環境配慮型集合住宅エコビレッジ松戸

―― 実 施 例 ――
環境配慮型集合住宅エコビレッジ松戸
−住宅用氷蓄熱・多機能ヒートポンプシステム適用−
橋 淳 一
設備技術グループ 諸 星 周 子
大成建設!
設計本部 設備グループ ■キーワード/住宅・省エネルギー・氷蓄熱・躯体蓄熱・ヒートポンプ・排熱利用
1.はじめに
エコビレッジ松戸は,21世紀にふさわしい住宅とし
てエネルギー資源の節約と有効利用や地域共生を意識し
た,住みやすい環境創造のコンセプトを最大限具現化す
ることをめざして計画された。平成10年の春にコンペ
が行われ,平成11年1月に着工し,平成12年6月に竣
工した。当住宅は50戸の家族棟と65戸の単身棟からな
り,そのほかに集会棟,駐車場棟を付設している。
具体的な計画内容としては,健康で快適な住環境をめ
ざして,q日当たりと風通しのよい建物計画,w健康で
安全な長寿命住宅,e人が集まり自然と共生するランド
スケープ,r全電化住宅における電力負荷平準化などを
写真−1 南面外観
行った(写真−1・2)
。
2.建築概要
名 称 エコビレッジ松戸
建 設 地 千葉県松戸市
設計監理 大成建設1
一級建築士事務所
敷地面積 6,811.41㎡
建築面積 2,466.22㎡
延床面積 8,400.68㎡
階 数 地上5階
最高高さ 17.04m
構 造 RC造
主要用途 集合住宅(社宅・寮)
写真−2 内庭からの外観
工 期 平成11年1月∼平成12年6月
屋上緑化
・高断熱
節水器具・定量止水弁
・節水
全電化厨房
雨水利用
太陽光利用
・換気量削減
・ビオトープ
・太陽光発電
ペアガラス
・高断熱
洋室
高気密・高断熱
廊下
台所
食堂・居間
氷蓄熱・多機能ヒートポンプ
セントラル給湯ヒートポンプ
・エネルギーの有効利用
・エネルギーの有効利用
ダブルルーフ
高気密・高断熱
・高断熱
・省エネルギー
・快適環境
貯湯槽
・省エネルギー
・快適環境
ペアガラス
高階高
洋室
自然換気
廊下
台所
食堂・居間
・負荷削減
・快適環境
・高断熱
・高断熱
洋室
・床下収納
・設備配管スペース
*メンテナンスが容易
*将来の住戸プラン変更に対応
台所
・省エネルギー
食堂・居間
廊下
台所
・環境安全
食堂・居間
健康材料
太陽光発電
・住人の健康
・外灯に利用
・24時間換気
・住人の健康
・快適環境
台所
洋室
台所
廊下
台所
食堂・居間
ビオトープ
台所
洋室
長寿命建築
家庭菜園
生ゴミコンポスト
・高耐久性コンクリート
・住人同士のコミュニケーション
・資源の有効利用 ・ゴミ容量削減
図−1 省エネルギー技術
ヒートポンプとその応用 2001.3.No.54
家族棟住宅
単身棟住宅
― 12 ―
躯体蓄熱・ふく射冷房
・エネルギーの有効利用
・環境保全
雨水浸透
・資源の有効利用
・環境保全
プレファブ構法
・資源の有効利用
・廃材の削減
井戸
洋室
省エネスイッチ
・省エネルギー
洋室
・資源の有効利用
節水器具・定量止水弁
・節水
全熱交換器
既存樹木の保存・活用
洋室
全熱交換器
・24時間換気
・住人の健康
・快適環境
廊下
台所
洋室
日よけルーパー
逆梁工法
台所
洋室
壁面緑化
・ゆとり,解放感
―― 実 施 例 ――
4−2 幹線動力設備
3.設備計画
借室および自家用変電設備から各住戸,エレベータな
設備計画にあたっては,全電化住宅における電力負荷
どに電源をCVTケーブルで供給している。
平準化と省エネルギーを実現するエネルギー・資源マネ
電灯系 1φ3W 100V/200V
ジメントを目標に計画を進めた。当建物で適用した省エ
動力系 3φ3W 200V
ネルギー技術を図−1に示す。
警報盤 水位,機器警報など
3−1 建築と設備の融合による効率的快適環境の実現
4−3 照明コンセント設備
快適でランニングコストのかからない住宅を実現する
住戸内および共用部は蛍光灯を基本とし,省エネルギ
ために,各種の省エネルギーシステムを採用した。まず
ーを考慮している。また各棟共用部はタイマーで点灯制
建築計画においては,パッシブ手法を用いて建物負荷の
御し,外灯には太陽光発電システム組み込み形の器具を
削減をできるだけはかった。主な設備負荷削減手法とし
採用している。単身棟は各室玄関部分に省エネルギース
て,分棟配置や3面開口,戸内の欄間の設置による自然
イッチを設置し,カードを抜くことによって室内のすべて
換気(通風),ルーバーや壁面緑化による日射制御,屋上
の電源が切れるように考慮している。住戸内コンセント
緑化やダブルルーフ,ペアガラスの採用,外壁や屋根の
は情報用コンセントと一般用コンセントを併用している。
高断熱・高気密化を行っている。
4−4 電話設備
家族棟住宅内,単身棟住宅内は先行配線を行い,アナ
設備的には,全熱交換器による熱回収24時間換気,
空調の排熱を利用する給湯,住宅には世界で初めて氷蓄
ログ回線,ISDN回線に対応している。
熱を採用した個別空調を行っている。また給湯ヒートポ
4−5 インターホン設備
各住戸内に住宅情報盤(TVモニター付き)を設置して
ンプの冷排熱を利用して,躯体蓄熱による放射冷房も行
っている。
いる。
3−2 氷蓄熱・多機能ヒートポンプ「ホームアイス」
4−6 テレビ共同受信設備
屋上にUHF,VHF,BSアンテナを設置し,各住戸に
の開発
住宅での電力負荷平準化を実現させるために,家族棟
の各戸に冷暖房と給湯が行える多機能ヒートポンプと氷
受信している。
4−7 自動火災報知設備
家族棟,単身棟は住戸用自動火災報知設備,共同住宅
蓄熱槽を組み合わせた一体形の空調機「ホームアイス」
を新規開発し,夜間電力の有効利用と製氷時と冷房時の
用非常警報設備を設置し,また駐車場棟は自動火災報知
排熱を電気温水器の予熱に利用した。
設備を設置している。
3−3 排熱回収縦形躯体蓄熱・放射冷房システム「カ
4−8 昇降機設備
q
ベクール」の開発
常用エレベータ
機械室レス形
単身棟のセントラル給湯ヒートポンプの排熱排風を回
収して,各戸の内壁に設置した縦形のボイド壁に通して,
家族棟 9人乗り
60m/分 ×1台
躯体蓄熱を行うと同時に壁面からの放射冷房を行うシス
単身棟 9人乗り
60m/分 ×1台
テム「カベクール」を開発した。
3−4 資源リサイクル
単身棟共用ヒートポンプ給湯
業務用蓄熱調整契約
リサイクル材の活用,生ゴミのコンポストを設置して
いる。
RF
3−5 低廉な電力料金の利用
家族棟住宅
時間帯別電灯契約
WH
B
WH
5F
B
EB
WH
単身棟住宅
時間帯別電灯契約
WH
凡例
EB
ゾーンごとに最も有利な電力料金の適用を考えた。
キュービクル
時間帯別
契約用メーター
電気温水器用
ブレーカ
電気温水器
WH
B
4.電気設備概要
EB
4F
4−1 受変電設備
WH
東京電力配電線路から,6kVで引き込み可能な管路
3F
を駐車場棟1階借室まで敷設し,自家用変電設備は借室
WH
B
家族棟共用
単身棟共用
(電灯)従量電灯 業務用電力
(動力)低圧電力
WH
EB
から6kVで受電している。
東京電力借室(駐車場棟1階)
WH
B
EB
2F
330kVA
全体共用
業務用電力
WH
WH
B
EB
自家用変電設備
東京電力借室 キュービクル
1F
全体共用設備(駐車場棟1階)
120kVA
単身棟共用設備(単身棟R階)
80kVA
図−2 電力契約形態
― 13 ―
ヒートポンプとその応用 2001.3.
No.54
―― 実 施 例 ――
w
省エネルギーやランニングコストの視点から設備計画を
機械駐車設備
昇降ピット式3段駐車
収容台数 ×96台
行えば,常に在室者があり,終日空調などの設備的需要
昇降ピット式2段駐車
収容台数 ×22台
のある家族棟と,昼間には在室者がなく,夜間に設備的
需要の集中する単身棟ではそれぞれに適した空調・衛生
4−9 避雷設備
設備は自ずと異なる。
家族棟屋上に突針を設置している。
4−10
q
5−1 家族棟
そのほかの設備
家族棟には,50戸すべてに小形の氷蓄熱空調設備で
電力契約形態
電力契約形態は次のとおり(図−2)。
ある氷蓄熱・多機能ヒートポンプ「ホームアイス」を導
全 体 共 用 業務用電力
入し,空調負荷の夜間シフトをはかっている。また,気
家族棟共用
(電灯)
従量電灯
密性の向上にともない室内の換気を確保するため,全熱
家族棟共用
(動力)
低圧電力
交換器による全室0.5回/時間の24時間換気を導入してい
る(写真−3)。
家族棟住宅 時間帯別電灯契約
単身棟共用
(給湯)
ホームアイス
(60Hz)
の仕様を表−1に示す。
業務用蓄熱調整契約
5−2 単身棟
単身棟共用
(そのほか) 業務用電力
単身棟は夜間に空調負荷が集中するため,各戸の空調
単身棟住宅 時間帯別電灯契約
w
設備は蓄熱式とせず,通常のルームエアコンとした。ま
LAN用配管設備
た夏季には,次項で記述するヒートポンプによるセント
将来のLAN構築に備え,配管を設置している。
ラル給湯にともなって発生する冷排熱を,各戸の袖壁に
5.空調設備概要
採用したボイド壁に通風し,排熱を用いた排熱回収躯体
当住宅では家族棟と単身棟に対して,それぞれの特性
蓄熱を行っている
(写真−4・5)
。また建物の気密性向
に合わせた異なるコンセプトの設備計画を行っている。
上から換気設備として,家族棟同様0.5回/時間の換気能
写真−3 家族棟室内
写真−4 給湯ヒートポンプと排熱回収ファン
表−1 ホームアイス仕様
(60Hz)
単 位
仕 様
蓄 熱 利 用 時
kW(kcal/hr)
6.4(5,500)
非 蓄 熱 時
kW(kcal/hr)
5.4(4,600)
蓄 熱 利 用 時(最大)
kW(kcal/hr)
5.2(4,500)
蓄 熱 利 用 時(平均)
kW(kcal/hr)
4.7(4,000)
非 蓄 熱 時
kW(kcal/hr)
4.3(3,700)
氷 蓄 熱 時 ※3
MJ(kcal)
36(8,400)
温 水 蓄 熱 時 ※4
MJ(kcal)
28(6,750)
項 目
冷 房 能 力 ※1
性 能
暖房低温能力 ※2
有効蓄熱量
単相200V
電 源
Hz
電源周波数
全密閉ロータリー式
形 式
コンプレッサ
60
定格出力×台数
kW
1.5×1
クランクケースヒータ
W
33
※1.冷房能力は,室内側吸込空気乾球温度27℃湿球温度19℃,室外側吸込空気乾球温度35℃湿球温度24℃,室内側風量急運転時の値。
※2.暖房能力は,室内側吸込空気乾球温度20℃,室外側吸込空気乾球温度2℃湿球温度1℃,室内側風量急運転時の値。
※3.室外側吸込空気乾球温度29℃で17℃の水温から4時間運転を行った場合の値。
※4.室外側吸込空気乾球温度2℃湿球温度1℃で,0℃の水温から3.5時間運転を行って45℃の温水とした場合の値。
ヒートポンプとその応用 2001.3.No.54
― 14 ―
―― 実 施 例 ――
Kitchen
給湯配管
電気温水器
500
1,
500
r外気用
熱交換器
q氷蓄熱槽150
※1
空調サプライ
給湯配管
w圧縮機
(暖房時は温水蓄熱槽)
フィルタ
自動湯張り,
高温差し湯
配管
1,
800
e空調用熱交換器
y
レタンダクト
t
250φ
サプライダクト
250φ
給湯用熱交換器
空調サプライ
♪
Bath Room
空調レタン
空調レタン
u給湯加熱用水配管
Living Room
(2室対応)
※1:電気温水器は,給湯加熱配管
接続用の分岐取り付けほか,
多少の変更が必要である。
図−3 システム図
全熱交換器
サ
ー
ビ
ス
バ
ル
コ
ニ
ー
MB内
和 洋
室 室
廊
下
便
所
浴
室
洗
面
氷蓄熱・多機能ヒートポンプ
台
所
バ
ル
コ
ニ
ー
LD
二重床内チャンバー
図−4 家族棟空調換気系統図
写真−5 躯体蓄熱放射冷房壁
夏
写真−6 ホームアイス
季
冬
季
中
間
季
夜
力を有する全熱交換換気扇を各室に設置した。
ルームエアコン(壁掛け形)
冷房能力 2.2kW
暖房能力 3.2kW
ルームエアコン(壁掛け形)
冷房能力 3.2kW
間
×60台
氷蓄熱時
給湯加熱+温水蓄熱時
給湯加熱時
・氷蓄熱を行いながら,
その排熱を給湯加熱に
利用する。
・外気を熱源として給湯加
熱すると同時に夜間温水
蓄熱を行う。
・ヒートポンプによって貯
湯を行う。
× 5台
凡例
暖房能力 4.5kW
電気温水器
貯湯
昼
5−3 氷蓄熱・多機能ヒートポンプ「ホームアイス」
今回家族棟に50台を導入した氷蓄熱・多機能ヒート
間
冷房
+
給湯加熱時
氷蓄熱利用時
+
給湯加熱時
舗などをターゲットとして開発を行ってきたものであ
ヒート
ポンプ
暖房運転時 温水蓄熱利用時
・冷房を行いながら,その排 ・外気を熱源としてヒート
熱を給湯加熱に利用する。 ポンプが作動する。
・タイマーで正午より氷を ・朝の暖房ピーク時に温水
利用して,ピークカット運
蓄熱利用する。
転を行う。
ポンプ「ホームアイス」
(写真−6)は,家庭や小規模店
外気
熱交換器
空調用
氷蓄熱層 コイル
内:本体内蔵
り,150rの氷蓄熱槽を内蔵するこれまでにない蓄熱式
小形空調機である。また冷房や製氷にともなう温排熱に
図−5 運転パターン
よる給湯機能,およびヒートポンプ給湯機能をあわせも
つ多機能ヒートポンプである
(図−3)。
び和室の2室を空調する。レタン空気はリビングや廊下
本体はバルコニーに設置し,二重床内に敷設したダク
に設けた開口から床下に導き,2重床内のレタンダクト
トによって室内に空調空気を導き,リビングルームおよ
を通じて空調機に戻している
(図−4)。夏季には,冷房
― 15 ―
ヒートポンプとその応用 2001.3.
No.54
―― 実 施 例 ――
表−2 省エネルギー・省コスト効果試算結果
1
ピークシフト効果 26%
(氷蓄熱)
2
省エネルギー効果
(年間) 35%
(電気温水器比),44%
(ガス湯沸かし器比)
氷蓄熱を行うことで,夏季ピーク時の電力負荷の26%を夜間にシフト可能。
効率のよいヒートポンプ給湯の効果によって,大幅な省エネルギー化が期待できる。
3
省コスト効果(年間) ¥92,000/年
夜間電力を効率よく,しかも有効に活用することでランニングコストを大幅に削減。
4
イニシャルコスト 110万円
(氷蓄熱・多機能ヒートポンプ+電気温水器のシステム価格)
5年以内でイニシャルコストの増分を回収可能。
冷風
需要と外気温度を条件に氷蓄熱モードに入る。また冬季
には,暖房需要と夜間の温度を条件に温水蓄熱を行う。
年間の運転パターンを図−5に示す。給湯は本体に内
蔵した三重管水−冷媒熱交換器と循環ポンプによって行
う。当システムは貯湯槽として市販の電気温水器を組み
洋室
バルコニー
合わせることを大きな特徴としている。住戸内の電気温
キッチン 便所 洗面 浴室
屋外廊下
躯体蓄熱・放射壁
水器と多機能ヒートポンプを二重床内の水配管で結び,
電気温水器タンク下部の水を多機能ヒートポンプに引き
込み,加熱して温水器に戻す。夏季の冷房,製氷にとも
図−6 単身棟空調換気系統図
なう排熱利用給湯,および温排熱の出ない時季に行うヒ
ートポンプ給湯によって,45℃までの給湯加熱を高効
率に行うことができる。
セントラル
ヒートポンプ給湯機
氷蓄熱・多機能ヒートポンプシステム
「ホームアイス」
の採用効果を試算するため,7住宅・建築省エネルギー
外気温度−5℃冷風
ボイド壁送風機
ボイド壁(放射壁)
(穴開きコンクリート板)
ベッド
機構「建築環境・省エネルギー講習会テキスト」を参考
各室に給湯
とし,夏季,中間季,冬季の機器稼動パターンを想定し
た。このパターンに対して,当システムを採用した住宅
RF
5F
と,通常のルームエアコン+深夜電力電気温水器を採用
4F
した一般住宅,およびルームエアコン+ガス給湯器を採
用した一般住宅を設定し,それぞれのケースの電力負荷
3F
チャートを作成した。この電力負荷チャートを用いて,
2F
ピークシフト効果,省エネルギー効果,省コスト効果に
1F
ついて試算した。表−2にその試算結果を示す。
5−4 排熱回収躯体蓄熱放射冷房「カベクール」
単身棟屋上に設置したヒートポンプ給湯機は,稼動時
には外気温度よりも5℃低い冷風を大量に発生する。こ
の給湯機は夜間稼動するため,夜間の外気温度が25℃
図−7 カベクール
となる熱帯夜であっても,20℃の冷風が得られる。こ
の冷風を外気温度と給湯機の運転を条件に屋上に設置し
た送風機によって,単身棟各戸の袖壁を縦に貫くボイド
(図−6∼8)に屋上から1階床下に向けて送風する。こ
6.衛生設備概要
6−1 給水設備
れによって,夜間には各戸の袖壁が冷却され穏やかな放
正面道路から家族棟,単身棟の2系統で上水を引き込
射冷房が期待できるほか,躯体に蓄熱された冷熱によっ
む。両系統とも加圧送水方式を採用している。計量は単
て朝方の空調負荷を軽減する。夜間の室内の熱バランス
身棟では一括とし,家族棟では個別計量としている。各
を図−9に示す。
戸の主要な水栓には節水金物を挿入し,加圧送水による
圧力ムラに起因する水の出すぎを抑えている。
ヒートポンプとその応用 2001.3.No.54
― 16 ―
―― 実 施 例 ――
ヒートポンプ給湯機排熱
による冷風(約20℃)
ボイド壁
(穴開き
コンクリート壁)
洋室
外気温度
25℃前後
室内温度
26℃前後
ふく射冷房
貫流熱量
微 小
人体発熱
50kcal/h
冷蔵庫など
50kcal/h
ふく射冷房
バルコニー
ふく射冷房
Void PC壁
(穴開きコンクリート壁)
冷房能力 120kcal/h
図−9 夜間室内熱バランス
ル給湯を行う。業務用蓄熱調整契約によって,夜間に貯
洗面
湯槽を60℃まで沸き上げる。ヒートポンプ給湯機の
COPのよさと,有利な電力料金体系による大幅な省エネ
UB
ルギー・省コストが期待される。また,給湯の使いすぎ
玄関
を防ぐため,ユニットバスのカランには定量止水弁を設
置している。
ヒートポンプ給湯機 加熱能力
45kW
貯湯槽 SUS444
図−8 ボイド壁設置位置
3φ200V 16kW
8k
セントラルヒートポンプ給湯システムと,各室に電気
温水器を設置した場合での省エネルギー・省コスト効果
受 水 槽 40k
を比較すると,セントラルヒートポンプ給湯方式の方が
FRPサンドイッチパネル
(10k×2槽+8k×2槽に分割)
60%も消費エネルギーが少なく,ランニングコストは
約1/4となった。
加圧給水ポンプ 200r/min×350kPa×2.2kW×2台
6−3 排水・通気設備
150r/min×300kPa×1.1kW×2台
排水・通気は,家族棟,単身棟ともに集合管による排
(自動交互同時運転)
6−2 給湯設備
水システムを採用している。屋内は台所とその他系統を
家族棟,単身棟ともに給湯にヒートポンプを用いるこ
別に排水し,台所系統はグリーストラップを介して屋外
とで,給湯システムの高効率化をはかっている。家庭で
で他系統と合流し,下水本管へ放流している。雨水は当
消費されるエネルギーのうち,給湯に用いられるエネル
該地域の雨水流出抑制量を緑地貯留,浸透管,浸透桝,
ギーの占める割合はとくに高く,給湯の高効率化は家庭
雨水貯流槽で満足した。雨水貯留槽に入った雨水は,降
の省エネルギーを考えるうえできわめて有効となる。
雨10時間後にポンプで排出され,雨水本管へ放流され
q
る。
家族棟
前述の氷蓄熱・多機能ヒートポンプ「ホームアイス」
と電気温水器の併用による給湯を行っている。電気温水
7.おわりに
器に供給された水は,まずヒートポンプによって45℃
当建物に採用した技術については,現在1年間の予定
まで昇温され,その後電気温水器のヒーターによってさ
で実測を行っており,その効果を確認しつつある。また
らに昇温される。夏季にはヒートポンプによる排熱給湯
当建物の地球環境負荷低減の成果は,2000年10月に開
だけで,電気温水器のヒーターをOFFにしても利用でき,
催されたGBC−2000国際大会(オランダ)においても発
使い方によっては大幅な省エネルギー・省コストが可能
表を行った。
なお,氷蓄熱・多機能ヒートポンプの開発にあたって
となる。
電気温水器 370
w
は,日本ピーマック1,1アルファプライムジャパンの
1φ200V 4.4kW
多大なご協力を得ました。誌面をお借りしましてお礼申
単身棟
屋上に設置したヒートポンプ給湯機によってセントラ
しあげます。
― 17 ―
ヒートポンプとその応用 2001.3.
No.54