病院食の患者満足度向上を目指して 〜軟菜食としての揚げ物提供に向けて

健育会グループ 第4回TQM活動発表セミナー
テーマ
施
病院食の患者満足度向上を目指して~軟菜食としての揚げ物提供に向けて
設
名 熱川温泉病院
発
表
者 稲葉美和
リ ー ダ ー 稲葉美和
サ ブ リ ー ダ ー 横山由姫乃
猪股祥子、沼舘泰行
メ ン バ ー 川口真理子
清水祥史
30~60 分
サ ー ク ル 名 19時が限界です。
活
動
期
間 H21年5月~ 継続中
会合回数
20 回
会 合 状 況
1回あたりの会合時間
テーマ選定の理由
当院の軟菜食では「揚げ物」が出ていません。しかし、「私も是非、あれが食べたい。」と揚げ物を指差す患者
さんが散見されました。できるだけ多くの患者さんに満足度の高い病院食を食べていただくため、このテーマ
を選定しました。
1現状の把握
患者さんへのアンケート
目的:軟菜食の患者さんのうち「揚げ物を食べたい」という人の割合を把握する
対象:軟菜食の患者さん50名(2009年9月3日時点)
方法:記名対面聴取のアンケート
<項目> フライ
食べたいか(食べたい・どちらでもよい・食べたくない)
天ぷら
唐揚げ
結果:
・食べたいか
18%
20%
4%
20%
4%
10%
12%
64%
68%
フライ
食べたい
6%
62%
12%
天ぷら
唐揚げ
まとめ:6割強の患者さんが「揚げ物を食べたい」と答えた
当院病院食の基準の問題点
当院における「軟菜食」の定義
“消化が良く、刺激が少ない”≒低残渣食
当院における「軟菜食」の現状
“咀嚼・食塊形成に問題がある嚥下障害患者” に主として提供されている
嚥下食における「揚げ物」の位置付け
硬くなる・衣がのどに張り付く/等から、一般的に嚥下食から外されている
しかし、文献的根拠に乏しい
2目標設定
目標:嚥下食として「揚げ物」の適否をあきらかにする
軟菜食
嚥下食としての軟菜食
“咀嚼・食塊形成がしやすい”
基準の明確化
治療食としての低残渣食
“消化が良く、刺激が少ない”
病院食における患者満足度の向上
-1-
揚げ物を提供する
どちらでもよい
食べたくない
聴取困難
健育会グループ 第4回TQM活動発表セミナー
病院食の基準
基準が変わることでの
調理師への負担増加
基準の理由付けが
基準外の食材における
患者さんへのリスクが
病棟への周知が
不明確
必要
あいまい
キザミ食では衣が
はがれやすい
嚥下食としての
リスクが不明
基準を見直す
ことがなかっ
た
IHカートで再加熱時
IHカートで再加熱時
より硬くなってしまう
良い食材は高価
調理法
費用
揚げ物が
嚥下食として適切か?
嚥下食として適切か? 揚げ物は硬い
中まで火がとおって
いないといけない
軟菜食として揚揚揚揚げげげげ物物物物をををを提供していな い
3要因分析
4対策立案
対策項目
何を
何のため
・揚げ物は硬い
・キザミ食では衣
がはがれやすい
揚げ物各
種を
・嚥下食としての
リスクが不明
・基準外の食材
における患者さ
んへのリスクが
不明確
揚げ物の
誤嚥のリ
スクを
・基準の理由付
けがあいまい
いつ
どこで
誰が
硬さ、衣の VF検査前
状態を確認 までに
するため
試食会
ST
試食する
栄養士
安全性を証 全患者さ
明するため んに提供
するまで
に
VF検査
医師
確認する
ST
栄養士
病院食の 明確にする 全患者さ
基準を
ために
んに提供
するまで
に
医局会
-2-
+
お試し
医師
ST
栄養士
どのよう
にする
区分けし
統一する
健育会グループ 第4回TQM活動発表セミナー
5対策実施
①~④の手順で、嚥下食としての揚げ物の安全性を確認する
施行食品:天ぷら=エビ・ししとう・さつま芋・かぼちゃ
フライ=白身魚・えび・コロッケ・トンカツ
唐揚げ=豆腐・鶏肉
①スタッフによる試食
方法:食べたときの食材の硬さや衣の状態を確認する
結果:全ての食品で衣ははずれバラバラとなり、口腔内に残留する
→あんかけで改善されるため、キザミ形態以下は必ずあんかけをかけることとする
②スタッフでのVF検査
方法:ビデオ嚥下造影(VF)検査において、従来の検査食と揚げ物の嚥下状態を比較する
結果:揚げ物では咀嚼時間が延長する
食塊の送り込み、嚥下反射の位置、咽頭内残留では、既提供食品と大きな差は認めない
③嚥下障害患者でのVF検査
方法:ビデオ嚥下造影(VF)検査において、従来の検査食と揚げ物の嚥下状態を比較する
結果:誤嚥は認めない
その他の嚥下状態はスタッフによるVF検査と同様
揚げ物の安全性確認
④嚥下障害患者でお試し
方法:実際の食事で揚げ物を提供し、日常の食事での嚥下状態を確認する
結果:誤嚥等の問題発生なし
あんかけの量が多く食材同士が付着し一口量が多くなる
→あんかけの量の基準を決める
エビフライ
きざみソースあんかけ
一口大
6効果の確認
患者さんへのアンケート
目的:軟菜食の患者さんで、「揚げ物を食べたい」という希望は満たされたかを把握する
対象:軟菜食の患者さんで揚げ物を試した8名
方法:記名対面聴取のアンケート
<項目> フライ
味(おいしい・普通・まずい)
天ぷら
食べやすさ(食べやすい・普通・食べにくい)
唐揚げ
また、食べたいか(食べたい・どちらでもよい・食べたくない)
-3-
健育会グループ 第4回TQM活動発表セミナー
結果:
・味
0.0%
12.5%
12.5%
おいしい
37.5%
50.0%
50.0%
37.5%
まずい
唐揚げ
天ぷら
フライ
普通
62.5%
37.5%
・食べやすさ
12.5%
0.0%
12.5%
0.0%
食べやすい
37.5%
12.5%
フライ
62.5%
87.5%
75.0%
普通
食べにくい
唐揚げ
天ぷら
・また、食べたいか
25.0%
0.0%
12.5%
12.5%
食べたい
12.5%
50.0%
フライ
75.0%
75.0%
37.5%
唐揚げ
天ぷら
どちらでもよい
食べたくない
まとめ:多くの患者さんが「揚げ物」を「おいしい」「食べやすい」「また食べたい」と答えた
7標準化
何を
何のため
いつ
どこで
揚げ物の嚥下の状 安全性を証明
態と誤嚥のリスクを するために
全患者さん
に提供する
までに
試食会 医師
VF検査 ST
お試し 栄養士
確認する
病院食の基準を
明確にするた
めに
全患者さん
に提供する
までに
医局会
区分けし統一する
揚げ物の提供を
安全に継続す
るため
全患者さん
に提供後、
定期的に
昼食
医師
VF検査 ST
検討会
誰が
医師
ST
栄養士
どのようにする
評価・見直しをする
栄養士
8今後の課題
揚げ物を全ての嚥下障害患者に安全に提供する為に
①軟菜食の基準の変更
②定期的な評価
更なる病院食の患者満足度の向上の為に
現在、嚥下障害患者に提供していない料理について、嚥下食としての適否を検討
嚥下食のバリエーションを増やす
-4-