登山競技 項目別講評と審査報告

平成 24 年度
大分県高等学校新人登山大会
登山競技
くじゅう山系
項目別講評と審査報告
10 / 27:竹田市直入総合運動公園ドイツ村 開会式、ペーパーテスト、幕営審査
10 / 28:岳麓寺~柳ヶ水~入山公廟~大船山~段原~鉾立峠~朽網分かれ~沢水
10 / 29:竹田市直入総合運動公園ドイツ村 講習会 閉会式
以下の1~10の項目について審査しました。
1
体
力(30点)
基礎体力が不足している隊があります。男子の場合、 15 キロの荷物を背負って十分余裕のある登
山ができて欲しいところです。自分のペースで歩ければよいのですが、大会では全体のペースに合わ
せなければなりません。そこが精神的に負担となり、思わぬバテにつながります。練習山行では、あ
えて先頭の先生に乱れたペースで歩いてもらうのもよいかもしれません。早いペースになったり、遅
いペースになったりしても、隊列を乱さず、笑顔で歩けるぐらい、タフになりましょう。
[審査内容]
登りを中心とした 10 カ所の定点審査。
[よかった隊]
2
A隊・C隊
竹田
歩行技術(10点)
走らない、飛ばない、スリップしない。岩場では三点確保。これらが歩行技術の基本となります。
今回のコースでは、ガレ場が何カ所かありました。浮き石だらけの場所では、瞬時に足場を決める
判断力と、若干足場がぐらついてもバランスを保つだけの足の筋力が必要です。くじゅう山系ではガ
レ場だけでなく、滑りやすい黒土も多いので、数多くの山行をこなし、実地で経験を積みましょう。
ちなみにパッキングバランスの悪い人が若干名見受けられました。ザックのぐらつきはスリップや
転倒の原因にもなります。パッキングは下の方に軽いものを、上の方に重いものを入れると疲れにく
くなります。しかし、きちんとパッキングしないと、上の方が重いためぐらついてしまいます。今回
は、テントの撤収に手間取り、パッキングがおろそかになってしまった人がいたようです。素早く、
丁寧なパッキングができるように練習しておきましょう。
[審査内容]
下りを中心とした5カ所の定点審査。パッキングのバランス、軍手の着用、ザックの記名。
[よかった隊]
3
装
A隊・C隊
竹田
備(10点)
市販のツェルトには「○人用」と書かれています。チームの人数は4人ですから、「2人用」のツ
ェルトであれば2つ必要です。使い方もしっかりと把握しておきましょう。
大会では、チームが識別できるように、雨具であっても、胸の部分にしっかりと学校名を明記して
おく必要があります。その際、審判にも見やすいよう工夫してください。個人名は、見えない部分で
結構ですから、ガムテープにでも書き込んで雨具の上下に貼っておいてください。こうした大会や山
小屋の中など混雑する場所では、道具を間違えられてしまうことは致命的です。(けれどもけっこう
あるやに聞いています)そのためにも名前を書いておくことが大切です。また、遭難した時にも、ど
この誰かがすぐに分かると、救助が迅速に行えます。
防寒着は必ず防水しましょう。ウィンドブレーカーは、その名の通り防風ジャケットであり、防寒
具ではありません。防寒具にはウールや化繊素材のセーターやフリースを用意しましょう。ダウンは
軽いため一流の登山家でも愛用している方は多いのですが、濡れると保温力を失うというデメリット
があります。そのため、こうした基本の「き」を確認する大会では防寒着としては認めないことにな
っています。注意してください。
地形図は必ず防水しましょう。防水ケースが破れている人がいました。市販の防水ケース(マップ
ケース)は四方が破れやすいので、セロテープやガムテープなどで補強しておくことを勧めます。本
コースを赤線で、エスケープルートやサブルートを青線で引いておくのは基本ですが、エスケープル
ートが本コースとつながっていない人がいました。エスケープルートは、何かトラブルがあった時に
下山する道筋です。もちろん本ルートとつながっていなければなりません。地図には磁北線も必ず引
いておきましょう。磁北線の意味はほとんどの人が理解できていました。
予備食の分量は一日分です。どのチームも若干少ないような気がします。非常食は緊急時用なので
調理不要のものを準備しますが、予備食は停滞時に用いるので火器を使用する食材で可です。天候が
悪く、一日テントの中で待機する場合を想定していますから、朝食・昼食・夕食に十分な量を持参し
てください。
先輩から受け継いできて、長い間替えていないのではないかと思われる修理具を使っているチーム
がありました。ガムテープなどは定期的に交換したいものです。また、張り綱の予備やペグの予備も
準備しておきましょう。
[審査内容]
<共同>
<個人>
[よかった隊]
4
ツェルト(使用方法)、燃料、予備食、ラジオ(予備電池・絶縁)、修理具
雨具(記名)、防寒具(防水済)、地形図、細引き、非常食
A隊・C隊
竹田
設営・撤収(10点)
今回の設営場所には、各チームの設営場所が分かるように、区画を示すロープが張られていました。
インターハイではこうした区画があります。ポールをテントに差し込む時に、ポールが区画をはみ出
すと他の隊に迷惑をかけてしまいますので注意しましょう。設営は、区画から出て整列した時点で完
了と見なします。終了10秒前には整列完了しておきましょう。その際、軍手を外しておくことも忘
れないようにしましょう。
今回は、どのチームも設営・撤収が遅いように感じられました。確かにペグが入りにくく、練習通
りにはいかない焦りもあったのでしょうが、とにかく見ていて不慣れな印象が残りました。荒天時に
は一刻も早くテントの中に入って暖をとりたいものです。チームで強力して、声を掛け合い、どんな
状況でも 10 分以内で設営・撤収が完了するように練習を積んでください。
撤収時ですが、雨天時にはテントの中でパッキングできるようにしましょう。ザックをテントから
出した時点で、あとはテントを入れれば終了という状況にしておかなければなりません。
撤収時のペグ穴整地は、ペグを抜いた直後に行う癖をつけてください。朝の暗い時間帯では、後か
ら確認しようとしても見落としてしまいます。
[審査内容]
設営:制限時間( 10 分間 )、軍手の着用、テント内整理、ペグ(効き方)、張り綱(強さ、完成
度)
撤収:ペグ穴整地、フライのたたみ方、店開き、軍手の着用
[よかった隊]
5
炊
なし
事(5点)
市販の防風版を用いる場合、ガスカートリッジの大を用いると、バーナーの部分が防風板よりも高
くなってしまい、全く意味がなくなってしまいます。注意してください。
調理シートの上は衛生上、食材のみを置くようにしましょう。調理シートの上に、膝をつけたり、
登山靴がついたりすると、当然減点です。また鍋などを置いても減点ですから注意してください。
(鍋
の底は汚れている場合が多いため)また、衛生上、調理用の軍手と行動用の軍手も必ず分けるように
しましょう。
[審査内容]
コンロ台、防風板(1個のコンロに対して1個の防風板、高さが十分か )、調理シートの有無、
安全性と衛生面の配慮、食料計画表との一致
[よかった隊]
6
気
A隊・C隊
竹田
象(7点……天気図5点・気象知識2点)
天気図は何度も書く練習を重ねることで上達していきます。等圧線が自然でなめらかな仕上がりに
なるように練習しましょう。解析と予報は必ず書いてください。模範天気図と自分の書いた天気図を
比較し、どこをどのように直すべきかを分析してください。
気象知識については、テキストをもとに、しっかり学習しておきましょう。
[審査内容]
気象知識テスト
天気図作成……地点(7カ所)、放送等圧線(6カ所)、等圧線(4カ所)
高気圧、低気圧、前線(5カ所)、解析・予報・完成度
[よかった隊]
7
A・B隊
竹田
自然観察(8点)
地点確認の許容誤差は、原則2㎜ですが 、「地形の顕著な所はその限りではない」と登山部報に明
記されています。地形の顕著な場所においては誤差を認めませんので、注意してください。
展望テストですが、最近、安易にひらがなで書く生徒が多いように思います。山や場所の名前は漢
字で書けるようにしておきましょう。大会の「予報 」(地形テストや植生テストの範囲)は、大分県
高体連のホームページ上の「組み合わせ」のところにアップロードされています。「予報」は『登山
部報』と同じく、しっかり読み込んでおいてください。
植生は、確かに専門知識のある人が身近にいて教えてくれれば一番よいのですが、今やインターネ
ットで検索すれば写真付きですぐに調べることのできる時代です。「予報」に記載されている植生、
またホームページで配布された植生リストをネットや図鑑で調べ、その上で試走に行って確認し、試
走中にわからなかった植生を写真に撮り、再びネットや植物図鑑で確認するという、地道な作業を通
して覚えていきましょう。ただし、植生に関しては、九州大会、インターハイでは、行動記録に記載
があるかどうかしか問われません。
[審査内容]
地形テスト、展望テスト、植生テスト、地点確認(4カ所)
[よかった隊]
8
A隊
竹田
計画・記録(10点)
「緊急連絡先(留守本部)には、休日・夜間の連絡先も記載すること」となっています。実際に遭
難事故が起きた時、学校の管理職に連絡がつくようにしておく必要があります。現地本部については、
県大会では要項に明記されていない場合が多いのですが、開会式・閉会式に使用する学校や施設の連
絡先、あるいは専門委員長の連絡先を記載しておけばよいでしょう。
計画書の交通機関については、 10 時に貸し切りバスで大分駅を出発するわけですが、各チームで
集合時刻がある場合には、そこから書き始めて欲しいところです。
(例)
8:00
8:30
8:45
9:20
10:00
学校集合・装備最終チェック
学校発(バス停まで徒歩 5 分)
○○バス停発
大分駅着
大分駅発(貸し切りバス)
記録についてですが、コース概要は、登山道の状況も記入してください。例えば、鉾立峠から佐渡
窪までは 、「大雨の影響により荒れており、ルートを間違い安い箇所あり 」、くたみ分かれから沢水
までは「簡易舗装の道。アップダウンあり」などと記載するとよいでしょう。また、くたみ分かれの
分岐は「沢水方向」と「レゾネイド方向」が分かるように矢印等を記載しておきましょう。看板があ
る場合には「看板あり・なし」などという情報もあるとよいと思われます。
[審査内容]
<計画書>(6点)
緊急連絡先・メンバーの血液型・交通機関(学校等の集合時刻・開会式の会場名)・概念図(く
たみ分かれ・鍋割峠 )・断面図(段原標高・鉾立峠標高)・救急法(蜂さされ・低体温症 )・装
備(重量・サブ行動の装備表)
<記録>(4点)
到着時刻(大船避難小屋・坊ヶつる)・通過時刻(入山公廟・鍋割峠)・標高(段原・鉾立峠)
コース概要(鉾立から佐渡窪までの道の状況・くたみ分かれ分岐の状況)
[よかった隊]
9
救
C隊
竹田
急(5点)
薬品の消費期限がギリギリのチームがあります。今回を機に買い換えておきましょう。
医薬品は、くれぐれも、一回に何錠を一日に何回を限度に飲むのか(使用方法)について、しっか
り確認しておいてください。間違った薬の処方は、命にかかわることがあります。注意してください。
[審査内容]
医療テスト、風邪薬、解熱剤(鎮痛剤)、虫さされ薬、消毒液、体温計、包帯
[よかった隊]
10
A隊
竹田
パーティーシップ・マナー・その他(5点)
学校の看板を背負って大会に臨んでいるわけですから、学校の威信をかけて、マナーでは点を引か
れないようにしてください。これはB隊の生徒にも同じことが言えます。
今回、減点した項目。
・ユニフォームのシャツ出し
・集合時刻に間に合わない
[よかった隊]
A隊・C隊
竹田
○最後に
前回と同じ内容になりますが、繰り返し述べておきます。大会での審査で見る項目は 、「基本の
「き 」」です。登山では基本通りにいかず、臨機応変な対応が求められることもありますが、大会は
「基本の「き」」が大原則です。「基本の「き」」が何なのかを、しっかり勉強してください。
各学校に一部ずつ配られている『登山部報 』(インターハイの記録)には、全国高等学校登山大会
成績評価実施要項が記載されています。これは登山競技のルールブックと思ってください。登山が競
技である以上、しっかりとルールを確認してから臨むことが大切になります。
しかし、注意しなければならないのは、登山競技は、ルールが改正されることが多々あるというこ
とです。実施する山域の自然条件によっても、新しい装備の登場によっても、審査基準が変わること
があります。そうした競技ルールの改正についても、『登山部報』に記載されています。『登山部報』
の過去 10 年間分ぐらいを集め、メンバーで確認し合うとよいのではないかと思います。
いよいよ、来年に、ここ大分でインターハイが開催されます。開催県として、インターハイで上位
に入賞することができるよう、全力で臨んで欲しいと思います。期待しています。
文責
山本
悟史