2016年オリンピック・パラリンピック競技大会 招致活動報告書

第一部 第2章
申請都市段階
第2章
~ 申請都市段階 ~
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第一部 第2章
申請都市段階
本章では、国内立候補都市の決定後から IOC による立候補都市の選定まで
の申請都市段階について述べる。期間は、平成 18(2006)年 9 月から平
成 20(2008)年 6 月 4 日までである。
東京は、IOC に対して「申請ファイル」を提出し、IOC による審査を経て、
平成 20(2008)年 6 月 4 日、IOC 理事会で立候補都市に選定された。
<要 約>
平成 18(2006)年 11 月 22 日、任意団体として発足した東京オリン
ピック招致委員会は、翌平成 19(2007)年 2 月 27 日、特定非営利活動
法人の法人格を取得し、活動をスタートさせた。
平成 19(2007)年 5 月 16 日、IOC は「立候補受付手順書」を公表し、
これにより、2016 年大会の開催都市選定手続が正式に開始され、東京のほ
か、シカゴ、プラハ、リオデジャネイロ、バクー、ドーハ、マドリードの 6
都市が開催都市に名乗りを上げた。
各都市は立候補受付手順書に示された IOC からの質問項目に回答する形
で申請ファイルを提出するが、この申請ファイルは、各都市が IOC に提出す
る初めての計画書であるとともに、IOC が立候補都市を選定する唯一の判断
材料となる非常に重要なものであった。東京は、開催計画について競技団体
や政府機関をはじめとする関係団体と調整して申請ファイルを取りまとめ、
平成 20(2008)年 1 月 10 日、IOC に提出した。
オリンピック・パラリンピック大会の開催は国家的事業であり、都民・国
民による支持は、大会開催に不可欠である。特に、IOC は大会開催への世論
の支持率を重視していることから、招致レースの早い段階から招致気運の盛
り上げを図っていくことが必要であった。東京は、各界の著名人を「東京オ
リンピック招致大使」として任命するとともに、巨大バナーやのぼり旗・ポ
スター等の街頭掲示など、幅広い招致気運盛り上げ事業を展開した。
招致活動を推進するための関係機関との連携体制もこの時期に確立された。
国に対しては、都議会及び知事から政府の総力を挙げた支援を求め、平成 19
(2007)年 9 月 11 日、オリンピック競技大会の東京招致に関する政府の
閣議了解を得た。また、在外公館や在京の各国大使館に対する働きかけも行
い、在外公館を通じたネットワークづくりや各国大使等への PR を行った。
在外公館を通じたネットワークは国際プロモーションが解禁される立候補都
市段階でのプロモーション活動において大いに活用された。
平成 20(2008)年 6 月 4 日、IOC 理事会は申請ファイルの評価結果を
参考に、東京、シカゴ、リオデジャネイロ、マドリードの 4 都市を立候補都
市に選定した。東京は、宿泊施設、選手村、セキュリティなどが高く評価さ
れ、同時に公表された IOC ワーキンググループレポートの総合評価で 1 位
の評価を獲得した。
立候補都市の選定を受け、東京、シカゴ、リオデジャネイロ、マドリード
の 4 都市は、開催都市を決定する平成 21(2009)年 10 月 2 日までの約
1 年半に及ぶ長い国際招致レースに踏み出すこととなった。
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第一部 第2章
申請都市段階
第2章 申請都市段階
第1節 立候補申請手続き
1 東京オリンピック招致委員会の設立
(1) 設立経緯
東京都が 2016 年大会の国内立候補都市に決定したことを受け、都と
JOC は、平成 18(2006)年 11 月 22 日、特定非営利活動法人(NPO
法人)としての申請手続きを行うことを前提に、任意団体として東京オ
リンピック招致委員会を設立した。
IOC は、大会開催を希望する都市が、申請都市から立候補都市として
選定された段階での招致委員会の設立を求めているが、東京では、機動
的に招致活動を推進するため、早い時点で招致委員会組織を立ち上げた。
会長には石原知事、副会長には竹田 JOC 会長、横山副知事、事務総
長には河野 JOC 理事が就任した。その他の役員や、後に委嘱する顧問
等の選任にあたっては、都と JOC の役員のほか、各界から幅広い支援
のもとに、国を挙げて招致を進めていくことができるよう、国、地方公
共団体、スポーツ界、経済界等から選任を行った。
設立に際しての趣旨書は、以下のとおりである。
東京オリンピック招致委員会設立趣旨書
2016 年第 31 回オリンピック競技大会の国内立候補都市に決定し
た東京は、2009 年の国際オリンピック委員会総会において開催都市
に選ばれるために、日本の英知を尽くした招致活動を積極的に展開し、
世界の強豪都市を相手に勝ち抜かなければならない。
そこで、東京都、財団法人日本オリンピック委員会をはじめ、国、
スポーツ団体、民間企業などが協力し、オリンピック招致の専門能力
を有する人々を結集することにより本会を組織する。
オリンピック競技大会は、友情、連帯、そしてフェアプレーの精神
を持って、相互に理解しあう世界最高のスポーツ大会であると同時に、
競技者や観客の交流を通じて世界をひとつに束ねるオリンピックムー
ブメントの頂点となる文化と平和の祭典である。
そのオリンピック競技大会を、再び東京で開催することにより、未
来を担う日本の子どもたちはもとより、世界の子どもたちに夢と感動
を広めるとともに、人類の進歩と世界の平和や繁栄に大きく寄与して
いく。
よって本会は、オリンピック及びスポーツ関係者への精力的な働き
かけ、オリンピックムーブメント事業推進による都民・国民の幅広い
支持の拡大など、オリンピック招致に向けた主要な諸活動において、
その中心的な役割を果たしていく。
平成 19(2007)年 2 月 27 日、NPO 法人として認証を受け、設立
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第一部 第2章
申請都市段階
の登記を行ったことにより、招致活動を戦略的、効果的に行う体制が整
った。その新たな船出を祝して、同年 3 月 5 日、東京プリンスホテルパ
ークタワーにおいて、安倍総理大臣、森元総理大臣を始めとする多数の
参加者を得て、NPO 法人発足パーティーを開催した。
NPO法人発足パーティー(乾杯の発声は森理事)
(2)
招致委員会と東京都招致本部の役割分担
招致活動を進めていくにあたり、招致本部は、申請ファイル・立候補
ファイル等の大会開催計画の原案作成をするとともに、IOC へのプレゼ
ンテーションに関する調整や都内区市町村、他の自治体等と連携して招
致気運の盛り上げを図る。
一方、招致委員会は、IOC に対する窓口となるとともに、大会開催計
画の決定を行い、国際的な招致活動を展開する。また、NPO 法人であ
る特色を活かし、柔軟で機動力のある運営を行い、民間団体としての創
意工夫により、都内はもとより、全国的な招致気運の盛り上げ事業を展
開していく。(関係機関を含めた招致活動に関する体制図は、P466 資
料 2 参照)
(3)
招致委員会の体制整備
ア 平成 19(2007)年
平成 19(2007)年 4 月、18 名のスタッフで事務局が本格的に
始動した。
同年 5 月 22 日の理事会・総会では、前年度決算承認のほか、立候
補ファイル等の重要事項の企画・立案を行う機関として、計画等3つ
の専門委員会を設置すること、事務次長の職を設置することなど、招
致を推進するための体制整備が図られた。
同年 11 月 6 日、財団法人日本障害者スポーツ協会会長で JPC 委
員長の北郷勲夫氏を理事に加えるとともに、東京都が招致を行うこと
を政府が正式に了解した同年 9 月 11 日の閣議了解を踏まえ、政府関
係者、地方自治体関係者に顧問の職を委嘱することとなった。これに
より最高顧問に福田総理大臣、特別顧問には全大臣、顧問には全副大
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第一部 第2章
申請都市段階
臣並びに全国知事会、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市
議会議長会、全国町村会及び全国町村議会議長会(地方六団体)代表、
特別区長会、特別区議会議長会、東京都市長会、東京都市議会議長会、
東京都町村会及び東京都町村議会議長会(以下、「都内の 6 団体」と
いう。)代表がそれぞれ就任した。また、事務局を総務、事業、企画・
広報、国際部門に再編し、以降は同体制で招致活動を推進した。
イ
平成 20(2008)年及び 21(2009)年
平成 20(2008)年 2 月 5 日、招致委員会の招致推進活動全体(平
成 18(2006)年度から 21(2009)年度まで)としての事業計画
を 75 億円とするスキームを定めた。財源は、民間資金 50 億円、東
京都補助金 25 億円であり、都の経費を含めたスキーム全体を 150
億円とした。これについては、平成 20 年第一回都議会定例会におい
て説明し、理解を得た。
同年 5 月には、元全日本女子バレーボール代表主将の吉原知子氏を
招致委員会スタッフに迎え、業務にアスリートの経験や視点を活かす
取組を進めた。
さらに同年 7 月 1 日、招致本部と軌を一にして、法人名称を「東京
オリンピック・パラリンピック招致委員会」に改めた。これ以降、招
致イベントへのパラリンピアンの出演やパラリンピック写真展の開催
等、オリンピックと並びパラリンピックの招致 PR にも注力した。
招致委員会の規模は、立候補都市の選定を契機とした国際招致活動
の本格化に伴い、その後も拡大し、開催都市決定時には 70 名ものス
タッフが国内外で招致活動に従事した。
2
IOC より立候補受付手順書提示
平成 19(2007)年 5 月 16 日、IOC は各国 NOC に対して、2016
年大会の申請都市を推薦するよう促す文書を発出するとともに、立候補受
付手順書を公表した。これにより 2016 年大会の開催都市選考手続が正式
に開始された。
立候補受付手順書では、開催都市決定までの主なスケジュールや、申請
ファイルを作成するための IOC からの質問等も示された。
(1) 開催都市決定までの主なスケジュール
立候補受付手順書で示された主なスケジュールは以下のとおりである。
立候補受付手順書で示された主な招致スケジュール
事
項
日
程
平成 19(2007)年
NOC から IOC への申請都市届出期限
9 月13 日
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第一部 第2章
申請都市段階
事
項
申請都市手数料の支払期限
(15 万米ドル)
申請都市セミナー
(スイス連邦ローザンヌ市)
日
程
10 月 1 日
10 月15 日 の週
平成 20(2008)年
1 月14 日
申請ファイル提出期限
IOC 理事会での立候補都市選定
6月
北京オリンピック
オブザーバープログラム
8 月 8 日 ~24 日
平成 21(2009)年
2 月12 日
立候補ファイル提出期限
IOC 評価委員会報告書の公表
9月 2日
IOC 総会で開催都市決定
(デンマーク王国コペンハーゲン市)
10 月 2 日
(2)
申請ファイルに関する質問
申請ファイルは、大会開催を希望する都市が IOC に対して提出する最
初の大会計画書であり、IOC からの質問に回答する形式で作成する。
2016 年大会に関する 25 の質問は、この立候補受付手順書において示
された。この質問を受け、招致本部では、本格的に大会計画策定作業に
入った。(詳細は P35 次節参照)
(3)
招致活動にあたり従うべき基準
大会開催を希望する都市は、立候補受付手順書を始めとする IOC の文
書や、各 IF の競技に関する規約を中心とする様々な関係機関の基準等を
遵守して、オリンピック・パラリンピック競技大会の招致活動を進める
必要がある。
その基本となるのは、いうまでもなく IOC のオリンピック憲章である
が、以下の(4)に記す行動規範やその元となる倫理規程、大会運営の
技術的な事項を定めるテクニカルマニュアル等、他にも従うべき様々な
基準を参考に活動しなければならない。
これらは、都市間の招致レースにおける公平性・透明性を確保すると
同時に、都市の大会開催能力を担保するための指針として必要不可欠な
ものである。(詳細は P545 資料 17 参照)
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第一部 第2章
申請都市段階
(4)
行動規範
立候補受付手順書の公表に先立ち、IOC 理事会は、2016 年大会の開
催を希望するすべての都市及び NOC を対象に、招致活動に際し遵守す
べきルールを定めた「オリンピック競技大会の開催を希望するすべての
都市に適用される行動規範」(以下、「行動規範」という。P546 資料
18 参照。)を平成 19(2007)年 2 月 7 日に決定し、通知している。
基本原則は、都市はオリンピック憲章、IOC 倫理規程、IOC 立候補評
価手続を遵守・尊重し、NOC は都市の活動に責任を負う、というもの
であるが、具体的に特に重要な事項は、国際プロモーション活動に関す
る規定、IF の訪問に関する規定、IOC 委員との関係、立候補都市間の関
係に関する規定である。
ア 国際プロモーション活動に関する規定
開催希望都市及び申請都市には国際プロモーション活動は認められ
ない。国際プロモーション活動が認められるのは、IOC により立候補
都市に選定されてからである。
国内プロモーション活動は自由に行えるが、
「国内」は限定的に解釈
され、在外公館は国内とは認められない。
立候補都市に選定されると、国際プロモーション活動が認められる
が、IOC 本部の所在するスイス連邦 内や、IOC 総会の開かれる国
(2016 年大会招致の場合はデンマーク王国)でのプロモーション活
動には制限がある。また、国際的な行事におけるプロモーション活動
(大陸別 NOC 総会におけるプレゼンテーション等)は IOC が立候補
都市に要請したもののみが認められ、この場合、全立候補都市に同等
の機会が与えられる。
イ IF の訪問に関する規定
申請都市は、IF に対して計画に関する助言を書面で求めることがで
きるが、IF がその都市を訪問して現地調査を行うことには IOC の許可
が必要となる。
ウ IOC 委員との関係に関する規定
IOC 委員は立候補のどの段階であれ、その都市を訪問してはならず、
また、都市も IOC 委員を訪問してはならない。IOC 委員がその都市を
訪問する必要がある場合(国際競技大会等)は、事前に IOC 倫理委員
会に通知することが求められ、都市がその機会をプロモーション活動
のために利用することはできない。
エ 立候補都市間の関係に関する規定
各都市は他都市の批判や他都市との比較を行ってはならない。
これらの規定は、いずれも招致活動が過熱することを防ぎ、公正な開
催都市選定が行われることを担保するためのものと理解される。IOC 委
員との個別の接触が禁止されていること、IF との早期の接触が制限され
31
第一部 第2章
申請都市段階
ていることから、招致活動外の日常的な IOC と NOC、IF と NF の関係
が非常に重要である。
3
IOC へ立候補届けを提出
平成 19(2007)年 6 月 7 日、JOC は、IOC が公表した立候補受付
手順書に従い、東京を申請都市として IOC に通知した。
IOC は、同年 9 月 13 日に届出を締め切り、申請都市リストを公表した。
2016 年大会への申請都市は以下の 7 都市(国)であった(IOC 公表リス
ト順)。
バクー(アゼルバイジャン共和国)
シカゴ(アメリカ合衆国)
ドーハ(カタール国)
マドリード(スペイン王国)
プラハ(チェコ共和国)
リオデジャネイロ(ブラジル連邦共和国)
東京(日本)
東京は、立候補受付手続きへの署名及び申請都市手数料の納付を経て正
式な申請都市となった。
ライバル都市も出揃ったことにより、2016 年オリンピック・パラリン
ピック競技大会の招致に向けた競争が本格化することとなった。
4
申請都市セミナー(ローザンヌ市)
平成 19(2007)年 10 月 15 日から 19 日までの 5 日間、2016 年
大会の 7 申請都市を対象とした IOC 主催の申請都市セミナーがスイス連
邦ローザンヌ市で開催された。
このセミナーは、各申請都市が招致活動を推進するにあたっての基本的
な事項について IOC 事務局から説明されるもので、IOC との最初の接点の
場でもある。IOC とオリンピック・ムーブメント、招致にあたっての必要
書類、大会運営の範囲や主要なリスク、利害関係者と IOC 要件について知
り、今後の招致に関する活動が円滑かつ公正に行われることを目的として
開催された。
○ 参加者の選定
申請都市セミナーは、IOCより参加可能な人数が、申請都市とNOC合
わせて10名に限られていることに加え、英語のみで専門的な説明が行わ
れるため、適切な参加者の選定が求められた。
また、単にセミナーに参加するだけでなく、休憩時間やレセプション、
合同昼食会等の場は、IOC関係者と良好な関係を築く貴重な機会である
ことから、東京が大会開催までのパートナーとして魅力あるチームであ
32
第一部 第2章
申請都市段階
ることをIOCに印象づけることができるよう、積極的にコミュニケーシ
ョンを図ることも求められた。
検討の結果、申請ファイル等の計画を担当する招致本部から5名、招
致委員会とJOC合わせて5名、計10名の体制で参加した。
申請都市セミナー日程表
月日
午前
午後
10 月
・ ウ ェ ル カ ム レ セ プ シ ョ ン 、 IOC
15 日
哲学、過去のオリンピック競技大
会の経験
―――
・ 招致手続き
・ スポーツ、アスリート及び IF
・ 選手村及び NOC
・ IOC 主催レセプション
16 日
・ 宿泊施設
【合同昼食会】
・ セキュリティ
・ 競技会場及び輸送システム運営
・ 環境
・ パラリンピック競技大会
・ 競技会場コンセプト
・ 開催都市契約を始めとする法的
・ 競技会場
17 日
要求事項
・ 輸送
・ 行動規範及び倫理規程
・ 財政と予算
【合同昼食会】
・ IOC のテレビ放映権及びマーケ
・ オリンピックの持続可能な発展
ティングの仕組み
とレガシー
・ 情報通信技術
・ 大会運営
・ ロンドン 2012 招致の事例検討
・ 情報システム運営
・ OCOG 及び公的機関との連携
18 日
・ 新聞及びメディアサービス
【合同昼食会】
・ オリンピック放送機構関係
・ 7都市と IOC 事務局の個別ミー
・ 招致活動及び大会時のコミュニ
ティング
ケーション
・ 文化、教育及び開閉会式等
19 日
・ 7都市と IOC 事務局の個別ミー
ティング
―――
7都市の個別ミーティングのみパレスホテルで実施し、その他はオリン
ピック博物館講堂で実施された。
5
IOC 理事会による都市の順序の決定
平成 19(2007)年 12 月 12 日に開催された IOC 理事会において、
くじ引きにより、7 申請都市の順序が以下のとおり決定された。この日以
降、立候補都市選定後も含め、平成 21(2009)年 10 月 2 日の開催都
33
第一部 第2章
申請都市段階
市決定投票が行われる IOC 総会での最終プレゼンテーションまで、基本的
にこの順序で対応されることとなった。
シカゴ
プラハ
東京
リオデジャネイロ
バクー
ドーハ
マドリード
6
国際的な専門メディア活用による情報収集等
国際招致レースに臨むにあたり、海外コンサルタントや JOC 担当者の
アドバイスに従い、オリンピックを中心としたスポーツを専門に扱う国際
メディア(アラウンドザリングス(アメリカ合衆国)、スポーツカル(英国)、
スポーツビジネス(英国)、スポーツインターン(ドイツ連邦共和国)等)
からの定期的な情報収集を開始した。加えて、インターネットのみのメデ
ィア(Gamesbids.com(アメリカ合衆国)、インサイドザゲームズ(英国))
についても、逐次、情報入手に努めた。
これらの専門メディアの活用は開催都市決定まで続けられ、IOC や他都
市を始め、世界のスポーツ界の動向についての情報を得るとともに、東京
招致の情報を発信する際のツールとしても極めて効果的であった。
なお、いずれも英語によるメディアであるため、得られた情報を関係者
で共有する際には、日本語への翻訳を必要とした。
34
第一部 第2章
申請都市段階
第2節 開催計画(申請ファイル)
【事業費 764 百万円】
1 申請ファイル作成事前準備等
招致本部は、平成 18(2006)年 8 月 30 日に JOC により国内立候
補都市に選定された後、IOC が 2016 年大会向けの立候補受付手順書を公
表するのを待つことなく、JOC の招致推進担当者と密接に連携して、計画
策定に向けた事前準備をスタートさせた。
(1) 調査及び情報収集等
具体的には、大阪市で 2008 年大会招致に中心的に携わった職員や
1998 年長野冬季大会組織委員会関係者へのヒアリング、知事を筆頭と
した派遣団による 2012 年ロンドン大会組織委員会幹部へのヒアリン
グ、2012 年大会パリ招致に携わった海外コンサルタントからのアドバ
イス聴取等を行った。また、それらと並行して 2012 年及び 2014 年
冬季大会向け立候補受付手順書及び立候補都市マニュアルを解析し、
IOC の大会計画に求める傾向分析を行うとともに、その他競技関係資料
に関する調査・資料収集等を進めた。
さらに、実際の国際スポーツ大会の運営や競技会場・施設に関する最
新かつ現場での生きた情報収集を行うため、オリンピック競技大会に近
い大規模な総合国際競技大会であるカタール国ドーハ市で開催された第
15 回アジア大会(平成 18(2006)年 12 月)及び中華人民共和国長
春市で開催された第 6 回冬季アジア大会(平成 19(2007)年 2 月)
への視察、加えてマレーシア クアラルンプール市におけるフェスピック
(平成 18(2006)年 11 月)への参加・調査等を行った。
(2)
2
世論の支持向上
申請ファイルにて記載が求められる世論の支持向上に繋げる招致気運
盛り上げのため、主要施設予定地である晴海及び有明北へのサイン(看
板)の設置、開催希望都市として認められる最大限の範囲で東京をアピ
ールするための国内開催の国際競技大会への PR ボード(看板)の設置
(ノルディックスキー世界選手権及び世界フィギュアスケート選手権大
会)、平成 18(2006)年 10 月の JOC オリピックフェスティバルや
調布飛行場まつり等におけるブース設置や招致応援棒の配布等により、
地域の方々やスポーツ観戦者等への PR 活動に努めた。
オリンピックスタジアム候補地の決定
オリンピックスタジアムは、開会式・閉会式が行われるオリンピック・
パラリンピック競技大会の中心的施設である。その立地については、選手
村からの距離・移動時間短縮が重要な条件であり、選手村を始めその他の
競技会場の配置計画、輸送計画、セキュリティ計画等にも影響を及ぼすた
め、申請ファイルの作成に先立ち、早期に候補地を決定する必要があった。
35
第一部 第2章
申請都市段階
(1)
経緯
オリンピックスタジアムは、多くの場合、陸上競技の会場となるため、
陸上競技場としての規格も満足する必要がある。1964 年の東京大会で
オリンピックスタジアムとなった国立霞ヶ丘競技場は、トラックが 8 レ
ーンであるほか、補助競技場がないなど、現在のオリンピックが要求す
る規格には及ばない施設となっていた。
このような中、東京都は、国内選考段階で JOC に提出した開催概要
計画書において晴海地区に新たなスタジアムを建設する計画を明らかに
していた。しかし、国内立候補都市選定後、JOC のオリンピック招致戦
略プロジェクトにおいて、国立霞ヶ丘競技場を改修して使用する案が出
されるなどしたため、両案を検討し、会場計画の要であるオリンピック
スタジアム候補地の決定に最優先で取り組んだ。
(2)
候補地の決定
晴海、霞ヶ丘の両地区について、敷地面積、各種法規制、交通アクセ
ス、後利用等の観点から検討したところ、平成 19(2007)年 4 月ま
でに、霞ヶ丘地区でのオリンピックスタジアム整備は困難との結論に達
した。この結果は同年 5 月 22 日、招致委員会理事会に諮り、オリンピ
ックスタジアムを晴海地区に建設する計画とすることを決定した上、発
表した。
オリンピックスタジアムを晴海地区に建設するとした理由は、概ね以
下のとおりである。
・ 東京の新たな発展の可能性を有する臨海地域に位置
・ 水と緑の優れた景観を有し、東京の新しいランドマークとなる期待
・ 都市計画法等の規制が多い霞ヶ丘では不可能な、10 万人規模のス
タジアムや補助競技場等の用地を確保可能
・ 選手村予定地の有明北地区から至近距離
なお、オリンピックスタジアムについては、国立施設として整備する
ことを政府に要望していたが、政府は、国立霞ヶ丘競技場に加え、都内
に 2 つの大規模な競技場を建設することはできないとの立場をとってい
た。このため、オリンピックにふさわしいスタジアムを提供する開催都
市としての責任を果たすとともに、大会後も、都民の貴重な財産として、
スポーツ、文化の拠点を残すとの観点から、都立施設として整備するこ
ととした。
(3)
オリンピックスタジアムの概要
ア 施設配置
都立施設として晴海地区に建設
イ 建設費
・ 建設費は、約 1,000 億円
36
第一部 第2章
申請都市段階
・
PFI 方式等による民間資金の最大限活用や国費の調達等について
検討
ウ 後利用
オリンピック後は、第一種陸上競技場として大規模大会開催のほか、
コンサート等多目的に活用
エ その他
神宮外苑地区の国立霞ヶ丘競技場は、改築し、サッカースタジアム
として活用
3
競技会場選定に係る NF との調整
オリンピックスタジアム候補地の検討とともに、その他の競技会場につ
いても、国内選考段階では、限られた情報の下で選定を行ったものであっ
たため、申請ファイル作成に向けて、IOC や IF の要求の詳細を検討したう
えで、競技会場を精査した。
なお、開催概要計画書では、2004 年アテネ大会で実施された 28 競技
について計画したが、このうち野球とソフトボールに関しては、平成 17
(2005)年の IOC 総会で、2012 年ロンドン大会で実施されないことが
決まっていた。申請ファイルでは、立候補受付手順書に従い、この 2 競技
を除く 26 競技について計画を策定した。
(1) 会場選定の調整
競技会場を精査するにあたっては、改めて 26 競技に係るすべての
NF(27 団体)と必要な調整を行うとともに、必要に応じて、IF とも協
議を行った。
各競技の国内統括団体である NF からは、IF の要求事項等オリンピッ
クの競技会場として満たすべき条件や競技の特性について情報提供を受
けるとともに、コンパクトな会場配置というコンセプトに沿って、競技
会場の選定を行っていった。しかし、オリンピックという一時的な大規
模大会で必要とされる要件と、各競技や東京のスポーツ環境にとっての
レガシーとしての価値とのバランスを取るためには、個々の NF との調
整だけでなく、総体としてのスポーツ界との調整が必要であった。
(2)
会場候補地の決定
招致委員会の計画専門委員会の下に、福田 JOC 常務理事(当時)を
座長に NF の代表者で構成するスポーツテクニカル検討チームを設置し、
各 NF の意見と全体コンセプトとの調整を図った。最終的には、各 NF
からの競技会場に係る承諾書の収受をもって、国内立候補都市決定から
平成 19(2007)年 11 月の開催基本計画発表までの 1 年余りの期間
で、各 NF との協議を終え、全 26 競技の 31 会場を決定した。
また、併せて地下鉄の延伸が取り沙汰されていたオリンピックスタジ
アムへのアクセスについて、晴海地区の交通状況を詳細に分析し、既存
37
第一部 第2章
申請都市段階
の地下鉄の活用に加え、バス高速輸送システム及び臨時シャトルバスで
対応することとした。
これらの内容は、平成 19(2007)年 11 月 6 日、招致委員会理事
会に諮った上、公表した。
計画専門委員会
氏 名
荒川 満
安藤 忠雄
猪谷 千春
岡野 俊一郎
勝田 隆
河野 一郎
小谷 実可子
真田 久
竹田 恆和
竹村 真一
福田 富昭
(敬称略)
役 職(当時)
招致本部長、招致委員会理事
招致委員会理事、建築家
IOC 副会長、JOC 理事
IOC 委員、JOC 理事
JOC 情報・医・科学専門委員、仙台大学教授
招致委員会事務総長、JOC 理事
招致委員会理事、JOC 理事
筑波大学准教授
JOC 会長
京都造形芸術大学教授・文化人類学、情報環境論
JOC 常務理事、同選手強化本部長、国際レスリング連盟副会長
(五十音順)
スポーツテクニカル検討チーム
(敬称略)
氏 名
役 職(当時)
荒川
満
招致本部長、招致委員会理事
市原 則之
JOC 総務委員長、(財)日本ハンドボール協会副会長
上村 春樹
JOC 強化育成専門委員会委員長、(財)全日本柔道連盟専務理事
河野 一郎
招致委員会事務総長、JOC 理事
佐野 和夫
(財)日本水泳連盟副会長
澤木 啓祐
(財)日本陸上競技連盟専務理事
下山 隆志
(財)日本バレーボール協会国際事業本部長
田嶋 幸三
JOC ゴールドプラン専門委員長、(財)日本サッカー協会専務理事
福田 富昭
JOC 常務理事、同選手強化本部長、国際レスリング連盟副会長
渡辺
弘
前(社)日本馬術連盟常務理事
(五十音順)
4 グランドデザインチームでの検討及び開催基本計画の策定
(1) グランドデザインチーム
平成19(2007)年7月、オリンピック招致に向けて、「10年後の
東京」計画(P45 本節7参照)を踏まえたグランドデザインの検討を行
い、明確なビジョン・コンセプトを確立するため、招致委員会の計画専
門委員会の下に、グランドデザインチームを設置した。
本チームは、オリンピックの理念・開催意義・会場コンセプトの強化
38
第一部 第2章
申請都市段階
について検討を行い、その結果は、申請ファイル作成の根拠となる開催
基本計画として発表した。
また、大会のビジョン・コンセプトが現実から遊離したものとならな
いよう、東京の都市づくりのビジョン・コンセプトと一致させることも
重要な課題であった。
東京都においては、東京オリンピック招致推進会議(P65 本章4節9
参照)の下に都市づくり部会を設置し、招致委員会と都が連携・協力す
る体制を整備し、大会のビジョン・コンセプトと「10年後の東京」計画
の都市像と一致させるとともに、招致計画の施設配置・機能・運営等に
具体的に反映させることを目指した。
ア 検討事項
・ オリンピックの理念・開催意義・会場コンセプトの強化
・ オリンピック各競技施設の機能、規模、アクセス等の検討
イ グランドデザイナー
グランドデザインを取り
まとめるグランドデザイナ
ーに世界的に著名な建築家
であり、招致委員会理事でも
ある安藤忠雄氏を迎えた。安
藤氏はグランドデザイナー
として、環境を主軸に据える
東京大会の理念を提案し、施
設計画を総合的に監修した。
また、安藤氏は、国内外にお
建築家・安藤忠雄氏
いて多数の講演を行っており、
こうした機会に環境オリンピックの理念を広く世界に訴えた。安藤氏
が行った講演は国内だけでも100回以上に上った。
ウ グランドデザインチームの構成
安藤氏を中心に、都市計画、環境、スポーツといった各分野から若
手気鋭の専門家を集めた。当初は、5名であったが、9月から真田氏が
加わり計6名となった。
グランドデザインチームの構成
(敬称略)
氏 名
役 職(当時)
チーフ
安藤 忠雄 建築家
メンバー 赤池
学 ㈱ユニバーサルデザイン総合研究所代表取締役所長
メンバー 嵯峨
寿 筑波大学人間総合科学研究科准教授
メンバー 真田
久 筑波大学人間総合科学研究科准教授
メンバー 竹村 真一 京都造形芸術大学教授
メンバー 野城 智也 東京大学生産技術研究所教授
(五十音順)
39
第一部 第2章
申請都市段階
エ
(2)
検討の経緯
平成19(2007)年8月2日の第1回検討会後、3回にわたり開催し、
検討を進め、同年11月6日に招致委員会理事会へ報告を行った。
開催基本計画の策定
グランドデザインチームの検討結果と、並行して検討が進められてい
た競技会場の配置計画及び輸送計画とともに「開催基本計画」として8
ページの冊子に取りまとめた。
計画内容は、同月19日、グランドプリンスホテル赤坂において行われ
た開催基本計画発表会において、約1,600人の参加者の前で公表した。
また、冊子は都議会、区市町村、競技団体、施設管理者等関係先に送付
するとともに、広く都民に配布して周知を図った。
開催基本計画発表会
(3)
グランドデザインチームの立候補ファイルの作成に向けた検討
立候補ファイル作成にあたっては、申請ファイルに比べグランドデザ
インチームの考え方を施設や環境等、個々の具体的な計画に反映させて
いくことが必要であった。
そこで、限られた時間の中で作業を効率的・効果的に進めるという観
点から、チームメンバーの専門性に着眼して、それぞれの担当分野を設
定し、個別のヒアリングと受託研究によって意見を聴取することとした。
これらの成果は、立候補ファイル作成に反映された。
各メンバーの研究テーマ
研究テーマ
1
グランドデザイン、大会計画における環境技術
2
大会開催のコンセプト
3
嘉納治五郎のオリンピック理念の現代的な展開
40
(敬称略)
氏 名
赤池
学
野城 智也
竹村 真一
嵯峨
寿
真田
久
第一部 第2章
申請都市段階
5 申請ファイルの作成及び提出
(1) 申請ファイルの作成
IOC に対して提出する第一次の大会計画
書である申請ファイルは、立候補受付手順
書に示された 25 項目の質問に申請都市が
回答する形式で作成される書面である。
申請ファイルに使用する言語は、IOC の
公用語である英語及びフランス語の2ヶ国
語で、1 つの質問につき A4 判 1 ページ、
2 ヶ国語合わせて 50 ページの範囲に収め
作成された申請ファイル
ることが求められている。分量としては小
さな書面であるが、立候補都市の選定が事実上、この申請ファイルのみ
に基づいて行われることを考えると、限られた分量の中で IOC の関心事
に漏れなく答えていくことが必要である。
申請ファイルには詳細な計画が求められるわけではないが、政府機関、
警察、消防等の官公署、競技団体、各関係業界等とこの段階で基本的な
調整を行っておく必要がある。特に、政府の所管に関わる内容について
は、IOC の要求にどこまで応えられるかについて充分な調整が必要であ
った。また、内容のみならず英語、フランス語での表現も、IOC にとっ
て自然なものとなるよう留意する必要があった。
特に強調する点などの判断に当たっては、限られた分量の中に最大限
の内容を解りやすく盛り込むため、過去のオリンピック競技大会の招致
や運営に携わった海外コンサルタントの助言を受けながら作業を進めた。
2000 年シドニー大会組織委員会の最高責任者であり、かつ 2012
年招致の立候補都市選定に係るワーキンググループのメンバーでもあっ
たオーストラリアのサンディ・ホロウェイ氏、シドニー及びパリ招致並
びにシドニー及びアテネ大会の運営、さらには北京及びロンドン大会準
備にも携わるデビッド・チャーチス氏及びダイアン・バーンスタイン氏
を始めとする海外の専門家とは、申請ファイル提出まで 4 回の来日打合
せを行うとともに、随時メール等による助言を受けた。
41
第一部 第2章
申請都市段階
申請ファイルの主な内容
章
動機、コン
セプト及
Ⅰ
びレガシ
ー
Ⅱ
政府等に
よる支援
Ⅲ 財政
内
容
1
日程: オリンピック (7 月 29 日~8 月 14 日)
パラリンピック(8 月 31 日~9 月 11 日)
2
「地球社会への贈り物」
・スポーツを通じて人々に夢と希望を与える
・新しい都市モデルを提案し地球環境を再生する
3
コンセプト(次頁)
4
閣議了解、地方六団体、都内の 6 団体の招致決議
5
招致委員会の組織と構成
6
スポーツ関係法、ドーピング対策
7
招致経費:55 億円(4,800 万米ドル)
8
オリンピック競技大会予算(次頁)
放映権料・トップスポンサー料を除き、OCOG の運
営経費は、1,791 億円(15 億 5,700 万米ドル)
31 競技会場
10
(既存施設:21、新規施設:5、仮設:5)
9
Ⅳ 施設
11 競技会場、選手村、IBC/MPC 等の位置
12 選手村、IBC/MPC の概要
Ⅴ 宿泊施設
13 IOC ホテルの位置、ホテル数、客室数の質
14 メディア向け宿泊施設の概要
15 輸送インフラの状況(道路、鉄道)
16 使用する空港の状況(成田・羽田等)
Ⅵ 輸送
17 輸送インフラ地図
18
交通渋滞の解消、大会時の選手、役員、メディア、
観客の輸送
19 主要施設間の距離、所要時間
Ⅶ 安全対策
20 セキュリティの最高責任者、人的・物的資源
21 2007 年及び 2016 年の人口
環境に関する取組(カーボンマイナスオリンピック
一 般 的 条 22 の実現等)
Ⅷ 件、世論及 23 大会開催期間の気象
び経験
24 世論調査実施結果
25 過去の国際スポーツ大会実績
42
第一部 第2章
申請都市段階
【コンセプト】
○ 半径 8km 圏内のコンパクトな大会
○ 東京の都心全体が「オリンピックパーク」
○ 環境への影響を極力抑えるため
・ 既存の競技施設をできる限り活用
・ 公共交通網を最大限に活用して観客輸送
【オリンピック競技大会予算】
○ OCOG 予算の財源はすべて民間資金とし、堅実な財政運営と積極的な
マーケティング活動により、予算に不足が生じるおそれはなし
○ 知事は、OCOG 予算に万が一不足が生じた場合には、それを補填する
ことを約束
○ 総理大臣は、財政面も含め大会開催に対して総合的支援を約束
○ 東京都は、十分な財政規模を有しており、施設整備等に関し財政的な
心配なし
○ 東京都は、オリンピックのために 4,000 億円の基金を設置
競技会場配置図
43
第一部 第2章
申請都市段階
競技会場一覧
クラスター
クラスター
競技名
会場名
競技名
会場名
"結び"クラスター
夢の島クラスター
陸上競技
水泳(競泳)
1 オリンピックスタジアム
サッカー
16
2 有明テニスの森
テニス
辰巳国際水泳場
(辰巳の森海浜公園)
ハンドボール
17 夢の島競技場
テコンドー
4 お台場海浜公園
水泳(水球)
水泳
(シンクロナイズドスイミング)
フェンシング
3 東京ビッグサイト
水泳(飛込)
馬術(馬場馬術、障害飛越)
バドミントン
トライアスロン
バスケットボール
18 ユース・プラザ
5 潮風公園
ビーチバレーボール
体操(体操)
パレス・クラスター
体操(トランポリン)
柔道
19 夢の島公園
アーチェリー
6 日本武道館
レスリング
単独会場
7 皇居外苑
自転車競技
(ロード・レース)
20 葛西臨海公園
8 東京国際フォーラム
ウエイトリフティング
21
代々木クラスター
若洲
オリンピックマリーナ
セーリング
22 大井ふ頭中央海浜公園
ホッケー
体操(新体操)
23 大井競馬場
近代五種
卓球
24 東京ドーム
自転車競技
(トラック・レース)
サッカー
25 国技館
ボクシング
バスケットボール
26 陸上自衛隊朝霞訓練場
射撃
ハンドボール
27 東京スタジアム
サッカー
バレーボール
28 札幌ドーム
サッカー
29 埼玉スタジアム2○○2
サッカー
馬術
(クロスカントリー)
30 横浜国際総合競技場
サッカー
ボート
31 大阪長居スタジアム
サッカー
9 東京体育館
10 国立霞ヶ丘競技場
カヌー(スラローム)
11 国立代々木競技場
12 代々木公園アリーナ
海の森プリシンクト
13
海の森
クロスカントリーコース
14 海の森水上競技場
15 海の森自転車コース
カヌー
(フラットウォーター)
MHA
水泳(マラソン 10km)
OV
選手村
自転車競技
(マウンテンバイク)
MA
メディア向け宿泊施設
自転車競技(BMX)
IBC/MPC
国際放送センター/
メインプレスセンター
44
主要ホテル地区
第一部 第2章
申請都市段階
(2)
IOC への提出
平成 20(2008)年 1 月 10 日、招致委員会及び招致本部の代表団
は、スイス連邦のローザンヌ市にある IOC 本部を訪れ、申請ファイルを
提出した。提出した内容は、次のとおりである。
・ 申請ファイル 80 部
・ 保証書(原本) 4 部
・ CD-ROM
30 枚
(3)
日本語・英語版の作成
IOC に提出する英語・フランス語による申請ファイルとは別に、国内
関係者向けに日本語・英語版を作成した。
6
申請ファイル作成に関する国との調整
申請ファイル作成にあたり、関係省庁と協議が必要なものについて、省
庁毎に個別協議を行う一方、主務官庁である文部科学省からは、政府全体
として申請ファイルの承認を行う手続きを経ることが求められた。
平成 19(2007)年 5 月 16 日の立候補受付手順書公表以降、関係省
庁毎の個別協議を本格化させ、同年 10 月末、初めてそれまでの協議内容
を反映させた申請ファイル案の全体版(日本語及び英語)を、文部科学省
を通じて全省庁に送付した。各省庁では、送付された申請ファイル案を確
認し、当該省庁の所管事項にも関わらず協議が漏れている項目を抽出、招
致本部へ意見として提出した。当該意見の項目については、順次、関係省
庁との協議を開始した。
申請ファイルの概略については、同年 11 月 12 日に行われた「第 31
回オリンピック競技大会東京招致に関する関係省庁連絡会議(第 3 回)」
において協議され、課長級による政府全体の了解を得た。
申請ファイルの全体版については、同月 19 日及び 27 日の 2 回、当該
時点における文案を全省庁に送付し、最終調整を行った上で、同月 30 日、
文部科学省を通じて全省庁に文書照会を行った。各省庁から出された回答
(意見)に対しては、個別に調整を行い、最終的に政府全体として申請フ
ァイルの了解を得た。
照会先は、14 省庁(内閣官房、内閣府、警察庁、総務省、法務省、外
務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土
交通省、環境省、防衛省)である。
7
「10 年後の東京」計画との連動
都は、平成 18(2006)年 12 月 22 日、東京でオリンピック・パラ
リンピックが開催される 2016 年、すなわち 10 年後の東京の目指すべき
姿と、それに向けた政策展開の方向性を内外に示す「都市戦略」として、
「10 年後の東京~東京が変わる~」を策定した。
45
第一部 第2章
申請都市段階
この中で、オリンピック・パラリンピックを一過性のイベントに終わら
せることなく、これを梃子として東京の自己変革を進めるとともに、東京
が 10 年間にわたって展開する先進的な取組を、新しい都市モデルとして
世界に発信していくこととしている。
(1) 8 つの目標
「10 年後の東京」計画では、10 年後に向けた以下の 8 つの目標を
示し、その中の一つに、「スポーツを通じて次代を担う子どもたちに夢を
与える」ことを明示した。
・ 水と緑の回廊で包まれた、美しいまち東京を復活させる
・ 三環状道路により東京が生まれ変わる
・ 世界で最も環境負荷の少ない都市を実現する
・ 災害に強い都市をつくり、首都東京の信用を高める
・ 世界に先駆けて超高齢社会の都市モデルを創造する
・ 都市の魅力や産業力で東京のプレゼンスを確立する
・ 意欲ある誰もがチャレンジできる社会を創出する
・ スポーツを通じて次代を担う子どもたちに夢をあたえる
(2)
大会計画への反映
IOC は、大会計画が都市の長期的な戦略計画に合致したものであるこ
とを求めている。そのため、申請ファイルや立候補ファイルの作成にあ
たり、「10 年後の東京」計画で示した考え方と整合性を図った。
この結果、IOC 評価委員会報告書の冒頭で、「東京のビジョンは、「10
年後の東京」計画に沿っている」とされたほか、個々の項目においても、
再三にわたり東京の大会計画と「10 年後の東京」計画との整合性に言
及されるなど、東京の大会計画の実効性を裏付けるものとして、IOC か
ら非常に高い評価を得ることができた。
また、今後進めていく都の施策について明らかにしたことで、オリン
ピック・パラリンピック競技大会を開催するために、都が大規模なイン
フラ整備を行うのではないか、といった懸念に対し、開催の有無にかか
わらず、必要なインフラ整備は着実に進めていくという都の姿勢を明確
にした。
46
第一部 第2章
申請都市段階
第3節 招致活動
【事業費 1,642 百万円】
1 招致ロゴの決定、ドメインの取得
(1) 招致ロゴの決定
ア 招致活動のシンボル「結び」のロゴを発表
東京の招致活動のシンボル
マークであると同時に、招致
委員会のシンボルとしても使
用する「招致ロゴ」を策定し、
平成 19(2007)年 7 月 10
日、東京国際フォーラムにお
いて発表した。
デザインは、栄久庵憲司氏
によるもので、デザインコン
招致ロゴ記者発表会風景
セプトは「結び」、デザインモ
チーフは「水引」とした。
イ デザインコンセプト
デザインコンセプトの「結び」とは「生
命を生み出す新たな魂」を意味している。
古来より新しいものが生まれてくる場を、
日本文化では水引と呼ばれる飾りひもを
結び祝福してきた。招致ロゴは、この日
本の伝統の心とオリンピックの精神を結
んで生まれたものであり、2016 年の東
京オリンピックにより、新たな価値を創
出し、都市と地球の未来を拓き、次代を
担う子どもたちに引き継ぐことを願い、
水引のデザインモチーフにオリンピック
の 5 色を重ねて表現したものである。
以降、招致活動はこの結びの招致ロゴ
初代ポスター
と共に歩み、ポスター、ピンバッジを始
めとする各種製作物に使用さ
れ、立候補都市に選定された
後は、五輪マークと併用可能
な「招致エンブレム」と呼称
された。
ウ 不正使用等の防止
招致ロゴは、協賛企業に対
する「ロゴ使用権」を付与す
るための招致委員会の重要な
各種招致ロゴ、エンブレムの使用例
知的財産であり、商標登録手
47
第一部 第2章
申請都市段階
続きを行うとともに、
「グラフィック・スタンダード・マニュアル」を
定めて、不正使用やデザインの改変等の防止に努めた。
(2)
2
ドメインの取得
IOC は、インターネット上の住所や名前に当たる「ドメイン」の取得
を求めており、その取得状況は、立候補ファイルで回答すべき要件の 1
つにもなっている。そのため、平成 20(2008)年末頃までには取得
を完了させる必要があった。
ア 登録状況
2008 年北京大会及び 2012 年ロンドン大会の OCOG 公式サイト
の状況を参考に、ドメイン「tokyo2016」に続く、
「.info」、
「.net」、
「.org」、「.biz」と国コード「.jp」を登録した。
しかし、「.com」を使用したドメイン「tokyo2016.com」は、主
要な都市名・年号・「com」の組み合わせを複数登録している第三者
によって既に取得されていた。
イ 登録済ドメインの取得
ドメイン取得の方法には、①空いているドメインの取得、②既取得
者との交渉及び買取、③世界知的所有権機関(WIPO)による紛争処
理の 3 つがある。このうち③は、悪意の登録(金銭目的等)が認めら
れる場合には取得可能だが、不確定かつ弁護士費用の発生等が想定さ
れることから、まずは①及び②の方法により行った。
「tokyo2016.com」以外の主要ドメインは、すべて①及び②の方
法により取得することができた。「tokyo2016.com」については、
既取得者との交渉により、和解を成立させ、既取得者が売却を希望す
る場合の優先権を確保した。
ウ 早期対応の重要性
ドメインは、組織の実態等に関わらず、先行取得者に優先権が生じ
るため、招致の初期の段階から取得に動くことが肝要である。しかし、
IOC が各立候補都市にドメインの確保を求めていることから、主要な
ものは既に第三者によって取得されている場合も多い。その場合は、
速やかに既取得者との交渉及び買取を進める必要がある。
招致気運の盛り上げ事業
オリンピック・パラリンピック大会の開催は国家的事業であり、都民・
国民による支持は、立候補にあたっての前提である。しかしながら、我が
国の国民性や、成熟社会における志向の多様性を勘案すると、10 年近く
先の一つの事柄に対して急速な気運盛り上げを行うことは、当初より困難
が予想された。
実際、ライバル都市に比して東京の支持率が低いことが、ことあるごと
にメディアで取り上げられ、国内で盛り上げ事業を行う際の課題とされた。
48
第一部 第2章
申請都市段階
しかしながら、招致委員会が行った世論調査の支持率は、招致活動を行う
に従い順調に上昇した。平成 21(2009)年 4 月に行われた調査では 80%
を超える支持を獲得し、招致段階に応じたそれぞれの戦略が功を奏したと
言える。
世論調査による支持率(招致委員会実施)
2007 年 12 月
2009 年1月
2009 年 4 月
(インターネット調査) (インターネット調査) (インターネット調査)
2009 年 4 月
(電話調査)
全国
62%
70.2%
72.6%
80.9%
東京
60%
68.6%
69.7%
73.5%
都外
-
71.0%
74.0%
82.8%
(1)
招致活動を通してのまとめ
国内における招致気運の盛り上げ事業について、国内立候補都市選定
から開催都市決定までの全期間の活動内容をまとめると、次のとおりと
なる。
ア 初期段階(国内立候補都市決定から IOC による立候補都市選定まで
(本章))
・ 事実周知期
・ 招致大使等記者発表会、署名活動、開催基本計画発表会等、招致
委員会及び招致本部が主体となって行った事業に拠るところが大き
い。ほかに、オリンピアン等とのふれあい事業等を実施した。
イ 第二段階(IOC による立候補都市選定から IOC 評価委員会訪問まで
(3 章))
・ 支持層拡大期
・ 招致委員会及び招致本部が主体となって事業を行うのには限りが
あるため、全国自治体、大学、経済団体等に協力を依頼した。また、
若年層の支持を獲得するため、アニメ等若者向けのイベントにも注
力した。
ウ 最終段階(IOC 評価委員会訪問から開催都市決定まで(3 章))
・ カウントダウン期
・ 目的が明確で、国内外メディアへの情報発信力の強い事業を展開
した。また、初期段階、第二段階の手法に加え、民間が行う自主的
な盛り上げ活動を側面的に支援した。
以上のようなスケジュールで国内招致気運盛り上げ事業を実施してき
たが、実際は初期段階において最終段階までの戦略が固まっていたわけ
ではない。特に各種団体との連携については、もっと早期に確立できて
49
第一部 第2章
申請都市段階
いれば、更に効果的な事業展開ができたのではないかという反省もある。
また、立候補都市が主体となって事業を行うばかりでは、真の気運盛
り上がりとは言えず、人的・資金的にも限界がある。各種団体との協力
関係をいかに短期間で築けるかが、大きな鍵になると言える。
(2)
初期段階における招致気運の盛り上げ
ア この時期の目標
まず、東京が立候補している事実を周知することが、気運盛り上げ
の第一段階であった。また、実際の開催までには 10 年近くあるもの
の、開催都市決定はわずか 2 年後であり、いま盛り上がることが、東
京に招致するために必要であることを強く訴えなくてはならなかった。
イ 取組方針
「東京オリンピック招致大使」等への著名人の任命、巨大バナー・
のぼり旗・ポスター等によるロゴマークの露出、街頭における署名活
動等、あらゆる機会を捉えて事実周知を行い、支持率獲得に尽力した。
一方、
「みんなのオリンピック」実施によるオリンピアン・パラリン
ピアンからの語りかけや実技の披露など、都民・国民と直接触れ合う
事業にも力を入れた。
ウ 結果と課題
事実周知については年内に概ね達成したものの、開催を望む声は期
待したほど高まらなかった(支持率 62%)。この時期は、招致委員会
及び招致本部が主体となって展開した事業が多かったが、人的・資金
的におのずと限界があり、他団体と連携することにより活動の輪を広
げることが課題として残った。
50
第一部 第2章
申請都市段階
エ 主な事業
(ア) 招致大使記者発表会
実施時期:平成 19(2007)年 5 月 24 日
実施場所:都庁第一本庁舎 7 階大ホール
概
要:有森裕子氏、星野仙一氏、山下泰裕氏を「東京オリン
ピック招致大使」(後に「東京オリンピック・パラリ
ンピック招致大使」に改称)に任命し、記者会見形式
で発表した。3 名に続き、幅広い分野の著名人を順次
任命し、最終的には 9 名の招致大使が盛り上げ活動を
行った(クルム伊達公子氏、野口健氏、萩本欽一氏、
間寛平氏、古田敦也氏、みのもんた氏)。
(イ)
アスリートアンバサダー就任発表会
実施時期:平成 19(2007)年 10 月 2 日
実施場所:都庁第一本庁舎 2 階エントランス
概
要:現役アスリート 8 名(井上康生氏、北島康介氏、柴田
亜衣氏、末續慎吾氏、為末大氏、冨田洋之氏、浜口京
子氏、福原愛氏)を「東京オリンピック招致アスリー
トアンバサダー」(後に「東京オリンピック・パラリ
ンピック招致アスリートアンバサダー」に改称)に任
命し、記者会見形式で発表した。併せて、アンバサダ
ーの顔写真をあしらったラッピングバスの運行を開
始するとともに、ポスターのデザインにも起用した。
51
第一部 第2章
申請都市段階
(ウ)
みんなのオリンピック
実施時期:平成 19(2007)年 10 月 13 日から
平成 21(2009)年 9 月 20 日まで
実施規模:58 箇所、延べ 3 万人が参加
概
要:招致委員会、東京都、JOC、(NPO 法人)日本オリ
ンピアンズ協会の共催により、オリンピアン・パラリ
ンピアンと参加者が直接触れ合う事業を実施した。困
難を乗り越え大会に出場するまでのエピソードや、実
技の披露等により、スポーツの楽しさやオリンピッ
ク・パラリンピックのすばらしさを伝えた。
(エ)
街頭署名活動
実施時期:平成 19(2007)年 10 月 21 日
実施場所:銀座、新宿、上野、木場公園、原宿、巣鴨、八王子、
立川
概
要:招致委員会、都議会が中心となって、9 月下旬より署
名活動を開始し、10 月 21 日には都内 8 箇所で一斉
に街頭署名活動を展開した。約 2 か月で 130 万人を
超える署名が提出された。この数を申請ファイルに記
載し、日本の盛り上がりを IOC 委員にアピールした。
最終的には、招致期間中に約 167 万人からの署名を
得た。
52
第一部 第2章
申請都市段階
(オ)
ふるさと特使任命
実施時期:平成 19(2007)年 11 月 9 日
概
要:財団法人日本体育協会・都道府県体育協会の協力のも
と、各都道府県出身のオリンピアンを 1 名ずつ「東京
オリンピック招致ふるさと特使」(後に「東京オリン
ピック・パラリンピック招致ふるさと特使」に改称)
に任命した。母校を訪問しての特別授業、県庁への表
敬訪問、地元の祭り等への参加により、全国各地から
招致気運盛り上げを行った。
(詳細は P499、500 資
料 7 (4)及び(5)参照)
(カ)
開催基本計画発表会
実施時期:平成 19(2007)年 11 月 19 日
実施場所:グランドプリンスホテル赤坂
概
要:翌年 1 月の申請ファイル提出を控え、政界・財界・ス
ポーツ界等から約 1,600 人の参加者に対して、東京
の開催計画の目指すところについて周知を行った。ま
た、これに先立ち、メディア及び NF に対しても説明
会を実施した。
53
第一部 第2章
申請都市段階
(キ)
東京マラソン EXPO 2008
実施時期:平成 20(2008)年 2 月 14 日から 17 日まで
実施場所:東京ビッグサイト等
概
要:4 日間にわたりブース出展を行うとともに、東京マラ
ソン当日は沿道で横断幕や小旗を掲げての出場者応
援を行った。また、ステージではフェンシング、テコ
ンドーのデモンストレーション等を行い、アスリート
から来場者に招致への支援を呼びかけた。
(ク)
オリンピックを日本に、2016 年!デー
実施時期:平成 20(2008)年 5 月 18 日
実施場所:福岡 Yahoo!JAPAN ドーム
概
要:ソフトバンク対日本ハム戦とのタイアップ企画。始球
式に新庄剛志氏を迎え、九州・沖縄のふるさと特使に
よるメッセージ発信等を行った。また、ジュニアアス
リートたちによる巨大招致フラッグ行進、球団マスコ
ットによる招致応援等により、国内選考時にはライバ
ルであった福岡を始めとする、九州圏の招致気運盛り
上げに貢献した。なお、イベントの前日には、国内立
候補都市を競った福岡の関係者との懇親会も開かれ、
協力のエールを受けた。
54
第一部 第2章
申請都市段階
3 マーケティング活動
(1) 業務内容
オリンピック・パラリンピック競技大会の招致は、開催に名乗りを上
げた都市に留まらず、官民挙げての国家的なプロジェクトであり、活動
資金の調達等についても広く民間から協力を得る必要がある。招致委員
会では、国内企業、経済団体等を対象にし、企業の広報宣伝活動におけ
る権利内容をまとめた協賛プログラムとともに、寄附金、協賛金の募集
を開始した。また、活動資金調達に係わる専任代理店契約をスポーツマ
ーケティングに精通した広告代理店と契約し、民間からの協力がスムー
ズに得られるよう配慮した。
こうした支援企業との協力関係や権利保護等を総称した概念をマーケ
ティング活動と称し、招致委員会が展開した内容も多岐にわたるが、主
なものには次のものがある。
・ 招致活動資金調達に関する専任広告代理店との契約
・ 招致オフィシャルパートナープログラムの開発及びセールス
・ 招致ロゴ、「TOKYO 2016」に関する商標登録手続き
・ 招致ロゴ等の使用に関するグラフィック・スタンダード・マニュア
ルの作成
・ 招致ロゴ等の使用申請に係る承認作業
・ 招致ライセンシングプログラムのセールス
・ 招致アスリートビジュアルの使用に関する選手との交渉
(2)
マーケティング活動の成果
招致パートナーセールスは、本大会スポンサーへ向けての優先交渉権
が一切ないこと、既存の IOC、JOC スポンサーの競合カテゴリーには
販売できないことなどが大きな障壁であったが、新規カテゴリーを含め、
申請都市段階で 9 社が招致オフィシャルパートナーとなった。
招致ロゴ等の使用に関する規定の説明と具体的な使用方法(承認作業)
については、スポンサーの媒体としての発信力を、個別に方法を相談し
ながら開発することにより、招致ロゴ等の使用の普及に貢献することが
できた。
また、ライセンスグッズの販売等も開始したことから、招致活動を広
く PR することができた。
55
第一部 第2章
申請都市段階
第4節 招致連携体制
1 閣議了解
オリンピック・パラリンピック競技大会の招致及び大会の成功には、政
府の総力を挙げた支援が必要不可欠である。特に、大会の招致について政
府の意思として閣議了解することは、招致活動を国家イベントとして政府
の協力や支援を正式に位置付けることであり、他都市との熾烈な競争を勝
ち抜いていくための大きな後ろ盾となる(過去の国内立候補都市は、すべ
て閣議了解を得ている。)。
(1) 政府との調整
閣議了解を得るにあたっては、平成 18(2006)年 8 月 30 日の国
内立候補都市決定を受け、同年 12 月 15 日、都議会において衆・参両
院議長及び総理大臣ほか関係大臣宛に閣議了解を要請する意見書を採決
した。さらに、同月 22 日、知事から文部科学大臣に対し、政府の支援
を要請するなど、これら一連の要請行動により政府との協議が本格化し
た。
閣議了解の内容については、名古屋市の 1988 年大会の招致以降、①
オリンピック競技大会を招請することを政府として了解し、②国の財政
上の支援に係る基本的方針が示されている。
一方で、招致戦略上、平成 19(2007)年 9 月 13 日の NOC から
IOC への申請都市届出期限までに閣議了解を得ておく必要があり、同年
6 月、大阪市の 2008 年大会の招致に対する閣議了解における財政上の
基本方針をベースに調整を進めることとなった。
その後、精力的に協議を重ねた結果、同年 8 月 17 日及び 9 月 7 日
の「第 31 回オリンピック競技大会東京招致に関する関係省庁連絡会議」
において関係省庁との合意形成を得て、同年 9 月 11 日、閣議了解に至
った。
(2)
IOC からの評価
閣議了解は、IOC に対して招致活動を国を挙げて支援している姿勢を
示すものでもあり、閣議了解について記述した申請ファイルにおいては、
政府の支援に対し、IOC から最高の評価を得ることができた。
56
第一部 第2章
申請都市段階
東京招致についての閣議了解
平成 28 年(2016 年)第 31 回オリンピック競技大会の東京招致について
平成 19 年 9 月 11 日
閣
議
了
解
オリンピック競技大会の開催は、国際親善、スポーツの振興等に大き
な意義を有するものであり、平成 28 年(2016 年)第 31 回オリンピ
ック競技大会を東京都が招請することを了解する。
なお、政府としては、現在、国・地方とも財政改革の推進が引き続き
緊要な課題であることにかんがみ、簡素を旨とし、別紙に掲げる方針に
より対処するものとする。
(別紙)
1 競技施設については既存施設の改善・活用を図り、施設の新設に当
たっては適正な規模とするものとし、多様な財源の確保に努めるとと
もに、主要施設の整備に要する経費に占める国の負担割合は 2 分の 1
以内とすること。
2 新設する施設の将来にわたる管理・運営については地元の責任と負
担を主体として行われるものとすること。
3 道路、鉄道等オリンピック競技大会の開催に関連する公共事業につ
いては、その必要性等について十分な検討を行い、その規模を通常の
公共事業費の中での優先的配分により対処し得るものとし、国庫補助
負担率等国の財政措置は、通常のものとすること。
4 大会運営費は適正な入場料の設定、放送権収入等の事業収入等によ
り賄われるものとすること。
5 国の所要経費は将来にわたり既定経費の合理化により賄うものと
し、特別の措置は講じないこと。関係地方団体においてもその所要財
源の確保に努めるよう要請すること。
2
国への要求活動
オリンピック・パラリンピック競技大会の招致及び大会の成功には、国
の支援が必要不可欠である。そのため、あらゆる機会を活用し、国会や政
府に対して要求活動を行った。
(1) 国の施策及び予算に対する東京都の提案要求
都では、国の予算編成・政府施策の策定に都の意向を反映させるため、
各省庁に対する提案要求活動を年 2 回(6 月及び 11 月)実施している。
オリンピック・パラリンピック競技大会の招致に関しては、平成 18
(2006)年 6 月に初めて要求事項に加え、以後、開催都市決定まで 7
回にわたり要求を続けた。
招致に関する要求事項は、国に特に強く働きかけるべき事項に位置付
けられ、副知事から要求先省庁の事務次官等へ直接働きかけが行われた。
57
第一部 第2章
申請都市段階
要求先は、内閣官房、外務省、財務省、文部科学省、国土交通省であ
る。
要求概要(平成 18(2006)年 6 月から平成 19(2007)年 11 月まで)
・ 国の全面的なバックアップ
・ 国際的競技力の向上のための施設のさらなる設置推進
(2)
首都東京の重要施策に係る国と東京都の実務者協議会
平成 19(2007)年 12 月 11 日、政府が地方税の偏在是正に係る
暫定措置を講じたことを踏まえ、また、首都東京の活力の増進により、
我が国の発展を促すため、都の重要な施策について、実務者による国と
都の協議の場が設けられた。
協議事項は、「2016 年東京オリンピックへの全面的な支援」を始め
とする都が提示した重要施策 13 項目 28 施策であり、構成員は、都か
らは全副知事及び関係各局長、政府からは内閣官房副長官補を筆頭に関
係各省の局長である。
同月 20 日に第 1 回協議会を開催し、以後、開催都市決定まで 4 回に
わたり開催され、協議が行われた。
オリンピックに関する協議事項
・ 立候補ファイルに必要な財政保証の発行
・ 大会に必要な政府保証の発行
・ 競技施設及び道路等インフラ整備(国直轄分の着実な整備、都整備
分への財政支援)
(3)
スポーツ議員連盟総会等
スポーツ議員連盟は、スポーツの振興を促進することを目的に超党派
の国会議員で構成された議員連盟(会長は、麻生前総理大臣)である。
議員連盟の総会では、スポーツ振興について活発に意見交換等を行っ
ているが、その一環として、2016 年のオリンピック・パラリンピック
競技大会の招致に関しても、議題として取りあげられた。
平成 18(2006)年 10 月 24 日に開催された総会においては、副
知事及び JOC 会長が出席し、大会計画や今後のスケジュールの説明に
加え、閣議了解や政府保証の発行について支援を求めた。
平成 19(2007)年 11 月 21 日に開催された総会においては、JOC
会長、招致委員会事務総長、招致本部次長が出席し、招致活動の状況を
報告するとともに、国会決議について協力を求めた。
また、議員連盟では、スポーツ振興法の改正を検討するプロジェクト
チームを立ち上げ、スポーツ振興に関する国の責務や、国際競技大会の
開催支援等について議論を行った。このプロジェクトチームには、外部
58
第一部 第2章
申請都市段階
有識者として招致委員会事務総長も参加し、招致活動や大会開催におけ
る国の支援の必要性等を積極的に訴えた。
3
関係省庁連絡会議の設置
ア 議題内容及び構成
平成 19(2007)年 8 月 17 日、第 31 回オリンピック競技大会の
東京招致について、関係省庁間の緊密な連絡調整を図るため、
「第 31 回
オリンピック競技大会東京招致に関する関係省庁連絡会議」が設置され
た。会議は、招致活動終了までに全 5 回開催し、その時々の状況に応じ
た議事が設定され、必要に応じて都も出席要請を受け説明及び報告を行
なった。
申請都市段階で開催された計 3 回の会議では、開催時期の状況に合わ
せて、招致スケジュールの説明や開催概要計画の説明、閣議了解、申請
ファイルの作成、招致委員会への政府関係者の参画等が議題となり、そ
の後の各関係省庁との円滑な協議・調整に繋がった。
関係省庁連絡会議の構成
○議 長
内閣官房 内閣参事官(内閣官房副長官補付)
○構成員
内閣府 大臣官房企画調整課長
警察庁 交通局交通規制課長
総務省 大臣官房企画課長
法務省 入国管理局入国在留課長
外務省 大臣官房広報文化交流部人物交流室長
財務省 大臣官房総合政策課政策推進室長
文部科学省 スポーツ・青少年局競技スポーツ課長
厚生労働省 大臣官房総務課長
農林水産省 大臣官房総務課長
経済産業省 商務情報政策局サービス産業課長
国土交通省 総合政策局政策課政策企画官
環境省 大臣官房総務課長
防衛省 運用企画局事態対処課長
イ
早期の協力体制の構築
関係省庁連絡会議は、政府全体としての協力体制が構築され、円滑な
協議及び調整を進めるためには不可欠である。そのため、今後の招致活
動においても、国内立候補都市選定後、早急に主務官庁である文部科学
省と調整を行い、同様の会議を設置することが重要である。
59
第一部 第2章
申請都市段階
4 在外公館の協力
(1) 在外公館の協力
平成 19(2007)年 3 月 15 日、IOC 委員や NOC、IF 等関係者に
東京招致をアピールするため、外務省に対し、在外公館における国際プ
ロモーション活動の協力を要請した。
同年 2 月 7 日に IOC 理事会で採択された行動規範により、IOC 委員
及び関係者への直接訪問・個別招待や立候補都市選定前の国際プロモー
ション活動は禁止されていたため、各在外公館では、通常の外交儀礼や、
集団で行う社交行事等の機会を利用し、日本や東京のよいイメージを伝
えながら良好な関係を築くことに注力した。
また、スポーツ関連で相手国等に協力をするなどの活動を行うととも
に、これらの活動等で得た各国の状況等をまとめ、招致関係者に情報提
供を行なうなど、国際プロモーション活動の解禁に向けて、交流活動を
活発に行った。在外公館の活動から得られた膨大な情報は、その後のプ
ロモーション活動において活用された。
(2)
5
大使会議での協力要請
大使会議は、年に一度、4 地域別(アジア・大洋州、中南米、欧州、
中東・アフリカ)に各国駐在大使が外務省に一堂に会して行われている。
知事及び招致委員会幹部は、平成 19(2007)年度に開催された 4
地域すべての大使会議の場で、計 120 名の駐在大使に対し開催基本計
画や招致活動スケジュール、行動規範等の説明を行い、各在外公館の支
援について理解と協力を求めた。
在京大使館との情報連絡会
在京大使館との情報連絡会は、各国大使館や外国都市等の代表者との意
見交換を図るとともに、都政に対する理解を深めてもらうため、昭和 50
(1975)年以降毎年実施しているものであり、その年における都政に関
する重要なテーマや施設等を選定し、プレゼンテーションや視察を実施し
ている。
招致活動が本格化した平成 19(2007)年以降においては、都政の最
重要課題のひとつとして、オリンピック・パラリンピック競技大会の招致
について、観光における東京の魅力や都内中小企業の産業技術等と併せて
各国の大使等に紹介した。
このような機会は、在京大使や外国都市等の代表者に東京招致への理解
を得る良い機会であるとともに、自国にいる IOC 委員に東京をアピールし
てもらう契機ともなることから、招致活動としても貴重な機会となった。
○ 実施内容(申請都市段階)
実施日:平成 19(2007)年 11 月 22 日
テーマ:躍動する環境都市東京
60
第一部 第2章
申請都市段階
参加者:75 か国・91 名
場 所:東京ミッドタウン、東京のウォーターフロント等
水上バスで東京港及びオリンピック競技施設建設予定地
の視察時に招致本部が概要を説明
レセプション:東京国際フォーラムレセプションホール
JOC 会長、招致本部幹部が参加し、オリンピック招致につ
いて紹介
6
経済界との連携
東京招致を着実に推進していくため、主に以下の観点から経済界との連
携を進めた。
・ 国内招致活動を進めていくうえで、人口の約 4 割を占める企業人に招
致活動の浸透を図ること
・ 申請ファイルの作成に当たり、専門性の高い分野について企業から情
報提供を受けること
・ 招致活動経費の一部を民間からの寄付・支援で賄うため、経済界から
の支援を得ること
○ 活動内容(申請都市段階)
具体的には以下の活動を展開した。これらの活動を通し、各経済団体
や企業との信頼関係構築に成功し、立候補都市決定以降の招致活動の足
がかりを作ることができた。
・ 財団法人スポーツ振興資金財団に対し、経済界募金実施への協力要
請
・ 招致委員会設立時における御手洗冨士夫日本経済団体連合会会長、
山口信夫日本商工会議所会頭への理事就任要請
・ 東京商工会議所や招致に協力的な企業を中心とした勉強会や各種イ
ベントの共催等の検討
・ 申請ファイル作成のための勉強会の開催
・ 署名活動への協力要請
・ 経済界首脳の各国要人への働きかけ
7 東京都議会との連携
(1) 東京都議会オリンピック招致議員連盟との連携
ア 署名活動
平成 19(2007)年 9 月 21 日の招致議員連盟総会で、東京招致
を求める都民の熱い声援を署名として広く集めることで招致気運を盛
り上げ、招致議連として招致委員会において展開する国内キャンペー
ンを側面から支援することを目的に、「2016 年オリンピック・パラ
リンピックの東京招致を求める署名活動へのご協力のお願い」により
署名活動を実施することとした。
61
第一部 第2章
申請都市段階
各会員が、地元でのお祭りや地域での
活動の際に署名への協力を依頼した。
同年 10 月 21 日には、招致委員会及
び招致本部とともに、50 名以上の会員
が都内 8 会場(銀座・新宿・上野・木場
公園・原宿・巣鴨・八王子・立川)で街
頭署名活動を実施し、合計 10,886 人の
署名を受け、気運の盛り上げを図った。
各会員の集めた 30 万 1,150 人分の
署名(目録)の贈呈
署名は、同年 11 月 19 日に開催した開
催基本計画発表会において、知事に贈呈された。
イ 全国道府県への協力依頼
平成 20(2008)年 2 月 4 日の招致議員連盟役員会で、全国から
招致気運の盛り上げを図ることを目的に、全国道府県訪問を実施する
こととした。
同年 2 月 5 日から 19 日までの間と、4 月 3、4 日の間に、副知事
を始めとした招致本部職員と 2、3 名の招致議連会員延べ 147 名が
46 道府県の知事・副知事、道府県議会議長等を訪問した。訪問先で
は、招致への支援要請、招致の議会議決の要請、気運の盛り上げ活動
への協力依頼、のぼり旗・横断幕等の掲出依頼等を行った。訪問の様
子は 37 紙の地元新聞に掲載されるなど、全国でも関心の高いもので
あった。その結果、最終的には 34 道府県において招致決議を得た。
なお、このほか、全国知事会や全国都道府県議会議長会を始めとす
る地方六団体等からも招致決議を得た。
( 詳細は P538 資料 15 参照)
ウ その他の活動(申請都市段階)
・ 平成 18(2006)年 12 月 22 日
国(文部科学省)に対して「2016 年オリンピック競技大会東京
招致への国の支援についての要望」を提出した。
・ 平成 19(2007)年 10 月 28 日
原宿表参道ハロウィンパンプキンパレード 2007 に有志が参加
し気運の醸成を図る。
・ 平成 19(2007)年 11 月下旬以降
各会派代表者が東京都選出の国会議員を直接訪問し、招致活動へ
の一層の支援・協力を依頼した。
・ 平成 20(2008)年 5 月 17 日
「福岡・東京友情の夕べ」に有志が出席し、福岡県・福岡市との
友好を深める。
・ 平成 20(2008)年 6 月 4 日
都庁において、立候補都市決定を受ける瞬間を有志が見守った。
62
第一部 第2章
申請都市段階
(2)
都議会との連携
ア 2016 年オリンピック競技大会の東京招致への支援に関する意見書
平成 18(2006)年 12 月 15 日、都議会として、招致活動に対
する国の全面的な支援を求めるため、平成 18 年第四回都議会定例会
で「2016 年オリンピック競技大会の東京招致への支援に関する意見
書」が賛成多数で可決され、国に提出された。
2016 年オリンピック競技大会の東京招致への支援に関する意見書
本年 8 月 30 日、東京は 2016 年オリンピックの国内立候補都市
に決定し、11 月 22 日には東京オリンピック招致委員会が設立され
ました。今後は、世界に向けて本格的な招致活動が始まることとなり
ます。
世界の強豪都市との戦いに勝ち抜くためには、ロンドンの例を見る
までもなく、立候補都市そのものの努力だけでなく、国の全面的なバ
ックアップが不可欠です。
国が積極的に関与することは、我が国のスポーツ振興、競技力の向
上、スポーツによる国際親善や青少年の健全育成に大きく貢献し、多
くの国民に大きな夢と感動を与えることにもつながります。
よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、2016 年オリンピ
ックの東京招致を成功させるためには国の全面的支援が不可欠であ
ることから、次の事項の実現を強く要請します。
一 東京にオリンピックを招致することは国家的プロジェクトであ
るとの認識の下、国の全面的な支援について閣議了解を行うととも
に、必要な財政支援を行うこと。
二 海外における招致活動を円滑に行うため、外交手腕を発揮するな
ど、国を挙げた招致活動に必要な支援体制を速やかに整備するこ
と。
三 日本選手が国際大会で活躍することは、招致気運の醸成やオリン
ピックムーブメントの推進につながることから、ナショナルトレー
ニングセンターを複数配置するなど、国際的競技力の向上に努める
こと。
以上、地方自治法第 99 条の規定により意見書を提出します。
平成 18 年 12 月 15 日
東京都議会議長 川島 忠一
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣
外務大臣、財務大臣、文部科学大臣、内閣官房長官 あて
イ
2016 年オリンピック・パラリンピック競技大会の日本招致への支援
に関する意見書
平成 20(2008)年 3 月 28 日、国の一層の支援を求めるため、
63
第一部 第2章
申請都市段階
平成 20 年第一回都議会定例会で「2016 年オリンピック・パラリン
ピック競技大会の日本招致への支援に関する意見書」が賛成多数で可
決され、国に提出された。
2016 年オリンピック・パラリンピック競技大会の日本招致への支援に関する意見書
オリンピック、パラリンピック競技大会は、世界最高峰のスポーツ
大会としてだけでなく、「文化と平和の祭典」として有形・無形の大
きな財産を国民に残す世界最大のイベントであり、正に国を挙げての
一大プロジェクトです。
その実現に向けて、世界の強豪都市との競争に勝ち抜いていくため
には、東京都、国、経済界、JOC・スポーツ界、全国の自治体等が
一体となって、全力で招致活動に取り組んでいくことが必要です。
東京都議会は、2016 年大会に立候補した都市の議会の責任とし
て、財政保証を始め東京都に求められている必要な保証に全面的に同
意するとともに、招致気運の盛り上げなど全力で招致活動に取り組ん
でいく所存です。
しかしながら、オリンピック、パラリンピック競技大会の招致実現
のためには、都市の努力だけでなく、国の全面的なバックアップが不
可欠です。
よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、大会の東京招致に当
たり、次の事項を実現するよう強く要請します。
一 国会において、2016 年の第 31 回オリンピック競技大会、パ
ラリンピック競技大会東京招致決議を行うこと。
二 財政保証を始め、IOC から求められている政府保証書を発行す
ること。
三 大会に必要な競技施設や道路等のインフラの整備について、国家
事業として最大限の支援を行うこと。
以上、地方自治法第 99 条の規定により意見書を提出します。
平成 20 年 3 月 28 日
東京都議会議長 比留間敏夫
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣
総務大臣、外務大臣、財務大臣
あて
文部科学大臣、国土交通大臣、内閣官房長官
8
東京都議会の活動
都議会では、2016 年に開催される第 31 回オリンピック競技大会の東
京招致に関する調査審議及び必要な活動を行うことを目的として、オリン
ピック招致特別委員会(後に「オリンピック・パラリンピック招致特別委
員会」に改称)を設置した。
64
第一部 第2章
申請都市段階
(1)
オリンピック・パラリンピック招致特別委員会の設置時期
ア 第 17 期(平成 17(2005)年 7 月から平成 21(2009)年 7 月まで)
平成 18(2006)年 10 月 5 日の平成 18 年第三回都議会定例会
において、123 名(自民党・民主党・公明党・共産党・生活者ネット
ワーク)の議員の動議により設置
イ 第 18 期(平成 21(2009)年 7 月から)
平成 21(2009)年 9 月 15 日の平成 21 年第三回都議会定例会
において、115 名(民主党・自民党・公明党)の議員の動議により設
置
(2)
調査審議等実施状況
ア 第 17 期
委員会 20 回、理事会 15 回、視察 1 回
イ 第 18 期
委員会 4 回、理事会 3 回(平成 21(2009)年 12 月 9 日現在)
(詳細は P537 資料 14 参照)
9 招致推進会議の設置
(1) 招致推進会議
ア 会議概要
平成 18(2006)年 4 月の招致本部の発足に伴い、オリンピック・
パラリンピック競技大会を東京に招致するための課題について、全庁
的な視点から検討するとともに、関係各局との連携を強化するため、
「東京オリンピック招致推進会議」を設置した。
(ア) 構成
議長:招致担当副知事
委員:各関係局長等
(イ) 検討内容
オリンピック・パラリンピックの招致に向けた計画、招致気運の
醸成及び各局関連事業等について、協議、調整を行う。
(ウ) 関連事業部会の設置
オリンピック関連事業の推進のため、以下の部会を設置し、テー
マに基づき検討を行った。
○ スポーツ・イベント部会
テーマ:スポーツ関連イベントを活用した PR 活動、スポーツ
振興策 等
○ アスリート支援策構築部会
テーマ:アスリート育成支援策 等
○ 文化・観光イベント部会
テーマ:東京ならではの文化、観光資源を活用した都市の魅力
65
第一部 第2章
申請都市段階
の効果的なアピール方法 等
○ 都市づくり部会(詳細は次頁(2)を参照)
テーマ:オリンピックと「10 年後の東京」計画の描く都市像
との整合を図り、都市づくりの観点から説得力のある
招致計画を策定 等
イ 開催実績(国内選考段階及び申請都市段階)
(ア) 招致推進会議
開催日
主な議題
平成 18(2006)年
1
・大会概要計画の策定
4月 3日
2
5 月 12 日 ・東京オリンピック基本方針
3
6 月 30 日 ・開催概要計画書
4
9月
5
4 日 ・国内立候補都市選定委員会
11 月 27 日 ・招致委員会設立
平成 19(2007)年
・招致気運盛り上げ(関連事業部会)
6月 8日
・東京オリンピック「招致ロゴ」
7
7 月 20 日
・「都市づくり部会」の設置
以後、より実務的な検討、調整を行っていくため、関係各局の課
長級職員で構成する庁内各局連携会議を中心に実務的な検討を進め
た。
6
(イ)
関連事業部会
開催日
会議名
第 1 回 関連事業部会合同部会
平成 18(2006)年
スポーツ・イベント部会
11 月 27 日
アスリート支援策構築部会
文化・観光イベント部会
平成 19(2007)年
第 2 回 アスリート支援策構築部会
1 月 17 日
3 月 28 日 第 2 回
スポーツ・イベント部会
7 月 11 日 第 3 回
アスリート支援策構築部会
8月
都市づくり部会
2日 第1回
66
第一部 第2章
申請都市段階
開催日
会議名
第 2 回 関連事業部会合同部会
スポーツ・イベント部会
8 月 21 日
アスリート支援策構築部会
文化・観光イベント部会
都市づくり部会
11 月
(2)
2日 第2回
都市づくり部会
招致推進会議(都市づくり部会)
ア 部会概要
平成 19(2007)年 7 月 20 日、招致推進会議の下に、東京の都
市づくりの方向性と招致計画との整合を図るため、関係局等の部長級
による都市づくり部会を設置した。さらに、各課題に応じて、関係局
等の部課長級による5つの専門部会を、都市づくり部会の下に設置し
た。
2016 年大会の招致は、東京がさらに機能的で魅力的な都市へと生
まれ変わる絶好の機会であり、招致計画の内容は「10 年後の東京」
計画の描く都市像と密接不可分である。特に、会場施設計画とその予
定地周辺のインフラとの整合を図ることや、新規施設に対する都市計
画等の法的位置付けを整理することが課題であった。
イ 開催実績
平成 19(2007)年 8 月 2 日に第 1 回都市づくり部会を開催し、
招致の概要、会場施設や交通インフラの検討状況等を説明した。
その後、オリンピックスタジアム周辺整備・晴海のまちづくり合同
専門部会、選手村専門部会及び交通インフラ専門部会をそれぞれ 2 回
開催し、各会場施設と周辺整備との調整、都市計画変更等の手続きス
ケジュールの検討、観客輸送手段の検討等を行った。
同年 11 月 2 日の第 2 回都市づくり部会では、各専門部会の検討状
況を報告し、申請ファイルの内容を固めた。
ウ 検討結果
会場施設計画や交通インフラ計画の策定にあたっての諸課題を抽出
し、調整した結果、主要施設が中心に集中し、ほとんどの会場が半径
8km 圏内に納まったコンパクトな会場配置計画を策定することがで
きた。
10 庁内各局連携会議の設置
(1) 会議概要
オリンピック・パラリンピック競技大会の招致に向けて、招致活動に
関する最新の情報提供や、各局事業との連携による招致気運の醸成等に
67
第一部 第2章
申請都市段階
ついて実務的に検討・調整するため、平成 19(2007)年 11 月、都
庁内に関係各局の課長級職員で構成する「庁内各局連携会議」を設置し
た。
ア 構成
議長:招致本部参事(事業調整担当)
委員:各局関係課長等
イ 検討内容
各局事業との連携による具体的な PR 方策 等
ウ 開催実績(平成 19(2007)年度)
開催日
主な議題
1 11 月 16 日 当面の気運盛り上げ
2 12 月 4 日 のぼり旗・横断幕・ポスターの配布計画
3
1 月 24 日 オリンピック招致に係る各局連携の強化
4
2 月 15 日 オリンピック・ムーブメントの推進
(2)
各局事業との連携
本連携会議を開催することで、各局への迅速な情報提供や実務的な意
見交換を行うことができ、各局と密に連携して PR 活動を行うことがで
きた。
さらに、各局がそれぞれの事業目的に従って実施する多数の事業にお
いて、招致本部が提供したリーフレットの配布、のぼり旗、ポスターの
掲出等を行うことができた。
<連携例>(平成 19(2007)年度)
・ 2007 ジュニアスポーツアジア交流大会(生活文化スポーツ局)
・ 下水道デーイベント(下水道局)
・ 東京商店街グランプリ(産業労働局)
・ 東京都エイズ予防月間講演会(福祉保健局)
68
第一部 第2章
申請都市段階
第5節 IOC による立候補都市の選定
1 選考結果及び立候補都市の選定
(1) 申請ファイルとワーキンググループレポート
IOC に提出された 7 申請都市の申請ファイルは、IOC 委員、IF、専門
家等 13 名から構成されたワーキンググループにより評価、順位付けさ
れ、「ワーキンググループレポート」として IOC 理事会に報告された。
IOC 理事会は、このワーキンググループレポートを受けて、立候補都
市を選考する。
(2)
ワーキンググループレポートでの評価内容
平成 20(2008)年 6 月 4 日に公表されたワーキンググループレポ
ートにおける 7 申請都市の評価内容は、以下のとおりである。
ア 総合順位
総合評価順位は以下のとおりであり、東京は 1 位の評価を受けた。
1 東京
2 マドリード
3 シカゴ
4 ドーハ
5 リオデジャネイロ
6 プラハ
7 バクー
イ 東京の評価
東京が特に高く評価された点は、宿泊施設、選手村、セキュリティ、
環境、インフラ等であった。
(ア) 宿泊施設
既存の客室数が IOC の要求基準(40,000 室)を大きく超過して
いる。
(イ) 選手村
選手村からほとんどの競技会場への移動距離は平均 9km と会場
配置計画がコンパクトである。
(ウ) セキュリティ
オリンピックの実現に十分な警備資源と経験を保有している。
(エ) 環境
緑地の増加、再生水利用、排出ガス規制等の環境対策が行われて
おり、総じて良い環境である。
(オ) インフラ
高密度で効率的な鉄道インフラと高速道路ネットワークで競技会
場への良好なアクセスが可能である。
(カ) その他
IOC による都市の世論調査結果では、支持率が 59%であった。
69
判断基準
内 容
70
2
5
3
(40)
(60)
○大会関係者の宿泊施設 部屋数 (80)
(40,000室以上)の確保 宿泊構想 (20)
(50)
(50)
4 オリンピック選手村
6 宿泊施設
7 輸送構想
平均点
3
○計画全般と大会が各都市に残す
レガシーの全体的な見解
11 全体計画とレガシー
最終結果
(総合評価)
3
2
10 財政
○申請都市及び国内で過去10年間 数
に開催した主な国際競技大会 質
過去に開催した
スポーツ大会実績
9
○大会開催を可能とする財政能力
○政府による支援の可能性
○国の格付け 等
○大会期間中の安全対策(警備体制 等)
安全確保及び
安全対策
8
○大会期間中の輸送コンセプト
○各施設間の距離と移動時間
(60)
(40)
3
(40)
(40)
(20)
○立地条件(会場までの移動距離)
○コンセプト(宿泊施設数、建物の構造 等)
○大会後の後利用
3 競技会場
3
4
(35)
(35)
(30)
○既存施設の利用度
○新設会場の実現可能性
○会場配置の合理性と新設会場の後利用 等
2 一般的インフラ
環境面における状況 ○環境の現況(緑化、大気 等)
5
○大会開催が環境に与える影響
及び影響
5
(51)
(34)
(5)
(10)
2
(70)
(15)
(15)
ウ
エ
イ
ト
○既存の輸送インフラの充実度
○計画中の輸送インフラの実現可能度
○空港
○メディアセンターの立地条件・後利用 等
○招致に対する政府、自治体の支援の状況
政府保証、法的問題、
○大会開催に伴う法的問題の有無
1
世論
○世論調査の結果 等
番
号
最低
7.5
7.9
東京
東京
東京
9.6
7.6
7.5
7.9
東京
7.9
8.0
6.7
ドーハ
7.2
8.6
9.0
8.3
東京
8.0
8.0
マドリード
8.6
8.2
マドリード
9.0
9.0
マドリード
10.0
8.8
8.9
8.8
マドリード
8.9
マドリード
9.0
マドリード
最高
1
最高
2
最低
東京
東京
6.9
7.6
7.3
7.4
7.5
東京
東京
東京
7.0
7.0
6.0
7.1
シカゴ
東京
9.4
シカゴ
7.4
8.4
8.1
7.8
マドリード
9.0
8.5
8.0
8.2
8.5
9.8
8.8
マドリード
8.7
マドリード
8.7
8.9
8.8
6.4
ドーハ
7.0
シカゴ
6.8
ドーハ
5.5
ドーハ
7.0
6.0
バクー
7.8
5.4
シカゴ
7.1
6.5
7.4
8.0
7.0
6.7
シカゴ
5.5
リオデジャネイロ
8.5
マドリード
8.0
7.9
マドリード
8.5
8.8
マドリード
8.2
8.6
8.2
7.5
8.7
最低
ドーハ
最高
3
7.0
5.5
シカゴ
東京
最低
5.5
ドーハ
6.5
ドーハ
5.5
ドーハ
6.0
シカゴ
6.9
ドーハ
5.8
7.4
8.0
8.0
7.9
6.9
6.5
ドーハ
5.0
シカゴ
6.5
シカゴ
6.6
リオデジャネイロ
7.1
8.3
7.7
8.0
8.6
7.4
リオデジャネイロ
7.4
8.5
最高
4
<最高得点の高い順に記載>
リオデジャネイロ
2016 年大会申請都市の評価結果
6.2
6.8
バクー
5.8
シカゴ
5.3
5.6
5.3
シカゴ
5.5
6.0
ドーハ
4.6
5.0
ドーハ
6.0
6.8
6.4
6.0
リオデジャネイロ
7.0
7.7
リオデジャネイロ
7.6
7.0
リオデジャネイロ
7.8
6.4
リオデジャネイロ
7.6
リオデジャネイロ
8.1
7.2
7.2
リオデジャネイロ
7.9
最低
シカゴ
最高
5
5.0
プラハ
4.2
プラハ
5.7
6.0
5.1
プラハ
5.4
プラハ
5.6
5.0
6.7
6.4
6.1
7.5
5.3
5.0
プラハ
4.0
プラハ
4.8
プラハ
4.4
プラハ
4.4
プラハ
5.5
リオデジャネイロ
5.8
7.4
7.7
リオデジャネイロ
6.3
6.0
7.4
最低
バクー
最高
6
4.8
5.0
6.4
6.4
5.8
7.0
4.8
6.0
7.2
5.6
5.6
6.7
最低
4.3
3.9
バクー
3.0
バクー
4.8
バクー
3.8
バクー
4.4
バクー
4.8
プラハ
2.6
バクー
4.2
バクー
4.9
プラハ
3.2
バクー
3.8
バクー
4.3
プラハ
最高
7
第一部 第2章
申請都市段階
第一部 第2章
申請都市段階
(3)
立候補都市の選定
平成 20(2008)年 6 月 4 日、IOC 理事会がギリシャ共和国アテネ
市で開催され、2016 年オリンピック・パラリンピック競技大会の立候
補都市の選定が行われた。
その結果、開催地に立候補を申請していた東京は、立候補都市に選定
された。
○ 選定結果
IOC は、ワーキンググループレポートの評価結果を参考に、以下の
4 都市を立候補都市に選定した(IOC 発表順)。
・シカゴ
・東京
・リオデジャネイロ
・マドリード
2
アテネ市での記者会見
IOC理事会で立候補都市に選定されたことを受け、現地(アテネ市)で
記者会見を行った。
この記者会見は、初めての海外メディア向けプロモーションであるとと
もに、海外メディアも多数現地入りしており、多くのメディアと直接接触
できる初めての機会でもあった。
(1) 開催日時
平成20(2008)年6月4日 20時30分(現地時間)
(2) 開催場所
ディバーニ カラベル ホテル
(3) 記者会見出席者
竹田JOC会長、河野招致委員会事務総長、小谷招致委員会理事、中村
招致本部招致推進部長
(4) 記者会見内容
・立候補都市選定に対する謝辞
・「結び」の説明
・東京の計画の優位性
・
「10年後の東京」計画とオリ
ンピック招致
・競技会場の配置計画
・オリンピックが日本、東京、
オリンピアンにもたらすも
の
・今後の抱負
アテネでの記者会見
3
メディア対応
IOC による立候補都市選定の発表という、招致に対して多くの注目が集
71
第一部 第2章
申請都市段階
まる機会を捉えて好意的な露出を獲得し、招致気運を盛り上げるためのメ
ディア対応を行った。具体的な取組は以下のとおりである。
(1) 発表時の様子を公開
立候補都市発表の映像を大画
面に映し出し、発表の瞬間を見
守る関係者、スタッフ等の様子
を公開した。
日時:平成 20(2008)年
6 月 5 日 0 時から
会場:招致委員会大会議室
立候補都市発表を見守る招致関係者
(2)
知事コメントの発表
知事は、立候補都市選定を受けて、以下のコメントを発表した(6 月
5 日 0 時 30 分)。
アテネで行われた IOC 理事会において、2016 年オリンピック・パ
ラリンピックの立候補都市の一つとして東京都が選ばれました。これ
までの取組みが IOC から高い評価を得て、東京オリンピック・パラリ
ンピックの実現に向け、大きく前進することが出来ました。
これから本格的な国際招致活動が始まります。
成熟した日本の素晴らしさ、東京の魅力を世界に示し、日本だから
こそできる、最先端技術を駆使した新しいオリンピック・パラリンピ
ックとして、地球環境や平和の大切さを世界に発信していきます。
皆さんと力を合わせ、是非とも 2016 年東京オリンピック・パラリ
ンピックを実現したいと思います。
(3)
知事のテレビ出演
平成 20(2008)年 6 月 5 日早朝のテレビ番組(生放送)において、
立候補都市選定後、初めて知事がメディアに登場し、第一声を伝えた。
(4)
知事記者会見の実施
東京としての姿勢を明らかに
すること、及びこれから本格的
な国際招致活動が始まることか
ら、今後の招致活動における意
気込みを示すことを目的に、知
事の記者会見を実施した。
日時:平成 20(2008)年
6月5日 9時
会場:都庁第一本庁舎 7 階ホール
72
知事の記者会見
第一部 第2章
申請都市段階
4 IOC による立候補都市とのミーティング
(1) 概要
立候補都市選定後の平成 20(2008)年 6 月 6 日、IOC 事務局の招
致都市担当主催により、シカゴ、東京、リオデジャネイロ及びマドリー
ドの 4 立候補都市から各 4 名ずつの参加によるミーティングがヒルトン
ホテル内の会議室にて開催された。
招致委員会事務総長を始め各都市とも CEO が出席する中、非常に好
意的な雰囲気で行われ、フェアプレイの精神が印象付けられた。
(2)
テクニカル・プレゼンテーションの新設
ミーティングの中で、招致決定までの第 2 段階での国際プロモーショ
ン活動について、おおまかなスケジュールが発表され、平成 21(2009)
年 6 月に、スイス連邦ローザンヌ市において全 IOC 委員を対象とした
「テクニカル・ミーティング」と呼ばれる技術的なプレゼンテーション
が実施されることが明らかとなった。
これは、投票権を持つ IOC 委員から、「立候補都市への訪問が禁じら
れているため立候補都市のことを知る機会が少ない」という強い要望を
受け、その実施が検討されることになったものである。直前の IOC 理事
会で議題となり、最終的には、平成 20(2008)年 8 月の北京市にお
ける IOC 総会において、その実施が決定された。
この「テクニカル・ミーティング」は、2016 年大会の招致で初めて
導入されたものであり、東京を始めとするすべての立候補都市にとって、
予想していない全く新たな公式プレゼンテーションの場であった。
この「テクニカル・ミーティング」は、平成 21(2009)年に入っ
てから、IOC より、「立候補都市による IOC 委員に対するブリーフィン
グ(2016 Candidate Cities Briefing for IOC Members)」という名
称に変更されている。
なお、本報告書においては、この公式行事の内容をわかりやすく表現
する目的から、
「テクニカル・プレゼンテーション」という表現で統一し
てある。
73