迷路空間における移動方法と注視行動の 関係に関する研究 - 能動的探索歩行と車椅子による受動的移動の比較を通して - 鈴木利友 須貝成芳 岡崎甚幸 京都大学 大学院 工学研究科 生活空間学専攻 研究目的 能動的移動と受動的移動における注視行動の比較を行う 能動的移動 受動的移動 自らの意思に基づき 身体を移動すること 自らの意思に関係なく 身体が移動すること 例:歩行 例:動く歩道 車などの運転 他人が運転する車に乗る 仮想現実空間における移動 映画やテレビの観賞 関連研究 Held & Hein (1963) 能動的移動ができる環境で育てたネコと 受動的移動しかできない環境で育てたネコの 成長後の行動を比較 ↓ 視覚と運動の協応の発達のためには 能動的な移動が不可欠 Steinback & Held (1968) 被験者自身が動かしている標的を注視する場合と 実験者が動かしている標的を注視する場合で 注視行動を比較 ↓ 被験者自身が標的を動かす場合は うまく注視が追従できるが、 実験者が動かす標的を注視する場合は うまく注視が追従できず、サッカードが多くなる 研究目的 能動的移動と受動的移動における注視行動の比較を行う 能動的移動 受動的移動 実験用迷路における探索歩行 実験者が押す車椅子に乗り迷路内を移動 ・人間が環境と能動的にかかわりあいながら 移動する場面 ・経路学習に伴う注視行動の変化も観察可能 ・立った状態での実験は危険なので中止 ・車椅子のシートを高くし、 歩行者の目の高さに合わせた 1. 実験方法 実験場所 規模 8.4mx7.2m 通路幅 1.2m 壁面 高さ2.4mx幅1.2mの木製パネル 天井 半透明ビニール膜で被覆 ⇒・室内の蛍光灯などを遮蔽 ・迷路空間内照度の均質化 実験用迷路平面図 実験の風景 1. 実験方法 能動的探索歩行実験 後方撮影 頭部の向きなどを撮影 アイカメラ(EMR-8) アイカメラの調整器 バッテリー 実験の風景 1. 実験方法 能動的探索歩行実験 実験の風景 後方撮影の映像 アイカメラの映像 教示: スタートからゴールまで最短経路を通って移動してください。 最短経路は1本しかありません。 頭は自由に上下左右に動かしてもらって構いません。 1. 実験方法 受動的探索歩行実験 上方撮影 頭部の向きなどを撮影 アイカメラ(EMR-8) アイカメラの調整器 バッテリー 高くしたシートの下に格納 実験の風景 1. 実験方法 受動的探索歩行実験 実験の風景 上方撮影の映像 アイカメラの映像 教示: これから、迷路内をスタートからゴールまで移動します。 通る経路は必ずしも最短経路とは限りません。 1. 実験方法 実験手順 被験者10人を2つのグループに分ける 被験者5人 SI AH AG HO IN アンケート ・実験の感想 能動的探索歩行 能動的探索歩行 能動的探索歩行 能動的探索歩行 ・迷路の地図や風景の描画 1. 実験方法 実験手順 被験者10人を2つのグループに分ける 被験者5人 SI AH AG HO IN アンケート 能動的探索歩行 能動的探索歩行 能動的探索歩行 能動的探索歩行 能動的探索歩行 被験者5人 ST HT AI IT SA 受動的移動 受動的移動 受動的移動 受動的移動 アンケート ・実験の感想 ・迷路の地図や風景の描画 1. 実験方法 実験手順 被験者10人を2つのグループに分ける 被験者5人 SI AH AG HO IN アンケート 能動的探索歩行 能動的探索歩行 能動的探索歩行 能動的探索歩行 能動的探索歩行 被験者5人 ST HT AI IT SA アンケート 受動的移動 受動的移動 受動的移動 受動的移動 能動的探索歩行 1. 実験方法 実験手順 アンケート 能動的探索歩行 能動的探索歩行 能動的探索歩行 能動的探索歩行 SI 1回目 2回目 同じ経路 ST 1回目 3回目 同じ経路 2回目 4回目 同じ経路 3回目 能動的探索歩行 5回目 同じ経路 4回目 1回目 アンケート 受動的移動 受動的移動 受動的移動 受動的移動 能動的探索歩行 1. 実験方法 実験手順 アンケート 能動的探索歩行 能動的探索歩行 能動的探索歩行 能動的探索歩行 SI AH AG 能動的探索歩行 HO IN 5回目 同じ経路をなぞる ST HT AI IT SA 1回目 アンケート 受動的移動 受動的移動 受動的移動 受動的移動 能動的探索歩行 2. 実験結果および考察 2-1. 経路選択を間違えた回数 被験者 性別 SI 男 AH 男 AG 男 HO 女 IN 女 能動的探索歩行実験 能動的探索歩行実験 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 2 1 2 2 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3回目以降では 経路選択を間違えない 同じ経路 被験者 性別 ST 女 HT 男 AI 女 IT 男 SA 男 受動的移動実験 能動的探索歩行実験 1回目 2回目 3回目 4回目 1回目 2 1 2 2 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 1 0 4回迷路を移動したのに 経路選択を間違える 2. 実験結果および考察 2-2. 注視場所 遮蔽縁 occluding edge 付近への注視 入隅 corner 付近への注視 1)2)以外の 壁面への注視 1)斜交い注視 と 3)壁面注視 を合わせると総注視時間の約90%を占める。 2. 実験結果および考察 2-2. 注視場所 ↑ 斜交い注視 ↑ 斜交い注視 ・能動的探索歩行実験では試行を重ねると ・受動的移動実験では 斜交い注視が減少し、壁面注視が増加する 斜交い注視が増加する被験者と 減少する被験者がいる 2. 実験結果および考察 2-3. 注視パターン 被験者が移動しながら 被験者が移動せずに 注視が2回以上連続して 注視が2回以上連続して 同じ方向へ移動 同じ方向へ移動 1)2)中に注視が 逆方向に1回移動 1)∼3)以外の 注視パターン 1)流動的注視 と 4)散発的注視 を合わせると総注視時間の約90%を占める。 2. 実験結果および考察 2-3. 注視パターン ↑ 散発的注視 ↑ 散発的注視 ・能動的探索歩行実験では試行を重ねると 注視が流動的になる 経路を間違えた ・受動的移動実験では試行を重ねると 注視が流動的になる被験者と 散発的になる被験者がいる 2. 実験結果および考察 2-4. 曲がり運動およびその手前における注視行動 能動的移動実験と受動的移動実験の注視行動の違い 曲がり運動およびその手前で顕著 受動的移動実験特有の注視行動が見られた 2. 実験結果および考察 2-4. 曲がり運動およびその手前における注視行動 能動的移動実験と受動的移動実験の注視行動の違い 曲がり運動およびその手前で顕著 ・L字路における注視行動 2. 実験結果および考察 2-4. 曲がり運動およびその手前における注視行動 能動的移動実験と受動的移動実験の注視行動の違い 曲がり運動およびその手前で顕著 ・L字路における注視行動 ・分岐路における注視行動 2. 実験結果および考察 2-4-1. L字路における注視行動 10 14 15 13 11 能動的探索歩行実験 注視、頭部、身体の順に回転をはじめる 12 9 8 15 14 7 13 12 11 10 9 8 7 能動的探索歩行実験 被験者AG1回目 2. 実験結果および考察 2-4-1. L字路における注視行動 18 19 17 20 受動的移動実験 注視、頭部、身体の協応関係が一様でない 頭部先行型注視 身体・頭部が先に回転を開始し、 その直後に注視が回転する例 20 19 15 14 13 18 17 12 16 15 14 13 12 受動的移動実験 被験者HT1回目 2. 実験結果および考察 2-4-1. L字路における注視行動 16 13 14 15 受動的移動実験 注視、頭部、身体の協応関係が一様でない 逆行型注視 身体・頭部が回転している間に 一時的に注視が逆方向に移動する 9 8 7 11 6 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 受動的移動実験 被験者IT4回目 2. 実験結果および考察 2-4-2. 分岐路における注視行動 34 42 能動的探索歩行実験 44 45 41 40 分岐路の手前から進行方向を 注視している 43 45 36 44 43 42 38 41 40 35 33 38 37 36 35 34 33 能動的探索歩行実験 被験者SI1回目 2. 実験結果および考察 2-4-2. 分岐路における注視行動 43 受動的移動実験 39 58 57 59 56 47 55 63 注視、頭部、身体の協応関係が 一様でない 60 61 62 40 42 44 48 45 49 56 55 53 54 51 52 50 49 48 47 46 45 44 43 42 41 40 39 50 52 54 62 63 61 59 60 58 57 身体や頭部が回転し始めるまで 進行方向とは別の方向を注視している 受動的移動実験 被験者HT1回目 2. 実験結果および考察 2-4-2. 分岐路における注視行動 41 40 39 37 44 32 33 43 36 42 受動的移動実験 注視、頭部、身体の協応関係が 一様でない 38 35 44 43 42 41 40 39 38 37 36 2つの通路に注視が分散している 35 34 33 32 受動的移動実験 被験者SA1回目 結語 能動的移動と受動的移動における注視行動の違い 試行を重ねるに従っての変化 能動的移動 斜交い注視の減少 壁面注視の増加 散発的注視の減少 流動的注視の増加 受動的移動 上記変化が見られる被験者と見られない被験者がいる 経路をよく学習する被験者は注視が流動的になる 曲がり運動時およびその手前における注視行動 能動的移動 注視が先に進行方向へ向き、頭部・身体がそれに追従 注視が身体を誘導する 受動的移動 注視・頭部・身体の協応関係が多様 例:身体・頭部が回転した直後に注視が移動 身体・頭部の移動中に注視が逆方向に向く 分岐路手前で進行方向と逆を注視する 注視が分散する
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