大学を基軸とした地域振興 − イギリスの政策動向と研究レビューからの示唆

第 1 稿 (DRAFT) Not for quote
大学を基軸とした地域振興 − イギリスの政策動向と研究レビューからの示唆
北川
1.
1−1
文美(国立教育政策研究所)
はじめに −「大学と地域振興」の政策動向と研究の枠組み
大学と地域、知識のガバナンス
今日、世界各国において大学が経済成長に果たす役割を支援するためのさまざまな支援政策が
見られる。特に、
「地域のニーズ」に対する大学の貢献に関する認識は 1990 年代後半以降、政策
において、また研究領域としても各国で高まっている(IMHE, 1999; Shattock, 1997; Goddard,
1997; De Gaudemar 1997)。大学による知識の生成、高度な人材・労働力の訓練、大学の研究を
基盤にした知識の商業化や起業といった活動群、さらにこれらを可能とする産学官の人的な交流、
労働市場の流動性、国際的な人的移動(Saxenian
2006)など、大学と地域の経済的成功を可
能にする要素についての研究は、欧米での事例研究を中心に、飛躍的に増加している。
日本においても大学と地域の関係に着目した研究群が同時期以降見られ(天野 1998、市川 2001、
稲永・村澤・吉本 2000)、その視点も近年ますます多様化・拡大している(稲永 2006、白川・白
川 2007)。さらにヨーロッパ連合諸国、OECD 諸国においてこの分野において増加している国際研
究プロジェクトの動向も国際的な関心の高まりと関連していると考えられる(CRE, 1998;
OECD/IMHE, 1999; 20071)。
大まかに見て、大学と地域の関係性に関する議論にはふたつの流れが見られる。ひとつが、知
識経済における地域の産業・経済振興、イノベーションにおける大学の役割を重視する議論であ
る。ふたつめが、知識社会における地域の人材開発、社会開発や生涯教育といった観点から社会
資本の発達における大学の役割を強調する議論である。
「学習する地域(Learning Region)」論を唱えたフロリダ(1995)は,「地域」を「学習」
と「知識創造」の場としてとらえた。すなわち、グローバルレベルの知識経済の調整次元を国家
ではなく、知識の実践の「場」である地域に求めたといえる(Florida, 1995)。一方地域の側で
も「地域再生」など地域が抱える課題への処方箋として、大学の知的基盤の強化と活用への期待
を高めている(白川・白川2007)。近年とくに注目すべき政治的な文脈は,地域開発に携わる中央
政府,公共団体および地方自治体が,大学がより地域のニーズに対応するよう,政策的な観点か
ら新しいインセンティブ・メカニズムを構築しているという状況である。こうして、大学は「地
域における資産(asset)」であるという認識が高まっている。
現在さかんに行われる地域における大学の経済的役割に関する議論の発端は、1980年代から
1990年代にかけて、特にアメリカのシリコン・バレー、ボストン周辺、イギリスのケンブリッジ
1 1999 年版は和訳が出版されている。OECD(編)
『地域社会に貢献する大学』2005.
現在のプロジェクトの最終報告は 2007 年秋に出版の予定。
http://www.oecd.org/document/46/0,3343,en_2649_34525_2668590_1_1_1_1,00.html#1
1
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地域などにおける研究大学の持つさまざまな機能とハイテク産業の興隆との関連性への着目に
よるものと考えてよいだろう(Castells &Hall, 1994
2
Saxennian, 1994
SQW, 1985, 2000)。
シリコン・バレーにおけるスタンフォード大学,アメリカ東部のマサチューセッツ工科大学,
イギリスのケンブリッジ大学など,いわゆる「ワールド・クラス」と称される研究大学がその研
究成果によって生み出される「知識」の商業化を通じて地域の経済発展を誘引するケースはよく
知られている。しかし、これらのいくつかの成功事例にもとづくモデルが,全く異なる地理的条
件,異なる大学の組織的条件に適用可能なのかどうかについては多くの論者は懐疑的である。3
近年、「シリコン・バレー」型のハイテク産業興隆を目指すのではない、異なるタイプのさ
まざまな性格の大学を機軸とした地域振興・社会開発の異なるあり方についてもいくつかのモデ
ルが見出されるようになっている。研究大学のみにとどまらず、多様な大学のモデルと機能を視
野に入れ、多様な地域における知識生成と学習のあり方を考慮した、多様な「学習する地域
(Learning Region)」のあり方に関する議論が現在重要になっているといえる。たとえば、歴
史的に地域に根ざして発展してきた大学が周辺地域の中小企業やコミュニティとともに研究開
発に従事するケース,また,比較的新しい大学がサイエンス・パークや企業との連携を通じて産
学連携,地域振興に貢献するケース、学生の教育・訓練を通じて地域産業のニーズに応えるケー
スなど,各国・各地域のさまざまな政治経済的な状況を背景に,多様な事例の紹介と分析が行わ
れている。しかし,これらの機関レベルでの事例研究の蓄積は,地域あるいは国家レベルにおけ
る政策手段に有効な示唆を十分に与えているとはいえない。
さらに、知識生成における大学の異なる役割と「知識のガバナンス」のあり方が考えられる。
オーストラリアにおける大学と地域開発について論じた Gunasekara は、大学の役割には、知識
の「生成」と「開発」とがあり、特に後者の場合、さまざまな制度を通じた知識のガバナンスの
あり方が大学と地域との関係を大きく条件付けると論じる (Gunasekara, 2006)。
本稿の貢献は,大学と地域開発という観点から,地方分権による地理的・空間的なガバナンス
の議論と大学機関レベルの戦略、経済・社会開発に関する政策との間の制度的なダイナミズムを
明らかにし,そこでのさまざまな課題と政策的な示唆を提示することにある。地域振興と大学と
いう観点からみたときに,以下のような基本的な問いをたてることができる。第一に,大学が自
らの位置する地域において果たす役割とは何か。その障壁になっているのはどのような要因か。
第二に,大学の地域に対する貢献を高めるための公共政策は有効か,またこれらの政策を維持す
るためにはどのような要因が重要になるのであろうか。
このペーパーでは、近年の「大学と地域振興」に関する政策と制度のあり方を概観した上で、
これらが大学の戦略的な動きにどのように結びつくのか(否か)を、イギリスをケースにして論
じていく。ここで,イギリスという場合,連合王国(イングランド,スコットランド,ウェール
2 さらにこれらと平行して、1980 年代から中央政府主導の、大学や研究所を中心としたハイテク産業、ハイテク地域形
成の支援策がフランスや日本、韓国で見られたが、これらの「シリコン・バレー」を目指すハイテク技術政策の地域へ
の効果に関しては、限定的との見方が多い(e.g. Castells &Hall, 1994)。
3
大学の経済的な役割の重要性を強調する現在の政策的環境は,ある種の大学にとり,
「累積した優位性」
(Owen-Smith,
2003)を与えているという指摘もある。
2
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ズ,北アイルランド)をさす。まず「大学と地域振興」に関してイギリスを取り上げる背景を簡
単に述べる。
1−2
大学ガバナンスのモデルと地理的なマルチ・レベル・ガバナンスの関係
大学ガバナンスのモデルと地理的なマルチ・レベル・ガバナンスの関係を考えるために、いく
つかの国ごとの類型化が役に立つ。国レベルでの大学のガバナンスが主流の国はイギリス(イン
グランド)
、日本、韓国などだが、大学自身がもつ自立性の度合いにはかなりの相違が見られる。
一方、地域分権化の進んだ国としては北米(アメリカ合衆国やカナダやオーストラリアがあげら
れるが、ヨーロッパ大陸の国々の中には、スペインのように分権化が進んでいる国、ドイツのよ
うに地域分権に加え、国家レベルのシステム強化が進んでいる場合もある。大学のガバナンスを
考える際に、財政とその他の政策的な側面とに分けて考えると以下のような類型化が可能になる
(Charles, 2006)。
表1
大学のガバナンス(財政と各種政策)における政府のマルチ・レベル度の相違
(Charles, 2006 より作成・加筆)
地方・州政府
オーストラリア↓
弱い 強い
政策的分権化
両方
国
スペイン →
USA
ドイツ
←
カナダ
UK(イングランド)
日本
韓国
国
両方
財政的 分権化
弱い
地方政府・州政府
強い
高等教育システムの財政を大きくとらえた場合に、中央政府が高等教育のおもな資源の担い手
である「中央集権型」と,地域政府,州政府などの地域行政が高等教育の資金を担う「地方分権
型」とに分けられる。イギリスは日本と同じく、「中央集権型」に属する。一方、中央集権型の
国々の事例において進む地域分権化の動きに留意する必要がある。これまで中央集権型とみなさ
れた多くの国々において,さまざまなレベルで地方分権への動きがあり,政治的な地方分権への
一般的な推移と,分権化の動きが高等教育政策へ与えた影響の度合は国により異なる。たとえば、
伝統的に中央集権型とみなされてきたフランスは1980年代以降,大きく地方分権へと移行し,高
等教育と地方行政の統合的アプローチが見られるようになった。イタリアでは地方分権化と地域
の経済開発の課題とが,大学の使命の多様化に結びついたという指摘がされている。東アジアで
は、韓国においても同様の傾向が見られる。
イギリス型の大学の財政とガバナンスのモデル」の特徴は、国レベルと地方レベルの混在であ
る。イングランドでは、高等教育財政協議会(Higher Education Funding Council for England)
が大学の財政と各種の政策に関して国レベルで行っている。スコットランドとウェールズ、北ア
3
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イルランドでは、度合いは異なるが分権化をしており、大学のガバナンスと財政は地方レベルで
行われている。日本との一番大きな違いは、各大学がもつ自立性がイギリスの方が強いことであ
る。1992 年以前は、ポリテクニック(職業教育の強い高等教育機関)は、地方行政の管轄だっ
たが、大学に昇格後は、高等教育財政協議会が一括する仕組みに変わった。近年の産学連携の流
れの中で、地域開発公社(RDA)から大学への資金が増えている。
イギリスにおいては,1992年からイングランド,スコットランド,ウェールズ,北アイルラン
ドが独自の高等教育ファンディング・カウンシルを持つ。イングランドの中にはさらに9 つの地
域がある。政治的な地域分権化があまり進んでいないイングランドの9つの地域においても、大
学と地域の関係性はさまざまな緊張関係の中で進展しており、その中のいくつかの地域では近年
独自の科学戦略を策定し,大学の研究機能はその中で戦略的な要素を成している(Kitagawa,
2003)。イギリスの中でも、さらに、比較的地方分権の進んでいるスコットランドにおける大
学間および高等教育機関間のシステムがどのように機能しうるのかについても論じ、地域と大学
との関係の異なるモデルを明らかにしたい。
1−3
研究資源の選択と集中、多様化のバランス
もうひとつ重要な観点は、イギリスの高等教育システムにおいて研究資金の集中が特に近年顕著
な傾向であるという点(DfES, 2003 参照)、さらにその地理的・空間的な影響が拡大しているとい
う点である。イギリス国内における研究開発資源が南東部の先進地域にますます集中し,その他の地
域では良質の研究機関・研究者を失うことによる負の影響に対する懸念が表明されている
(Universities UK 2003, 2005)。イギリスの大学協会Universities UKは、研究評価で低い結果を
出したいくつかの化学学部の閉鎖により、科学技術系人材の育成に打撃があることを指摘し、
「地
域」にとって、大学の研究と教育両方における科学系領域の重要性を主張している(Universities
UK 2005)。
近年の政策レポート(HEPI, 2004,
Universities UK 2004)も、イギリスにおける研
究構造の地域的側面からみた課題を指摘し、知識移転を通じた大学のもつ役割、さらに研究資源の集
中と多様化のバランスの問題を指摘している。
近年のマンチェスター大学統合に見られるような大学間の合併やさまざまなレベルで行われる
大学間の地域内での協力という現象は、国内の研究資金の配分を背景に理解する必要がある。これら
は現在進行中の事例であり、大学と地域振興との関係について、本稿での限定的なイギリスの事
例の検討を通じて「大学と地域振興」に関して、大学の役割、政策のあり方に関してなんらかの
結論を導くことが目的ではない。ここでは地域分権のあり方、大学間の関係のあり方や高等教育
システムの再編成、資源配分のあり方に関する議論を概観し、実例をあげて考察することで、そ
こに見られる課題の検討を行い、そこから政策的モデルとしての示唆を得ることを目的とする。
2.
イギリスにおける高等教育政策と地域政策の融合と緊張関係
2-1 政策的概観
イギリスにおけるイノベーション政策は,1990年代後半以降,ブレア政権下における地域分権,
4
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国家的競争力創出のための科学技術・産業政策という観点から,大きく変容を遂げている。
Goddard and Chatterton(1999)は,1997 年以降のイギリスにおける新労働党政権(New Labour
Government)下の政策の特徴ひとつとして,高等教育政策と地域開発問題の結びつきを指摘す
る。2003年1月に教育技能省(Department for Education and Skills)から発表された高等教育白
書は,地域開発公社(Regional Development Agencies: RDAs)と高等教育機関との連携の強化
を明白に謳っている。政府からの任命を受け,2002 年秋から産学連携に関する調査を開始した
Lambert Review も2003 年12 月の最終報告書において,産学連携,技術移転という観点から地
域内での大学間の協力メカニズムの重要性を強調する。
高等教育政策,研究開発,科学技術政策,イノベーション政策は中央政府の管轄である。近年
のイギリス中央政府レベルにおける主な施策については,1990年代半ば以降,次々と関連した白
書が出版され,それに伴う形で,中央政府による,大学と産業およびコミュニティとの関係を強
化するためのインセンティブ資金が出された。科学技術政策の観点から,通商産業省
(Department of Trade and Industry)は大学における研究の商業化促進のためのUniversity
Challenge Fund,起業家教育を促進するためのScience and Enterprise Challenge Fund を設け
た。イングランドにおける高等教育資金の管理・運営にあたるHEFCE (Higher Education
Funding Council in England)はHEROBC(Higher Education Reach-out to Business and
Communities), HEIF (Higher Education Innovation Fund) などの資金を設けた。4これらのインセ
ンティブ資金は総じて,研究,教育活動費とは別に,大学の「第三の活動」を促進する「第三の
財源」全般の強化を目的として,政府が提供する「第三の資金源」(third strand funding)と呼
ばれる。これらのイニシアティブは大学予算全体にしめる割合は小さいものの,大学,高等教育
機関のインフラストラクチャー,人材,リサーチ・マネジメント,教育カリキュラムなど,大学
の広範な活動領域において影響を与えた。たとえば,これらの新たな予算投入の結果,2000年以
降のイギリスの大学からのスタート・アップ数は大幅に増加した(Charles and Conway, 2001)
5
。
イギリス国内の高等教育政策,科学技術政策・イノベーション政策の「地域化」は異なる度合
いで進んでいる。イングランドのイノベーションのガバナンスの構造は、全体として、中央集権
的という点では日本と似ているが、地方分権がイングランドよりも一歩先に進んだスコッランド
やウェールズでは地域開発公社(Scottish Enterprise, Welsh Development Agency)を中心に,
独自の地域経済開発戦略の策定が行われた。スコットランドとウェールズでは,1992年以降,独
自の高等教育資金カウンシルを持ち,独自の高等教育の運営と資金提供を行っている。また,地
域開発公社と高等教育機関が地域経済開発戦略を通じて有機的な結びつきを強めている。
4 現在 HEIF 3 (2006 年 8 月から実施)が行われている。それまでは、HEIF 資金に対して各大学や大学のコンソーシア
ムが公募に対して応募する形であったが、新しくフォーミュラによる資金配分が行われている。
5
Higher Education Business Interaction Survey によると,1999年から2000年度において,イギリスの高等教育機関(総
数168機関)からのスピン・オフ企業の数は203社にのぼった。過去5 年間の総計が358 社(年平均72 社)に比べると,
大きな増加となった(Charles and
Conway, 2001)。
5
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2-2 スコットランド −地域高等教育システムと科学技術とイノベーションの地域におけるガバナンス
とくにスコットランドは,知識型経済におけるイノベーション促進を軸に独自の政策を展開し
ていることで知られる。スコットランドは独自の選挙による議会を持つ(Scottish Executive)。
経済開発の実施を行う地域開発公社であるScottish Enterpriseはグローバルな知識経済における
戦略的地域開発として,クラスターアプローチの強化,さらに地域科学戦略として,大学・研究
機関との連携強化を図っている。6
スコットランドは独自の高等教育財政機関を持つ。Scottish
Funding Council for Higher Education とScottish Funding Council for Further Education とが1
年前に統合され、現在は専門学校などの継続教育・大学等の高等教育を一貫して財政を担当する
Scottish Funding Council が機能している。スコットランドでは大学からの技術移転・知識移転
は研究活動と密接に結びついた財政構造を持ち、大学セクターと継続教育セクターとの間にも協
力関係が強まっている。
また, Scottish Funding Councilが中心となりスコットランド内の大学間で,リサーチ・プー
リング(研究資源の共有)が行われるようになっている。これは研究資源のための競争がますま
す厳しくなる中、研究資源をスコットランド内の大学で共有しようという試みで、最初は2004
年に化学と物理学の研究者の連携組織を形成する research pooling initiative が立ち上がった。
現在では領域も拡大している。このような協力が行われる背景には、スコットランド特有の状況
がある。スコットランドはイギリス全体の人口の9%を占めるが、研究のアウトカムは12%と高い。
エジンバラ大学やグラスゴー大学など世界的な研究を行う研究大学はあるが、イギリスの中のト
ップ大学との競争は厳しく、研究評価のRAEでみると、スコットランドの大学は競争力が足り
ないという認識があった。このため、まず物理学Scottish Universities Physics Alliance or SUPA
と化学Scot CHEMにおいて、200人前後の研究者をそれぞれ核となる複数大学を中心に集めネッ
トワーク化し、実験機材の共有、大学院生の研究を共同して行うようになった。これらは研究の
クリティカル・マスを作ること、世界のトップ・レベルの研究者をひきつけることなどを目標と
している。7 現在では、エンジニアリング、数学などにも拡大し、4年間で総額3700万ポンドの
資金が用意されている。
また、スコットランドの研究大学を海外のトップ・大学と連携することで研究の卓越、研究の
商業化を促進しようとする動きも見られる。「エジンバラースタンフォード リンク」がそれで
あり、一見、イギリス政府が資金を提供し、アメリカのMITとの連携により」イギリスの大学の
研究能力の底上げを狙った「CambridgeーMIT Institute」に似ているが、「エジンバラースタン
フォード リンク」は、言語技術、コンピュターと人との相互作用の領域に限定したプロジェク
トで、スコットランドという地域に焦点をあて、経済開発の実施を行う地域開発公社である
Scottish Enterpriseが資金を提供している。
6
7
'A Science Strategy for Scotland 2001' を参照。
http://www.scotland.gov.uk/Publications/2006/02/23092427/13
6
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2-3 イングランド−国家と地域と大学の緊張関係
イングランドの中には,さらに9つの地域があり,1999-2000年の地域開発公社設立(RDA)を
通じ,個々の地域がそれぞれの地域経済政策形成の方向に動いている。しかし、政治的には、
「地
域」レベルにおける議会設立の是非を問う住民投票が行われたものの、2004年秋、もっとも地域
化志向が強いと見られていた北東地域で政治的な分権化に対して住民票はNoと出た。このため、
2000年代初頭に見られた地方分権化への動きは大きく後退した。
イングランドにおける高等教育資金の管理・運営にあたるHEFCE (Higher Education Funding
Council in England)は,各地域担当のコンサルタントの任命(1997年),イングランド9地域
における地域大学協会(Higher Education Regional Associations)への補助金提供(1999年)な
ど通じて,インフラストラクチャーの整備という側面から高等教育の地域化の傾向を支援したが,
今までのところ,財政的にはその貢献は非常に限られたものである8。各地域における大学協会
の果たす役割と戦略性,その財源,活動規模,地域開発公社との関わりには,大きな違いが見ら
れる(Kitagawa, 2004 Brickwood and Brown 2005 参照)。9 表1参照。
a. North East – Universities for the North East (Unis4ne);
b. North West – North West Universities Association (NWUA);
c.
Yorkshire & Humberside – Yorkshire Universities (YU);
d. East Midlands – East Midlands Universities Association (EMUA);
e. West Midlands – West Midlands Higher Education Association (WMHEA);
f.
South West – Higher Education Regional Development Association (HERDA – SW);
g. South East – Higher Education South East (HESE);
h. London – London Higher;
i.
East – Association of Universities in the East of England (AUEE).
イングランドの特徴は,ロンドンを中心とする南東部における研究開発の集中である。これま
で産業衰退と高い失業率を抱え,国内において相対的に研究開発費支出が低い北東地域,北西地
域において,2002 年から産学官の戦略的な対話の場としての「地域科学協議会」(Regional
Science Council)が形成されたのは,「ボトムアップの科学ベースの地域イノベーション政策」
として注目に価する。
さらに北西地域においては,地域開発公社がマンチェスター大学とマンチェスター工科大学の
合併を資金的に支援し(両角, 2004 参照),「ワールド・クラス・ユニバーシティ」の創設に
より,「ワールド・クラス・リージョン」を形成しようという戦略的な地域と大学の連携も見ら
8 それぞれの地域大学協会には、人件費などをカバーするために HEFCE から 1999 年からの 3 年間で£75,000 から£1
10,000 の予算がついた。
9
Brickwood, A. and N. Brown (2005), Report to the Higher Education Funding Council for England
English Higher Education Regional Associations, Alan Brickwood &
http://www.hefce.ac.uk/pubs/rdreports/2005/rd25_05/
7
Associates Limited, HEFCE.
on the Study of the
第 1 稿 (DRAFT) Not for quote
れる。北西地域において,最初にこのような地域科学戦略が打ち出されたきっかけは,それまで
北西地域にあった公的研究機関を,中央政府がイングランド南東地域に移転することを決定した
ことがあった。より豊かで研究開発費の高い南東地域に研究機関を持っていかれることに対し,
北西地域の大学,研究機関,ビジネス・コミュニティ,行政との協調が強まった。
北西地域開発公社(North West Development Agency: NWDA)は 1999 年に北西地域の初の戦略
文書 North West Regional Strategy を出したが、この時点では、知識経済や大学の重要性に関す
る記載はほとんどなかった。しかし、同時期に、北西地域大学協会(North West Universities
Association :NWUA)が設立され、地域レベルにおける大学と地域開発に関わる諸機関との関係
は急速に強化されていった。北西地域においては、このようなプロセスの中で「ボトムアップ」
の地域科学政策(May and Perry, 2006)が形成されていった。この大きなきっかけとなったのが、
2000 年に起こった北西地域から南東地域への科学研究施設 DIAMOND synchrotron の大規模移
転である。北西地域では、この研究施設が地域経済に果たす役割の重要性を訴え、DIAMOND
debate と呼ばれるキャンペーンが行われた(Perry, 2006)。これは北西地域にとって「科学」の
重要性が政治化された形で認識されるプロセスととらえることができる。
2001 年に北西地域では、イングランドの中では最初となった地域科学協議会を設立した。2002
年には地域科学戦略が打ち出され、ここで、マンチェスター・ビクトリア大学とマンチェスター
工科大学の統合が「地域」のプロジェクトとして、認識されるにいたったのである。特に、両大
学によるバイオ・メディカル研究の施設開発(4 千万ポンド相当)は、マンチェスター地域のメ
ディカル産業の中核として位置づけられ、医療機関、製薬産業、医療系スピン・オフ企業との関
連で注目を集めた(May and Perry, 2006)。NWDAからは 3500 万ポンドの補助金が大学の合併
に際し払われることになった。10
このような産学官の連携の動きは,「地域」という空間における新たなネットワーク構築と資
源獲得のプロセスとしてとらえることができる。このような動きは,依然として大きな国内にお
ける地域間経済格差,政府の研究開発費の一部の地域への集中という国家レベルの研究政策,高
等教育政策の構造的な問題と切り離して考えることはできない(Charles and Benneworth, 2001
参照)。
2−4 大学と「都市ー地域」レベルの出現
さらに、「地域」レベルだけではなく、さらに下位の地方行政レベル「都市―地域」レベル
(city-region)のガバナンスの権限も強化されていった。続けて北西地域の事例を見ていきたい。
北西地域の中に位置する大マンチェスター州(Greater Manchester)では、2002 年に 10 地方自治
体と 3 大学、主要な公的機関、医療関係機関とで構成された大都市圏のブランドとしてのパート
10
NWDA Pledge Support for New World-Class University
http://www.nwda.co.uk/SimpleContent.aspx?news=1&area=72&subarea=73&item=200330530000658381&yr=
2003
8
第 1 稿 (DRAFT) Not for quote
ナーシップ Manchester: Knowledge Capital が設立された。このような「都市―地域」レベル
のパートナーシップに先立ち、3 大学(マンチェスター大学、マンチェスター・メトロポリタン
大学、サルフォード大学)の間では、ヨーロッパ連合からの資金で、地域開発のために形成され
た CONTACT というパートナーシップが存在し、大学が都市地域に与える影響についての調査やコ
ンサルテーションを実施していた。一方、このころ同時に進行していたマンチェスター・ビクト
リア大学とマンチェスター工科大学の統合が、Manchester: Knowledge Capital をめぐる大学間
の力関係や、さらなるミッションの分化、大学と「都市―地域」および「地域」との関係に大きな
影響を与えることになった。
現在の Manchester: Knowledge Capital の業務は以下のような領域を含む。
1.「都市―地域」レベルにおける科学技術とイノベーションの促進
2.「都市―地域」レベルにおける教育と雇用の促進
3.「都市―地域」レベルにおける生活の質の向上、ビジネスの成功の支援
4.さまざまな新しい仕事や生活のあり方の支援
現在実施されているプロジェクトの中には以下のようなものがある。
•
Science City プログラム:
民間の研究開発費の増加、イノベーションの促進な
どを中心に、
「科学」を中心とした都市開発構想。イギリス中央政府により支援さ
れ、イギリス各地で
•
Science City プログラムが実施されている。
City Growth Strategy:クラスター・モデルにもとづいたマンチェスター南部のリ
ジェネレーション・プログラム。
•
Manchester is my Planet:環境に配慮した都市づくりのためのプロジェクト。
Manchester: Knowledge Capital は、
「都市―地域」レベルにおける医療、イノベーション分野に
おける公的機関、地方自治体、大学が協同するというモデルとして、実績をあげ、成功例として
みられる。一方、パートナーシップの運営に関する一般的な困難さもあり、さらに統合後の巨大
大学の存在、ワールド・クラスを標榜する研究重視の大学と、地域とのつながり、職業教育重視
の大学との方向性の違いなどが浮かび上がっている。また、都市におけるこれらのイニシアティ
ブをより多様な「地域」レベルとどのように結びつけるのか、という、「都市―地域」という概
念自体が持つ構造的な挑戦は続いている。
3.
地域レベルの高等教育システムの形成へ
3.1 日本における大学と「都市―地域」パートナーシップへの視点
これらの状況は、日本においても、異なる文脈、異なるスケール、異なるプロセスにおいて
生じている。日本においても国レベルにおける研究資源の配分が、地域レベルにおける科学のガ
バナンス、知識のガバナンスを大きく条件づけている。2004 年 4 月の国立大学の法人化、また
公立大学の法人化への動き、さらに地方における国・公・私立を含めた大学生き残りのための競
争の激化などにより、日本における高等教育の「地域」レベルのガバナンスは現在過渡期にある
ように見える。日本においてもさまざまな地域の産業、コミュニティと大学とのパートナーシッ
9
第 1 稿 (DRAFT) Not for quote
プが形成されている。これらを有効な資源として生かすための仕組みづくりと、その継続的な発
展とが大きな課題である。
日本の高等教育機関の数は、国立大学法人、公立大学法人、私立大学とあわせると、イギリス
のそれよりもはるかに多く、機関の多様性という意味でも相当な相違がある。それぞれの設置形
態の違いにより、大学と国家、地域もしくは「都市ー地域」との関係は非常に異なったものにな
る。例えば、公立大学の場合、その設置主体である市や県との関係はおのずと強いものになるが、
公立大学の法人化により、新たな関係性も生じている。一方、地方に立地する国立大学法人の場
合も、その地域との関係性は強まる傾向にある。また、国立、公立、私立大学間での地域内や「都
市―地域」における協力関係、パートナーシップは近年増えている。
地域レベルにおける大学の連携、地方自治体と大学のパートナーシップという現象は、近年全
国的に非常に重要になっており、日本国内でも地域ベースの大学のコンソーシアムは増加してい
る。ここでは、これらの地域レベルのコンソーシアムそのものについて述べる紙面はないが、こ
れらには大学が主体となったもの、地方自治体が主体となったもの、民間団体がパートナーシッ
プを主導したもの、など異なる形態が見られる。これらはそれぞれが構成大学の特色、共通点と
相違点、地方自治体やその他の公共団体、民間団体との関係などにより特色のある連携組織を形
成している。それらの目的は、地域振興や地域経済開発に直接結びつくものもあれば、単位互換
や学生の移動、教育資源の共有、民間からの支援、大学と産業界の結びつきの強化、など多様で
あり、大学や地域がもつ特定の必要性や状況に応じて形成されている。
3−2.おわりにー「地域における公共財」としてのガバナンス・システム
本稿は、「大学と地域振興」との関係を考えるにあたり、最初に議論の枠組みとして、科学技
術・イノベーションにおける研究大学の役割に焦点をあてたいわゆる「ハイテク地域」モデルに
対し、もっと多様な大学のあり方、多様な「学習する地域(Learning Region)」のモデルの可
能性を示唆した。さらに「マルチ・レベル・ガバナンス」に関する理論に拠り、高等教育のマル
チ・レベル・ガバナンスに関して国別に類型化したモデルを提示した。科学技術政策のガバナン
スと高等教育政策が「地域」レベルにおいて持つ意味、その影響の度合いは、それぞれの国の高
等教育システムの性格と地方分権の度合いにより規定される部分が多い。次に、高等教育の「地
域」レベルのガバナンスを具体的に検討するための材料として、本論では、イギリスの事例をと
りあげた。イギリスと日本の共通点は、中央集権化した高等教育のガバナンスのシステムをとっ
ているという点であるが、 一方で地域レベルのガバナンスと国レベルのガバナンスが混在する
イギリスにおいては高等教育の地域化が異なる程度において進んでいるプロセスを示した。 地
域レベルにおいて知識移転における大学の役割の重要性に対する認識は強まっており、また多様
化した大学の機能に対する認識も特に地域レベルにおいて強まりつつある。各大学は地域におけ
るさまざまな資源をめぐり競争と協力を進めている一方、研究資源の選択と集中が進む一方で、
地域における科学技術力をいかに担保するかという政治的な議論が地域システムにおける異な
る種類の大学の役割を条件づけていることが明らかになった。
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第 1 稿 (DRAFT) Not for quote
さらにイングランドの一地域内で「都市―地域」という枠組みが政策的にも脚光をあびている
イギリスの大マンチェスター州をとりあげ、「都市―地域」内での大学のあり方、特に、ふたつ
の研究型大学の統合による「ワールド・クラス」創出と地域科学政策との関係、国内の研究開発
費の地域的集中と地域経済開発政策との問題点、
「都市―地域」内における異なるミッションを
持つ大学間の協力とその緊張関係、といったさまざまな課題を概観した。
スコットランドにおけるリサーチ・プーリングやその他の「地域」レベルにおけるイノベーシ
ョンの促進の仕組みづくり、高等教育と継続教育システムの財政面からの統合は、地域の高等教
育システムのモデルとして有効であるように見える。
各国において,政策レベルにおける研究資源の配分に関する議論の検討、「教育と研究との関係」
の再検討,そして大学機関レベル,研究科や学部レベルにおいて「教育と研究」そして「社会サービ
ス」に従事する教員,研究者,スタッフに対する適切なインセンティブ・メカニズムの構築が急がれ
る。また,大学と公的研究機関の分業と協力,民間セクターとの間のパートナーシップ,大学と産学
連携を担う中間機関との間の適切な「境界」の形成が政策的・組織的に重要となる(Georghiou,
2004)。
地域や都市という枠組みは、大学にとって多層的な空間のうちのひとつでしかないが、大学は
自らの存在する空間なしに大学はありえない。現在、日本では法人化や競争の高まりを通じて、
大学が「地域」レベルに新たな資源を見出そうとしているという状況の中で、地方行政、医療関
係、公共政策関係者、NGO等の団体、民間企業等も含めて、
「地域」という空間に戦略的に大
学を取り込んでいくという姿勢が重要になると考えられる。
これらの政策的な課題への対応を通して,大学機関は,それぞれのミッションと戦略にもとづい
た,ガバナンスとマネジメントのシステムを確立していく必要がある。そのためには,機関レベル
でのガバナンス,たとえば産学連携を円滑に進めるための制度的インフラストラクチャーの整備,
人材の確保,インセンティブの構築とともに,地域レベルでの大学とそのパートナーとを含めたガ
バナンスとマネジメントの構造が重要になる。このような「地域における公共財」としてのガバナ
ンス・システムの構築を可能にするための資源を,大学とそのパートナーとなる機関とがどのよう
に確保し,維持していくのかが,地域開発における大学の役割を考える際にもっとも重要な課題で
ある。大学を含めた多様なパートナー機関が、今後のシステムを形成するためのビジョンと戦略,そ
の実行力とが問われている。
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第 1 稿 (DRAFT) Not for quote
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第 1 稿 (DRAFT) Not for quote
<附表>
表1 Source: Kitagawa 2004
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