を用いた時に)
小屋ばり
(登りばり)
44. p.102⑶たわみ制限について、雪長期、雪短期の
たわみ制限は設計者の判断でよいのか?
44. 設計者の判断による。
どこかに
日本建築学会「木質構造設計規準・同解説」等を
規定があるのか?
参
45. p.106⑻1) について、地震力算定用重量の算定
で1階の外壁はすべての高さの部分まで
にされたい。
45. ご指摘のとおりである。
慮されて
いるのは、壁脚部の水平せん断応力により必要だぼ
本数を計算する必要があるからという解釈でよい
か?(他の構造では、壁の上1/2の部分の重量カ
ウントでよいが。)
46. 仕様規定の場合(p.108)について、だぼ量充足
46. よい。 耐力壁の配置が偏っている場合には地震
率を用いた釣合い良い配置の確認は地震力のみの検
力等の水平力が作用した際に構造的なねじれが生
討でよいのか?
じ、建物が大きく変形したり倒壊したりするおそれ
風圧力検討は必要ないのか?
があるため、釣合い良い配置が必要になる。1/4
分割によるそれぞれの側端部のだぼ量充足率は、通
常は地震力の検討で包括できると える。
ビルデイングレター
― 28 ―
47. 設計例2(p.117)及び設計例5(p.255)で屋根
47. 計算例では、剛床と仮定しているが計算を省略し
を剛床としているが、床倍率1.0以上のチェックが
ている。実際の構造計算では剛床としての屋根版の
不明解である。構造用パネル貼りだけでは床倍率
検討が必要である。ただし、質問のように床倍率に
1.0以上と出来ないと
よって剛床・柔床が決定されるとは限らない。屋
えられるがどうか?
根・床が剛床となるか、柔床となるかは水平せん断
応力の大きさと屋根・床の剛性(水平せん断耐力)
の関係で決まる。
解説書では水平せん断応力に比べて水平構面剛性
がゼロに近い場合を柔床と呼んでいるが、目安とし
て床倍率が屋根では1.0以下程度、床では1.2以下程
度とし、柔床としての設計を許容している。
48. 設計例2(p.138)で転倒の検討を行っているが、
48. 本設計例の場合、だぼのせん断応力についても余
転倒に関してラグスクリューの引き抜きで抵抗する
裕があり、引き抜き応力についても小さいため、指
仕様となっている。本設計ではラグスクリューをだ
摘のような複合応力状態の検討は省略している。
ぼとしてもせん断抵抗させているため、終局時想定
では所定の引き抜き耐力を発揮しないことが
れるが、
一般的にも丸太組構法では問題となることはあま
えら
りないが、引き抜き応力が特に大きくなる場合等は
慮の必要はないか?
注意する必要がある。
49. 設計例2(p.140)ですだれ壁の検討を行ってい
49. 計算例は紙面の関係ですべての詳細を載せていな
るが、座屈長さとして開口高さを取っているが、座
いが、直交梁と丸太組構法の壁は拘束効果のある接
屈長さとしては直交ばりの下端から土台天端の長さ
合(梁の両端は L 型金物にてボルト接合等)を前
が適当ではないか? また直交ばりは耐力壁との拘
提としている。また、土台と丸太組構法の壁が一体
束はないようだが、この場合でも有効と見なせるの
で座屈すると仮定し、土台下端(コンクリート基礎
か?
天端)までを座屈長さとしている。
実際の設計に当たっては、納まり等を勘案して仮
定を行う。
50. p.156断面図について、RC 造で柱が500角程度あ
50. フーチング厚については300mm に訂正。なお、
るのに、フーチングせいが木造並みの150しかない
のは、主筋のアンカーを
地中梁の表現については下図に示す。
えるとおかしい。また、
地中ばりの線がない。
51. p.168∼構造計算全般について、小屋裏利用の2
51. 構造計算上は2階建て扱いとする。従って剛性率
階建て丸太組構造を RC 造の平屋に乗せた場合、混
は算出する必要はない。地震力の算定(全体)等を
構造の3階建ての呼び名はあっても、構造計算上は
参
2階建てとするのが基本のはずである。よって p.
171の地震力の算定は( )内の数字だけでよく、3
階として表現するのは誤解を招くためにも避けたほ
うがよいのではないか。以下3階の表記は構造計算
上不適当と思われる。p.204の木造部分の剛性率に
までに次に示す。
⑸ 水平力の検討と必要だぼ本数の算定
2) だぼのせん断剛性及び層間変形角の算定
だぼ1本当たりの層間変形角 1/65(実験により確認したものとして仮
定する。)
7) 地震力の算定(全体)
①建物重量の算定
― 29 ―
ビルデイングレター
も、小屋裏と1階の剛性率をどうやって求めるかな
どの矛盾が生じている。
階
単位重量(kN)×長さ(m)
又は面積(m )
項目
Wo
(kN)
小屋 屋根
0.70×9.8×13.46
裏3 妻壁
0.45×9.80×3.44×(1/2)×2 15.17
2
1
W
(kN)
ΣW
(kN)
92.34
間仕切壁 0.45×9.80×3.44×(1/2)
7.59
外壁
0.45×1.5×6.0
4.05
外壁
0.45×2.0×1.0×(1/2)×2
0.9
手
0.45×13.0×1.10
6.44
3階床
1.20×(70+12)
98.4
丸太壁
0.68×50.0×3.105
105.57
間仕切壁 0.45×8.0×3.105
11.18
手
0.45×11.0×1.10
5.45
2階床
4.75×(84+12)
大梁
3.24×45.0
145.8
小梁
2.52×10.5
26.46
柱
6.00×6×4.20×(1/2)
75.6
壁
3.60×46.0×4.20×(1/2)
347.09 347.09
456
347.76
間仕切壁 0.45×12.0×3.60×(1/2)
9.72 1061.34 1408.43
②地震力の算定
Co=0.2 Z=1.0 Ci=Z・Rt・Ai・Co
Qi=Z×Rt×Ai×Co×ΣWi=0.2×Rt×Ai×ΣWi
T=h(0.02+0.01α)=7.605×(0.02+0.01×4.20/7.605)=0.194
<Tc=0.6 Rt=1.0
Ai=1+(1/ ai-ai)×2T/(1+3T) 2T/(1+3T)=0.364
ΣW >2(W +W )より ΣW =2(W +W )として
Wi
(kN)
階
小屋裏3
2
ai
347.09 347.09
1
1
ΣWi
(kN)
-
0.5
Ai
eQi
(kN)
Ci
1.333 0.267 92.67
694.18
-
-
-
-
1061.34 1408.43
-
1
0.2
281.69
9) 風圧力に対して必要なだぼ本数の算定(全体)
階
だぼの
せん断
外力
耐力
(kN) (kN)
2 10.214 71.1
X 方向
Y 方向
必要だぼ本数
71.1/10.214=6.96
7本
外力
(kN)
必要だぼ本数
100.96
100.96/10.214=9.88
10本
10) 地震力に対して必要なだぼ本数の算定(全体)
だぼの
せん断
階 耐力
外力
(kN) (kN)
2 10.214 92.67
X 方向
Y 方向
必要だぼ本数
92.67/10.214=9.07
10本
外力
(kN)
92.67
必要だぼ本数
92.67/10.214=9.07
10本
二次設計
5) 層間変形角と剛性率の検討
②2階丸太組構法部分
Ln:必要だぼ本数 Ld:設計だぼ本数 δ=(h/65)×(Ln/Ld)cm rs=h/δ
方向
ビルデイングレター
― 30 ―
Ln(本) Ld(本) Ln/Ld h(cm) δ(cm)
rs
Γs
Rs
<1/120 >0.6
X
10
20
0.5
310.5
2.39
129.9 1/129.9
1
Y
10
25
0.4
310.5
1.91
162.6 1/162.6
1
52. p.179∼水平構面の検討について、奥行き長さ L
52. 奥行き長さについては、木造軸組構法住宅の許容
が建物規模より長い根拠は何か教えてほしい。
応力度設計(日本住宅・木材技術センター編)を参
照。
(水平構面の検討については、屋根面と床面を
合算することも可能)計算例は削除する。なお、小
屋裏階床伏図、並びに、小屋伏図の寸法10500の寸
法を12000に訂正する。
53. p.191 丸太壁と RC 造接合部の検討として不十
53. アンカーボルトと通しボルトの納まりを概略的に
分(概略図も含め)ではないか?
示したものである。本設計例では引き抜きが生じな
い。
54. p.189 壁量の検討①②及び p.197以降の二次設計
54. 1階 RC 造部分、並びに、基礎部分ついては RC
については疑問がある。フレーム内の壁も雑壁とし
規準による。
(RC 造部分は削除する。)
ているが、柱断面積より雑壁断面積が多いのに壁量
算定のみ雑壁を評価し、応力解析時に柱のみで評価
し、偏心が生じないとしているのは問題があると思
う。現行の設計では X2通りの壁を雑壁とする場合
は壁量としては評価できないため、Y 方向はルー
ト1の壁量は不足するはずである。Y 方向では結
果としてルート2-1を採用しているが、p.203の①
の層間変形角が1/389では、混構造の計算仮定であ
る1階が非常に剛である(人工地盤的)ことからは
ずれている。2-1の計算をしても、鉄骨造程度か
それ以下の層間変形角(1/389)であれば、Ai の
算定にも疑問を生じることになる。計算例は耐力壁
を
慮したルート1(結果として偏心率>0.3)を
とることだけを示した方がよいのではないか。
55. p.203 5)層間変形角の計算で、②2階丸太組
55. 特別な実験によりだぼの許容耐力時のせん断変形
部分で、1段あたりのだぼの変形角を1/50として
角が1/50(修正版では1/65)であることを確認し
計算しているが、p.66の解説に従うと、
たという想定。
として、
=3mm
/ =3/135=1/45の誤りではないか?
これで計算すると層間変形角は1/112.7となり、
NG となる。
56. pp.205∼251の 設 計 例 全 般 に お い て、面 材 釘 が
56. 本設計では N50を使用する代わりに釘太さ、打
ZN40となっているが、N50ではないか?
ち込み長さにおいて同等の耐力が期待できる ZN40
を使用して設計を行った。(ZN40は亜鉛メッキ釘で
あるので防
(参
効果がある。)
)
合板を側材とする場合の釘の一面せん断式より
長期許容一面せん断耐力 P=6.5ρp1.5t0.75dh1.7
ρp=0.32、t=12mm として、
N50の場合は dh=6.60mm より P=187N
ZN40の場合は dh=7.14mm より P=215N
長期許容一面せん断耐力の前提条件より、釘長さは
― 31 ―
ビルデイングレター
側材厚の3.5倍以上かつ主材への打ち込み長さが釘
径の9倍以上なので、ZN40の耐力は低減して算定
する。
釘長さは側材厚の3.5倍以上→12×3.5=42.0mm
に対して実際は38.1mm
低減率=38.1/42.0=0.91
主材への打ち込み長さは釘径の9倍以上
→3.33×9=30.0mm に対して実際は26.1mm
低減率=26.1/30.0=0.87
よって 不 利 な 方 の 低 減 率0.87を 採 用 し て215×
0.87=187N
以上より N50釘を使用した場合と同等の耐力である。
57. pp.226∼227の2)座屈の検討について、
57.
Ⅰ
Ⅰ
①と③の検討内容が数値的にも同一内容となって
いる。
Ⅱ
③の検討に関しては削除とする。
Ⅱ、Ⅲ
本来の座屈長さとしては指摘のとおりであ
る。本設計では開口上部は梁として丸太積み13段と
検討ならば、座屈長さ=4300mm ではないだろう
して扱い以下のように修正する。棟梁はこれを支え
か。また、Y1あるいは Y3通りの検討ならば、座屈
る丸太交さ部で支持するものとして、交さ部から長
2700mm ではないだろうか。
さ1m 以下の範囲にある耐力壁について全面横圧
Ⅲ
①において、p.71の解説文によれば、Y2通りの
③については、座屈長さ=4300mm を採るべきで
縮に対する検討を行うと共に、開口上部まぐさの曲
はないだろうか。座屈長さについて教えてほしい。
げ検討を行う。以下に検討例を示す。
最も不利な X3通りと Y2通りの交さ部で検討す
ると、交さ部長さ2.6m として Fc⊥=2.21N/mm
なので、
長期許容応力度は
(79×2600×2.21)×1.1/3=166kN
積雪時短期許容応力度は
(79×2600×2.21)×2/3×0.8=242kN
また交さ部の負担力は pp.216∼219の表中の数値よ
り
長期鉛直力は34.5kN<166kN
積雪時短期鉛直力は54.6kN<242kN なので交さ部
で支持可能となる。
また Y2通り開口上部まぐさの曲げ検討用の荷重
は、p.242の母屋の検討と同様で Zreq=2106cm
よって、丸 太 重 ね 梁9.5cm×12.9cm×8 段(Z=
2108cm )以上で OK ある。
58. pp.232∼233の7)水平構面の許容耐力について、
58.
Ⅰ
Ⅰ
床倍率=0.7の許容耐力は0.7×1.96=1.37kN/m
だが、X1通り、X2通りの必要耐力が1.45kN/m と
なっており、許容耐力を超えている。
Ⅱ
屋根に関しては柔床を想定している。下部の壁組
に対して十分にせん断力が伝達されればよい。
Ⅱ
本設計では、屋根版は Y 方向において棟頂部の
p.233にて、屋根の接合部のチェックをしている
釘のせん断のみで抵抗している想定で接合部の設計
が、納まりから Y 方向の屋根版がスライドするよ
を行っている。また妻壁を内外から垂木で挟み込ん
うである。水平力の伝達はどのように行っているの
でルーズ穴のボルトで締める設計を行っており、妻
ビルデイングレター
― 32 ―
か教えてほしい。
壁上部では遊びが少なく、ボルトのせん断により妻
に水平力が伝達される。
59. p.255 下から2行について、
59.
①30%負担したら、何がどう安全なのか。
①余力として配置した面材耐力壁が仮に30%の水平力
②丸太組構法耐力壁に100%外力を負担させた場合、
を負担したとしても、面材耐力壁及び周辺部材が許
枠組壁工法耐力壁は撤去してもよいのか、悪いの
容応力度設計範囲内で安全であることを確認してい
か?
るという意味である。
もし撤去できないなら、この枠組壁工法耐
力壁はどのような構造上の機能を担っているの
②設計者の判断で撤去しても構わないが、設計者の建
か。
築物に対する安全の
え方による。
ただし、鉛直力の支持方法については別途
慮が
必要である。
60. p.287 設計例5の中程に、
「本建築物には ドー
60. 本建築形態については、告示・解説書において
マーの規模制限は無い。
」の記述があるが意味が不
ドーマーに関する制限を設けていないことを記述し
明である。
ている。設計するドーマーの規模については、設計
者が安全を
慮した上で決定するという意味であ
る。
参
として、解説書 pp.81∼82の小屋裏利用2階
建てにドーマーを設置する場合の規模制限に準じ
て、短辺あるいは長辺のどちらかの制限を目安にす
るか、面積の制限を目安にするのが望ましいと
え
る。
61. p.281 設計例5で水平構面の
察について検討
61. 吹抜け部分も含めて床を剛床として設計してい
があるが、変形追従性の確認の必要はないのか?
る。従って、質問のような水平構面のせん断変形角
剛床柔床混在仮定の場合は変形追従性を確認の必要
の検討は不要である。
があると思われる(p.84)が、それには該当しない
のか?
62. トイレ部分等の耐力壁について、図示部分の袖壁
62. 交さ部の突出を含んで0.3h の壁長さが確保でき
が200mm 確保できない場合は、当該壁は耐力壁と
ること、開口部周囲の通しボルト等による有効な補
して認められないのだろうか?(扉巾が、700mm
強、その他告示第411号の内容に適合すれば耐力壁
の場合)
として評価できる。
ただし、一般的な建築物形状の設計とはならない
と
― 33 ―
える。
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