2016 年度大統領予算案補足:予算案に対する評価 <大学協会、アドボカシー団体、議会から出された声明のポイント> 「米国の科学政策」ホームページにおいては、2015 年 2 月 11 日に「2016 年度大統領予算案」として、 各省・機関を含む予算額を中心とした報告を行ったが、以下においては補足的に大学協会、アドボカシ ー団体、連邦政府議会議員から出された声明等の要点を記した。 2016 年度予算案は、議会に向け強制的な予算執行停止の回避を求めたうえで、幅広い裁量予算におい て増額提案を行っている。研究開発予算においては 76 億 2500 万ドル、5.5%増の 1456 億 9400 万ドル となっている。このため、アカデミックコミュニティーからは予算案全般について歓迎する声明が出さ れている。 基礎研究、応用研究、開発の区分においては、国防省を中心とした開発予算の伸びが 7.5%と大きいが、 国防省予算においては基礎研究予算が削減されており、アカデミックコミュニティーからは開発に重点 を置いた国防予算への批判の声も上がっている。 研究予算に関しては、競争力強化のための政策において最も重視されている国立科学財団(NSF) 、エ ネルギー省科学室、国立標準技術局研究室の基礎研究の増額が明確に示されており、また、国立保健研 究所(NIH)についても個々のイニシアチブの創設や拡充の他、伝統的な研究プロジェクトの規模と件 数の拡大が提案されており、アカデミックコミュニティーの支持が得られる内容となっている。 1.大学協会 (1)米国大学協会(Association of American Universities: AAU) ‐2016 年度大統領予算案は、米国のイノベーション欠損を縮小させる科学、研究、高等教育への投資が 含まれている。強制的な執行停止を取りやめ、歳出上限を引き上げることにより、国家の未来の基盤を 形成する発想、発見、そして人々への必要な投資を可能としている。 ‐NIH、NSF、エネルギー省の科学室と ARPA-E、NASA の増、そして農業・食品研究イニシアチブは 健康を改善し安全を強化する。 ‐低所得の学生向け Pell グラントの継続を喜ばしいと考え、米国機会税額控除(American Opportunity Tax Credit)の拡大に感謝する。 ‐他方、国防予算においては、8.3 パーセントの基礎研究削減について理解することが出来ない。国防基 礎研究は国家安全保障に重要である。 (2)公立・ランドグラント大学協会(Association of Public and Land-Grant Universities: APLU) (McPherson 会長の声明) ‐2016 年度研究予算案は、必要な資金を提供し、イノベーション欠損を縮小させる筋道に戻すものであ る。短期的には米国の経済が強化されたという指標が見られるが、予算の強制的な執行停止は長期的な 経済的成功とイノベーションのリーダーの地位を悪化させるものである。 ‐強制的な予算執行停止を終わらせることにより、予算案は基礎研究と高等教育の成長を可能とする。 NIH、NSF、そして他の科学機関の増額や農務省の食品研究イニシアチブを歓迎する。 ‐APLU は強制的な執行停止を終了させることを求めるが、同時に財政上の課題も認識しており、課税 ---------------------------------------------------------------------------「米国の科学政策」ホームページ 2015 年 3 月 8 日掲載 と給付の改革を求めている。これにより研究と教育の裁量予算に取り組みを集中させることができる。 ‐中等教育終了後の学位を有する労働人口の拡大に努めているが、この取り組みは連邦政府、州、そし て高等教育コミュニティーの協力により実現するものである。また、低所得層および障害者等の学生の 入学も会員大学の課題と認識している。 ‐Pell グラントの指標付けと学生の負担軽減のための州の公立大学への資金配分の拡大が求められる。 2.アドボカシー団体 Research!America (2016 年 2 月 2 日付け Mary Woolley 会長兼 CEO の声明。なお、3 月 3 日付けでも同様の論点のやや 具体性が高い声明が発表されている。) ‐予算案は、米国民の健康と経済の重要性を考慮し、予算の強制的な執行停止の廃止と、リソースの公 衆衛生や医学の進歩への振り向けを求めたものであることに喜ばしく思う。議会両党と大統領府は協調 的な生物医学研究加速法案(Accelerating Biomedical Research Act)に記された理念に向けて統合的に 取り組むべきである。 ‐我々は、議会に対し強制的な予算執行停止を排除し、科学とイノベーションがその潜在性を発揮でき るようにすることを要請する。 3.議会 (1)Smith 下院科学宇宙技術委員会委員長 ‐現政権下において米国の財政赤字は 7 兆ドル以上拡大し、大統領予算案においてもこのことは変わら ない。国民は増税と無意味な政府支出を望まない。 ‐科学技術への投資は雇用を創造し未来の経済成長を引き出すが、大統領予算案は米国民への明白な利 益よりも、党派的な目的に沿ったものである。 ‐予算案には、新規の 5 億ドルの国連プログラム「気候変動レジリエンシー」という高額で非効率なエ ネルギー補助金が含まれている。 ‐火星のようなより遠い目標に向けたプログラムに十分に支援が行われないことに失望している。 ‐オバマ政権は他の機関が実施することがより適切な気候にかかる資金配分や、宇宙コミュニティーが 支持しない小惑星捕獲ミッションなど高額で破壊的のものを継続させている。 ‐大統領案は米国民の政府への期待から外れており、共和党は科学活動を効果的、効率的、アカウンタ ブルにするための政策に取り組む。 (2)Johnson 下院科学宇宙技術委員会民主党筆頭議員 ‐大統領予算案は米国が、21 世紀のグローバルな経済において競争し、科学技術のリーダーの地である ことを確かにする。 ‐科学技術工学数学教育、先進製造、エネルギー効率性、代替クリーンエネルギーへの関与は元気づけ られるものであり、特に研究開発費の 6 パーセント増は喜ばしい。研究開発と教育への投資は雇用創造、 経済成長、そして未だ語られていない社会的利益の鍵を開けるものである。 ‐非国防裁量支出の強制的予算執行停止の影響は、研究・教育・イノベーション活動を悪化させるため、 これが行われないことは喜ばしい。 ‐科学者、工学者、イノベーターは発見を技術の開発に転換し、国家の競争力を高める。また、子供た ちを次世代のイノベーターへの基盤を触発する。このための唯一の対応は大統領予算案に沿って各機関 において投資が行われることである。 ‐米国が今後数十年にわたり科学技術のリーダーであり続けるため大統領および両党の議員と協力した い。
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