CANCER newsletter Ko u s e i CHEMOTHERAPY 最近における CANCER がん化学療法の進歩 CHEMOTHERAPY 胃がん、大腸がん 外科医の立場から はじめに は男性で1 . 肺がん 2 .胃がん 3 . 大 腸がん、女 性で1 . 大 腸がん 2 . 肺がん れています。ここでは最 近 大きく進 歩してきている、胃がん、大 腸がんに対 する抗がん剤治 療についてお話ししたいと思います。 れますが、がん細胞が増殖するための信号を受け取る シズマブは、がんの増殖に直接働くこれまでの抗がん EGFR(上皮成長因子受容体) というタンパク質と結び 剤とは違って、がんに栄養や酸素を送るための血管が つくことによって、がんの増殖を抑える働きがあります。 つくられること (血管新生) を抑えることによって、がんに 従って、がんの細胞にEGFRがない場合には効果が得 栄養が届かないようにして増殖のスピードを低下させま られませんので、治療を始める前にEGFRに関する検 す。 また、がんそのものの異常血管を修復して、併用す 査を行う必要があります。 る抗がん剤をがんに届きやすくする働きもあり、ほかの またトラスツズマブは抗HER2抗体であり,がん細胞 抗がん剤と併用されることで効果を高めることが期待さ の表面にHER2というタンパクが過剰に発現された胃 れています(図2)。 がんの治療に用いられます。 このタンパクが発現するの セツキシマブ・パニツムマブも大腸がんに対し使用さ は全体の胃がんの約20%といわれています。 腫瘍血管(異常) 24 腫瘍血管の〝正常化〟 手島 伸 3 .胃がんとなっています。これらに対する治 療はその進 行の度 合いによっ て手 術 、抗がん剤 治 療 、内 視 鏡 治 療 、放 射 線 治 療 、免 疫 療 法などが行わ そのうちの一つで大腸がんに対して使用されるベバ 正常血管 2 0 0 9 年の国 立がん研 究センターのデータによると、がんの死 亡 者 数 Vol. てしま しん ■ 平成 元 年 産業医科大学卒業 ■ 平成 5 年 国立仙台病院 外科医師 ■ 平成22年 独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター外科医長 01 ↑血管透過性亢進、血管径・長さ・ 分子標的薬の出現 密度の増加、蛇行し、間質圧が上昇 図2/ベバシズマブによる腫瘍組織への抗がん剤到達 抗がん剤の種類は大きく分けて①化学療法薬(殺細 これまでの抗がん剤とは異なり正常細胞には しますが、 胞性抗がん剤)②サイトカインなどの非特異的免疫療 作用しないため副作用が少ないことも期待されています。 の4種類に分類されます。 これまで胃がん、大腸がんに 対しての抗がん剤治療は殺細胞性抗がん剤が主役と なっていましたが、分子標的薬の出現によってここ10年 の間に大きく変わってきています。 抗がん剤の じゅうたん爆撃 爆弾 がん細胞 分子標的治療薬の ピンポイント攻撃 ミサイル がん細胞 ❶ 手術によってがんが取り除かれた後に 再発予防を目的に行われる補助化学療法 手術で切除できたと思われる場合でも目に見えない 分子標的治療とは体内の特定の分子を狙い撃ちし がんが残っていてあとで育ってくるのが再発です。 これ てその機能を抑えることにより病気を治療する治療法 を予防する目的で行われるのが補助化学療法です。手 です(図1)。正常な体と病気の体の違いあるいはがん 術のすぐあとですし、治ってしまっている可能性もありま 細胞と正常細胞の違いをゲノムレベル・分子レベルで解 すから、あまり副作用の強い薬は使えません。 明し、がんの増殖や転移に必要な分子を選択して抑え ることで治療することができます。分子標的薬のみで治 療されることは少なく、従来の抗がん剤と併用して使用 02 けがされています。 正常細胞 図1/分子標的薬の作用機序 正常細胞 100 全生存率︵%︶ 法薬③内分泌療法薬(ホルモン療法剤)④分子標的薬 これらの抗がん剤治療はがんの状態によって使い分 80 手術+TS-1 手術単独 60 40 20 0 追跡期間中央値:3 年 HR=0.68[0.52-0.87] 3 年生存率 手術+TS-1 80.5% 手術単独 70.1% p=0.0024 (stratified log-rank test) 0 症例数 手術+TS-1 529 手術単独 530 1 2 3 4 518 508 390 372 207 176 55 53 5(年) 図3/胃がん術後補助化学療法 補助化学療法が本当に再発を減らす効果があるの で、進行度が 4 段階中のII期からIII期の胃がん手術後 かどうか、 これまで十分な証拠がありませんでしたが、 に経口抗がん剤(TS -1) を1年間服用すると再発が減 日本全国の100余りの病院が協力して行った臨床試験 ることが わかりました(図 3) 。このため現在では、飲み K O U S E I S E N D A I C L I N I C 03
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